(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20220602BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20220602BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20220602BHJP
H01M 8/2432 20160101ALI20220602BHJP
H01M 8/247 20160101ALI20220602BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20220602BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20220602BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/0273
H01M8/2432
H01M8/247
H01M8/2483
H01M8/0276
(21)【出願番号】P 2019137409
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-317490(JP,A)
【文献】特開2015-153672(JP,A)
【文献】特開2017-004760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0247
H01M 8/12
H01M 8/0273
H01M 8/2432
H01M 8/247
H01M 8/2483
H01M 8/0276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室を構成するフレーム貫通孔が形成されたフレーム部材と、セパレータ貫通孔が形成され、前記セパレータ貫通孔を取り囲む貫通孔周囲部が前記単セルに接合されると共に周縁部が前記フレーム部材に接合され、前記空気室と前記燃料室とを区画するセパレータと、を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックにおける前記第1の方向の両側にそれぞれ位置し、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材と、
を備え
、前記一対のエンド部材が締結部材により締結されている電気化学反応セルスタックにおいて、
前記一対のエンド部材の少なくとも一方には、少なくとも前記電気化学反応ブロック側に開口する空間であって、前記第1の方向視で輪郭線が前記単セルを内包する空間が形成されており、
少なくとも1つの前記セパレータは、
前記貫通孔周囲部を含む内側部と、
前記内側部より外周側に位置する外側部と、
前記内側部と前記外側部とを連結し、かつ、前記内側部と前記外側部との両方に対して、前記第1の方向の一方側に突出している連結部と、
を備え
、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータに接合されている前記単セルと前記フレーム部材との前記第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離は、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との前記第1の方向の距離である第2の距離より長い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータにおける前記連結部の長さは、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との最短距離から、前記少なくとも1つの前記セパレータに接合されている前記単セルと前記フレーム部材との前記第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離を引いた長さより長い、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との前記第1の方向の距離である第2の距離は、0.01mmより大きい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
SOFCは、一般に、電気化学反応単位が、第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックを備える燃料電池スタックの形態で利用される。電気化学反応単位は、例えば、単セルと、フレーム部材と、セパレータと、を備える。フレーム部材は、空気極に面する空気室または燃料極に面する燃料室を構成する貫通孔が形成されている。セパレータは、貫通孔が形成され、該貫通孔を取り囲む貫通孔周囲部が単セルに接合されると共に周縁部がフレーム部材に接合され、空気室と燃料室とを区画する。燃料電池スタックは、さらに、電気化学反応ブロックにおける第1の方向の両側にそれぞれ位置し、第1の方向視で少なくとも一部がフレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材を備える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した燃料電池スタックにおいて、一対のエンド部材の少なくとも一方には空間が形成された形態が考えられる。このエンド部材に形成された空間は、少なくとも電気化学反応ブロック側に開口しており、かつ、第1の方向視で該空間の輪郭線が単セルを内包する。このようにエンド部材に空間が形成された電気化学反応セルスタックでは、例えばエンド部材に空間が形成されておらず、該エンド部材の電気化学反応ブロック側の表面全体が平坦である構成に比べて、電気化学反応ブロックにおけるフレーム部材と単セルとで一対のエンド部材から受ける荷重が互いに異なることに起因して、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差が生じやすい。そして、例えば熱サイクルやヒートショック等によってフレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差がさらに大きくなる。フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差が生じると、例えばセパレータを介して単セルを第1の方向に引っ張る力が生じることによって単セルにクラック(割れ)が生じたり、フレーム部材によるシール性が低下したりするなど、電気化学反応セルスタックの性能が低下する、という課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室を構成するフレーム貫通孔が形成されたフレーム部材と、セパレータ貫通孔が形成され、前記セパレータ貫通孔を取り囲む貫通孔周囲部が前記単セルに接合されると共に周縁部が前記フレーム部材に接合され、前記空気室と前記燃料室とを区画するセパレータと、を備える電気化学反応単位が、前記第1の方向に複数並べて配置された電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックにおける前記第1の方向の両側にそれぞれ位置し、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部材に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記一対のエンド部材の少なくとも一方には、少なくとも前記電気化学反応ブロック側に開口する空間であって、前記第1の方向視で輪郭線が前記単セルを内包する空間が形成されており、少なくとも1つの前記セパレータは、前記貫通孔周囲部を含む内側部と、前記内側部より外周側に位置する外側部と、前記内側部と前記外側部とを連結し、かつ、前記内側部と前記外側部との両方に対して、前記第1の方向の一方側に突出している連結部と、を備える。
【0010】
本電気化学反応セルスタックでは、一対のエンド部材の少なくとも一方には空間が形成されている。この空間は、少なくとも電気化学反応ブロック側に開口しており、かつ、複数の電気化学反応単位の並ぶ方向である第1の方向視で輪郭線が単セルを内包する。このようにエンド部材に空間が形成された電気化学反応セルスタックでは、例えばエンド部材に空間が形成されておらず、該エンド部材の電気化学反応ブロック側の表面全体が平坦である構成に比べて、電気化学反応ブロックにおけるフレーム部材と単セルとでは、一対のエンド部材から受ける荷重が互いに異なることに起因して、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差が生じやすい。そして、例えば熱サイクルやヒートショック等によってフレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差がさらに大きくなる。フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差が生じると、例えばセパレータを介して単セルが第1の方向に引っ張られることによって単セルにクラック(割れ)が生じたり、フレーム部材によるシール性が低下したりするなど、電気化学反応セルスタックの性能が低下するおそれがある。これに対して、本電気化学反応セルスタックによれば、セパレータの連結部が容易に伸び縮みするバネのように機能し、セパレータが連結部の位置で変形しやすいため、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差が大きくなると、セパレータが主として連結部の位置で伸びるように変形し、その結果、上記変位差によって単セルやフレーム部材に発生する応力が緩和されるため、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差に起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータに接合されている前記単セルと前記フレーム部材との前記第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離は、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との前記第1の方向の距離である第2の距離より長い構成としてもよい。
【0012】
本電気化学反応セルスタックでは、第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、少なくとも1つのセパレータに接合されている単セルとフレーム部材との第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離は、該少なくとも1つのセパレータの内、単セルと接合されているセル側接合部と、フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との第1の方向の距離である第2の距離より長い。このため、例えば、第1の距離が第2の距離以下である構成に比べて、第2の距離が同じである条件下において、セパレータの第2の方向に対する傾きが緩やかなであり、その結果、単セルおよびフレーム部材に発生する第1の方向の応力が小さい。したがって、本電気化学反応セルスタックによれば、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差に起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0013】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータにおける前記連結部の長さは、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との最短距離から、前記少なくとも1つの前記セパレータに接合されている前記単セルと前記フレーム部材との前記第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離を引いた長さより長い構成としてもよい。
【0014】
本電気化学反応セルスタックによれば、第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、例えば、少なくとも1つのセパレータにおける連結部の長さが、該セパレータの内のセル側接合部とフレーム側接合部との最短距離から、該単セルと該フレーム部材との第1の方向に直交する第3の方向の距離である第1の距離を引いた長さ以下である構成に比べて、フレーム部材と単セルとの第1の方向の変位差に起因して単セルやフレーム部材に発生する応力を、セパレータの連結部の伸長によって効果的に緩和することができる。
【0015】
(4)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向に平行な少なくとも1つの断面において、前記少なくとも1つの前記セパレータの内、前記単セルと接合されているセル側接合部と、前記フレーム部材と接合されているフレーム側接合部との前記第1の方向の距離である第2の距離は、0.01mmより大きい構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、セパレータの内のセル側接合部とフレーム側接合部との第1の方向の距離である第2の距離が0.01mmより大きい構成において、特に有効である。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、電気化学反応セルスタックを備える電気化学反応システム(燃料電池システムまたは電解セルシステム)、それらの運転方法や制御方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
【
図4】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
【
図5】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【
図6】
図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【
図7】本実施形態における第1のセパレータ120および第2のセパレータ180の一部分(
図4のPx部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【
図8】変形例における第1のセパレータ120aの一部分のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図6)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図6)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸に直交する方向を面方向という。面方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「セルブロック103」という)を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、セルブロック103は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックに相当する。
【0020】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0021】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、空気が使用される。また、本実施形態では、酸化剤ガス導入マニホールド161への酸化剤ガスOGの導入のために、ブロワ(図示せず)が用いられる。また、酸化剤ガスOGが酸化剤ガス導入マニホールド161に導入される前に、熱交換(例えば、燃料電池スタック100から排出された酸化剤オフガスOOGと燃料オフガスFOGとを燃焼させたときに発生する熱との熱交換)を利用して、酸化剤ガスOGの予加熱が行われるとしてもよい。
【0023】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。なお、一対のエンドプレート104,106は、特許請求の範囲における一対のエンド部材に相当する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、
図6は、
図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および
図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、第1のセパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150、第2のセパレータ180と、を備えている。第1のセパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、第2のセパレータ180におけるZ軸回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。なお、上述したように、燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102を備えているため、燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)単セル110を備えていると言える。
【0028】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、平板型の単セルであり、また、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0030】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。
【0031】
第1のセパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の第1のセパレータ貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。
図6に示すように、第1のセパレータ120における第1のセパレータ貫通孔121を取り囲む部分(以下、「第1の貫通孔周囲部122」という)は、単セル110における上下方向の一方側(図面中の上側)の表面の周縁部に対向している。なお、本実施形態では、空気極114はZ軸方向視における大きさが電解質層112より小さいため、第1のセパレータ120における第1の貫通孔周囲部122は、単セル110における上側の表面の内、電解質層112により構成された表面に対向している。第1のセパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。第1のセパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の空気室用孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の空気室用孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、第1のセパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、第2のセパレータ180における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。すなわち、空気極側フレーム130は、第1のセパレータ120と第2のセパレータ180とにより挟持されている。そのため、空気極側フレーム130によって、空気室166のシール(コンプレッションシール)が実現される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150および第2のセパレータ180間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0033】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の燃料室用孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、第1のセパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、第2のセパレータ180における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している(
図4および
図5参照)。なお、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当し、空気室用孔131および燃料室用孔141は、特許請求の範囲におけるフレーム貫通孔に相当する。
【0034】
図6に示すように、空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、最上段の第2のセパレータ180に接触しており、該第2のセパレータ180を介して上側のエンドプレート104に電気的に接続されている。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。また、空気極側集電体134は、インターコネクタ150と一体の部材として構成されていてもよい。
【0035】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、後述する中間部材190に接触しており、該中間部材190を介して下側のエンドプレート106に電気的に接続されている。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0036】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2、
図4および
図6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0037】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0038】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2、
図4および
図6に示すように、酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0039】
A-3.セルブロック103における単セル110およびフレーム130,140と一対のエンドプレート104,106との関係:
図1から
図3に示すように、本実施形態の燃料電池スタック100では、各エンドプレート104,106には、上下方向(単セル110の並び方向)に貫通する開口窓104A,106Aが形成されている。すなわち、各エンドプレート104,106には、開口窓104A,106Aによって、上下の両側(セルブロック103側と、該セルブロック103とは反対側)に開口する空間S1,S2が形成されている。上下方向視で、各空間S1,S2の輪郭線は、単セル110を内包している。換言すれば、各空間S1,S2の輪郭線は、全周にわたって、単セル110の外形線の外側に位置している。上下方向視で、各エンドプレート104,106は、セルブロック103に重なっておらず、フレーム130,140に重なっている。
【0040】
セルブロック103と下側のエンドプレート106との間には、中間部材190が配置されている。中間部材190は、貫通孔が形成されていない平板状の部材であり、例えば、金属により形成されている。中間部材190の中央付近には、セルブロック103の最下位に位置する燃料極側集電体144が接合されており、中間部材190の周縁部は、セルブロック103と下側のエンドプレート106との間に挟み込まれている。すなわち、セルブロック103は、各フレーム130,140に対して、第1のセパレータ120と第2のセパレータ180と中間部材190とによって支持されている。なお、第1のセパレータ120、第2のセパレータ180および中間部材190は、いずれも、上下方向の厚さが、各フレーム130,140の上下方向の厚さより薄く、各フレーム130,140に比べて可撓性が高い。
【0041】
以上の構成により、燃料電池スタック100は、複数の締結部材(ボルト22、ナット24)を備えて、複数の締結部材は、一対のエンドプレート104,106とセルブロック103におけるフレーム130,140とにわたって形成された複数の連通孔108のそれぞれに挿入されており、燃料電池スタック100は、該複数の締結部材で締結されている。詳しくは、燃料電池スタック100(セルブロック103)のうち、上下方向視でエンドプレート104,106と重なる部分(主としてフレーム130,140)は、一対のエンドプレート104,106の間に挟み込まれており、一対のエンドプレート104,106を締結する締結部材(ボルト22、ナット24)の締結力による比較的に大きい荷重を受ける。これにより、フレーム130,140によって、空気室166や燃料室176のシールが実現される。一方、燃料電池スタック100のうち、上下方向視でエンドプレート104,106と重ならない部分(主として単セル110)は、一対のエンドプレート104,106を締結する締結部材の締結力による荷重を直接的には受けない。すなわち、燃料電池スタック100における単セル110とフレーム130,140とは、一対のエンドプレート104,106から上下方向に受ける荷重の大きさが互いに異なる。これにより、フレーム130,140には、空気室166や燃料室176のシールを実現するために必要な比較的に大きい荷重を付与し、単セル110には、単セル110同士の間の導通性を確保しつつ不要に大きい荷重がかかることを抑制することができる。
【0042】
A-4.第1のセパレータ120の詳細構成:
図7は、第1のセパレータ120および第2のセパレータ180の一部分(
図4のPx部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。なお、第1のセパレータ120の上下方向の厚さ(例えば0.1mm)は、各フレーム130,140の上下方向の厚さ(例えば1mm)より薄い。第1のセパレータ120は、特許請求の範囲におけるセパレータに相当する。
【0043】
第1のセパレータ120は、第1の貫通孔周囲部122を含む第1の内側部126と、第1の内側部126より外周側に位置する第1の外側部127とを備える。第1の内側部126と第1の外側部127とのZ軸方向における位置は、互いに略同一である。なお、第1の内側部126のZ軸方向における位置とは、第1の内側部126の表面の内の空気室166に面している側(上側)の表面において、第1の内側部126における最も上に位置する部分の位置を意味する。第1の外側部127のZ軸方向における位置とは、第1の外側部127の表面の内の空気室166に面している側(上側)の表面において、第1の外側部127における最も上に位置する部分の位置を意味する。また、第1の内側部126は、特許請求の範囲における内側部に相当し、第1の外側部127は、特許請求の範囲における外側部に相当する。
【0044】
第1のセパレータ120は、さらに、第1の内側部126の端部と第1の外側部127の端部とを連結する第1の連結部128を備える。本実施形態では、第1の連結部128は、第1の内側部126および第1の外側部127の位置から燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、第1の連結部128における燃料室176側(下側)は凸部となり、第1の連結部128における空気室166側(上側)は凹部となる。このように、第1の連結部128は、Z軸方向における位置が第1の内側部126および第1の外側部127とは異なる部分を含む。なお、第1の連結部128は、Z軸方向視で、第1のセパレータ貫通孔121を取り囲むように形成されている。また、第1のセパレータ120における第1の連結部128は、例えば、プレス加工により形成される。第1のセパレータ120の第1の連結部128は、上述した構成であるため、面方向に容易に伸び縮みするバネのように機能する。そのため、本実施形態の第1のセパレータ120は、第1の連結部128を備えない構成と比較して、第1の連結部128の位置で面方向に変形しやすい。また、第1のセパレータ120の上下方向における厚さt1(板厚)は、0.01(mm)以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03(mm)以上、より好ましくは0.05(mm)以上であって、0.2(mm)以下であることが好ましい。第1のセパレータ120の厚さt1を0.03(mm)以上とすることにより、第1のセパレータ120の耐酸化性の低下を抑制することができ、第1のセパレータ120の厚さt1を0.2(mm)以下とすることにより、第1の連結部128のバネ性を一定程度以上確保することができる。
【0045】
図7に示すように、第1の連結部深さH
1は、0.1(mm)以上、2.0(mm)以下であることがさらに好ましい。第1の連結部深さH
1を0.1(mm)以上とすることにより、第1の連結部128による単セル110の変形や割れを抑制する効果を確保することができる。また、第1の連結部深さH
1が2.0(mm)より高くなると、第1の連結部128によってガスの流れが阻害され、発電性能が低下するおそれがあるため好ましくないが、第1の連結部深さH
1を2.0(mm)以下とすることにより、第1の連結部128によってガスの流れが阻害されて発電性能が低下することを抑制することができる。
【0046】
また、第1の連結部深さH1は第1のセパレータ120の厚さt1より大きいことが好ましい。第1の連結部深さH1を第1のセパレータ120の厚さt1より大きくすることにより、第1の連結部128による単セル110の変形や割れを抑制する効果を確保することができる。なお、第1の連結部128は、特許請求の範囲における連結部に相当する。
【0047】
また、
図6には、上下方向視で、エンドプレート104,106に形成された開口窓104A,106Aの輪郭線内の領域を、該輪郭線(矩形)の2本の対角線(仮想直線)によって4等分して形成される第1から第4の区画領域E1~E4が示されている。本実施形態では、第1のセパレータ120には、第1の連結部128が第1から第4の区画領域E1~E4の全ての領域に位置するように形成されている。具体的には、第1のセパレータ120には、第1の連結部128が、第1のセパレータ120の周縁部に沿って全周にわたって連続的に形成されている。なお、エンドプレート104,106に形成された開口窓104A,106Aの形状は、矩形に限らず、例えば円形等でもよい。
【0048】
また、第1のセパレータ120は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第1の要件を満たしている(
図7参照)。なお、同断面において、上下方向(Z軸方向)に直交する方向(X軸方向)は、特許請求の範囲における第3の方向に相当する。
<第1の要件>
「第1の距離ΔX1」 > 「第2の距離ΔZ1」
第1の距離ΔX1:単セル110と空気極側フレーム130(上下方向において、第1のセパレータ120に対して単セル110と同じ側に位置するフレーム)との上下方向視における距離
第2の距離ΔZ1:第1のセパレータ120の内、単セル110と接合されているセル側接合部123と、空気極側フレーム130と接合されているフレーム側接合部129との上下方向の距離
【0049】
また、第1のセパレータ120は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第2の要件を満たしている(
図7参照)。
<第2の要件>
「第1の連結部128の長さΔC1」 > 「セル側接合部123とフレーム側接合部129との最短距離ΔB1」 - 「第1の距離ΔX1」
第1の連結部128の長さΔC1:第1の連結部128の内周面上における、第1の内側部126と第1の外側部127との間の最短距離
セル側接合部123とフレーム側接合部129との最短距離ΔB1:[(第1の距離ΔX1)
2+(第2の距離ΔZ1)
2]の平方根から第1の距離ΔX1を除算した値である。
【0050】
また、第1のセパレータ120は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第3の要件を満たしている(
図7参照)。
<第3の要件>
「第2の距離ΔZ1」 > 0.01mm
【0051】
A-5.第2のセパレータ180の詳細構成:
第2のセパレータ180は、第2の貫通孔周囲部182を含む第2の内側部186と、第2の内側部186より外周側に位置する第2の外側部187とを備える。第2の内側部186と第2の外側部187とのZ軸方向における位置は、互いに略同一である。なお、第2の内側部186のZ軸方向における位置とは、第2の内側部186の表面の内の燃料室176に面している側(上側)の表面において、第2の内側部186における最も上に位置する部分の位置を意味する。第2の外側部187のZ軸方向における位置とは、第2の外側部187の表面の内の燃料室176に面している側(上側)の表面において、第2の外側部187における最も上に位置する部分の位置を意味する。
【0052】
第2のセパレータ180は、さらに、第2の内側部186の端部と第2の外側部187の端部とを連結する第2の連結部188を備える。本実施形態では、第2の連結部188は、第2の内側部186および第2の外側部187の位置から燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した形状を有している。すなわち、第2の連結部188における燃料室176側(下側)は凸部となり、第2の連結部188における空気室166側(上側)は凹部となる。このように、第2の連結部188は、Z軸方向における位置が第2の内側部186および第2の外側部187とは異なる部分を含む。なお、第2の連結部188は、Z軸方向視で、第2のセパレータ貫通孔181を取り囲むように形成されている。また、第2のセパレータ180における第2の連結部188は、例えば、プレス加工により形成される。第2のセパレータ180の第2の連結部188は、上述した構成であるため、面方向に容易に伸び縮みするバネのように機能する。そのため、本実施形態の第2のセパレータ180は、第2の連結部188を備えない構成と比較して、第2の連結部188の位置で面方向に変形しやすい。また、第2のセパレータ180の上下方向における厚さt2(板厚)は、0.01(mm)以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03(mm)以上、より好ましくは0.05(mm)以上であって、0.2(mm)以下であることが好ましい。第2のセパレータ180の厚さt2を0.03(mm)以上とすることにより、第2のセパレータ180の耐酸化性の低下を抑制することができ、第2のセパレータ180の厚さt2を0.2(mm)以下とすることにより、第2の連結部188のバネ性を一定程度以上確保することができる。
【0053】
図7に示すように、第2の連結部深さH
2は、0.1(mm)以上、2.0(mm)以下であることがさらに好ましい。第2の連結部深さH
2を0.1(mm)以上とすることにより、第2の連結部188による単セル110の変形や割れを抑制する効果を確保することができる。また、第2の連結部深さH
2が2.0(mm)より高くなると、第2の連結部188によってガスの流れが阻害され、発電性能が低下するおそれがあるため好ましくないが、第2の連結部深さH
2を2.0(mm)以下とすることにより、第2の連結部188によってガスの流れが阻害されて発電性能が低下することを抑制することができる。
【0054】
また、第2の連結部深さH2は第2のセパレータ180の厚さt2より大きいことが好ましい。第2の連結部深さH2を第2のセパレータ180の厚さt2より大きくすることにより、第2の連結部188による単セル110の変形や割れを抑制する効果を確保することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上述の第1のセパレータ120と同様、第2のセパレータ180には、第2の連結部188が第1から第4の区画領域E1~E4の全ての領域に位置するように形成されている。具体的には、第2のセパレータ180には、第2の連結部188が、第2のセパレータ180の周縁部に沿って全周にわたって連続的に形成されている。
【0056】
また、第2のセパレータ180は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第4の要件を満たしている(
図7参照)。
<第4の要件>
「第1の距離ΔX2」 > 「第2の距離ΔZ2」
第1の距離ΔX2:単セル110と空気極側フレーム130(上下方向において、第2のセパレータ180に対して単セル110と同じ側に位置するフレーム)との上下方向視における距離
第2の距離ΔZ2:第2のセパレータ180の内、インターコネクタ150に接合されているコネクタ側接合部183と、燃料極側フレーム140に接合されているフレーム側接合部189との上下方向の距離
【0057】
また、第2のセパレータ180は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第5の要件を満たしている(
図7参照)。
<第5の要件>
「第2の連結部188の長さΔC2」 > 「コネクタ側接合部183とフレーム側接合部189との最短距離ΔB2」 - 「第1の距離ΔX2」
第2の連結部188の長さΔC2:第2の連結部188の内周面上における、第2の内側部186と第2の外側部187との間の最短距離
コネクタ側接合部183とフレーム側接合部189との最短距離ΔB2:[(第1の距離ΔX2)
2+(第2の距離ΔZ2)
2]の平方根から第1の距離ΔX2を除算した値である。
【0058】
また、第2のセパレータ180は、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、さらに、次の第6の要件を満たしている(
図7参照)。
<第6の要件>
「第2の距離ΔZ2」 > 0.01mm
【0059】
A-6.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100では、エンドプレート104,106に空間S1が形成されている。この空間S1は、少なくともセルブロック103側に開口しており、かつ、複数の発電単位102(単セル110)の並ぶ方向である上下方向視で輪郭線が単セル110を内包する。このようにエンドプレート104,106に空間S1が形成された燃料電池スタック100では、例えばエンドプレート104,106に空間が形成されておらず、該エンドプレート104,106のセルブロック103側の表面全体が平坦である構成に比べて、セルブロック103におけるフレーム130,140と単セル110とでは、一対のエンドプレート104,106から受ける荷重が互いに異なることに起因して、エンドプレート104,106と単セル110との上下の方向の変位差(
図7に示すセル側接合部123とフレーム側接合部129との上下方向の変位差)が生じやすい。そして、例えば熱サイクルやヒートショック等によってエンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差がさらに大きくなる。エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差が生じると、例えば第1のセパレータ120を介して単セル110が上下方向に引っ張られることによって単セル110にクラック(割れ)が生じたり、エンドプレート104,106によるシール性が低下したりするなど、燃料電池スタック100の性能が低下するおそれがある。
【0060】
これに対して、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、第1のセパレータ120の第1の連結部128が容易に伸び縮みするバネのように機能し、第1のセパレータ120が第1の連結部128の位置で変形しやすいため(
図7参照)、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差が大きくなると、第1のセパレータ120が主として第1の連結部128の位置で伸びるように変形し、その結果、上記変位差によって単セル110やエンドプレート104,106に発生する応力が緩和されるため、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、第1のセパレータ120には、第1の連結部128が第1から第4の区画領域E1~E4の全ての領域に位置するように形成されている(
図6参照)。このため、本実施形態によれば、第1のセパレータ120の全周にわたって応力緩和の機能が発揮されるため、例えば、第1から第4の区画領域E1~E4のいずれかに第1の連結部128が形成されていない構成に比べて、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1のセパレータ120に接合されている単セル110とフレーム130,140との上下方向視における距離である第1の距離ΔX1は、第1のセパレータ120におけるセル側接合部123とフレーム側接合部129との上下方向の距離である第2の距離ΔZ1より長い(上記第1の要件
図7参照)。ここで、
図8は、変形例における第1のセパレータ120aの一部分のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。変形例の燃料電池スタック100aでは、第1の距離ΔX1が第2の距離ΔZa(>ΔZ1)以下である。このため、第1のセパレータ120aの面方向に対する第2の傾き(角度θ1a>上記角度θ1)が比較的に急峻になり、その結果、単セル110およびフレーム130,140に発生する上下方向の応力が比較的に大きい。これに対して、本実施形態によれば、変形例の燃料電池スタック100aに比べて、第2の距離ΔZaが同じである条件下において、第1のセパレータ120の面方向に対する傾き(角度θ1参照)が比較的に緩やかなであり、その結果、単セルおよびフレーム部材に発生する第1の方向の応力が小さい。したがって、本実施形態によれば、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を、より効果的に抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、第1のセパレータ120における第1の連結部128の長さΔC1は、第1のセパレータ120におけるセル側接合部123とフレーム側接合部129との最短距離ΔB1から、第1の距離ΔX1を引いた長さより長い(
図7参照)。このため、本実施形態によれば、第1の連結部128の長さΔC1が、上記最短距離ΔB1から第1の距離ΔX1を引いた長さより短い構成に比べて、フレーム130,140と単セル110との上下方向の変位差に起因して単セル110やフレーム130,140に発生する応力を、第1のセパレータ120の第1の連結部128の伸長によって効果的に緩和することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、第1のセパレータ120の内のセル側接合部123とフレーム側接合部129との上下方向の距離である第2の距離ΔZ1が0.01mmより大きい構成において、特に有効である。
【0065】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
上記実施形態における単セル110、発電単位102または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、一対のエンドプレート104,106の一方だけに空間が形成された構成であってもよい。また、上記実施形態では、空間として、エンドプレート104,106を貫通する空間S1,S2を例示したが、空間は、例えば、セルブロック103側に開口し、セルブロック103とは反対側に開口していない凹部状の空間であってもよい。また、上記実施形態では、エンド部材として、平板状のエンドプレート104,106を例示したが、エンド部材は、平板状以外の形状であってもよい。また、上記実施形態では、エンド部材の上下方向視の形状は、枠状だったが、例えば、上記実施形態において、エンドプレート104,106の形状を、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における3つの辺のそれぞれに沿った部分(例えばボルト22A,22B,22D,22Eのいずれか1つを除く7つのボルト22で締結される部分)を有し、残りの1つの辺に沿った部分を有しない形状としてもよいし、燃料電池スタック100のZ軸回りの外周における互いに平行な2つの辺に沿った部分(例えばボルト22A,22Bまたはボルト22D,22Eのいずれか1組を除く6つのボルト22で締結される部分)を有し、残りの2つの辺に沿った部分を有しない形状としてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、中間部材190は、貫通孔が形成された構成であってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、燃料電池スタック100に備えられた全ての第1のセパレータ120が第1の連結部128を備えるとしたが、燃料電池スタック100に備えられた全ての第1のセパレータ120の少なくとも1つが第1の連結部128を備える構成であれば、フレーム130,140と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を抑制することができる。なお、燃料電池スタック100に備えられた全ての第1のセパレータ120の内、50%以上の第1のセパレータ120が第1の連結部128を備える構成が好ましく、全ての第1のセパレータ120の内、80%以上の第1のセパレータ120が第1の連結部128を備える構成がより好ましい。また、特に、上下方向においてエンドプレート104,106から離れた位置に配置された発電単位102では、フレーム130,140と単セル110との上下方向の変位差が生じやすい。このため、上下方向においてエンドプレート104,106から離れた位置に配置された第1のセパレータ120(燃料電池スタック100における上下方向の中央側に位置する第1のセパレータ120)が第1の連結部128を備える構成が好ましい。
【0069】
また、上記実施形態では、単セル110の上下方向(Z軸方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な全ての断面において、第1の要件から第6の要件を満たすとしたが、これに限らず、単セル110の上下方向)視の中心Oを通り、かつ、上下方向に平行な少なくとも1つの断面において、第1の要件から第6の要件を満たすとしてもよい。具体的には、上記実施形態では、第1の連結部128は、第1のセパレータ120の内、上下方向視で単セル110の回りの全周にわたって形成されていたが、第1の連結部128は、第1のセパレータ120の内、単セル110の回りの少なくとも一部分だけに形成されていれば、フレーム130,140と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を抑制することができる。例えば、上記実施形態において、第1の連結部128は、第1から第4の区画領域E1~E4の少なくとも1つに位置するように形成されていればよい。なお、第1の連結部128は、第1のセパレータ120の内、単セル110の回りの全周の50%以上の部分だけに形成された構成が好ましく、第1のセパレータ120の内、単セル110の回りの全周の80%以上の部分だけに形成された構成が好ましい。なお、第2のセパレータ180における第2の連結部188についても同様である。
【0070】
また、上記実施形態では、第1の連結部128は、燃料室176側(下側)に突出するように湾曲した形状を有していたが、第1の連結部128は、空気室166側(上側)に突出するように湾曲した形状を有していてもよい。また、上記実施形態では、全ての第1のセパレータ120に形成された第1の連結部128が同一方向(下側)に湾曲した形状であったが、一部の第1のセパレータ120に形成された第1の連結部128が、他の第1のセパレータ120に形成された第1の連結部128とは逆の方向(上側)に湾曲した形状であってもよい。但し、上記実施形態のように、全ての第1のセパレータ120に形成された第1の連結部128が同一方向に湾曲した形状であれば、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差の変動に対して、全ての第1のセパレータ120が常に同一方向に統一的に変形するため、第1のセパレータ120同士の短絡を抑制することができる。なお、第1の連結部128の凹部の深さは、該凹部の開口幅より長いことが好ましい(
図8参照)。なお、第2のセパレータ180における第2の連結部188についても同様である。
【0071】
また、上記実施形態において、第1のセパレータ120は、上述の第1の要件から第3の要件の内、いずれも満たさなくてもよいし、少なくとも1つ、または、2つを満たす構成であってもよい。また、第2のセパレータ180は、第2の連結部188を備えない構成であってもよい。また、第2のセパレータ180は、上述の第4の要件から第6の要件の内、いずれも満たさなくてもよいし、少なくとも1つ、または、2つを満たす構成であってもよい。また、第2のセパレータ180は、第2の連結部188を備えない構成であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、第1のセパレータ120に第1の連結部128を形成することにより、エンドプレート104,106と単セル110との上下方向の変位差に起因する燃料電池スタック100の性能の低下を抑制することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解単セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 100a:燃料電池スタック 102:発電単位 103:セルブロック 104,106:エンドプレート 104A,106A:開口窓 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120,120a:第1のセパレータ 121:第1のセパレータ貫通孔 122:第1の貫通孔周囲部 123:セル側接合部 124:接合部 126:第1の内側部 127:第1の外側部 128:第1の連結部 129:フレーム側接合部 130:空気極側フレーム 131:空気室用孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム 141:燃料室用孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:第2のセパレータ 181:第2のセパレータ貫通孔 182:第2の貫通孔周囲部 183:コネクタ側接合部 186:第2の内側部 187:第2の外側部 188:第2の連結部 189:フレーム側接合部 190:中間部材 B1:最短距離Δ B2:最短距離Δ C1:長さΔ C2:長さΔ E1~E4:区画領域 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス