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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】回転子冷却構造およびタービン発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220602BHJP
   H02K 19/26 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
H02K9/06 B
H02K19/26 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019105395
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020198761
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩永 康太
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-104206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0214816(US,A1)
【文献】特開2010-142090(JP,A)
【文献】特開2016-052221(JP,A)
【文献】特開平3-245751(JP,A)
【文献】特開2017-175788(JP,A)
【文献】実開昭57-065568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
H02K 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に設けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心の径方向外側部分を貫通し前記回転子鉄心の軸方向の両外側に突出し前記ロータシャフトの外側表面との間に環状空間を形成する回転子巻線端部構造を含む回転子巻線とを有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して前記回転子鉄心を囲むように配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、
前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、
前記ロータシャフトの軸方向の両側を回転可能に支持する結合側軸受および反結合側軸受と、
冷却用気体を冷却する冷却管と前記冷却管を収納する冷却器カバーとを有する冷却器と、
励磁機、回転整流器、および、前記励磁機および前記回転整流器を収納して前記冷却器カバーおよび前記フレームと相まって閉空間を形成する励磁装置カバーとを有し、中心孔導体構造を介して前記回転子巻線に直流電力を供給する励磁装置と、
前記ロータシャフトに取り付けられて前記冷却用気体を前記閉空間内で循環させる内扇と、
を備えるタービン発電機の前記回転子を冷却する回転子冷却構造であって、
前記回転子冷却構造は、
前記ロータシャフトの反結合側のシャフト端部から回転軸に沿って形成され、前記中心孔導体構造を収納する中心孔と、
前記ロータシャフトの前記中心孔導体構造の側部に形成されて、前記中心孔導体構造により分割された前記中心孔内の軸方向外側空間と軸方向内側空間とを互いに連通させる複数の導体側部流路と、
前記軸方向内側空間と前記環状空間とを連通する複数の巻線端部側流路と、
を有することを特徴とする回転子冷却構造。
【請求項2】
前記複数の導体側部流路は、互いに回転軸に関して対称に形成され、
前記複数の巻線端部側流路は、互いに回転軸に関して対称に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子冷却構造。
【請求項3】
前記複数の導体側部流路は、それぞれ、前記中心孔導体構造の側部から前記ロータシャフトの前記シャフト端部まで延びるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転子冷却構造。
【請求項4】
前記シャフト端部における前記中心孔の入口には、前記回転子巻線への異物侵入防止用の入口メッシュが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の回転子冷却構造。
【請求項5】
軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に設けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心の径方向外側部分を貫通し前記回転子鉄心の軸方向の両外側に突出し前記ロータシャフの外側表面との間に環状空間を形成する回転子巻線端部構造を含む回転子巻線とを有する回転子と、
前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して前記回転子鉄心を囲むように配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、
前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、
前記ロータシャフトの軸方向の両側を回転可能に支持する結合側軸受および反結合側軸受と、
冷却用気体を冷却する冷却管と前記冷却管を収納する冷却器カバーとを有する冷却器と、
励磁機、回転整流器、および、前記励磁機および前記回転整流器を収納して前記冷却器カバーおよび前記フレームと相まって閉空間を形成する励磁装置カバーとを有し、中心孔導体構造を介して前記回転子巻線に直流電力を供給する励磁装置と、
前記ロータシャフトに取り付けられて前記冷却用気体を前記閉空間内で循環させる内扇と、
前記回転子を冷却する回転子冷却構造と、
を備えるタービン発電機であって、
前記回転子冷却構造は、
前記ロータシャフトの反結合側のシャフト端部から回転軸に沿って形成され、前記中心孔導体構造を収納する中心孔と、
前記ロータシャフトの前記中心孔導体構造の側部に形成されて、前記中心孔導体構造により分割された前記中心孔内の軸方向外側空間と軸方向内側空間とを互いに連通させる複数の導体側部流路と、
前記軸方向内側空間と前記環状空間とを連通する複数の巻線端部側流路と、
を有することを特徴とするタービン発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子冷却構造およびそれを有するタービン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン発電機においては、回転子に界磁形成用の回転子巻線を設け、界磁を形成する直流の励磁電流を調整することにより力率を調整する場合が多い。また、回転子巻線に直流電力を供給する上で、ブラシを介して回転子の外部から供給する方式と、回転子の端部付近に整流器を含む励磁装置を設けて供給する方式があり、後者のブラシレス方式も多く採用されている。
【0003】
励磁用の直流電力は、たとえば、ロータシャフト内部にある中心孔導体を介して回転子巻線に供給される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-118739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転子巻線に電流が流れることによって、抵抗損による熱、すなわちジュール熱が発生する。この発熱が主な原因で、たとえば、温度上昇により回転子のバランスが変化してサーマル振動を生ずる、あるいは、発電効率の低下をもたらす、などの問題が生ずる場合がある。また、ロータシャフト内部にある中心孔導体の発熱が大きい場合には回転するロータシャフトのバランスへの影響も出てくることになる。
【0006】
そこで、本発明は、回転子の温度上昇を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明に係る回転子冷却構造は、軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に設けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心の径方向外側部分を貫通し前記回転子鉄心の軸方向の両外側に突出し前記ロータシャフトの外側表面との間に環状空間を形成する回転子巻線端部構造を含む回転子巻線とを有する回転子と、前記ロータシャフトの軸方向の両側を回転可能に支持する結合側軸受および反結合側軸受と、前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して前記回転子鉄心を囲むように配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、冷却用気体を冷却する冷却管と前記冷却管を収納する冷却器カバーとを有する冷却器と、励磁機、回転整流器、および、前記励磁機および前記回転整流器を収納して前記冷却器カバーおよび前記フレームと相まって閉空間を形成する励磁装置カバーとを有し、中心孔導体構造を介して前記回転子巻線に直流電力を供給する励磁装置と、前記ロータシャフトに取り付けられて前記冷却用気体を前記閉空間内で循環させる内扇と、を備えるタービン発電機の前記回転子を冷却する回転子冷却構造であって、前記ロータシャフトは、反結合側のシャフト端部から回転軸に沿って形成され、前記中心孔導体構造を収納する中心孔を有し、前記回転子冷却構造は、前記ロータシャフトの前記中心孔導体構造の側部に形成されて、前記中心孔導体構造により分割された前記中心孔内の軸方向外側空間と軸方向内側空間とを互いに連通させる複数の導体側部流路と、前記軸方向内側空間と前記環状空間とを連通する複数の巻線端部側流路と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るタービン発電機は、軸方向に延びたロータシャフトと、前記ロータシャフトの径方向外側に設けられた回転子鉄心と、前記回転子鉄心の径方向外側部分を貫通し前記回転子鉄心の軸方向の両外側に突出し前記ロータシャフの外側表面との間に環状空間を形成する回転子巻線端部構造を含む回転子巻線とを有する回転子と、前記ロータシャフトの軸方向の両側を回転可能に支持する結合側軸受および反結合側軸受と、前記回転子鉄心の径方向外側に空隙を介して前記回転子鉄心を囲むように配された固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回された固定子巻線とを有する固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子を収納するフレームと、冷却用気体を冷却する冷却管と前記冷却管を収納する冷却器カバーとを有する冷却器と、励磁機、回転整流器、および、前記励磁機および前記回転整流器を収納して前記冷却器カバーおよび前記フレームと相まって閉空間を形成する励磁装置カバーとを有し、中心孔導体構造を介して前記回転子巻線に直流電力を供給する励磁装置と、前記ロータシャフトに取り付けられて前記冷却用気体を前記閉空間内で循環させる内扇と、前記回転子を冷却する回転子冷却構造と、を備えるタービン発電機であって、前記回転子冷却構造は、前記ロータシャフトの反結合側のシャフト端部から回転軸に沿って形成され、前記中心孔導体構造を収納する中心孔と、前記ロータシャフトの前記中心孔導体構造の側部に形成されて、前記中心孔導体構造により分割された前記中心孔内の軸方向外側空間と軸方向内側空間とを互いに連通させる複数の導体側部流路と、前記軸方向内側空間と前記環状空間とを連通する複数の巻線端部側流路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転子の温度上昇を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るタービン発電機の構成を示す縦断面図である。
図2】第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の構成を示す上半部分の縦断面図である。
図3】第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置および回転子冷却構造の構成を示す上半部分の縦断面図である。
図4】第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示し、A部は図5のIVa-IVa線矢視縦断面図、B部は図6のIVb-IVb線矢視縦断面図である。
図5】第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す図4のV-V線矢視横断面図である。
図6】第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す図4のVI-VI線矢視横断面図である。
図7】第2の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す縦断面図である。
図8】第2の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す図7のVIII-VIII線矢視横断面図である。
図9】第2の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す図7のIX-IX線矢視横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転子冷却構造およびタービン発電機について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るタービン発電機の構成を示す縦断面図である。
【0013】
タービン発電機100は、回転子10、固定子20、フレーム30、結合側軸受31、反結合側軸受32、結合側軸受ブラケット35、反結合側軸受ブラケット36、冷却器40、励磁装置50、および回転子冷却構造60(図3)を有する。
【0014】
回転子10は、回転軸方向に延びたロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向外側に設けられた回転子鉄心12と、回転子鉄心12を貫通する回転子巻線13を有する。ここで、回転子鉄心12は、たとえば積層された電磁鋼板(図示せず)がロータシャフト11に取り付けられていることでもよい。あるいは、回転子鉄心12は、たとえば円柱状の素材からの削り出しにより、ロータシャフト11と一体で製作されることでもよい。この場合は、ロータシャフト11の軸方向の中央付近で、径が大きくなっている部分が積層された電磁鋼板に対応する部分であり、回転子鉄心12は、このような場合も含むものとする。
【0015】
回転子鉄心12の径方向の表面近傍の部分には、周方向に互いに間隔をおいて軸方向に貫通する複数のスロット(図示せず)が形成されている。回転子巻線13の回転子巻線導体13a(図3)は、これら複数のスロット内に収納され、さらに、回転子鉄心12の軸方向の両側に突出し、互いに接続され、あるいは励磁装置50側と接続している。回転子巻線13の突出部分は互いに並列に整線されて、回転子巻線端部構造13b(図3)を形成する。
【0016】
ロータシャフト11の一方の端部には、蒸気タービンやガスタービンなどの原動機との結合のためのカップリング部11aが設けられている。以下、タービン発電機100において、カップリング部11aに向かう方向を結合側、その反対側に向かう方向を反結合側と呼ぶものとする。
【0017】
ロータシャフト11には、後述するように、中心孔61(図3)が形成されている。ロータシャフト11は、結合側軸受31および反結合側軸受32により回転可能に支持されている。ロータシャフト11の、結合側軸受31と回転子鉄心12との間の部分、および反結合側軸受32と回転子鉄心12との間の部分には、それぞれロータシャフト11の回転とともに回転する内扇15a、15bが取り付けられている。内扇15a、15bのそれぞれの径方向の外側には、これとギャップを空けて、径方向外側に向かってフレーム30の内面にまで拡がった内扇ガイド15c、15dが設けられている。内扇ガイド15c、15dはそれぞれ、内扇15a、15bへの冷却用気体の吸込み側の空間と内扇15a、15bからの吐出側の空間とを区画している。
【0018】
固定子20は、回転子鉄心12の径方向外側に空隙18を介して回転子鉄心12を囲むように配された円筒形状の固定子鉄心21と、複数の固定子巻線22とを有する。
【0019】
固定子鉄心21の径方向内側部分には、周方向に互いに間隔をおいて軸方向に延びた複数のスロット(図示せず)が形成されている。複数の固定子巻線22は、この複数のスロット内に布設されている。複数の固定子巻線22は、固定子鉄心21の軸方向の両側に突出し、互いに接続されあるいは外部ケーブルと接続されることにより、固定子鉄心21に巻回される。
【0020】
固定子鉄心21は、複数の電磁鋼板が軸方向の両側に配されて軸方向の両側から複数の電磁鋼板を締め付けるクランパ23を有する。クランパ23は、それぞれ径方向に拡がる環状の区画板24を介してフレーム30により支持されている。区画板24は、固定子20から流出する冷却用気体が冷却器40に流入する流路を形成する。
【0021】
フレーム30は、固定子20の径方向外側を囲むように配され、固定子20および回転子鉄心12を収納する。フレーム30の軸方向の両側の端部には、それぞれ、結合側軸受ブラケット35および反結合側軸受ブラケット36が取り付けられている。結合側軸受ブラケット35および反結合側軸受ブラケット36はそれぞれ、結合側軸受31および反結合側軸受32を静止支持している。
【0022】
冷却器40は、冷却管41および冷却器カバー42を有する。冷却管41の内側を、たとえば冷却水あるいは外気などの冷却媒体が流れ、冷却管41の外側を、機内の冷却用の冷却用気体が流れる。冷却器カバー42は、冷却管41を収納する。
【0023】
冷却器カバー42内の空間と、フレーム30内の空間は、冷却器入口開口43および2つの冷却器出口開口44を介して連通している。冷却器入口開口43は、固定子20の上方に形成されている。2つの冷却器出口開口44は、冷却器入口開口43の軸方向の両側に配されており、それぞれの内扇15a、15bの吸込み側に通じている。
【0024】
励磁装置50は、回転子巻線13に直流電力を供給する。励磁装置50は、反結合側軸受32より軸方向の外側に設けられている。後述するように、励磁装置50は、ロータシャフト11に取り付けられた部分と、静止支持された部分からなる。励磁装置50は、励磁装置カバー58内に収納されている。励磁装置カバー58内の空間は、励磁装置入口ダクト59aを介して冷却器カバー42内の空間と連通している。また、励磁装置カバー58内の空間は、励磁装置出口ダクト59bを介してフレーム30内の空間と連通している。
【0025】
このように、フレーム30内の空間、冷却器カバー42内の空間、および励磁装置カバー58内の空間は全体として、冷却用気体を収納し冷却用気体が循環する閉空間100aを構成する。図1において、白抜き矢印Cは、冷却用気体の流れの方向を概念的に示している。
【0026】
それぞれの内扇15a、15bにより駆動された冷却用気体は、回転子鉄心12、回転子巻線13および固定子20を冷却した後に、冷却器入口開口43から冷却器40に流入する。冷却器40に流入した冷却用気体は、冷却管41の外側を流れながら、冷却管41の内部を流れる冷却媒体によって冷却される。冷却された冷却用気体は、軸方向の両側に分かれ、それぞれの冷却器出口開口44からフレーム30内の内扇15a、15bの吸い込み側に流入し、再び、内扇15により駆動される。
【0027】
ここで、反結合側の流れについては、冷却器40から流出する冷却用気体の一部は、励磁装置入口ダクト59aを経由して、励磁装置カバー58内に流入し、励磁装置50を冷却した後に、励磁装置出口ダクト59bを介して、フレーム30内の内扇15bの吸い込み側に流入し、冷却器40から直接流入する冷却用気体と合流する。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の構成を示す上半部分の縦断面図である。
【0029】
励磁装置50は、励磁機51および回転整流器52を有する。励磁機51は、励磁機回転子51aおよび励磁機固定子51bを有する。
【0030】
励磁機回転子51aおよび回転整流器52は、ロータシャフト11に取り付けられ、ロータシャフト11とともに回転する。励磁機固定子51bは、励磁機回転子51aの径方向の外側に、空隙をあけて、励磁機回転子51aを囲むように配されている。
【0031】
回転整流器52は、軸方向に、反結合側軸受ブラケット36に支持された反結合側軸受32と励磁機51との間に配されている。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置および回転子冷却構造の構成を示す上半部分の縦断面図である。
【0033】
回転子冷却構造60は、中心孔61、導体側部流路62、巻線端部側流路63、および環状空間65を有する。
【0034】
中心孔61は、断面が円形で、ロータシャフト11に、その回転軸と同軸に形成された空洞である。中心孔61は、ロータシャフト11の反結合側の端部であるシャフト端部11fから、軸芯に沿って、回転子巻線端部構造13bの近傍の軸方向位置まで形成されている。したがって、中心孔61は、シャフト端部11fから、反結合側軸受32および内扇15bの軸方向位置を超えてさらに軸方向の内側まで延びている。この中心孔61は、回転子冷却構造60の構成要素となっている。
【0035】
中心孔61の内部には、励磁装置50の一部を構成する円柱形状の中心孔導体構造55が収納されている。中心孔導体構造55は、後に、図4を引用しながら説明するが、円柱状または中空円柱状の中心孔導体55a(図4)と、その周囲を囲む絶縁体を有する。中心孔導体55aは、例えば銅、アルミニウムあるいはこれらを主体とする合金などの電気的な良導体を用いる。
【0036】
中心孔導体構造55の外径は、中心孔61の内径に対応し、微小な間隙をもって中心孔61に納められている。中心孔導体構造55の軸方向外側部分の端部近傍は、整流器側ボルト54に電気的に接続されており、整流器側ボルト54は、回転整流器52と整流器側接続導体53によって電気的に接続されている。
【0037】
また、中心孔導体構造55の軸方向内側部分の端部近傍は、回転子巻線側ボルト56に電気的に接続されており、回転子巻線側ボルト56は、回転子巻線側接続導体57を介して、回転子巻線13と電気的に接続されている。
【0038】
上述の構造により、回転整流器52で生成された直流電力が、整流器側接続導体53、整流器側ボルト54、中心孔導体55a、回転子巻線側ボルト56および回転子巻線側接続導体57を介して、回転子巻線13に供給される経路が確保される。
【0039】
中心孔61には、上述のように中心孔導体構造55が収納されているため、中心孔61内の空間は、中心孔導体構造55からみて、回転子巻線13から遠い軸方向外側空間61aと、回転子巻線13に近い軸方向内側空間61bとに分割される。
【0040】
回転子冷却構造60の導体側部流路62については、図4ないし図6を参照しながら詳細を説明するが、中心孔導体構造55が設けられている軸方向領域とその両側において、ロータシャフト11の中心孔61が、周方向の一部の領域で径方向外側に拡がるようにして形成されている。この結果、軸方向外側空間61aと軸方向内側空間61bは、導体側部流路62によって互いに連通している。
【0041】
回転子冷却構造60の巻線端部側流路63は、軸方向内側空間61bと、環状空間65とを連通するように、軸方向内側空間61bから、ロータシャフト11の径方向外側表面にまで延びている。なお、巻線端部側流路63は、周方向の2か所に形成されており、ロータシャフト11の回転軸に対して互いに対称に形成されている。
【0042】
回転子冷却構造60の環状空間65は、ロータシャフト11の径方向外側表面と回転子巻線端部構造13bの径方向内側との間の空間である。環状空間65は、内扇15bの吐出側の下流側である。また、環状空間65は、回転子鉄心12において、回転子巻線導体13aが収納されている回転子スロットの径方向の内側に冷却用気体の流路として形成された回転子鉄心内流路13cに連通している。
【0043】
ロータシャフト11のシャフト端部11fの中心孔61の入口には、中心孔導体構造55および回転子巻線13への異物の侵入を防止するために、入口メッシュ64が取り付けられている。
【0044】
図4は、第1の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示し、A部は図5のIVa-IVa線矢視縦断面図、B部は図6のIVb-IVb線矢視縦断面図である。図5は、図4のV-V線矢視横断面図、図6は、図4のVI-VI線矢視横断面図である。なお、図4では、中心孔導体構造55の長手方向の中央部分の図示を省略している。ここで、A部は、中心孔導体構造55が回転子冷却構造60の軸方向外側空間61aに面している側の部分を、また、B部は、中心孔導体構造55が回転子冷却構造60の軸方向内側空間61bに面している側の部分を示す。
【0045】
中心孔導体構造55は、前述のように中心孔61内に収納されており、円筒状の絶縁円筒55bと、その両側に取り付けられた絶縁端板55c、55dと、その内部に収納された中心孔導体55aを有する。中心孔導体55aは、中心線を含む平面に沿った絶縁区画板55mにより2つの周方向領域に二分割されている。
【0046】
A部については、それぞれの周方向領域において、中心孔導体構造55には、整流器側ボルト54(図3)の軸方向および周方向位置に対応する位置に、軸芯に向かって貫通孔55gが形成されている。それぞれの周方向領域における貫通孔55gは、互いにロータシャフト11の回転軸について互いに対称となるように形成されている。また、ロータシャフト11にも、中心孔導体構造55のそれぞれの貫通孔55gと中心軸を同一にして貫通孔11gが形成されている。
【0047】
B部については、それぞれの周方向領域において、中心孔導体構造55には、回転子巻線側ボルト56(図3)の軸方向および周方向位置に対応する位置に、軸芯に向かって貫通孔55hが形成されている。それぞれの周方向領域における貫通孔55hは、互いにロータシャフト11の回転軸について互いに対称となるように形成されている。また、ロータシャフト11にも、中心孔導体構造55のそれぞれの貫通孔55hと中心軸を同一にして貫通孔11hが形成されている。
【0048】
ロータシャフト11の絶縁円筒55bの径方向外側には、互いに周方向に反対側に配され、それぞれ周方向に拡がり、かつ、軸方向に絶縁円筒55bの軸方向の位置の両端より広い領域に延びた2つの導体側部流路62が形成されている。言い換えれば、中心孔61が、この部分は径方向外側に拡がっている。2つの導体側部流路62は、ロータシャフト11の回転軸に関して互いに対称の位置に形成されている。ここで、図4では、窪み状に形成されている流体側部流路62を、横方向のハッチングにより示している。
【0049】
なお、図4においては、A部について示された導体側部流路62とB部について示された導体側部流路62は、それぞれ図5および図6で設定された矢視方向の断面図であるので、ぞれぞれの周方向位置(図4では上下方向位置)が互いにずれているように示されているが、図5および図6に示されるように、互いに同一の周方向位置で軸方向に沿って直線的に形成されている。
【0050】
以上のように形成された本実施形態におけるタービン発電機100の作用を以下に説明する。
【0051】
まず、図2および図3を用いて、励磁電流の供給について説明する。
【0052】
励磁機固定子51bに直流電流が供給されると、それにより形成される磁場内を回転する励磁機回転子51aの巻線に交流電流が流れる。この交流電流は、回転整流器52によって整流されて直流電流となる。この直流電流による直流電力は、図3に示すように整流器側接続導体53および整流器側ボルト54を介して、中心孔導体55aに流れる。中心孔導体55aから回転子巻線側ボルト56および回転子巻線側接続導体57を介して、回転子巻線13に供給される。
【0053】
この結果、中心孔導体構造55の中心孔導体55aおよび回転子巻線13には、抵抗損であるジュール熱が発生する。
【0054】
次に、回転子冷却構造60の作用について説明する。
【0055】
図1を引用しながら説明したように、冷却器40から流出する冷却用気体の一部が、励磁装置入口ダクト59aを介して励磁装置カバー58内に流入し、励磁装置50を冷却した後に励磁装置出口ダクト59bを介してフレーム30内に還流する。励磁装置カバー58内に流入した冷却用気体の一部は、図3に示す構成により、ロータシャフト11のシャフト端部11fに設けられた入口メッシュ64を通過して、ロータシャフト11に形成された中心孔61内に流入する。
【0056】
中心孔61内に流入した冷却用気体は、中心孔61内の軸方向外側空間61aから、中心孔導体構造55の径方向外側のロータシャフト11に形成された導体側部流路62に入り、さらに、中心孔61内の軸方向内側空間61bに流出する。その後、軸方向内側空間61bから巻線端部側流路63を経由して、環状空間65に流出する。
【0057】
この環状空間65に流出した冷却用気体は、内扇15bにより駆動されて環状空間65に流入する冷却用気体と合流し、回転子鉄心12に形成された冷却用の流路に流入する。
【0058】
以上のように、本実施形態による回転子冷却構造60により、中心孔導体55aの冷却が確実になされる。また、励磁装置カバー58に流入する冷却用の気体について、励磁機51および回転整流器52の冷却に用いられる流れとは別に、ロータシャフト11に形成された中心孔61等を介して直接に回転子巻線13を冷却する冷却用気体の経路が確保され、回転子巻線13の冷却が確実になされる。この結果、回転子10の温度上昇の低減を図ることができる。
【0059】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係るタービン発電機の励磁装置の中心孔導体構造および回転子冷却構造の構成を示す縦断面図である。図8は、図7のVIII-VIII線矢視横断面図、図9は、図7のIX-IX線矢視横断面図である。
【0060】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、回転子冷却構造60の導体側部流路62aは、互いに周方向に等しい間隔をあけて形成された8つの流路を有する。また、本実施形態においては、導体側部流路62aは、中心孔導体構造55の側部からロータシャフト11のシャフト端部11fまで延びるように形成されている。すなわち、シャフト端部11fまで、同一断面形状で連続して形成されている。この点以外は、第1の実施形態と同様である。なお、図7で、窪み状に形成されている流体側部流路62aを、横方向のハッチングにより示している。
【0061】
それぞれの流路の断面形状は、周方向に拡がり、角部が丸くなっている。なお、それぞれの流路が、中心軸に対して対称の対からなるように構成されていれば、8つに限定する必要は無く、8つ未満でもよいし、9つ以上でもよい。また、形状も、たとえば、三角形やその他の多角形であってもよい。
【0062】
以上のように形成された本第2の実施形態による回転子冷却構造60においては、ロータシャフト11の端部から導体側部流路62aを形成するため、第1の実施形態と同様の効果を有する。また、シャフト端部11fから連続して加工することから、製作手順が単純化される。また、導体側部流路62aのそれぞれの断面の大きさが小さいことから、偏芯を生ずる可能性が低くなり、かつ、偏芯を生じた場合の調整もしやすくなる。
【0063】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0064】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第1の実施形態における導体側部流路62を、第2の実施形態と同様に、シャフト端部11fまで延びるように形成しても良い。
【0065】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0066】
10…回転子、11…ロータシャフト、11a…カップリング部、11f…シャフト端部、11g、11h…貫通孔、12…回転子鉄心、13…回転子巻線、13a…回転子巻線導体、13b…回転子巻線端部構造、13c…回転子鉄心内流路、15a、15b…内扇、15c、15d…内扇ガイド、18…空隙、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、23…クランパ、24…区画板、30…フレーム、31…結合側軸受、32…反結合側軸受、35…結合側軸受ブラケット、36…反結合側軸受ブラケット、40…冷却器、41…冷却管、42…冷却器カバー、43…冷却器入口開口、44…冷却器出口開口、50…励磁装置、51…励磁機、51a…励磁機回転子、51b…励磁機固定子、52…回転整流器、53…整流器側接続導体、54…整流器側ボルト、55…中心孔導体構造、55a…中心孔導体、55b…絶縁円筒、55c、55d…絶縁端板、55g、55h…貫通孔、55m…絶縁区画板、56…回転子巻線側ボルト、57…回転子巻線側接続導体、58…励磁装置カバー、59a…励磁装置入口ダクト、59b…励磁装置出口ダクト、60…回転子冷却構造、61…中心孔、61a…軸方向外側空間、61b…軸方向内側空間、62、62a…導体側部流路、63…巻線端部側流路、64…入口メッシュ、65…環状空間、100…タービン発電機、100a…閉空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9