IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-二次電池 図1
  • 特許-二次電池 図2
  • 特許-二次電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220602BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220602BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220602BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018232291
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020095842
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田伏 章浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】高梨 優
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-137928(JP,A)
【文献】特開平11-25956(JP,A)
【文献】特開2006-210003(JP,A)
【文献】特表2012-531726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/525
H01M 4/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体と、前記正極芯体の少なくとも一方の表面に形成された正極合材層とを有する正極を備え、
前記正極合材層は、第1正極合材層と、前記第1正極合材層の表面に形成された第2正極合材層とを有し、
前記第1正極合材層は、BET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含み、
前記第2正極合材層は、BET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含み、
前記第2正極合材層の厚みは、5μm~15μmである、二次電池。
【請求項2】
前記第2正極合材層の厚みは、前記第1正極合材層と前記第2正極合材層の合計の厚みの10%~35%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1正極活物質のBET比表面積S1に対する前記第2正極活物質のBET比表面積S2の比(S2/S1)は、0.46~0.81である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1正極活物質及び前記第2正極活物質は、Ni、Co、Mnから選択される少なくとも1つの元素を含むリチウム金属複合酸化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子であり、前記二次粒子の内部に前記一次粒子が存在しない、或いは前記一次粒子の密度が疎な中空部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池において、正極活物質の比表面積を大きくすることで、二次電池の出力が向上することが知られている。例えば、特許文献1には、正極合材層において表層側の活物質の比表面積よりも集電体側の活物質の比表面積を大きくすることが開示されている。特許文献1には、当該正極合材層を使用することにより出力を含む充放電特性をより高めることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5929183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、二次電池の製造工程において、正極は、正極作製工程から二次電池の組み立て工程において大気中に保管されることがある。比表面積が大きい正極活物質を正極合材層に含む正極を大気中に保管した場合、二次電池の出力が低下するという課題が判明した。本開示の目的は、正極の大気暴露による出力低下を抑制した二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である二次電池は、正極芯体と、正極芯体の少なくとも一方の表面に形成された正極合材層とを有する正極を備え、正極合材層は、第1正極合材層と、第1正極合材層の表面に形成された第2正極合材層とを有し、第1正極合材層は、BET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含み、第2正極合材層は、BET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含み、第2正極合材層の厚みは、5μm~15μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、正極の大気暴露による出力低下を抑制した二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の一例である二次電池の正面図であって、電池ケース及び絶縁シートの正面部分を取り除いた状態を示す。
図2】実施形態の一例である二次電池の平面図である。
図3】実施形態の一例である正極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
二次電池において、正極活物質のBET比表面積を大きくすることで、二次電池の出力が向上する。一方、本発明者らの検討の結果、BET比表面積が大きい正極活物質を正極合材層に含む正極を大気中に保管した場合、二次電池の出力が低下することが判明した。
【0009】
BET比表面積が大きい正極活物質は、大気中の水分、二酸化炭素と正極活物質の表面の残存リチウム成分が反応して抵抗成分であるLiCOを形成しやすいために、大気中にしばらく保管した場合、正極合材層の抵抗値が大きくなってしまう。したがって、大気中にしばらく保管した正極を組み込んだ二次電池は、作製当日の正極を組み込んだ二次電池よりも出力が低下してしまう。
【0010】
正極芯体と、正極芯体の少なくとも一方の表面に形成された正極合材層とを有する正極を備え、正極合材層は、第1正極合材層と、第1正極合材層の表面に形成された第2正極合材層とを有し、正極芯体側にBET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含む第1正極合材層を有し、第1正極合材層の表面にBET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含む第2正極合材層を有し、第2正極合材層の厚みが5μm~15μmである二次電池であれば、正極の大気暴露による出力低下を抑制できることが、本発明者らの検討により判明した。本明細書において、大気暴露とは大気中に保管することを意味する。当該正極は、BET比表面積が大きい第1正極合材層を正極芯体側に配置することで十分な出力を実現し、さらにBET比表面積が小さい第2正極合材層を第1正極合材層の上に配置することで大気中からの水分の侵入を阻止して抵抗成分であるLiCOの生成を抑制することができる。
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。本実施形態では、角形の金属製ケースである電池ケース200を備えた角形電池を例示するが、電池ケースは角形に限定されず、例えば金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された電池ケースであってもよい。また、正極及び負極の両方において、各合材層が各芯体の両面に形成される場合を例示するが、各合材層は、各芯体の両面に形成される場合に限定されず、少なくとも一方の表面に形成されればよい。
【0012】
図1及び図2に例示するように、二次電池100は、正極と負極がセパレータを介して巻回され、平坦部及び一対の湾曲部を有する扁平状に成形された巻回型の電極体3と、電解液と、電極体3及び電解液を収容する電池ケース200とを備える。電池ケース200は、開口を有する有底筒状の角形外装体1、及び角形外装体1の開口を封口する封口板2を含む。角形外装体1及び封口板2はいずれも金属製であり、アルミニウム製又はアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0013】
角形外装体1は、底面視略長方形状の底部、及び底部の周縁に立設した側壁部を有する。側壁部は、底部に対して垂直に形成される。角形外装体1の寸法は特に限定されないが、一例としては、横方向長さが130mm~160mm、高さが60mm~70mm、厚みが15mm~18mmである。本明細書では、説明の便宜上、角形外装体1の底部の長手方向に沿った方向を角形外装体1の「横方向」、底部に対して垂直な方向を「高さ方向」、横方向及び高さ方向に垂直な方向を「厚み方向」とする。
【0014】
正極は、金属製の正極芯体と、芯体の両面に形成された正極合材層とを有する長尺体であって、短手方向における一方の端部に長手方向に沿って正極芯体が露出する帯状の芯体露出部4aが形成されたものである。同様に、負極は、金属製の負極芯体と、芯体の両面に形成された負極合材層とを有する長尺体であって、短手方向における一方の端部に長手方向に沿って負極芯体が露出する帯状の芯体露出部5aが形成されたものである。電極体3は、軸方向一端側に正極の芯体露出部4aが、軸方向他端側に負極の芯体露出部5aがそれぞれ配置された状態で、セパレータを介して正極及び負極が巻回された構造を有する。
【0015】
正極の芯体露出部4aの積層部には正極集電体6が、負極の芯体露出部5aの積層部には負極集電体8がそれぞれ接続される。好適な正極集電体6は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製である。好適な負極集電体8は、銅又は銅合金製である。正極端子7は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部7aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、正極集電体6と電気的に接続されている。また、負極端子9は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部9aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有し、負極集電体8と電気的に接続されている。
【0016】
正極端子7及び正極集電体6は、それぞれ内部側絶縁部材10及び外部側絶縁部材11を介して封口板2に固定される。内部側絶縁部材10は、封口板2と正極集電体6の間に配置され、外部側絶縁部材11は封口板2と正極端子7の間に配置される。同様に、負極端子9及び負極集電体8は、それぞれ内部側絶縁部材12及び外部側絶縁部材13を介して封口板2に固定される。内部側絶縁部材12は封口板2と負極集電体8の間に配置され、外部側絶縁部材13は封口板2と負極端子9の間に配置される。
【0017】
電極体3は、絶縁シート14に覆われた状態で角形外装体1内に収容される。封口板2は、角形外装体1の開口縁部にレーザー溶接等により接続される。封口板2は電解液注液孔16を有し、電解液注液孔16は電池ケース200内に電解液を注液した後、封止栓17により封止される。封口板2には、電池内部の圧力が所定値以上となった場合にガスを排出するためのガス排出弁15が形成されている。
【0018】
以下、電極体3を構成する正極4、負極、セパレータ、及び電解液について、特に正極4の正極合材層41について詳説する。
【0019】
[正極]
図3に例示するように、正極4は、正極芯体40と、正極芯体40の表面に設けられた正極合材層41とを有する。正極芯体40には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極4の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができ、5μm~30μmの厚みを有する。正極合材層41の厚みは、正極芯体40の片側で、例えば15μm~150μmであり、好ましくは20μm~70μmである。正極合材層41は、正極芯体40の両面に設けられることが好ましい。
【0020】
正極合材層41は、正極芯体40側に形成された第1正極合材層42と、第1正極合材層42の表面に形成された第2正極合材層43とを有する。第1正極合材層42は、BET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含み、第2正極合材層43は、BET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含む。正極合材層41は、正極芯体40側から順に第1正極合材層42、第2正極合材層43が重なった積層構造を有する。正極合材層41は、第1正極合材層42と第2正極合材層43以外の層を有してもよい。
【0021】
第1正極合材層42は、上述の通り、BET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含む。正極芯体40側にBET比表面積が大きい第1正極活物質を形成することで二次電池の出力を高くすることができる。第1正極合材層42は、さらに導電材及び結着材(いずれも図示せず)を含むことができる。第1正極合材層42の主成分は第1正極活物質である。第1正極合材層42の厚みは、例えば、5μm~145μmである。
【0022】
第1正極活物質及び第2正極活物質は、例えば、Ni、Co、Mnから選択される少なくとも1つの元素を含むリチウム金属複合酸化物である。換言すれば、第1正極活物質及び第2正極活物質における、中空粒子又は中実粒子を構成する一次粒子は、リチウム金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム金属複合酸化物は、例えば、一般式LiMe(0.8≦x≦1.2、0.7≦y≦1.3)で表される複合酸化物である。式中、MeはNi、Co、Mnから選択される少なくとも1種を含む金属元素である。好適なリチウム金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有する複合酸化物であって、例えばNi、Co、Mnを含有するリチウム金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム金属複合酸化物であり、Ni、Co、Mnを含有するリチウム金属複合酸化物が好ましい。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化タングステン、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機物粒子などが固着していてもよい。
【0023】
リチウム金属複合酸化物に含有される元素は、Ni、Co、Mnに限定されず、他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、Li以外のアルカリ金属元素、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素、アルカリ土類金属元素、第12族元素、第13族元素、及び第14族元素が挙げられる。他の元素の具体例としては、Al、B、Na、K、Ba、Ca、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。Zrを含有する場合、一般的に、リチウム金属複合酸化物の結晶構造が安定化され、第2正極活物質の高温での耐久性、及びサイクル特性が向上する。リチウム金属複合酸化物におけるZrの含有量は、Liを除く金属の総量に対して、0.05mol%~10mol%が好ましく、0.1mol%~5mol%がより好ましく、0.2mol%~3mol%が特に好ましい。第1正極活物質及び第2正極活物質の一次粒子を構成するリチウム金属複合酸化物は、お互いに同じであっても、異なっていてもいずれでもよい。第1正極合材層42及び第2正極合材層43は、例えば同じ正極活物質を含むことができる。
【0024】
第1正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子であり、二次粒子の内部に一次粒子が存在しない、或いは一次粒子の密度が疎な中空部を含むことが好ましい(以下、このような構造を有する二次粒子を中空粒子という場合がある)。第1正極活物質として中空粒子を用いることで、二次電池の抵抗を低減して出力を高めることができる。
【0025】
中空粒子は、中空部を囲むシェルを有する。中空粒子のシェルは、複数の一次粒子が凝集して構成されることが好ましい。なお、中空部に幾つかの一次粒子が存在していてもよいが、中空部における一次粒子の密度は、シェルにおける一次粒子の密度よりも低い。他方、中実粒子とは、粒子内部にも活物質が密に存在する粒子であって、粒子の内部と外部とで活物質の密度が略均一な粒子を意味する。第1正極合材層42には、本開示の目的を損なわない範囲で、中実粒子が含まれていてもよい。中空粒子の体積基準の中心粒子径(D50)は、例えば2μm~30μmであり、より好ましくは2μm~10μmである。本明細書において、中心粒子径とは、特に断らない限り、レーザー回折散乱法で測定される粒度分布において体積積算値が50%となる粒子径(D50)を意味する。
【0026】
中空粒子は、上述のように、一次粒子が凝集して構成された中空構造の二次粒子である。一次粒子の平均粒径は、例えば50nm~10μmであり、好ましくは50nm~3μmであり、より好ましくは100nm~1μmである。一次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した一次粒子を無作為に100個抽出し、各粒子の長径及び短径の長さの平均値を各粒子の粒径として、100個の粒子の粒径を平均した値である。中空部の体積は、中空粒子の総体積(中空部の体積を含む体積)の10%~90%が好ましく、15%~60%がより好ましい。中空部の体積は、SEMを用いた画像解析により求められる。
【0027】
第2正極合材層43は、BET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含む。BET比表面積の小さい第2正極活物質を主成分とする第2正極合材層43は、内側にある第1正極合材層42を大気中の水分から保護している。第2正極合材層43は、さらに導電材及び結着材(いずれも図示せず)を含むことができる。
【0028】
第2正極合材層43の厚みは、5μm~15μmである。第2正極合材層43の厚みが5μm以上であれば、保護層として十分に機能して正極4の大気暴露による出力低下を抑制できる。また、第2正極合材層43の厚みが15μm以下であれば、第1正極合材層42の厚みを大きくできるので十分な出力を得ることができる。
【0029】
第2正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子である。第2正極活物質のBET比表面積が上述した範囲であれば、第2正極活物質は、中空粒子、中実粒子のいずれであってもよい。
【0030】
第1正極活物質のBET比表面積S1に対する第2正極活物質のBET比表面積S2の比(S2/S1)は、0.46~0.81であることが好ましい。S2/S1が0.46以上であることが正極の大気暴露による出力低下の抑制の観点からは好ましく、0.81以下であることが初期出力の観点から好ましい。
【0031】
第2正極合材層43の厚みは、第1正極合材層42と第2正極合材層43の厚みの合計の10%~35%であることが好ましい。第2正極合材層43の厚みが第1正極合材層42と第2正極合材層43の厚みの合計の10%以上であることが正極の大気暴露による出力低下抑制の観点からは好ましく、35%以下であることが初期出力の観点からは好ましい。
【0032】
第1正極合材層42及び第2正極合材層43に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。導電材は中空粒子よりも小粒径の粒子であることが好ましい。導電材のD50は、例えば1nm~10nmであることが好ましい。第1正極合材層42及び第2正極合材層43における導電材の含有量は、第1正極合材層42又は第2正極合材層43の総質量に対してそれぞれ0.5質量%~5質量%が好ましく、それぞれ1質量%~3質量%がより好ましい。
【0033】
第1正極合材層42及び第2正極合材層43に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。第1正極合材層42及び第2正極合材層43における結着材の含有量は、第1正極合材層42又は第2正極合材層43の総質量に対してそれぞれ1質量%~7質量%が好ましく、それぞれ2質量%~4質量%がより好ましい。
【0034】
正極合材層41は、例えば第1正極合材スラリー、及び第2正極合材スラリーを用いて製造される。具体的には、正極芯体40の両面に第1正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて第1正極合材層42を形成した後、第1正極合材層42の表面の略全域に第2正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて第2正極合材層43を形成する。その後、ローラ等を用いて第1正極合材層42及び第2正極合材層43を圧縮する。各スラリーには、正極活物質、結着材、及び導電材が含まれる。
【0035】
[負極]
負極は、負極芯体と、負極芯体の表面に設けられた負極合材層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金など負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)等の結着材を含み、負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極は、負極芯体上に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体の両面に設けることにより作製できる。
【0036】
負極合材層は、負極活物質、結着材等を含む。負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであり、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材、非晶質炭素材、SiやSn等のリチウムと合金化する金属、合金材料又は金属複合酸化物等が挙げられる。また、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。特に、負極表面で低抵抗な被膜が形成されやすい点等から、黒鉛系炭素材と、黒鉛系炭素材の表面に固着された非晶質炭素材とを含む炭素材料を用いることが好ましい。
【0037】
黒鉛系炭素材とは、グラファイト結晶構造の発達した炭素材のことであり、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。これらは、鱗片形状でも良く、また球状に加工する球形化の処理が施されていても良い。人造黒鉛は石油、石炭ピッチ、コークス等を原料にしてアチソン炉や黒鉛ヒーター炉等で2000℃~3000℃、もしくはそれ以上の熱処理を行うことで作製される。X線回折によるd(002)面間隔は0.338nm以下であることが好ましく、c軸方向の結晶の厚さ(Lc(002))は30nm~1000nmが好ましい。
【0038】
非晶質炭素材とは、グラファイト結晶構造が発達していない炭素材であって、アモルファスまたは微結晶で乱層構造な状態の炭素であり、より具体的にはX線回折によるd(002)面間隔が0.342nm以上であることを意味する。非晶質炭素材としては、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭などが挙げられる。これらの製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂または樹脂組成物を炭化処理することで得られ、フェノール系の熱硬化性樹脂やポリアクリロニトリルなどの熱可塑性樹脂、石油系または石炭系のタールやピッチなどを用いることができる。また、例えばカーボンブラックは、原料となる炭化水素を熱分解することにより得られ、熱分解法としては、サーマル法、アセチレン分解法等が挙げられる。不完全燃焼法としては、コンタクト法、ランプ・松煙法、ガスファーネス法、オイルファーネス法等が挙げられる。これらの製造方法により生成されるカーボンブラックの具体例としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等がある。また、これらの非晶質炭素材は、表面が更に別の非晶質や不定形の炭素で被覆されていても良い。
【0039】
また、非晶質炭素材は、黒鉛系炭素材の表面に固着した状態で存在するのが好ましい。ここで固着しているとは、化学的/物理的に結合している状態であり、負極活物質を水や有機溶剤中で攪拌しても黒鉛系炭素材と非晶質炭素材が遊離しないことを意味する。黒鉛系炭素材表面に、黒鉛系炭素材と比較して、反応面積が大きく、多配向の組織構造を有する非晶質炭素材を固着させることで、非晶質炭素材表面に反応過電圧が低い被膜が形成されるため、黒鉛系炭素材全体のLi挿入/脱離反応に対する反応過電圧が低下すると考えられる。さらに、非晶質炭素材は黒鉛系炭素材に比較して貴な反応電位をもつため、正極から溶出した第5族/第6族元素と優先的に反応し、非晶質炭素材表面によりリチウムイオン透過性に優れた良質な被膜が形成されるため、黒鉛系炭素材全体のLi挿入/脱離反応に対する反応抵抗がさらに低下すると考えられる。
【0040】
黒鉛系炭素材料と非晶質炭素材の比率は、特に限定されないが、Li吸蔵性に優れる非晶質炭素材の割合が多いほうが好ましく、非晶質炭素材の割合は活物質中の0.5質量%以上、より好ましくは、2質量%以上が好ましい。但し、非晶質炭素材が過剰になると、黒鉛表面に均一に固着出来なくなるため、この点を考慮して上限を定めることが好ましい。
【0041】
黒鉛系炭素材に非晶質炭素材を固着する方法としては、非晶質炭素材に石油系または石炭系のタールやピッチなどを加えて黒鉛系炭素材と混合した後に熱処理する方法や、黒鉛粒子と固体の非晶質炭素材との間に圧縮剪断応力を加えて被覆するメカノフージョン法や、スパッタリング法等により被覆する固相法、非晶質炭素材をトルエン等の溶剤に溶解させて黒鉛を浸漬したのち熱処理する液相法等がある。
【0042】
非晶質炭素材の一次粒子径は、Liの拡散距離の観点から小さいことが好ましく、また、比表面積は、Li吸蔵反応に対する反応表面積が大きくなるため、大きいほうが好ましい。しかしながら、大きすぎると表面での過剰な反応が生じ抵抗の増加につながる。このため、非晶質炭素材のBET比表面積は5m/g~200m/gが好ましい。過剰な比表面積を低減させることからも、一次粒子径は20nm~1000nmが好ましく、より好ましくは40nm~100nmであり、粒子内に空洞が存在する中空構造でないことが好ましい。
【0043】
また、SiやSn等のリチウムと合金化する金属、合金材料又は金属複合酸化物等としては、SiO(0.5≦x≦1.6)で表される酸化ケイ素等のSiを含有するケイ素化合物が好ましい。負極活物質の中心粒子径(D50)は、例えば5μm~30μmである。
【0044】
結着材としては、正極の場合と同様にフッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いることができる。水系溶媒を用いて負極合材スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA-Na、PAA-K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0045】
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いることもできる。
【0046】
[電解液]
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解した電解質塩とを含む。溶媒は、例えば非水溶媒である。非水溶媒には、例えばエーテル類、ニトリル類、カーボネート類、エステル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。エーテル類としては、例えば、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、O-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類等が挙げられる。ニトリル類の例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類が挙げられる。エステル類としては、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の鎖状カルボン酸エステル;及び、γ-ブチロラクトン(GBL)、γ-バレロラクトン(GVL)等の環状カルボン酸エステル等が挙げられる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。ハロゲン置換体の例としては、例えば、4-フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、メチル3,3,3-トリフルオロプロピオネート(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0047】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩には、従来の二次電池において支持塩として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiC(CSO)、LiCFCO、Li(P(C)F)、Li(P(C)F)、LiPF6-x(CF2n+1(1≦x≦6、nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C))[リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)]、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(FSO、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l、mは1以上の整数}等のイミド塩類、Liα(xは1~4の整数、yは1又は2、zは1~8の整数、αは1~4の整数)等が挙げられる。これらの中では、LiPFやLiα(xは1~4の整数、yは1又は2、zは1~8の整数、αは1~4の整数)等が好ましい。Liαとしては、例えばモノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【実施例
【0048】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
[正極の作製]
第1正極活物質として、BET比表面積が1.8m/gの中空状のLiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるリチウム金属複合酸化物粒子を用いた。第1正極活物質と、ポリフッ化ビニリデンと、カーボンブラックとを、90:3:7の固形分質量比で混合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、第1正極合材スラリーを調製した。次に、第1正極合材スラリーを厚み15μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させて第1正極合材層(未圧縮状態)を形成した。第1正極活物質のBET比表面積は、他の成分と混合される前にMacsorb社のHM model-1201を用いて測定した。以下において、第2正極合材層のBET比表面積についても第1正極合材層の場合と同様に測定した。
【0050】
次に、第2正極活物質として、BET比表面積が1.3m/gのLiNi0.35Co0.35Mn0.30で表されるリチウム金属複合酸化物粒子を用いた第2正極合材スラリーを調製した。上述の第1正極合材スラリーの調整において、第1正極活物質を第2正極活物質に置き換えた以外は同様にして第2正極合材スラリーを調整した。調整した第2正極合材スラリーを第1正極合材層の表面に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、第1正極合材層の表面の全域に第2正極合材層を形成した。ローラを用いて乾燥した塗膜を圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、方形状の正極芯体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。なお、正極の端部に正極芯体露出部を設けた。
【0051】
正極合材層を圧縮する工程では、圧縮後の正極合材層の充填密度が2.4g/cmとなるように圧縮条件を調製した。圧縮後の第1正極合材層及び第2正極合材層の厚みは、それぞれ40μm、5μmであった。
【0052】
[負極の作製]
中心粒子径が15μmの黒鉛と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを、98:1:1の固形分質量比で混合し、水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、当該負極合材スラリーを厚み10μmの銅箔からなる負極芯体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。ローラを用いて乾燥した塗膜を充填密度が1.2g/cmとなるように圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、方形状の負極芯体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。なお、負極の端部に負極芯体露出部を設けた。
【0053】
[電極体の作製]
上記正極及び上記負極を、厚み20μmの帯状のポリプロピレン製のセパレータを介して巻回した後、巻回体を径方向にプレスして扁平状に成形し、巻回型の電極体を作製した。巻回体は、セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に重ね合わせたものを、円筒状の巻芯に巻き付けて形成した(2枚のセパレータには同じものを用いた)。また、正極及び負極を、それぞれの芯体露出部が互いに巻回体の軸方向反対側に位置するように巻回した。
【0054】
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、25:35:40の体積比(25℃、1気圧)で混合した。当該混合溶媒にLiPFを1mol/Lの濃度で、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)を0.1mol/Lの濃度で、ジフルオロリン酸リチウムを0.05mol/Lの濃度でそれぞれ溶解させ、さらに電解液の総質量に対して0.8質量%のビニレンカーボネート(VC)を添加して電解液を調製した。
【0055】
[二次電池の作製]
上記電極体、上記電解液、及び角形の電池ケースを用いて、二次電池(角形電池)を作製した。電池ケースを構成する封口板に正極端子を取り付けると共に、正極端子に正極集電体を接続した。また、封口板に負極端子を取り付けると共に、負極端子に負極集電体を接続した。そして、正極の芯体露出部に正極集電体を、負極の芯体露出部に負極集電体をそれぞれ溶接した。封口板と一体化された電極体を、箱状に成形した絶縁シート内に配置した状態で、電池ケースを構成する角形有底筒状の外装缶(横方向長さ148.0mm(内寸146.8mm)、厚み17.5mm(内寸16.5mm)、高さ65.0mm(内寸64.0mm))内に収容し、外装缶の開口部を封口板で塞いだ。封口板の電解液注液孔から、35gの電解液を注液した後、電極体に電解液を十分浸漬させたのち、仮性充電を行い、注液孔に封止栓を取り付けて、二次電池(電池容量:5Ah)を得た。
【0056】
<実施例2~4、比較例1~4>
実施例2~4及び比較例1~4は、第1正極合材層の厚み(T1)、第2正極合材層の厚み(T2)、第1正極合材層のBET比表面積(S1)、第2正極合材層のBET比表面積(S2)をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。
【0057】
実施例・比較例の各二次電池について、下記の方法により、初期出力及び大気暴露試験後の出力の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0058】
[初期出力の評価]
作製した当日の正極を用いて二次電池を作製した。その後、各二次電池を、25℃の温度環境において充電深度(SOC)が50%となるまで充電した。次に、25℃の温度環境において、放電終止電圧を3.0Vとしたときの10秒間に放電可能な最大電流値を測定し、SOCが50%における出力値を下記の式により求めた。初期出力が1045W以上であれば◎、1045W未満1010W以上であれば〇、1010W未満を△と評価した。
出力値(W)=最大電流値(A)×放電終止電圧(3.0V)
【0059】
[大気暴露試験後の出力の評価]
作製した正極を温度30℃、湿度50%の恒温槽で10日間保管した後、当該正極を用いて二次電池を作製した。その後、初期出力の評価と同様の方法で大気暴露後出力を測定し、大気暴露試験後の出力維持率(大気暴露後出力/初期出力)を算出した。出力維持率が93%以上であれば〇、93%未満は△とした。
【0060】
初期出力結果と大気暴露試験後の出力維持率結果から、初期出力が◎かつ出力維持率が〇の場合は総合評価は◎とした。初期出力が◎かつ出力維持率が△の場合は総合評価は×とした。初期出力が〇かつ出力維持率が〇の場合は総合評価は〇とした。初期出力が△かつ出力維持率が〇の場合は総合評価は×とした。
【0061】
【表1】
T1:第1正極合材層の厚み
T2:第2正極合材層の厚み
S1:第1正極合材層のBET比表面積
S2:第2正極合材層のBET比表面積
【0062】
表1に示すように、第2正極合材層の厚みを5μmよりも薄くした比較例1、3の二次電池は、正極の大気暴露による出力低下が十分抑制されず、実施例の二次電池と比べて出力維持率が劣った。また、第2正極合材層の厚みを15μmよりも厚くした比較例2、4の二次電池は、実施例の二次電池と比べて初期出力が劣った。
【0063】
これに対し、実施例の二次電池はいずれも、比較例の二次電池と比べて、十分な初期出力を得つつ正極の大気暴露による出力低下を抑制することができた。実施例の二次電池では、BET比表面積が1.6m/g~2.8m/gの第1正極活物質を含む第1正極合材層と、第1正極合材層の表面にBET比表面積が0.8m/g~1.3m/gの第2正極活物質を含み、厚みが5μm~15μmである第2正極合材層とを有することで、正極の大気暴露による出力低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 角形外装体、2 封口板、3 電極体、4a,5a 芯体露出部、4 正極、6 正極集電体、7 正極端子、7a,9a 鍔部、8 負極集電体、9 負極端子、10,12 内部側絶縁部材、11,13 外部側絶縁部材、14 絶縁シート、15 ガス排出弁、16 電解液注液孔、17 封止栓、40 正極芯体、41 正極合材層、42 第1正極合材層、43 第2正極合材層、100 二次電池、200 電池ケース
図1
図2
図3