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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20220602BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20220602BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02M7/12 R
H02M3/155 H
H02M3/28 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018088035
(22)【出願日】2018-05-01
(65)【公開番号】P2019195234
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村中 將浩
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-081713(JP,A)
【文献】特開2017-069180(JP,A)
【文献】特開2001-161066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 3/155
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力側に接続される力率改善回路と、を備える負荷駆動装置であって、
前記力率改善回路は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、を備え、
前記スイッチング制御部は、第1信号に基づいて前記スイッチング素子のオン時間を調整し、第2信号に基づいて前記スイッチング動作を停止させるか否かを決定し、
前記第1信号が、前記オン時間を所定値より大きく調整することを指示する信号である場合、前記第2信号が、前記スイッチング動作を停止させる期間を設けないことを指示する信号であり、
前記第1信号が、前記オン時間を所定値以下に調整することを指示する信号である場合、前記第2信号が、前記スイッチング動作を停止させる期間を設けることを指示する信号である、負荷駆動装置。
【請求項2】
前記第1信号の周波数は、前記第2信号の周波数より高い、請求項1に記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記第1信号を平滑化する平滑部と、
前記負荷駆動装置が駆動する負荷に流れる電流を電圧に変換する変換部と、
前記平滑部の出力電圧と前記変換部の出力電圧との差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプと、を備え、
前記スイッチング制御部は前記誤差信号に基づいて前記スイッチング素子のオン時間を調整する、請求項1または請求項2に記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記スイッチング制御部は、前記第2信号が所定のレベルでなければ、前記電流検出部によって検出される前記スイッチング素子に流れる電流の大きさが閾値を下回ったときに前記スイッチング素子をターンオンし、前記第2信号が前記所定のレベルであれば、前記スイッチング素子をオフ状態に維持して前記スイッチング動作を停止させる、請求項1~のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記第2信号は、Pチャネルトランジスタを用いたオープンドレイン回路又はPNPトランジスタを用いたオープンコレクタ回路の出力信号であり、
前記電流検出部の出力端と前記オープンドレイン回路又は前記オープンコレクタ回路の出力端との接続点電圧が、前記スイッチング制御部に入力される、請求項に記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記力率改善回路を含み、前記整流回路の出力電圧に対して電圧変換を行うSEPICを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
前記力率改善回路を含み、前記整流回路の出力電圧に対して電圧変換を行うフライバックコンバータを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の負荷駆動装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の負荷駆動装置と、
前記負荷駆動装置が駆動する発光素子と、を備える、照明装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の負荷駆動装置と、
前記負荷駆動装置が駆動するモータと、を備える、モータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を駆動する負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
力率を改善できかつLEDへの出力を広範囲に調整可能なLED駆動装置として、2コンバータ方式のLED駆動装置が従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
2コンバータ方式のLED駆動装置は、前段のコンバータで力率を改善し、後段のコンバータで調光を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-084702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2コンバータ方式のLED駆動装置は、2つのコンバータを必要とする構成であるため、コストの低減が困難であった。
【0006】
そこで、コストを低減するために、1つのコンバータで力率を改善しつつ調光を行う構成にすることが考えられる。しかしながら、当該構成では、調光率が低くなると、商用交流電源周波数(50Hz又は60Hz)の高調波成分の発生を抑えながら出力電流を小さくすることが困難であるという問題が生じる。なお、調光率とは、光源の定格出力に対する調光時の出力の比率である。すなわち調光率とは、光源を定格出力で点灯したときの明るさを100%とした場合における、光源の明るさの度合いをいう。例えば調光率が10%である場合、光源の明るさは定格出力点灯時の明るさの10%となる。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、力率を改善できかつ負荷への出力を広範囲に調整可能な負荷駆動装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書中に開示された負荷駆動装置は、交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力側に接続される力率改善回路と、を備える負荷駆動装置であって、前記力率改善回路は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御するスイッチング制御部と、を備え、前記スイッチング制御部は、第1信号に基づいて前記スイッチング素子のオン時間を調整し、第2信号に基づいて前記スイッチング動作を停止させるか否かを決定する構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成の負荷駆動装置において、前記第1信号の周波数は、前記第2信号の周波数より高い構成(第2の構成)としてもよい。
【0010】
上記第1又は第2の構成の負荷駆動装置において、前記第1信号が、前記オン時間を所定値より大きく調整することを指示する信号である場合、前記第2信号が、前記スイッチング動作を停止させる期間を設けないことを指示する信号であり、前記第1信号が、前記オン時間を所定値以下に調整することを指示する信号である場合、前記第2信号が、前記スイッチング動作を停止させる期間を設けることを指示する信号である構成(第3の構成)としてもよい。
【0011】
上記第1~第3いずれかの構成の負荷駆動装置において、前記第1信号を平滑化する平滑部と、前記負荷駆動装置が駆動する負荷に流れる電流を電圧に変換する変換部と、前記平滑部の出力電圧と前記変換部の出力電圧との差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプと、を備え、前記スイッチング制御部は前記誤差信号に基づいて前記スイッチング素子のオン時間を調整する構成(第4の構成)としてもよい。
【0012】
上記第1~第4いずれかの構成の負荷駆動装置において、前記スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部を備え、前記スイッチング制御部は、前記第2信号が所定のレベルでなければ、前記電流検出部によって検出される前記スイッチング素子に流れる電流の大きさが閾値を下回ったときに前記スイッチング素子をターンオンし、前記第2信号が前記所定のレベルであれば、前記スイッチング素子をオフ状態に維持して前記スイッチング動作を停止させる構成(第5の構成)としてもよい。
【0013】
上記第5の構成の負荷駆動装置において、前記第2信号は、Pチャネルトランジスタを用いたオープンドレイン回路又はPNPトランジスタを用いたオープンコレクタ回路の出力信号であり、前記電流検出部の出力端と前記オープンドレイン回路又は前記オープンコレクタ回路の出力端との接続点電圧が、前記スイッチング制御部に入力される構成(第6の構成)としてもよい。
【0014】
上記第1~第6いずれかの構成の負荷駆動装置において、前記力率改善回路を含み、前記整流回路の出力電圧に対して電圧変換を行うSEPICを備える構成(第7の構成)としてもよい。
【0015】
上記第1~第6いずれかの構成の負荷駆動装置において、前記力率改善回路を含み、前記整流回路の出力電圧に対して電圧変換を行うフライバックコンバータを備える構成(第8の構成)としてもよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されている照明装置は、上記第1~第8いずれかの構成の負荷駆動装置と、前記負荷駆動装置が駆動する発光素子と、を備える構成(第9の構成)である。
【0017】
また、本明細書中に開示されているモータシステムは、上記第1~第8いずれかの構成の負荷駆動装置と、前記負荷駆動装置が駆動するモータと、を備える構成(第10の構成)である。
【発明の効果】
【0018】
本明細書中に開示されている発明によれば、力率改善回路の調整範囲を超える定電流制御を行うために、設定する負荷への出力(例えば負荷が発光素子であれば調光率)に応じた力率改善回路の出力能力を設定しておくことで、定電流制御範囲を拡大することができる。したがって、力率を改善できかつ負荷への出力を広範囲に調整可能な負荷駆動装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】負荷駆動装置の一構成例を示す図
図2】照明装置の外観例を示す図
図3】スイッチング制御ICの一構成例を示す図
図4】スイッチング制御ICの動作例を示すタイミングチャート
図5】オープンドレイン回路を示す図
図6】プッシュプル回路を示す図
図7】スイッチング制御ICの調光動作例を示すタイミングチャート
図8】負荷駆動装置の他の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、負荷駆動装置の一構成例を示す図である。図1に示す負荷駆動装置は、力率を改善しながら負荷LD1を駆動する装置であって、主として、ダイオードブリッジDB1と、入力コンデンサCinと、トランスT1と、スイッチング素子Q1と、出力コンデンサCoutと、スイッチング制御IC(Integrated Circuit)1と、MCU(Micro Controller Unit)2と、を備えている。
【0021】
ダイオードブリッジDB1は、商用交流電源電圧などの交流電圧Vacを全波整流する。入力コンデンサCinは、ダイオードブリッジDB1から出力される脈流電圧を平滑して直流電圧Vdcを生成する。
【0022】
トランスT1は、1次巻線N1と、2次巻線N2と、補助巻線N3と、を備えている。
【0023】
1次巻線N1の一端には直流電圧Vdcが印加される。スイッチング素子Q1はNチャネルMOSFETであって、スイッチング素子Q1のドレインが1次巻線N1の他端に接続される。スイッチング素子Q1のソースは抵抗R9を介して接地される。抵抗R9は、スイッチング素子Q1に流れる電流を検出するための抵抗である。スイッチング素子Q1のソースはスイッチング制御IC1の4番端子及びコンデンサC3の一端にも接続される。コンデンサC3の他端は接地される。
【0024】
スイッチング素子Q1のソースは抵抗R8を介してスイッチング素子Q1のゲートに接続される。スイッチング素子Q1のゲートは、ダイオードD1及び抵抗R7によって構成される並列回路並びに抵抗R6を介してスイッチング制御IC1の7番端子に接続される。
【0025】
2次巻線N2の一端にはダイオードD4を介して抵抗R12の一端及び出力コンデンサCoutの一端が接続される。2次巻線N2の一端にはコンデンサC1を介して1次巻線N1の他端も接続される。このように1次巻線N1の他端と2次巻線N2の一端とがコンデンサC1を介して接続されるので、図1に示す負荷駆動装置は、SEPIC(Single Ended Primary Inductor Converter)を備える構成となり、効率を高めることができる。2次巻線N2の他端、抵抗R12の他端、及び出力コンデンサCoutの他端は接地される。なお、出力コンデンサCoutの一端には負荷LD1の一端が接続される。
【0026】
補助巻線N3の一端にはダイオードD3を介してレギュレータ3の入力端、スイッチング制御IC1の8番端子、抵抗R1の一端が接続される。補助巻線N3の他端は接地される。補助巻線N3の一端には抵抗R10の一端も接続される。
【0027】
レギュレータ3は、入力端に印加された電圧を安定化して出力端から出力する。レギュレータ3の出力端は、コンデンサC5の一端及びエラーアンプA1の電源端子に接続される。コンデンサC5の他端及びエラーアンプA1のグランド端子は接地される。
【0028】
抵抗R1の他端はスイッチング制御IC1の1番端子及び抵抗R2の一端に接続される。抵抗R2の他端は接地される。
【0029】
抵抗R10の他端はスイッチング制御IC1の5番端子及び抵抗R11の一端に接続される。抵抗R11の他端はダイオードD2を介して接地される。また、MCU2から出力される第2信号SG2は、スイッチング制御IC1の5番端子に供給される。
【0030】
レギュレータ3の入力端、スイッチング制御IC1の8番端子、及び抵抗R1の一端には、抵抗R5の一端及びコンデンサC4の一端も接続される。抵抗R5の他端は抵抗R4の一端に接続され、コンデンサC4の他端は接地される。抵抗R4の一端には直流電圧Vdcが印加される。
【0031】
抵抗R14の一端には負荷LD1の他端及びエラーアンプA1の反転入力端子が接続される。抵抗R14の他端は接地される。抵抗R14は、負荷LD1に流れる電流を検出するための抵抗である。
【0032】
MCU2から出力される第1信号SG1は、抵抗R15及びコンデンサC7によって平滑化された後、エラーアンプA1の非反転入力端子に供給される。
【0033】
エラーアンプA1の出力端子はスイッチング制御IC1の2番端子及びコンデンサC2の一端に接続される。コンデンサC2の他端は接地される。また、エラーアンプA1の出力端子はコンデンサC6及び抵抗R13を介してエラーアンプA1の非反転入力端子に接続される。
【0034】
スイッチング制御IC1の3番端子は抵抗R3を介して接地される。
【0035】
本実施形態では、負荷LD1はLED(Light Emitting Diode)の直列体であり、MCU2から出力される第1信号SG1及び第2信号SG2によってLEDが調光される。従って、本実施形態では、負荷駆動装置はLED駆動装置となる。MCU2は、外部の調光器から無線通信若しくは有線通信で送られてくる調光信号、又は、周囲の明るさを検知する照度センサの検知結果に基づいて、LEDの調光率を決定し、決定した調光率に応じた第1信号SG1及び第2信号SG2を生成する。
【0036】
図2は、図1に示す負荷駆動装置と、LEDの直列体である負荷LD1と、を備える照明装置の外観例を示す図である。照明装置10aは電球形LEDランプであり、照明装置10bは環形LEDランプであり、照明装置10cは直管形LEDランプである。また、照明装置10dはLEDシーリングライトであり、照明装置10eはLEDダウンライトである。なお、照明装置10a~10eはあくまでも例示であり、照明装置は多種多様な形態で用いることが可能である。例えば照明装置は、液晶テレビのLEDバックライトに代表される表示装置用照明装置であってもよい。
【0037】
図3は、スイッチング制御IC1の一構成例を示す図である。図4は、スイッチング制御IC1の動作例を示すタイミングチャートである。なお、図4中の電圧Vzcdは、スイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧である。
【0038】
図3に示す構成例において、スイッチング制御IC1は、ヒステリシスコンパレータ3と、エラーアンプ4と、ランプ電圧生成回路5と、コンパレータ6及び7と、制御ロジック回路8と、を備えている。スイッチング制御IC1は、8番端子に印加される電圧によって駆動する。また、スイッチング制御IC1は、8番端子に印加される電圧から第1~第3基準電圧Vref1~Vref3等の定電圧を生成する。
【0039】
ヒステリシスコンパレータ3は、1次巻線N1に流れる電流Iのゼロクロスを検知する回路である。ヒステリシスコンパレータ3は、スイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧が第1基準電圧Vref1を下回ると、出力信号をハイレベルからローレベルに切り替え、その後、スイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧が第1基準電圧Vref1に正の所定値を加えた電圧を上回るまで、出力信号をローレベルのままにする。ヒステリシスコンパレータ3の出力信号は制御ロジック回路8に供給される。
【0040】
エラーアンプ4は、負荷駆動装置の出力電圧を監視する回路である。エラーアンプ4は、スイッチング制御IC1の1番端子に印加される電圧と第2基準電圧Vref2との差に応じたオフセット信号を出力する。
【0041】
ランプ電圧生成回路5は、スイッチング制御IC1の3番端子に接続される抵抗の抵抗値で定まる傾きのランプ電圧Vrampを生成する回路である。ランプ電圧生成回路5は、ランプ電圧Vrampがエラー出力電圧Veoを上回ってから所定時間が経過すると、ランプ電圧Vrampをリセットする。
【0042】
スイッチング制御IC1は、スイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧にエラーアンプ4のオフセット信号を加えて得られるエラー出力電圧Veoを生成する。
【0043】
コンパレータ6は、エラー出力電圧Veoとランプ電圧Vrampとを比較し、その比較結果を制御ロジック回路8に出力する。
【0044】
コンパレータ7は、スイッチング素子Q1に流れる過電流を検知する回路である。コンパレータ7は、スイッチング制御IC1の4番端子に印加される電圧と第3基準電圧Vref3とを比較し、その比較結果を制御ロジック回路8に出力する。
【0045】
制御ロジック回路8は、ヒステリシスコンパレータ3の出力信号、コンパレータ6の出力信号、及びコンパレータ7の出力信号に基づいてゲート電圧Vgを生成する。ゲート電圧Vgはスイッチング制御IC1の7番端子から出力される。
【0046】
図4に示すように、ゲート電圧Vgがローレベルからハイレベルに切り替わると、スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧Vdsが低下してスイッチング素子Q1がターンオンする(図4中のタイミングt1参照)。その後、1次巻線N1に流れる電流Iが増加する(図4中のタイミングt1からタイミングt2迄の期間参照)。
【0047】
そして、コンパレータ6の出力信号がローレベルからハイレベルに切り替わったタイミング、すなわちランプ電圧Vrampがエラー出力電圧Veoを上回ったタイミング(図4中のタイミングt2)で、制御ロジック回路8はゲート電圧Vgをハイレベルからローレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子Q1はターンオフする。
【0048】
その後、1次巻線N1に流れる電流Iが減少する(図4中のタイミングt2からタイミングt3迄の期間参照)。そして、1次巻線N1に流れる電流Iのゼロクロスがヒステリシスコンパレータ3によって検知されたタイミング、すなわちスイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧が第1基準電圧Vref1を下回ってヒステリシスコンパレータ3の出力信号がハイレベルからローレベルに切り替わったタイミング(図4中のタイミングt3)から所定時間遅延して、制御ロジック回路8はゲート電圧Vgをローレベルからハイレベルに切り替える。これにより、スイッチング素子Q1はターンオンする。
【0049】
以上の動作により、制御ロジック回路8は、スイッチング制御IC1の2番端子に印加される電圧に基づいて、スイッチング素子Q1のオン時間を調整する。なお、スイッチング制御IC1の2番端子に印加される電圧は、エラーアンプA1の出力信号(電圧信号)圧である。エラーアンプA1の出力信号は、第1信号SG1を抵抗R15とコンデンサC7で平滑化した電圧と、負荷LD1に流れる電流を抵抗R14で変換した電圧との差に応じた誤差信号である。
【0050】
ただし、スイッチング素子Q1に流れる過電流がコンパレータ7によって検知されている期間、すなわちコンパレータ7の出力信号がハイレベルである期間では、制御ロジック回路8は、図4に示すようにゲート電圧Vgのレベルを切り替えずゲート電圧Vgのレベルをローレベルで維持する。これにより、スイッチング素子Q1は過電流から保護される。
【0051】
また、本実施形態では、第2信号SG2をハイレベルにした場合に、スイッチング制御IC1の5番端子に印加される電圧が第1基準電圧Vref1より大きくなるように、第2信号SG2のハイレベルの値を設定している。従って、第2信号SG2がハイレベルである期間は、スイッチング素子Q1がターンオンしないので、スイッチング素子Q1のスイッチング動作が停止する期間となる。
【0052】
なお、第2信号SG2がハイレベルでない期間では、第2信号SG2が電流Iのゼロクロス検知の邪魔にならないように、MCU2の第2信号SG2を出力する端子がハイピンピーダンス状態になればよい。このため、本実施形態では、MCU2は、図5に示すPチャネルMOSトランジスタを用いたオープンドレイン回路を備え、当該オープンドレイン回路の出力端から第2信号SG2を出力するようにしている。なお、図5に示すPチャネルMOSトランジスタを用いたオープンドレイン回路の代わりに、PNPバイポーラトランジスタを用いたオープンコレクタ回路を設けてもよい。
【0053】
MCU2は、図6に示すプッシュプル回路も備え、当該プッシュプル回路の出力端から第1信号SG1を出力するようにしている。
【0054】
MCU2は、第1信号SG1の周波数を第2信号SG2の周波数より高くしている。これにより、第2信号SG2が比較的低周波数となり、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を間欠的に停止させることが容易になる。本実施形態では、第1信号SG1の周波数を20kHzとし、第2信号SG2の周波数を1kHzとしているが、この周波数の組み合わせはあくまで一例であり、他の周波数であってもよい。
【0055】
図7は、スイッチング制御IC1の調光動作例を示すタイミングチャートである。なお、図7において、第1信号SG1の波形は時間軸の方向に20倍に拡大している。また、図7において、第1信号SG1の上部に記載している百分率は第1信号SG1のオンデューティであり、第2信号SG2の上部に記載している百分率は第2信号SG2のオンデューティである。電流バーIの上部に記載している百分率は定格出力での電流バーIを100%とした場合における、電流バーIの大きさの度合いを示している。第1信号SG1は、オンデューティが100%から0%まで無段階で調整されるLED定電流設定用PWM(Pulse Width Modulation)信号である。第2信号SG2は、電流バーIの大きさの度合いを第1信号SG1のオンデューティに対応させるために力率改善回路の出力能力を予め調整するためのPWM信号である。第2信号SG2のオンデューティは無段階で調整されてもよく段階的に調整されてもよい。第1信号SG1の論理レベルは、ハイレベル(=電圧VH)とローレベル(=電圧VL)の二種類である。同様に、第2信号SG2の論理レベルは、ハイレベル(=電圧VH)とローレベル(=電圧VL)の二種類である。
【0056】
MCU2は、第1信号SG1がスイッチング素子Q1のオン時間を所定値より大きく調整することを指示する信号である場合、第2信号SG2をスイッチング素子Q1のスイッチング動作を停止させる期間を設けないことを指示する信号としている。本実施形態では、オンデューティが60%より大きい第1信号SG1を、スイッチング素子Q1のオン時間を所定値より大きく調整することを指示する信号としている。そして、オンデューティが0%である第2信号SG2は、第2信号SG2がハイレベルになる期間を有していないため、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を停止させる期間を設けないことを指示する信号となる。本実施形態では、第1信号SG1のオンデューティが60%より大きいか否かで、スイッチング素子Q1のオン時間を所定値より大きく調整することを指示する信号か否かが区別されているが、この60%という数値はあくまで一例であり、他の数値であってもよい。ただし、商用交流電源周波数(50Hz又は60Hz)の高調波成分の発生を抑えながら出力電流を小さくすることが困難になる調光率よりも大きい値に設定することが望ましい。
【0057】
第1信号SG1のオンデューティが60%より大きく100%以下である場合には、力率改善回路の出力電力W1は第1信号SG1のオンデューティに略比例する。
【0058】
一方、MCU2は、第1信号SG1がスイッチング素子Q1のオン時間を所定値以下に調整することを指示する信号である場合、第2信号SG2をスイッチング素子Q1のスイッチング動作を停止させる期間を設けることを指示する信号としている。
【0059】
第1信号SG1のオンデューティが60%以下である場合には、第2信号SG2がハイレベルでない期間における力率改善回路の出力電力W1はエラーアンプA1により自動調整される。
【0060】
しかしながら、第2信号SG2のハイレベル期間によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を停止させることができるので、小さい調光率に対応する明るさでLEDを点灯させることができる。その結果、力率改善回路の出力を平滑する出力コンデンサCoutによって平滑されて負荷LD1(LEDの直列体)に供給される電流バーIの大きさの度合いを第1信号SG1のオンデューティに追従させることができる。すなわち、力率を改善できかつ負荷LD1への出力電流を広範囲に調整することができる。
【0061】
なお、第2信号SG2のオンデューティが0%でない場合に、第1信号SG1のオンデューティを調整できる最小調整幅と、第2信号SG2のオンデューティを調整できる最小調整単位とは、互いに同一であってもよく、どちらか一方が他方より大きくてもよい。
【0062】
<4.その他>
本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0063】
例えば上述した実施形態では、発光素子としてLEDを用いているが、LEDの代わりに有機EL(Electro Luminescence)等の他の発光素子を用いてもよい。
【0064】
例えば上述した実施形態では、負荷駆動装置が発光素子の調光を行ったが、発光素子の調光の代わりに又は発光素子の調光に加えて、発光素子の調色を行ってもよい。発光素子の調色は、発光色が異なる複数の発光素子それぞれを独立して調光することで実現することができる。
【0065】
例えば上述した実施形態では、負荷駆動装置の負荷が発光素子であったが、発光素子の負荷は発光素子に限定されることはなく、例えばモータ等であってもよい。なお、モータと、当該モータを駆動する負荷駆動装置と、を備えるモータシステムは、種々の装置、機器、設備等で用いられる。
【0066】
例えば上述した実施形態では、第1信号SG1及び第2信号SG2を生成するMCU2が負荷駆動回路に含まれているが、第1信号SG1及び第2信号SG2を生成する回路を負荷駆動回路の外部に設け、負荷駆動回路が第1信号SG1及び第2信号SG2を受信する構成であってもよい。
【0067】
例えば上述した実施形態では、負荷駆動装置がSEPICを備える構成であったが、図1に示す負荷駆動装置のコンデンサC1を図8に示すようにスナバ回路S1に置換することで、フライバックコンバータを備える構成に変更してもよい。なお、スナバ回路S1の具体的構成は図8に示す例に限定されることは無く、他の構成であってもよい。
【0068】
また、負荷駆動装置にフォトカプラを設けて、負荷駆動装置がバックコンバータやバックブーストコンバータを備える構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 スイッチング制御IC
2 MCU
10a~10e 照明装置
Cin 入力コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
DB1 ダイオードブリッジ
Q1 スイッチング素子
T1 トランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8