(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】雨水貯留施設
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20220602BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220602BHJP
A01G 27/02 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
E03F1/00 A
A01G7/00 602C
A01G27/02 B
(21)【出願番号】P 2018146272
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-05-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 千葉県市川市塩浜2丁目31の建設現場の仮設事務所内 公開日 平成30年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繁泉 恒河
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】堀田 忠義
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094303(JP,A)
【文献】特開平09-248082(JP,A)
【文献】特開2002-294766(JP,A)
【文献】実開平04-017476(JP,U)
【文献】特開2006-141309(JP,A)
【文献】特開2003-339231(JP,A)
【文献】特開平05-023065(JP,A)
【文献】特開平06-319378(JP,A)
【文献】特開2009-136217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00
A01G 7/00
A01G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の土の上側に配置される
排水層と、
前記排水層の上側に配置される植栽土壌と、
前記植栽土壌を囲む側壁と、
側面部に貫通孔を備える側溝と、
前記側溝を支持する支持層と、
を備え、
前記側壁の少なくとも一部は、
前記側壁と前記植栽土壌と
で囲む空間に水を貯留できるように前記植栽土壌の表面よりも上側に配置され、
前記支持層は、前記貫通孔に面する部分を備え、
前記支持層は、前記植栽土壌に接する部分と、前記排水層に接する部分と、を備え、
前記植栽土壌の保水性は、前記既存の土の保水性よりも高く、
前記植栽土壌の透水性は、前記既存の土の透水性よりも高い、
雨水貯留施設。
【請求項2】
前記植栽土壌において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m
3以上であり、
前記植栽土壌の飽和透水係数は、10
-3cm/s以上である
請求項1に記載の雨水貯留施設。
【請求項3】
前記排水層は、前記植栽土壌の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有す
る
請求項1又は2に記載の雨水貯留施設。
【請求項4】
前記支持層は、前記植栽土壌の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する
請求項1から3のいずれか1項に記載の雨水貯留施設。
【請求項5】
前記側溝は、
前記植栽土壌に配置され且つ水を排水路に導く
請求項
1から4のいずれか1項に記載の雨水貯留施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留施設に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨時において下水道又は河川等の排水路へ雨水が急激に流入しないようにするための施設として、雨水貯留施設が知られている。特許文献1には、雨水貯留施設の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、雨水を植栽土壌に溜める雨水貯留施設が知られている。しかし、土壌に植物が設けられる場合、貯留された水によって植栽が困難になることがある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、水を貯留でき且つ植物に与える影響を低減できる雨水貯留施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の雨水貯留施設は、既存の土の上側に配置される植栽土壌と、前記植栽土壌を囲む側壁と、を備え、前記側壁の少なくとも一部は、前記植栽土壌と囲む空間に水を貯留できるように前記植栽土壌の表面よりも上側に配置され、前記植栽土壌の保水性は、前記既存の土の保水性よりも高く、前記植栽土壌の透水性は、前記既存の土の透水性よりも高い。
【0007】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記植栽土壌において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m3以上であり、前記植栽土壌の飽和透水係数は、10-3cm/s以上である。
【0008】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記植栽土壌の下側に配置され且つ前記植栽土壌の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する排水層を備える。
【0009】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記植栽土壌に配置され且つ水を排水路に導く側溝を備える。
【0010】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記側溝は、前記植栽土壌に水を通過させる貫通孔を備える。
【0011】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記貫通孔は、前記側溝の側面部に設けられる。
【0012】
なお、上記の雨水貯留施設の望ましい態様として、前記植栽土壌の下側に配置され且つ前記植栽土壌の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する排水層と、前記植栽土壌に配置され且つ水を排水路に導く側溝と、前記側溝を支持し且つ前記植栽土壌の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する支持層と、を備え、前記側溝は、水を通過させる貫通孔を備え、前記支持層は、前記貫通孔から前記排水層にわたって配置される。
【発明の効果】
【0013】
本開示の雨水貯留施設によれば、水を貯留でき且つ植物に与える影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態の雨水貯留施設の平面図である。
【
図2】
図2は、雨が降っていない時における
図1のA-A断面図である。
【
図3】
図3は、通常の降雨時における
図1のA-A断面図である。
【
図6】
図6は、豪雨時における第1変形例の雨水貯留施設の断面図である。
【
図7】
図7は、豪雨時における第2変形例の雨水貯留施設の断面図である。
【
図8】
図8は、豪雨時における第3変形例の雨水貯留施設の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
(実施形態)
図1は、実施形態の雨水貯留施設の平面図である。
図2は、雨が降っていない時における
図1のA-A断面図である。
図3は、通常の降雨時における
図1のA-A断面図である。
図4は、豪雨時における
図1のA-A断面図である。
図5は、豪雨時における
図1のB-B断面図である。本実施形態の雨水貯留施設100は、降雨時に水を貯留するための施設である。市町村によって敷地外へ排出できる水の流量には制限がある。このため、排水しきれない水は、雨水貯留施設100に一旦貯留される。
【0017】
図1に示すように、雨水貯留施設100は、建物90に沿うように配置される。建物90の屋根等に落ちた雨水が、雨水貯留施設100に集められる。雨水貯留施設100は、建物90を介して流入した水、及び直接落ちてきた水を、後述する植栽土壌21と側壁10とに囲まれる空間及び植栽土壌21に貯留する。
【0018】
雨水貯留施設100は、水を貯留するための施設であると共に、植栽のための施設でもある。雨水貯留施設100には、様々な植物が植えられる。このため、雨水貯留施設100には、水を貯留する機能、及び植物を生育する機能が求められる。
【0019】
図1から
図5に示すように、雨水貯留施設100は、側壁10と、植栽土壌21と、排水層23と、側溝40と、支持層27と、透水シート29と、第1集水桝51と、オリフィス53と、第2集水桝55と、放流管57と、を備える。
【0020】
図1に示すように、側壁10は、水を貯留する空間を規定するための部材である。側壁10は、植栽土壌21の少なくとも表面を囲む。側壁10は、例えば擁壁であって、コンクリート等で形成される。側壁10は、第1側壁11と、第2側壁13と、第3側壁15と、第4側壁17と、を備える。本実施形態においては、建物90の一部が第4側壁17を兼ねる。第1側壁11は、第4側壁17と対向する。第2側壁13及び第3側壁15は、第1側壁11から第4側壁17にわたって設けられる。第2側壁13は、第3側壁15と対向する。平面視で、第1側壁11、第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17は、矩形状に配置される。
【0021】
図2に示すように、植栽土壌21は、既存の土25の上側に配置される。側壁10の一部は、植栽土壌21と囲む空間に水を貯留できるように、植栽土壌21の表面よりも上側に配置される。植栽土壌21及び側壁10で囲まれる空間は、水を貯留するための空間である。植栽土壌21は、側壁10に囲まれる空間に貯留される水の水位が植栽土壌21の表面より低い場合、大気に面する。植栽土壌21には、植物が植えられる。植栽土壌21に植えられる植物は、特に限定されず、地被植物、低木、中木、高木等が含まれる。植栽土壌21の深さは、植えられる植物によって調節される。
【0022】
植栽土壌21において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m3以上である。植栽土壌21において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、200L/m3以上であることがより望ましい。pFは、土壌の水分が毛管力によって引き付けられている強さの程度を表す数値である。有効水分量は、植物によって利用できる水分量である。有効水分量は、土の保水性を示す指標である。
【0023】
植栽土壌21の飽和透水係数は、10-3cm/s以上である。植栽土壌21の飽和透水係数は、10-2cm/s以上であることがより望ましい。飽和透水係数は、飽和時における土の中の水の流速である。飽和透水係数は、土の透水性を示す指標である。
【0024】
植栽土壌21は、例えば黒土及びシルトを含む。植栽土壌21は、既存の土25とは異なる材料である。既存の土25は、雨水貯留施設100が設置される場所に元々ある土である。既存の土25は、雨水貯留施設100が設置される場所に、雨水貯留施設100が設置される前から存在する土である。既存の土25としては、例えばマサ土、砂、鹿沼土、関東ロームが挙げられる。
【0025】
マサ土のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、50L/m3程度である。マサ土の飽和透水係数は、10-5cm/s程度である。
【0026】
砂のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、10L/m3程度である。砂の飽和透水係数は、10-3cm/s以上10-2cm/s以下程度である。
【0027】
鹿沼土のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m3程度である。鹿沼土の飽和透水係数は、10-4cm/s程度である。
【0028】
関東ローム(赤土)のpFが1.8以上3.8以下の範囲における有効水分量は、200L/m3程度である。関東ローム(赤土)の飽和透水係数は、10-4cm/s程度である。
【0029】
上述したように植栽土壌21においては、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量が100L/m3以上であり、且つ飽和透水係数は、10-3cm/s以上である。植栽土壌21において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、200L/m3以上であることがより望ましい。植栽土壌21の飽和透水係数は、10-2cm/s以上であることがより望ましい。植栽土壌21は、雨水貯留施設100が設置される場所にある既存の土25と比較して、高い保水性及び高い透水性の両方を備える。すなわち、植栽土壌21の保水性は、既存の土25の保水性よりも高い。植栽土壌21の透水性は、既存の土25の透水性よりも高い。また、植栽土壌21においては、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量が100L/m3以上500L/m3以下である。植栽土壌21の飽和透水係数は、10-3cm/s以上1cm/s以下である。望ましくは、植栽土壌21においては、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量が200L/m3以上500L/m3以下である。植栽土壌21の飽和透水係数は、10-2cm/s以上1cm/s以下である。
【0030】
排水層23は、植栽土壌21の下側に配置される。排水層23は、既存の土25の上側に配置される。排水層23は、既存の土25と植栽土壌21との間に配置される。既存の土25の上に排水層23が積層され、排水層23の上に植栽土壌21が積層される。排水層23の飽和透水係数は、植栽土壌21の飽和透水係数よりも大きい。すなわち、排水層23の透水性は、植栽土壌21の透水性よりも高い。排水層23は、例えばクリンカアッシュを含む。
【0031】
側溝40は、水を排水路70に導くための部材である。排水路70は、下水道又は河川等である。
図1及び
図2に示すように、側溝40は、第4側壁17に沿って配置される。第4側壁17から側溝40までの距離は、第1側壁11から側溝40までの距離よりも小さい。側溝40は、植栽土壌21に配置される。側溝40は、上部が開口するように植栽土壌21の中に埋められる。例えば本実施形態においては、側溝40の上端部の位置は、植栽土壌21の上端部の位置と等しい。
図2に示すように、側溝40は、第1側面部41と、第2側面部43と、底面部45と、貫通孔47と、を備える。
【0032】
図2に示すように、第1側面部41、第2側面部43及び底面部45は、板状である。第1側面部41及び第2側面部43の厚さ方向は、水平方向に沿う。第1側面部41は、第2側面部43と対向するように配置される。第4側壁17から第1側面部41までの距離は、第4側壁17から第2側面部43までの距離よりも大きい。貫通孔47は、第1側面部41に設けられる。貫通孔47は、水を通過させる。底面部45の厚さ方向は、鉛直方向に沿う。底面部45は、第1側面部41の下端部と第2側面部43の下端部とを接続する。底面部45の上面は、鉛直方向に対して傾斜している。これにより、水が一方向に導かれる。
【0033】
図2に示すように、支持層27は、側溝40を支持する。支持層27は、第1側面部41、第2側面部43及び底面部45を覆うように配置される。支持層27は、貫通孔47に面する。支持層27の下端部は、排水層23に接する。支持層27は、貫通孔47から排水層23にわたって配置される。支持層27の飽和透水係数は、植栽土壌21の飽和透水係数よりも大きい。すなわち、支持層27の透水性は、植栽土壌21の透水性よりも高い。支持層27は、例えば単粒度砕石を含む。支持層27は、側溝40の沈下を抑制できる。
【0034】
透水シート29は、水を通すシート状の部材である。透水シート29は、支持層27の側面及び上面を覆うように配置される。透水シート29は、支持層27と植栽土壌21との間に配置される。透水シート29は、支持層27と排水層23との間に配置される。透水シート29は、水を通すと共に植栽土壌21及び排水層23の材料が支持層27に侵入することを抑制する。
【0035】
図3に示すように、通常の降雨時においては、雨水は側溝40へ流入する。側溝40の水は、第1集水桝51、オリフィス53、第2集水桝55、及び放流管57を通って排水路70へ排出される。
図3から
図8の矢印は、水の流れを示す。
【0036】
豪雨時には、市町村によって敷地外へ排出できる水の流量には制限がある。このため、通常の降雨時のように排水しきれない水は、
図4に示すように雨水貯留施設100に一旦貯留される。
【0037】
図5に示すように、第1集水桝51は、側溝40に接続される。第1集水桝51には、側溝40から水が流入する。オリフィス53は、第1集水桝51と第2集水桝55とを接続する。オリフィス53は、第1集水桝51から第2集水桝55に向かう水の流量を制限する。放流管57は、第2集水桝55と排水路70とを接続する。放流管57は、第2集水桝55に集められる水を、排水路70へ導く。
【0038】
豪雨時において、オリフィス53によって排水量が制限される。側溝40、第1集水桝51及び第2集水桝55から溢れた水が、
図4及び
図5に示すように植栽土壌21の上に貯留される。貯留された水の一部は、植栽土壌21、排水層23、既存の土25の順に浸透する。貯留された水の一部は、側溝40の貫通孔47を介して支持層27に排出される。貫通孔47を通過した水の一部は、透水シート29を通過して植栽土壌21に浸透した後、排水層23に排出される。貫通孔47を通過した水の一部は、支持層27の下側に移動し、植栽土壌21を介さずに排水層23に排出される。
【0039】
植栽土壌21の飽和透水係数が10-3cm/s以上であることによって、降雨後において植栽土壌21の上及び植栽土壌21の内部に貯留された水が排水層23へ速やかに移動する。このため、植栽土壌21に植えられた植物の根腐れが低減される。また、植栽土壌21においてpFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量が100L/m3以上であることによって、水が排水層23へある程度排出された後には、植栽土壌21に適度な水分が保たれる。このため、植栽土壌21に植えられた植物の枯れが抑制される。
【0040】
なお、側壁10は、植栽土壌21とで囲まれる空間に水を貯留することができる形状であればよい。側壁10は、上述したように建物90と一体となっていなくてもよく、建物90とは独立して設けられてもよい。また、側壁10においては、第1側壁11、第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17が一体となっていなくてもよい。側壁10は、複数の側壁を結合させたものでもよい。すなわち、第1側壁11、第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17が、互いに別の部材であってもよい。第1側壁11、第2側壁13及び第3側壁15は、建物の一部であってもよい。側壁10は、
図2に示すように排水層23の下まで設けられなくてもよい。側壁10は、少なくとも植栽土壌21よりも上に突出していればよい。側壁10の高さは、植栽土壌21及び側壁10で囲まれる空間に豪雨時の雨水を貯留することができる高さであればよい。側壁10のうち植栽土壌21の表面よりも下側の部分は、なくてもよい。また、側壁10は、必ずしもコンクリートで形成された擁壁でなくてもよい。例えば、側壁10は、土等で形成されていてもよい。第1側壁11、第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17を鉛直面で切った断面形状は、矩形でなくてもよく、特に限定されない。
【0041】
植栽土壌21、排水層23、支持層27の材料は、必ずしも上述した材料でなくてもよい。植栽土壌21、排水層23、支持層27の材料は、特に限定されない。植栽土壌21、排水層23、支持層27は、それぞれ複数の材料で構成されていてもよい。
【0042】
雨水貯留施設100は、排水層23を備えていなくてもよい。既存の土25のうえに植栽土壌21が積層されてもよい。すなわち、植栽土壌21が既存の土25に接していてもよい。また、支持層27は、なくてもよい。
【0043】
以上で説明したように、雨水貯留施設100は、既存の土25の上側に配置される植栽土壌21と、植栽土壌21を囲む側壁10と、を備える。側壁10の少なくとも一部は、植栽土壌21と囲む空間に水を貯留できるように植栽土壌21の表面よりも上側に配置される。植栽土壌21の保水性は、既存の土25の保水性よりも高い。植栽土壌21の透水性は、既存の土25の透水性よりも高い。
【0044】
これにより、降雨時においては、側壁10に囲まれる空間に水が貯留される。降雨後においては、植栽土壌21の上及び植栽土壌21の内部に貯留された水が速やかに排出される。さらに、植栽土壌21の水がある程度排出された後には、植栽土壌21に適度な水分が保たれる。したがって、雨水貯留施設100は、水を貯留でき且つ植物に与える影響を低減できる。
【0045】
水が貯留される場所では、背丈の低い地被類、及び低木は水没する可能性がある。また、豪雨時においては水が植栽土壌に滞留するため、中木、及び高木であっても根腐れする可能性がある。土壌を厚くできない場合には、中木、及び高木の植栽が難しい。このため、自由な植栽計画が困難であった。
【0046】
これに対して、雨水貯留施設100によれば、植栽土壌21の上及び植栽土壌21の内部に貯留された水が速やかに排出される。このため、地被類、及び低木が水没する可能性、及び中木、及び高木が根腐れする可能性が低減される。また、植栽土壌21を厚くすることも可能である。したがって、雨水貯留施設100によれば、適用可能な植物の種類を増やすことができ、自由な植栽計画が可能となる。
【0047】
植栽土壌21において、pFが1.5以上3.8以下の範囲における有効水分量は、100L/m3以上である。植栽土壌21の飽和透水係数は、10-3cm/s以上である。
【0048】
これにより、雨水貯留施設100は、植物に与える影響をより低減できる。また、雨水貯留施設100は、より自由な植栽計画を可能にする。
【0049】
雨水貯留施設100は、植栽土壌21の下側に配置され且つ植栽土壌21の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する排水層23を備える。
【0050】
これにより、降雨後において、植栽土壌21の上及び植栽土壌21の内部に貯留された水がより速やかに排出される。さらに、毛管力による地下水の植栽土壌21への上昇が抑制される。例えば、雨水貯留施設100は、海に近い場所における海水の毛管上昇を抑制することが可能である。雨水貯留施設100は、海水による植栽枯れを防ぐことができる。したがって、雨水貯留施設100は、植物に与える影響をより低減できる。
【0051】
雨水貯留施設100は、植栽土壌21に配置され且つ水を排水路70に導く側溝40を備える。
【0052】
これにより、植栽土壌21の上に貯留された水の一部は、側溝40を介して排水路70に排出される。したがって、雨水貯留施設100は、植栽土壌21の上に貯留された水の排出を促進できる。
【0053】
雨水貯留施設100において、側溝40は、植栽土壌21に水を通過させる貫通孔47を備える。
【0054】
これにより、側溝40を通る水が貫通孔47を介して植栽土壌21に供給される。したがって、雨水貯留施設100は、植栽土壌21の乾燥を抑制できる。雨水貯留施設100は、植栽土壌21への散水の手間を低減できる。
【0055】
雨水貯留施設100において、貫通孔は、側溝40の側面部(第1側面部41)に設けられる。
【0056】
これにより、貫通孔が側溝40の底面部45に設けられる場合と比較して、側溝40を通る水が植栽土壌21に供給されやすくなる。雨水貯留施設100は、植栽土壌21への散水の手間をより低減できる。
【0057】
雨水貯留施設100は、植栽土壌21の下側に配置され且つ植栽土壌21の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する排水層23と、植栽土壌21に配置され且つ水を排水路に導く側溝40と、側溝40を支持し且つ植栽土壌21の飽和透水係数よりも大きい飽和透水係数を有する支持層27と、を備える。側溝40は、水を通過させる貫通孔47を備える。支持層27は、貫通孔47から排水層23にわたって配置される。
【0058】
これにより、貫通孔47を通過した水の少なくとも一部は、植栽土壌21を介さずに排水層23に排出される。したがって、雨水貯留施設100は、水の排出を促進できる。
【0059】
(第1変形例)
図6は、豪雨時における第1変形例の雨水貯留施設の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0060】
図6に示すように、第1変形例の雨水貯留施設100Aは、上述した側壁10とは異なる側壁10Aを備える。側壁10Aは、第1側壁11Aを備える。第1側壁11Aの下端部は、排水層23よりも上側に配置される。植栽土壌21は、側壁10Aの外側にある既存の土25に接する。このため、植栽土壌21の水は、排水層23だけでなく、既存の土25にも直接浸透する。したがって、雨水貯留施設100Aは、水の排出を促進できる。側壁10の一部が、植栽土壌21と囲む空間に水を貯留できるように植栽土壌21の表面よりも上側に配置されていれば、側壁10のうち植栽土壌21の表面よりも下側の部分は、なくてもよい。なお、
図1に示す第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17において、第1側壁11Aと同様に、下端部が排水層23よりも上側に配置されてもよい。
【0061】
(第2変形例)
図7は、豪雨時における第2変形例の雨水貯留施設の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0062】
図7に示すように、第2変形例の雨水貯留施設100Bは、上述した支持層27を備えない。雨水貯留施設100Bは、側溝40を支持する支持体28と、透水シート29Bと、を備える。
【0063】
支持体28は、底面部45の下側に配置される。支持体28は、第1側面部41及び第2側面部43を覆わない。支持体28の材料は、特に限定されない。支持体28は、例えばコンクリート等で形成されてもよいし、支持層27と同じ材料であってもよい。
【0064】
透水シート29Bは、貫通孔47を覆うように配置される。透水シート29Bは、貫通孔47と植栽土壌21との間に配置される。透水シート29Bは、植栽土壌21の材料が側溝40に侵入することを抑制する。
【0065】
これにより、側溝40を通る水が貫通孔47を介して植栽土壌21に供給される。貫通孔47を介して植栽土壌21に供給される水は、上述したように支持層27がある場合と比較して多くなる。したがって、雨水貯留施設100は、植栽土壌21の乾燥をより抑制できる。雨水貯留施設100は、植栽土壌21への散水の手間をより低減できる。
【0066】
(第3変形例)
図8は、豪雨時における第3変形例の雨水貯留施設の断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図8に示すように、第3変形例の雨水貯留施設100Cは、側壁10Cを備える。側壁10Cは、第1側壁11Cを備える。第1側壁11Cを鉛直面で切った断面形状は、略L字状である。第1側壁11Cの上に排水層23が積層されている。なお、
図1に示す第2側壁13、第3側壁15及び第4側壁17は、第1側壁11Cと同様に略L字状の断面形状を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、10A、10C 側壁
11、11C 第1側壁
13 第2側壁
15 第3側壁
17 第4側壁
21 植栽土壌
23 排水層
25 既存の土
27 支持層
28 支持体
29、29B 透水シート
40 側溝
41 第1側面部
43 第2側面部
45 底面部
47 貫通孔
51 第1集水桝
53 オリフィス
55 第2集水桝
57 放流管
70 排水路
90 建物
100、100A、100B、100C 雨水貯留施設