(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】分割式コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 31/06 20060101AFI20220602BHJP
H01R 13/6585 20110101ALI20220602BHJP
【FI】
H01R31/06 P
H01R31/06 M
H01R13/6585
(21)【出願番号】P 2021531905
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003892
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591150258
【氏名又は名称】株式会社ユタカ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】檜山 佑太
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 陽
(72)【発明者】
【氏名】青木 英里佳
(72)【発明者】
【氏名】松本 慶一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-157160(JP,A)
【文献】米国特許第7572148(US,B1)
【文献】特開2011-253807(JP,A)
【文献】特開平04-094074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 31/06
H01R 13/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対の信号線の束からなる通信ラインの接続箇所に配置される一対のコネクタの各連結部に対し、中間位置で2つに分割された分割体が各々着脱可能に連結されて前記両コネクタと一体になることで前記分割体間の挿抜操作により前記通信ラインを接続・分断させる分割式コネクタにおいて、前記分割体は複数個の接触片を保持した絶縁台を各々備えており、前記絶縁台は前記対の信号線に対応する対の前記接触片が互いに所定間隔を有して並んで配置されているとともに異なる対の前記接触片間に連結方向に深さを有するスリットが各々形成され、前記スリットには少なくとも表面に導電性を有した遮蔽板が各々挿設されており、前記両分割体を連結することで、前記両遮蔽板が先端面同士を近接又は当接しながら側面同士を面一にして、接続した前記接触片の両方に亘って前記異なる対の接触片間に一連の遮蔽壁を形成する、ことを特徴とする分割式コネクタ。
【請求項2】
前記遮蔽板は、前記分割体に挿設した状態でその一端側が前記コネクタに連結する端面側から各々所定幅で突出しており、これを前記コネクタに各々連結することで、前記コネクタ内に配置された異なる対の接触片間に前記遮蔽板の突出部分が挿入されて、前記分割体の接触片とこれに接続した前記コネクタの接触片の両方に亘って前記異なる対の接触片間に連続した遮蔽壁を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載した分割式コネクタ。
【請求項3】
前記遮蔽板の突出部分を異なる対の接触片間に挿入させるスリットが連結方向に貫通して形成された絶縁台を各々有した一対の前記コネクタを備えており、前記遮蔽板を挿設した前記分割体を前記コネクタに連結することで、前記スリットに挿入された前記遮蔽板の先端側が前記絶縁台の基端側から突出して前記異なる対の接触片の信号線結線部の間まで前記遮蔽壁を形成する、ことを特徴とする請求項2に記載した分割式コネクタ。
【請求項4】
前記絶縁台は、ツイストペア線を構成する前記対の信号線の4対を接続可能な4対の前記接触片を各々保持しており、形成された前記スリット及びそれに挿設される前記遮蔽板は、連結方向に直角な面による断面形状が各々十字状とされている、ことを特徴とする請求項1に記載した分割式コネクタ。
【請求項5】
前記絶縁台は、ツイストペア線を構成する前記対の信号線の4対を接続可能な4対の前記接触片を各々保持しており、形成された前記スリット及びそれに挿設される前記遮蔽板は、連結方向に直角な面による断面形状が各々十字状とされている、ことを特徴とする請求項2に記載した分割式コネクタ。
【請求項6】
前記絶縁台は、ツイストペア線を構成する前記対の信号線の4対を接続可能な4対の前記接触片を各々保持しており、形成された前記スリット及びそれに挿設される前記遮蔽板は、連結方向に直角な面による断面形状が各々十字状とされている、ことを特徴とする請求項3に記載した分割式コネクタ。
【請求項7】
前記遮蔽板は、合成樹脂製の本体表面に導電性物質による被膜を形成してなるものである、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6に記載した分割式コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置表面又はケーブル端部に設けられる一対のコネクタの間に着脱可能に介装される分割式コネクタに関し、殊に、高速通信における伝送特性を確保可能な分割式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
配線の接続・分断を重ねて行う部分に配設されるコネクタとしては、
図10に示すような凹型(ソケット型)の接触片32を有したメスの連結部3aと凸型(ピン型)の接触片41を有したオスの連結部4aの組合せによる挿入式のコネクタ3,4が周知であり、両者の挿抜操作だけで配線の接続・分断を容易に行えるものとしている。
【0003】
しかし、このような挿入式のコネクタ3,4は、例えば鉄道車両の電気連結器のように配線の接続・分断が頻繁に行われる箇所に用いる場合は、凹型の接触片32と凸型の接触片41との接触部分が挿抜作業に伴う摩耗・変形で接触不良を生じて比較的短期間で交換が必要な状態になるため、その都度、コネクタ3,4の基端側で結線を解いて新たなコネクタ3,4を再接続したり内部の接触片32,41を交換したりする作業が必要となってしまう。
【0004】
また、鉄道車両の電気連結器では耐久性に優れた突き当て式のコネクタも多用されている。ところが、この突き当て式のコネクタは、その接触片同士が当接する部分で部品の寸法バラツキを吸収して当接位置を一致させる方向に移動可能な構造を備えているため、その部分を小型化したり妨害電磁波等の影響を軽減するための電磁シールドを設けたりすることが困難である。
【0005】
これに対し、本願発明者・出願人らは、先に特許第5873344号公報において、挿入式コネクタで挿脱を繰り返す部分のみを別部品にしてなる分割式コネクタを提案した。この分割式コネクタは、挿入式のコンパクトかつ簡単な構成でありながら摩耗が生じた部分だけを交換可能なものとして、電気連結器における接続部分の耐久寿命を大幅に伸ばすことを実現している。
【0006】
一方、近年の鉄道車両においては、車両制御信号や各種情報信号を大量且つ高速に伝送することが求められており、イーサネット(登録商標)等により100Mビット/秒以上の高速通信を実現したものも普及している。そして、このような高速通信においては、ノイズの影響を受けにくい差動信号を用いることに加え、その伝送にツイストペア線による信号線が多用されており、その通信ケーブルが有する信号線の数は、従来の4本から倍の8本に増加している。
【0007】
そのため、通信ケーブルの信号線数の増加に応じてそれを接続するコネクタの接触片数も増加することになるが、上述した分割式コネクタを含む従来の技術においては、接触片数が増えた場合にその伝送特性を確保するための技術が提示されておらず、高速通信を行う通信ラインのコネクタ部分で生じる漏話等の問題を解決して伝送特性を確保可能とする技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、通信ラインのコネクタについて、頻回の挿抜操作に対する優れた耐久性を実現しながら、高速通信における伝送特性を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、対の信号線の束からなる通信ラインの接続箇所に配置される一対のコネクタの各連結部に対し、中間位置で2つに分割された分割体が各々着脱可能に連結されてその両コネクタと一体になることで分割体間の挿抜操作により通信ラインを接続・分断させる分割式コネクタにおいて、その分割体は複数個の接触片を保持した絶縁台を各々備えており、その絶縁台は対の信号線に対応する対の接触片が互いに所定間隔を有して並んで配置されているとともに異なる対の接触片間に連結方向に深さを有するスリットが各々形成され、そのスリットには少なくとも表面に導電性を有した遮蔽板が各々挿設されており、両分割体を連結することで、その遮蔽板が先端面同士を近接又は当接しながら側面同士を面一にして、接続した接触片の両方に亘って異なる対の接触片間に一連の遮蔽壁を形成する、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、一対のコネクタ間に中間位置で分割可能な分割式コネクタを着脱可能に介装してその分割位置でコネクタの接続・分断操作を行う方式としたことで、接触片の摩耗・変形時に分割体だけを交換するだけで作業が完了して、接触不良の発生を簡易な手順で解消しながら優れた耐久性を実現できるものとなるが、これに加え、各分割体の内部で異なる対の接触片間に導電性の遮蔽板を挿設し、その連結時に両遮蔽板の先端面が近接又は当接する構成としたことで、通信線の接続部分における異なる対の接触片の間で漏話が発生することを防止又は軽減可能として、高速通信における伝送特性を確保しやすいものとなる。
【0012】
また、この分割式コネクタにおいて、その遮蔽板が分割体に挿設した状態でその一端側がコネクタに連結する端面側から所定幅で突出するものとして、これをコネクタに連結することで、コネクタ内に配置された異なる対の接触片間に遮蔽板の突出部分が挿入されて、分割体の接触片とこれに接続したコネクタの接触片の両方に亘って異なる対の接触片間に連続した遮蔽壁を形成する、ことを特徴としたものとすれば、分割体内部から連結先のコネクタ内部に亘って接触片間を連続的に遮蔽できるため、高速通信における通信特性を一層確保しやすいものとなる。
【0013】
さらに、この分割式コネクタにおいて、挿設した遮蔽板がコネクタ側に突出する構造を有した両分割体及びそれに挿設される両遮蔽板と、その遮蔽板の突出部分を対の接触片間に挿入させるスリットが連結方向に貫通して形成された絶縁台を各々有した一対のコネクタとを備えており、その遮蔽板を挿設した分割体をコネクタに連結することで、スリットに挿入された遮蔽板の先端側が絶縁台の基端側から突出して異なる対の接触片の信号線結節部の間まで遮蔽壁を形成する、ことを特徴とする分割式コネクタとすれば、これを用いるだけで頻回の挿抜操作に対する優れた耐久性を実現しながら、高速通信における高い伝送特性を確保することができる。
【0014】
さらに、上述した分割式コネクタにおいて、各絶縁台は、ツイストペア線を構成する対の信号線の4対を接続可能な4対の接触片を各々保持しており、形成されたスリット及びそれに挿設される遮蔽板は、連結方向に直角な面による断面形状が十字状とされていることを特徴としたものとすれば、断面形状が円形のケーブル及びコネクタに好適な形状を実現しながら、全体としてコンパクトなサイズに纏まりやすいものとなる。
【0015】
さらにまた、上述した分割式コネクタにおいて、その遮蔽板は、合成樹脂製の本体表面に導電性物質による被膜を形成してなるものである、ことを特徴としたものとすれば、比較的容易に精度高い電磁波遮蔽壁を設けることが可能になるとともに、コネクタ側への挿抜動作に伴ってコネクタ内の配線等を損傷するリスクを最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
分割式コネクタを構成する分割体の異なる対の接触片間に導電性の遮蔽板を挿設した本発明によると、頻回の挿抜操作に対する優れた耐久性を実現しながら、通信ラインの接続部において異なる対の接触片間で漏話が発生するのを防止可能として、高速通信における伝送特性を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明における第1実施の形態である分割式コネクタの各分割体をコネクタに接続する前の状態を示す正面図、(B)は(A)の各分割体及び各コネクタが対向している側の端面の構成を示す側面図である。
【
図2】
図1(A)の両分割体とそれに接続する両コネクタの斜視図である。
【
図3】(A)は
図1(A)の分割体に遮蔽板を各々挿設した状態を示す正面図、(B)は(A)の分割体をコネクタに各々連結した状態を示す正面図、(C)は(B)の状態から分割体同士を連結した状態を示す正面図である。
【
図4】(A)は
図3(A)の両分割体及び両コネクタの内部における接触片と遮蔽板の位置関係を示す正面透視図、(B)は(A)の状態から両分割体及び両コネクタを総て連結した状態を示す正面透視図である。
【
図5】
図4(B)の変形例を示す正面透視図である。
【
図6】
図1の分割式コネクタの応用例であって、(A)は遮蔽板を分割体に挿設する前の状態を示す正面図、(B)は遮蔽板を挿設した分割体をコネクタに各々連結した状態を示す正面図、(C)は(B)の状態から分割体同士を連結した状態を示す正面図である。
【
図7】本発明における第2の実施の形態である分割式コネクタを示す斜視図である。
【
図8】
図7の分割体をコネクタに各々連結する前の状態を示す正面図である。
【
図9】
図7の分解斜視図である(一方のコネクタを省略)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。尚、本発明において、一連とは、連なって並んでいるもの同士が、必ずしも互いに当接していることを要するものではなく、所定の関係性を有して互いに隣接している場合も含まれるものとする。
【0019】
図1(A)は、本実施の形態の分割式コネクタ1Aが中間位置で2つに分離された分割体10A,11Aを、コネクタ5,5に連結する前の状態を示している。この分割式コネクタ1Aは、通信ラインの接続箇所に配置される挿入式の対のコネクタ5,5の間に着脱可能に介装されて、これらを連結しながら電気的に接続状態にする仲介部品であり、基本的には挿入式コネクタの一種である。
【0020】
斯かる分割式コネクタ1Aは、分割体10A,11Aが一体化した状態から2つに分離されるものであるが、その分割位置に形成した凸型挿入体と凹型被挿入体との組合せからなる一対の連結部10b,11aにより、両者の電気的な接続状態が分断・再接続を可能とされており、コネクタ位置における通常の接続・分断が分割体10Aと分割体11Aとの間の挿抜操作により行われる。
【0021】
図1(B)及び
図2に示すように、その分割体10Aは、連結方向に貫通して設けた挿入孔131,132,~138に接触片30を各々挿設した非導電性樹脂製の絶縁台130を備えており、その一端側は軸状の接触片30の一端側に形成したオス型(ピン型)の接触部30aを内側空間に有して一方のコネクタ5の連結部5aに連結可能な凹型被挿入体からなる連結部10aとされ、リング状のフランジ部10cを挟んだ他端側は、接触片30の他端側に形成したメス型(ソケット型)の接触部30bを挿入孔131,132,~138開口部側に有して分割体11Aの連結部11aに連結可能な凸型挿入体からなる連結部10bとされている。
【0022】
その分割体11Aは、連結方向に貫通して設けた挿入孔141,142,~148に接触片40を各々挿設した非導電性樹脂製の絶縁台140を備えており、その一端側は軸状の接触片40の一端側に形成したオス型(ピン型)の接触部40bを内側空間に有して分割体10Aの連結部10bに連結可能な凹型被挿入体からなる連結部11aとされ、リング状のフランジ部11cを挟んだ他端側は、接触片40の他端側に形成したオス型(ピン型)の接触部40aを内側空間に有して他方のコネクタ5の連結部5aに連結可能な凹型被挿入体からなる連結部11bとされている。
【0023】
一方、コネクタ5,5の連結部5aには、メス型(ソケット型)の接触部を有した接触片50を8個保持している絶縁台150が露出している。そして、
図3(A),(B)に示すように、上述した分割体10Aは、その連結部10aを一方のコネクタ5の連結部5aに連結することで、所定の固定力にて連結状態を維持しながらこれと一体となり、分割体11Aもその連結部11bを他方のコネクタ5の連結部5aに連結することで所定の固定力にて連結状態を維持しながらこれと一体となって、その後は
図3(B),(C)に示すように、分割体10Aの連結部10bと分割体11Aの連結部11aとの間(分割位置)にて挿抜操作を行うだけで、通信ラインの接続・分断が行えるようになっている。
【0024】
即ち、通信ライン(配線)の接続・分断操作を繰り返し行う部分に配設された挿入式のコネクタでは、その接触片同士が接続する部分が摩耗・変形を生じて比較的短期間で交換が必要となり、その交換作業においてコネクタの結線を解いて新しいコネクタを再接続する等の手間を要していたのに対し、本発明においては、その交換の必要な部分がコネクタ5,5に対し着脱容易な分割体10A,11Bであることから、その交換作業を極めて容易に完了させることが可能となり、一対のコネクタ5,5における耐久性能を格段に向上させたものとなっている。
【0025】
一方、近年の鉄道車両においては、車両制御用の信号や各種情報信号を大量且つ高速に伝送することが求められていることから、ノイズの影響を受けにくい差動信号を用いるとともに、その伝送にツイストペア線による信号線が多用されており、信号線の数が従来の4本から倍の8本に増加したものが一般的となっている。そのため、信号線数の増加に応じてそれを接続するコネクタの接触片数も増加しており、高速通信を行う通信ラインのコネクタ部分で生じる漏話等の問題を解決することが求められている。
【0026】
そこで、本発明においては、分割体10A,11A間の挿抜操作により通信ラインを接続・分断させる方式を採用したことに加え、その分割体10A,11Aが、複数個の接触片を各々保持している絶縁台130,140において、対の信号線に応じて対をなす接触片が互いに所定間隔を有して並んだ状態で配置するとともに、隣り合う異なる対の接触片間に、連結方向に深さを有するスリット130a,140aを各々形成したものとしている。
【0027】
そして、接触片30,40,50を各々透視した状態の
図4(A)に示すように、そのスリット130a,140aには、少なくとも表面に導電性を有した遮蔽板110,120が、接触片30,40の側方所定範囲を遮蔽するように各々挿設されるものとして、遮蔽板110,120を挿設した分割体10A,11Aを連結することで、
図4(B)に示すようにその遮蔽板110,120の先端面同士が近接又は当接しながら側面同士を面一にして、接続した接触片30,40の両方に亘って異なる対の接触片間に電磁波等を透過させない一連の遮蔽壁を形成するようになっており、この点が本発明における特徴部分となっている。
【0028】
上述したように、一対のコネクタ5,5間に、分割式コネクタ1Aを着脱可能に介装してその分割位置にてコネクタ5,5の接続・分断操作を行うようにしたことで、接触片30,40の摩耗・変形時の対応時に分割体10A,11Aだけを挿抜して交換するだけで作業を完了して、接触不良の発生を簡易な手順で回避・解消しながら優れた耐久性を実現可能となるが、これに加え、分割体10A,11Aの内部で異なる対の接触片間に導電性の遮蔽板110,120を挿設して、接続した接触片30,40の両方に亘る一連の遮蔽壁を形成するものとしたことで、通信ラインの接続部分における異なる対の接触片間で漏話が発生する事態を回避又は軽減可能として、高速通信における伝送特性を確保しやすいものとしている。
【0029】
本実施の形態おいては、高速通信用のツイストペア線による対の信号線の4対(合計8本)に対応するために、コネクタ5,5及び分割体10A,11Aの絶縁台150,130,140が、4対8個の接触片50,30,40を各々保持しているが、各絶縁台150,130,140に連結方向に貫通して各々形成されたスリット150a,130a,140a及びそれに挿設される遮蔽板110,120を、連結方向に直角な面による断面形状を十字状にした点も特徴としている。
【0030】
即ち、その遮蔽板110は、
図2に示したように、長方形の板体111,112,113,114の各長辺側を、中心軸線を中心として周方向90度ピッチで接続してなる形状とされ、遮蔽板120も、長方形の板体121,122,123,124の各長辺側を、中心軸線を中心として周方向90度ピッチで接続してなる形状とされており、これらを挿設するスリット130a,140a,150aも各々同様の形状とされている。
【0031】
また、本実施の形態における遮蔽板110,120は、分割体10A,11Aに対して着脱自在な部品とされており、分割体10A,11Aの交換時に遮蔽板110,120の再使用を可能としている。また、
図1(A)に示したように、遮蔽板110,120外縁側の所定位置には突起110a,120aが各々形成されており、これらがコネクタ5との連結動作により、スリット130a,140a内の外縁側所定位置に形成したリブ1300,1400に係止されるとともに、コネクタ5側における絶縁台150のスリット150a開口部外縁側の端面に各々当接して、突起110a,120aが各々挟みこまれた状態になることで、遮蔽板110,120の接続方向の動きが固定されるようになっている。
【0032】
尚、本実施の形態の遮蔽板110,120は、少なくともその表面が導電性を有していることにより、電磁波等を透過させない遮蔽壁を形成して、漏話の発生等を防止しながら通信性能を確保しやすい状態にする機能を発揮するものであるが、これらを総て導電性金属で成形するのではなく、合成樹脂製の本体に導電性物質の被膜をメッキや蒸着等で形成して作成したものが推奨される。
【0033】
斯かる構成にすることで、
図4(B)に示したように遮蔽板110,120の突出部分をコネクタ5内に深くに挿入する際に、接触片50基端側に結線した通信線100等を傷つけてしまうトラブルを回避できることに加え、上述した突起110a,120aを有して断面十字状をなす遮蔽板110,120の形状を精度高く成形しやすいものとしながら、その中心軸側で90度ピッチ接続した形状部分に隙間を生じにくくすることができる。
【0034】
また、本実施の形態における遮蔽板110,120は、上述したように分割体10A,11Aに挿設した状態で、その一端側がコネクタ5に連結する端面側から所定幅で突出する構成となっており、これをコネクタ5に各々連結することで、そのコネクタ5内に配置されて隣り合う異なる対の接触片50,50の間に、遮蔽板110,120の突出した部分が挿入されるようになっている。
【0035】
これにより、
図4(B)に示したように挿入された遮蔽板110,120は、分割体10A,11Aの接触片30,40と、これらに接続したコネクタ5,5側の接触片50,50の両方に亘って異なる対の接触片間に連続した遮蔽壁を各々形成することができ、分割体10A,11Aの内部側だけではなく、それらが連結したコネクタ5,5の内部においても一体的に遮蔽壁を形成するため、高速通信の通信特性を一層確保しやすいものとしている。
【0036】
尚、本実施の形態では、
図4(B)の連結状態において、コネクタ5側に挿入された遮蔽板110,120の先端側が、通信線100と接触片50の結線箇所も含めてカバーして遮蔽壁を形成する構成となっており、伝送特性確保の観点において一層優れた機能を発揮可能なものとなっている。また、遮蔽板110,120は、分割体10A,11A同士の連結時にその先端面が近接又は当接しながら、それらを構成している板体111,112~114と板体121,122~124の側面(遮蔽面)が面一の状態になって一連になる構成であるため、伝送特性確保の観点からは、その両先端側は隙間無く当接して密着することが好ましいところ、部品の成形精度・組立精度上の問題から、予め僅かな隙間を形成するように設計される場合が多いと考えられる。
【0037】
そこで、
図5に示すように、上述した遮蔽板110,120のコネクタ5内に挿入する先端側に係止構造115,125を各々設けた遮蔽板110B,120Bとして、これにコネクタ5側に内装したバネ190等の付勢手段を係止させるようにしながら、コネクタ5側から遮蔽板110B,120Bを押し出す方向に付勢する構成とすれば、遮蔽板110B,120Bの先端面同士の密着性を確保しやすいものとなる。
【0038】
図6は、上述した分割式コネクタ1Aの応用例としての分割式コネクタ1Bを示している。この例では、この分割式コネクタ1Bを介装する対象が、凸形挿入体による連結部5aを有する上述した一対のコネクタ5,5のように同形状の組合せではなく、凸型挿入体による連結部5aを有したコネクタ5と、凹型被挿入体による連結部6aの内部にオスの接触片60有して図示しない十字状のスリットを形成した絶縁体を備えているコネクタ6との組合せからなるものである。
【0039】
斯かる分割式コネクタ1Bは、
図6(A)に示すように、一方のコネクタ5への連結側が凹型被挿入体による連結部10aとされ分割体同士の連結側が凸型挿入体による連結部10bとされた分割体10Aを、2つ組合せてなるものとした点を特徴としており、コネクタ5に連結する分割体10Aには遮蔽板110が挿設され、コネクタ6に連結する分割体10Aには遮蔽板120が挿設されて、その分割体10A,10Aをコネクタ5,6に各々連結することで、
図6(B)に示す状態となる。
【0040】
そして、これらを連結することで
図6(C)の状態となるが、この例においても、
図3(C)に示した分割式コネクタ1Aと同様に、遮蔽板110,120の先端面同士が近接又は当接しながら、分割体10A,10Aの接触片30,30とこれに接続したコネクタ5,6の接触片50,60の両方に亘って各々破線で示す遮蔽壁を形成するため、分割式コネクタ1Bの内部から連結先のコネクタ5,6内部に亘って異なる対の接触片間を連続的に遮蔽するものとなる。
【0041】
図7は、本発明における第2の実施の形態である分割式コネクタ1Cを示している。この分割式コネクタ1Cを構成している分割体10A,11Aは、上述した分割式コネクタ1Aとほぼ同様の構成であるが、挿設する遮蔽板110,120が、分割体10A,11A側に各々固定されている点を特徴としており、その使用方法は、
図8に示すように分割式コネクタ1Aと同様であるものの、分割体10B,11Bの交換時には、遮蔽板110,120も同時に交換されることを想定している。
【0042】
本実施の形態における遮蔽板110,120の分割体10B,11Bに対する固定方式としては、
図9の分解斜視図に示すように、分割体10B,11Bに内装する絶縁台を、上述した絶縁台130,140を連結方向の途中で各々2つに分割しながら、スリット171a,172a各々を形成してなる絶縁台171,172の組合せ及びスリット181a,182aを各々形成した絶縁台181,182の組合せとして、その間に遮蔽板110,120外周側の突起110a,120aを各々挟み込むことで、脱抜不能な状態に固定する方式を採用している。また、この実施の形態においても、同一の分割体10B,10Bの組合せによる分割式コネクタとする応用例を実施できることは言うまでもない。
【0043】
尚、上述した実施の形態、応用例において、分割体10A,10B,11A,11Bが各々連結する対象となる上述したコネクタ5,6は、遮蔽板110,120が突出した部分を挿入させる十字状のスリットが絶縁台に各々形成されていることが必要であることから、上述した分割式コネクタ1A,1B,1Cとの組合せで使用される専用品となっている。そのため、上述した分割体10A,10B,11A,11Bのいずれかの組合せによる一組と、それを適用する一対のコネクタ5,5又は5,6とのセットからなる分割式コネクタとして、本発明による作用・効果を発揮するものであるとも言える。
【0044】
また、上述した説明においては、適用するコネクタが挿入式のものでありこれに連結する分割体も含めて内装した接触片がピン型とソケット型の組合せである場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、突き当て式の接触片を備えたコネクタであっても適用することができる。
【0045】
以上、述べたように、通信ラインのコネクタについて、本発明により、頻回の挿抜操作に対する優れた耐久性を実現しながら、高速通信における優れた伝送特性を確保できるようになった。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C 分割式コネクタ、5,6 コネクタ、5a,6a,10a,10b,11a,11b 連結部、10A,10B,11A,11B 分割体、30,40,50,60 接触片、100 通信線、110,120,110B,120B 遮蔽板、110a,120a 突起、130,140,150,171,172,181,182 絶縁台
【要約】
【課題】通信ラインに配設するコネクタについて、頻回の挿抜操作に対する優れた耐久性を実現しながら高速通信における伝送特性を確保できるようにする。
【解決手段】コネクタ5,5に対し中間位置で2つに分割された分割体10A,11Aが着脱可能に連結されて分割体間の挿抜で通信ラインを接続・分断させる分割式コネクタ1Aであって、分割体10A,11Aは複数個の接触片30,40を各々保持した絶縁台130,140を各々備え、絶縁台130,140には接触片30,40が各々並んで配置されて異なる対の接触片間にスリット130a,140aが各々形成され、これらに表面に導電性を有した遮蔽板110,120が各々挿設されており、分割体10A,11Aを連結することで、遮蔽板110,120が先端面同士を近接又は当接しながら側面同士を面一にして、接続した接触片30,40の両方に亘って異なる対の接触片間に遮蔽壁を形成するものとした。
【選択図】
図2