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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】ガイドローラ
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/14 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
B65H57/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018068707
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177991
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(72)【発明者】
【氏名】土居 信人
(72)【発明者】
【氏名】高畠 大介
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-044123(JP,A)
【文献】特開平10-286752(JP,A)
【文献】特開2017-226061(JP,A)
【文献】実開平04-036154(JP,U)
【文献】実開平02-142011(JP,U)
【文献】特開昭60-157817(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 57/14
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーの搬送を案内するガイドローラにおいて、
周方向に間隔をおいて、前記ガイドローラの回転軸方向に沿って設けられた複数の貫通孔と、周面に前記周方向に沿って設けられた第1の溝とを有するローラ本体と、
前記ローラ本体の周端部に設けられた耐摩耗性の弾性部材であって、外周面にローラ本体の径方向において前記第1の溝に対向して設けられるワイヤー保持用の第2の溝と、前記第1の溝の内部に埋め込まれる第1の埋め込み部と、前記貫通孔の内部に埋め込まれる第2の埋め込み部とを有する弾性部材と
を具備し、
前記第1の溝は底部で開口する連通孔を有し、前記第1の埋め込み部と前記第2の埋め込み部が前記連通孔を通じて互いに連結される
ガイドローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドローラであって、
前記ローラ本体の回転軸方向における前記第2の溝の断面形状は、V字状である
ガイドローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガイドローラであって、
前記ローラ本体の回転軸方向における前記第1及び第2の溝の断面形状は、V字状であり、
前記第1の溝の溝角度は、前記第2の溝の溝角度よりも大きい
ガイドローラ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガイドローラであって、
前記ローラ本体の回転軸方向における前記第1の溝の断面形状は、U字状である
ガイドローラ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のガイドローラであって、
前記第2の溝の底部は、前記ローラ本体の径方向における外周端よりも径方向内側に配置される
ガイドローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーの搬送を案内するガイドローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーを保持しながら、このワイヤーの搬送を案内するガイドローラが知られている。このようなガイドローラとしては、金属又は合成樹脂製のローラ本体(シーブ躯体部分)の外周に溝を設け、軟質の弾性部材(ウレタン樹脂)を焼き付けて案内溝を形成するガイドローラが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ゴム又は樹脂材からなる弾性部材(ローラ)に、アルミ材からなるリング状のローラ本体(芯体)が内蔵されたガイドローラも知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-286752号公報
【文献】特開2000-44123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、金属等からなるローラ本体の外周溝に弾性部材が焼き付けられるため、接着工程や加熱工程が必要になり、製造コストが高くなる。また、外周溝に収容されたワイヤーに高いテンションがかけられた状態で、ワイヤーにブレが生じ、このワイヤーを保持する弾性部材が過度に変形した場合、ローラ本体から弾性部材が剥がれる接着剥がれが生じ、ローラ本体から離脱するおそれがある。
【0006】
特許文献2では、断面矩形の弾性部材にワイヤーを収容する案内溝が穿設され、ワイヤーにかかる張力やワイヤーにかかる左右方向(芯体の回転軸方向)の荷重が、弾性部材及びローラ本体の外周面で支持される。特にワイヤーの左右方向の位置ずれを抑制するためには、ワイヤーを保持する弾性部材にかなりの剛性が必要になる。しかし、剛性を過度に高めてしまうと、ワイヤーとの摩擦により弾性部材が摩耗しやすくなり、この摩耗に起因した弾性部材の破断によって弾性部材がローラ本体から離脱するおそれがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、ローラ本体から弾性部材が離脱することが防止されたガイドローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガイドローラは、ワイヤーの搬送を案内する。
上記ガイドローラは、ローラ本体と、弾性部材とを有する。
上記ローラ本体は、周方向に間隔をおいて、上記ガイドローラの回転軸方向に沿って設けられた複数の貫通孔と、周面に上記周方向に沿って設けられた第1の溝とを有する。
上記弾性部材は、上記ローラ本体の周端部に設けられ、耐摩耗性を有する。
上記弾性部材は、上記第1の溝と同心的に設けられるワイヤー保持用の第2の溝と、上記第1の溝の内部に埋め込まれる第1の埋め込み部と、上記貫通孔の内部に埋め込まれる第2の埋め込み部とを有する。
【0009】
上記構成によれば、本発明のガイドローラは、第1の溝の内部に埋め込まれた弾性部材である第1の埋め込み部を有する。これにより、ワイヤーに回転軸方向に荷重が加えられることに伴い、第1の埋め込み部が回転軸方向に押圧されたとしても、この第1の埋め込み部が第1の溝の側壁(開口面)に掛止する。
これにより、搬送されるワイヤーにブレが生じたとしても、このワイヤーを保持する弾性部材が第1の溝の側壁(開口面)に掛止するため、弾性部材がローラ本体に掛止する掛止部(例えば第2の埋め込み部)に繰り返しブレ荷重が印加されることが防止される。従って、掛止部の破断が防止され、弾性部材がローラ本体から離脱することが防止される。
【0010】
また、本発明のガイドローラは、貫通孔の内部に埋め込まれた弾性部材である第2の埋め込み部を有する。これにより、ガイドローラの回転時に、ローラ本体の周端部に設けられた弾性部材が貫通孔の内壁面に掛止するため、弾性部材がローラ本体から径方向外側に離脱しなくなる。
【0011】
上記ローラ本体の回転軸方向における上記第2の溝の断面形状は、V字状であってもよい。
これにより、ワイヤーが弾性部材に保持される際に、第2の溝の側壁(開口面)が常にワイヤーに当接する構成となるため、ワイヤーを所定箇所で保持する保持力が向上する。
【0012】
上記ローラ本体の回転軸方向における上記第1及び第2の溝の断面形状は、V字状であり、
上記第1の溝の溝角度は、上記第2の溝の溝角度より大きくてもよい。
これにより、ワイヤーから回転軸方向に向かって第2の溝に印加された荷重が、弾性部材を介して、第1の溝の径方向に開口した広い側壁(開口面)に伝播する。よって、第2の溝に保持されたワイヤーから回転軸方向に沿って弾性部材に荷重が印加されたとしても、この荷重が当該弾性部材を介してワイヤーと回転軸方向に対向する第1の溝の側壁(開口面)に伝播する。これにより、弾性部材がローラ本体に掛止する掛止部(例えば第2の埋め込み部)に無理な荷重がかからなくなることにより掛止部の破断が防止され、弾性部材がローラ本体から離脱することが防止される。
【0013】
上記ローラ本体の回転軸方向における上記第1の溝の断面形状は、U字状であってもよい。
これにより、ワイヤーの荷重がかかる第2の溝の底部と、第1の溝との間に介在する弾性部材のボリュームを大きくとることができる。従って、当該弾性部材に柔軟性の高い材料を採用することが可能となる。よって、この弾性部材でワイヤーを保持することで、ワイヤーのブレに対する柔軟性が増し、ワイヤーのブレを効果的に抑制することができる。
【0014】
上記第2の溝の底部は、上記ローラ本体の径方向における外周端よりも径方向内側に配置されてもよい。
これにより、第2の溝の底部が弾性部材を介して、回転軸方向に第1の溝の側壁(開口面)と対向する構成となる。従って、弾性部材に保持されているワイヤーに回転軸方向に荷重が加えられたとしても、当該荷重に応じた抗力が第1の溝の側壁(開口面)から弾性部材を介してワイヤーに加えられる。
従って、ワイヤーに回転軸方向に荷重が加えられたとしても、第1の溝の側壁(開口面)からの抗力により当該荷重が相殺されるため、弾性部材に無理な荷重がかけられることが防止される。これにより、弾性部材がローラ本体から離脱することが防止される。
【0015】
上記第1の溝の底部は、上記貫通孔と連通してもよい。
これにより、第1の埋め込み部と第2の埋め込み部とが連結され、ローラ本体の周端部に弾性部材が強固に固定される。従って、ガイドローラの高速回転時においても、弾性部材がローラ本体から径方向外側に離脱することが効果的に防止される。
【0016】
上記ローラ本体は、上記第1の溝の底部と上記貫通孔とを連通する複数の連通孔をさらに有し、
上記第1の埋め込み部は、上記連通孔を介して、上記第2の埋め込み部と連結してもよい。
これにより、連通孔の径方向の寸法に関わらず、第1の埋め込み部と第2の埋め込み部とを連結させることができる。つまり、第1の溝に埋め込まれた第1の埋め込み部と、貫通孔に埋め込まれた第2の埋め込み部との間が離れているため、第1の溝の溝角度を設定する上での自由度が向上し、さらに、ローラ本体の形状に応じて連通孔を適切な位置にローラ本体に設けることができる。即ち、第1の溝及び連通孔をローラ本体に設ける上での設計自由度が向上する。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、ローラ本体から弾性部材が離脱することが防止されたガイドローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係るワイヤーソーの主要部の構成例を示す図である。
図2】上記実施形態のガイドローラの主要部を示す正面図である。
図3図2のZ-Z'矢視の断視図である。
図4】上記実施形態のローラ本体の周端部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図5】上記ローラ本体の周端部周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図6】上記ガイドローラの断面を部分的に示す断面斜視図である。
図7】上記実施形態に係るガイドローラの他の構成を示す拡大断面図である
図8】本発明の第2の実施形態に係るガイドローラの拡大断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係るガイドローラの拡大断面図である。
図10】本発明の変形例に係るガイドローラの拡大断面図である。
図11】上記変形例に係るガイドローラの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
1.第1の実施形態
<ワイヤーソーの構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るワイヤーソー1の主要部の構成例を示す図である。図1のX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸方向を示し、本明細書の全図において共通である。
【0021】
ワイヤーソー1は、複数のリールボビン2、ワイヤー3と、複数のメインローラ4と、ガイドローラ100とを有する。
【0022】
複数のリールボビン2は、2つのリールボビン2aから構成される。リールボビン2aは、ワイヤー3に巻回される。リールボビン2aは、Z軸を中心として、時計回り及び反時計回りに回転可能に構成される。これにより、一方のリールボビン2aがワイヤー3を巻き取り、他方のリールボビン2aがワイヤー3を巻き出す。
【0023】
ワイヤー3は、例えば金属材料からなり、糸状に構成される。ワイヤー3の一端は一方のリールボビン2aに支持される。また、ワイヤー3の他端は、他方のリールボビン2aに支持される。ワイヤー3の径は特に限定されないが、例えば0.1mm程度である。
【0024】
ワイヤー3は、一方のリールボビン2aがZ軸を中心として時計回りに回転し、他方のリールボビン2aがZ軸を中心として反時計回りに回転することで、複数のメインローラ4へ搬送され、さらに、リールボビン2aまで搬送されて巻き取られる。
【0025】
複数のメインローラ4は、3つのメインローラ4aから構成される。3つのメインローラ4aは、図1に示すように、Y軸方向から見た形状が三角形の頂点位置にそれぞれ配置され、Y軸を中心に時計回り及び半時計回りに回転可能に構成される。なお、複数のメインローラ4は、2つのメインローラ4aから構成されてもよい。
【0026】
メインローラ4aの外周面には、Y軸方向に所定の間隔をおいて複数の溝(図示略)が形成されている。メインローラ4aの外周面に形成された溝は、ワイヤー3を収容する。メインローラ4aを構成する材料としては、例えばウレタン樹脂、ステンレス又はセラミック材料等が採用可能であり、典型的にはウレタン樹脂が採用される。
【0027】
複数のメインローラ4は、一方のリールボビン2aから搬送されたワイヤー3にテンションをかけながらワイヤー3を巻き取るとともに、ワイヤー3を他方のリールボビン2aへ巻き出す。
【0028】
複数のメインローラ4は、テンションがかけられたワイヤー3に被加工物(図示略)が押付けられた状態で、Y軸を中心とした時計回りの回転と半時計回りの回転を繰り返すことにより、被加工物を切断する。平易に換言すると、ノコギリと同じような往復動作で被加工物を切断する。
【0029】
ガイドローラ100は、複数のリールボビン2と複数のメインローラ4との間において、複数設けられる。ガイドローラ100は、一方のリールボビン2aから複数のメインローラ4へのワイヤー3の搬送を案内し、且つ、複数のメインローラ4から他方のリールボビン2aへのワイヤー3の搬送を案内する。
【0030】
即ち、ガイドローラ100は、一方のリールボビン2aから巻き出されたワイヤー3を複数のメインローラ4へ導き、且つ、複数のメインローラ4から巻き出されたワイヤー3を他方のリールボビン2aへ導く。ガイドローラ100は、複数のリールボビン2と複数のメインローラ4との間においてワイヤー3が撓まないように、ワイヤー3にテンションがかけられた状態を維持する。
【0031】
[ガイドローラについて]
次に、ガイドローラ100の構成を詳細に説明する。
【0032】
(適用例1)
図2はガイドローラ100の主要部を示す正面図であり、図3図2のZ-Z'線の断面図である。ガイドローラ100は、ローラ本体110と、弾性部材120とを有する。
【0033】
ローラ本体110は、ハブ111と、スポーク112と、リム113とを有し、これらが一体的に構成されたものである。ローラ本体110は、例えばアルミニウム、ステンレス又はマグネシウム等の金属や硬質樹脂からなり、典型的にはアルミニウムからなる。
【0034】
ハブ111は、ガイドローラ100の回転中心(回転軸)を中心軸Cとした場合に、中心軸Cを中心として環状に構成された環状構造体である。ハブ111は、図2に示すように、リム113の径方向内側に配置される。ハブ111の内径及び外径は特に限定されないが、例えば、数十mm程度である。
【0035】
以降、本明細書では、ローラ本体110の径方向を「径方向」、中心軸Cからリム113側へ向かう方向を「径方向外側」、リム113側から中心軸Cへ向かう方向を「径方向内側」、さらに、中心軸C周りの方向を「周方向」、中心軸Cに沿う方向を「中心軸C方向」と記述する。
【0036】
ハブ111は、中心孔111aと、複数の取付け孔111bとを有する。中心孔111aは、任意の回転軸Sに挿通される。中心孔111aの開口形状は、典型的には円形であるがこれに限られず、例えば矩形状、三角状又は楕円状等、その形状は問わない。
【0037】
複数の取付け孔111bは、周方向に所定の間隔をおいてハブ111に設けられる。取付け孔111bは、ハブ111を中心軸C方向(Y軸方向)に貫通する。取付け孔111bは、図3に示すように、例えばボルトBに挿通される。ボルトBは、取付け孔111bおよび回転軸Sのフランジ部Fに設けられた孔H1に螺合する。これにより、回転軸Sにガイドローラ100が取り付けられる。
【0038】
ハブ111に設けられた取付け孔111bの個数は3つであるがこれに限られず、1つ又は2つ以上であってもよい。
【0039】
ハブ111は、スポーク112に接続される。スポーク112は、ハブ111から径方向外側に延び、リム113に接続される。スポーク112は、周方向に所定の間隔をおいて複数設けられる。スポーク112の数は、図2では6つであるがこれに限られず、必要に応じて、増減することができる。また、スポーク状に限られず、ディスク状であってもよい。
【0040】
リム113は、中心軸Cを中心として環状に構成された環状構造体である。リム113の内径及び外径は特に限定されないが、例えば数百mm程度である。また、リム113の中心軸C方向の厚みも特に限定されず、例えば数mm程度である。
【0041】
図4及び図5は、ローラ本体110の周端部110a付近の領域Eを拡大して示す図である。また、図6は、ガイドローラ100の断面を部分的に示す断面斜視図である。
【0042】
リム113は、複数の貫通孔113aと、第1の溝113bとを有する。複数の貫通孔113aは、周方向に所定の間隔をあけてリム113に設けられる。貫通孔113aは、中心軸C方向に沿ってリム113に設けられる。
【0043】
貫通孔113aの開口形状は典型的には円形であるがこれに限られず、矩形状、三角状又は楕円状等、その形状は問わない。また、リム113に設けられる貫通孔113aの個数は、図2では24個であるがこれに限られず、1個又は2個以上であってもよい。この場合、貫通孔113aは、リム113に周方向に均等に配置されることが好ましい。
【0044】
第1の溝113bは、周方向に沿って連続的にローラ本体110の周面110sに設けられる。第1の溝113bの中心軸C方向における断面形状は、図4図6に示すように、V字状である。第1の溝113bの溝幅D1は特に限定されないが、例えば数mm程度である。
【0045】
リム113は、複数の連通孔H2を有する。複数の連通孔H2は、周方向の所定の間隔をあけて第1の溝113bの底部113cに設けられる。連通孔H2は、径方向に貫通孔113aと対向する。従って、第1の溝113bの底部113cは、連通孔H2を介して、貫通孔113aと連通する。
【0046】
連通孔H2の開口形状は、典型的には円形であるがこれに限られず、例えば矩形状、三角状、楕円状等、その形状は問わない。
【0047】
弾性部材120は、中心軸Cを中心として環状に構成された環状体である。弾性部材120の内径及び外径は特に限定されないが、例えば数百mm程度である。また、弾性部材120の中心軸C方向の厚みも特に限定されず、例えば数mm程度である。
【0048】
弾性部材120は、第1の溝113bと同心的に設けられた第2の溝120aを有する。第2の溝120aは、ワイヤー3を収容し、保持する。第2の溝120aは、周方向に沿って連続的に弾性部材120の周面120sに設けられる。
【0049】
第2の溝120aは、径方向に第1の溝113bと対向する。第2の溝120aの溝幅D2は特に限定されないが、例えば数mm程度である。なお、上記の「同心的」とは、第1の溝113bの環状中心軸と第2の溝120aの環状中心軸が同一の軸(中心軸C)であることを意味する。
【0050】
第2の溝120aの中心軸C方向における断面形状は、図4図6に示すように、V字状である。この構成により、テンションがかけられたワイヤー3は、第2の溝120aの底部P近傍の位置において弾性部材120に保持される。これにより、図5に示すように、第2の溝120aの側壁(開口面)が常にワイヤー3に当接するため、ワイヤー3が中心軸C方向にずれることが抑制される。
【0051】
即ち、第2の溝120aの中心軸C方向における断面形状をV字状にすることによって、ワイヤー3が弾性部材120に保持される際に、ワイヤー3の中心軸C方向のズレを許容する遊びがなくなるため、ワイヤー3を所定箇所で保持する保持力が向上する。
【0052】
また、第2の溝120aの溝幅D2は、第1の溝113bの溝幅D1よりも小さい。さらに、第2の溝120aの溝角度A2は、第1の溝113bの溝角度A1よりも小さい。溝角度A1,A2は、例えば60°以上90°以下であることが好ましい。
【0053】
さらに、第2の溝120aの側壁(開口面)の延長線Lは、少なくとも第1の溝113bの内部に入り込むことが好ましい。この場合、ワイヤー3から径方向内側に向かって第2の溝120aに掛けられる荷重は、第2の溝120aの中心軸C方向に位置する弾性部材120を介して第1の溝113bの溝内に伝播する。これにより、第1の溝113bの側壁(開口面)で上記荷重が支持される。従って、例えばワイヤー3が中心軸C方向に沿って一方側にブレる場合、このブレは、弾性部材120を介して当該一方向側に位置する第1の溝113bの側壁(開口面)により抑制される。よって、第2の溝120aは、ワイヤー3をより安定的に保持することが可能となる。加えて、第2の溝120aの底部Pは、図5に示すように、ローラ本体110の外周端S1よりも径方向内側に配置されることがより好ましい。
【0054】
弾性部材120は、例えば、シリコン製の型に流し込まれた液状の樹脂を熱硬化させることで成形物を得る注型成形法によって、ローラ本体110の周端部110aに設けられる。これにより、本実施形態の弾性部材120は、第1の溝113bの内部に埋め込まれた第1の埋め込み部120bと、貫通孔113aの内部に埋め込まれた第2の埋め込み部120cとを有する構成となる。なお、上記注型形成法以外の工法で弾性材料120をローラ本体110の周端部110aに設けてもよいことは勿論である。
【0055】
第1の埋め込み部120bは、第1の溝113bに充填された弾性部材120である。同様に、第2の埋め込み部120cは、貫通孔113a内に充填された弾性部材120である。
【0056】
また、弾性部材120を注型成形法によって形成する場合、弾性部材120をローラ本体110の周端部110aに設ける際に接着工程が不要となる。即ち、ローラ本体110と弾性部材120とが非接着で一体化される。
【0057】
弾性部材120を構成する材料は、ワイヤー3に対して耐摩耗性を有するエラストマーであれば特に限定されず、例えばエステル系ウレタン樹脂、高密度ポリエチレン、高分子ポリエチレン樹脂及びゴム等が採用可能であり、典型的にはエステル系ウレタン樹脂が採用される。
【0058】
<作用>
本実施形態のガイドローラ100は、図4図6に示すように、第1の溝113bの内部に弾性部材120が埋め込まれた第1の埋め込み部120bを有する。この構成により、ワイヤー3に中心軸C方向に荷重が加えられることに伴い、第1の埋め込み部120bが中心軸C方向に押圧されたとしても、この第1の埋め込み部120bが第1の溝113bの側壁(開口面)に掛止する。これにより、搬送されるワイヤー3にブレが生じたとしても、このワイヤー3を保持する弾性部材120が第1の溝113bの側壁(開口面)に掛止するため、弾性部材120がローラ本体110に掛止する掛止部(例えば第2の埋め込み部120c)に繰り返しブレ荷重が印加されることが防止される。従って、掛止部の破断が防止され、弾性部材120がローラ本体110から離脱することが防止される。
【0059】
また、ガイドローラ100が第1の埋め込み部120bを有することによって、弾性部材120がローラ本体110に強固に掛止する。これにより、弾性部材120をローラ本体110に接着する必要が無くなる。
【0060】
さらに、ガイドローラ100は、図4図6に示すように、貫通孔113aの内部に弾性部材120が埋め込まれた第2の埋め込み部120cを有する。これにより、ガイドローラ100の回転時に、ローラ本体110の周端部110aに設けられた弾性部材120が貫通孔113aの内壁面に掛止するため、弾性部材120がローラ本体110から径方向外側に離脱しなくなる。換言すると、ガイドローラ100の回転時における弾性部材120の浮きが防止される。
【0061】
特に、本実施形態では、第1の溝113bの底部113cが連通孔H2を介して貫通孔113aと連通している。これにより、弾性部材120が貫通孔113aの内壁面に掛止するだけではなく、第1の埋め込み部120bが連通孔H2を介して第2の埋め込み部120cと連結される。従って、ローラ本体110の周端部110aに弾性部材120が強固に固定されるため、ガイドローラ100の高速回転時においても、弾性部材120がローラ本体110から径方向外側に離脱することが効果的に防止される。
【0062】
また、第1の溝113bの溝角度A1は、図4に示すように、第2の溝120aの溝角度A2よりも大きい。これにより、ワイヤー3から径方向内側に向かって第2の溝120aに印加された荷重が、弾性部材120を介して径方向外側に開口した第1の溝113bの広い側壁(開口面)に伝播する。よって、第2の溝120aに保持されたワイヤー3から中心軸C方向に沿って弾性部材120に荷重が印加されたとしても、この荷重が当該弾性部材120を介してワイヤー3と中心軸C方向に対向する第1の溝113bの側壁(開口面)に伝播する。これにより、弾性部材120がローラ本体110に掛止する掛止部(例えば第2の埋め込み部120c)に無理な荷重がかからなくなることにより掛止部の破断が防止され、弾性部材120がローラ本体110から離脱することが防止される。
また、第1の溝113bの溝角度A1が第2の溝120aの溝角度A2よりも大きいことから、第1の溝113bの側壁(開口面)と中心軸C方向に対向する弾性部材120の厚みDを十分に確保することができる。
【0063】
さらに、第2の溝120aの底部Pは、図5に示すように、ローラ本体110の外周端S1よりも径方向内側に配置される。即ち、第2の溝120aの一部が第1の溝113bに入り込む。
【0064】
これにより、第2の溝120aの底部Pが弾性部材120を介して、中心軸C方向に第1の溝113bの側壁(開口面)と対向する構成となる。従って、弾性部材120に保持されているワイヤー3に中心軸C方向に荷重が加えられたとしても、当該荷重に応じた抗力が第1の溝113bの側壁(開口面)から弾性部材120を介してワイヤー3に加えられる。
【0065】
ゆえに、ワイヤー3に中心軸C方向に荷重が加えられたとしても、第1の溝113bの側壁(開口面)からの抗力により当該荷重が相殺されるため、弾性部材120に無理な荷重がかけられることが防止される。これにより、弾性部材の破断が防止され、弾性部材120がローラ本体110から離脱することが防止される。
【0066】
(適用例2)
図7は、本発明のガイドローラ100の他の構成を示す拡大断面図であり、ローラ本体110の周端部110a周辺の拡大断面図である。
【0067】
本実施形態では、図7に示すように、中心軸C方向における第1及び第2の溝113b,120aの断面形状がV字状であり、第1の埋め込み部120bと第2の埋め込み部120cとが連結されずに互いに独立してもよい。
【0068】
この場合、第1の溝113bの溝角度A1が第2の溝120aの溝角度A2より大きく、第2の溝120aの底部Pがローラ本体110の外周端S1より径方向内側に配置されることがより好ましい。これにより、適用例1と同様の作用効果(段落[0062]~[0065])が得られる。
【0069】
2.第2の実施形態
図8は、本発明の第2の実施形態に係るガイドローラ100の拡大断面図であり、ローラ本体110の周端部110a周辺を拡大して示す図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
第2の実施形態では、中心軸C方向における第1の溝113bの断面形状がU字状である。この場合、第1の溝113bの溝幅D3は特に限定されないが、例えば数mm程度である。
【0071】
また、第1の溝113bの溝幅D3は、第2の溝120aの溝幅D2よりも大きい。さらに、第2の溝120aの底部Pは、図8に示すように、ローラ本体110の外周端S1よりも径方向内側に配置されることが好ましい。
【0072】
この構成により、第1の溝113bの側壁(開口面)と中心軸C方向に対向する弾性部材120の厚みDが十分に確保され、第2の溝120aの一部が第1の溝113bに入り込むことから、第1の実施形態と同様の作用効果(段落[0062]~[0065])が得られる。
【0073】
また、中心軸C方向における第1の溝113bの断面形状がU字状であることから、ワイヤー3の荷重がかかる第2の溝120aの底部と、第1の溝113bとの間に介在する弾性部材120のボリュームを大きくとることができる。従って、当該弾性部材120に柔軟性の高い材料を採用することが可能となる。よって、柔軟性の高い弾性部材120でワイヤー3を保持することで、ワイヤー3のブレに対する柔軟性が増すことから、ワイヤー3のブレを効果的に抑制することが可能となる。
【0074】
3.第3の実施形態
図9は、本発明の第3の実施形態に係るガイドローラ100の拡大断面図であり、ローラ本体110の周端部110a周辺を拡大して示す図である。以下、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
第3の実施形態では、リム113が複数の連通孔H3を有する。複数の連通孔H3は、周方向に所定の間隔をあけてリム113に設けられる。連通孔H3は、径方向に沿ってリム113に設けられ、第1の溝113bの底部113cと貫通孔113aとを連通させる貫通孔である。
【0076】
第3の実施形態では、第1の溝113bの底部113cが、連通孔H3を介して、貫通孔113aと連通する。これにより、連通孔H3の径方向の寸法に関わらず、第1の埋め込み部120bと第2の埋め込み部120cとを連結させることができる。つまり、第1の溝113bに埋め込まれた第1の埋め込み部120bと、貫通孔113aに埋め込まれた第2の埋め込み部120cとの間が離れているため、第1の溝113bの溝角度A1を設定する上での自由度が向上し、さらに、ローラ本体110の形状に応じて連通孔H3を適切な位置にローラ本体110(リム113)に設けることができる。
【0077】
連通孔H3の開口形状は、典型的には円形であるがこれに限られず、例えば矩形状、三角状、楕円状等、その形状は問わない。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。図10及び図11は、本発明の変形例に係るガイドローラ100の拡大断面図であり、ローラ本体110の周端部110a付近を拡大して示す図である
【0079】
上記実施形態では、ガイドローラ100に第1及び第2の溝113b,120aが1つずつ設けられるがこれに限られず、図10に示すように、第2の溝120aが中心軸C方向に沿って複数設けられてもよい。あるいは、図11に示すように、第1の溝113bと第2の溝120aの両方が中心軸C方向に沿って複数設けられてもよい。
【0080】
また、上記実施形態のガイドローラ100は、ワイヤー3の搬送を案内するローラとして機能するがこれに限られず、中心軸C方向に複数重ねることで、メインローラ4aとして利用されてもよい。
【0081】
さらに、本発明のガイドローラ100は、典型的にはワイヤーソーに適用されるがこれに限られない。ガイドローラ100は、ワイヤーソー以外の装置に適用されてもよくその用途は問わない。
【符号の説明】
【0082】
100・・・ガイドローラ
110・・・ローラ本体
113a・・貫通孔
113b・・・第1の溝
120・・・弾性部材
120a・・第2の溝
120b・・第1の埋め込み部
120c・・第2の埋め込み部
H2、H3・・・連通孔
S1・・・ローラ本体の外周端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11