IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライミクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】攪拌羽根および攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/90 20220101AFI20220602BHJP
   B01F 27/1125 20220101ALI20220602BHJP
【FI】
B01F27/90
B01F27/1125
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133639
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2021041398
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019161924
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000225016
【氏名又は名称】プライミクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西川 宏
(72)【発明者】
【氏名】金澤 賢次郎
(72)【発明者】
【氏名】仁井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】古市 尚
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09186022(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0139884(US,A1)
【文献】特開2019-093347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌装置に取り付けられ、軸方向周りに回転させられる攪拌羽根であって、
前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、
前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、
前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を有する第1羽根部を含み、
前記第1羽根部は、
周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度は、周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、
径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、
軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であり、
前記複数の羽根部は、隣接する2つの前記第1羽根部の間に配置された第2羽根部を含んでおり、
前記第2羽根部は、その全体が平坦であり、且つ径方向となす角度である第5角度が、0°以上50°以下である
ことを特徴とする、攪拌羽根。
【請求項2】
前記第1角度の絶対値は、5°以上50°以下である、請求項1に記載の攪拌羽根。
【請求項3】
径方向と前記根元部とがなす角度である第2角度の絶対値は、0°以上50°以下である、請求項2に記載の攪拌羽根。
【請求項4】
前記複数の羽根部に含まれる前記第1羽根部同士は、互いの前記第2角度が等しく、且つ互いの前記第3角度が等しい、請求項3に記載の攪拌羽根。
【請求項5】
前記基部と前記根元部との境界である第1境界部が、軸方向視において径方向となす角度である第1副角度の絶対値は、20°以上80°以下であり、
前記根元部と前記先端部との境界である第2境界部が、軸方向視において径方向となす角度である第2副角度の絶対値は、前記第1副角度よりも大きい、請求項4に記載の攪拌羽根。
【請求項6】
攪拌対象物を収容する容器と、
前記容器内に挿入される回転軸と、
前記回転軸に取り付けられた請求項1ないし5のいずれかに記載の前記攪拌羽根と、
を備えることを特徴とする、攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌羽根および攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または粉体と液体の混合体などの対象物体を分散および混合などの攪拌をするための装置として、攪拌羽根を有する攪拌装置が用いられている。特許文献1には、従来の攪拌羽根および攪拌装置の一例が開示されている。本文献に開示された構成においては、回転駆動される回転軸の先端に回転羽根が取り付けられている。回転羽根は、対象物体を収容した容器内において回転されることにより、対象物体の分散および混合などの攪拌を行う。
【0003】
ここで、攪拌は、分散および混合を含む概念である。対象物体を分散するとは、化学的に1つの相となっている物質(たとえば液体)中において、他の物質(例えば液体または粉体)をミクロな状態で散在させる動作である。また、対象物体を混合するとは、容器に収容された対象物体がより均一な性状となるように容器内においてかき混ぜる動作である。攪拌装置における分散をより高度化するには、攪拌羽根による力をごく一部の対象物体に集中させることが重要であり、攪拌羽根のごく近傍に存在する領域において作用する場合が多い。一方、攪拌装置における混合をより高度化するには、攪拌羽根による力を容器内に収容された対象物体全体に作用させ、流動させることが重要である。このように、1つの攪拌羽根によって、分散と混合とを高度化することは、相反する挙動を両立させることが求められる。特に、対象物体の粘度が高くなるほど、分散と混合とを高度化することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-180073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、高粘度である対象物体の分散および混合の高度化を図ることが可能な攪拌羽根および攪拌装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供される攪拌羽根は、攪拌装置に取り付けられ、軸方向周りに回転させられる攪拌羽根であって、前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を有する第1羽根部を含み、前記第1羽根部は、周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度は、周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であり、前記複数の羽根部は、隣接する2つの前記第1羽根部の間に配置された第2羽根部を含んでおり、前記第2羽根部は、その全体が平坦であり、且つ径方向となす角度である第5角度が、0°以上50°以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1角度の絶対値は、5°以上50°以下である。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、径方向と前記根元部とがなす角度である第2角度の絶対値は、0°以上50°以下である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の羽根部に含まれる前記第1羽根部同士は、互いの前記第2角度が等しく、且つ互いの前記第3角度が等しい。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記基部と前記根元部との境界である第1境界部が、軸方向視において径方向となす角度である第1副角度の絶対値は、20°以上80°以下であり、前記根元部と前記先端部との境界である第2境界部が、軸方向視において径方向となす角度である第2副角度の絶対値は、前記第1副角度よりも大きい。
【0013】
本発明の第2の側面によって提供される攪拌装置は、攪拌対象物を収容する容器と、前記容器内に挿入される回転軸と、前記回転軸に取り付けられた本発明の第1の側面によって提供される攪拌羽根と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高粘度である対象物体の分散および混合の高度化を図ることができる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根を用いた攪拌装置を示す断面図である。
図6】(a)は、本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根の解析結果を示す速度勾配分布部であり、(b)は、比較例の速度分布図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根の第1変形例を示す断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根の第2変形例を示す断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根の第3変形例を示す断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図13図11のXIV-XIV線に沿う断面図である。
図14図11のXV-XV線に沿う断面図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根の解析結果を示す速度勾配分布部である。
図16】本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根の比較例に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図17】(a)~(c)は、本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根の変形例を示す要部断面図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図19】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図20】本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図21図19のXXI-XXI線に沿う断面図である。
図22図19のXXII-XXII線に沿う断面図である。
図23】本発明の第4実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図24】本発明の第4実施形態に係る攪拌羽根を示す平面図である。
図25】本発明の第4実施形態に係る攪拌羽根を示す正面図である。
図26図24のXXVI-XXVI線に沿う断面図である。
図27図24のXXVII-XXVII線に沿う断面図である。
図28】本発明の第5実施形態に係る攪拌羽根を示す斜視図である。
図29】撹拌対象物のフローパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
以降の説明において、攪拌とは、分散および混合を含む概念である。対象物体を分散するとは、化学的に1つの相となっている物質(たとえば液体)中において、他の物質(例えば液体または粉体)をミクロな状態で散在させる動作をいう。また、対象物体を混合するとは、容器に収容された対象物体がより均一な性状となるように容器内においてかき混ぜる動作をいう。
【0019】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0020】
<第1実施形態>
図1図5は、本発明の第1実施形態に係る攪拌羽根および攪拌装置を示している。本実施形態の攪拌羽根A1は、基部1および複数の羽根部2を備えている。
【0021】
図1は、攪拌羽根A1を示す平面図である。図2は、攪拌羽根A1を示す正面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、攪拌羽根A1を用いた攪拌装置B1を示す断面図である。周方向θは、攪拌羽根A1が回転する方向であり、軸方向zおよび径方向rに対して、一般的に周方向と称される方向である。また、これらの図における矢印は、攪拌羽根A1が回転する向きを示している。図5は、攪拌羽根A1が回転することにより、対象物体Tが流動した状態を示している。
【0022】
攪拌羽根A1は、たとえば図5に示す攪拌装置B1に取り付けられるものである。攪拌装置B1は、容器81、回転軸82および駆動部83を備えている。容器81は、分散および混合の対象である対象物体Tを収容する。回転軸82は、その先端に攪拌羽根A1が取り付けられ、容器81の対象物体T内に挿入される。駆動部83は、回転軸82を軸方向z周りに回転させるものであり、たとえばモータを具備する。攪拌装置B1の他の構成要素としては、たとえば容器81および駆動部83を支持する筐体や、駆動部83の駆動を制御する制御部等を適宜採用してもよい。対象物体Tの種類や性状は何ら限定されない。比較的高粘度である対象物体Tの例としては、CMC(カルボキシメチルセルロース)、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム等を含む高粘度のスラリー状の液体や、カーボンブラックを含む高粘度のスラリー状の液体が挙げられる。
【0023】
なお、攪拌羽根A1が取り付けられる攪拌装置は、何ら限定されない。たとえば、容器81の底部から、回転軸82が上方に進入した構成であってもよい。この場合、攪拌羽根A1は、回転軸82の上端に取り付けられる。また、容器81の底部には、たとえば軸シールを設けてもよい。また、攪拌装置B1の他の構成要素としては、たとえば容器81および駆動部83を支持する筐体や、駆動部83の駆動を制御する制御部等を適宜採用してもよい。
【0024】
攪拌羽根A1の材質は、特に限定されず、金属や樹脂など対象物体Tの分散および混合に適した材質が適宜選択される。攪拌羽根A1を構成する好ましい金属としては、たとえばステンレスが挙げられる。さらに、攪拌羽根A1の表面の適所に、任意のコーティング等の表面加工を施してもよい。また、攪拌羽根A1は、基部1および羽根部2が一体的に形成されたものであってもよいし、複数の部品が組み合わされた構成であってもよい。さらに、攪拌羽根A1を攪拌装置B1の回転軸82に取り付ける構造としては、種々の係合機構や締結機構などの取り付け機構が採用されてもよいし、回転軸82と攪拌羽根A1の少なくとも一部とが一体的に形成された構造であってもよい。
【0025】
基部1は、複数の羽根部2を支持しており、回転軸82に固定される部位である。基部1の形状および大きさは特に限定されない。本実施形態の基部1は、軸方向zを軸心とする円柱形状である。
【0026】
複数の羽根部2は、基部1に対して放射状に取り付けられており、各々が周方向θに配列されている。複数の羽根部2の個数は、なんら限定されない。本実施形態においては、攪拌羽根A1は、3つの羽根部2を備えた場合を例に説明する。3つの羽根部2は、等ピッチで配列されており、図示された例においては、当該ピッチは120°である。本実施形態においては、3つの羽根部2は、すべてが本発明における第1羽根部2Aである。
【0027】
羽根部2は、根元部21および先端部22を有する。根元部21は基部1に繋がっており、基部1に対して軸方向z上方に向けて斜めに延びている。先端部22は、根元部21に対して基部1とは反対側に繋がっており、図示された例においては、根元部21から軸方向z上方に延びている。なお、基部1、根元部21および先端部22は、単一の材料から一体的に形成されても良いし、互いを差し込み等の係合(嵌合)や溶接等の接合手法を用いて結合されていてもよい。
【0028】
根元部21は、内面211および外面212を有する。内面211は、径方向rにおいて内側を向く面である。外面212は、径方向rにおいて外側を向く面である。内面211および外面212の形状は特に限定されない。図示された例においては、内面211と外面212とは、互いに平行な略平面である。
【0029】
先端部22は、内面221および外面222を有する。内面221は、径方向rにおいて内側を向く面である。外面222は、径方向rにおいて外側を向く面である。内面221および外面222の形状は特に限定されない。図示された例においては、内面211と外面222とは、互いに平行な略平面である。
【0030】
根元部21および先端部22の相対的な大きさは特に限定されない。図示された例においては、図3に示す断面における根元部21の長さは、先端部22の長さよりも長い。
【0031】
本実施形態では、図2に示す第1角度α1を定義している。図中の一点鎖線は、周方向θに沿った直線である。第1角度α1は、周方向θと根元部21(根元部21の中心線)とがなす角度であり、周方向θにおける回転前方に向かうほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とする。
【0032】
本実施形態においては、第1角度α1は、5°以上50°以下である。なお、本発明において、第1角度α1の絶対値は、5°以上50°以下であることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態においては、図3に示す第2角度α2および第3角度α3を定義している。図中の水平な一点鎖線の直線は、径方向rに沿った直線である。根元部21に沿って延びる一点鎖線の直線は、根元部21の全体形状に基づく平均的な中心線である。図示された例においては、根元部21は、図中斜めに延びる直線形状の断面を有している。このため、根元部21の中心線は、内面211と外面222との間に位置する直線となっている。先端部22に沿って延びる一点鎖線の直線は、先端部22の全体形状に基づく平均的な中心線である。図示された例においては、先端部22は、図中斜めに延びる直線形状の断面を有している。このため、先端部22の中心線は、内面221と外面222との間に位置する直線となっている。なお、根元部21および先端部22がなだらかに屈曲したり湾曲したりした形状であっても、その全体形状に基づいて、幾何的に平均的な中心線が適宜決定されればよい。
【0034】
第2角度α2は、径方向rと根元部21(根元部21の中心線)とがなす角度であり、径方向外側に位置するほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とする。第2角度α2は、いわゆる仰角に相当する角度である。根元部21が径方向rに対して平行である場合、第2角度α2は、0°である。第3角度α3は、根元部21(根元部21の中心線)と先端部22(先端部22の中心線)とがなす角度であり、径方向外側に位置するほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とする。第3角度α3は、いわゆる仰角に相当する角度である。先端部22が径方向rに対して平行である場合、第3角度α3は、0°である。
【0035】
本実施形態においては、第2角度α2の絶対値は、0°以上50°以下である。また、第3角度α3の絶対値は、60°以上100°以下である。
【0036】
また、本実施形態においては、図4に示す第4角度α4を定義している。先端部22に沿って延びる一点鎖線の直線は、先端部22の全体形状に基づく平均的な中心線である。図示された例においては、22は、図中斜めに延びる直線形状の断面を有している。このため、先端部22の中心線は、内面221と外面222との間に位置する直線となっている。なお、先端部22がなだらかに屈曲したり湾曲したりした形状であっても、その全体形状に基づいて、幾何的に平均的な中心線が適宜決定されればよい。
【0037】
第4角度α4は、軸方向z視において周方向θと先端部22とがなす角度であり、周方向θにおける回転前方に向かうほど径方向r内方に位置するように傾く場合を正とする。
【0038】
本実施形態においては、第4角度α4の絶対値は、0°以上25°以下である。
【0039】
次に、攪拌羽根A1および攪拌装置B1の作用について説明する。
【0040】
本実施形態においては、羽根部2は、根元部21および先端部22を有する。根元部21は、周方向θに対して第1角度α1が正の角度となるように傾いて設けられている。発明者の試験や解析によれは、この根元部21を設けることにより、容器81内において高粘度である対象物体Tの混合を効率よく促進するのに好ましいことが分かった。また、第3角度α3をなす先端部22を設けることおよび、第4角度α4が上述した角度となるように設けられることにより、混合を促進しつつ、分散を促進することが可能であることがわかった。すなわち、発明者は、試験および解析の結果、高度な混合を達成しつつ、十分な分散を得るには、第1角度α1と第3角度α3および第4角度α4との関係が重要であることを見出した。
【0041】
図6(a)は、攪拌羽根A1の流体解析における表面近傍の速度勾配の分布を表している。特に、先端部22において、速度勾配が高い領域が認められる。この速度勾配が高い領域がより広く、速度勾配の値が高いほど、先端部22近傍において対象物体Tに生じるせん断応力を高めることが可能である。せん断応力を増大させることにより、高粘度である対象物体Tにおける分散を促進することができる。図6(b)は、先端部22を設けない場合の比較例を示している。この比較例Xにおいては、攪拌羽根A1において先端部22となっている部分が、根元部21の一部として取り込まれていて、羽根部2の径方向rの大きさは、攪拌羽根A1と同じになるよう短くしてある。この比較例Xの表面近傍の速度勾配の最高値は攪拌羽根A1よりも低い。
【0042】
また、種々の第1角度α1および第3角度α3の組合せについて、図6に示す速度勾配分布を求めた後に、その評価を行った結果、上述した高度な混合を達成しつつ、十分な分散を得るには、第3角度α3の絶対値が、60°以上100°以下であることが条件となることを見出した。また、このような良好な状態を得るためには、第4角度α4の絶対値が0°以上25°以下であることが、条件となるという知見を得た。
【0043】
特に、第3角度α3絶対値が、60°以上100°以下であると、先端部22は、根元部21よりも軸方向zに沿ってより起立した姿勢となっている。この先端部22が、第4角度α4の絶対値が0°以上25°以下となるように設定されている。これにより、攪拌羽根A1が回転している状態において、先端部22は、対象物体Tを掻き混ぜる挙動よりも、対象物体Tと擦れ合う(摩擦する)挙動が顕著となる。この結果、先端部22の近傍における速度勾配をより高めることが可能であり、分散の促進を図ることができる。また、先端部22が起立した姿勢であることにより、攪拌羽根A1の最大外径が縮小される。これにより、攪拌羽根A1を回転駆動するために要する駆動力を低下させることが可能であり、省エネルギー化を図ることができる。このように、攪拌羽根A1によれば、高粘度である対象物体Tの分散および混合の高度化を図ることができる。
【0044】
さらに、良好な速度勾配の分布を得るためには、第1角度α1は、5°以上50°以下であることが好ましい。
【0045】
図7図28は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0046】
<第1実施形態 第1変形例>
図7は、攪拌羽根A1の第1変形例を示している。本変形例の攪拌羽根A11は、第2角度α2および第3角度α3が、ともに負の値となっている。ただし、第2角度α2の絶対値は、0°以上50°以下であり、第3角度α3の絶対値は、60°以上100°以下である。
【0047】
<第1実施形態 第2変形例>
図8は、攪拌羽根A1の第2変形例を示している。本変形例の攪拌羽根A11は、第2角度α2が正の値であり、第3角度α3が負の値となっている。ただし、第2角度α2の絶対値は、0°以上50°以下であり、第3角度α3の絶対値は、60°以上100°以下である。
【0048】
<第1実施形態 第3変形例>
図9は、攪拌羽根A1の第2変形例を示している。本変形例の攪拌羽根A11は、第2角度α2が負の値であり、第3角度α3が正の値となっている。ただし、第2角度α2の絶対値は、0°以上50°以下であり、第3角度α3の絶対値は、60°以上100°以下である。
【0049】
攪拌羽根A11~攪拌羽根A13を用いて攪拌装置B1を構成した場合であっても、攪拌羽根A1を用いた場合と同様に、上述した良好な混合および分散が得られた。
【0050】
<第2実施形態>
図10図14は、本発明の第2実施形態に係る攪拌羽根を示している。
【0051】
図10は、攪拌羽根A2を示す斜視図である。図11は、攪拌羽根A2を示す平面図である。図12は、攪拌羽根A2を示す正面図である。図13は、図11のXIV-XIV線に沿う断面図である。図14は、図11のXV-XV線に沿う断面図である。
【0052】
攪拌羽根A2においては、攪拌羽根A2を回転軸82に取り付けるための構造として、基部1に取付孔19が設けられている。攪拌羽根A2の大きさは特に限定されず、本実施形態においては、攪拌羽根A2の直径が、40mm程度である。
【0053】
本実施形態の基部1は、径方向rおよび周方向θに沿った形状であって軸方向zに対して直角である平板状である。また、図示された例においては、基部1は、軸方向z視において略三角形状である。
【0054】
基部1は、上面11および下面12を有する。上面11は、基部1のうち軸方向zにおいて上方を向く面である。下面12は、基部1のうち軸方向zにおいて下方を向く面である。
【0055】
攪拌羽根A2においては、基部1および羽根部2が一体的な金属板材料に切断加工および折り曲げ加工を施すことによって形成されている。このため、基部1と根元部21との境界には、第1境界部23が設けられており、根元部21と先端部22との境界には、第2境界部24が設けられている。
【0056】
本実施形態においても、第1角度α1、第2角度α2、第3角度α3および第4角度α4の大きさは、上述した攪拌羽根A1における大きさと同様の大きさに設定される。
【0057】
また、本実施形態では、図11に示す第1副角度β1および第2副角度β2を定義している。図中、それぞれの羽根部2に沿って延びる一点鎖線の矢印線は、羽根部2が延びる方向(当該羽根部2が延びる方向に一致する径方向r)である。第1境界部23に沿って延びる一点鎖線の直線は、第1境界部23の全体形状に基づく平均的な中心線である。図示された例においては、第1境界部23は、直線形状の形状である。このため、第1境界部23の中心線は、第1境界部23の全体と重なる直線となっている。第2境界部24に沿って延びる一点鎖線の直線は、第2境界部24の全体形状に基づく平均的な中心線である。図示された例においては、第2境界部24は、直線形状である。このため、第2境界部24の中心線は、第2境界部24の全体と重なる直線となっている。なお、第1境界部23および第2境界部24がなだらかに屈曲したり湾曲したりした形状であっても、その全体形状に基づいて、幾何的に平均的な中心線が適宜決定されればよい。
【0058】
第1副角度β1は、軸方向z視において径方向r(一点鎖線の矢印線)と第1境界部23(第1境界部23の中心線)とがなす角度である。第1境界部23が周方向θに沿っており径方向rに対して直角である場合、第1副角度β1は、90°である。第2副角度β2は、軸方向z視において径方向r(一点鎖線の矢印線)と第2境界部24(第2境界部24の中心線)とがなす角度である。第2境界部24が周方向θに沿っており径方向rに対して直角である場合、第2副角度β2は、90°である。また、第1副角度β1および第2副角度β2は、軸方向z視において第1境界部23および第2境界部24が軸方向z(回転方向)後方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いている場合に正の値をとり、逆の場合に負の値をとる。
【0059】
本実施形態においては、第1副角度β1の絶対値は、20°以上80°以下である。また、第2副角度β2の絶対値は、第1副角度β1よりも大きい。
【0060】
本実施形態によっても、図7に示した攪拌羽根A1と同様の効果を奏し、高粘度である対象物体Tの分散および混合の高度化を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態において、第1副角度β1が、20°以上80°以下である場合、根元部21が、軸方向z視において周方向θ(回転方向)に対してねじれた姿勢となり、図11から理解されるように、攪拌羽根A2が回転すると、根元部21が対象物体Tを周方向θ外方に押しやる格好となる。また、図14から理解されるように、第2角度α1が設定されていることにより、攪拌羽根A2が回転すると、根元部21が対象物体Tを軸方向z下方に押しやる格好となる。この結果、図5に示すように、攪拌羽根A2の回転により、対象物体Tには、攪拌羽根A2から容器81の底部に向かって斜め下方に向かう流動が生じる。そして、これが容器81の底部や側壁部に沿って進行することにより、容器81内において対象物体Tが大きく流動する。この結果、対象物体Tの混合を促進することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、第2副角度β2の絶対値は、第1副角度β1よりも大きい。これにより、図11から理解されるように、先端部22は、根元部21よりも周方向θに沿った姿勢となる。この結果、先端部22は、根元部21と比べて対象物体Tを押しやる(混合する)機能が小さく、対象物体Tとの擦れ合い(摩擦)が大きい部位となる。これは、先端部22の近傍において対象物体Tの速度勾配(せん断応力)を向上させ、対象物体Tの分散を促進するのに好ましい。
また、先端部22は、先端折り曲げにより羽根の速度の速い部分の面積が増す効果以上の分散力の向上効果を発現することが確認されている。具体的には、図10に示す本実施形態の先端を折り曲げた攪拌羽根A2と図16に示す先端を折り曲げていない攪拌羽根A2′の2つの攪拌羽根を用いて、実際に分散の試験を行った。攪拌羽根A2と攪拌羽根A2′の展開形状は同じで、先端を折り曲げているかいないかの違いだけである。攪拌羽根A2′は先端を折り曲げていない分、攪拌羽根A2より径方向の大きさrは大きい。ここで、両者について、同じ回転速度で分散テストを行ったところ、対象物体Tに含まれる粒子の到達粒子径は攪拌羽根A2と攪拌羽根A2′ともほぼ同じであったが、攪拌に要したエネルギーは、攪拌羽根A2より 攪拌羽根A2′の方が約2割高かった。攪拌羽根A2も攪拌羽根A2′も展開形状が同じなので羽根の表面積は同じであり、同じ回転速度でテストを行ったため、羽根径の大きい攪拌羽根A2′の方が羽根先端の速度が速い。一般に、羽根の速度が早いほど、攪拌エネルギーが高いほど、分散が早く進むことが知られているが、攪拌羽根A2と攪拌羽根A2′の到達粒子径はほぼ同じであった。羽根の先端を折り曲げると、同じ羽根径の先端を折り曲げていない羽根と比べて速度の速い部分の面積が広くなり、分散力の向上が期待できるが、この実験の結果から、先端を折り曲げることにより、単に羽根の速度と面積の効果以上の分散力の向上効果があることが確認できた。
なお、先端部22の先端折り曲げによる上記分散力の向上効果は、本実施形態に限定されるものではなく、前述の第1実施形態及び後述の第3実施形態~第5実施形態の先端部22においても同様に発現される。
【0063】
<第2実施形態 変形例>
図17の(a)~(c)は、攪拌羽根A2の変形例を示している。同図(a)に示す例においては、根元部21および先端部22の断面形状がそれぞれ湾曲している。根元部21は、内面211側が凸となるように緩やかに湾曲している。先端部22は、外面222側が凸となるように緩やかに湾曲している。このような例であっても、根元部21および先端部22のそれぞれの全体形状から、幾何学的な中心線として、図中の一点鎖線で示す中心線を設定可能であり、第2角度α2および第3角度α3をそれぞれ定義可能である。なお、根元部21および先端部22が湾曲する向きや程度は一例であり、それぞれが他の態様で湾曲していてもよい。
【0064】
同図(b)に示す例においては、内面211および外面212がそれぞれ厚さ方向の外方に湾曲している。言い換えると、根元部21は、中央部分の厚さが相対的に厚い形状である。また、内面221および外面222は、それぞれが厚さ方向の内方に湾曲している。言い換えると、先端部22は、中央部分の厚さが相対的に薄い形状である。このような例であっても、根元部21および先端部22のそれぞれの全体形状から、幾何学的な中心線として、図中の一点鎖線で示す中心線を設定可能であり、第2角度α2および第3角度α3をそれぞれ定義可能である。なお、内面211、外面212、内面221および外面222が湾曲する向きや程度は一例であり、それぞれが他の態様で湾曲していてもよい。
【0065】
同図(c)に示す例においては、基部1の断面形状が蛇行した形状である。基部1がこのような形状であっても、第2角度α2は、径方向rと根元部21とがなす角度として定義される。また、基部1の形状は、上述した本願で意図した効果を奏する範囲において、様々な形状を採用可能である。これらの点は、攪拌羽根A1および以降の実施形態においても同様である。
【0066】
<第3実施形態>
図18図22は、本発明の第3実施形態に係る攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A3は、複数の羽根部2の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0067】
図18は、攪拌羽根A3を示す斜視図である。図19は、攪拌羽根A3を示す平面図である。図20は、攪拌羽根A3を示す正面図である。図21は、図19のXXI-XXI線に沿う断面図である。図22は、図19のXXII-XXII線に沿う断面図である。
【0068】
攪拌羽根A3は、4つの羽根部2を備えている。なお、以降に説明する攪拌羽根A3の構成として、羽根部2の個数は4に限定されない。本実施形態で意図した構成に適した羽根部2の個数としては、4以上の偶数が挙げられる。複数の羽根部2は、2つの第1羽根部2Aと2つの第1羽根部2Bとを含む。
【0069】
第1羽根部2Aおよび第1羽根部2Bは、それぞれ攪拌羽根A2で説明したように根元部21および先端部22を有しており、第2角度α2、第3角度α3、第4角度α4、第1副角度β1および第2副角度β2がそれぞれ定義される。図19に示すように、2つの第1羽根部2Aと、2つの第1羽根部2Bとは、互いに交互に配置されている。すなわち、第1羽根部2Aは隣り合う第1羽根部2Bの間に配置されており、第1羽根部2Bは隣り合う第1羽根部2Aの間に配置されている。
【0070】
図21および図22に示すように、第1羽根部2Aの第2角度α2は、第1羽根部2Bの第2角度α2よりも大きい。これに対応して、第1羽根部2Aの先端部22の先端部分は、第1羽根部2Bの先端部22の先端部分よりも、軸方向zにおいて上方に位置している。
【0071】
本実施形態によっても、上述した攪拌羽根A2と同様の効果が得られ、高粘度である対象物体Tの分散および混合の高度化を図ることができる。また、発明者の試験によると、互いの第2角度α2が異なる第1羽根部2Aと第1羽根部2Bとを交互に配置することにより、対象物体Tの混合をより促進することが可能であるという知見が得られた。これにより、対象物体Tの攪拌に要する時間を短縮することができる。
【0072】
<第4実施形態>
図23図27は、本発明の第4実施形態に係る攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A4は、複数の羽根部2の構成が上述した実施形態と異なっている。
【0073】
図23は、攪拌羽根A4を示す斜視図である。図24は、攪拌羽根A4を示す平面図である。図25は、攪拌羽根A4を示す正面図である。図26は、図24のXVI-XVI線に沿う断面図である。図27は、図24のXVII-XVII線に沿う断面図である。
【0074】
本実施形態の複数の羽根部2は、複数の第1羽根部2Aおよび複数の第2羽根部2Cを含む。複数の第1羽根部2Aおよび複数の第2羽根部2Cの個数は特に限定されず、図示された例においては、2つの第1羽根部2Aと2つの第2羽根部2Cとが含まれている。なお、第1羽根部2Aと第2羽根部2Cとの個数は、同数の偶数であることが好ましい。
【0075】
第1羽根部2Aは、上述した攪拌羽根A2および攪拌羽根A3における第1羽根部2Aと同様の構成である。第2羽根部2Cは、境界部25を介して基部1に繋がっており、全体が平坦な形状である。
【0076】
図24に示すように、軸方向z視において境界部25が径方向rとなす角度であるβ3は、たとえば第1羽根部2Aの第1副角度β1と同じ角度に設定される。
【0077】
図27に示すように、第2羽根部2Cの全体形状に基づく平均的な中心線と径方向rとがなす角度を第5角度α5と定義する。第5角度α5は、たとえば第2角度α2と同じ角度範囲とされ、具体的にはたとえば第2角度α2と同じ角度に設定される。
【0078】
本実施形態によっても、上述した攪拌羽根A2と同様の効果が得られ、高粘度である対象物体Tの分散および混合の高度化を図ることができる。また、発明者の試験によると、4つの羽根部2が同じ角度および大きさの第1羽根部2Aを含んでいる場合、特定の条件(対象物体Tの粘度や回転速度等)において、第1羽根部2Aの先端部22(たとえば内面221)近傍に泡が継続的に滞留する現象が生じた。これにより、分散能力の低下が確認された。これは、4つの第1羽根部2Aの先端部22が対象物体Tの同じ箇所を通過し続ける場合に、顕著である可能性が見出された。本実施形態によれば、第1羽根部2Aの隣には第2羽根部2Cが配置されており、先端部22が連続して存在する形態ではない。これにより、対象物体Tのある部分に着目すると、その部分をある先端部22が通過すると、直後に当該先端部22とは離れた位置を第2羽根部2Cの先端が通過する。これが交互に繰り返されることにより、先端部22の近傍に存在する泡が、第2羽根部2Cの通過によって第2羽根部2C側に引き込まれるような挙動を呈する。この結果、先端部22の近傍に泡が継続的に滞留する現象を抑制することが可能であり、分散能力の向上を図ることができる。
【0079】
<第5実施形態>
図28は、本発明の第5実施形態に係る攪拌羽根を示している。本実施形態の攪拌羽根A5は、第1副角度β1、第2副角度β2、第3副角度β3が軸方向z視において第1境界部23、第2境界部24、第3境界部25が軸方向z(回転方向)前方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いており、負の値をとる。本実施形態の攪拌羽根A5のその他の構成については、上述した第4実施形態に係る攪拌羽根A4と同じである。
【0080】
図28は、攪拌羽根A5を示す斜視図である。
【0081】
本実施形態の複数の羽根部2は、複数の第1羽根部2Aおよび複数の第2羽根部2Cを含む。複数の第1羽根部2Aおよび複数の第2羽根部2Cの個数は特に限定されず、図示された例においては、2つの第1羽根部2Aと2つの第2羽根部2Cとが含まれている。
【0082】
本実施形態によっても、上述した攪拌羽根A2と同様の効果が得られ、高粘度である対象物体Tの分散および混合の高度化を図ることができる。また、発明者の試験によると、分散力の向上と、高粘度物の流動に理想的なフローパターンの両立が可能となることが分かった。この点について、以下に詳述する。
【0083】
すなわち、攪拌羽根の第1角度α1が正の値のとき、対象物体Tのフローパターンが図29中の(1)に示すようになるが、対象物体Tの粘度が上がると、対象物体Tの液面の容器淵部分から流動が悪くなっていく。しかし攪拌羽根からの対象物体Tの吐出方向を斜め上方向にすると、同図中の(2)の様なフローパターンとなり液面の容器淵の流動性が向上することがわかった。また、液面では容器淵から中心方向へ向かう流れとなり、中心部から攪拌羽根へ向かって対象物体Tが引き込まれていくため、例えば、粉体等を対象物体Tに投入する際には容器淵に粉体等が付着しにくく、効率よく粉体を対象物体T内に引き込むことができる。
第1角度α1を負の値にすることで対象物体Tを斜め上方向へ吐出することができるが、分散力を向上する先端の折り曲げ部があると横方向への流れが強くなり、同図中の(3)の様なフローパターンになってしまい理想的な斜め上方向の流れとはならない。そこで、本実施形態の攪拌羽根A5のように先端の折り曲げの無い第2羽根部2Cを設け、上方向への流れを強めて吐出方向を調整することにより、同図中の(2)の様に理想的なフローパターンを作ることができる。このように、先端を折り曲げて分散力を高めた第1羽根部2Aと、吐出方向を調整する先端を折り曲げない第2羽根部2Cとの組み合わせにより、分散力の向上と、高粘度物の流動に理想的なフローパターンの両立が可能となる。
【0084】
本発明に係る攪拌羽根および攪拌装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る攪拌羽根および攪拌装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0085】
A1,A11,A13,A2,A2′,A3,A4,A5:攪拌羽根
B1 :攪拌装置
1 :基部
2 :羽根部
2A :第1羽根部
2B :第1羽根部
2C :第2羽根部
11 :上面
12 :下面
19 :取付孔
21 :根元部
22 :先端部
23 :第1境界部
24 :第2境界部
25 :第3境界部
81 :容器
82 :回転軸
83 :駆動部
211 :内面
212 :外面
221 :内面
222 :外面
α1 :第1角度
α2 :第2角度
α3 :第3角度
α4 :第4角度
α5 :第5角度
β1 :第1副角度
β2 :第2副角度
β3 :第3副角度
T :対象物体
r :径方向
z :軸方向
θ :周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29