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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】穿刺部を閉塞する器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
A61B17/00 500
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017245417
(22)【出願日】2017-12-21
(62)【分割の表示】P 2015018455の分割
【原出願日】2005-11-01
(65)【公開番号】P2018069096
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2018-01-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】10/982,387
(32)【優先日】2004-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10/982,384
(32)【優先日】2004-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507343626
【氏名又は名称】アクセスクロージャー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】コスラビ,ファラッド
(72)【発明者】
【氏名】パイ,シュレッシュ,エス.
(72)【発明者】
【氏名】バガオイサン,セルソ,ジェイ.
【合議体】
【審判長】千壽 哲郎
【審判官】津田 真吾
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6699261(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を貫通する穿刺部を閉塞する器具であって、
近位端、組織貫通穿刺部に挿入されるサイズの遠位端、及び前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を含むカートリッジと、
前記カートリッジの管腔内に滑動可能に配置された栓であって、近位端と遠位端との間に延びる管腔を含む栓と、
前記カートリッジの管腔内において滑動可能なプッシャ部材であって、前記カートリッジが前記プッシャ部材に対して引き戻されるときに前記プッシャ部材の遠位端が前記栓の近位端に接触することにより前記カートリッジから前記栓を押して展開させるプッシャ部材と、
前記栓の管腔を滑動可能に通る細長い部材、及び前記細長い部材の遠位端に担持された拡張可能な位置決め要素を含む位置決め部材であって、前記細長い部材が前記栓の管腔及び前記カートリッジの管腔並びに前記プッシャ部材の管腔を通るように受容される結果、前記カートリッジ、栓及びプッシャ部材が、前記位置決め部材における近位位置から、前記栓が前記位置決め要素に隣接して配置される遠位位置まで進行可能となる位置決め部材と、
前記プッシャ部材が前記遠位位置へと進行して所定位置に達すると前記位置決め部材に対する前記プッシャ部材の、前記所定位置から近位方向の動きを制限する前記プッシャ部材の及び前記位置決め部材の協働要素と
を含み、
前記プッシャ部材の協働要素は前記プッシャ部材の管腔まわりに形成され
前記協働要素は、前記プッシャ部材の及び前記位置決め部材の第1要素及び第2要素を含み、
前記第1要素は、前記カートリッジ、栓及びプッシャ部材が前記遠位位置へと進行するときに前記第2要素を自由に通過し、
前記第2要素は、前記第1要素が前記第2要素を超えて近位方向に戻ることを防止することにより、前記プッシャ部材が前記遠位位置から近位方向に引き戻されることを防止する器具。
【請求項2】
組織を貫通する穿刺部を閉塞する器具であって、
遠位端に拡張可能な位置決め要素を有する細長い部材を含む位置決め部材と、
近位端、組織貫通穿刺部に挿入されるサイズの遠位端、及び前記近位端と遠位端との間に延びる管腔を含むカートリッジと、
前記カートリッジの管腔内に滑動可能に配置された栓であって、近位端と遠位端との間に延びる管腔を含む栓と、
前記カートリッジの管腔内において滑動可能なプッシャ部材であって、前記プッシャ部材の遠位端が前記栓の近位端に接触することにより前記カートリッジから前記栓を押して展開させ、前記カートリッジは前記細長い部材の近位端に配置され、前記細長い部材が前記栓の管腔及び前記カートリッジの管腔並びに前記プッシャ部材の管腔を通るように受容される結果、前記カートリッジ、栓及びプッシャ部材が、前記位置決め要素から近位方向に離間されて一緒になって前記位置決め部材の近位端から、前記カートリッジの遠位端及び前記栓が前記位置決め要素に隣接して配置される遠位位置へと向かって進行可能となるプッシャ部材と、
前記プッシャ部材がひとたび前記遠位位置へと進行すると、前記位置決め部材に対する前記プッシャ部材の近位方向の動きを制限する前記プッシャ部材の及び前記位置決め部材の協働要素と
を含み、
前記プッシャ部材の協働要素は前記プッシャ部材の管腔まわりに形成され
前記協働要素は、前記プッシャ部材の及び前記位置決め部材の第1要素及び第2要素を含み、
前記第1要素は、前記カートリッジ、栓及びプッシャ部材が前記遠位位置へと進行するときに前記第2要素を自由に通過し、
前記第2要素は、前記第1要素が前記第2要素を超えて近位方向に戻ることを防止することにより、前記プッシャ部材が前記遠位位置から近位方向に引き戻されることを防止する器具。
【請求項3】
前記栓は前記遠位位置にある前記位置決め要素の直近に配置される請求項1又は2の器具。
【請求項4】
前記協働要素は、前記プッシャ部材が前記遠位位置から遠位方向に向けられる結果、前記位置決め要素が拡張したときに前記栓が前記プッシャ部材と前記位置決め要素との間で圧縮され得るようになることを許容する請求項1~のいずれか一項の器具。
【請求項5】
前記第1要素はラッチ要素を含む請求項1又は2の器具。
【請求項6】
前記第2要素は隆起要素を含む請求項の器具。
【請求項7】
前記位置決め部材が、前記位置決め要素が折りたたまれたまま前記プッシャ部材を通過して除去可能となることにより、前記位置決め部材が穿刺部から引き抜かれることが許容され、前記位置決め部材が引き抜かれている間に前記栓が近位方向に動くことが前記プッシャ部材によって防止される請求項1又は2の器具。
【請求項8】
前記カートリッジは前記プッシャ部材に対して引き戻し可能であり、
前記プッシャ部材は、前記カートリッジが引き戻されている間に前記栓が近位方向に動くことを防止する遠位端を含む請求項1~のいずれか一項の器具。
【請求項9】
近位端と、
組織貫通穿刺部に挿入されるサイズの遠位端と、
前記カートリッジを受容するべく前記近位端と遠位端との間に延びる管腔と
を含む送達シースをさらに含む請求項1~のいずれか一項の器具。
【請求項10】
前記栓は、円盤形、中実の円筒形、圧延シートの円筒形、又は折りたたみシートの円筒形をした細長い本体を含む請求項1~のいずれか一項の器具。
【請求項11】
前記位置決め部材は、前記位置決め部材が穿刺部の中に前進されるときに前記カートリッジが前記近位位置において前記穿刺部の外側に配置されるような長さを有する請求項1の器具。
【請求項12】
前記栓は、加水分解により分解可能な結合を含む凍結乾燥されたヒドロゲルから形成され、
前記ヒドロゲルは水性の生理的環境に曝されると拡張する請求項1~11のいずれか一項の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体部の穿刺を閉塞するための器具に関し、より具体的には組織を通過し脈管内に延びる脈管穿刺を閉塞するための器具、および患者の皮膚から血管もしくはその他体部管腔に延びる経皮的穿刺の中に栓を送達して穿刺を閉塞するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の脈管構造に経皮的にアクセスするための、例えば脈管内で作業を行うため、および作業完了後に生じる穿刺を閉塞するための器具および方法が知られている。例えば、中空針を患者の皮膚およびその被覆組織を通して血管内に挿入することができる。ガイドワイヤを針管腔から血管内に通すことができ、その後針を取り除くこともできる。次に誘導シースをガイドワイヤ上に沿って進め、例えば一緒に、もしくは続けて一つまたは複数の拡張器を血管内に通すこともできる。医療処置を行うために、カテーテルまたはその他装置を誘導シースの中およびガイドワイヤの上をある位置まで進めることもできる。このように誘導シースは、脈管装置の血管内へのアクセスおよび/または導入を容易にすると同時に、血管壁の外傷を最小限にし、かつ/または失血を最小限にする。処置終了後に装置および誘導シースは除去され、皮膚と血管壁の間に延びる穿刺が残ることがある。
【0003】
前記の穿刺を閉塞するために、被覆組織に、例えば手および/またはサンドバッグを用いて外から圧力を加えて止血してもよい。しかしながら、この方法は時間および費用がかかり、医療専門家の時間を一時間ほども必要とする。これは患者にとっても不快であり、患者は処置室、カテーテル室、または待合室の中で不動姿勢を保つことが要求される。さらに、止血前に、出血からの血腫のリスクもある。
【0004】
Fowlerの米国特許第5,108,421号は、組織を通して穿刺内に送達できる栓を開示している。前記の栓は、多孔性、生体吸収性の拡張可能な止血性コラーゲンスポンジまたは重合ポリ乳酸またはポリグリコール酸から作られた円筒形の部材である。一つの態様では、穿刺を通して血管内にカテーテルが挿入される。カテーテル上のバルーンが拡張され、バルーンは血管壁の穿刺に近接して配置されるまで引き戻される。栓は、栓がバルーンに触れるまで穿刺の中を進めることができる。一度栓が穿刺内に配置されると、バルーンを萎ませて引き抜き、穿刺の中に栓を残して穿刺を拡張したまま閉塞し、および/または止血を促進することができる。
【0005】
またはKenseyらに与えられた米国特許第5,192,302号および第5,222,974号は、誘導シースを通して穿刺部位に送達できる生体吸収性コラーゲン栓を記載している。しかしながら開示された栓は、血管に対して適切に配置することが難しく、血流内にコラーゲン物質が露出すると、それが下流に流れて塞栓の原因となり、一般的に望ましくないとされるため、この方法には問題がある。
【0006】
米国特許第6,605,295号は、患者体部の管腔または空所に導入され、生検針の跡を閉塞または栓をし、軟弱な組織を補強し、あるいは治療化合物を送達できる、実質的に脱水されたヒドロゲルのロッド、栓、押しつぶされた、または不規則形状の小片を記載している。一つの態様では、脱水ヒドロゲルの栓は動脈切開術部位の中に置かれ、組織液および血液が存在すると水和してカテーテルシース跡を満し、それ以上出血しないようにできる。平衡水和状態まで膨潤させることによって、栓はそれ自体をその位置にしっかり固定でき、それによって穿刺部位に大きな血腫が形成されるリスクを下げる。
【0007】
米国特許第6,703,047号は、脱水されたヒドロゲル前駆体をベースとした、組織接着性組成物を開示している。前記ヒドロゲルは、例えば、組織からの流体漏れを閉塞するための、接着性薬物送達デポー剤として、ならびに組織を増大および/または支持するための手段として用いることができる。ヒドロゲルは、開放創傷部位に直接投与するか、あるいは、例えば非接着性の裏当て材、吸収性裏当て材、シリンジアプリケータ、粉末噴霧器、もしくはエアゾール化システム、または無針注入器を用いて投薬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,108,421号明細書
【文献】米国特許第5,192,302号明細書
【文献】米国特許第5,222,974号明細書
【文献】米国特許第6,605,295号明細書
【文献】米国特許第6,703,047号明細書
【発明の概要】
【0009】
発明は、体内の穿刺を閉塞するための器具、より具体的には血管に延びる脈管穿刺内に一時的もしくは永久的な止血を提供するための器具、および/または患者の皮膚から血管もしくはその他体部管腔に延びる経皮的穿刺の中に閉塞栓を送達するための器具を目的とする。
【0010】
一つの態様に拠れば、例えば円盤、円筒、もしくはその他の栓などのあらかじめ決められた形状をした担体を含む組織を貫通して延びる穿刺を閉塞するための装置が提供される。担体には第一ヒドロゲル前駆体が配置される。第二ヒドロゲル前駆体も担体に配置される。第一および第二ヒドロゲル前駆体は、水性の生理的環境に曝されるまでは非反応の状態で担体に配置される。
【0011】
別の態様では、管状部材および管状部材が担持する栓を含む装置が、組織を貫通して延びる穿刺を閉塞するために提供される。前記の栓は、その上に配置された第一および第二ヒドロゲル前駆体を含んでよく、前記第一および第二ヒドロゲル前駆体は、組織内の水性の生理的環境に曝される前は非反応状態にある。装置は、管状部材から栓を展開させるためのプッシャを具備してもよい。
【0012】
一つの態様では、栓はそれを貫通して延びる管腔を具備してよい。装置はまた、管部材を貫いて滑動および/または通過するのに適合したプッシャ部材および位置決め部材も具備できる。位置決め部材は、一端に細長の部材および拡張部材、例えばガイドワイヤ上に拡張式メッシュ、バルーン、拡張式フレーム等を具備できる。別の態様では、位置決め部材は一端部に、例えば閉塞作業および/または穿刺を閉塞する最中に使用者に触覚フィードバックを提供するための、生体吸収性フットプレートもしくはその他要素を具備できる。
【0013】
更に別の態様によれば、組織を貫通して延びる穿刺を閉塞するための、凍結乾燥したヒドロゲル、例えばポリエチレングリコール(PEG)、またはその他ポリマー担体を含む装置が提供される。
【0014】
一つの態様では、乾燥凍結PEG担体は、凍結乾燥工程の前に所望の形状または幾何寸法に予備成形される。別の態様では、凍結乾燥PEG担体は、凍結乾燥工程の後で所望の形状または幾何寸法に成形される。例えば「未加工の」乾燥凍結PEG担体材料は、切断、圧延、展延、圧縮成形のような工程によって成形、さもなければ変形することができる。
【0015】
別の態様によれば、上記の任意の装置は、ポリマー担体の露出面上に配された接着性の「粘着性」のコーティングまたは層を具備できる。接着コーティングは、非架橋結合PEGポリマーおよびホウ酸ナトリウム結晶のようなpH調整剤との混合物から形成することができる。例示的工程では、接着コーティング混合物は、加熱してポリマー成分を溶解してから凍結乾燥したPEG担体に塗布することができる。
【0016】
別の態様によれば、組織を貫通して延びる穿刺を閉塞するための、凍結乾燥したPEG担体から形作られたカートリッジおよび栓装置を具備した器具が提供される。栓は、その上に配された第一および第二PEGポリマーを具備することができ、前記第一および第二PEGポリマーは組織内の水性の生理的環境に曝される前は非反応状態にある。器具は、カートリッジから栓を展開するためのプッシャ部材、位置決め部材、および/または閉鎖部材を具備できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A-B】図1Aは、栓の形をした、多孔性担体の透視図である。図1Bは、その上に第一および第二ヒドロゲル前駆体が配された、図1Aの多孔性担体の透視図である。
図1C-D】図1Cは、その上にpH活性化剤が配された、図1Bの多孔性担体の透視図である。図1Dは、第一および第二ヒドロゲル前駆体、ならびにpH活性化剤を具備する、図1Cに示した多孔性担体の拡大断面図である。
図2図2は、多孔性担体上に一または複数のヒドロゲル前駆体を付加する方法を示したフローチャートである。
図3図3は、組織を貫通する穿刺の中に栓装置を送達するために器具の展開側面図である。
図4A-B】図4A-Bは、患者の皮膚から、中間の組織を貫通して体管腔に延びる穿刺を閉塞するための、発明の態様による装置を用いるための手順を示す、患者の体の断面図である。
図4C-D】図4C-Dは、患者の皮膚から、中間の組織を貫通して体管腔に延びる穿刺を閉塞するための、発明の態様による装置を用いるための手順を示す、患者の体の断面図である。
図4E-F】図4E-Fは、患者の皮膚から、中間の組織を貫通して体管腔に延びる穿刺を閉塞するための、発明の態様による装置を用いるための手順を示す、患者の体の断面図である。
図5A-B】図5Aおよび5Bは、患者の皮膚から中間の組織を貫通して体管腔に延びる穿刺を閉塞するための別の器具を示す、患者の体の断面図である。
図6A図6Aは、栓の形をした凍結乾燥担体の透視図である。
図6B-C】図6Bは、接着層をその上に配した、組織を貫通する穿刺を閉塞するための栓装置を提供する、図6Aの凍結乾燥担体の透視図である。図6Cは、栓装置に担持された第一および第二ポリマー、ならびにpH活性化剤を示す、図6Bの栓装置の拡大断面図である。
図7図7は、凍結乾燥担体上に接着性「粘着」層を付加する手順を示すフローチャートである。
図8図8は、組織を貫通する穿刺の中に栓装置を送り込むための器具の展開側面図である。
図9A-B】図9A-Bは、図8の器具を用いて、患者の皮膚から血管まで延びる穿刺を閉塞する手順を示す、患者の体の断面図である。
図9C図9Cは、図8の器具を用いて、患者の皮膚から血管まで延びる穿刺を閉塞する手順を示す、患者の体の断面図である。
図9D図9Dは、図8の器具を用いて、患者の皮膚から血管まで延びる穿刺を閉塞する手順を示す、患者の体の断面図である。
図10A-B】図10A-Bは、図8の器具の変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面に転ずると、図1A~1Dは組織(図示せず)を貫通して延びる穿刺を閉塞するための装置2を描いている。一般的には、装置2はその上に第一ヒドロゲル前駆体6および第二ヒドロゲル前駆体7を配した、例えば栓の形をした担体またはコア4を具備する。第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、担体4の上に非反応状態で配される。第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、例えば水性の生理的環境に曝される前もしくは曝されるまでは非反応状態を保つことができる。水性の生理的環境は、例えば組織を貫通して延びる穿刺跡の内側に存在するだろう。
【0019】
前駆体付加担体4と接触する血液またはその他体液は、二つの前駆体6、7の間にヒドロゲル形成反応を起こす。ヒドロゲル前駆体の反応は、展開した後の、穿刺内での栓装置2の保持、および/または穿刺内での止血の促進を補助する、架橋された接着性または粘着性のコーティングを形成できる。以下記載するように、随意選択的に、活性化剤、例えばpH調整剤8を担体4に配して前駆体6、7の反応を開始、加速、または増強させることもできる。
【0020】
図1Aは、円筒栓の形をした担体4を描いている。担体4は、楕円、三角形、四角形、円錐形、円盤、多角形等のその他の断面または形状もとれることが認識されるだろう。担体4は、生体適合性および/または生体吸収性材料、例えば多孔性の生体吸収性フォームもしくはその他の固体材料から形成することができる。一つの態様では、担体4は生体適合性および/または生体吸収性ヒドロゲル、例えばポリエチレングリコール(「PEG」)、もしくはその他合成材料から形成される。これに加えて、またはこれに代わって、担体4は、例えばコラーゲン、フィブリン、カルボキシメチルセルロース、酸化セルロース、アルギナート、ゼラチン、もしくはその他のタンパク質ベースの材料、および/またはポリグリコール酸(PGA)、ポリアクチジン酸(PLA)、ポリビニルアルコール等の合成物質を一または複数含む血栓形成促進性の材料を含むことができる。担体4の材料は、長期間、例えば数日間、数週間、もしくは数ヶ月間かけて、少なくともその一部が体に吸収される。担体4は、随意選択的に、例えば治癒を促進し、感染症および/またはその他有害な医学的事象を防止するための治療薬および/または薬学的作用物質を含んでよい。このような作用物質は、担体材料内に埋め込んでも、および/または一もしくは複数のコーティングもしくは層として塗布してもよい。これに加えて、担体4の材料は、実質的に均一な組成を有するか、または組成は、例えばその全長に沿って、および/または担体4内の下層内で変化してもよい。
【0021】
例示の態様では、担体4は基端部および先端部14、16の間に延びる管腔10を具備しており、これが長軸18を画定している。管腔10は、例えば担体4が、一または複数の材料シートまたは層を巻いて形成されるか、あるいは成型によって形成される場合には、担体4作成時に作ることができる。または、管腔10は、既に形作られた中実担体4に穴をあけるか、他の方法で材料を除去することによって形成される。管腔10は、例えば栓装置2を送り込む間、ガイドワイヤ、または位置決め部材40(以下に、詳しく記載されている)の一部分のような、その他の細長い部材が担体4の中を滑動もしくは通過できる寸法を持つ。
【0022】
図1Bは、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7をその上に付加した担体4を描いている。一つの態様では、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、液体ヒドロゲル前駆体6、7の混合物を担体4の上に吸いとらせることによって付加される。使用する材料によっては、ヒドロゲル前駆体6、7は、最初は固体の脱水材料、例えば粉末でもよく、これをその融点以上まで加熱して、吸いとりに適した液体にすることもできる。例えば、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、担体4の上に付加する前に十分混合することができる。
【0023】
または、第一および第二前駆体材料6、7は液体の形で提供でき、その中に担体4を浸漬しても、担体の上に注いでも、および/または担体4に同時または連続的に塗布してもよい。例えば、第一および第二前駆体は、その後担体4に塗布できる溶媒に溶解することができる。いずれの場合も、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7を担体4の上に付加した後は固体でも半固体状態でもよい。
【0024】
第一ヒドロゲル前駆体6としては、米国特許第6,152,943号、第6,165,201号、第6,179,862号、第6,514,534号、第6,379,373号、第6,703,047号、ならびに米国特許出願公開第2003-0012734号、第2002-0114775号および第2004-0249342号に開示されているような多くのヒドロゲル前駆体材料を挙げることができる。例えば一つの態様では、第一ヒドロゲル前駆体6としては、反応性エステル末端基を有する、四本の腕を持つ10kダルトンのPEG、または八本の腕を持つ、20kダルトンのPEGアミンが挙げられる。または、第一ヒドロゲル前駆体6としては、例えば、反応性末端基を有するアミノ酸、例えばリジン、ジリジン、トリリジン等のような補完的架橋種を有する生体吸収性の星形高分が挙げられる。
【0025】
第二ヒドロゲル前駆体7としては数多くのヒドロゲル前駆体物質、水または水性環境にひとたび曝された第一前駆体物質6、例えば上記の物質のような第一前駆体物質と反応する物質が挙げられる。例えば、第二前駆体7は、他の8腕の20kダルトンPEGアミン、または4腕の、10kダルトンのPEGエステルでよい。あるいは、第二前駆体7は、例えばリジン、ジリジン、トリリジン等、反応性末端基を持つアミノ酸のような生体吸収性星形ポリマーの補完的架橋種でよい。
【0026】
図1Cを参照すると、担体4にはpH活性化剤8も付加されている。pH活性化剤8は、水または水性環境に曝された後に局所的な変化を起こすことができ、例えばヒドロゲル形成反応を開始または加速できる。例示的態様では、pH活性化剤8としては、Na・10HOのような固体のホウ酸塩結晶が挙げられるが、局所のpH知を変える別の塩を基本とした、またはその他の物質も用いることができる。あるいは、ホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムのような別のpH変更剤を用いてもよい。一つの態様では、pH活性化剤8は、固体のホウ酸結晶、粉末、またはその他粒子を、前駆体が付加された(第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7)担体4に物理的に接触させることによって担体4上に付加される。例えば担体4は、pH活性化剤8が担体4の外表面12に埋め込まれるように十分押しつけならが、pH活性化剤8の上を単純に転がしてもよい。あるいは、pH活性化剤8は、例えばpH活性化剤8の粒子を外表面12の中に押し込むことによって、または接着剤(例えば、実質的に不活性であるか、または第一もしくは第二前駆体6、7に対し非反応的である接着剤)を用いること等によって、担体4の外表面12に付着することができる。
【0027】
図1Dは、図1Dの前駆体付加担体4外表面12の拡大断面図を描いている。図示するように、混合された第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7の層は、比較的薄いフィルムまたはコーティングとして担体4の外表面12を実質的に覆っている。第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、吸いとり工程中は液体の形をしていることが好ましいことから、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7は、多孔性担体4の外表面12の中、例えば担体4の全て、または大部分を実質的に覆っている孔もしくは、その他凹部の中にも浸透できる。
【0028】
図1Dは更に、担体4上に付加されたpH活性化剤8も示している。図1Dでは、pH活性化剤8は、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7の層最上部に集合して存在している、独立した粒子である固体(例えばホウ酸結晶)の形をしている。しかしながら、pH活性化剤8は、pH活性化剤8が図1Dの第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7に示したものに似たフィルム、コーティング、または層の形を取ることができる場合には、溶解した、もしくはその他液体形状で担体4の上に付加できることを了解するものとする。
【0029】
図2を参照すると、フローチャートは、上記栓装置2のような閉塞装置を作るための例示的な方法を示している。第一に、例えば多孔性、親血栓性、および/または生体適合性材料から栓またはその他本体を形成することによって、担体4を提供する(ステップA)。上記のように、担体4は、材料を所望の形状に巻くことによって、より大きな材料の塊から個々の装置を成形して切り出すことによって、機械加工すること、研削すること等によって形成することができる。次に、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7の混合物を、所定の比率、例えば等モル比で提供する(ステップB)。次に担体4に、第一および第二前駆体6、7が付加されるが(ステップC)、前駆体は、上記のように液体の形状をしたヒドロゲル前駆体でよい。図2に示すように、担体4へは、ヒドロゲル前駆体材料の一または複数の追加層を随意選択的に付加できる(ステップD)。栓装置に用いたヒドロゲルに応じて、ヒドロゲル反応の開始に複数のヒドロゲル(例えば2以上)が必要となることもある。更に、一または複数の治療薬および/または薬学的作用物質を、例えば担体4を第一および第二前駆体6、7でコーティングする前または後に、担体4に随意選択的に塗布することもできる。
【0030】
最後に、随意のpH活性化剤8を担体4に付加できる(ステップE)。一つの態様では、pH活性化剤8は、担体4に、例えば第一および第二前駆体6、7の最上部に、物理的に付着できる結晶またはその他粒子の形をしている。
【0031】
図3に転ずると、組織を貫通する穿刺を閉塞するための器具1が描かれている。一般的に、器具1は送達シースまたはその他管状部材20、および本明細書の他所に記載されているような栓装置2を具備できる。これに加えて、器具1はプランジャーもしくはその他プッシャ部材30、および/または位置決め部材40を具備できる。
【0032】
送達シース20は、基端部22、穿刺90内への挿入に適したサイズおよび形状を有する先端部24、ならびにその間を延びる管腔26を具備する、実質的に硬質、半硬質、および/または可撓性である管状体でよい。先端部24には、穿刺内を前進しやすくするためにテーパーを付けてもよく、かつ/または実質的に非外傷性である先端28を具備してもよい。送達シース20は、基端部22にハンドル(図示せず)、および/または一もしくは複数のシール、例えば止血シール(図示せず)を具備できる。栓装置2は、管腔26内に、先端部24に隣接して配置できる。管腔26は、栓装置2がその中を滑動、例えば以下詳しく記載するように送り込む間、送達シース20から尖端方向に通り抜けることができるサイズにできる。
【0033】
プッシャ部材30は、基端部(図示せず)および送達シース20の管腔26の中に滑動式に挿入できるサイズを有する先端部34を具備した細長い部材、例えばプランジャ、カテーテル等でよい。プッシャ部材30の先端部34は、以下詳しく記載するように、送達シース20および/または穿刺内での栓装置2への接触、圧迫、および/または「締め付け」を容易にするために、実質的に平滑端でよい。プッシャ部材30は、実質的に硬質、半硬質、および/または実質的に可撓性でよく、プッシャ部材30をバックリングさせることなく送達シース20を栓装置2に対し動かすことができる十分なカラム長を有している。プッシャ部材30はまた、例えば位置決め部材40および/またはガイドワイヤを収容するための、基端部および先端部34の間に延びる管腔36も具備できる(図示せず)。
【0034】
図3に示す態様では、位置決め部材40は、例えばガイドワイヤ、および/またはその他中実もしくは中空の細長い本体は、基端部42、先端部44、および先端部44上に位置決め要素46を具備できる。位置決め要素46は、図3に示すようなワイヤメッシュ構造物のような拡張可能な要素、図4A~4Cに示すような拡張可能なフレーム46’、および/またはバルーン(図示せず)でよい。位置決め要素46または46’は、少なくともその基端部分に外皮またはその他のカバー(図示せず)を随意選択的に具備でき、これによって位置決め要素46または46’は実質的に無孔性になる。
【0035】
位置決め要素46または46’は、図3および4A~4Cに示すように、拡張状態に偏むいてよいが、例えばスリーブまたはその他拘束具(図示せず)を被せることによって、収縮した状態に圧縮することもできる。拘束具は取り外すことができ、拡張可能要素を露出させて、拡張可能要素を自動的に拡張状態に広げることができる。あるいは、拡張可能要素は、例えばプルワイヤ、膨張媒体供給源(例えば位置決め部材40を通り、未表示の可膨張性位置決め要素まで延びる管腔(図示せず)に結合している)、または位置決め部材基端部から操作可能なその他アクチュエータ(これも図示せず)を用いて、選択的に拡張してもよい。位置決め部材40に取り込むことができる拡張可能な構造物についての更なる情報は、米国特許第6,238,412号、および第6,635,068号、米国特許出願公開第US2003/0078616号、および米国特許出願連続番号第10/975,205号に見いだせる。
【0036】
図4A~4Fに転ずると、器具1を用いて穿刺90を閉塞する例示的な手順が示されている。通常穿刺90は、患者の皮膚92から、中間組織96を通り、例えば体管腔94へ延びる。例示的態様では、穿刺90は大腿動脈、頸動脈等のような血管94と連絡している経皮的穿刺である。
【0037】
例示的手順では、穿刺90は公知の手順を用いて、例えば針、ガイドワイヤ、一または複数の拡張器等(図示せず)を用いて作ることができる。誘導シース(これも図示せず)は、穿刺90の中を通り血管94の中に進めることができ、当技術分野で公知なように、例えば血管内に一または複数の器械を提供でき、および/または、一または複数の診断的および/または介入的手順を血管90から実施できるようにする。血管94を介した手順が完了すれば、器械および/または誘導シース(図示せず)は、穿刺90から除去してもよい。
【0038】
位置決め要素46が折りたたまれた状態の図4Aに転ずると、位置決め部材40は、位置決め要素46が血管94の中に配置されるまで、穿刺90の中を通し進めることができ、そこで位置決め要素46を、図4Bに示す拡張状態に広げることができる。一つの態様では、位置決め部材40は、事前に配置しておいた誘導シース(図示せず)の中を、例えば誘導シースを穿刺90から除去する前に、進めることができる。あるいは、位置決め部材40は、誘導シースを除去した後、穿刺90の中を直接進めることができる。
【0039】
位置決め部材46は、例えば被覆シースまたはその他拘束器(図示せず)によって、穿刺90の中を進める時、収縮した状態(図4Aに示す)に保つことができる。ひとたび位置決め要素46が血管94内に配置されると、拘束器は除去でき、位置決め要素46は拡張状態(図4Bに示す)に自動的に広げることができる。あるいは、位置決め要素46は、位置決め要素40の基端部42にあるアクチュエータ(図示せず)を用いて拡張状態に広げることができる。
【0040】
図4Bに示すように、ひとたび位置決め要素46が拡張すると、位置決め部材46が図4Bに示すように血管94の壁に接触するまで、位置決め部材40を穿刺90から一部引き出すことができる。位置決め要素46が実質的に非多孔性であれば、位置決め要素46は穿刺90を血管94から実質的に閉塞する。
【0041】
図4Cに転ずると、器具1は、例えば位置決め要素46を血管94の壁に接触させる前または後に、穿刺90の中に導入できる。例えば、位置決め部材40の基端部42は、例えば送達シース20、栓装置2、およびプッシャ部材30の管腔26、10、36それぞれの中を通り、送達シース20の先端部24の中に引き入れることができる。それから送達シース20は、位置決め部材40を超えて、例えば先端部24が血管94に隣接して配置されるまで進めることができる。
【0042】
位置決め要素46がまだ引き戻されていない場合には、位置決め部材40の基端部42を引いて、位置決め要素46を送達シース20の先端部24に押しつけるように引っ張ってもよい(触覚フィードバックがもたらされる)。次に位置決め部材40は、位置決め要素46が血管の壁と接触するまで更に引かれ(別の触覚フィードバックがもたらされる)、それによって送達シース20を穿刺90の中に部分的に引き戻してもよい。
【0043】
あるいは、位置決め要素46が既に血管壁94に押しつけられている場合は、送達シース20を、先端部24が位置決め要素46と接触し、それによって先端部24、および結果として栓装置2が血管94近くに配置されたという触覚が得られるまで前進させてもよい。位置決め要素46が血管94から穿刺90を実質的に閉塞している場合には、これにより穿刺90へ進入する血管94内の血液を抑制または最小限にでき、送達シース20の管腔26内へ浸透し、栓装置2と接触する。このことは、穿刺装置2の第一および第二前駆体が時期尚早に反応することを減らす上で望ましいだろう。
【0044】
あるいは、位置決め部材40を最初に送達シース20に運び入れることもできる。例えば、図5Aおよび5Bに示すように、位置決め部材40”はその先端部44”に、栓装置2の先端側、送達シース20管腔内に収納されたフットプレート46”を具備できる。図5Aに示すように、送達シース20は、その中にフットプレート46”を収納したまま、例えば直接または誘導シース(除去する前に)を通して穿刺90内に進めることができる。ひとたび送達シース20の先端部24が血管94内に配置されると、位置決め部材40”を前進させて血管94の中にフットプレート46”を露出させることができる。フットプレート46”は、露出するとその向きを変えることができ、かつ/または径方向に拡張できる。その後、位置決め部材40”を部分的に引き戻してフットプレート46”を血管94壁に接触させ、位置決め部材40”がそれ以上引き抜かれないようにすることができる。フットプレート46”が十分な幅を有している場合には、それは血管94から穿刺90を実質的に閉塞できる。
【0045】
さらに別の選択肢では、送達シース20は、位置決め部材40を導入する前に、例えば誘導シース除去後に残すことができるガイドワイヤ(図示せず)に沿って、誘導シースの中(除去する前)を、または穿刺90の中を直接進めることができる。ガイドワイヤ除去後は、位置決め部材40は、送達シース20の基端部22の中に進め、栓装置2の管腔10の中を、例えば収縮状態の位置決め要素46と一緒に進めることができる。位置決め部材40の先端部24は、位置決め要素46が血管94の中に配置されるまで、先端方向に進めることができる。ひとたび血管94内に入ると、位置決め要素46は、上記の手順と同様にして拡張し、血管94の壁に接触させることができる。
【0046】
ここで図4Dに転ずると、次に栓装置2は送達シース20から展開できる。例えば、図3に関係して上記したように、送達シース20はその管腔26内にプッシャ部材30を具備し、栓装置2の基部に配置することができる。送達シース20の先端部24、結果として栓装置2の先端部16を血管94に隣接して配置することによって、プッシャ部材30を実質的に静止状態に保ちながら送達シース20を基部方向に引き戻すことができる。こうすることでプッシャ部材30は栓装置2を穿刺90内の所定位置に保ちながら、送達シース20を栓装置2の周囲から引き戻すことができる。
【0047】
一つの態様では、栓装置2は送達シース20の先端部24から、所定の距離、例えば約2ミリメートル(2mm)~10ミリメートル(10mm)の距離、基部方向に偏在させてよく、例示的態様では、約5ミリメートル(5mm)偏在させてよく、その結果栓装置2は血管94から基部方向に偏在した状態で穿刺90の中に送られる。あるいは、栓装置2は、送達シース20の先端部24に直近に配置してもよい。
【0048】
これに代わって、またはこれに加えて、プッシャ部材30を送達シース20に対し先端方向に進め、栓装置2を穿刺90内に送ることもできる。例えば、プッシャ部材30は、栓装置2が位置決め部材40の位置決め要素46に接合するまで前進させる。これにより確実に、栓装置2を血管94に隣接する位置まで送り、栓装置が位置決め要素46に接合した時に触覚フィードバックを得ることができる。あるいは、図5Bに示すように、栓装置2が位置決め要素46”と一緒に送達シース20内に配置される場合は、プッシャ部材30を用いて、位置決め要素46”および栓装置2を連続的に展開できる。
【0049】
図4Eに示すように、望まれる場合には、プッシャ部材30を用いて、栓装置2を穿刺90の中に圧迫、詰込み、または締付けることができる。例えば、栓装置2を穿刺90の中に露出させた後(例えば上記の手順の一つを用いて)、プッシャ部材30を前進させて栓装置2を先端方向に押して、位置決め要素46’に押しつけることができる。これにより、栓装置2の先端16は血管94の壁に近接または押しつけて配置され、血管94と穿刺90との間の動脈切開での止血を強化できる。プッシャ部材30は、随意選択的に、栓装置2を軸方向に押すことによって更に前進させ、栓装置2をさらに径方向に広げて穿刺90を満たし、および/あるいは周囲の組織に向かって外側に、またはその中に広げることもできる。
【0050】
栓装置2を穿刺90内で展開した後、随意選択的に、追加の閉塞化合物を穿刺90内に送り込み、例えば栓装置2の真上および/または周囲の、穿刺90の全てまたは一部を満たしてもよい。例えば、送達シース20またはプッシャ部材30を用いて、液体の閉塞化合物、例えばヒドロゲル(図示せず)を、例えば管腔26(送達シース20の)またはプッシャ部材30の管腔を通して(あるいはいずれかの装置の別の管腔(図示せず)を通して)穿刺90内に送り込むことができる。
【0051】
一つの態様では、送達シース20は、送達シース20の基端部に、ハイドロゲル前駆体の入ったシリンジアッセンブリ(図示せず)のような、閉塞化合物供給源に連結できる、一または複数のサイドポート(図示せず)を具備できる。送達シース20がまだ穿刺90から完全に取り出されていない場合、送達シース20を、その先端24が栓装置2に隣接して配置されるまで穿刺90内を前進させ、それから閉塞化合物を穿刺90内に送り込むことができる。
【0052】
あるいは送達シース20は、閉塞化合物を送り込み、例えば少なくとも穿刺90を部分的に満たす時に引き戻してもよい。別の選択肢では、例えば送達シース20が除去されている場合には、プッシャ部材30を用いて上記と同様の様式で閉塞化合物を送り込める。更に別の選択肢では、別のシースまたはその他送達装置(図示せず)を穿刺90内に導入して、液体の閉塞化合物を栓装置2の真上および/または周囲に送り込んでもよい。このような閉塞化合物を穿刺90内に送り込むための例示的器具は、米国特許出願公開第2004-0249342号および第2004-0267308号に開示されている。
【0053】
図4Fに転ずると、次に位置決め部材40、プッシャ部材30、および送達シース20(その先端部24がまだ穿刺90内に延びる場合)を除去して、穿刺90内に栓装置2を残すことができる。器具1の構成要素は、任意の、望ましい順番で除去できる。例えば、一つの手順では、位置決め部材40は栓装置2およびプッシャ部材30の管腔36の中を通して引き抜くことができる。プッシャ部材30は、位置決め部材40が除去される時に栓装置2が基部方向に動かないように保持できる。位置決め部材30が除去されたならば、次にプッシャ部材30(および、まだ除去されていない場合には送達シース20)を除去することができる。
【0054】
あるいは、送達シース20およびプッシャ部材30を最初に引き抜き、続いて位置決め部材40を引き抜いてもよい。更に別の選択肢では、フットプレート46”のような位置決め要素は、栓装置2を送り込んだ後も血管94内に残ってよい。この選択肢では、フットプレート46”(またはその他の位置決め要素)は、少なくとも一部が生体吸収性材料、例えば米国特許出願整理番号10/928,744号に開示されているような、比較的迅速に吸収される材料から作ることができる。
【0055】
位置決め部材40が除去される場合は、位置決め要素46は折りたたむことができ、位置決め部材40は、栓装置を実質的に動かし、または破壊することなく、栓装置2の管腔10を通り除去できる。例えばスリーブまたはその他の拘束器(図示せず)は、位置決め要素46がスリーブに入った時に、それが位置決め要素46に接触して位置決め要素46を強制的に折りたたむまで位置決め部材40の上を進めることができる。あるいは、位置決め要素46がアクチュエータ(図示せず)で制御されている場合には、アクチュエータを操作して、位置決め部材40を除去する前に位置決め要素46を折りたたむことができる。別の選択肢では、位置決め部材40は、位置決め要素46が栓装置2の内腔10に入った時に、栓装置2に接触して位置決め要素46を強制的に折りたたむまで単純に引くだけでよい。
【0056】
位置決め要素46が折りたたまれると、血管94内の血液および/または他の流体は穿刺90内に入ることができ、それによって栓装置2は水性の生理的環境に曝される。血管94(またはその他体部の管腔)からの血液またはその他体液を含んでよい水性の生理的環境は、栓装置2を湿らせることができ、それによって、装置上で第一および第二前駆体間の反応が開始される。例えば、液体は活性化剤8を溶解し、液体のpHを変化させて、第一および第二ヒドロゲル前駆体6、8の相互反応を開始させることができる。第一および第二ヒドロゲル6、7の反応は、穿刺90を取り囲む組織に結合または付着することができる接着性または「粘着性」のヒドロゲルコーティング38を形成し、これが栓装置2の穿刺90内所定位置への保持を容易にする。これに加えて、ヒドロゲルコーティング38は膨張または膨潤して、穿刺90内での栓装置2の保持を更に助け、かつ/または穿刺90の密封化を高めることもできる。本明細書にはヒドロゲル前駆体が記載されているが、別の複数成分接着剤および/または反応性成分を担体4に塗布し、栓装置2が患者体内の液体に曝された時に担体4の周囲に接着またはその他のコーティングを作ることができる。
【0057】
第一および第二ヒドロゲル前駆体6、7の反応については、随意選択的に、例えば第一および第二前駆体6、8が溶解および/または反応した時に多孔性担体4を水性の生理的環境、例えば穿刺90内の血液に曝してもよい。かくして、担体4が好血栓性物質を含む場合、前記物質は穿刺90内の血液を凝固させ、かつ/またはこれを加速でき、これにより止血を促進できる。担体4が血液に触れた時、担体4は、随意選択的に、拡張して実質的に管腔を閉鎖してもよいが、別の選択肢では、管腔10を十分小さくして、血液の自然な止血によって閉塞することもできる。これに加えて、担体4が治療薬および/または薬学的作用物質を含む場合、血液および/または周囲の組織は前記薬物に曝されるようになり、それよって止血、患者の快適性、治癒等を高めることもできる。
【0058】
図6A~6Cに転ずると、組織(図示せず)を貫通して延びる穿刺を閉塞する栓装置102の別の態様が示されている。一般的には、例えばあらかじめ定められた形状の装置102は担体またはコア104を具備する。担体104は、加水分解性化学基を含む、凍結乾燥(即ち凍結-乾燥した)PEGポリマーから形成される。図6Aおよび6Bには、基端部および先端部114、116を有する円筒形の栓の形状をした担体104が描かれているが、担体104は別の断面または形状、例えば楕円形、三角形、四角形、円錐形、円盤、多角形等(図示せず)でもよいことが了解されるだろう。
【0059】
一つの態様では、担体104は表面接着層または粘着コーティングを持たない、凍結乾燥したPEGポリマーから形成される。この態様では、担体104または栓装置102は、単に穿刺内に担体104が延び、例えば血液またはその他体液に曝されることによって、穿刺内に固定されてもよい。凍結乾燥したPEGポリマー、例えば多孔性のポリマーネットワークを含むPEGポリマーは、水性環境に曝されると液体を取り込み膨張できる。膨張または膨潤の大きさ(水和の前後比)は顕著であり、例えばその容積を元にした凍結乾燥持のサイズの2~10倍(2X~10X)である。これに加えて、またはこれに代わって、凍結乾燥したヒドロゲルは、その重量の約2~10倍の液体を吸収でき、担体104を実質的に膨張させる。ヒドロゲルは、実質的に飽和するまで、例えば数分以内、例えば約2分を超えないで範囲で液体を吸収できる。
【0060】
図6Bおよび6Cを更に参照すると、担体104の全て、または一部に、随意選択的に表面接着層またはコーティング106を施すことができる。例えば、接着層106は、先行態様に似た、当初非反応状態である第一および第二PEGポリマー107を含み、pH調整剤108と混合されている未架橋型のPEGポリマーの混合物である。例示の態様では、第一PEGポリマーはアミン末端型PEGポリマーから形成することができるが、一方第二PEGポリマーはエステル末端型の加水分解性PEGポリマーから形成することができる。
【0061】
第一および第二PEGポリマー107は、米国特許第6,152,943号、第6,165,201号、第6,179,862号、第6,514,534号、第6,379,373号、第6,703,047号、ならびに米国特許出願公開第2003-0012734号、第2002-0114775号、および第2004-0249342号に開示されているようなPEGポリマー前駆物質を複数含んでよい。pH調整剤108としては、担体104上または周囲の局部pHを変えることができる、例えば、先行態様と同様に、結晶または粉末のNa・10HOのようなホウ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、あるいはその他塩をベースとした物質が挙げられる。
【0062】
第一および第二PEGポリマー107およびpH調整剤108は、例えば担体104の外面または内部に分散させることによって、担体104の全て、または一部に施すことができる。具体的には、第一および第二PEGポリマー107は、例えば穿刺もしくはその他組織を貫通する通路内に存在する水性の生理的環境に、例えば曝される前、もしくは曝されるまで非反応状態に留まることができる。
【0063】
PEGポリマー付加担体104に接触する血液またはその他体液は、接着層106に持ち込まれた二種類のPEGポリマー107との間に架橋形成反応を起こす。PEGポリマー107の反応は、架橋した接着性または粘着性ヒドロゲルを創り出し、これが展開後の栓装置102の穿刺内での保持、および/または穿刺内の止血促進の助けとなる。架橋反応は、例えば、栓装置104が穿刺周囲の組織、例えば筋膜またはその他組織層内の脂肪細胞のような組織と密接に接触している時に起こるだろう。
【0064】
この架橋反応は、栓装置102を穿刺内に機械的に固定もしくは確保し、例えば展開後もその位置を維持する。この確保機能は、患者が処置終了直後に移動する場合に特に有利であり、この場合この機能がなければ栓が動き、結果として出血性の合併症を起こす可能性がある。栓装置102を穿刺内の局所に、実質的に確保することによって、穿刺部位が治癒する間、標的展開位置を患者内部に維持できる。
【0065】
これに加えて、担体104を形成している凍結乾燥PEGポリマーは、血液またはその他体液に接触すると、直ちに水和できる。その結果、担体104が十分崩壊する前、穿刺部位および/または周囲組織から漏れている血液またはその他体液が担体104物質の水和反応を直ちに再開させ、それにより穿刺の閉鎖性を高めることができる。
【0066】
栓装置102の材料、即ち担体104および/または接着層106は、時間とともに、例えば数日間、数週間、または数ヶ月をかけて、体によって、少なくとも一部は吸収される。担体104および/または接着層106は、随意選択的に、治療薬および/または薬学的作用物質を含んでよく、例えば治癒を促進し、感染および/またはその他有害な医学的事象を予防する。このような作用物質は、担体物質および/または接着層106の中に埋め込むか、ならびに/あるいは一または複数のコーティングまたは層として塗布できる。これに加えて、担体104の材料は、実質的に均一な組成を有するか、または組成は、例えばその全長に沿って、および/または担体104内の下層内で変化してもよい。
【0067】
図6Aおよび6Bに転ずると、例示されている態様では、担体104は基端部および先端部114、116、ならびに基端部と先端部114、116の間に延びる管腔110を具備し、それが長軸118を画定している。管腔110は、例えば担体104が一または複数の材料シートまたは層を巻くことによって、あるいは成型によって形成される場合には、担体104形成時に作ることができる。あるいは、管腔110は、既に形作られている中実の担体104を中ぐり(boring)することによって、または材料を除去することによって形成することができる。管腔110は、カテーテル、ガイドワイヤ、またはその他細長い部材を受け入れ、その中を通すことができる寸法および/または大きさを持つことができる。例えば、以下さらに記載するように、位置決め部材140の一部分は、例えば栓装置102を送り込みながら、担体104の管腔110の中を滑動または通過できる。
【0068】
担体104を形成している凍結乾燥PEGポリマーの形状は、凍結乾燥時に確定してもよい。あるいは、凍結乾燥PEGポリマーは、シートおよび/またはブロックのような、様々な予備形成形状に形成することができ、次にこれを、脱水した後に所望の寸法に成形し、例えば以下記載する器具101のような送達システム内への設置を容易にすることができる。凍結乾燥PEGポリマーは、ダイス切断、圧延、平坦化、圧縮成形のような様々な成形/サイジング工程を用いて所望のサイズおよび/または形状にすることができる。
【0069】
図6Bは、第一および第二PEGポリマー107の混合物およびpH調整剤108が付加された担体104を描いている。一つの態様では、先行態様と同様に、粉末形状のアミン末端ポリマーを第一PEGポリマーとして用い、粉末形状のエステル末端型の加水分解性PEGポリマーを第二PEGポリマーとして用いることができる。先行態様とは異なり、二種類の粉末は、混合容器の中で、粉末形状のまま混合できる。ホウ酸ナトリウム粉末結晶は、例えば微粉末に粉砕して粒状性を減らし、混合性を高めて第一および第二PEGポリマー107混合物に加えてもよい。
【0070】
次に得られた混合物(第一および第二PEGポリマー107ならびにpH調整剤108)を約40℃まで加熱して、第一および第二PEGポリマー107および/またはpH調整剤108を溶解する。溶解した混合物は、好ましくは完全に混合し、例えば実質的に均一であるか、またはその他所望の構成要素の分布を確保する。
【0071】
次に溶解した混合物(第一および第二PEGポリマー107および/またはpH調整剤108を)は、担体104の露出面の全てまたは一部に塗布できる。混合物は、数ある公知の方法、例えばブラシまたはその他アプリケータを使って、加熱した液体混合物を担体104の上に塗ることによって、加熱した液体混合物のエアゾールを担体104上に噴霧することによって、または加熱した液体混合物の入った浴槽等を用いて、加熱した液体混合物を担体104上に浸漬または吸上げさせることによって塗布できる。加熱した液体混合物が担体104に十分塗布されたならば、混合物を冷まし、例えば固まらせ、および/または接着層106を形成させる。冷却後、固体または半固体接着層106が凍結乾燥担体102を取り囲む。
【0072】
一つの態様では、図6Bに示すように、担体104の基端部114および先端部116は接着層106で覆われていない。この場合、担体104の基端部および先端部114、116にある凍結乾燥PEGポリマーは露出したままであり、例えばその後の水和を容易にする。この特別な態様は、優れた膨潤/膨張特性を持つと同時に、所望の標的位置に栓装置102を実質的に維持する。
【0073】
図6Cは、凍結乾燥担体104の露出面に配置された接着層106の外面の拡大断面図である。図示するように、第一および第二PEGポリマー107、およびpH調整剤108は、接着層106全体によく混入されている。あるいは、接着層106の成分の相対濃度は、担体104に沿って変わってもよい。
【0074】
図7に転ずると、上記の栓装置102のような閉塞装置を作るための例示的な方法が示されている。まずステップAでは、例えば栓もしくはその他本体を、加水分解性化学基を含むPEGポリマーから形成することによって凍結乾燥ポリマー担体104が提供される。上記のように、担体104は一または複数の材料シートを所望の形状に圧延することによって、成形することによって、より大きな材料の塊から個々の装置を切り出すことによって、機械加工、研削すること等によって形成することができる。
【0075】
次に、ステップBでは、第一および第二PEGポリマー107の混合物(非架橋)を、所定の比率、例えば等モル比で提供する。次にステップCでは、固体のホウ酸ナトリウのようなムpH活性化剤108がステップBで創られた混合物に加えられる。一つの態様では、pH活性化剤108は、第一および第二PEGポリマー107の混合物に加えられる前に、微粉末に粉砕される。ステップDでは、ステップCで形成、生じた混合物を所定の温度まで加熱し、第一および第二PEGポリマー107を溶解する。一つの態様では、混合物は約摂氏40度(40℃)の温度に加熱される。第一および第二PEGポリマー107が溶解すれば(一方ホウ酸結晶は固体の状態を保っている)、混合物全体を完全に混合することができる。
【0076】
ステップEでは、次に加熱した液体混合物は、上記の方法の一つを用いて、担体104に、例えば担体104の一または複数の露出面に塗布され、接着層106を形成する。別の態様では、第一および第二前駆体は、前駆体を混合可能および/または担体104へ塗布可能にすると同時に互いに非反応状態を保つことができる、例えばメチレンクロリド、ジメチルスルホキシド、温アセトン等の溶媒の一または複数に溶解される。担体104および/または接着層106には、随意選択的に、一または複数の治療薬および/または薬学的作用物質を塗布できる。あるいは、接着層106は、コーティングされた後に一緒になって最終担体を形成する担体104を浸漬もしくは吸上げすることによって、または複数の層を作ることによって、担体104に塗布または、その中に分散させることができる。
【0077】
別の態様では、栓装置102には別の積層構造が与えられる。例えば、上記の一または複数の構成要素のような異なる構成要素の層を複数含むシートが形作られ、シートは管または中実の円筒構造物に巻くことができる。このようなシートの例示的態様は、例えば凍結乾燥されたヒドロゲルの第一層、二成分ヒドロゲル接着材料の第二層、および凍結乾燥したヒドロゲルの第三層の三層を含む。かくしてこの態様では、接着層、例えば当初非反応状態にある二種類のヒドロゲル前駆体を含む接着層は、凍結乾燥されたヒドロゲルの層に挟まれるだろう。
【0078】
別の態様では、凍結乾燥されたヒドロゲルの層が提供され、接着層、例えば当初非反応状態にある二種類のヒドロゲル前駆体を含む接着層が凍結乾燥されたヒドロゲルの層の一面に塗布される。pH調整剤、例えばホウ酸結晶は、凍結乾燥されたヒドロゲルの反対面に埋め込むか、さもなければ塗布される。かくして、この態様では、pH調整剤は接着層から実質的に分離されるだろう。このことは、pH調整剤による接着層材料が時期尚早に反応を開始することを回避する上で望ましく、さもなければ水性環境が存在しなくとも、このような反応がある程度起こることもあるだろう。こうして得られた複合材料は、次に折りたたむか、または巻いて所望の栓形態にすることができる。
【0079】
図8および9A~9Dに転ずると、先行態様に類似した、組織96を貫通して、例えば血管94またはその他体管腔に達する穿刺90を閉塞するための送達器具101が示されている。一般的に、器具101は誘導シースもしくは送達シース、またはその他の管部材20、および位置決め部材140、例えば先行態様に類似のものを具備している。送達器具101はまた、上記したものの一つのような栓装置102、およびプランジャー、シンカー、またはその他プッシャ部材130を担持したカートリッジ120も具備する。
【0080】
カートリッジ120は、一般的に、基端部122、先端部124、および基端部と先端部122、124の間に延び、その中に栓装置102を持ち込むことができる管腔126を具備した細長い管状本体を含む。プッシャ部材130もまた基端部132、先端部134、および基端部と先端部132、134の間に延びる管腔136とを具備した細長い管状体でよい。位置決め部材140は、基端部142、先端部144、および先端部144に拡張可能メッシュ(図8に示すような)、機械拡張式の構造物、またはバルーン(図示せず)のような拡張可能な位置決め要素146を具備できる。
【0081】
送達器具101は、栓装置102を穿刺90の中に配置および送り込むのに用いることができ、例えば血管外から、穿刺90と連絡している血管94内の動脈切開の真上、さもなければそれに近接して配置および送り込むことができる。一つの態様では、カートリッジ120は送達シース20の管腔26内に挿入できるか、または滑らせることができ、プッシャ部材130はカートリッジ120の管腔126内を滑動できる。栓装置102は圧縮されているか、さもなければカートリッジ120の管腔126内に、プッシャ部材130の先端に配置できる。位置決め部材140は、カートリッジ120を貫通して、例えばプッシャ部材130および栓装置102を貫通して挿入することができる。
【0082】
このように栓装置102は、カートリッジ120の内壁と位置決め部材140の外面との間に配置できる。以下説明するように、カートリッジ120を用いて栓装置102を展開位置に運ぶこと、即ち送達シース20の中を通すことができる。プッシャ部材130は、展開中、栓装置102を所定位置に配置および/または維持するために、栓装置102近くに配置できる。
【0083】
図9A~9Dおよび10A~10Bを参照すると、送達器具101を用いて栓装置102を、組織94を貫通する穿刺90の中に送り込み、および/または止血を促進できる。まず送達シース20を穿刺90内に配置し、例えば、先行態様と同様にして、血管94へのアクセスを提供できる。図9Aを参照すると、位置決め部材140は、例えばその上の、折りたたまれた状態の拡張可能なフレームまたはその他位置決め部材146と共に送達シース20の管腔26内に導入、および/または通過させることができる。
【0084】
カートリッジ120(栓装置102およびプッシャ部材130と共に)はまず、図10Aに示すように位置決め部材140の基端部142に備えることができる。かくして位置決め部材130を穿刺90内に進める際、カートリッジ120を当初、穿刺90の外側に位置することができる。あるいは、カートリッジ120を位置決め部材140の先端部144に持っていき、例えばカートリッジ120(栓装置102およびプッシャ部材130と共に)を位置決め部材140と一緒に導入することもできる。さらなる選択肢では、カートリッジ120を位置決め装置140と分離して提供できる。位置決め部材140を穿刺90内に進める時、位置決め部材140のシャフトを送達シース20の基端部22から基部方向に延ばすことができ、その後カートリッジ120の中に、例えばプッシャ130の管腔136および/または栓装置102の管腔110を通して、引き戻すことができる。
【0085】
さらに図9Aを参照すると、位置決め部材140の先端部144は穿刺90および動脈切開部を通り、血管94の中に挿入できる。位置決め部材140の先端部144にある位置決め要素146は、先行態様と同様にして拡張または展開できる。図9Aに示すように、位置決め部材140の拡張可能な位置決め要素146は、拡大状態に機械式に拡張するか、または膨張できる。
【0086】
拡張要素146を拡張した後、位置決め部材140は、位置決め部材146が血管94の壁と接触するまで少なくとも部分的に引き戻すことができ、例えば穿刺90から血管94を実質的に閉塞できる。これは二つステップを含み、先行態様と同様の触知の工程では、位置決め要素146が拡張した状態にある位置決め部材140を、それが送達シース20の先端部24に接触するまで引き戻し、さらに位置決め要素146が血管94の壁に接触するまで引き戻す。位置決め部材140に基部方向の張力を加え、および/または維持して、位置決め要素146を引き込み、例えば穿刺90を閉塞することができる。基部方向の張力は手を使って、または張力装置(図示せず)を用いて維持でき、米国特許出願公開第2004-0267308号に開示されているように、例えばそれに続くステップとの間に一時的な止血を提供できる。
【0087】
図9Bに転ずると、栓装置102を担持するカートリッジ120は位置決め部材140を超えて穿刺90の中に、先端方向に前進させることができる。一つの態様では、カートリッジ120(および栓装置102)は、カートリッジ120のハブ123が送達シース20のハブ23(図9Cに示す)に接合するまで送達シース20の中を前進できる。位置決め部材140および/またはプッシャ部材130は、カートリッジ120が位置決め部材140上の所定位置に達した時に嵌合して、例えばプッシャ部材130が位置決め部材140に対しそれ以上動かないようにする、協働戻り止めを随意選択的に具備できる。
【0088】
例えば、図10Aおよび10Bに示すように、位置決め部材140は、リング、タブ、またはその他隆起要素145を具備でき、プッシャ部材130は一体ヒンジ、タブ、またはその他ラッチ要素133を、例えば基端部132に具備できる。例えば、ラッチ要素133は単に、プッシャ部材130の基端部132にあって、基端部を内側に偏らせるための環状のノッチでよい。カートリッジ120(および結果としてプッシャ部材130)が前進する場合には、ラッチ要素133は隆起要素145の上を自由に通過できる。するとラッチ要素133は、ラッチ要素133の鈍端が位置決め部材140のリング145に接合して、プッシャ部材130が再び引き戻されないようにする。
【0089】
あるいは、カートリッジ120およびプッシャ部材130は、当初は図10Bに示すように位置決め部材140の上に在ってもよい。この選択肢では、プッシャ部材130および位置決め部材140は、協働する戻り止め133、145を具備し、プッシャ部材133が位置決め部材140に対し基部方向に動かないようにしてもよい。あるいはプッシャ部材130は、それにかわって位置決め部材140に対し固定してもよく、例えばプッシャ部材130の先端部134を、位置決め要素146の基部に一定の距離おいて固定すること、例えば図10Bに示すように、栓装置102を位置決め要素146の直近に配置してもよい。送達シース20の中、または穿刺90の中を前進する間、栓装置102は血液または血液経路に沿って在るその他体液に直接または間接的に触れることはない。
【0090】
ここで図9Cを参照すると、プッシャ部材130がカートリッジ120内にあらかじめ提供されていない場合、プッシャ部材130はカートリッジ120の管腔126内を、例えばプッシャ部材130上のマーカー137がカートリッジ120のハブ123の近くに来るまで前進させることができる。図9Cに示すように、このマーカーの位置により、プッシャ部材130の先端134を栓装置102の基端部114に隣接して置くことができる。あるいは、プッシャ部材130および栓装置102は、図9Cに示すように当初はカートリッジ120の中に配置し、即ち栓装置102が先端部124およびカートリッジ120に隣接するように配置して、プッシャ部材130を前進させる必要をなくすことができる。
【0091】
次に、図9Dに示すように、位置決め部材140上の基部張力を用いて血管94を穿刺90から閉塞する間、プッシャ部材130の位置を保ち、送達シース20およびカートリッジ120を基部方向に引き戻して、穿刺90の中で栓装置102を露出させるか、または展開する。プッシャ部材130は止め装置として働き、栓装置102が基部方向に動かないようにしている間に送達シース20およびカートリッジ120が引き抜かれる。
【0092】
一つの態様では、送達器具101の使用者は、親指をプッシャ部材130のハブ133の上に置いてその位置を維持しながら、例えば人差し指と中指を使って、送達シース20およびカートリッジ120を引き戻すことができる。例えば、図9Dに示すように、カートリッジ120のハブ123が送達シース20のハブ23に接合する場合、送達シース20を固定しながら引き抜くことによってカートリッジ120を同時に引き抜くことができる。あるいは、カートリッジ120を最初に取り出し、次に送達シース20を取り出してもよい。カートリッジ120および送達シース20は、穿刺90から全て取り出すことも、あるいは栓装置102だけ露出させることもできる。
【0093】
栓装置102は、随意選択的に、前の実施例と同様にして、プッシャ部材130を先端方向に進めて栓装置102を血管94の壁および/または位置決め要素146に押しつけることによって、穿刺90の中で押さえつけるか、さもなければ圧縮できる。これにより栓装置102をしっかり固定することができ、栓装置102を外側に径方向に拡張し、かつ/または栓装置102を動脈切開部に押しつけることができ、例えば穿刺90の血管94からの密封性を高めることができる。
【0094】
栓装置102が送達されると、位置決め部材140の基部への張力を解くことができ、かつ/または位置決め要素146を折りたたまれた状態に折りたたむことができる。例えば、位置決め要素146は、機械式に折りたたむか、または収縮させることができる。位置決め要素146が折りたたまれると、位置決め部材140(および結果として位置決め要素146)は栓102の管腔110を通してゆっくり引き抜くことができる。
【0095】
例示的態様では、位置決め要素146の寸法は約0.875ミリメートル(035インチ)以下であり、展開した栓装置100を実質的に乱すことなく位置決め部材140を容易に除去できる。位置決め部材140を引き抜きながら、プッシャ部材130は停止装置として機能し、栓装置102が穿刺90内を基部方向に動かないように維持できる。これに加えて、栓装置102が接着層(図9Dには示していない)を具備している態様では、「粘着性」の接着層もまた栓装置102を周囲の組織に固定するのに役立つ。
【0096】
位置決め部材140を除去した後、プッシャ部材130を引き抜き、栓装置102をその場所に残してもよい。望ましい場合には、例えばプッシャ部材130の管腔136を通り基部方向に出血が起こった場合には、先行態様と同様にして、液体ヒドロゲルまたはその他閉塞化合物を穿刺の中、栓装置102の真上および/または周囲に送り込み、永久的な止血の達成を補助することができる。例えば、閉塞化合物の供給源(未表示)をプッシャ部材130の基端部132に連結してもよく、かつ閉塞化合物を穿刺90の中、栓装置102の真上および/または周囲に送り込むことができる。プッシャ部材130は、閉塞化合物を送って閉塞化合物で穿刺90を少なくとも部分的に満たす時、随意選択的に基部方向に引き戻してもよい。
図1A-B】
図1C-D】
図2
図3
図4A-B】
図4C-D】
図4E-F】
図5A-B】
図6A
図6B-C】
図7
図8
図9A-B】
図9C
図9D
図10A-B】