(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】熱交換器及び給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20220602BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20220602BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
F24H9/00 D
F24H1/14 B
F28F9/013 Z
(21)【出願番号】P 2018045263
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】武長 勇
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-343090(JP,A)
【文献】特開2005-016939(JP,A)
【文献】特開2012-017904(JP,A)
【文献】特開2017-150734(JP,A)
【文献】特開2014-102021(JP,A)
【文献】特開2011-007420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/14
F28F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1、第2の側壁部を有する筺体と、それぞれ前記第1の側壁部を貫通して該第1の側壁部に固定された複数の管とを備える熱交換器において、
前記第2の側壁部には、それぞれ前記筺体の内側に突出した複数のエンボスが間隔を空けて設けられ、
前記各管は、前記エンボスに接触して位置決めされ
、
前記複数の管は鉛直方向に所定の間隔を空けて配置され、最下位置に配された前記管を除く前記管に、該管の直下に配された前記管に上方から接している前記エンボスが、下方から接していることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項
1記載の熱交換器において、前記各管には高さ位置が異なる複数の前記エンボスが接触していることを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の熱交換器において、前記各管には水平位置が異なる複数の前記エンボスが接触していることを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
バーナユニット、顕熱熱交換器及び潜熱熱交換器が下から順に配置された給湯装置において、
前記潜熱熱交換器は、対向配置された第1、第2の側壁部を有する筺体と、それぞれ前記第1の側壁部を貫通して該第1の側壁部に固定された複数の管とを備え、前記第2の側壁部には、それぞれ前記筺体の内側に突出した複数のエンボスが間隔を空けて設けられ、前記各管は、前記エンボスに接触して位置決めされ
、前記複数の管は鉛直方向に所定の間隔を空けて配置され、最下位置に配された前記管を除く前記管に、該管の直下に配された前記管に上方から接している前記エンボスが、下方から接していることを特徴とする給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筺体内で、管内を流れる湯水と筺体内に取り込んだ燃焼ガスとを熱交換する熱交換器及びその熱交換器を備える給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筺体内に設けられた複数の管内を流れる湯水を、筺体内に取り込んだ燃焼ガスで加熱する熱交換器は、管が所定の間隔を空けて配置される。これは、管内の湯水と燃焼ガスとの熱交換の効率化を図るためである。また、管の間隔が狭くなった箇所には結露水がたまることから、管を所定の間隔を空けて配置することは、管の間に結露水がたまるのを防止する点でも有効である。
特許文献1には、曲げ加工が施された線材又は棒状部材を用いて、管を所定の間隔を空けて配置する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、曲げ加工が施された線材又は棒状部材のみでは、安定的に管を位置決めできないという問題があった。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、筺体に対して管が安定的に位置決めされた熱交換器及びその熱交換器を備える給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱交換器は、対向配置された第1、第2の側壁部を有する筺体と、それぞれ前記第1の側壁部を貫通して該第1の側壁部に固定された複数の管とを備える熱交換器において、前記第2の側壁部には、それぞれ前記筺体の内側に突出した複数のエンボス(突起)が間隔を空けて設けられ、前記各管は、前記エンボスに接触して位置決めされ、前記複数の管は鉛直方向に所定の間隔を空けて配置され、最下位置に配された前記管を除く前記管に、該管の直下に配された前記管に上方から接している前記エンボスが、下方から接している。
【0006】
【0007】
第1の発明に係る熱交換器において、前記各管には高さ位置が異なる複数の前記エンボスが接触しているのが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る熱交換器において、前記各管には水平位置が異なる複数の前記エンボスが接触しているのが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る給湯装置は、バーナユニット、顕熱熱交換器及び潜熱熱交換器が下から順に配置された給湯装置において、前記潜熱熱交換器は、対向配置された第1、第2の側壁部を有する筺体と、それぞれ前記第1の側壁部を貫通して該第1の側壁部に固定された複数の管とを備え、前記第2の側壁部には、それぞれ前記筺体の内側に突出した複数のエンボスが間隔を空けて設けられ、前記各管は、前記エンボスに接触して位置決めされ、前記複数の管は鉛直方向に所定の間隔を空けて配置され、最下位置に配された前記管を除く前記管に、該管の直下に配された前記管に上方から接している前記エンボスが、下方から接している。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明に係る熱交換器及び第2の発明に係る給湯装置は、筺体の第2の側壁部に筺体の内側に突出した複数のエンボスが間隔を空けて設けられ、各管がエンボスに接触して位置決めされているので、筺体の一部であるエンボスによって筺体に対し管を安定的に位置決めすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る給湯装置の説明図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る潜熱熱交換器の一部省略平断面図である。
【
図4】(A)は第2の側壁部の説明図、(B)は(A)の一部省略CC’断面図である。
【
図5】エンボスによる管の位置決めの様子を示す説明図である。
【
図6】変形例に係るエンボスによる管の位置決めの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る給湯装置13は、バーナユニット11、顕熱熱交換器12及び本発明の一実施の形態に係る潜熱熱交換器(熱交換器の一例)10が下から順に配置され、湯水を加熱し供給する装置である。そして、
図1~
図3に示すように、潜熱熱交換器10は、対向配置された側壁部14、15(第1、第2の側壁部)を有する筺体16と、それぞれ側壁部14を貫通して側壁部14に固定された複数の管17とを備えている。以下、詳細に説明する。
【0013】
バーナユニット11は、
図1に示すように、下側に送風ファン18が取り付けられた筺体19と筺体19内に設けられたバーナ部20を備えている。筺体19は上側全体が開放されており、バーナ部20には図示しない供給管から可燃燃料が供給可能である。バーナ部20は可燃燃料を燃焼して、筺体19内に燃焼ガスを発生させることができる。
顕熱熱交換器12は上下が開放された筒体21を有し、筒体21は下側の開放領域が筺体19の上側の開放領域に連通している。
【0014】
潜熱熱交換器10は、筒体21の上方に配置された箱状の筺体16の前側の側壁部に、
図1、
図2に示すように、左右方向に長いガス排出口22が形成され、筺体16の底部の後側には左右方向に長いガス取込口23が形成されている。
潜熱熱交換器10には、
図1~
図3に示すように、浴槽から浴槽内の湯が送り出される風呂戻り管24に内部空洞状のヘッダ25を介して接続された複数の管17が設けられている。
【0015】
各管17は、
図2に示すように、それぞれ異なる高さ位置で左右方向に配置された複数(本実施の形態では4つ)の直線部26と、それぞれ2つの直線部26を連結する複数(本実施の形態では3つ)の折り返し部27とを有して巻回されている。複数の管17は、鉛直方向に所定の間隔を空けて配置され、それぞれ最上位置、最下位置にある2つの直線部26の左側端部が側壁部14を貫通した状態でろう付けにより側壁部14に固定されている。
【0016】
各管17は、側壁部14を貫通した一方の直線部26の左側端部がヘッダ25に接続され、側壁部14を貫通した他方の直線部26の左側端部が内部空洞状のヘッダ28に接続されている。ヘッダ25、28は鉛直方向に長く、ヘッダ25、28にはそれぞれ、各管17が鉛直方向に等ピッチで接続されている。
本実施の形態では、各管17に、
図2、
図3に示すように、左側に1つの折り返し部27、右側に2つの折り返し部27が存在し、右側の2つの折り返し部27は一方が他方の直下に間隔を空けて配置されている。そして、管17は、ヘッダ25、28に接続された2つの直線部26の左側端部を除く領域が筺体16内に配されている。
【0017】
筺体16の側壁部15には、
図2、
図4(A)、(B)、
図5に示すように、それぞれ筺体16の内側に突出した複数のエンボス(突起)29が間隔を空けて設けられている。本実施の形態では、側壁部15に複数のエンボス29が鉛直方向に等ピッチで配されたエンボス29の列が2つ存在する。
最上位置に配された管17には、
図2、
図5に示すように、右側に配された上側の折り返し部27に、下方から2つのエンボス29が接触し、右側に配された下側の折り返し部に、上方及び下方からそれぞれ2つのエンボス29が接触している。
【0018】
最下位置に配された管17には、右側に配された上側の折り返し部27に、上方及び下方からそれぞれ2つのエンボス29が接触し、右側に配された下側の折り返し部に、上方から2つのエンボス29が接触している。最上位置に配された管17及び最下位置に配された管17を除く管17には、右側に配された2つの折り返し部27それぞれに、上方及び下方からそれぞれ2つのエンボス29が接触している。
従って、各管17には、高さ位置が異なる複数のエンボス29が接触していることとなる。
【0019】
ここで、最下位置に配された管17を除く管17には、各管17の直下に配された管17に上方から接しているエンボス29が、下方から接しており、各管17には前後方向の位置(即ち水平位置)が異なる複数のエンボス29が接触している。
管17は、側壁部14に形成された図示しない2つの貫通孔に2つの直線部26の左側端部をそれぞれ貫通させ、右側の2つの折り返し部27をそれぞれ複数のエンボス29に接触させることで位置決めされて、側壁部14にろう付けされる。よって、各管17は所定の位置に配された状態で側壁部14にろう付けされる。
【0020】
そして、側壁部14にろう付けされた各管17の右側は、右側に配置された折り返し部27が複数のエンボス29に接触することによって位置決めされている(即ち、各管17はエンボス29に接触して位置決めされている)ことから、潜熱熱交換器10を輸送の際や、潜熱熱交換器10を使用の際(例えば、ウォーターハンマーが生じた際)に管17が所定位置からずれるのを安定的に抑制可能である。
【0021】
本実施の形態では、側壁部15、即ち、第2の側壁部に、複数のエンボス29が鉛直方向に等ピッチで配されたエンボス29の列が2つ設けられているが、エンボス28の配置はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、側壁部50(第2の側壁部の一例)に複数のエンボス51が鉛直方向に等ピッチで配されたエンボス51の列を1つ設け、このエンボス51に各管17の右側の折り返し部27を接触させて、各管17を位置決めするようにしてもよい。なお、
図6において、
図5に示す構成と同様の構成については同じ符号を付している。
また、ヘッダ28には、
図1に示すように、一端が筒体21内に設けられた管30に接続された連結管31の他端が接続され、管30には浴槽に湯を送る風呂往管32が接続されている。
【0022】
潜熱熱交換器10の筺体16には、
図1~
図3に示すように、側壁部15に、内部空洞状のヘッダ33を介して水道管34に接続された複数の管35が、ろう付けされて固定されている。複数の管35は、複数の管17の後側に配置され、それぞれ両端部が側壁部15を貫通して筺体16外に配置されている。各管35は、巻回された形状であり、一端部が前後方向に長いヘッダ33に接続され、他端部が前後方向に長い内部空洞状のヘッダ36に接続され、両端部を除いた領域が筺体16内に配置されている。
なお、
図1ではヘッダ25、28、33、36の記載が省略されている。
【0023】
ヘッダ36には、
図1に示すように、連結管37の一端が接続され、連結管37の他端には筒体21内に設けられた管38が接続され、管38には台所や洗面台等に湯を供給する給湯管39が接続されている。
バーナ部20による可燃燃料の燃焼によって筺体19内で燃焼ガスが発生すると、燃焼ガスは、筒体21を通過しながら管30、38内の湯を加熱して、ガス取込口23から筺体16内に流入し、筺体16内を移動しながら管17内の湯及び管35内の水を加熱し、ガス排出口22から筺体16外に排出される。
【0024】
筺体19内に燃焼ガスが発生している際に、浴槽内の湯を風呂戻り管24、ヘッダ25、複数の管17、ヘッダ28、連結管31、管30及び風呂往管32を順に通過させて浴槽に戻すことによって、浴槽内の湯の温度を上昇させることができる。そして、筺体19内に燃焼ガスが発生している際に、水道水を水道管34及びヘッダ33を介して複数の管35に供給することによって、水道水は、管35を通過中に加熱され、ヘッダ36、連結管37を経由して管38に流入し、管38を通過中に再度加熱された後、給湯管39に送られる。
【0025】
また、潜熱熱交換器10は、
図3に示すように、筺体16の底部に上げ底41が設けられ、ガス取込口23は上げ底41に形成されている。そして、上げ底41には、複数の管35の下方にドレイン水を前方に流す案内部材42が設けられ、筺体16の底部前方には、ドレイン水を筺体16外に排出する排水部43が形成されている。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、管が第2の側壁部に形成されたエンボスによって位置決めされる熱交換器は、潜熱熱交換器として採用される必要はなく、顕熱熱交換器や単独の熱交換器等として採用することができる。
そして、同熱交換器において、第2の側壁部に形成された複数のエンボスが各管に接触する場合、同じ高さに設けられた複数のエンボスのみが管に接触するようにしてもよいし、水平位置が同じ複数のエンボスのみが管に接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
10:潜熱熱交換器、11:バーナユニット、12:顕熱熱交換器、13:給湯装置、14、15:側壁部、16:筺体、17:管、18:送風ファン、19:筺体、20:バーナ部、21:筒体、22:ガス排出口、23:ガス取込口、24:風呂戻り管、25:ヘッダ、26:直線部、27:折り返し部、28:ヘッダ、29:エンボス、30:管、31:連結管、32:風呂往管、33:ヘッダ、34:水道管、35:管、36:ヘッダ、37:連結管、38:管、39:給湯管、41:上げ底、42:案内部材、43:排水部、50:側壁部、51:エンボス