(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】光放射の検出を改善するための構造化基板および同構造化基板に関する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220602BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220602BHJP
C12Q 1/682 20180101ALI20220602BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20220602BHJP
C40B 30/04 20060101ALI20220602BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220602BHJP
G01N 21/41 20060101ALN20220602BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N15/09 200
C12Q1/682 Z
C12Q1/6837 Z
C40B30/04
G01N21/64 F
G01N21/41 102
(21)【出願番号】P 2016537009
(86)(22)【出願日】2014-12-23
(86)【国際出願番号】 US2014072256
(87)【国際公開番号】W WO2015100373
(87)【国際公開日】2015-07-02
【審査請求日】2017-12-19
【審判番号】
【審判請求日】2019-10-02
(32)【優先日】2013-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】シェーン エム ボウエン
(72)【発明者】
【氏名】バラ ムラリ ヴェンカテサン
(72)【発明者】
【氏名】フイ ハン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン リュウ
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】宮岡 真衣
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/063382(WO,A2)
【文献】精密工学会誌,2008年,Vol.74,No.8,799-803頁
【文献】Nano letters,2011年,Vol.11,5060-5065頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M1/00-3/10
C12N15/00-15/90
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580(JDREAMIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の反応キャビティを有する平坦な表面を有し、前記複数の反応キャビティは間隙領域により互いに分離されている、固体支持体と、
(b
)同一の形態を有するプラズモンナノ構造が複数配置されており、
前記のプラズモンナノ構造
はプラズモン共鳴材で形成されるものであり、
各反応キャビティ内に配置され、対応する反応キャビティ内に伝播する電磁エネルギーを増幅するか、または対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するように構成されたアンサンブル増幅器を形成する
、プラズモンナノ構造であって、
前記アンサンブル増幅器を形成するプラズモンナノ構造は、それぞれ、対応するアンサンブル増幅器を形成する他のプラズモンナノ構造に対し、予め決められた位置を有し、前記プラズモンナノ構造は、ボウタイナノアンテナ、ナノロッド、ナノリング、ナノプラグ、またはナノ格子の形態を有
する、プラズモンナノ構造と、
(c)前
記プラズモンナノ構造を覆う層を形成するゲル材料と、
(d)前記ゲル材料に結合されるプライマー核酸と、を含む、アレイ。
【請求項2】
前記プラズモンナノ構造は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、および、ヒ化ガリウムからなる群から選択した物質を含む、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
(a)請求項1
のアレイを提供するステップと、
(b)標的核酸のライブラリを前記ゲル材料に送達して、前記ゲル材料に核酸フィーチャのアレイを生成するステップと、
(
c)前記アレイを、前記標的核酸に結合する少なくとも1つの蛍光標識プローブと接触させるステップと、
(
d)前記アレイ上の蛍光シグナルを検出し、前記少なくとも1つのプローブに結合する前記標的核酸を識別するステップを含む、核酸を検出する方法。
【請求項4】
前記
プラズモンナノ構造は、銀、金、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、および、ヒ化ガリウムからなる群から選択した物質を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記固体支持体はフローセルの表面を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光標識プローブは蛍光標識ヌクレオチドを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項7】
検出するステップは、各フィーチャの標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションの検出を含む、または検出するステップは、各フィーチャの標的核酸へのヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドプローブの導入の検出を含む、
のうち少なくとも1つを満たす、請求項
3に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲル材料はヒドロゲルを含む、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
前記固体支持体はフローセルの表面を含む、請求項1に記載のアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2013年12月23日に出願された米国仮特許出願第61/920244号明細書(題名「局所表面プラズモン共鳴を用いた増強遺伝子クラスタ蛍光(ENHANCING DNA CLUSTER FLUORSCENCE USING LOCALIZED SURFACE PLASMON RESONANCE)」)の利益を主張するものであり、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、生物学的または化学的な分析に関し、より詳細には、反応部位からの光放射を検出するシステムおよび方法に関する。
【0003】
生物学的または化学的研究における種々のプロトコルには、支持体表面の局所領域または反応キャビティ内で多数の制御反応を行うステップを含む。指定された反応がその後観察または検出され、それに続く分析が、反応に関わる化学物質の性質を特定または明らかにするのに役立ち得る。例えば、一部のマルチプレックスアッセイでは、特定可能な標識(例えば、蛍光標識)を持つ未知の検体を、制御条件下で何千という既知のプローブに露呈させることができる。既知の各プローブは、マイクロプレートの対応するウェルに置くことができる。ウェル内で既知のプローブおよび未知の検体の間で起きる任意の化学反応を観察することは、検体の性質を特定または明らかにするのに役立ち得る。
【0004】
反応部位のアレイからの光放射を検出する他のプロトコルには、合成によるシーケンシング(sequencing-by-synthesis、SBS)など既知のDNA配列決定プロトコルを含む。SBSでは複数の蛍光標識ヌクレオチドを用い、基板の表面に位置する増幅DNAの多数のクラスタ(またはクローン集団)の核酸配列を決定する。表面は、例えば、フローセルのチャネルを定義し得る。異なるクラスタの核酸配列は、蛍光標識ヌクレオチドをクラスタに加え、その後、光源により励起させ光放射を提供するというサイクルを多数行うことにより決定される。
【0005】
現在用いられる配列決定システムは、ヌクレオチドの特定および核酸配列の決定には効果的であるが、よりコスト効果のある、および/または、さらに少ないエラー率を達成するシステムが望まれる。例えば、反応部位の密度を高めることが望まれる。しかしながら、配列決定法および対応するシステムは、複雑な技術の集合を利用する。これらの技術の一部の改善は、実質的なコスト削減を提供することが分かっている。しかしながら、あったとしても、何れがコスト削減の改善に適しているかを予想することは困難である。配列技術システムの技術間に依存関係がある場合、何れが、方法またはシステム全体の性能に悪影響を及ぼすことなく修正可能であるかを予測することはさらに困難である。
【0006】
多くのシステムおよびプロトコルが直面する1つの課題は、適度な信頼度で光放射を生成する指定の反応を検出することである。この課題は、反応部位がより小さく、反応部位の密度がより高くなると、さらに困難になる。反応部位がもたらす1つの結果がより小さくなることは、生成された光放射量もより小さくなるということである。さらに、反応部位の密度が高くなると、どの反応部位が光放射を提供しているかを識別することがより難しくなり得る。上記に加え、一般に、光放射を検出するのに使用する時間(スキャンタイムまたはイメージタイムともいう)を縮小することが望まれる。スキャンタイムが減少すると検出される光子がより少なくなり、それにより、指定の反応の発生を示す光放射を確実に検出することがさらに難しくなる。
【0007】
したがって、反応部位のアレイ内で指定の反応を検出するのに十分な量の光を生成する装置、システム、および方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本明細書には、構造基板、および、離散した反応部位により提供される光放射の検出能を改善する構造基板の製造方法を示す。例えば、該構造基板は、離散した部位で生物学的物質が経験する励起光の強度を増大することができ、生物学的物質からの光放射の強度を増大することができ、および/または、光放射の方向性を制御することができる。本明細書には、離散した部位のアレイからの光放射を検出する方法も示す。離散した部位は、基板体または装置基板の表面に沿った局所領域内に形成される反応キャビティとすることができる。光放射は、例えば、蛍光、化学光放射、生物光放射、エレクトロルミネセンス、放射線ルミネセンスなどにより生成することができる。本明細書には、既知のシステムより密度がより高い離散した部位(または、間のピッチがより小さい隣接する部位)を有する構造基板、および、該構造基板の製造方法も示す。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法および構造基板は、蛍光標識試料、より具体的には蛍光標識核酸の光放射を高めるように構成することができる。特定の実施形態において、本明細書に示す方法および組成物は、色素標識ヌクレオチドを含む合成反応により配列決定する際に、DNAクラスタの蛍光増強を提供する。しかしながら、本明細書に記載の方法および装置は、他の用途にも適し得ることを理解すべきである。
【0010】
一部の実施形態では、表面における蛍光増強用の方法および組成物を提供する。該方法および組成物は、固体支持体上の標識核酸の蛍光強度を増大するのに適している。特定の実施形態において、本明細書に示す方法および組成物は、色素標識ヌクレオチドを含む合成によるシーケンシング反応において、DNAクラスタの蛍光増強を提供する。
【0011】
したがって、本明細書に示す一実施形態は、固体支持体に分布させた複数のナノ粒子と、複数のナノ粒子に関連して層を形成するゲル材料と、ゲル材料内に標的核酸ライブラリとを含む基板である。ある実施形態において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材で形成する。ある実施形態において、プラズモン共鳴材は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、シリコン(Si)(例えば、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン)、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。ある実施形態において、ゲル材料はナノ粒子を覆う。ある実施形態において、固体支持体はフローセルの表面を含む。ある実施形態において、固体支持体は複数のウェル(または反応キャビティ)を有する平坦な表面を含み、該複数のウェル内にナノ粒子を分布させる。
【0012】
本明細書には、基板を作成する方法であって、(a)平坦な表面を含む固体支持体を提供するステップと、(b)複数のナノ粒子を固体支持体の表面に分散させるステップと、(c)固体支持体の少なくとも一部をゲル材料でコーティングすることにより、複数のナノ粒子を覆うゲル層を形成するステップを含む方法も示す。ある実施形態において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材で形成する。この方法のある実施形態では、ステップ(b)とステップ(c)は同時に行う。ある実施形態では、ステップ(b)はステップ(c)の前に行う。ある実施形態では、該方法はさらに、(d)標的核酸ライブラリをゲル材料に運び、ゲル材料に核酸フィーチャのアレイを生成するステップを含むことが可能である。一部の実施形態において、各フィーチャは異なる核酸種を含む。ある実施形態において、プラズモン共鳴材は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、シリコン(Si)(例えば、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン)、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。
【0013】
本明細書には、核酸を検出する方法であって、複数のナノ粒子と、複数のナノ粒子を覆う層を形成するゲル材料と、ゲル材料内に標的核酸ライブラリとを含む固体支持体を提供するステップと、標的核酸に結合する少なくとも1つの蛍光標識プローブを固体支持体と接触させるステップと、固体支持体上の蛍光シグナルを検出して、少なくとも1つのプローブに結合する標的核酸を識別するステップとを含む方法も示す。ある実施形態において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材で形成する。ある実施形態において、プラズモン共鳴材は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、シリコン(Si)(例えば、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン)、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。ある実施形態において、固体支持体はフローセルの表面を含む。ある実施形態において、固体支持体は複数のウェル(または反応キャビティ)を有する平坦な表面を含み、複数のウェル間にナノ粒子を分布させる。ある実施形態において、蛍光標識プローブは蛍光標識ヌクレオチドを含む。ある実施形態において、蛍光標識プローブは蛍光標識オリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態において、検出するステップは、各フィーチャにおける、オリゴヌクレオチドプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションの検出を含む。ある実施形態において、検出するステップは、各フィーチャにおける、ヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドのプローブの標的核酸への導入の検出を含む。
【0014】
本明細書には、表面を含む固体支持体と、間隙領域により互いに分離した複数のウェル(または反応キャビティ)を含む表面と、前記複数のウェルそれぞれに複数のナノ構造とを含むアレイも示す。ある実施形態において、ナノ構造はプラズモンナノ構造である。ある実施形態において、ナノ構造はウェルの底に位置する。ある実施形態において、ナノ構造はウェルの壁に沿って位置する。ある実施形態において、間隙領域は、実質的にナノ構造を欠く。ある実施形態において、ナノ構造はナノ粒子を含む。ある実施形態において、ナノ粒子は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは100nm超の直径を有する。ある実施形態において、ナノ粒子は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、または1nm未満の直径を有する。ある実施形態において、ナノ粒子はウェル内にダイマーまたはトライマーを含む。ある実施形態において、ナノ構造はボウタイナノアンテナを含む。ある実施形態において、ナノ構造はナノロッドを含む。ある実施形態において、ナノ構造はナノリングを含む。ある実施形態において、ナノ構造はナノプラグを含む。ある実施形態において、ナノ構造はナノ格子を含む。ある実施形態において、ウェルはさらにゲル材料を含む。ある実施形態において、ゲル材料はヒドロゲルを含む。ある実施形態において、固体支持体はフローセルの表面を含む。
【0015】
本明細書には、アレイを作成する方法であって、平坦な表面を含む固体支持体を得るステップであって、表面が複数のウェル(または反応キャビティ)を含み、ウェルは間隙領域により互いに分離しているステップと、固体支持体に金属膜をコーティングするステップと、金属膜を熱アニールプロセスにかけることにより、前記複数のウェルのそれぞれに複数のナノ構造を形成するステップとを含む方法も示す。ある実施形態において、ナノ構造はプラズモン共鳴材で形成する。ある実施形態において、該方法はさらに、平坦な表面を磨いてナノ構造を間隙領域から実質的に取り除き、ウェル内のナノ構造は維持するステップを含む。ある実施形態において、該方法はさらに、固体支持体の少なくとも一部をゲル材料でコーティングすることにより、複数のウェル内にゲル材料を付着させるステップを含む。ある実施形態において、ナノ構造は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、シリコン(Si)(例えば、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン)、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。
【0016】
本明細書には、核酸を検出する方法であって、複数のウェルを含む平坦な表面であって、該ウェルは間隙領域により互いに分離している表面と、前記複数のウェルそれぞれにあるナノ構造と、複数のナノ構造を覆って層を形成するゲル材料と、ゲル材料内に標的核酸ライブラリとを含む固体支持体を提供するステップと、標的核酸に結合する少なくとも1つの蛍光標識プローブを固体支持体と接触させるステップと、固体支持体上の蛍光シグナルを検出して、少なくとも1つのプローブに結合する標的核酸を識別するステップとを含む方法も示す。ある実施形態において、ナノ構造はプラズモン共鳴材で形成する。ある実施形態において、ナノ構造は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、シリコン(Si)(例えば、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン)、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。ある実施形態において、ナノ構造はウェルの底に位置する。ある実施形態において、ナノ構造はウェルの壁に沿って位置する。ある実施形態において、間隙領域は、実質的にナノ構造を欠く。ある実施形態において、ウェルはさらにゲル材料を含む。ある実施形態において、ゲル材料はヒドロゲルを含む。ある実施形態において、固体支持体はフローセルの表面を含む。ある実施形態において、蛍光標識プローブは蛍光標識ヌクレオチドを含む。ある実施形態において、蛍光標識プローブは蛍光標識オリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態において、検出するステップは、各フィーチャにおける、オリゴヌクレオチドプローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションの検出を含む。ある実施形態において、検出は、各フィーチャにおけるヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドのプローブの標的核酸への導入の検出を含む。
【0017】
一実施形態において、構造基板を提供する。構造基板は、アクティブ側を有する基板体を含む。基板体は、アクティブ側に沿って開口した反応キャビティと、反応キャビティを分離する間隙領域を含む。構造基板は、それぞれの反応キャビティ内に位置するアンサンブル増幅器を含む。アンサンブル増幅器は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成した複数のナノ構造を含む。
【0018】
一実施形態において、構造基板を製造する方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース層のベース側に沿ってナノ構造を形成するステップを含む。該方法はまた、ベース側の上に積み重ねられたキャビティ層を形成するステップを含む。キャビティ層は複数の反応キャビティを含み、各反応キャビティはその中に複数のナノ構造を含む。複数のナノ構造は対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成し、これは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0019】
一実施形態において、構造基板を製造する方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース層のベース側に沿ってナノ構造を形成するステップを含む。該方法はまた、ナノ構造のアレイの上にナノインプリントリソグラフィ(NIL)を提供するステップを含む。該方法はまた、NIL層に反応キャビティのアレイをインプリントするステップを含み、ここでナノ構造の異なるサブアレイが、各反応キャビティの下に位置する。ナノ構造の各サブアレイは、NIL層の各充填領域で取り囲む。該方法はまた、NIL層の各充填領域を取り除き、対応する反応キャビティ内にあるナノ構造のサブアレイを露呈させるステップを含む。各反応キャビティ内にあるナノ構造のサブアレイは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成した、対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成する。
【0020】
一実施形態において、構造基板を製造する方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース層のベース側に沿ってナノインプリントリソグラフィ(NIL)層を提供するステップを含む。該方法はまた、NIL層をインプリントして、ベース部と、該ベース部から突き出たナノ体のアレイを形成するステップを含む。該方法はまた、ナノ体を覆うプラズモン共鳴フィルムを付着させ複数のナノ構造を形成するステップを含む。各ナノ構造は、対応するナノ体とプラズモン共鳴フィルムの一部を含む。該方法はまた、複数の反応キャビティを含むキャビティ層を形成するステップを含み、ここで各反応キャビティは、その中に複数のナノ構造を含む。複数のナノ構造は対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成し、これは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0021】
一つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、目的、及び特長は、説明および図面、ならびに、特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】表面における蛍光増強のための例示的方法を示す図である。
【
図2】ナノウェル内のプラズモンナノ構造のいくつかの例の図表である。
【
図3】3Aは、ナノウェル内のナノ粒子の付着を示す図である。3Bは、種々の厚さのナノ粒子の付着を示すSEM画像である。3Cは、種々の厚さのナノ粒子の付着を示すSEM画像である。
【
図4】ナノウェル内のナノリングの形成を示す図およびSEM画像である。
【
図5】熱アニール後、ナノウェルに付着させたナノ粒子のSEM画像である。スケールバーは2μmである。
【
図6】4つの蛍光標識ベースについて、サイクル毎のクラスタ強度をSn/Au粒子厚さの関数として示す一連のグラフである。
【
図7】アニールしたSn/Auナノ粒子フィルムについて、サイクル1とサイクル26におけるクラスタ強度増強の集計表である。
【
図8A】一実施形態に従った、ナノウェル内のAuナノプラグの形成を示す図である。
【
図8B】Auナノプラグの形成を示すSEM画像である。
【
図9A】一実施形態にしたがってナノウェル内のAuナノプラグを用いた、第1サイクル配列決定強度の増強を示す棒グラフである。
【
図9B】ナノウェル内のアニールしたAuについての、クラスタ強度増強の集計表である。
【
図10】実施形態にしたがって形成した構造基板の一部の横断面図である。
【
図11】実施形態に従った構造基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図12】ナノインプリントリソグラフィ(NIL)材を含む、実施形態に従った構造基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図15】NIL物質を含む、実施形態に従った構造基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図15に示した方法の異なるステップを示す図である。
【
図17A】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の斜視図である。
【
図17B】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の斜視図である。
【
図17C】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の斜視図である。
【
図17D】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の斜視図である。
【
図17E】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の斜視図である。
【
図18A】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の横断面図である。
【
図18B】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の横断面図である。
【
図18C】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の横断面図である。
【
図18D】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の横断面図である。
【
図19A】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の平面図である。
【
図19B】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の平面図である。
【
図19C】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の平面図である。
【
図19D】1つまたは複数の実施形態と共に使用することができるナノ構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願の主題はまた、米国特許出願公開第2014/0242334号明細書、米国特許出願公開第2014/0079923号明細書、および米国特許出願公開第2011/0059865号明細書に記載の主題とともに適用可能であるか、または、それを組み込むことができる。。これらの公開物はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本明細書に記載の1つまたは複数の実施形態は、反応部位のアレイからの光放射を直接的に、または、間接的に高め、光放射を、例えば画像化システムまたは画像化装置により検出できるように構成する。この目的を達成するため、実施形態は、生物学的物質が経験する励起光の強度を増大する、生物学的物質により生成される光放射の強度を増大する、および/または、光放射を検出できるよう光放射の方向性を制御することの少なくとも1つを可能とする。強度の増大および/または光放射の方向性の制御は、ある程度、対応する反応部位に位置する1つまたは複数のナノ構造により引き起こすことができる。増大量は、ナノ構造を持たない反応部位にある電磁エネルギーの量と比較して計測することができる。
【0025】
反応部位のアレイは構造基板に沿って配置することができる。構造基板は、例えば、反応部位の傍らの試薬に向かうチャネルを有するフローセルとすることができる。光放射は、画像化システムにより検出することができ、該画像化システムは、例えば、傍らの構造基板をスキャンまたはスイープし、反応部位からの光放射を検出する対物レンズを含むことができる。本明細書に記載の構造基板からの光放射を検出することが可能な例示的なシステムは、米国特許出願公開第2012/0270305号明細書および同第2013/0261028号明細書に記載されており、米国特許出願公開第2012/0270305号明細書および同第2013/0261028号明細書はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、構造基板は固体状態画像化装置(例えば、CMOS)などの画像化装置と一体化することができる。このような実施形態において、画像化装置は、反応部位と一直線になり反応部位からの光放射を捉える1つまたは複数の光センサを有することができる。このような実施形態は米国仮特許出願第61/914275号明細書および国際公開第PCT/US14/69373号に記載されており、米国仮特許出願第61/914275号明細書および国際公開第PCT/US14/69373号はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
実施形態の少なくとも1つにより提供される技術効果には、生物学的物質の放射源からの、シグナル強度の増大を含むことができる。シグナル強度の増大は、低強度の光を発する生物学的物質の数を低減することによりエラー率を低減することができる。別の技術効果にはノイズに対するシグナルの比率の低減を含み得、これはスキャンスピードをより速くすることを可能にし、プロトコルの実施にかかる全体の時間を縮小する。例えば、合成によるシーケンシング法に関し、配列決定機器のより速いスキャン速度が望まれるが、より速いスキャン速度は、画像化カメラでクラスタ毎に収集される光子の減少を招く。捉えられた光子が少ないと、ノイズに対するシグナルの比率は典型的には低減し、ベースを確信を持って割り当てることがより困難になる。さらに、一部の配列決定機器において、低NA光学は本質的により大きいシグナルと減光を招き、これは潜在的により高いエラー率を生成する。本明細書に記載の実施形態は、捉える光子の数を増大することができる。少なくとも一部の実施形態の別の技術効果には、少なくとも一部の既知の方法より確実で、少なくとも一部の既知の方法よりコスト効果のある、構造基板の製造方法を含む。
【0027】
本開示は、概して、固相分析化学に関し、ハイスループットゲノミクス分析用核酸アレイに対し特別な適用性を有する。ヒト遺伝子の変異を分類し、この変異を病気のかかりやすさと関連づけるという作業は、ゲノム規模での配列決定方法の進歩の恩恵を受ける。この分類という取り組みは、各人のゲノムのマーカーの同定が期待でき、その人の病気のかかりやすさ、処方薬など具体的な治療に対する反応性、ならびに、危険な薬の副作用および他の医学的に起こり得る特性に対する影響の受けやすさを医療専門家が判断する際に役立つだろう。分類という取り組みはかなり進歩してきている。これは主に、商用のゲノム配列決定方法のおかげであり、これは十分なコスト効果があり、被験者を研究の場で評価することを可能にする。配列決定方法の改善は、分類という取り組みを加速させるのに必要である。また、比較的高コストの配列決定は、技術が研究センターを離れ医師が一般集団の患者のシーケンスを得ることが可能な医院に移行することを妨げている。
【0028】
それらを実行するために用いる配列決定方法およびシステムは、複雑な技術の集合を活用する。これらの技術の一部の改善は、実質的なコスト削減をもたらすことが分かっている。しかしながら、あったとしても、何れがコスト削減の改善に適しているかを推定することは困難である。配列決定システムの技術間に依存関係がある場合、何れが、方法またはシステム全体の性能に悪影響を及ぼすことなく修正可能であるかを推定することはさらに困難である。したがって、ゲノミクス研究の可能性を、生命を改善し、多くの場合救助することができる医院へもたらすことを可能にする改善点を特定する必要がある。本発明はこの要望を満たし、関連する特長も提供する。
【0029】
本明細書では、「生物学的物質」または「化学的物質」には、生体分子、対象試料、対象検体、および、他の化合物を含む。生物学的または化学的物質は、他の化合物を検出、特定、または分析するために使用することができるか、または、他の化合物を研究または分析するための中間物として機能させることができる。特定の実施形態において、生物学的物質とは、核酸、より具体的には、共通のシーケンスを有する核酸のコロニーである。特定の実施形態において、生物学的または化学的物質には生体分子を含む。本明細書で使用する「生体分子」には、生体ポリマー、ヌクレオシド、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、ポリペプチド、抗体、抗原、リガンド、受容体、多糖類、炭水化物、ポリホスフェート、細胞、組織、生物、またはその断片、もしくは、前記種の類似体か模倣体といった、その他の生物学的にアクティブな化合物を含む。
【0030】
別の例として、生物学的または化学的物質には、パイロシーケンシング反応においてピロホスフェートを検出するのに用いる酵素または試薬など、別の反応の生成物を検出するために共役反応で用いる酵素または試薬を含む。ピロホスフェート検出に有用な酵素および試薬は、例えば、米国特許出願公開第2005/0244870号明細書に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
生物学的または化学的物質は、天然に存在するか、または、合成して、指定の領域またはスペースに位置させることができる。一部の実施形態において、生物学的または化学的物質は、固体相またはゲル材料に結合することができる。生体分子、試料、および、生物学的または化学的物質はまた、医薬組成物を含むことができる。一部の場合において、対象となる生体分子、試料、および、生物学的または化学的物質は、標的、プローブ、または検体と呼ぶことができる。
【0032】
実施形態は、特に、蛍光標識核酸からの放射を高めるのに適している。例として、実施形態は、色素標識ヌクレオチドを含む合成によるシーケンシング反応において、DNAクラスタの蛍光増強を提供することができる。実施形態は、合成によるシーケンシング時に、蛍光標識からのシグナル強度を増大することができる。シグナル強度の増大は、低強度クラスタから生じるシーケンシングエラー、および、長時間のシーケンシングラン時のクラスタドロップアウトを低減することにより、全体の配列決定性能を改善することができる。
【0033】
本明細書では、表面における蛍光増強用の方法および組成物を提供する。方法および組成物は、固体支持体(または基板体)上の標識核酸の蛍光強度を増大するのに適している。特定の実施形態において、本明細書に示す方法および組成物は、色素標識ヌクレオチドを含む合成によるシーケンシング反応において、DNAクラスタの蛍光増強を提供する。加えて、本明細書では、約350nm~約750nmという広域スペクトル蛍光増強を可能にする配列決定基板上のプラズモンナノ構造などのナノ構造を、低コストで、迅速に、着実に加工する方法を提供する。
【0034】
本開示は、クラスタ化核酸からの増大強度は、プラズモニクスおよび/またはナノアンテナを、例示的な配列決定基板/プラットフォームおよびSBSケミストリーと組み合わせることにより得ることができるという驚くべき発見を詳述する。これは、配列決定基板上のプラズモンナノ構造およびナノアンテナを、トップダウンナノ加工する、または、ボトムアップ自己組織化するいずれかにより達成される。パターン化されていない基板およびパターン化されている基板の両方でプラズモンナノ構造を加工する種々の方法を、本明細書で示す。
【0035】
理論に縛られることを望むものではないが、結果として生じるクラスタ強度の増強は、局所表面プラズモン共鳴および共鳴エネルギー伝達プロセスの組み合わせによるものである。本明細書に示す方法および組成物はいくつかの特長を有する。例えば、合成によるシーケンシング時に、蛍光標識からのシグナル強度を増大することは、低強度クラスタから生じるシーケンシングエラー、および、長時間のシーケンシングラン時のクラスタドロップアウトを低減することにより、全体の配列決定性能を改善する。さらに、ノイズに対するシグナルの比率を低減し、それによりスキャン速度をより速くし、全体の配列決定ランタイムを縮小することを可能にする。配列決定機器ではより速いスキャン速度が望まれるが、より速いスキャン速度は、画像化カメラでクラスタ毎に収集される光子の減少を招き、これは、ノイズに対するシグナルの比率をより低く、エラー率をより高くすることにつながる。さらに、一部の配列決定機器において、低NA光学は本質的により大きいシグナルと減光を招き、これは潜在的により高いエラー率を生成する。そのため、クラスタ強度を増大する方法は多数の利点を提供する。
【0036】
したがって、本明細書に示す一実施形態は基板であり、これは、固体支持体(または基板体)上に分布させた、プラズモン共鳴材で形成した複数のナノ粒子と、複数のナノ粒子と関連する層を形成するゲル材料と、ゲル材料内に標的核酸ライブラリとを含む。
【0037】
ある実施形態において、ゲル材料はナノ粒子を覆う。ある実施形態において、固体支持体はフローセルの表面を含む。ある実施形態において、固体支持体は、複数のウェル(または反応キャビティ)を有する平坦な表面を含み、該複数のウェル内にナノ粒子を分布させる。
【0038】
本明細書では、「ナノ粒子」および「ナノ構造」という用語は区別なく用い、1nmと1000nmの間の任意の整数値または非整数値を含む、約1nm~約1000nmの範囲の一寸法を有する粒子を意味する。典型的な実施形態において、ナノ粒子は金属粒子である。一部の実施形態において、ナノ粒子のコアは、直径20~200nmの球体またはほぼ球体の粒子である。一部の実施形態において、範囲は約1nm~約50nm(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50nm)である。一部の実施形態において、一部の実施形態において、範囲は約350nm~約750nmである。異方性ナノ粒子は、長さと幅を有し得る。一部の実施形態において、異方性ナノ粒子の長さは、該ナノ粒子が生成された開口の平面と同等の寸法である。一部の実施形態において、異方性ナノ粒子の長さは、該ナノ粒子を生成する開口の平面に垂直な寸法である。異方性ナノ粒子の場合、一部の実施形態において、該ナノ粒子は約350nm~約750nmの範囲の直径(幅)を有する。他の実施形態において、ナノ粒子は約350nm以下の直径(幅)を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は250nm以下の直径を、一部の実施形態では、100nm以下の直径を有する。一部の実施形態において、幅は15nm~300nmの間である。一部の実施形態において、ナノ粒子は約10~350nmの長さを有する。一部の実施形態において、ナノ粒子は予め選択した形を有し、例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ球体、または、上記寸法の任意の形(例えば、二次元では三角形、四角形、長方形、もしくは多角形、または、三次元では立方体、ピラミッド形、円筒形、球形、円盤形、もしくは半球形)とすることが可能である。
図2は、ナノウェル26のプラズモンナノ構造のいくつかの例の図示である。ナノ構造の一部の例には、例えば、ボウタイナノアンテナ28、ナノ球体34、ナノピラミッド、ナノシェル、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノリング、ナノプラグ30、ナノ格子32等を含む。予め形成した、ナノ粒子のダイマー36およびトライマー28はまた、ウェルに搭載することが可能であり、ナノ粒子の間隔を正確に制御するという特長を持つ。
【0039】
これらのナノ構造は、表面で加工するか、または、予め形成し、その後ナノウェルに搭載するかのいずれかが可能である。この構造の例には、ナノウェルの底で加工したプラズモンナノプラグ、ナノウェル内のボウタイおよびキャビティ、ナノウェルを上に形成することが可能な金属ナノ格子、ナノウェルにリフローしたナノ粒子、または、上記の一部もしくは全ての組み合わせを含む。一例は、壁上のナノ粒子を簡便な電子ビーム蒸着プロセスで形成した、ナノウェル内の金属ナノプラグだろう。DNA折り紙、または、ククルビット[n]ウリルなどのリンカー分子を用いて形成したナノ粒子構築物(ダイマー、n-マー)はまた、ウェルに乗せるのに魅力的である。このような方法は、ナノ粒子間隔に対し正確なサブナノメートル制御を可能にし、該方法は、ボトムアップ自己組織化を用いて大規模に形成することが可能である。これらの構造の例は
図2に示す。
【0040】
表面上の任意の2つのナノ粒子の間の間隔は、任意の距離とすることが可能である。一部の実施形態において、間隔は、蛍光分光における特定の放射または励起波長など、入射光エネルギーの波長の倍数とすることが可能である。間隔は、例えば、入射光エネルギーの選択波長(λ)の1λ、2λ、3λ、4λ、または別の倍数とすることが可能である。したがって、532nmという放射波長(λ)を例として用いると、ナノ粒子間の間隔は、約532nm(1λ)、約1064nm(2λ)、または、該放射波長の別の倍数とすることが可能である。一部の実施形態において、間隔は、蛍光分光の特定の放射または励起波長など、入射光エネルギーの波長の分数とすることが可能である。間隔は、例えば、入射光エネルギーの選択波長の1λ、1/2λ、1/3λ、1/4λ、または別の倍数とすることが可能である。したがって、532nmという放射波長(λ)を例として用いると、ナノ粒子間の間隔は、約532nm(1λ)、266nm(1/2λ)、133nm(1/3λ)、または放射波長の別の分数とすることが可能である。
【0041】
「プラズモンナノ構造」または「ナノプラズモン構造」という用語は本明細書で区別なく用い、構造のプラズモン共鳴特性を示す任意の独立構造を意味し、これには両ナノ構造、ナノ粒子、およびナノ粒子の結合または会合を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)。
【0042】
本明細書で用いる「ナノアンテナ」という用語は、光エネルギーなどの電磁エネルギーを増幅するように作用する、ナノ粒子またはナノ構造を意味する。本明細書では、ナノアンテナは必ずしもプラズモン共鳴特性を示すわけではない。一部の実施形態において、ナノアンテナは実質的にプラズモン共鳴材を含まない。したがって、一部の実施形態では、非金属物質でできているが、電磁エネルギーの増幅特性を示すナノアンテナを示す。本明細書に示すナノ粒子は、望ましいエネルギー増幅を生成するよう、任意の適切な形およびサイズとすることが可能である。ナノアンテナの一部の例示的な形には、例えば、ボウタイナノアンテナ、ナノ球体、ナノピラミッド、ナノシェル、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノリング、ナノプラグ、およびナノ格子等を含む。既知である多数の方法のうちいずれもが、固体支持体(または基板体)上でのナノアンテナの加工および付着に適切であると理解されよう。ナノアンテナを加工する方法は当技術分野で既知であり、例えば、ナノ粒子の加工および付着に関する、本明細書に記載の方法を含む。
【0043】
ナノ粒子は、本明細書に記載の方法および組成物での使用に適切な任意の物質、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を示す任意のタイプの物質を含むことが可能である。ある好ましい実施形態において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材を含む。例には金属ナノ粒子を含むが、これに限定されるわけではない。例えば、ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、またはその他の適切な金属のうち1つ以上といった金属を含むことが可能である。ナノ粒子は、例えば、単一金属といった単一物質で形成することが可能である。加えて、または、あるいは、ナノ粒子は、例えば、2つ以上の金属といった、2つ以上の異なる物質の組み合わせで形成することが可能である。例えば、ナノ粒子は、Sn/AuまたはAg/Auといった、金属/金属の混合物を含むことが可能である。あるいは、または、加えて、金属-絶縁体-金属型の多層構造といった垂直積層ナノ粒子を適用することができる。例には、シリコン(Si)を含む。例えば、ナノ粒子は、p型ドープシリコンおよびn型ドープシリコンを含むことができる。ヒ化ガリウムも使用することができる。
【0044】
固体支持体上でのナノ粒子の形成は、当技術分野で既知である多数の方法のうちいずれか1つを使用して行うことが可能である。ナノ粒子は、プラズモンナノ構造および配列決定基板上にあるナノアンテナの、ボトムアップ自己組織化を使用して形成することが可能である。例えば、Gasparらが述べたもの(Scientific Reports, 2013, 3, 1469)など、物質の層の付着に関する多数の方法のうちいずれか1つを使用することが可能であり、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載し、実施例1および
図1に示す例示的な実施形態では、ナノ粒子10は予め形成し、コロイド状組成物中でゲル材料12と混合し、これを固体支持体16の表面14に付着させる。核酸18(または他の生体分子)がゲル材料12に固定化される、播種動作が起き得る。クラスタリング動作を行い、核酸18のクラスタ20を形成することができる。クラスタは、例えば、架橋増幅により生成することができる。あるいは、または、加えて、ナノ粒子をまず表面の上に付着させ、続いてゲル材料をナノ粒子を覆うように付着させることが可能である。他の実施形態では、ゲル材料を表面の上に付着させることが可能であり、ナノ粒子はゲル材料を覆うように付着させる。
【0045】
一部の実施形態において、ナノ粒子は固体表面のウェル(または凹状フィーチャまたは反応キャビティ)に形成する。
図3Aに示すように、Sn/Auなどの出発物質のフィルムをナノウェル44を含む固体表面42の上に付着させ、続いて熱アニールを行うことが可能である。一部の実施形態において、熱アニールは、フィルムが合体して離散した粒子になる際、ナノ粒子46の形成を促進するために利用することが可能である。
図3Bおよび3Cの結果により示すように、ナノ粒子サイズは出発フィルムの厚さの関数とすることが可能である。熱アニールに続くさらなる研磨ステップは、ナノ粒子46をウェルのみにする一方、間隙領域48は実質的にナノ粒子がないようにすることが可能である。
図5は、Sn/Au層の付着後に熱アニールが続くことの、さらなる例である。
図5に示すナノ粒子のSEM画像は、ナノ粒子がどのナノウェルにもあることを示す。間隙領域のナノ粒子は、例えば、化学的およびまたは機械的な研磨により取り除くことが可能である。ナノ粒子サイズの分布が各ナノウェルにおいて観察され、これは広域スペクトル蛍光増強を可能にする。
【0046】
一部の実施形態において、ナノリングなどのナノ構造は表面上のウェル(または凹状フィーチャまたは反応キャビティ)の壁に沿って形成することが可能である。ナノ構造は、当技術分野で既知である多数の方法のうちいずれか1つを用いて加工することが可能である。例えば、
図4はナノウェル52のナノリング50の形成を示す図およびSEM画像を示す。
図4に示すように、Auは、Auなどの物質でできた層54のスパッタ付着を用いて付着させることが可能である。
図4に示す実施形態では、~65nmのAu層の共形付着の後、反応性イオンエッチ(RIE)プロセスを続けた。残りのAu層はナノウェルの壁に沿って位置させ、ナノウェルのそれぞれにナノリング52を形成した。
【0047】
本明細書では、「表面」という用語は、固体支持体またはゲル材料の外部または外層を意味することを意図する。表面は、ガス、液体、ゲル、ポリマー、有機ポリマー、同様の、もしくは、異なる物質の第2表面、金属、または、コーティングといった、別の物質と接触することが可能である。表面、またはその領域は、実質的に平らであることが可能である。表面は、ウェル、くぼみ、チャネル、リッジ、隆起領域、ペグ、柱等といった表面フィーチャを有することが可能である。
【0048】
本明細書で使用するように、「固体支持体」という用語は、水性溶液に溶けない剛性基板を意味する。固体支持体は基板体と呼んでもよい。固体支持体の基板は非多孔性または多孔性とすることが可能である。基板は、任意で液体を(例えば、多孔性であるため)吸い上げ可能とすることが可能であるが、典型的には、基板が液体を吸い上げる際実質的に膨張せず、乾燥により液体を取り除く際実質的に収縮しない程度に十分に硬い。多孔性固体支持体は概して液体またはガスに対し透過性がある。固体支持体は、任意で、ゲルを修正するのに用いる化学作用に対し不活性とすることが可能である。例えば、固体支持体は、核酸などの検体を、本明細書に記載の方法でゲルに付着させるのに用いる化学作用に対し不活性とすることが可能である。例示的な固体支持体には、ガラス、改質または加工したガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、スチレンと他の物質の共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、環状オレフィン、ポリイミド等)、ナイロン、セラミック、レジン、ゼオノア(登録商標)、シリカまたはシリコンおよび変性シリコンを含むシリカベースの物質、カーボン、金属、無機ガラス、光ファイバ束、ならびに、ポリマーを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
本明細書に示す方法および組成物の特定の実施形態は、パターン基板または構造基板を有する固体支持体を利用する。バターン付き基板または構造化基板は、米国特許出願第13/787396号明細書(米国特許出願公開第2014/0243224号明細書)に記載されているパターン付きゲルアレイを含むことが可能であり、この全内容が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、構造化基板は、ウェル(例えば、マイクロウェルまたはナノウェル)付き固体支持体をパターニングし、パターン付き支持体をゲル材料(例えば、PAZAM、SFA、または、SFAのアジ化したバージョン(アジド-SFA)といった化学的に改質したそれの変形体)でコーティングし、ゲルコーティング支持体を、例えば、化学的または機械的な研磨により磨き、ウェル内のゲルは保持するが、ウェル間にある構造化基板の表面の間隙領域から全てのゲルを取り除く、または、実質的に不活性化することにより作成することが可能である。プライマー核酸はゲル材料に付着させることが可能である。標的核酸(例えば、断片化したヒトゲノム)の溶液を、その後、個々の標的核酸を、ゲル材料に付着させたプライマーとの相互作用により個々のウェルに播種されるものの、該標的核酸が、ゲル材料の欠如または不活性のために間隙領域を占めることがないように、研磨した基板と接触させる。標的核酸の増幅は、間隙領域におけるゲルの欠如または不活性が、成長核酸コロニーの外への移動を阻止することから、ウェル内に限定されるだろう。プロセスは好都合なことに、製造可能であり、スケーラブルであり、従来のマイクロまたはナノ加工法を利用している。
【0050】
本明細書に記載の構造化基板で用いる固体支持体は、本明細書、例えば、定義の上、例の下、または直後に記載の種々の物質のいずれかで作成することが可能である。特に有用な物質はガラスである。他の適切な基板物質には、ポリマー材料、プラスチック、シリコン、石英(溶融シリカ)、BOROFLOAT(登録商標)ガラス、シリカ、シリカベースの物質、カーボン、金属、光ファイバもしくは光ファイバ束、サファイア、または、COCおよびエポキシなどのプラスチック物質を含むことができる。特定の物質を、特定の使用に望ましい性質を基に選択することが可能である。例えば、放射線の望ましい波長を通す物質は、本明細書に記載の1つまたは複数の技法など、その望ましい波長の放射線を利用する分析技法に有用である。反対に、ある波長の放射線を通さない物質を選択することが望まれることもあろう。これは、本明細書に記載の方法などの構造化基板の製造時に用いる、または、本明細書に記載の方法などの構造化基板を使用して化学反応または分析検出を実行するのに用いる、マスクの形成に有用であり得る。活用し得る、物質の他の性質は、本明細書に記載するような、下流プロセスで用いるある試薬に対する不活性度もしくは反応度、または、本明細書に記載するような、プロセス製造の製造時に操作が容易であること、もしくは、低コストであること、である。本開示の構造化基板または方法で用いることが可能な物質のさらなる例は、米国特許出願第13/661524号明細書および米国特許出願公開第2012/0316086号明細書に記載してあり、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
一部の実施形態に関し、特に有用な固体支持体は、フローセル装置内に位置する。例示的なフローセル、それらの製造方法、および、それらの使用方法は、米国特許出願公開第2010/0111768号明細書もしくは同第2012-0270305号明細書、または、国際公開第05/065814号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。フローセルは、本開示の方法により生成され、合成によるシーケンシング(SBS)またはサイクル中繰り返し試薬を送達する他の技法(例えば、反復ステップまたは循環ステップを有する、合成技法または検出技法)にかけるアレイを格納するのに好都合なフォーマットを提供する。例示的な検出方法は、下記でさらに詳細に記載する。
【0052】
一部の実施形態では、複数の表面を有するフローセルまたは他の容器を用いる。複数の表面を有する容器は、単一表面のみがゲル含有凹状フィーチャ(例えば、ウェル)を有するように用いることが可能である。あるいは、容器に存在する2つ以上の表面が、ゲル含有凹状フィーチャを有することも可能である。フローセルの1つまたは複数の表面は、選択的に検出することが可能である。例えば、フローセルの内部の対向表面は、共焦点技法など当技術分野で既知の方法を用い、集中放射線で選択的に扱うことが可能である。放射線を容器(例えば、フローセル)の複数の表面に選択的に向ける、有用な共焦点技法および装置は、例えば、米国特許出願公開第2009/0272914号明細書または米国特許第8039817号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
本明細書では、「ゲル材料」という用語は、液体およびガスに対し透過性がある半剛性物質を意味することを意図する。典型的には、ゲル材料は、液体が吸い上げられる際膨張することが可能であり、乾燥により液体が取り除かれる際縮小することが可能である。例示的なゲルには、アガロースなどのコロイド状構造、ゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、または、ポリアクリルアミドなどの架橋ポリマー構造、SFA(例えば、米国特許出願公開第2011/0059865号明細書を参照。これは参照により本明細書に組み込まれる)、または、PAZAM(例えば、米国仮特許出願第61/753833号明細書または米国特許出願公開第2011/0059865号明細書を参照。これは参照により本明細書に組み込まれる)を有するものを含むが、これらに限定されるわけではない。特に有用なゲル材料は、それが存在するウェルまたは他の凹状フィーチャの形に沿うだろう。一部の有用なゲル材料は、(a)それが存在するウェルまたは他の凹状フィーチャの形に沿うことと、(b)それが存在するウェルまたは凹状フィーチャの体積を実質的に超えない体積であることの両方が可能である。
【0054】
本明細書では、「間隙領域」という用語は、基板または表面の他の領域を分離する、基板または表面にある領域を意味する。例えば、間隙領域は、アレイの1ウェル(または、凹状フィーチャ)を、該アレイの別のウェル(または、凹状フィーチャ)から分離することが可能である。互いに分離した2つの領域は離散し得、互いに接触することはない。別の例では、間隙領域はフィーチャの第一部をフィーチャの第二部から分離することが可能である。多くの実施形態において、間隙領域は連続しているのに対し、フィーチャは、例えば、他の連続する表面にあるウェルのアレイの場合のように、離散している。間隙領域が提供する分離は、部分的分離または完全分離とすることが可能である。間隙領域は、典型的には、表面上のフィーチャの表面物質とは異なる表面物質を有するだろう。例えば、アレイのフィーチャは、間隙領域にあるゲル材料または検体の量または濃度を超える、量または濃度を有することが可能である。一部の実施形態において、ゲル材料または検体は、間隙領域に存在することはできない。
【0055】
多くの実施形態において、固体支持体を、例えば、化学的または機械的な研磨で磨くことで、ウェル内のナノ構造は保持するが、ウェル間にある構造化基板の表面の間隙領域から全てのナノ構造を取り除く、または、実質的に不活性化することにより、間隙領域はナノ構造を実質的に欠くことが可能である。機械的研磨は、固体支持体の表面に研磨力を適用することにより実行することが可能である。例示的な方法には、シート、クロス、スクレイピング等で拭き、ビーズのスラリーで研磨することを含む。研磨に使用する、または、本明細書に記載の他の用途に使用するビーズは、球体であってよいが、球体とは限らないことが理解されよう。むしろビーズは、凹凸形、多角形、卵形、細長形、円筒形等とすることが可能である。ビーズの表面は滑らかに、または、粗くすることが可能である。種々の粒子のいずれも、本明細書に記載の方法および組成物用のビーズとして有用であり得る。研磨の一例には、3μmシリカビーズスラリー(水中10%w/v)でコーティングしたリントフリー(クリーンルームグレード)のワイプを用いて間隙のナノ構造を取り除くことを含む。研磨ホイール/グラインダーも、このスラリーとともに用いることが可能である。機械的研磨はまた、流体ジェットまたはガス(例えば、アルゴンまたはニトロゲンなどの、気体または不活性ガス)を用いて、間隙領域からゲルを取り除くことでも達成することが可能である。
【0056】
本明細書では、「ライブラリ」という用語は、検体に関連して用いる場合、異なる化学組成を有する検体の集合を意味する。典型的には、ライブラリ中の検体は、属またはクラスの共通の特徴または特性を持つが、その他の点では、どこか異なっている、異なる種であろう。例えば、ライブラリには、ヌクレオチドシーケンスが異なるが、糖-リン酸骨格を有するという点では類似している核酸種を含むことができる。
【0057】
本明細書では、「核酸」および「ヌクレオチド」という用語は、当技術分野でのこれらの用法と一致し、天然に存在する種またはその機能的類似物を含むことを意図する。核酸の特に有用な機能的類似物は、配列特異的なやり方で核酸にハイブリダイズすることが可能であるか、または、特定のヌクレオチド配列の複製における鋳型として使用することが可能である。天然に存在する核酸は、概して、ホスホジエステル結合を含む骨格を有する。類似物の構造は、当技術分野で知られる種々のもののいずれかを含む、代わりの骨格結合を有することが可能である。天然に存在する核酸は、概して、(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)にある)デオキシリボース糖または(例えば、リボ核酸(RNA)にある)リボース糖を有する。核酸は、当技術分野で知られるこれらの糖部の種々の類似物のいずれかを有する、ヌクレオチドを含むことが可能である。核酸は、天然の、または、非天然のヌクレオチドを含むことが可能である。この点について、天然のデオキシリボ核酸は、アデニン、チミン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択した1つまたは複数の塩基を有することが可能であり、リボ核酸は、ウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンからなる群から選択した1つまたは複数の塩基を有することが可能である。核酸またはヌクレオチドに含まれ得る有用な非天然塩基が、当技術分野で知られている。「プローブ」または「標的」という用語は、核酸に関連して用いる場合、本明細書に記載の方法または組成物との関連において核酸の意味識別子として意図するものであり、核酸の構造または機能を、必ずしも別段明確に指示するものを超えて限定するわけではない。「プローブ」および「標的」という用語は、タンパク質、小分子、細胞等といった他の検体にも同様に適用することが可能である。
【0058】
本明細書では、「コーティングする」および「コーティング」等の用語は、動詞として用いる場合、表面上の層または覆いを提供することを意味することを意図する。少なくとも、表面の一部に層または覆いを提供することが可能である。場合によっては、全表面に層または覆いを提供することが可能である。別の場合では、表面の一部のみに層または覆いを提供するだろう。「コーティング」という用語は、表面および物質の間の関係を記述するために用いる場合、物質は表面上の層または覆いとして存在することを意味することを意図する。物質は、例えば、表面に液体またはガスが接触するのを防ぎながら、表面を封止することが可能である。例えば、物質は、液体、ガス、または、液体もしくはガス中の1つもしくは複数の成分に対し多孔性であることが可能である。表面をコーティングすることが可能な例示的な物質には、ゲル、有機ポリマー、液体、金属、第2表面、プラスチック、シリカ、または気体を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0059】
核酸アレイを含む本開示の構造化基板は、種々の目的のいずれにも用いることが可能である。核酸に特に望まれる用途は、相補配列を有する標的核酸にハイブリダイズする捕捉プローブとして機能することである。捕捉プローブと一度ハイブリダイズした標的核酸は、例えば、捕捉プローブに採用した標識により検出することが可能である。捕捉プローブへのハイブリダイゼーションにより標的核酸を検出する方法は、当技術分野で既知である。該方法には、例えば、米国特許第7582420号明細書、同第6890741号明細書、同第913884号明細書、もしくは同第6355431号明細書、または、米国特許出願公開第2005/0053980号明細書、同第2009/0186349号明細書、もしくは同2005/0181440号明細書に記載の方法を含み、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、標識は、捕捉プローブの該標識を有する標的プローブへのハイブリダイゼーションにより、該捕捉プローブに採用することが可能である。別の例では、捕捉プローブを、(例えば、リガーゼ活性による)標識オリゴヌクレオチドへのライゲーションにより、または、(例えば、ポリメラーゼ活性による)標識ヌクレオチドの追加により伸長することが可能であるように、標的プローブを捕捉プローブにハイブリダイズすることで、標識を該捕捉プローブに採用することが可能である。
【0060】
核酸アレイはまた、合成によるシーケンシング(SBS)法といった配列決定手法で用いることが可能である。簡潔に言うと、SBSは、標的核酸を1つまたは複数の標識ヌクレオチド、DNAポリメラーゼ等と接触させることより開始することが可能である。標的核酸を鋳型として用いてプライマーが伸長されるフィーチャは、検出可能な標識ヌクレオチドを導入するだろう。任意で、標識ヌクレオチドはさらに、ヌクレオチドがプライマーにいったん追加されたら、さらなるプライマー伸長を終止する、可逆性終止性質を含むことが可能である。例えば、可逆性終止部を有するヌクレオチド類似物をプライマーに加え、脱ブロック化剤を送達して該部を取り除くまで次の伸長が起きないようにすることが可能である。したがって、可逆性終止法を使用する実施形態では、脱ブロック化試薬を(検出を行う前後で)フローセルに送達することが可能である。洗浄を、種々の送達ステップの間で実行することも可能である。サイクルはその後、n回繰り返し、nヌクレオチド分、プライマーを伸長し、それにより長さnの配列を検出することが可能である。本開示の方法により生成されるアレイとともに使用することに容易に適応させることが可能な例示的なSBS手法、流体システム、および検出プラットフォームは、例えば、Bentleyら(Nature 456:53-59 (2008))、国際公開第04/018497号、同第91/06678号、同第07/123744号、米国特許第7057026号明細書、同第7329492号明細書、同第7211414号明細書、同第7315019号明細書、または同第7405281号明細書、および、米国特許出願公開第2008/0108082号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
パイロシーケンシングなど、循環反応を用いる他の配列決定手法を用いることが可能である。パイロシーケンシングは、特定のヌクレオチドが新生核酸鎖に導入されると、有機ピロホスフェート(PPi)の放出を検出する(Ronaghiら(Analytical Biochemistry 242(1), 84-9 (1996))、Ronaghi(Genome Res. 11(1), 3-11 (2001); Ronaghi et al. Science281(5375), 363 (1998))、米国特許第6210891号明細書、同第6258568号明細書、および同第6274320号明細書を参照。これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)。パイロシーケンシングにおいて、放出されたPPiは、ATPスルフリラーゼによりアデノシン三リン酸(ATP)に変換することにより検出することが可能であり、結果として生じるATPは、ルシフェラーゼ生成光子により検出することが可能である。したがって、配列決定反応は、ルミネセンス検出システムによりモニタリングすることが可能である。蛍光ベース検出システムに用いる励起放射線源は、必ずしもパイロシーケンシング手法に必要ではない。パイロシーケンシングを本開示のアレイに適用する際に用いることができる、有用な流体システム、検出器、および手法は、例えば、国際公開第PCT/US11/57111号、米国特許出願公開第2005/0191698号明細書、米国特許第7595883号明細書、および、同第7244559号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
ライゲーション反応によるシーケンシングも有用であり、これには例えば、Shendureら(Science 309:1728-1732 (2005))、米国特許第5599675号明細書、および同第5750341号明細書に記載のものを含み、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態は、例えば、Bainsら(Journal of Theoretical Biology 135(3), 303-7 (1988))、Drmanacら(Nature Biotechnology 16, 54-58 (1998))、Fodorら(Science 251(4995), 767-773 (1995))、および、国際公開第1989/10977号に記載のハイブリダイゼーション手法による配列決定を含み得、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。ライゲーションによるシーケンシングとハイブリダイゼーション手法によるシーケンシングの両方で、ゲル含有ウェル(または、他の凹状フィーチャ)にある核酸を、オリゴヌクレオチドの送達および検出という反復サイクルにかける。本明細書に記載の、または、本明細書で引用した参考文献に記載のSBS法向けの流体システムは、ライゲーションによるシーケンシングまたはハイブリダイゼーション手法によるシーケンシングのための試薬送達に容易に適応させることが可能である。典型的には、オリゴヌクレオチドを蛍光標識し、本明細書または本明細書に引用した参考文献のSBS手法に関連して記載されるものと同様の蛍光検出器を用いて、検出することが可能である。
【0063】
一部の実施形態は、DNAポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリングを要する方法を利用することが可能である。例えば、ヌクレオチドの導入は、フルオロフォア担持ポリメラーゼとγ-ホスフェート標識ヌクレオチドの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)相互作用によって、または、zeromode waveguides法によって検出することが可能である。FRETベースの配列決定の技法および試薬は、例えば、Leveneら(Science 299, 682-686 (2003))、Lundquistら(Opt. Lett. 33, 1026-1028 (2008))、Korlachら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 1176-1181 (2008))に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
本開示のアレイに有用な別の用途は、遺伝子発現解析である。遺伝子発現は、RNA配列決定法、例えばデジタルRNA配列決定法と呼ばれるものを利用して検出または定量化することができる。RNA配列決定法は、当技術分野において知られている配列決定法、例えば上記のものを用いて実施することができる。遺伝子発現は、ハイブリダイゼーション法を用いて検出または定量化することもでき、これは、アレイに直接ハイブリダイズすることによって、またはマルチプレックスアッセイを用いることで実施することができ、その生成物はアレイ上で検出される。本開示のアレイは、1つまたは複数の個体由来のゲノムDNAサンプルの遺伝子型を決定するために使用することもできる。本開示のアレイ上で実施可能な、アレイをベースとした発現および遺伝子型の解析のための代表的な方法は、米国特許第7582420号明細書、同第6890741号明細書、同第6913884号明細書もしくは同第6355431号明細書、または米国特許出願公開第2005/0053980号明細書、同第2009/0186349号明細書もしくは同第2005/0181440号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
本開示のアレイのいくつかの用途は、アンサンブル検出との関連において上記に例示したが、ここで標的核酸の複数のコピーが各フィーチャに存在し、一緒に検出される。代替の実施形態では、単一核酸、つまり、標的核酸またはそのアンプリコンのどちらかを、各フィーチャで検出することが可能である。例えば、ゲル含有ウェル(または他の凹状フィーチャ)は、検出される標的ヌクレオチド配列を有する単一核酸分子を含有するように構成することができる。様々な単一分子検出法のうちのいずれかを使用することが可能であり、例えば、解像度を上げて、またはより高感度の標識を使用して部位を検出するという、上記のアンサンブル検出法の修正版を含む。使用可能な他の単一分子検出法の例は、米国特許出願公開第2011/0312529号、米国特許出願第61/578684号、および同第61/540714号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
本明細書では、「ウェル」という用語は、表面の間隙領域で完全に囲まれた表面開口部を有する、固体支持体中の離散した凹状フィーチャを意味する。ウェルは、表面中のその開口部に様々な形状のうちいずれかを有することができ、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。表面に直交して見たウェルの横断面は、曲線、正方形、多角形、双曲線、円錐形、角のある形などでよい。
【0067】
本明細書では、「凹状フィーチャ」という用語は、固体支持体に関連して用いられる場合、固体支持体中の陥凹または圧痕を意味する。例示的な凹状フィーチャとして、ウェル、ピッチ、孔、へこみ、チャネル、またはトラフが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。凹状フィーチャは、任意で曲線部(固体支持体の表面と直交する寸法)を有することが可能であるが、1つまたは複数の線形部、角または隅部を有する横断面も可能である。曲線部および線形部の組み合わせを有する横断面も可能である。該して、凹状フィーチャは完全に固体支持体を通過する必要はなく、例えば、その代わりに基板中で底面または底部を有する。
【0068】
以下に記載し、特許請求の範囲で列挙する実施形態は、上記の定義を考慮して理解することができる。
【0069】
(実施例1)
パターン化されていない表面上の局所SPR
この例では、固体表面(DNA「クラスタ」)上の増幅DNAの蛍光強度を増大するための、局所表面プラズモン共鳴(SPR)の使用について記載する。この例において、結果は、Auナノ粒子を混ぜた、シランフリーアクリルアミド(SFA)でコーティングしたパターン化されていないガラス表面に示される。DNAクラスタはその後、この表面上で増幅した。
【0070】
ワークフロー例を
図1に示す。表示の第1パネルにおいて、Auナノ粒子10を混ぜたSFAを、ガラス表面14上でコーティングし、増幅プライマー(図示なし)をSFAに移植する。表示の第2パネルにおいて、鋳型DNA18を表面またはゲル材料に播種する。播種した鋳型DNA18をその後、第3パネルで示すように表面で増幅し、増幅DNAのクラスタ20を形成し、一部のクラスタがAuナノ粒子10を直接覆うように形成される一方、他のクラスタはAuナノ粒子を含まない表面の一部に形成される。第4のパネルに示すように、各クラスタからの蛍光22が、合成によるシーケンシング反応時に検出される。Auナノ粒子への接近は、Auナノ粒子に接近していないクラスタから放出されるシグナルに比べ、蛍光を増強する。
【0071】
図1に記載のワークフローを、8レーンあるD263ガラスフローセル表面上で実行した。レーン1、2は対照レーンだった(ナノ粒子なし)。レーン3~6には、6nmの球状Auナノ粒子を50nMの濃度で混ぜた。高AuNP濃度は、これらのレーンにおいて、in-situコーティングSFAの重合を防ぎ、移植を防いだ。レーン7、8は、10nM濃度のAuナノ粒子を混ぜたSFAでコーティングした。対照レーンと比較し、より高い蛍光強度がレーン7、8で見られた。配列決定結果は、ベースAの強度は、対照レーンと比較し~27%増大することを示した。強度の~24%の増大が、対照レーンと比較し、4ベースの全てで平均して観察された。
【0072】
これらのデータは、Auナノ粒子近辺のクラスタは、入射光と下部にあるAuナノ粒子との相互作用により、増強蛍光を示し、局所表面プラズモンを誘発することを実証する。ナノ粒子の近辺にないクラスタは、この増強蛍光を示さなかった。
【0073】
(実施例2)
ナノ粒子付きパターン化基板上での増強蛍光
プラズモンナノ構造は、増強蛍光のため、パターン化ナノウェル基板と組み合わせることも可能である。この例において蛍光増強は、ナノウェル内のナノ粒子を用いて達成された。ナノ粒子は、新規のSn/Auリフローアプローチを用いて、ナノウェル内に形成した。
図3Aに示すように、Sn/Auの均一フィルムをまずナノウェル基板上にコーティングし、続いて、400℃の熱アニールプロセスを実施し、小ナノ粒子へのフィルムのリフローをもたらした(
図3Bおよび3C)。最初のフィルム厚さを制御することにより、ナノ粒子サイズを操作した。この実施例は
図3Bおよび3Cに示し、それぞれ6nmと10nmのフィルム厚さで開始し、それぞれ、直径>50nmの粒子と、<30nmの粒子になった。
【0074】
続いてナノ粒子形成をし、機械的研磨を用いて間隙領域からナノ粒子を取り除き、ウェル内を粒子のみにした。この技法の一特長は、ナノ粒子がどのウェルにも搭載されるという事実に起因する搭載効率である。この技法のさらなる特長は、ナノ粒子サイズの広範な分布が、単一のナノ粒子サイズを用いて典型的に達成されるような、小範囲の波長での増強と比較し、広域スペクトル蛍光増強を提供することである。
【0075】
上記の実験を、3つの同一フローセルで3回繰り返した。3回の分離実験において、蛍光増強が、4ベース全てについて、対照D263と比較し、ナノウェルにある直径~50nm以上のナノ粒子に対応する~6nm厚さSn/Au領域で見られた。平均して、ベース強度はこれらの実験において、対照と比較し~37%増大し、C,G、Tは強く増強されたが、Aはより弱く増強された。蛍光増強は、より小さい<30nmナノ粒子に対応する、~10nm厚さSn/Au領域においては見られなかった。
【0076】
図6および7は例示的な結果を説明する。
図6は、等温増幅後SBSシーケンシングを用いた配列決定結果を説明する。合成によるシーケンシングを26サイクル行い、Sn/Auの付着がない対照領域と比較した。4つの蛍光標識ベースについて、サイクル毎のクラスタ強度を、Sn/Au粒子厚さの関数として計測した。バターン化基板には、850nmのピッチを有する直径~500nmのウェルがあった。異なるSn/Au厚さを単一フローセルの異なる領域に付着させ、その後アニールを行った。各レーンで異なるフィルム厚さと対照領域を組み合わせることで、同一のフローセルの異なる領域からの強度を直接比較し、それにより化学作用の違いを切り離すことを可能にした。クラスタは各レーンの3領域全てで見られ、種々のサイズの支持体クラスタリングの、リフローされたSn/Auナノ粒子を確認した。サイクル1およびサイクル26における、これらの領域の正規化したクラスタ強度の(対照を超える)増強の比較を
図7に示す。
図6では、一番上の線が6nmの粒子の強度とサイクル数の関係を示し、真ん中の線がガラスの強度とサイクル数の関係を示し、一番下の線が10nmの粒子の強度とサイクル数の関係を示す。
【0077】
これらのデータは、パターン化表面のウェルへのナノ粒子の付着が、合成によるシーケンシング反応時に蛍光強度の増強を提供することを実証する。
【0078】
(実施例3)
金ナノプラグ付きパターン化基板での増強蛍光
この例では、蛍光強度を、ウェルの底に付着させた金ナノプラグを用いてナノウェル内で増強した。ナノウェル62にあるAuナノプラグ60の加工を
図8Aに示す。簡潔に言うと、Auをパターン化フローセル64に付着させ、各ウェル62の底および核間隙領域68にAuの層66を生じさせる。機械的研磨で間隙領域68に付着したAuを取り除き、Auプラグ60をウェル62の底のみに残す。
図8Bは結果として生じるSEM画像を示す。固体金(Au)プラグはウェルの底に見られ、Auナノ粒子は壁と間隙領域に見られる。この単純な構造も、下記の配列決定実験で実証するように、クラスタの蛍光強度を増強することが可能である。
【0079】
合成によるシーケンシングランを、一部のレーンにナノプラグを有するパターン化フローセルと、Auの付着がない対照領域で行った。4つの蛍光標識ベースそれぞれについて、サイクル毎のクラスタ強度を計測した。
図9Bは、ナノウェルにあるアニールしたAuナノプラグについて、結果として生じるクラスタ蛍光増強をまとめたものである。これらのデータは、シグナル強度はウェル内のナノプラグにより増強されることを実証する。
【0080】
種々の実施形態は、一つ以上のナノ構造を利用して反応部位での電磁エネルギーを増幅する。複数のナノ構造(例えば、2つ以上のナノ構造)を利用する実施形態では、該複数のナノ構造をアンサンブル増幅器と呼ぶことができる。本明細書では、「ナノ構造」および「ナノ粒子」という用語は区別なく用い、最大寸法(例えば、高さ、幅、直径)が、1nm~1000nmの間の整数値または非整数値を含む、約1nm~約1000nmの範囲にある構造を意味する。典型的な実施形態において、ナノ粒子は金属粒子またはシリコン粒子である。一部の実施形態において、ナノ粒子のコアは、直径20~200nmの球体またはほぼ球体の粒子である。一部の実施形態において、範囲は約1nm~約50nm(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50nm)である。
【0081】
異方性ナノ構造(例えば非球体構造)は、長さおよび幅、または、一部の実施形態では直径を有してよい。一部の実施形態において、異方性ナノ構造の長さは、ナノ構造の最大寸法である。一部の実施形態において、異方性ナノ粒子の長さは、該ナノ粒子が生成された開口の平面と同等の寸法である。一部の実施形態において、異方性ナノ粒子の長さは、該ナノ粒子が生成された開口の平面に垂直な寸法である。異方性ナノ構造の場合、該ナノ構造は約50nm~約750nmの範囲の幅または直径を有する。他の実施形態において、ナノ構造は約350nm以下の幅または直径を有する。他の実施形態では、ナノ粒子は250nm以下の幅または直径を、一部の実施形態では、100nm以下の幅または直径を有する。一部の実施形態において、幅または直径は15nm~300nmの間である。
【0082】
一部の実施形態において、ナノ粒子は約10~750nmの長さを有する。一部の実施形態において、ナノ構造は予め選択した形を有し、例えば、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ球体、または、上記寸法の任意の形(例えば、二次元では三角形、四角形、長方形、もしくは多角形、または、三次元では立方体、ピラミッド形、円筒形、球形、円盤形、もしくは半球形)とすることが可能である。ナノ構造の一部の例には、例えば、ボウタイナノアンテナ、ナノ球体、ナノピラミッド、ナノシェル、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノリング、ナノプラグ、ナノ格子等を含む。予め形成した、ナノ粒子のダイマーおよびトライマーはまた、ウェルに搭載することが可能であり、ナノ粒子の間隔を正確に制御するという特長を有する。
【0083】
ナノ構造は、表面で加工するか、または、予め形成しその後ウェル(例えば、ナノウェル)などの反応キャビティに搭載するかのいずれかが可能である。この構造の例には、ナノウェルの底で加工したプラズモンナノプラグ、ナノウェル内のボウタイおよびキャビティ、ナノウェルを上に形成することが可能な金属ナノ格子、ナノウェルにリフローしたナノ粒子、または、上記の一部もしくは全ての組み合わせを含む。一例は、壁上のナノ構造を電子ビーム蒸着プロセスで形成した、ナノウェル内の金属ナノプラグだろう。アンサンブル増幅器または構築物(ダイマー、n-マー)も反応キャビティ内に位置させることができる。このような方法は、ナノ粒子間隔に対し正確なサブナノメートル制御を可能にし、該方法は、ボトムアップ自己組織化を用いて大規模に形成することが可能である。
【0084】
表面上の任意の2つのナノ構造の間の間隔は、任意の距離とすることが可能である。一部の実施形態において、間隔は、蛍光分光における特定の放射または励起波長など、入射光エネルギーの波長の倍数とすることが可能である。間隔は、例えば、入射光エネルギーの選択波長(λ)の1λ、2λ、3λ、4λ、または別の倍数とすることが可能である。したがって、532nmという放射波長(λ)を例として用いると、ナノ構造間の間隔は、約532nm(1λ)、約1064nm(2λ)、または、該放射波長の別の倍数とすることが可能である。一部の実施形態において、間隔は、蛍光分光の特定の放射または励起波長など、入射光エネルギーの波長の分数とすることが可能である。間隔は、例えば、入射光エネルギーの選択波長の1λ、1/2λ、1/3λ、1/4λ、または別の倍数とすることが可能である。したがって、532nmという放射波長(λ)を例として用いると、ナノ構造間の間隔は、約532nm(1λ)、266nm(1/2λ)、133nm(1/3λ)、または放射波長の別の分数とすることが可能である。
【0085】
一部の実施形態において、ナノ構造は「プラズモンナノ構造」または「ナノプラズモン構造」と呼ぶことがある。これらの用語は区別なく用い、構造のプラズモン共鳴特性を示す任意の独立構造を意味し、これには両ナノ構造、ナノ構造、およびナノ構造の結合または会合を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)。
【0086】
本明細書で用いる「ナノアンテナ」という用語は、光エネルギーなどの電磁エネルギーを増幅するように作用する、ナノ構造または複数のナノ構造(つまり、アンサンブル増幅器)を意味する。本明細書では、ナノアンテナ(つまり、アンサンブル増幅器)は必ずしもプラズモン共鳴特性を示すわけではない。したがって、一部の実施形態では、非金属物質でできているが、電磁エネルギーの増幅特性を示すナノアンテナを示す。本明細書に示すナノ構造は、望ましいエネルギー増幅を生成するよう、任意の適切な形およびサイズとすることが可能である。ナノアンテナの一部の例示的な形には、例えば、ボウタイナノアンテナ、ナノ球体、ナノピラミッド、ナノシェル、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノリング、ナノプラグ、およびナノ格子等を含む。既知である多数の方法のうちいずれもが、固体支持体上でのナノアンテナの加工および付着に適切であると理解されよう。ナノアンテナを加工する方法は当技術分野で既知であり、例えば、ナノ粒子の加工および付着に関する、本明細書に記載の方法を含む。
【0087】
ナノ構造は、本明細書に記載の方法および組成物での使用に適切な任意の物質、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を示す任意のタイプの物質を含むことが可能である。ある好ましい実施形態において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材を含む。例には金属ナノ構造を含むが、これに限定されるわけではない。例えば、ナノ構造は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)のうち1つ以上などの金属、クロム(Cr)、銅(Cu)、またはその他の適切な金属を含むことが可能である。ナノ構造は、例えば、単一金属といった単一物質で形成することが可能である。加えて、または、あるいは、ナノ構造は、例えば、2つ以上の金属といった、2つ以上の異なる物質の組み合わせで形成することが可能である。例えば、ナノ構造は、Sn/AuまたはAg/Auといった、金属/金属の混合物を含むことが可能である。あるいは、または、加えて、金属-絶縁体-金属型の多層構造といった垂直積層ナノ構造を適用することができる。例には、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、およびヒ化ガリウムを含む。特定の実施形態において、ナノ構造は、プラズモン共鳴材、および/または、金属物質でコーティングしたポリマーから形成することができる。
【0088】
固体支持体上でのナノ構造の形成は、当技術分野で既知である多数の方法のうちいずれか1つを使用して行うことが可能である。ナノ構造は、プラズモンナノ構造および配列決定基板上のナノアンテナの、ボトムアップ自己組織化を使用して形成することが可能である。例えば、Gasparらが述べたもの(Scientific Reports, 2013, 3, 1469)など、物質の層の付着に関する多数の方法のうちいずれか1つを使用することが可能であり、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。ナノ構造を形成するのに用いることができる層加工プロセスには、リソグラフィ、エッチング、スパッタリング、蒸着、鋳造(例えば、スピンコーティング)、化学蒸着、電着、エピタキシー、熱酸化、および、物理蒸着等を含む。一部の実施形態において、ナノ構造は、シャドー法を用いて形成することができる。一部の実施形態において、ナノ構造は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)などのナノリソグラフィを用いて形成することができる。
【0089】
本明細書に記載の例示的な実施形態において、ナノ構造は予め形成し、コロイド状組成物中でゲル材料と混合することが可能であり、これを表面に付着させる。あるいは、または、加えて、ナノ構造をまず表面の上に付着させ、続いてゲル材料をナノ構造を覆うように付着させることが可能である。他の実施形態では、ゲル材料を表面の上に付着させることが可能であり、ナノ構造をゲル材料を覆うように付着させる。
【0090】
一部の実施形態において、ナノ構造は固体表面のウェル(または、凹状フィーチャ)に形成する。Sn/Auなどの出発物質のフィルムを、ナノウェルを含む固体表面に付着させ、続いて熱アニールを行うことが可能である。一部の実施形態において、熱アニールは、フィルムが合体して離散した粒子になる際、ナノ構造の形成を促進するために利用することが可能である。ナノ粒子サイズは出発フィルムの厚さの関数とすることが可能である。熱アニールに続くさらなる研磨ステップは、ナノ構造をウェルのみにする一方、間隙領域は実質的にナノ粒子がないようにすることが可能である。間隙領域のナノ構造は、例えば、化学的およびまたは機械的な研磨により取り除くことが可能である。ナノ粒子サイズの分布が各ナノウェルにおいて観察され、これは広域スペクトル蛍光増強を可能にする。
【0091】
一部の実施形態において、ナノリングなどのナノ構造は表面上のウェル(または凹状フィーチャ)の壁に沿って形成することが可能である。ナノ構造は、当技術分野で既知である多数の方法のうちいずれか1つを用いて加工することが可能である。例えば、Auは、スパッタ付着を用いて付着させることが可能である。実施形態において、~65nmのAu層の共形付着の後、反応性イオンエッチ(RIE)プロセスを続けることができる。残りのAu層はナノウェルの壁に沿って位置し、ナノウェルのそれぞれにナノリングを形成する。
【0092】
「励起光」および「光放射」という用語は、電磁エネルギーを意味し、電磁エネルギーの発生源を区別するために用いる。励起光は、概して、反応部位からある一定距離離れて位置する光源(例えば、レーザー)から提供される。例えば、反応キャビティを含む実施形態では、光源は反応キャビティの外側に位置してよい。しかしながら、光放射は、典型的には、反応部位内または反応部位にある放射源により生成される。放射源は、例えば、フルオロフォアとすることができる。特定の実施形態は、300nm~750nmの間の任意の波長(例えば、300nm、301nm、302nm、303nm、304nm、305nm、306nm、307nm、308nm・・・745nm、746nm、747nm、748nm、749nm、および750nm)の電磁エネルギーを増幅するように構成することができる。本明細書では、「波長」という用語は、「単一波長」または「1つのみの波長」を構成すると明言されてなければ、単一波長に限定されることはない。代わりに、「波長」という用語は、望ましい、または、標的の波長あたりにある狭い範囲の波長(例えば、532nm±10nm、532nm±5nm、660nm±10nm、660nm±5nm)を含むものとする。
【0093】
各アンサンブル増幅器のナノ構造は、指定の方法で電磁エネルギーを増幅するよう、互いに構成することができる。例えば、対応するアンサンブル増幅器のナノ構造を分離する距離は、増幅することを望む電磁エネルギーに基づくことができる。アンサンブル増幅器のナノ構造は、特定の波長(例えば、狭い波長バンド)向けに構成することができる。例えば、一つ以上の実施形態を、532nmという波長を有する電磁エネルギーを増幅するように構成することができる。一つ以上の実施形態を、660nmという波長を有する電磁エネルギーを増幅するように構成することができる。一部の実施形態において、アンサンブル増幅器は、複数の波長またはより広域範囲の波長を増幅することが可能である。
【0094】
一部の実施形態において、アンサンブル増幅器は、反応部位からの応答が電磁エネルギーの分極に基づくように、分極構成を有する。例えば、アンサンブル増幅器は、予め決められた一つ以上の分極を有する電磁エネルギーに優先的に応答するように構成することができる。アンサンブル増幅器を、予め決められた分極を有する電磁エネルギーにより照射する場合、光放射は、電磁エネルギーが予め決められた分極を有しない場合の光放射のシグナル強度より大きいシグナル強度を有することができる。例えば、アンサンブル増幅器を、予め決められた分極を有する電磁エネルギーにより照射する場合、光放射はXというシグナル強度を有することができる。この例において、アンサンブル増幅器は、予め決められた分極付きの電磁エネルギーに対し実質的に平行の双極子モーメントを有することができる。本明細書では、実質的に平行とは、双極子モーメントに対し平行+/-30°とすることができる。一部の実施形態において、実質的に平行とは、双極子モーメントに対し平行+/-25°、または、双極子モーメントに対し平行+/-20°とすることができる。特定の実施形態において、実質的に平行とは、双極子モーメントに対し平行+/-15°、または、双極子モーメントに対し平行+/-10°とすることができる。より特定の実施形態において、実質的に平行とは、双極子モーメントに対し平行+/-8°、双極子モーメントに対し平行±5°、または、双極子モーメントに対し平行+/-3°とすることができる。
【0095】
アンサンブル増幅器を、予め決められた分極を有しない電磁エネルギーにより照射する場合、光放射は、双極子モーメントが電磁エネルギーと実質的に平行である場合のシグナル強度の0.4X以下(40%以下)のシグナル強度を有することができる。この例において、アンサンブル増幅器は、予め決められた分極付きの電磁エネルギーに対し実質的に垂直である双極子モーメントを有することができる。本明細書では、実質的に垂直とは、双極子モーメントに対し垂直+/-30°とすることができる。一部の実施形態において、実質的に垂直とは、双極子モーメントに対し垂直+/-25°または双極子モーメントに対し垂直+/-20°とすることができる。一部の実施形態において、実質的に垂直とは、双極子モーメントに対し垂直+/-15°または双極子モーメントに対し垂直+/-10°とすることができる。より特定の実施形態において、実質的に垂直とは、双極子モーメントに対し垂直+/-8°、双極子モーメントに対し垂直+/-5°、または、双極子モーメントに対し垂直+/-3°とすることができる。
【0096】
図10は、実施形態に従って形成した構造化基板100の一部の横断面である。構造化基板100は基板体102を含み、これは固体支持体とも呼ぶことができる。基板体(または固体支持体)102は、アクティブ側104を有する。アクティブ側104は、複数の反応部位106と、反応部位106の間に伸長する側面105を含む。示すように、反応部位106は、反応キャビティまたはウェル(例えば、ナノウェル)である。したがって、反応部位106は、以後反応キャビティ106と呼ぶが、他の実施形態は反応部位を含むことができると理解される。反応キャビティ106は、本明細書に記載のナノウェルと同様の寸法を有することができる。例えば、反応キャビティ106は、横軸191に沿って計測される直径または幅を有することができる。反応キャビティの直径または幅は、5000nm未満とすることができる。一部の実施形態において、反応キャビティの直径または幅は、4000nm未満、3000nm未満、2000nm未満、または、1000nmである。特定の実施形態では、反応キャビティの直径または幅は、900nm未満、800nm未満、700nm未満、または600nm未満である。より特定の実施形態では、反応キャビティの直径または幅は、550nm未満、500nm未満、450nm未満、または、400nm未満である。しかし、より特定の実施形態では、反応キャビティの直径または幅は、350nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、または、100nm未満である。本明細書に記載の反応部位は、同様の直径または幅を有することができる。
【0097】
反応キャビティ106は、基板体102の間隙領域118により互いに離れている。間隙領域118は、反応キャビティ106を互いに分離させる、アクティブ側104または基板体102の一部に沿ったエリアである。側面105は、間隙領域118に沿って伸長する。一部の実施形態において、複数の反応キャビティ106は、隣接する反応キャビティ106が、例えば1000nm未満の間隔で分離するように、反応部位106の密アレイを形成する。より特定の実施形態では、隣接する反応キャビティ106は900nm未満、800nm未満、700nm未満または600nm未満の間隔で分離させることができる。より特定の実施形態では、隣接する反応キャビティ106は500nm未満、400nm未満、300nm未満または200nm未満の間隔で分離させることができる。より特定の実施形態では、隣接する反応キャビティ106は150nm未満、100nm未満または50nm未満の間隔で分離させることができる。本明細書に記載の反応部位は、同様の分離距離を有することができる。一部の実施形態において、隣接する反応キャビティ106の間の、中心間間隔119は、1000nm未満とすることができる。より特定の実施形態では、中心間間隔119は、700nm未満、600nm未満、500nm未満または450nm未満とすることができる。より特定の実施形態では、中心間間隔119は、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満または200nm未満とすることができる。本明細書に記載の反応部位は、中心間間隔を有することができる。
【0098】
図示する実施形態において、間隙領域118は連続した平坦な側面105を形成するが、間隙領域118は他の実施形態では平坦ではない表面を含むことができる。間隙領域118は、反応キャビティ106の物質とは異なる表面物質を含むことができ、反応キャビティ106を互いに機能的に隔離することができる。図示する実施形態において、2つの反応キャビティ106のみをアクティブ側104に沿って示す。しかしながら、反応キャビティ106は、何百、何千、何百万個の反応キャビティ(または部位)を含むことができる、反応部位のアレイの一部であり得ることを理解すべきである。
【0099】
反応キャビティ106は、典型的には、アクティブ側104に沿ってへこみまたは圧痕を形成する凹状フィーチャである。反応キャビティ106は、例えば、ウェル、くぼみ、チャネル、および陥凹等とすることができる。しかしながら、他の実施形態は、キャビティ内にない反応部位を含むことができることを理解すべきである。例えば、反応部位は平坦な表面に沿って分布することができる。このような実施形態は、米国仮特許出願第61/920244号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
基板体102は1つまたは複数の積み重ねられた層より形成することができる。図示する実施形態において、基板体102はベース層112とキャビティ層114を含む。ベース層112は、例えば、ガラス(SiO2)ウェハとすることができる。キャビティ層114はポリマーとすることができる。しかしながら、基板体102は、別の実施形態では他の層を含むことができる。
【0101】
本明細書では、「層」という用語は、別段記載がない限り、単一の連続した物質体に限定されるわけではない。例えば、各層は、同一の、または、異なる物質でできた複数の副層で形成することができる。さらに、各層は、そこにある、または、そこを通って伸長する、異なる物質でできた1つまたは複数のフィーチャを含むことができる。異なる層は、リソグラフィ、エッチング、スパッタリング、蒸着、鋳造(例えば、スピンコーティング)、化学蒸着、電着、エピタキシー、熱酸化、および、物理蒸着等といった、既知の層加工プロセスを用いて形成することができる。1つまたは複数の層はまた、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)などのリソグラフィを用いて形成することができる。本明細書では、「加工基板」という用語には1つまたは複数の積み重ねられた層を含み、このうち少なくとも1つの層をプロセスにかけて、該加工基板から構造化基板を形成する。加工基板は、1つまたは複数の他の要素を受け取って構造化基板を形成するように構成された、固体支持体または基板体を形成することができる。例えば、加工基板は、ナノ粒子、および/または、有機物質(例えば、ゲル材料)を受け取って構造化基板を形成することができる。
【0102】
図10に示すように、反応キャビティは、アクティブ側104に対し垂直な横断面を有する。横断面は曲線部、線形部、角または隅部を含んでよい。該して、反応キャビティは1つまたは複数の層を完全に通過する必要はない。例えば、各反応キャビティ106は、アクティブ側104と、反応キャビティ106の底面126の間に伸長する、少なくも1つの側壁124を有する。側壁124と底面126は、キャビティ層114により定義される。別の実施形態では、ベース層112(または、他の層)が、反応キャビティ106の底126を定義することができる。
【0103】
反応キャビティ106は、反応キャビティ106がアクティブ側104に沿ってアクセス可能であるようにアクティブ側104に対し開口する。例えば、反応キャビティ106は、構造化基板100の加工時、または、構造化基板100を分析時に用いる際に、アクティブ側104に沿ってゲル材料または流体を受け取ることが可能だろう。アクティブ側104はまた、光源(図示なし)からの励起光108を受け取る、および/または、対物レンズなど、反応キャビティからの光放射110を検出する光学部品(図示なし)に面することができる。
【0104】
各反応キャビティ106は、少なくとも1つのナノ構造116を含むことができる。間隙領域118は、実質的にナノ構造を欠くことができる。
図10の図示した実施形態において、各反応キャビティ106は複数のナノ構造116を含む。しかしながら、別の実施形態は、単一のナノ構造のみを含むことができることを理解すべきである。複数のナノ構造116はナノ構造のアンサンブルを形成することができ、これを以下、アンサンブル増幅器120と呼ぶ。アンサンブル増幅器120は各反応キャビティ106の内部に位置し、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0105】
本明細書では、「ナノ構造のアンサンブル」または「アンサンブル増幅器」は、離散した部位(例えば、反応キャビティ)に入射する電磁エネルギーを増幅するか、離散した部位で生成された電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成された複数のナノ構造を含む。例えば、電磁エネルギーは、外部環境から反応キャビティ106に伝わる励起光108とすることができ、ここで励起光は、生物学的物質に関連する放射源(例えば、フルオロフォア)により吸収される。別の例のように、電磁エネルギーは、生物学的物質から放射される光放射110とすることができる。より具体的には、励起された後、フルオロフォアは、ナノ構造のアンサンブル120により後で増幅される電磁エネルギー(例えば、光放射110)を放射することができる。一部の実施形態において、アンサンブル増幅器120はまた、ナノアンテナと呼ぶことができる。これは、ナノ構造はまとまって機能して、光放射110を増幅し、該光放射110を反応部位から離れるように伝達するからである。
【0106】
アンサンブル増幅器は、連携して機能して電磁エネルギーを増幅する、2つ以上のナノ構造を含む。本明細書に記載するように、一部の実施形態では、アンサンブル増幅器はあるタイプの電磁エネルギーを、より具体的には、予め決められた波長を有する電磁エネルギーを、選択的に増幅するように構成することができる。例えば、アンサンブル増幅器は、励起光より光放射に対し増幅効果がより高いこともあるし、またはその逆もある。それでもなお、一部の実施形態では、アンサンブル増幅器は光放射と励起光の両方を増幅することができる。
【0107】
本明細書では、アンサンブル増幅器を「電磁エネルギーを増幅するように構成する」場合、各ナノ構造は、アンサンブル増幅器がまとまって機能し、電磁エネルギーを増幅するように、1つまたは複数の特性を有することができる。該特性には、例えば、ナノ構造の物質組成、ナノ構造の形、ナノ構造のサイズ、および、アンサンブル内の他のナノ構造に対するナノ構造の位置が含まれる。例えば、隣接するナノ構造116はその間に距離128を有することができ、これは、その間に限定される電磁エネルギーを増幅するように構成する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、結果として生じる光放射の増幅は、局所表面プラズモン共鳴および共鳴エネルギー伝達プロセスの組み合わせによるものであろう。
【0108】
図10にも示すように、反応キャビティ106は、反応キャビティ106内に付着した有機物質122を含むことができる。有機物質122はナノ構造116を覆うことができる。一部の実施形態において、有機物質122は対応する反応キャビティ内の生体分子を保持するまたは固定化するように構成する。例えば、生体分子は核酸とすることができる。
【0109】
特定の実施形態において、有機物質122には、ヒドロゲルなどのゲル材料を含む。本明細書では、「ゲル材料」という用語は、液体およびガスを液体およびガスに対し透過性がある半剛性物質を意味することを意図する。典型的には、ゲル材料は、液体がゲル材料に吸収されるか、または、受け入れられる際膨張することが可能であり、(例えば、乾燥により)ゲル材料から液体が取り除かれる際縮小することが可能である。例示的なゲルには、アガロースなどのコロイド状構造、ゼラチンなどのポリマーメッシュ構造、または、ポリアクリルアミドなどの架橋ポリマー構造、SFA(例えば、米国特許出願公開第2011/0059865号明細書を参照。これは参照により本明細書に組み込まれる)、または、PAZAM(例えば、米国仮特許出願第61/753833号明細書または米国特許出願公開第2011/0059865号明細書を参照。これは参照により本明細書に組み込まれる)を有するものを含むが、これらに限定されるわけではない。特に有用なゲル材料は、それが存在する反応キャビティの形に沿うだろう。一部の有用なゲル材料は、(a)それが存在する反応キャビティの形に沿うことと、(b)それが存在する反応キャビティの体積を実質的に超えない体積であることの両方が可能である。
【0110】
特定の実施形態において、有機物質122は、単一の生体分子(例えば、核酸)のみを収容するように構成した体積を有し、立体排除が、2つ以上の生体分子が捕捉される、または、反応キャビティに播種されることを防ぐようにする。立体排除は、核酸に特に有用であり得る。より具体的には、反応キャビティは、基板に播種される標的核酸の排除体積の直径と同等か、それより小さい領域を有する有機物質(例えば、ゲル材料)の表面を露呈させることが可能である。標的核酸の排除体積およびその直径は、例えば、標的核酸の長さから決めることが可能である。核酸の排除体積および排除体積の直径を決める方法は、例えば、米国特許第7785790号明細書、Rybenkovら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5307-5311 (1993))、Zimmermanら(J. Mol. Biol. 222:599-620 (1991))、またはSobelら(Biopolymers 31:1559-1564 (1991))に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。立体排除の条件は、米国特許出願第13/661524号明細書および米国特許第7785790号明細書に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の構造化基板に容易に用いることが可能である。
【0111】
立体排除を利用する実施形態のような一部の実施形態では、標的核酸のライブラリを、増幅プロセス開始前にゲル材料を含む反応キャビティに送達することが可能である。例えば、標的核酸を、ゲル材料を標的核酸と共に基板に播種するという条件下で、構造化基板に送達することが可能である。構造化基板は、任意で洗浄し、ゲル材料に播種しない標的核酸を、次の処理または構造化基板の使用に不要なその他の物質と共に取り除くことが可能である。
【0112】
それでもなお、他の実施形態では、露呈したゲル材料の領域は、実質的に、増幅部位に移送する標的核酸の排除体積の直径より大きくてよいことを理解されたい。したがって、フィーチャの領域は、実質的に立体排除が起きない大きさとすることが可能である。
【0113】
図10に戻ると、一部の実施形態において、ナノ構造116をベース層112に沿って形成し、該ナノ構造116がベース層112から突き出て反応キャビティ106に入るようにする。一部の実施形態において、ナノ構造116はキャビティ層114の一部を通って伸長する。他の実施形態では、底面126をベース層122の一部により定義し、ナノ構造116がキャビティ層114を通って伸長しないようにすることができる。
図10にも示されるように、フローカバー135を基板体102に取り付けることができる。
【0114】
光放射を検出器により検出するプロトコル時に、光放射は励起光108に応答して生成され得る。別の実施形態では、励起光108は提供されず、代わりに、励起光108は生体分子129に結合した放射源により生成される。一部の実施形態では、ゲインフィールド130はナノ構造の116の一つに沿って、または、2つ以上のナノ構造116の間に存在する。ゲインフィールド130は、励起光および/または光放射に応答して高強度の電界がナノ構造116により形成されるスペースを表すことができる。一部の用途では、ナノ構造116は励起光108を増幅し、放射源を励起光により作動させて検出のためにより大きいシグナル強度を提供するようにする。他の用途では、ナノ構造116は励起光108を増幅しないが、光放射110を増幅し、光放射110が検出のためにより大きいシグナル強度を提供するようにする。しかしながら、一部の用途では、ナノ構造116は、励起光108と光放射110の両方を増幅し、励起光108のより大きい強度が放射源により経験され、光放射110のより大きい強度が放射源により提供されるようにすることが可能である。したがって、本明細書に記載の実施形態は、ナノ構造またはアンサンブル増幅器を含まない既知のシステムに比べ、画像化システムまたは装置により検出するのが容易な、より大きいシグナル強度を提供することができる。
【0115】
本出願は、指定の反応を検出または分析するのに使用することができる構造化基板を、製造または加工する種々の方法を記載する。少なくとも一部の方法を複数のステップとして図に示す。しかしながら、実施形態は図に示すステップに限定されるわけではないことを理解すべきである。ステップは省略でき、ステップは変更でき、および/または、他のステップを加えることができる。一例として、本明細書に記載の一部の実施形態は2層のみ含むことができるが、他の実施形態では、3層、4層、またはそれ以上の層を含むことができる。さらに、本明細書に記載のステップは組み合わせることができ、ステップは同時に行うことができ、ステップは平行して行うことができ、ステップは複数のサブステップに分割することができ、ステップは異なる順番で行うことができ、または、ステップ(または一連のステップ)は反復形式で行うことができる。加えて、異なる方法を本明細書に記載するが、異なる方法(または、異なる方法のステップ)は、他の実施形態と組み合わせることができることを理解すべきである。
【0116】
構造化基板は、例えば、微細加工時に集積回路製造する、および/または、ナノ技術を製造するのに使用することができる、1つまたは複数のプロセスを用いて形成することができる。リソグラフィ(例えば、フォトリソグラフィ)は、本明細書に記載の構造化基板を加工するのに用いることができる技法またはプロセスの一カテゴリーである。特定の実施形態において、1つまたは複数の層を、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)を用いて形成する。例示的なリソグラフィ技法またはプロセスは、Marc J. MadouのFundamentals of Microfabrication and Nanotechnology: Manufacturing Techniques for Microfabrication and Nanotechnology, Vol. II, 3rdEdition, Part I (pp. 2-145)により詳細に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
構造化基板を加工する1つまたは複数のプロセスはまた、物質を加工基板より取り除くサブトラクティブ技法を含むことができる。このプロセスには、ドライケミカルエッチング;物理的/化学的エッチング;気相エッチング;化学加工(CM);異方性ウェットケミカルエッチング、ウェットフォトエッチング;電気化学エッチング(ECM)、電解研削(ECG)、光電気化学エッチングなどの電気化学法;レーザ加工、電子ビーム加工、放電加工(EDM)などの熱的技法;ならびに、物理的ドライエッチング、スパッタエッチング、イオンミリング、ウォータージェット加工(WJM)、アブレイシブウォータージェット加工(AWJM)、アブレイシブジェット加工(AJM)、アブレイシブ研削、電解インプロセスドレッシング(ELID)研削、超音波ドリル、および収束イオンビーム(FIB)ミリング等の機械技術を含む。上記リストは限定することを意図するものではなく、他のサブトラクティブ技法またはプロセスを用いることができる。例示的なサブトラクティブ技法またはプロセスは、Marc J. MadouのFundamentals of Microfabrication and Nanotechnology: Manufacturing Techniques for Microfabrication and Nanotechnology, Vol. II, 3rdEdition, Part II (pp. 148-384)に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
構造化基板を加工する1つまたは複数のプロセスはまた、物質を加工基板に追加する追加技法を含むことができる。このようなプロセスには、物理蒸着(PVD)、蒸着(例えば、熱蒸着)、スパッタリング、イオンめっき、イオンクラスタビーム堆積、パルスレーザ堆積、レーザアブレーション堆積、分子線エピラキシー、化学蒸着(CVD)(例えば、常圧CVD(APCVD)、低圧CVD(LPCVD)、極低圧CVD(VLPCVD)、超高真空CVD(UHVCVD)、有機金属CVD(MOCVD)、レーザアシスト化学蒸着(LCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、原子層堆積(ALD))、エピラキシー(例えば、液相エピタキシー、固相エピタキシー)、陽極酸化、熱溶射堆積、電気めっき、移植、拡散、溶解物における導入、熱酸化、レーザスパッタ堆積、反応射出成形(RIM)、自己組織化単分子層(SMA)、ゾル-ゲル追加、スピンコーティング、ポリマー噴射、ポリマードライフィルムラミネーション、鋳造、プラズマ重合、シルクスクリーニング、インクジェットプリンティング、メカニカルマイクロスポッティング、マイクロコンタクトプリンティング、ステレオリソグラフィつまりマイクロフォトフォーミング、電気化学的成形プロセス、電着、噴射熱分解、レーザビーム堆積、電子ビーム堆積、プラズマ溶射堆積、微小成型、LIGA(X線リソグラフィ、電着、および成型を意味するドイツ語の頭字語)、圧縮成型などを含む。上記のリストは限定することを意味するものではなく、他の追加技法または追加プロセスを用いることができる。例示的な追加技法または追加プロセスは、Marc J. MadouのFundamentals of Microfabrication and Nanotechnology: Manufacturing Techniques for Microfabrication and Nanotechnology, Vol. II, 3rdEdition, Part III (pp. 384-642)に詳細に記載されおり、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書では、「例示的な実施形態」という用語は、一例として機能する実施形態を意味する。該用語は、該実施形態が他の実施形態より優先されるということは意味しない。
【0119】
図11は、構造化基板を製造する方法200を示すフローチャートである。方法200は202において、ベース側を有するベース層(つまり、加工基板)を提供するステップを含む。ベース層は物質の単一層のみとするか、または、1つまたは複数の副層を含むことができる。ベース側は、直接付着する別の層を有するように構成した、平坦な表面を有することができる。しかしながら、ベース側は、他の層と組み合わせる前に非平坦フィーチャを含むことができると考えられる。特定の実施形態において、ベース層はガラス(SiO
2)ウェハを含むが、他の物質を用いることもできる。
【0120】
方法200はまた、204において、ベース層のベース側に沿ってナノ構造のアレイを形成するステップを含む。204での形成ステップには、複数の処理ステップを含むことができる。例えば、204での形成ステップには、(例えば、付着、成長、または別の追加技法によって)フィーチャ層をベース層のベース側に沿って提供するステップを含むことができる。204での形成ステップには、(エッチングまたは別のサブトラクティブ技法によって)ベース層の副層を成形してナノ構造を形成するステップを含むことができる。副層はまた、ナノ構造を副層から形成することができるため、フィーチャ層と呼ぶことができる。フィーチャ層は、個別フィーチャに成形することが可能な物質を含み、これはナノ構造の基礎を少なくとも部分的に形成することができる。物質は、純物質(例えば、金)または物質の合金を含むことができる。フィーチャ層はまた、互いに並んで積み重ねられた物質(例えば、金およびクロム)でできた複数の副層を含むことができる。任意で、1つまたは複数の物質はプラズモン共鳴材である。
【0121】
特定の実施形態において、204での形成ステップは、フィーチャをエッチングしてナノ体を形成するステップを含む。ナノ体は、サブアレイかセットに配置することができ、ここで各サブアレイ(またはセット)はアンサンブル増幅器になり得る。一部の実施形態において、エッチングプロセスから形成されたナノ体は、さらなる変更なしに、電磁エネルギーを増幅することが可能なナノ構造を構成することができる。しかしながら、他の実施形態では、さらなる処理ステップがナノ構造を形成するために必要な場合がある。例えば、フィーチャ層はポリマー(または、他の、プラズモン共鳴材ではない物質)を含むことができ、これを成形してナノ構造を構築するためのナノ体を形成することができる。薄い層またはフィルムを、実質的にナノ体の外側表面に加えてナノ構造を形成することができる。しかし、他の実施形態ではなお、ナノ構造を選択位置に局所的に付着させることができる。
【0122】
一部の実施形態において、ナノ構造は、Li, Zhipengら(“Multiple-particle nanoantennas for enormous enhancement and polarization control of light emission.” Acs Nano 3.3 (2009): 637-642);Bharadwaj, Palashら(“Optical Antennas” Advances in Optics and Photonics 1, 438-483 (2009));Boltasseva, Alexandra(“Plasmonic components fabrication via nanoimprint.” Journal of Optics A: Pure and Applied Optics 11.11 (2009));Kinkhabwala, Anikaら(“Large single-molecule fluorescence enhancements produced by a bowtie nanoantenna.” Nature Photonics 3.11 (2009): 654-657);Bakker, Reuben M.ら(“Nanoantenna array-induced fluorescence enhancement and reduced lifetimes.” New Journal of Physics 10.12 (2008));Liang, Chia-Chingら(“Plasmonic metallic nanostructures by direct nanoimprinting of gold nanoparticles.” Optics express 19.5 (2011): 4768-4776);Olmon, Robert L.とMarkus B. Raschke(“Antenna-load interactions at optical frequencies: impedance matching to quantum systems.” Nanotechnology 23.44 (2012));Krasnok, Aleksandr E.ら(“Optical nanoantennas.” Physics-Uspekhi 56.6 (2013))に記載してあるものと同様であるか、および/または、同様の方法で形成することができる。上記の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
方法200はまた、206において、ベース層のベース側に沿ってキャビティ層を形成するステップを含む。キャビティ層は反応キャビティを含むように構成する。反応キャビティを含まない実施形態では、キャビティ層は部位層と呼ぶことができる。本明細書では、「ベース側に沿った」または「ベース層に沿った」という句には、ベース層に直接接するキャビティ層を含むか、または、1つまたは複数の介在層によりベース層より分離しているキャビティ層を含む。本明細書では、「上部」「上」「下」等の空間的に相対的な語は、1つの要素またはフィーチャを互いに識別する記述を容易にするために本明細書では用いる。空間的に相対的な語は、構造化基板が、使用または動作時に重力に対して特定の配向を有することは必要としない。例えば、構造化基板のアクティブ側は、一部の実施形態では重力方向と反対の方向を向く。代わりに、構造化基板のアクティブ側は、他の実施形態では重力方向と同一の方向を向く。動作時に液体が沿って流れる側面などの最上面は、重力に対する構造化基板の配向に関わらず、上端面と呼ぶことができる。
【0124】
形成するステップは、206において、反応キャビティのアレイを有するように構成したキャビティ層を提供するステップを含むことができる。形成するステップは、206において、複数のステップを含むことができる。一部の実施形態において、キャビティ層は予め形成した反応キャビティを含む。各反応キャビティは、対応するサブアレイまたはナノ構造のセット(例えば、2つ以上のナノ構造)と一直線としてよい。任意で、キャビティ層をエッチングしてキャビティ層を部分的に取り除き、対応する反応キャビティ内のナノ構造を露呈させることができる。
【0125】
他の実施形態において、反応キャビティは、キャビティ層をベース層の上に位置付け、該ベース層に結合する間に、成形することができる。例えば、NIL物質を、ナノ構造を形成した後でベース層のベース側に沿って付着させ、該ナノ構造を覆うことができる。NIL物質は、例えばスピンコーティング技法を用いて、または、液滴をベース側に沿って付着させることにより、付着させることができる。NIL物質は、NIL技法を用いてインプリントすることが可能な物質を含むことができる。例えば、NIL物質は、ポリマーを含むことができる。NIL物質はその後、NIL物質において反応キャビティを形成するフィーチャのパターンを有する型(鋳型ともいう)で、インプリントする、または、プレス加工することができる。一部の実施形態において、型は透過性で、紫外線(UV)または可視光がそれを通って伝わることが可能である。このような実施形態において、NIL物質は、型をNIL物質に押し付ける間にUVまたは可視光で硬化される、光硬化ポリマーを含むことができる。したがって、NIL物質は硬化して(例えば、固まって)、反応キャビティを形成することができる。このプロセスは、ステップ・アンド・フラッシュインプリントリソグラフィ(SFIL)と同一または類似している場合がある。他の実施形態では、NIL物質は、熱エネルギーおよび/または圧力の適用により硬化することができる。NIL技法および同様のプロセスは、Marc J. MadouのFundamentals of Microfabrication and Nanotechnology: Manufacturing Techniques for Microfabrication and Nanotechnology, Vol. II, 3rdEdition, Part I (pp. 113-116)およびLucasらの“Nanoimprint Lithography Based Approach for the Fabrication of Large-Area, Uniformly Oriented Plasmonic Arrays” Adv. Mater. 2008, 20, 1129-1134に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
各反応キャビティは、対応するナノ構造のサブアレイと一直線であってよい。NIL物質を選択的にエッチングして、対応する反応キャビティ内の複数のナノ構造を露呈させることができる。製造方法は問わず、ナノ構造のサブアレイは対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成することができる。アンサンブル増幅器は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、または、反応キャビティ内で生成された電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0127】
任意で、方法200はまた、208において、反応キャビティ内に有機物質を提供するステップを含むことができる。有機物質はナノ構造を覆うことができる。一部の実施形態では、有機物質は、間隙領域を含むアクティブ側に提供する。有機物質はその後、アクティブ側を研磨することで取り除くことができる。アクティブ側を研磨した後、各反応キャビティは、他の反応キャビティの他の有機物質とは分離した、対応する有機物質を含むことができる。特定の実施形態において、有機物質はゲル材料であり、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、PAZAM、SFA、または、SFAのアジ化したバージョン(アジド-SFA)といった化学的に改質したそれの変形体)である。
【0128】
方法200はまた、指定プロトコルの液体および試料と相互作用する構造化基板の表面を提供するといった、追加のステップを含むことができる。別の例として、方法200は、210において、キャビティ層のアクティブ側に対しフローカバーを取り付けるステップを含むことができる。フローカバーは、フローカバーとアクティブ側の間のフローチャネルを定義することができる。フローカバーを含む実施形態は、米国仮特許出願第61/914275号明細書および国際公開第PCT/US14/69373号に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
図12は、構造化基板280(
図14に図示)を製造する方法220のフローチャートを示す。方法220は
図13および14に関連して記載する。方法220は、方法200のステップ(
図11)と類似または同一の、1つまたは複数のステップを含むことができる。方法220は、222において、ベース側242を有するベース層(つまり、加工基板)240を提供するステップを含む。方法220はまた、224において、ベース側242に沿ってナノ構造246のアレイ244を形成するステップを含む。例えば、フィーチャ層245は、ベース層240のベース側242に(例えば、付着プロセスによって)提供することができる。フィーチャ層245をエッチングして、ナノ構造246のアレイ244を形成することができる。アレイ244は、ナノ構造246のサブアレイ248を含むことができる。
図13にも示すように、隣接するサブアレイ248は、ベース側242に沿って間隔250により分離している。
【0130】
各サブアレイ248は複数のナノ構造246を含むことができ、これは、構造化基板280(
図14)が完全に形成される際、まとまってアンサンブル増幅器を形成する。例えば、各サブアレイ248のナノ構造246は、ナノ構造246が電磁エネルギーを増幅するように、サイズ決めし、成形し、互いに対し位置決めすることができる。図示する実施形態において、ナノ構造246は、共通の形とサイズを有する垂直に立った柱として示す。しかしながら、ナノ構造246は、他の実施形態では異なる形を有することもあることを理解すべきである。一部の実施形態において、アンサンブル増幅器は、実質的にナノ構造246と同一の配列である。本明細書では、「実質的に同一」とは、配列が、製作公差を別とすれば同一であることを意味する。しかしながら、他の実施形態において、単一サブアレイ248のナノ構造246が同一の形、および/または、同一のサイズを有する必要はない。
【0131】
226において、NIL物質252は、ベース層240のベース側242に沿って提供することができる。NIL物質252はナノ構造246のアレイ244を覆うことができる。NIL物質252は、NIL物質252がナノ構造246の間の空きスペースを囲み、埋めるように、粘性の物質とすることができる。NIL物質252は、例えば、ポリマーを含むことができる。図示する実施形態において、NIL物質252は、ベース側242に沿ったNIL層として提供する。他の実施形態では、NIL物質は、インプリント動作時に加圧した際、ベース側242を少なくとも部分的に、効率的に覆う、離散した液滴のアレイとして提供することができる。
【0132】
228において、反応キャビティ256のアレイ254を、NIL物質252にインプリントすることができる。インプリンティングするステップは、228において、型258をNIL物質252に適用するステップを含む。型258は、フィーチャのパターンを含む、非平坦側260を有することができる。フィーチャを、サイズ決めし、成形し、互いに対して位置決めして、反応キャビティ256を形成するような予め決められたやり方でNIL物質252を成形する。型258をNIL物質252に適用すると、型258、NIL物質252、ナノ構造246、およびベース層240を含む、積み重ねられたアセンブリ262が形成される。
【0133】
インプリントするステップはまた、228において、NIL物質252を硬化して、NIL物質252の形を固化するステップを含むことができる。例えば、硬化するプロセスは、UV光または可視光264を積み重ねられたアセンブリ262に適用するステップを含むことができる。NIL物質252は、UVまたは可視光264にさらされた後、固化することができるフォトポリマーを含むことができる。しかしながら、NIL物質252を固化する、または、硬化する別の方法も使用することができる。例えば、熱エネルギー(例えば、熱)または圧力をNIL物質252に適用してNIL物質252を固化し、反応キャビティ256を形成することができる。
【0134】
図14に関し、硬化プロセス後、NIL物質は反応キャビティ256のアレイ254を有する固化NIL層253になる。固化NIL層253は、反応キャビティ256を含む、キャビティ層114(
図10)などのキャビティ層を構成する。各反応キャビティ256は、反応キャビティ256が対応するサブアレイ248の上方に位置するように、ナノ構造246の対応するサブアレイ248と一直線とすることができる。
図13に示すように、ナノ構造246は、固化NIL層253の充填領域266内に位置させることができる。充填領域266は、NIL層253の固化物質により囲まれたナノ構造246を含む。この段階で、充填領域266は、反応キャビティ256の底面268を定義することができる。また、示すように、この段階では、反応キャビティ256は間隙領域270により分離され、該間隙領域270は反応キャビティ256の間を伸長することができる。
【0135】
方法220はまた、230において、充填領域266を取り除き、対応する反応キャビティ256内のナノ構造246を少なくとも部分的に露呈させることができる。例えば、選択的エッチングプロセスを適用し、ナノ構造246を実質的に傷つけたり取り除いたりすることなく、ナノ構造246を囲むNIL層253の物質を取り除くことができる。取り除くステップの間、230において、各反応キャビティ256の底面268を低くし、底面268がベース層240に近づくようにすることができる。一部の実施形態において、充填領域266内のNIL層253は、全体的にエッチングし、ベース層240が底面268の少なくとも一部を形成するようにすることができる。他の実施形態では、
図10の構造化基板100と同様に、NIL層253の一部は、エッチングプロセス後も残ることができる。このような実施形態において、ナノ構造246はNIL層253(またはキャビティ層)を通って伸長することができる。取り除くステップの間、230において、間隙領域270も示すように、ベース層240に対する間隙領域270の高さを低減するようにエッチングすることができる。高さは271Aから271Bに低減する。
【0136】
上記のように、各反応キャビティ256内のナノ構造246は、対応する反応キャビティ256のアンサンブル増幅器272を形成することができる。アンサンブル増幅器272は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、または、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0137】
構造基板280を
図14の下部に示す。構造基板280はアクティブ側282を含み、反応キャビティ256と、反応キャビティ256を分離する間隙領域270を有する。任意で、方法200は、232において、反応キャビティ256内に有機物質274を提供するステップを含むことができる。有機物質274を提供する前に、加工基板を、有機物質274を受け取るために加工することができる。例えば、保護層(例えば、酸化タンタル等)およびシラン層を、保護層に提供することができる。保護層およびシラン層の両方は、ナノ構造246を覆うことができる。提供するステップは、232において、有機物質を加工基板にスピンコーティングするステップを含むことができる。しかしながら、他の追加技法も用いることができる。任意で、保護層、シラン層、および有機物質を有する加工基板をインキュベートすることができる。
【0138】
図14に示すように、有機物質274は反応キャビティ256のナノ構造246を覆うことができる。一部の実施形態において、有機物質274はアクティブ側282全体に提供し、有機物質274が間隙領域270の表面を覆うようにする。有機物質274はその後、アクティブ側282を研磨することにより取り除くことができる。アクティブ側282を研磨した後、各反応キャビティ256はその中に有機物質274を含むことができ、これは隣接する反応キャビティ256の有機物質274とは分離している。各反応キャビティ256内の有機物質274は、アンサンブル増幅器272のナノ構造246を囲む。有機物質274は、色素標識核酸といった、光放射を提供することが可能な生物学的または化学的物質を、支持および/または保持するように構成することができる。
【0139】
図15は、構造化基板を製造する、または、加工する方法300を示すフローチャートである。一部の実施形態において、方法300は、方法200(
図11)および方法220(
図12)のステップと同様または同一のステップを含む。方法300の異なる段階を
図16に示す。方法300は、302において、ベース側322を有するベース層(つまり、加工基板)320を提供するステップを含み、304において、ベース層320のベース側322に沿ってNIL物質324を提供するステップを含むことができる。一部の実施形態において、NIL物質324はNIL層として提供することができる。他の実施形態では、NIL物質324はベース側322に沿って分離液滴として提供することができる。
【0140】
方法300はまた、306において、NIL物質324をインプリントするステップを含むことができる。インプリント後、NIL物質324は、(破線で示す)ベース部326と、ベース部326から突き出たナノ体330のアレイ328を有する、固化NIL層324とすることができる。アレイ328は、複数のサブアレイ329を含むことができる。ベース部326は、隣接するナノ体330の間を伸長する。このように、各ナノ体330は、同一のパターン化層の一部とすることができる。ナノ体330は種々の形を有することができる。図示する実施形態において、ナノ体330は、NIL層324のベース部326から突き出た細長い柱である。別の実施形態では、ベース部326はインプリント後に形成されない。代わりに、ナノ体330のみをインプリント後に形成することができる。任意で、ベース部326をエッチングすることができる。
【0141】
方法300はまた、308において、NIL物質324、および、特にナノ体330に沿って、プラズモン共鳴層334を提供するステップを含むことができる。提供するステップはまた、308において付着させるステップはまた、成長させるステップとも呼ぶことができる。一部の実施形態において、プラズモン共鳴層334は、薄いフィルムまたはコーティングとすることができる。提供するステップは、308において、1つまたは複数の追加技法を用いて実行することができる。例えば、提供するステップは、308において、PECVD、ALD、蒸着、スパッタリング、およびスピンコーティング等のうち少なくとも1つを含むことができる。プラズモン共鳴層334は、ナノ体330を覆うプラズモン共鳴材(例えば、金、銀、およびシリコン等)を含む。プラズモン共鳴層334は、NIL層324全体を覆うことができる。他の実施形態において、プラズモン共鳴層334は、サブアレイ329を覆うように選択的に付着させることができる。したがって、ナノ構造332を形成することができ、ここで各ナノ構造332は、それぞれのナノ体330と、それぞれのナノ体330を覆う、または、囲む、プラズモン共鳴層334の一部を含む。
【0142】
任意で、方法300は、310において、保護層336を提供するステップを含むことができる。保護層336は、プラズモン共鳴層334など下部にある層を、構造化基板の使用時の損傷から保護するように構成する。保護層336は、米国仮出願特許第61/914275号明細書および国際公開第PCT/US14/69373号に記載されている、1つまたは複数の保護層に類似しているとすることができ、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
また任意で、方法300は、312において、固定化層を提供するステップを含むことができ、以後シラン層(図示なし)と呼ぶ。シラン層(つまり、固定化層)は、有機物質、および/または、生物学的もしくは化学的物質の間の結合を容易にするように構成することができる。例として、提供するステップは、312において、蒸着により達成することができる。一部の実施形態において、シラン層は、他の処理ステップの後に提供することができる。この段階で、ベース層320、NIL物質324、プラズモン共鳴層334、保護層336、および、任意のシラン層は、作用側341を有する加工基板339を形成することができる。
【0144】
314において、方法300は、複数の反応キャビティ340を含むキャビティ層338を、作用側341に沿って形成するステップを含むことができる。一部の実施形態において、キャビティ層338は、例えば、NIL物質をインプリントおよび硬化して反応キャビティ340を形成するNIL技法を用いて、形成することができる。しかしながら、他の追加技法を用いてキャビティ層338を提供することもできる。
図16では単一反応キャビティ340のみを示すが、反応キャビティ340のアレイを形成できることを理解すべきである。
【0145】
キャビティ層338を、NILプロセスを用いて形成する場合、ナノ構造332の間の空きスペースはNIL物質324で満たすことができる。方法220に関して上記したように、NIL物質324は選択的エッチングにより取り除くことができる。任意でシラン層を、キャビティ層338および反応キャビティ340を加工基板339に沿って形成した後、提供することができる。NIL物質を取り除いた後、ナノ構造332のアンサンブル増幅器342を対応する反応キャビティ340内に形成することができる。316において、有機物質を反応キャビティ340に提供することができる。
【0146】
図示する実施形態において、キャビティ層338は、NILプロセスを用いて形成する。しかしながら、キャビティ層338は、上記のような、他の追加の、および、任意でサブトラクティブであるプロセスを用いて形成することができることを理解すべきである。
【0147】
図17~19は、1つまたは複数の実施形態でインプリントされ得る、異なるナノ構造を示す。しかしながら、
図17~19に示すナノ構造は、ただの例示であり、限定することを意図するものではない。他のナノ構造は、別の実施形態で用いることができる。
図17A~17Dにおいて、ナノ構造は、対応する円筒形の反応キャビティ内に位置する。他の実施形態では、反応キャビティは異なる形を有することができる。例えば、反応キャビティの横断面は、楕円形、正方形、長方形、または他の多角形等であってよい。さらに他の実施形態では、ナノ構造は平坦な表面に沿って位置させることもできる。
【0148】
図17Aは、反応キャビティ404にあるナノプラグ402の斜視図であり、これはナノウェルとも呼ぶことができる。ナノプラグ402は金(Au)を含むことができる。図示する実施形態において、ナノプラグ402は、反応キャビティ404内で中心に位置するが、他の実施形態では他の位置にあってよい。
図17Bは、1つまたは複数の実施形態内で用いることができる、ボウタイアンテナ406の斜視図である。ボウタイアンテナ406は、形が三角形で、間に僅かな隙間を開けて互いに向き合う、2つの別々のナノ構造408を含む。ボウタイアンテナ406は、アンサンブル増幅器を形成することができる。
図17Cは、スペースを開けた一連のビーム411を含む、反応キャビティ412にあるナノ格子410を示す。ナノ格子410は、より低い層に形成し、続いて、反応キャビティ412をナノ格子410の上に形成する際露呈させることができる。示すように、ナノ格子410は反応キャビティ412内に限定されず、反応キャビティ412の壁を越えて伸長する。
図17Dは、反応キャビティ416内に配置した、複数のナノ粒子414を示す。ナノ粒子414は、反応キャビティ416内で不規則な位置に分布させることができる。ナノ粒子414は、例えば、リフローまたは付着プロセスによって形成することができる。
図17Eは、ダイマー420およびトライマー422を示す。ダイマー420およびトライマー422は、単一の反応キャビティ(図示せず)内に単独で配置することができ、そこに他のナノ構造は配置されない。代わりに、ダイマー420およびトライマー422は、共通の反応キャビティを共有することができる。任意で、ダイマー420およびトライマー422は、反応キャビティ内には配置せず、代わりに、平坦な表面(図示せず)に沿って分布させる。
【0149】
図18A~18Dは、中にナノ構造を配置した反応キャビティの側断面を示す。反応キャビティは、例えば、円筒形または長方形とすることができる。
図18Aには、複数のナノ構造432を含む反応キャビティ430を示す。ナノ構造432は柱であり、これは円筒形または四角形とすることができる。
図18Bには、複数のナノ構造436を含む反応キャビティ434を示す。ナノ構造436は、円錐形またはピラミッド型とすることができる。
図18Cには、複数のナノ構造440を含む反応キャビティ438を示す。各ナノ構造440は円錐形またはピラミッド型とし、ナノ構造440の上部に粒子部442(例えば、金粒子)を配置することができる。
図18Dには、複数のナノ構造446を含む反応キャビティ444を示す。ナノ構造446は、互いに向き合う側壁を構成する。
【0150】
図19A~19Dは、中に1つまたは複数のナノ構造を配置した、反応キャビティの平面図を示す。より具体的には、
図19Aは、中心軸452を囲むナノリング450を示す。ナノリング450は、
図19Aでは環状であるが、他の実施形態では他の形(例えば、多角形)とすることができる。
図19Bは、互いに対して位置決めした5つの柱454を示す。
図19Cおよび19Dは、それぞれ、ボウタイアンテナ456、458を示す。ボウタイアンテナ456、458は、異なる光の分極に選択的に応答するように構成する。
【0151】
図17A~7C 、18A~18D、19B~19Dのそれぞれにおいて、ナノ構造は、対応する配向依存性のアンサンブル増幅器を形成し、アンサンブル増幅器が指定した配向の分極光に選択的に応答するように構成することができる。このようなアンサンブル増幅器は、分極化増幅器と呼ぶことができる。例えば、アンサンブル増幅器は、指定した分極の励起光に実質的に平行の双極子モーメントを有するように構成することができる。このような分極化増幅器を有する反応キャビティにより提供される光放射の量は、励起光の分極に左右される。
【0152】
他の実施形態において、アンサンブル増幅器は、予め決められた波長の光放射に選択的に応答するように構成することができる。例えば、放射源が予め決められた波長と等しい、または、近い光放射を提供する場合、アンサンブル増幅器は該光放射を増幅することができる。しかしながら、放射源が、予め決められた波長と等しくも近くもない光放射を提供する場合、アンサンブル増幅器は、該光放射を部分的にのみ増幅するか、または、該光放射を無視できる量で増幅することができる。
【0153】
したがって、本出願は種々の実施形態と、該実施形態とともに用いることができる1つまたは複数の態様(例えば、フィーチャ)を記載する。種々の実施形態は、特定の実施形態において、組み合わせ、および/または、さらに修正することができることを理解すべきである。
【0154】
種々の実施形態はナノ構造を含む。一部の実施形態において、ナノ粒子は、ウェル内にダイマーまたはトライマーを含むことができる。一部の実施形態において、ナノ構造は、ボウタイナノアンテナを含むことができる。一部の実施形態において、ナノ構造はナノロッドを含むことができる。一部の実施形態において、ナノ構造は、ナノリングを含むことができる。一部の実施形態において、ナノ構造はナノプラグを含むことができる。一部の実施形態において、ナノ構造はナノ格子を含むことができる。
【0155】
任意で、ナノ構造は、プラズモン共鳴材を含むことができる。特定の実施形態において、ナノ構造は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)からなる群から選択した物質、クロム(Cr)、銅(Cu)、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、ならびに、ヒ化ガリウムを含む。
【0156】
実施形態において、(a)固体支持体に分布させた複数のナノ粒子と、(b)複数のナノ粒子と関連して層を形成するゲル材料と、(c)ゲル材料内に標的核酸のライブラリとを含む構造化基板を提供する。
【0157】
別の態様において、ゲル材料はナノ粒子を覆うことができる。
【0158】
別の態様において、固体支持体はフローセルの表面を含むことができる。
【0159】
別の態様において、固体支持体は複数のウェルを有する平坦な表面を含むことができ、該複数のウェル内にナノ粒子を分布させる。
【0160】
一実施形態において、構造化基板を作成する方法を提供する。該方法は、(a)平坦な表面を含む固体支持体を提供するステップと、(b)複数のナノ粒子を固体支持体の表面に分散させるステップと、(c)ゲル材料で固体支持体の少なくとも一部をコーティングすることにより、複数のナノ粒子を覆うゲル層を形成するステップを含む。
【0161】
実施形態の一態様において、ナノ粒子はプラズモン共鳴材で形成することができる。
【0162】
別の態様では、ステップ(b)およびステップ(c)は同時に行うことができる。
【0163】
別の態様では、ステップ(b)はステップ(c)の前に行うことができる。
【0164】
別の態様において、前記方法はまた、(d)標的核酸ライブラリをゲル材料に送達して、該ゲル材料で核酸フィーチャのアレイを生成するステップを含む。任意で、各フィーチャは異なる核酸種を含むことができる。
【0165】
一実施形態において、核酸を検出する方法を提供する。該方法は、(a)複数のナノ粒子;複数のナノ粒子を覆う層を形成するゲル材料;および、ゲル材料内に標的核酸ライブラリを含む固体支持体を提供するステップと、(b)固体支持体を、標的核酸に結合する少なくとも1つの蛍光標識プローブと接触させるステップと、(c)固体支持体上の蛍光シグナルを検出し、少なくとも1つのプローブに結合する標的核酸を識別するステップを含む。
【0166】
実施形態の一態様において、ナノ粒子は、プラズモン共鳴材で形成することができる。例えば、ナノ粒子は、銀、金、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、およびヒ化ガリウムからなる群から選択した物質を含むことができる。
【0167】
別の態様において、固体支持体はフローセルの表面を含むことができる。
【0168】
別の態様において、固体支持体は複数のウェルを有する平坦な表面を含むことができる。ナノ粒子は、複数のウェル間に分布させることができる。
【0169】
別の態様において、蛍光標識プローブは、蛍光標識ヌクレオチドを含むことができる。
【0170】
別の態様において、蛍光標識プローブは、蛍光標識オリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0171】
別の態様において、検出動作(つまり、検出するステップ)には、各フィーチャにおける標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションの検出を含む。
【0172】
別の態様において、検出動作(つまり、検出するステップ)には、各フィーチャにおける標的核酸に対するヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドプローブの導入の検出を含む。
【0173】
一実施形態において、表面を有する固体支持体を含むアレイを提供する。表面は複数のウェルを含む。ウェルは間隙領域により互いに分離する。アレイはまた、前記複数のウェルそれぞれに、複数のナノ構造を含む。
【0174】
実施形態の一態様において、ナノ構造はプラズモンナノ構造とすることができる。
【0175】
別の態様では、ナノ構造は、ウェルの底に位置させることができる。
【0176】
別の態様では、ナノ構造は、ウェルの壁に沿って位置させることができる。
【0177】
別の態様では、間隙領域は、実質的にナノ構造を欠くことができる。
【0178】
別の態様では、ナノ構造はナノ粒子を含むことができる。
【0179】
別の態様では、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは100nm超の直径を有することができる。別の態様では、ナノ粒子は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20 nm、または、10nm未満の直径を有することができる。
【0180】
別の態様では、ウェルはゲル材料を含むことができる。任意でゲル材料は、ヒドロゲルを含む。
【0181】
別の態様では、固体支持体は、フローセルの表面を含むことができる。
【0182】
一実施形態において、アレイを作成する方法を提供する。該方法は、平坦な表面を含む固体支持体を得るステップを含む。表面は複数のウェルを含む。ウェルは間隙領域により互いに分離している。該方法はまた、固体支持体上に金属膜をコーティングするステップと、該金属膜を熱アニールプロセスにかけ、それにより、前記複数のウェルそれぞれに複数のプラズモンナノ構造を形成するステップを含む。
【0183】
該実施形態の一態様において、前記方法はまた、平坦な表面を研磨し、間隙領域からナノ構造を実質的に取り除き、ウェル内のナノ構造は維持するステップを含む。
【0184】
別の態様では、前記方法はまた、ゲル材料を有する固体支持体の少なくとも一部をコーティングし、それにより、ゲル材料を複数のウェルに付着させるステップを含む。
【0185】
一実施形態において、核酸を検出する方法を提供し、該方法は、(a)平坦な表面であって、該表面は複数のウェルを含み、該ウェルは間隙領域により互いに分離している表面と、前記複数のウェルそれぞれにある複数のナノ構造と、該複数のナノ構造を覆う層を形成するゲル材料と、該ゲル材料内に標的核酸ライブラリとを含む固体支持体を提供するステップを含む。該方法はまた、(b)固体支持体を、標的核酸に結合する少なくとも1つの蛍光標識プローブと接触させるステップと、(c)固体支持体上の蛍光シグナルを検出し、少なくとも1つのプローブと結合する標的核酸を識別するステップを含む。
【0186】
該実施形態の一態様において、ナノ構造はプラズモンナノ構造とすることができる。
【0187】
別の態様では、ナノ構造はウェルの底に位置させることができる。
【0188】
別の態様では、ナノ構造はウェルの壁に沿って位置させることができる。
【0189】
別の態様では、間隙領域は実質的にナノ構造を欠くことができる。
【0190】
別の態様では、ナノ構造はナノ粒子を含むことができる。
【0191】
別の態様では、ナノ粒子は、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは100nm超の直径を有することができる。
【0192】
別の態様では、ナノ粒子は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nm、または、10nm未満の直径を有することができる。
【0193】
別の態様では、ゲル材料はヒドロゲルを含むことができる。
【0194】
別の態様では、平坦な表面はフローセルの表面を含むことができる。
【0195】
別の態様において、蛍光標識プローブは、蛍光標識ヌクレオチドを含むことができる。
【0196】
別の態様において、蛍光標識プローブは、蛍光標識オリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0197】
別の態様において、検出するステップには、各フィーチャにおける、標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションの検出を含むことができる。
【0198】
別の態様において、検出するステップには、各フィーチャにおける標的核酸に対するヌクレオチドプローブまたはオリゴヌクレオチドプローブの導入の検出を含むことができる。
【0199】
一実施形態において、アクティブ側を有する基板体を含む構造化基板を提供する。基板体は、アクティブ側に沿って開口した反応キャビティと、該反応キャビティを分離する間隙領域を含む。構造化基板はまた、各反応キャビティに位置するアンサンブル増幅器を含む。アンサンブル増幅器は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成した複数のナノ構造を含む。
【0200】
実施形態の一態様において、各アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応するアンサンブル増幅器の他のナノ構造に対し、予め決められた位置を有する。任意で、アンサンブル増幅器は、実質的に同一のナノ構造配列を有する。
【0201】
別の態様では、アクティブ側は、間隙領域に沿って伸長する側面を含むことができる。側面は実質的に平坦である。反応キャビティは側面に対し開口する。
【0202】
別の態様では、構造化基板は、反応キャビティ内に配置されナノ構造を覆う、有機物質を含むことができる。有機物質は、対応する反応キャビティ内に生体分子を保持するように構成することができる。
【0203】
任意で、有機物質はゲル材料を含む。任意で、有機物質はヒドロゲルを含む。
【0204】
任意で、有機物質は、単一の生体分子のみを収容するように構成した体積を有し、立体排除が、2つ以上の生体分子が捕捉される、または、反応キャビティに播種されることを防ぐようにする。
【0205】
任意で、有機物質は液体に対し透過性があり、核酸に付着するように構成する。
【0206】
別の態様では、基板体はベース層を含み、該ベース層はそこから突き出るナノ構造を有する。基板体はまた、ベース層に対して積み重ねられたキャビティ層を含む。キャビティ層は、反応キャビティを含むように成形することができる。
【0207】
任意で、ナノ構造は、ベース層からキャビティ層の一部を通って、対応する反応キャビティへ伸長する。
【0208】
別の態様では、アンサンブル増幅器内のナノ構造は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように、物質組成、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0209】
別の態様では、アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するように、物質組成、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0210】
任意で、電磁エネルギーには蛍光光放射を含む。
【0211】
別の態様では、アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するように、組成物、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0212】
任意で、励起光または光放射の波長は、300ナノメートル(nm)および750nmの間である。
【0213】
別の態様では、各ナノ構造はナノ体を備えることができ、これはナノインプリントリソグラフィ(NIL)物質と、該ナノ体を囲む外層を含む。一部の実施形態において、外層は、プラズモン共鳴材を含むことができる。特定の実施形態において、外層は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、および、ヒ化ガリウムのうち少なくとも1つを含むことができる。
【0214】
任意で、保護層はナノ体を覆って伸長することができる。
【0215】
別の態様では、構造化基板はまた、基板体に結合した装置カバーを含んで基板体のアクティブ側と装置カバーの間にフローチャネルを形成し、該フローチャネルは、液体のフローがその間を通過し、反応キャビティに流れ込むように構成する。
【0216】
別の態様では、反応キャビティは対応する底面を有する。ナノ構造は対応する反応キャビティの底面からアクティブ側に向かって突き出る。
【0217】
別の態様では、各反応キャビティは、アクティブ側と反応キャビティの底面との間で伸長する、少なくとも1つの側壁により定義される。ナノ構造は、少なくとも1つの側壁の少なくとも一部を形成する。任意で、ナノ構造は、対応する反応キャビティの底面から突き出る。
【0218】
別の態様では、間隙領域は実質的にナノ構造を欠く。
【0219】
別の態様では、ナノ構造は、仰角軸に沿ってアクティブ側に向かって伸長する高さを有することができ、該高さは少なくとも、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは100nmである。
【0220】
別の態様では、ナノ構造は、仰角軸に沿ってアクティブ側に向かって伸長する高さを有することができ、ナノ構造は該仰角軸に対し横に見た横断面寸法を有し、該横断面寸法は、少なくとも、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nmまたは100nmである。
【0221】
別の態様では、ナノ構造は、仰角軸に沿ってアクティブ側に向かって伸長する高さを有することができ、ナノ構造は該仰角軸に対し横に見た横断面寸法を有し、該横断面寸法は、100nm、90nm、80nm、70nm、60nm、50nm、40nm、30nm、20nmまたは10nm未満である。
【0222】
任意で、横断面寸法は直径とすることができる。
【0223】
任意で、横断面寸法は、ナノ構造を通して得られる最大の横断面寸法を表すことができる。
【0224】
別の態様では、アンサンブル増幅器は、反応キャビティ内にダイマーまたはトライマーを含む。
【0225】
別の態様では、アンサンブル増幅器は、ボウタイナノアンテナを形成する。
【0226】
一実施形態において、構造化基板の製造方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース層のベース側に沿ってナノ構造を形成するステップを含む。該方法はまた、ベース側の上に積み重ねられたキャビティ層を形成するステップを含む。キャビティ層は、複数の反応キャビティを含み、ここで各反応キャビティは、その中に複数のナノ構造を含む。複数のナノ構造は、対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成し、これは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0227】
実施形態の一態様において、各アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応するアンサンブル増幅器の他のナノ構造に対し、予め決められた位置を有する。任意で、アンサンブル増幅器は、実質的に同一のナノ構造配列を有する。
【0228】
別の態様では、アンサンブル増幅器は、アンサンブル増幅器からの応答は電磁エネルギーの分極に基づくような分極化構成を有する。
【0229】
別の態様では、アクティブ側は間隙領域に沿って伸長する側面を含み、該側面は実質的に平坦である。
【0230】
別の態様では、前記方法はまた、反応キャビティ内に有機物質を提供し、該有機物質がナノ構造を覆うようにするステップを含むことができる。有機物質は、対応する反応キャビティ内の生体分子を固定化するように構成することができる。任意で、有機物質はゲル材料を含む。任意で、有機物質はヒドロゲルを含む。
【0231】
任意で、前記方法はまた、アクティブ側を研磨し、間隙領域から有機物質を取り除くステップを含む。
【0232】
任意で、有機物質は単一の生体分子のみを収容するように構成した体積を有し、立体排除が、2つ以上の生体分子が捕捉される、または、反応キャビティに播種されることを防ぐようにする。
【0233】
任意で、有機物質は液体に対し透過性があり、核酸に付着するように構成する。
【0234】
別の態様では、ナノ構造は、ベース層からキャビティ層の一部を通って対応する反応キャビティへ伸長することができる。
【0235】
別の態様では、アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように、物質組成、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0236】
特定の実施形態において、アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するように、物質組成、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0237】
任意で、電磁エネルギーは蛍光光放射を含む。
【0238】
別の態様では、アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するように、組成物、形、および、アンサンブル増幅器の他のナノ構造に対する相対位置を有する。
【0239】
任意で、励起光または光放射の波長は、300ナノメートル(nm)と750nmの間である。
【0240】
別の態様では、各ナノ構造は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)物質を含むナノ体と、ナノ体を囲む外層を備えることができる。任意で、外層は、金(Au)、銀(Ag)、スズ(Sn)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、p型ドープシリコン、n型ドープシリコン、および、ヒ化ガリウムのうち少なくとも1つを含む。
【0241】
任意で、保護層はナノ体を覆うように伸長することができる。
【0242】
別の態様では、前記方法は、基板体に装置カバーを取り付けて基板体のアクティブ側と装置カバーの間にフローチャネルを形成し、フローチャネルを、液体のフローがその間を通過し、反応キャビティに流れ込むように構成するステップを含む。
【0243】
別の態様では、反応キャビティは対応する底面を有することができる。ナノ構造は、対応する反応キャビティの底面からアクティブ側へ突き出ることができる。
【0244】
別の態様では、各反応キャビティは、アクティブ側と反応キャビティの底面との間を伸長する、少なくとも1つの側壁により定義することができる。ナノ構造は、少なくとも1つの側壁の、少なくとも一部を形成することができる。任意で、ナノ構造は対応する反応キャビティの底面から突き出る。
【0245】
任意で、間隙領域は実質的にナノ構造を欠く。
【0246】
一実施形態において、構造化基板を製造する方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース層のベース側に沿ってナノ構造を形成するステップと、ナノ構造のアレイを覆うようにナノインプリントリソグラフィ(NIL)層を提供するステップを含む。該方法はまた、NIL層に反応キャビティのアレイをインプリントするステップを含み、ここでナノ構造の異なるサブアレイが各反応キャビティの下に位置する。ナノ構造の各サブアレイは、NIL層の各充填領域により囲まれ得る。該方法はまた、NIL層の各充填領域を取り除き、対応する反応キャビティ内にあるナノ構造のサブアレイを露呈させるステップを含む。各反応キャビティ内にあるナノ構造のサブアレイは、対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成することができ、これは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0247】
実施形態の一態様では、NIL層は上部NIL層であり、ここで、ナノ構造を形成するステップは、底部NIL層を提供するステップと、ナノ構造をインプリントするステップを含む。
【0248】
別の態様では、各アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応するアンサンブル増幅器の他のナノ構造に対し予め決められた位置を有し、ここで、アンサンブル増幅器は実質的に同一のナノ構造配列を有する。
【0249】
別の態様では、アンサンブル増幅器は、アンサンブル増幅器からの応答が電磁エネルギーの分極に基づくように、分極構成を有する。
【0250】
別の態様では、アクティブ側は間隙領域に沿って伸長する側面を含み、該側面は実質的に平坦である。
【0251】
別の態様では、前記方法はまた、反応キャビティ内に有機物質を提供し、該有機物質がナノ構造を覆うようにするステップを含むことができ、該有機物質は、対応する反応キャビティ内の生体分子を固定化するように構成する。任意で、有機物質はゲル材料を含む。任意で、有機物質はヒドロゲルを含む。
【0252】
別の態様では、前記方法はまた、アクティブ側を研磨し、間隙領域から有機物質を取り除くステップを含む。
【0253】
一実施形態において、構造基板を製造する方法を提供する。該方法は、ベース側を有するベース層を提供するステップと、ベース側に沿ってナノインプリントリソグラフィ(NIL)層を提供するステップを含む。該方法はまた、NIL層をインプリントしてベース部および該ベース部から突き出たナノ体のアレイを形成するステップを含む。該方法はまた、ナノ体を覆うプラズモン共鳴フィルム(または、層)を付着させ複数のナノ構造を形成するステップを含む。各ナノ構造は、対応するナノ体とプラズモン共鳴フィルムの一部を含む。該方法はまた、複数の反応キャビティを含むキャビティ層を形成するステップを含み、ここで各反応キャビティは、その中に複数のナノ構造を含む。複数のナノ構造は対応する反応キャビティのアンサンブル増幅器を形成し、これは、対応する反応キャビティに伝わる電磁エネルギーを増幅するか、対応する反応キャビティ内で生成される電磁エネルギーを増幅するか、少なくとも一方であるように構成する。
【0254】
実施形態の一態様では、キャビティ層はNIL物質を含むことができる。キャビティ層を形成するステップは、キャビティ層のNIL物質をインプリントして反応キャビティを形成するステップを含む。
【0255】
別の態様では、各アンサンブル増幅器のナノ構造は、対応するアンサンブル増幅器の他のナノ構造に対し、予め決められた位置を有することができる。任意で、アンサンブル増幅器は、実質的に同一のナノ構造配列を有する。
【0256】
別の態様では、アンサンブル増幅器は、アンサンブル増幅器からの応答が電磁エネルギーの分極に基づくように、分極構成を有する。
【0257】
別の態様では、前記方法はまた、反応キャビティ内に有機物質を提供し、該有機物質がナノ構造を覆うようにし、該有機物質は、対応する反応キャビティ内の生体分子を固定化するように構成するステップを含むことができる。任意で、該方法は、アクティブ側を研磨して間隙領域から有機物質を取り除くステップを含むことができる。
【0258】
別の態様では、前記方法は、基板体に装置カバーを取り付けて基板体のアクティブ側と装置カバーの間にフローチャネルを形成し、フローチャネルを、液体のフローがその間を通過し、反応キャビティに流れ込むように構成するステップを含む。
【0259】
この出願を通し、種々の刊行物、特許、および/または特許出願に言及した。これらの刊行物の開示はその全体が、本出願における参照により本明細書に組み込まれる。
【0260】
本明細書では、「含む(comprising)」、「備える(including)」、および「有する(having)」等の用語は、非限定であることを意図し、言及した要素のみを含むのではなく、追加の要素も包含し得る。
【0261】
上記の記載は、例示的であることを意図し、限定的であることは意図しないことを理解すべきである。例えば、上記の実施形態(および/または、その態様)は、互いに組み合わせて用いることができる。加えて、多くの修正を行い、本発明の範囲から離れることなく、本発明の教示に特定の状況または物質を適応させることができる。本明細書に記載した寸法、物質の種類、種々の成分の配向、種々の成分の数および位置は、ある実施形態のパラメータを定義することを意図し、決して限定するものではなく、単なる例示的な実施形態である。特許請求の精神および範囲内にある多くの他の実施形態および修正が、上記記載を検討することにより、当業者には明らかになるであろう。そのため、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に定められるべきである。
【0262】
記載では、「例示的な実施形態において」、「一部の実施形態において」、「特定の実施形態において」等の句は、記載する実施形態が、本出願にしたがって形成または実行することのできる実施形態の例であることを意味する。該句は、発明の主題をその実施形態に限定することは意図しない。より具体的には、発明の主題の他の実施形態は、特定の実施形態とともに記載した、言及した特徴または構造を含むことはできない。
【0263】
添付の特許請求の範囲において、「備える(including)」および「ここで(in which)」という用語は、「含む(comprising)」および「ここにおいて(wherein)」というそれぞれの用語の、平易な英語の同義語として用いる。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」「第2」「第3」等の用語は単に符号として用い、その対象に数的要件を課すことを意図するものではない。さらに、以下の特許請求の範囲の限定は、ミーンズ・プラス・ファンクション形式で書かれたものではなく、そのような特許請求の範囲における限定が、さらなる構造を有さない機能の言及が後に続く「~のための手段」という表現を、明示的に使用しない限り、かつ明示的に使用するまでは、米国特許法第112条(f)に基づき解釈されることを意図するものではない。
【0264】
本出願の主題はまた、米国特許出願公開第2014/0242334号明細書、同第2014/0079923号明細書、および同第2011/0059865号明細書に記載された同様の主題とともに適用可能であるか、それを含むことができる。これらの刊行物はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0265】
以下の特許請求の範囲は、本出願の2つ以上の実施形態を記載し、これにより、本出願の記載に組み込まれる。