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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/14 20060101AFI20220602BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20220602BHJP
   B01D 24/00 20060101ALI20220602BHJP
   B01D 29/00 20060101ALI20220602BHJP
   G06K 19/00 20060101ALI20220602BHJP
   F15B 21/041 20190101ALN20220602BHJP
【FI】
B01D35/14
B01D29/10 510C
B01D29/10 530B
B01D29/00 Z
G06K19/00
F15B21/041
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017250185
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019115879
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/002307(WO,A1)
【文献】特開2012-241657(JP,A)
【文献】特開2007-069722(JP,A)
【文献】特開2005-212356(JP,A)
【文献】特開2018-69228(JP,A)
【文献】特開2014-100646(JP,A)
【文献】特開2008-194675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D23/00-35/04
B01D35/08-37/08
G06K19/00-19/18
F15B20/00-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が開口している略有底筒形状のケースと、
前記ケースの上端を覆うように、前記ケースに設けられる蓋体と、
前記ケース及び前記蓋体により形成される内部空間に設けられる略円筒形状のフィルタエレメントであって、略円筒形状の濾材と、前記濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートと、を有するフィルタエレメントと、
前記上プレートの内部に設けられたICタグと、
前記蓋体に設けられたアンテナと、
を備え
前記上プレートは、前記濾材が下側に当接する板状部と、前記板状部に設けられた凸部と、を有し、
前記凸部の内部には、前記ICタグが設けられ、
前記蓋体には、前記凸部の周方向の位置決めを行う突起が形成され、
前記アンテナは、前記突起の近傍に設けられ、
前記フィルタエレメントが前記ケースの内部に挿入された状態では、前記凸部と前記突起とが隣接する
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
請求項に記載のフィルタ装置であって、
前記凸部は、側面視において前記板状部から上側に突出し、平面視において前記板状部の外側に突出し、
前記フィルタエレメントが前記ケースの内部に挿入された状態では、前記ICタグの端面と前記アンテナの端面とが対向する
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項3】
上端が開口している略有底筒形状のケースと、
前記ケースの上端を覆うように、前記ケースに設けられる蓋体と、
前記ケース及び前記蓋体により形成される内部空間に設けられる略円筒形状のフィルタエレメントであって、略円筒形状の濾材と、前記濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートと、を有し、前記濾材と前記上プレートとが接着剤により接着されたフィルタエレメントと、
前記接着剤の内部に設けられた略板状のICタグと、
前記蓋体に設けられたアンテナと、
を備えたことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項4】
請求項に記載のフィルタ装置であって、
前記ICタグは、略中空円板形状であり、
前記ICタグの内径は、前記濾材の内径より大きい
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項5】
請求項に記載のフィルタ装置であって、
前記ICタグは、略円板形状であり、
前記フィルタエレメントは、前記ICタグと前記アンテナが直線上に並ぶように設けられる
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のフィルタ装置であって、
前記蓋体は、略円筒形状の筒状部を有し、
前記筒状部の内径は、前記上プレートの外径より大きく、
前記筒状部には、側面を貫通する貫通孔が形成され、
前記アンテナは、前記貫通孔の内部に設けられる
ことを特徴とするフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械などの油圧回路を備える装置では、当該油圧回路中に濾過装置が設けられている。特許文献1には、作動油を濾過する濾材を有するフィルタエレメントと、フィルタエレメントが収容されるタンクと、を備えたリターンフィルタユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-290004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、模造品が取り付けられることを防止したり、稼働時間等を管理したりするため、フィルタエレメントにICタグを取り付けたいという要求がある。ICタグは液体に浸かると簡単に壊れてしまう。そこで、フィルタ装置にICタグを取り付ける場合には、ICタグの故障を防ぐためにICタグが液体と接しないようにすることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、リターンフィルタユニットが全て液体に接してしまうため、リターンフィルタユニットにICタグを取り付ける適切なスペースが無いという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、フィルタエレメントにICタグを取り付け、かつ、ICタグと液体との接触を避けることができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ装置は、例えば、上端が開口している略有底筒形状のケースと、前記ケースの上端を覆うように、前記ケースに設けられる蓋体と、前記ケース及び前記蓋体により形成される内部空間に設けられる略円筒形状のフィルタエレメントであって、略円筒形状の濾材と、前記濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートと、を有するフィルタエレメントと、前記上プレートの内部に設けられたICタグと、前記蓋体に設けられたアンテナと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルタ装置によれば、フィルタエレメントのうちの、濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートの内部にICタグが設けられる。また、フィルタエレメントが挿入されるケースには蓋体が設けられ、蓋体にはアンテナが設けられる。これにより、フィルタエレメントにICタグを取り付け、かつ、ICタグと液体との接触を避けることができる。
【0008】
ここで、前記上プレートには、前記濾材が下側に当接する板状部と、前記板状部に設けられた凸部と、を有し、前記凸部の内部には、前記ICタグが設けられ、前記蓋体には、前記凸部の周方向の位置決めを行う突起が形成され、前記アンテナは、前記突起の近傍に設けられ、前記フィルタエレメントが前記ケースの内部に挿入された状態では、前記凸部と前記突起とが隣接してもよい。これにより、ICタグとアンテナとが隣接し、センシングがしやすくなる。
【0009】
ここで、前記凸部は、側面視において前記板状部から上側に突出し、平面視において前記板状部の外側に突出し、前記フィルタエレメントが前記ケースの内部に挿入された状態では、前記ICタグの端面と前記アンテナの端面とが対向してもよい。これにより、ICタグとアンテナとが最も違い位置に配置され、センシングが確実に行われる。
【0010】
本発明に係るフィルタ装置は、例えば、上端が開口している略有底筒形状のケースと、前記ケースの上端を覆うように、前記ケースに設けられる蓋体と、前記ケース及び前記蓋体により形成される内部空間に設けられる略円筒形状のフィルタエレメントであって、略円筒形状の濾材と、前記濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートと、を有し、前記濾材と前記上プレートとが接着剤により接着されたフィルタエレメントと、前記接着剤の内部に設けられた略板状のICタグと、前記蓋体に設けられたアンテナと、を備えたことを特徴とする。これにより、フィルタエレメントにICタグを取り付け、かつ、ICタグと液体との接触を避けることができる。また、ICタグを樹脂でコーティングする工数や費用を削減することができる。
【0011】
ここで、前記ICタグは、略中空円板形状であり、前記ICタグの内径は、前記濾材の内径より大きくてもよい。これにより、ICタグとアンテナとの位置合わせが不要であり、フィルタ装置の組み立てが容易となる。
【0012】
ここで、前記ICタグは、略円板形状であり、前記フィルタエレメントは、前記ICタグと前記アンテナが直線上に並ぶように設けられてもよい。これにより、接着剤にICタグを封入するのが容易となる。
【0013】
ここで、前記蓋体は、略円筒形状の筒状部を有し、前記筒状部の内径は、前記上プレートの外径より大きく、前記筒状部には、側面を貫通する貫通孔が形成され、前記アンテナは、前記貫通孔の内部に設けられてもよい。これにより、蓋体の内部にアンテナを取り付けることができる。また、アンテナの蓋体への取り付けが容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルタエレメントにICタグを取り付け、かつ、ICタグと液体との接触を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態であるリターンフィルタ1が設けられたタンク100の概略を示す断面斜視図である。
図2】リターンフィルタ1の概略を示す断面図である。
図3】リターンフィルタ1の概略を示す平面図であり、蓋体30の一部を外した状態を示す図である。
図4】プレート24及び筒状部31を斜め上方から見たときの斜視図であり、一部を拡大表示した図である。
図5】リターンフィルタ1を斜め下方から見たときの断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。
図6】リターンフィルタ2の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。
図7】フィルタエレメント20Aの平面図であり、プレート24Aを部分的に切断した図である。
図8】リターンフィルタ3の断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。
図9】フィルタエレメント20Bの平面図であり、プレート24Bを部分的に切断した図である。
図10】変形例にかかるフィルタエレメント20Cの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、濾過対象の液体として作動油を例に説明するが、濾過対象の液体は作動油に限られない。また、以下の実施の形態では、リターンフィルタを例に説明するが、本発明のフィルタ装置はリターンフィルタに限られない。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の一実施形態であるリターンフィルタ1が設けられたタンク100の概略を示す断面斜視図である。図1では断面を示すハッチングを省略する。
【0018】
タンク100は、作動油を貯留するためのタンクである。タンク100は、図示しない作業機械(例えば、油圧装置)に設置されるものであり、この油圧装置へ供給する作動油の油圧回路内に設けられている。ただし、タンク100は、油圧回路内に設けられるものに限られない。
【0019】
タンク100は、例えば箱形であり、内部が空洞である。タンク100は、主として、底面101と、底面101と対向する上面102と、底面101及び上面102と略直交する側面103と、を有する。上面102には、開口部102a(図2参照)が形成される。タンク100の内部には、開口部102aからリターンフィルタ1が挿入される。開口部102aは、リターンフィルタ1の蓋体30(後に詳述)により覆われる。
【0020】
側面103には、作動油をリターンフィルタ1の内部へ流入させる流入部(図示省略)が嵌挿される。流入部は、タンク100の外部からリターンフィルタ1へと作動油を導く。リターンフィルタ1に導かれた作動油は、リターンフィルタ1で濾過されて、タンク100内に貯留される。
【0021】
底面101近傍には、タンク100内の作動油を油圧ポンプ(図示せず)等へ流出させる図示しない流出口が形成される。タンク100の内側には、サクションストレーナ9が設けられ、サクションストレーナ9を通過した作動油は、流出口からタンク100の外側へと流出する。
【0022】
タンク100の内部には、リターンフィルタ1から流出した作動油が直接サクションストレーナ9に当たらないように、仕切り板105が設けられる。なお、仕切り板105は必須ではない。
【0023】
以下、リターンフィルタ1について説明する。図2は、リターンフィルタ1の概略を示す断面図である。図2では断面を示すハッチングを省略し、また中心線より-x側の部分についての図示を省略する。図3は、リターンフィルタ1の概略を示す平面図であり、蓋体30の一部を外した状態を示す図である。
【0024】
リターンフィルタ1は、主として、ケース10と、フィルタエレメント20と、蓋体30と、ICタグ40と、アンテナ組立体50と、を有する。ICタグ40は、アンテナ51(後述)から受信した電波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする小型の電子部品である。アンテナ51は、外部機器に接続されており、ICタグ40からの電波を受信する。
【0025】
ケース10は、耐腐食性の高い金属(例えば、ステンレス)により形成される。ケース10は、タンク100の上面102から下側(-z側)に突出するようにタンク100の内部に設けられる(図1参照)。
【0026】
ケース10は、有底略筒形状であり、上端面が開口している。ケース10は、内部が空洞であり、内部にはフィルタエレメント20等が設けられる。
【0027】
ケース10は、底面11を有する。底面11を貫通するように、流出部12が設けられる。流出部12は、フィルタエレメント20の内部の空間(空間S2)とケース10の外部の空間(空間S3、図1参照)とを連通する。
【0028】
ケース10の上端近傍には、取付部材13が設けられる。ケース10は、取付部材13を介してタンク100に設けられる。また、取付部材13は、ケース10と筒状部31(後に詳述)とを一体化する。
【0029】
ケース10の側面には、図示しない流入部が設けられる。流入部は、ケース10の内部かつフィルタエレメント20の外部の空間(空間S1)と、ケース10の外部かつタンク100の内部の空間(空間S3、図1参照)とを連通する。流入部から作動油が流入することで、ケース10内に作動油が貯留される。
【0030】
フィルタエレメント20は、有底略筒形状の部材であり、ケース10及び蓋体30により形成される内部空間に設けられる。フィルタエレメント20は、主として、濾材21と、外筒22と、内筒23と、プレート24と、プレート25と、ICタグ40と、を有する。外筒22、内筒23及びプレート24、25は、濾材21と一体化される。
【0031】
濾材21は、両端に開口を有する略円筒形状の部材である。濾材21は、合成樹脂や紙等を用いた濾紙をひだ折りにし、ひだ折りにした濾紙の両端を連結して円筒状にすることによって形成される。濾材21の内側には、略全域に作動油が通過する孔が形成された内筒23が設けられる。
【0032】
濾材21の外側には外筒22が設けられ、濾材21の内側には内筒23が設けられる。外筒22及び内筒23には、作動油が通過する孔(図示省略)が全面に設けられる。
【0033】
濾材21の上側の端には、樹脂製のプレート24が設けられる。プレート24は濾材21、外筒22及び内筒23の上端面を覆う。プレート24と濾材21との間には接着剤65が塗布され、プレート24と濾材21とは接着剤65により接着される。接着剤65は、塗布時には液体であるが、時間経過と共に固まることでプレート24と濾材21を接着する。ここで、接着剤65は、樹脂、ゴム、エラストマーを主材料とする様々な種類の有機接着剤を用いることができる。また、接着剤65に二酸化ケイ素等の粉末が含まれていてもよい。
【0034】
プレート24は、主として、濾材21が下側に当接するように、濾材21の上端面に沿って設けられた略円板形状の板状部24aと、板状部24aの外周縁に設けられた筒状部24bと、板状部24aの内周縁に設けられた筒状部24cと、板状部24aに設けられた凸部24dと、を有する。筒状部24bは、板状部24aから下方向(-z方向)に突出する。筒状部24cは、板状部24aから上方向(+z方向)に突出する。
【0035】
凸部24dは、側面視(ここでは図2に示すように、y方向から見た場合)において板状部24aから上側に突出する。また、凸部24dは、平面視(ここでは図3に示すように、z方向から見た場合)において板状部24aの外側に突出する。
【0036】
ICタグ40は樹脂によりコーティングされている。また、ICタグ40は、作動油に接しないようにプレート24の内部に設けられる。本実施の形態では、凸部24dの内部にICタグ40が設けられる。
【0037】
濾材21の下側の端には、プレート25が設けられる。プレート25は濾材21、外筒22及び内筒23の下端面を覆う略中空円板形状の部材である。プレート25の上側の面には、濾材21が挿入される凹部25aが形成される。凹部25aと濾材21との間には接着剤65が塗布されており、凹部25aと濾材21とは接着剤65により接着される。
【0038】
プレート25の略中央に形成された孔25bには、流出部12が挿入される。孔25bと流出部12とは、シール部材(例えば、Oリング)61によりシールされる。
【0039】
蓋体30は、タンク100の外側に設けられる。蓋体30は、ケース10の上端面の開口部を覆うように、ケース10(ここでは、取付部材13)及びプレート24(ここでは、筒状部24c)に設けられる。
【0040】
蓋体30は、耐腐食性の高い金属(例えば、ステンレス)により形成される。蓋体30は、主として、筒状部31と、カバー32と、取付部33と、を有する。筒状部31は、略円筒形状であり、ケース10(ここでは、取付部材13)に固定される。カバー32は、略板状の部材であり、筒状部31の上側(+z側)に、筒状部31の中空部を覆うように設けられる。カバー32は、筒状部31に対して着脱可能に設けられる。
【0041】
筒状部31の内径は、プレート24の外径より大きい。筒状部31の側面には、当該側面を貫通する孔31aが形成される。孔31aにアンテナ組立体50を挿入して固定(例えば、螺合)することで、筒状部31にアンテナ組立体50が設けられる。アンテナ組立体50は、アンテナ51を含む。したがって、蓋体30の内部に、アンテナ51を容易に取り付けることができる。
【0042】
筒状部31の側面には、2本の突起31b(図3参照)が形成される。突起31bは、筒状部31の内周面に、内側に突出するように形成される。突起31bは、孔31aの近傍、ここでは孔31aの両側に形成される。つまり、アンテナ51は、突起31bの近傍に設けられる。
【0043】
突起31bは、凸部24dの周方向の位置決めを行う。2本の突起31bの間には、凸部24dが配置される。つまり、フィルタエレメント20がケース10の内部に挿入された状態では、凸部24dと突起31bとが隣接する。なお、凸部24dと突起31bとが当接してもよい。
【0044】
カバー32には取付部33が設けられる。取付部33は、略筒状の部材であり、カバー32の下側(-z側)に突出する。取付部33の下側には、バルブ63が設けられる。通常はバルブ63が閉じているが、濾材21が目詰まりしてケース10内の圧力が高くなると、バルブ63が開き、空間S1から空間S2に作動油を流すことで、リターンフィルタ1の破損を防止する。バルブ63は既に公知であるため、説明を省略する。
【0045】
取付部33は筒状部24cに挿入され、バルブ63は空間S2に挿入される。取付部33と筒状部24cとは、シール部材(例えば、Oリング)62によりシールされる。
【0046】
次に、ICタグ40及びアンテナ組立体50の取り付け及び配置について説明する。図4は、プレート24及び筒状部31を斜め上方から見たときの斜視図であり、一部を拡大表示した図である。図5は、リターンフィルタ1を斜め下方から見たときの断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。図5では断面を示すハッチングを省略する。
【0047】
凸部24dには、凸部24dの径方向外側の端面に開口する穴24eが、凸部24dの長手方向に沿って設けられる。ICタグ40は、略円筒形状であり、穴24eの内部に挿入されて固定される。したがって、ICタグ40のうちの穴24eの開口部から視認可能な端面40aのみ作動油と接する。このように、樹脂コーティングされたICタグ40が極力液体と接しないようにすることで、ICタグ40の故障を防ぐことができる。
【0048】
なお、穴24eにICタグ40を挿入した後、穴24eの開口部を樹脂等で覆うことで、ICタグ40が完全に液体と接しないようにすることができる。
【0049】
筒状部31の側面を貫通する孔31aには、アンテナ組立体50が挿入されている。孔31aの内周面側の開口からアンテナ51の端面51aが露出する。
【0050】
筒状部31の側面に形成された2本の突起31bは、フィルタエレメント20の位置決めの役割を果たす。フィルタエレメント20は、2本の突起31bの間に凸部24dが配置されるように、ケース10の内部に挿入される。これにより、ICタグ40とアンテナ51が直線上に並ぶ。また、凸部24dは、側面視において板状部24aから上側に突出し、平面視において板状部24aの外側に突出しているため、フィルタエレメント20がケース10の内部に挿入された状態では、ICタグ40とアンテナ51とが隣接し、ICタグ40の端面40aとアンテナ51の端面51aとが対向する。したがって、ICタグ40とアンテナ51とが極力近くに配置され、これによりセンシングを確実に行うことができる。
【0051】
次に、このように構成されたリターンフィルタ1の機能について説明する。図2の二点鎖線矢印は、作動油の流れを示す。例えば作業機械の駆動を開始すると、作動油が油圧回路内を流れ始め、それに伴って空間S1に作動油が流入してケース10の内部が作動油で満たされる。
【0052】
空間S1に流入した作動油は、濾材21の外側から内側へ向って流れ、濾材21により作動油中の塵埃等が除去される。濾過後の作動油は空間S2に流出する。その後、濾過後の作動油は、流出部12から空間S3(図1参照)に流出する。
【0053】
濾過を繰り返すと濾材21に目詰まりが生じるため、フィルタエレメント20の交換を行う。濾材21の目詰まりは、フィルタエレメント20の稼働時間と略比例するため、ICタグ40でフィルタエレメント20の稼働時間を測定し、アンテナ51はICタグ40の読み取りを行い外部機器に送信する。フィルタエレメント20の稼働時間が一定時間を経過したら、外部機器は、フィルタエレメント20の交換を促す表示を行う。交換後のフィルタエレメント20には、交換前のフィルタエレメント20と異なるICタグ40が設けられており、ICタグ40を読み取ることで交換後のフィルタエレメント20についても稼働時間の測定を行う。また、交換後のフィルタエレメントとしてICタグ40が設けられていない模造品等が使用された場合には、勿論ICタグ40が読み取れないため、外部機器は、エラー表示を行ったり、フィルタ装置の動作を不可としたりすることができる。また例えば、交換後のフィルタエレメント20に設けられたICタグ40を読み取ることで、外部機器は、所定のフィルタエレメント以外のフィルタエレメントが設けられていることを判定することも可能である。
【0054】
本実施の形態によれば、プレート24に凸部24dを設け、凸部24dの内部にICタグ40を設けるため、フィルタエレメント20にICタグ40を取り付けつつも、ICタグ40と作動油との接触を避けることができる。これにより、ICタグ40の故障を防ぐことができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、プレート24が樹脂製であり、アンテナ51が孔31aの内周面側の開口から露出するため、蓋体30が金属製であったとしてもICタグ40の記録情報を正確に読み取ることができる。さらに、ICタグ40とアンテナ51とが隣接し、かつICタグ40とアンテナ51とが直線上に並ぶため、ICタグ40とアンテナ51とを極力近くに配置することができ、ICタグ40の記録情報を正確に読み取ることができる。
【0056】
なお、本実施の形態では、プレート24を樹脂により形成したが、プレート24の材質は樹脂に限られない。プレート24は耐腐食性の高い材料であればよく、例えばステンレス等の金属であってもよい。端面40aがプレート24から露出しているため、センシングに不具合は生じない。
【0057】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態は、濾材とプレートとを接着する接着剤の内部に板状のICタグを設ける形態である。以下、第2の実施の形態にかかるリターンフィルタ2について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図6は、リターンフィルタ2を斜め下方から見たときの断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。図6では断面を示すハッチングを省略する。
【0059】
リターンフィルタ2は、タンク100の内部に設けられるものであり、主として、ケース10と、フィルタエレメント20Aと、蓋体30と、ICタグ40Aと、アンテナ組立体50と、を有する。
【0060】
フィルタエレメント20Aは、主として、濾材21と、外筒22と、内筒23と、プレート24Aと、プレート25(図6では図示省略)と、ICタグ40Aを有する。プレート24とプレート24Aとの差異は、凸部24d及び穴24eの有無であり、プレート24Aは凸部24d及び穴24eを有しない。
【0061】
濾材21とプレート24Aとの間には接着剤65が封入されており、濾材21とプレート24Aとは接着剤65により接着されている。この接着剤65には、ICタグ40Aが封入される。
【0062】
図7は、フィルタエレメント20Aの平面図であり、プレート24Aを部分的に切断した図である。
【0063】
ICタグ40Aは、略中空円板形状であり、ICタグ40Aの内径は、濾材21の内径より大きい。したがって、濾材21とプレート24とを接着する接着剤65の内部にICタグ40Aを設けることが可能となる。
【0064】
本実施の形態によれば、濾材21とプレート24Aとを接着する接着剤65の内部にICタグ40Aを設けるため、フィルタエレメント20AにICタグ40Aを取り付けつつも、ICタグ40Aと作動油との接触を避けることができる。これにより、ICタグ40Aの故障を防ぐことができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、濾材21とプレート24Aとを接着する接着剤65にICタグ40Aを埋め込むため、ICタグ40Aを樹脂でコーティングする工数や費用を削減することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、ICタグ40Aが略中空円板形状であるため、ICタグ40Aとアンテナ51との位置合わせが不要であり、リターンフィルタ2の組み立てが容易である。
【0067】
なお、本実施の形態では、プレート24Aを樹脂により形成したが、プレート24Aは金属で形成されていてもよい。プレート24Aが金属製であっても、濾材21側は金属で覆われていないため、センシングは可能である。
【0068】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態と同様、濾材とプレートとを接着する接着剤の内部に板状のICタグを設ける形態である。以下、第3の実施の形態にかかるリターンフィルタ3について説明する。なお、第1の実施の形態又は第2の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態にかかるリターンフィルタ2と本実施の形態にかかるリターンフィルタ3との差異は、ICタグの形状のみである。リターンフィルタ3について、リターンフィルタ2との相違点を中心に説明する。
【0070】
図8は、リターンフィルタ3を斜め下方から見たときの断面斜視図であり、一部を拡大表示した図である。図8では断面を示すハッチングを省略する。
【0071】
リターンフィルタ3は、タンク100の内部に設けられるものであり、主として、ケース10と、フィルタエレメント20Bと、蓋体30と、ICタグ40Bと、アンテナ組立体50と、を有する。
【0072】
フィルタエレメント20Bは、主として、濾材21と、外筒22と、内筒23と、プレート24Bと、プレート25(図6では図示省略)と、ICタグ40Bを有する。プレート24とプレート24Bとの差異は、凸部24d及び穴24eの有無であり、プレート24Bは凸部24d及び穴24eを有しない。また、プレート24Bには、板状部24aの上側の面にリブ24fが形成される。リブ24fは、プレート24Bの成形時に形成され、マーキングの役割を果たす(後述)。
【0073】
濾材21とプレート24Bとの間には接着剤65が封入されており、濾材21とプレート24Bとは接着剤65により接着されている。この接着剤65には、ICタグ40Bが封入される。
【0074】
図9は、フィルタエレメント20Bの平面図であり、プレート24Bを部分的に切断した図である。
【0075】
ICタグ40Bは、略円板形状である。ICタグ40Bの直径は、濾材21の幅wより小さい。したがって、濾材21とプレート24Bとを接着する接着剤の内部にICタグ40Bを設けることが可能となる。
【0076】
濾材21に接着剤65を塗布するときにICタグ40Bを接着剤65に封入し、その後接着剤65の上にプレート24Bを載置する。このとき、平面視においてリブ24fとICタグ40Bとが重なるようにする。フィルタエレメント20Bをケース10の内部に挿入するときは、平面視においてリブ24fとアンテナ組立体50とが直線上に並ぶようにする。その結果、ICタグ40Bとアンテナ51が直線上に並ぶように、ケース10及び蓋体30により形成される内部空間にフィルタエレメント20Bが設けられる。
【0077】
本実施の形態によれば、濾材21とプレート24Bとを接着する接着剤の内部にICタグ40Bを設けるため、フィルタエレメント20BにICタグ40Bを取り付けつつも、ICタグ40Bと作動油との接触を避けることができる。これにより、ICタグ40Bの故障を防ぐことができる。また、濾材21とプレート24Bとを接着する接着剤にICタグ40Bを埋め込むため、ICタグ40Bを樹脂でコーティングする工数や費用を削減することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、ICタグ40Bが略円板形状であり、直径が濾材21の幅wより小さいため、接着剤にICタグ40Bを封入するのが容易である。
【0079】
なお、本実施の形態では、プレート24Bを樹脂により形成したが、プレート24Aと同様、プレート24Bは金属で形成されていてもよい。また、本実施の形態では、略円板形状の小型のICタグ40Bを1つ設けたが、ICタグ40Bを複数設けてもよい。例えば、ICタグ40Bを放射状に複数(4個、6個、8個等)設けるようにしてもよい。図10は、ICタグ40Bを放射状に4個設けた変形例にかかるフィルタエレメント20Cの概略図である。このようにICタグ40Bを放射状に複数設けることで、フィルタエレメント20とアンテナ51との位置あわせが不要となる。またフィルタエレメント20Cでは、リブ24fは必須ではないため、リブ24fが形成されていないプレート24Aを使用することができる。
【0080】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0081】
また、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略円筒形状」とは、厳密に円筒形状の場合には限られず、例えば円筒形状と同一視できる場合を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0082】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3:リターンフィルタ
9 :サクションストレーナ
10 :ケース
11 :底面
12 :流出部
13 :取付部材
20、20A、20B、20C:フィルタエレメント
21 :濾材
22 :外筒
23 :内筒
24、24A、24B:プレート
24a :板状部
24b :筒状部
24c :筒状部
24d :凸部
24e :穴
24f :リブ
25 :プレート
25a :凹部
25b :孔
30 :蓋体
31 :筒状部
31a :孔
31b :突起
32 :カバー
33 :取付部
40、40A、40B:ICタグ
40a :端面
50 :アンテナ組立体
51 :アンテナ
51a :端面
61、62:シール部材
63 :バルブ
65 :接着剤
100 :タンク
101 :底面
102 :上面
102a :開口部
103 :側面
105 :仕切り板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10