(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】キャブおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20220602BHJP
B62D 25/07 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
E02F9/16 A
B62D25/07
(21)【出願番号】P 2018027303
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北荘 正人
(72)【発明者】
【氏名】竜田 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 正彦
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115357(JP,A)
【文献】特開2000-006839(JP,A)
【文献】特開2006-342524(JP,A)
【文献】特開2008-239091(JP,A)
【文献】特開2009-235863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00- 9/16
B62D 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有する、作業機械のキャブであって、
前記空間の上方を覆う基部と、
車幅方向における少なくとも一方の縁に沿って設けられ、前記基部から上方に突出した側方突出部と、
後方の縁に沿って設けられ、前記基部から上方に突出した後方突出部と、
前記側方突出部と前記後方突出部との間隔によって形成された後方排水部と、を有する天井部と、
前記後方排水部より後方に配置され、前記車幅方向に沿って形成された側方排水部と、
前記後方排水部と前記側方排水部を繋ぐ排水案内部と、
後面に配置された後面窓と、
前記後面窓の両側に隣接して配置された後側面窓と、を備
え、
前記側方排水部は、前記後側面窓の上縁における後端の上方に配置され、車幅方向において前記後側面窓の上縁における後端よりも外側に突出している、
キャブ。
【請求項2】
前記側方突出部は、前記車幅方向における両方の縁の各々に沿って設けられる第1側方突出部と第2側方突出部とを有し、
前記後方排水部は、前記第1側方突出部と前記後方突出部との間隔によって形成された第1後方排水部と、前記第2側方突出部と前記後方突出部との間隔によって形成された第2後方排水部とを有し、
前記側方排水部は、前記第1後方排水部に対して設けられた第1側方排水部と、前記第2後方排水部に対して設けられた第2側方排水部とを有し、
前記排水案内部は、前記第1側方排水部と前記第1後方排水部を繋ぐ第1排水案内部と、前記第2側方排水部と前記第2後方排水部を繋ぐ第2排水案内部とを有する、
請求項1に記載のキャブ。
【請求項3】
前記側方排水部および前記排水案内部を覆うカバー部材を更に備えた、
請求項1に記載のキャブ。
【請求項4】
前記基部は、前記車幅方向の中央が上方に突出するように湾曲している、
請求項1~3のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項5】
前記基部は、前方より後方の高さが低くなるように湾曲している、
請求項1~4のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項6】
内部に空間を有する、作業機械のキャブであって、
前記空間の上方を覆う基部と、
車幅方向における少なくとも一方の縁に沿って設けられ、前記基部から上方に突出した側方突出部と、
後方の縁に沿って設けられ、前記基部から上方に突出した後方突出部と、
前記側方突出部と前記後方突出部との間隔によって形成された後方排水部と、を有する天井部と、
前記後方排水部より後方に配置され、前記車幅方向に沿って形成された側方排水部と、
前記後方排水部と前記側方排水部を繋ぐ排水案内部と、を備え、
前記排水案内部は、
前記後方排水部の前記車幅方向における内側の縁に対応する位置から後方に向かって形成された第1側壁と、
前記第1側壁の後端から側方に向かって形成された第2側壁と、
前記第1側壁と前記第2側壁と繋がった底面と、を有し、
前記側方排水部は、前記側方突出部と前記第2側壁との間に設けられた間隔により形成されている、
キャブ。
【請求項7】
前記側方排水部において前記排水案内部の底面から下方に向かって延びた延出部を更に備えた、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のキャブ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のキャブと、
前記キャブの後方に配置された作動油タンクと、
前記作動油タンクを覆うカバー部と、を備えた、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブおよび作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械におけるキャノピでは、ルーフが前端側から後端側に向けて斜め下向きに傾斜しており、ルーフ上に落下した雨水はルーフの傾斜に沿ってルーフの後端側に流れ、ルーフの後端から落下する(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の建設機械は小型の油圧ショベルであるため、キャノピの後方には車体が存在せず、ルーフの後端から落下した雨水は履帯や地面に落下する。
しかしながら、上記従来のルーフ構造をホイールローダなどに適用した場合、キャブの後方に作動油タンクが存在するため、ルーフの後端から落下した雨水が作動油タンクを覆うカバーに落下すると、打音および窓への雨水の跳ね返りが発生していた。
【0005】
本発明は、打音および後方窓への雨水の跳ね返りを抑制することが可能なキャブおよび作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかるキャブは、内部に空間を有する、作業機械のキャブであって、天井部と、側方排水部と、排水案内部と、を備える。天井部は、基部と、側方突出部と、後方突出部と、後方排水部と、を有する。基部は、空間の上方を覆う。側方突出部は、車幅方向における少なくとも一方の縁に沿って設けられ、基部から上方に突出している。後方突出部は、後方の縁に沿って設けられ、基部から上方に突出している。後方排水部は、側方突出部と後方突出部との間隔によって形成されている。側方排水部は、後方排水部より後方に配置され、車幅方向に沿って形成されている。排水案内部は、後方排水部と側方排水部を繋ぐ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、打音および後方窓への雨水の跳ね返りを抑制することが可能なキャブおよびキャブを用いた作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明にかかる実施の形態におけるホイールローダを示す側面図。
【
図3】
図1のホイールローダのキャブを示す側面図。
【
図7】
図3のキャブの天井部およびカバー部材を示す斜視図。
【
図8D】
図8Aの天板の雨水が貯まる領域をハッチングで示した平面図。
【
図9A】
図3のキャブの後面の左上部を示す拡大図。
【
図11】
図3のキャブからカバー部材を取り外した状態の後面の上部を示す図。
【
図12A】
図1のホイールローダのキャブおよびキャブの後方の構成における作動油タンクの位置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかる実施の形態のホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1-1.ホイールローダ1の構成の概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ1の構成を示す模式図である。
図2は、本実施の形態のホイールローダ1の平面図である。本実施の形態のホイールローダ1は、
図1及び
図2に示すように、車体フレーム2と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、および一対のリアタイヤ7と、を備えている。なお、以下の説明における「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。「車幅方向」と「左右方向」は同義である。前後方向Xと車幅方向Yが、図示されている。「車幅方向の内側」とは作業機械の車幅方向の中心側を示し、「車幅方向の外側」とは作業機械の車幅方向の中心から離れる側を示す。
【0010】
ホイールローダ1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。連結軸部13は、車幅方向Yの中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0011】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0012】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、カバー6aによって覆われている。エンジンルーム6には、作動油タンク19(後述する
図12A参照)およびエンジンなどが収納されている。
【0013】
(1-2.キャブ5)
図3は、キャブ5の側面図である。
図4は、キャブ5の平面図である。
図5は、キャブ5の背面図である。
図6は、
図4のVV´間の矢示断面図である。
図6では、キャブ5の運転席、ドアなどは省略されている。
キャブ5は、
図3に示すように、内部に空間Sを有し、その空間Sには、運転席やステアリング操作のためのハンドルやジョイスティックレバー、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。
キャブ5は、
図3に示すように、床部21と、天井部22と、左右一対の前方ピラー23と、左右一対の後方ピラー24と、前方窓25と、後方窓26と、前方パネル部27と、後方パネル部28と、ドア29と、排水案内部材31(
図5参照)と、カバー部材32と、フレーム部33と、を有する。
【0014】
床部21は、内部空間Sの下方に位置し、運転席の床を構成する。床部21は、リアフレーム12に固定されている。天井部22は、内部空間Sの上方に位置し、床部21に対向する。前方ピラー23および後方ピラー24は、それぞれ左右一対で構成されている。前方ピラー23は、左前方ピラーと右前方ピラーを有する。後方ピラー24は、左後方ピラーと右後方ピラーを有する。前方ピラー23および後方ピラー24は、上下方向に配置されている。前方窓25は、運転席の前側に位置する。後方窓26は、運転席の後側に位置する。前方パネル部27は、前方窓25の中央の前面窓251の下側に配置されている。後方パネル部28は、後方窓26の下側に配置されている。ドア29は、キャブ5の左側面側および右側面側に配置されている。排水案内部材31は、後述する
図9Aに示すように、天井部22の後側に配置され、天井部22に落下した雨水の排水を側方へと案内する。カバー部材32は、排水案内部材31を覆う。フレーム部33は、天井部22の周縁に沿って下側に設けられており、前方ピラー23、後方ピラー24、前方窓25、後方窓26等が固定されている。
【0015】
(1-3.天井部22)
図7は、天井部22およびカバー部材32を示す斜視図である。天井部22は、
図7に示すように、天板41と、側板43と、側板44と、を有する。
天板41は、
図4および
図7に示すように、平面視において概ね四角形状であり、対向する一方の縁の組(前縁41aおよび後縁41b)が前後方向Xに配置されており、他方の縁の組(左縁41cおよび右縁41d)が車幅方向Yに配置されている。
【0016】
側板43は、天板41の左縁41cの後部であって天板41の下側に固定されている。側板43は、天板41に対して概ね垂直に、前後方向Xに沿って配置されている。側板44は、
図7に示すように、右縁41dの後部であって天板41の下側に固定されている。側板44は、天板41に対して概ね垂直に、前後方向Xに沿って配置されている。側板43と側板44は、車幅方向Yにおいて対向して配置されている。
【0017】
天板41は、一枚の板をプレス加工することによって形成されている。
図8Aは、天板41を示す平面図である。
図8Bは、
図8AのAA´間の矢示断面図である。
図8Cは、
図8AのBB´間の矢示断面図である。
天板41は、
図7および
図8Aに示すように、基部51と、前方突出部52と、側方突出部50と、後方突出部55と、後方排水部60と、中央突出部58と、リブ59a~59eと、を有する。
【0018】
基部51は、キャブ5の空間Sを覆うように配置されている。前方突出部52は、天板41の前縁41aに沿って基部51から上方に突出するように形成されている。
側方突出部50は、車幅方向Yにおける少なくとも一方の縁に沿って設けられ、基部51から上方に突出している。側方突出部50は、左側方突出部53と、右側方突出部54と、を有する。左側方突出部53は、天板41の左縁41cに沿って基部51から上方に突出するように形成されている。右側方突出部54は、天板41の右縁41dに沿って基部51から上方に突出するうように形成されている。後方突出部55は、天板41の後縁41bに沿って基部51から上方に突出するように形成されている。
【0019】
前方突出部52の左側の端と左側方突出部53は繋がっている。前方突出部52の右側の端と右側方突出部54は繋がっている。
後方突出部55の左端55cは、左側方突出部53の後端53bと繋がっておらず、所定の間隔G1が形成されている。また、後方突出部55の右端55dは、右側方突出部54の後端54bと繋がっておらず、所定の間隔G2が形成されている。
【0020】
後方排水部60は、側方突出部50と後方突出部55との間隔によって形成されている。後方排水部60は、左後方排水部56と、右後方排水部57と、を有する。
左後方排水部56は、上述した間隔G1により形成されており、後方突出部55の左端55cと左側方突出部53の後端53bと基部51によって囲まれて形成されている。左後方排水部56は、左端55cと後端53bが側壁を構成し、基部51が底面を構成した溝状であり、前後方向Xに沿って形成されている。
【0021】
右後方排水部57は、上述した間隔G2により形成されており、後方突出部55の右端55dと右側方突出部54の後端54bと基部51に囲まれて形成されている。右後方排水部57は、右端55dと後端54bが側壁を構成し、基部51が底面を構成した溝状であり、前後方向Xに沿って形成されている。
中央突出部58は、後方突出部55の前側に設けられている。中央突出部58の左端58cは左側方突出部53とは繋がっておらず所定の間隔G3が形成されている。また、中央突出部58の右端58dは右側方突出部54とは繋がっておらず所定の間隔G4が形成されている。
【0022】
リブ59a~59eは、基部51の前方突出部52と、左側方突出部53と、右側方突出部54と、中央突出部58に囲まれた部分に形成されている。リブ59a~59eは、基部51より上方に突出している。リブ59aは、車幅方向Yの中央において前後方向Xに沿って前方突出部52と中央突出部58の間に形成されている。リブ59bは、リブ59aの車幅方向Yの左側に前後方向Xに沿って形成されている。リブ59cは、リブ59aの車幅方向Yの右側に前後方向Xに沿って形成されている。リブ59dは、リブ59bの車幅方向Yにおける外側(左側)に前後方向Xに沿って形成されている。リブ59eは、リブ59cの車幅方向Yにおける外側(右側)に前後方向Xに沿って形成されている。
【0023】
基部51は、車幅方向Yにおける中央が上方に突出するように湾曲している。曲率が小さいため、
図8Bでは分かり難いので、
図8Bの線L1で湾曲している状態を示す。これによって、天板41に落下した雨水は左側方突出部53または右側方突出部54へと移動する。
また、基部51は、前方より後方の高さが低くなるように湾曲している。曲率が小さいため、
図8Cでは分かり難いので、
図8Cにおいて線L2で湾曲している状態を示す。
【0024】
上述した車幅方向Yにおける湾曲(線L1参照)によって左側方突出部53または右側方突出部54へと移動した雨水が湾曲(線L2参照)によって間隔G3、G4を通って後方へと移動する。
図8Dは、雨水が貯まる領域をハッチングで示した天板41の平面図である。
図8Dに示すように、前方突出部52と、左側方突出部53と、右側方突出部54と、後方突出部55と、中央突出部58とリブ59a~59eによって囲まれた領域Rに雨水が貯まる。領域Rに落下した雨水は、湾曲(線L1参照)によって左側方突出部53または右側方突出部54へと移動した後、湾曲(線L2参照)によって間隔G3、G4を通って後方へと移動し、左後方排水部56および右後方排水部57から天板41の後方へと排出される(矢印J、K参照)。
【0025】
(1-4.フレーム部33)
フレーム部33は、天井部22の天板41の下側であって天板41の周縁(前縁41a、後縁41b、左縁41cおよび右縁41d)に沿って配置されている。フレーム部33は、天板41の周縁に沿って配置された複数のフレーム部材331を有している。フレーム部材331の一部が
図3、
図6および
図9Aに示されている。フレーム部材331には、前方ピラー23、後方ピラー24、後述する前方窓25および後方窓26等が取り付けられる。
【0026】
(1-5.前方ピラー23、後方ピラー24)
前方ピラー23は、
図3および
図6に示すように、床部21とフレーム部33を繋ぐように上下方向に沿って配置されており、フレーム部33を介して天井部22を支持している。前方ピラー23は、キャブ5の車幅方向Yにおける左右の双方に配置されている。前方ピラー23は、キャブ5の前後方向Xにおける前方に配置されている。
【0027】
後方ピラー24は、床部21とフレーム部33を繋ぐように上下方向に沿って配置されており、フレーム部33を介して天井部22を支持している。後方ピラー24は、キャブ5の車幅方向Yにおける左右の双方に配置されている。後方ピラー24は、前方ピラー23の後方に所定の間隔を空けて配置されている。後方ピラー24は、キャブ5の前後方向Xにおける後方に配置されている。
【0028】
(1-6.前方窓25)
前方窓25は、左右の前方ピラー23の間に設けられており、運転席の前方に配置されている。前方窓25は、
図4に示すように、前面窓251と、一対の前側面窓252と、を有する。前方窓25は、運転席の正面に配置されている。前側面窓252は、前面窓251の車幅方向Yの両側に配置されている。
【0029】
すなわち、左側の前側面窓252は、前面窓251と左側の前方ピラー23の間に配置されており、右側の前側面窓252は、前面窓251と右側の前方ピラー23の間に配置されている。前面窓251は、天井部22の下側のフレーム部材331(
図3参照)から設けられており、前面窓251の下側から床部21までは、前方パネル部27が設けられている。前側面窓252は、天井部22から床部21まで配置されている。前面窓251と、その両側の前側面窓252の間にはシーリングが施されている。
【0030】
(1-7.後方窓26)
後方窓26は、
図5に示すように、左右の後方ピラー24の間に設けられており、運転席の後方に配置されている。後方窓26は、後面窓261と、一対の後側面窓262と、を有する。後面窓261は、運転席の背面に配置されている。後側面窓262は、後面窓261の車幅方向Yの両側に配置されている。
【0031】
すなわち、左側の後側面窓262は、後面窓261と左側の後方ピラー24の間に配置されており、右側の後側面窓262は、後面窓261と右側の後方ピラー24の間に配置されている。後面窓261および2つの後側面窓262は、天井部22の下側のフレーム部材331(後述する
図9A参照)から配置されており、後面窓261および2つの後側面窓262の下側から床部21までは、後方パネル部28が設けられている。後面窓261と、その両側の後側面窓262の間にはシーリングが施されている。また、後面窓261は、
図3に示すように、上方に向かうに従って後方に向かうように傾斜している。
【0032】
(1-8.ドア29、右側面窓30)
ドア29は、
図3に示すように、左側面側の前方ピラー23と左側面側の後方ピラー24の間に設けられており、後方ピラー24に設けられたヒンジ部291を中心に回動する。
ドア29は、キャブ5の右側面側にも左側面側と同様に、右側面側の前方ピラー23と右側面側の後方ピラー24の間に設けられている。キャブ左側面側のドア29とキャブ右側面側のドア29は、互いに対向するように配置されている。
【0033】
(1-9.排水案内部材31)
図9Aは、キャブ5の後面の左上方の拡大図である。
図9Bは、
図9Aの側面図である。
図10Aは、キャブ5の後面の左上方の拡大図であり、カバー部材32を取り外した状態を示す図である。
図10Bは、
図10Aの側面図である。
図11は、キャブ5からカバー部材32を取り外した状態の背面の上部を示す図である。
図11では、キャブ5の車幅方向Yの中央部分が省略されている。
【0034】
排水案内部材31は、天板41の後側に取り付けられている。排水案内部材31は、
図11に示すように、車幅方向Yに長い部材であって、天板41に固定されている。排水案内部材31は、
図10Bおよび
図11に示すボルト101によって側板43の後部43bに固定され、
図11に示すボルト102によって側板44の後部44bに固定されている。
【0035】
排水案内部材31は、
図11に示すように、側方排水部67と、排水案内部68と、廻り込み抑制部69と、を有する。側方排水部67は、
図10Aに示すように、後方排水部60より後方に配置され、車幅方向Yに沿って形成されている。排水案内部68は、後方排水部60と側方排水部67とを繋ぐ。
側方排水部67は、左側方排水部61と右側方排水部64とを有する。排水案内部68は、左排水案内部62と右排水案内部65とを有する。廻り込み抑制部69は、左廻り込み抑制部63と右廻り込み抑制部66とを有する。
図11に示すように、排水案内部材31には、左側面側の端部に、左側方排水部61と、左排水案内部62と、左廻り込み抑制部63と、が設けられ、右側面側の端部に、右側方排水部64と、右排水案内部65と、右廻り込み抑制部66が設けられている。
【0036】
左側方排水部61、左排水案内部62、および左廻り込み抑制部63が設けられた左側面側の構成と、右側方排水部64、右排水案内部65、および右廻り込み抑制部66が設けられた右側面側の構成は、前後方向Xを基準に左右対称に形成されているため、左側面側の構成について図面を用いて詳しく説明する。
左側方排水部61は、
図10Aに示すように、車幅方向Yに対向するように開口して形成された間隔G5によって形成されており、雨水を側方(左方向側)に排水する。
【0037】
左排水案内部62は、天板41の左後方排水部56から左側方排水部61へと雨水を案内する。左排水案内部62は、側壁71と、側壁72と、底面73とを有する。側壁71は、左後方排水部56を形成する後方突出部55の左端55cから後方に向かって前後方向Xに沿って形成されている。側壁72は、側壁71の後端から車幅方向Yに沿って外側(
図10Aでは左方向)に向かって形成されている。側壁72は、左後方排水部56に対向するように配置されている。底面73は、左後方排水部56から排出された雨水が流れる流路の底面を形成し、側壁71と側壁72の下端と繋がっている。
【0038】
左側方排水部61は、左側方突出部53の後端53bと側壁72の外側(
図10Aでは左方向)の端72eとの間(上述した間隔G5)に形成されている。換言すると、左側方排水部61は、左側方突出部53の後端53bと、側壁72の端72eと、底面73の外側(
図10Aでは左方向)の端73eで囲まれて形成されている。
左廻り込み抑制部63は、底面73の端73eから下方に向かって延びる板状の部分である。左廻り込み抑制部63は、底面73に対して略垂直に形成されている。これによって、左側方排水部61から排水された雨水が底面73の端73eの下側に廻り込んで後側面窓262を伝うことを防止することができる。
【0039】
右側面側の右側方排水部64は、
図11に示すように、車幅方向Yに対向するように開いて形成された間隔G6によって形成されており、雨水を側方(右方向側)に排水する。
右排水案内部65は、天板41の右後方排水部57から右側方排水部64へと雨水を案内する。右排水案内部65は、左排水案内部62と同様に、側壁71と、側壁72と、底面73とを有する。側壁71(
図11では図示せず)は、右後方排水部57の一部を構成する後方突出部55の右端55dから後方に向かって前後方向Xに沿って形成されている。側壁72は、
図11に示すように、側壁71の後端から車幅方向Yに沿って外側(右方向)に向かって形成されている。側壁72は、右後方排水部57に対向するように配置されている。底面73(
図11では図示せず)は、右後方排水部57から排出された雨水が流れる流路の底面を形成し、側壁71と側壁72の下端と繋がっている。
【0040】
右側方排水部64は、右側方突出部54の後端54bと側壁72の外側(右方向)の端72eとの間(上述した間隔G6)に形成されている。換言すると、右側方排水部64は、右側方突出部54の後端54bと、側壁72の端72eと、底面73の外側の端73eで囲まれて形成されている。
右廻り込み抑制部66は、底面73の外側の端73eから下方に向かって延びる板状の部分である。右廻り込み抑制部66は、底面73に対して略垂直に形成されている。これによって、右側方排水部64から排水された雨水が底面73の端73eの下側に廻り込んで後側面窓262を伝うことを防止することができる。
【0041】
(1-10.カバー部材32)
カバー部材32は、排水案内部材31の上側、左側および右側を覆っている。カバー部材32は、
図4および
図9Bに示すボルト104等によって排水案内部材31に固定されている。カバー部材32は、
図7に示すように、上部81と、左側部82と、右側部83とを有する。
【0042】
上部81は、排水案内部材31の上側に排水案内部材31に沿うように車幅方向Yに長く形成されている。
左側部82は、上部81の左端から下方に向かって形成されている。左側部82は、
図9Aに示すように、左側方排水部61よりも外側(左側)に配置されており、左側方排水部61から排出された雨水は、左側部82と左廻り込み抑制部63の間を通って落下する(矢印D参照)。
【0043】
右側部83は、
図7に示すように、上部81の右端から下方に向かって形成されている。図示していないが、右側部83は、左側部82と同様に、右側方排水部64よりも外側(右側)に配置されており、右側方排水部64から排出された雨水は、右側部83と右廻り込み抑制部66の間を通って落下する。
【0044】
<2.作用>
キャブ5の天板41に落下した雨水は、基部51の車幅方向Yにおける湾曲(線L1参照)によって左側方突出部53または右側方突出部54へと移動した後、基部51の前後方向Xにおける湾曲(線L2参照)によって間隔G3、G4を通って後方へと移動し、左後方排水部56および右後方排水部57から天板41の後方へと排出される。
左後方排水部56から排水された雨水は、
図10Aの矢印Eに示すように、側壁71に沿って底面73上を流れ、側壁72に衝突して左側方に案内され、左側方排水部61から左廻り込み抑制部63に沿って下方に落下する。また、右後方排水部57から排水された雨水は、側壁71に沿って底面73上を流れ、側壁72に衝突して右側方に案内され、右側方排水部64から右廻り込み抑制部66に沿って下方に落下する。
【0045】
図12Aは、キャブ5およびキャブ5の後方の構成における作動油タンク19の位置を示す側面図である。
図12Aでは、リアタイヤ7は省略されている。
図12Bは、
図12AのCC´間の矢示断面図である。
図12Aおよび
図12Bに示すように、キャブ5の後方に作動油タンク19が配置されている。また、後面窓261が上方に向かうに従って後方に向かうように傾斜しているため、キャブ5の天井部22の後縁41bが作動油タンク19の上方に位置している。
【0046】
図12Bに示すように、左後方排水部56から排出された雨水は、矢印Fに示すように、作動油タンク19の上側の位置P1よりも左側面側のカバー6aが傾斜している位置P2に落下する。また、右後方排水部57から排出された雨水は、矢印Hに示すように、作動油タンク19の上側の位置P1よりも右側面側のカバー6aが傾斜している位置P3に落下する。
このように、排水案内部材31によって左後方排水部56および右後方排水部57から排水された雨水を側方に向かって案内することによって、作動油タンク19の上部に落下しないようにできるため、雨水の騒音および雨水の窓への飛び跳ねを抑制することができる。
【0047】
<3.特徴など>
(3-1)
本実施の形態のキャブ5は、内部空間Sを有する、作業機械のキャブ5であって、天井部22と、側方排水部67と、排水案内部68と、を備える。天井部22は、基部51と、側方突出部50と、後方突出部55と、後方排水部60と、を有する。基部51は、内部空間Sの上方を覆う。側方突出部50は、車幅方向Yにおける左縁41cおよび右縁41dの少なくとも一方(少なくとも一方の縁の一例)に沿って設けられ、基部51から上方に突出している。後方突出部55は、後方の縁41bに沿って設けられ、基部51から上方に突出している。後方排水部60は、側方突出部50と後方突出部55との間隔G1および間隔G2の少なくとも一方によって前後方向Xに沿って形成されている。側方排水部67は、後方排水部60より後方に配置され、車幅方向Yに沿って形成されている。排水案内部68は、後方排水部60と側方排水部67を繋ぐ。
【0048】
これにより、天井部22に落下した雨水は、後方排水部60から天井部22の後方へと排出されたのち排水案内部68によって側方排水部67へと案内され、キャブ5の側方に落下する。
このため、キャブ5の後方に例えば作動油タンク19が設けられている場合であっても、作動油タンク19を覆う部分のカバー6aに落下しないため、打音および窓への雨水の跳ね返りを抑制することができる。
【0049】
(3-2)
本実施の形態にかかるキャブ5では、側方突出部50は、左側方突出部53(第1側方突出部の一例)と右側方突出部54(第2側方突出部の一例)とを有する。左側方突出部53と右側方突出部54は、車幅方向Yにおける左縁41cおよび右縁41d(両方の縁の一例)の各々に沿って設けられる。後方排水部60は、左後方排水部56(第1後方排水部の一例)と右後方排水部57(第2後方排水部の一例)とを有する。左後方排水部56は、左側方突出部53と後方突出部55との間隔G1によって形成されている。右後方排水部57は、右側方突出部54と後方突出部55との間隔G2によって形成されている。側方排水部67は、左側方排水部61(第1側方排水部の一例)と右側方排水部64(第2側方排水部の一例)とを有する、左側方排水部61は、左後方排水部56に対して設けられており、右側方排水部64は、右後方排水部57に対して設けられている。排水案内部68は、左排水案内部62(第1排水案内部の一例)と右排水案内部65(第2排水案内部の一例)とを有する。左排水案内部62は、左側方排水部61と左後方排水部56とを繋ぐ。右排水案内部65は、右側方排水部64と右後方排水部57とを繋ぐ。
このように、左後方排水部56および右後方排水部57の双方に対して、側方排水部と排水案内部が設けられている。これにより、キャブ5の両側方から雨水を落下させることができる。
【0050】
(3-3)
本実施の形態にかかるキャブ5は、カバー部材32を更に備える。カバー部材32は、左側方排水部61および右側方排水部64ならびに左排水案内部62および右排水案内部65を覆う。
これにより、デザイン性に優れたキャブ5を提供することができる。
【0051】
(3-4)
本実施の形態にかかるキャブ5では、基部51は、
図8Bの線L1に示すように、車幅方向Yの中央が上方に突出するように湾曲している。
これにより、雨水を車幅方向Yの両側に設けられた左側方突出部53および右側方突出部54に集めることができる。
【0052】
(3-5)
本実施の形態にかかるキャブ5では、基部51は、
図8Cの線L2に示すように、前方より後方の高さが低くなるように湾曲している。
これにより、雨水を後方に設けられた後方突出部55に集めることができる。
(3-6)
本実施の形態にかかるキャブ5は、後面窓261と、後側面窓262と、を更に備える。後面窓261は、後面に配置されている。後側面窓262は、後面窓261の両側に隣接して配置されている。
雨水の跳ね返りを抑制できるため、後面窓261および後側面窓262の視認性を高めることができる。
【0053】
(3-7)
本実施の形態にかかるキャブ5では、排水案内部68は、側壁71(第1側壁の一例)と、側壁72(第2側壁の一例)と、底面73と、を有する。側壁71は、後方突出部55の左端55cまたは右端55d(後方側排出部の車幅方向における内側の縁の一例)に対応する位置から後方に向かって形成されている。側壁72は、側壁71の後端から側方に向かって形成されている。底面73は、側壁71と側壁72と繋がっている。側方排水部67は、側方突出部50と側壁72との間に設けられた間隔G5または間隔G6により形成されている。
これにより、雨水を後方排水部60から側方排水部67へと案内することができる。
【0054】
(3-8)
本実施の形態にかかるキャブ5は、廻り込み抑制部69(延出部の一例)を更に備える。廻り込み抑制部69は、側方排水部67において排水案内部68の底面73から下方に向かって延びている。
これにより、雨水が廻り込み抑制部69に沿って下方に落下するため、雨水が側方排水部67を廻り込んで窓を伝って下方に落下することを抑制することができる。
【0055】
(3-9)
本実施の形態にかかるホイールローダ1(作業機械の一例)は、キャブ5と、作動油タンク19と、カバー6a(カバー部の一例)と、を備える。作動油タンク19は、キャブ5の後方に配置されている。カバー6aは、作動油タンク19を覆う。
これにより、カバー6aの作動油タンク19を覆う部分への雨水の落下を抑制することができるため、打音および窓への雨水の跳ね返りの発生を低減することができる。
【0056】
<4.他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0057】
(A)
上記実施の形態では、側方突出部50は、左側方突出部53と右側方突出部54を有しているが、どちらか一方のみを有していてもよく、後方排水部60は、左後方排水部56と右後方排水部57を有しているが、どちらか一方のみを有していてもよい。また、上記実施の形態では、側方排水部67は、左側方排水部61と右側方排水部64を有しているが、どちらか一方のみを有していてもよく、排水案内部68は、左排水案内部62と右排水案内部65とを有しているが、どちらか一方のみを有していてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、廻り込み抑制部69は、左廻り込み抑制部63と右廻り込み抑制部66とを有しているが、どちらか一方が設けられていなくても良く、更に双方とも設けられていなくてもよい。
また、天板41に、左後方排水部56および右後方排水部57の一方が設けられていない場合、
図8Bにおいて説明した基部51の湾曲は、後方排水部が形成されている方に湾曲していればよい。また、左側方排水部61および右側方排水部64並びに左排水案内部62と右排水案内部65も後方排水部が設けられている側のみが形成されていればよい。
さらに、基部51は、車幅方向Yにおいて湾曲に限らず、傾斜していてもよい。
また、基部51は、前後方向Xにおいても湾曲に限らず傾斜していてもよい。
【0059】
(B)
上記実施の形態では、左側方排水部61および右側方排水部64は、左後方排水部56および右後方排水部57より車幅方向Yの外側に設けられているが、本実施の形態の位置に限られるものではなく、要するに作動油タンク19(又はカバー6a)の上側に雨水が落下しないようにできさえすればよい。
【0060】
(C)
上記実施の形態では、側壁71は前後方向Xに沿って形成され、側壁72は車幅方向Yに沿って形成されているが、これに限らなくても良く、例えば、側壁71は後方に向かうに従って外側に向かって傾斜しても良いし、側壁72は外側に向かうに従って後方に傾斜してもよい。
また、上記実施の形態では、底面73は水平に形成されているが、これに限られるものではなく、傾斜していてもよい。
【0061】
(D)
上記実施の形態では、左廻り込み抑制部63および右廻り込み抑制部66は、下方に向かって鉛直方向に形成されているが、雨水が廻り込まなければ鉛直方向に限らなくてもよく、例えば下方に向かうに従って車幅方向Yにおける外側に向かって傾斜していてもよい。
【0062】
(E)
上記実施の形態では、作業機械の一例としてホイールローダ1を用いて説明したが、これに限られるものではなく、油圧ショベル、ブルドーザ、モータグレーダなどであってもよく、キャブを有している機械に対して適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のキャブは、打音および窓への雨水の跳ね返りを抑制することが可能な効果を有し、例えば作業機械などに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
5 :キャブ
22 :天井部
50 :側方突出部
51 :基部
53 :左側方突出部
54 :右側方突出部
55 :後方突出部
56 :左後方排水部
57 :右後方排水部
61 :左側方排水部
62 :左排水案内部
64 :右側方排水部
65 :右排水案内部
67 :側方排水部
68 :排水案内部