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7082977レスベラトロールのシリル化誘導体および神経変性疾患、神経疾患、または炎症性疾患におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】レスベラトロールのシリル化誘導体および神経変性疾患、神経疾患、または炎症性疾患におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20220602BHJP
   A61K 31/695 20060101ALI20220602BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220602BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
C07F7/18 D CSP
C07F7/18 F
C07F7/18 L
C07F7/18 S
C07F7/18 J
A61K31/695
A61K31/7034
A61P29/00
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P37/06
A61P21/04
A61P9/10
A61P25/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019528888
(86)(22)【出願日】2017-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 ES2017070776
(87)【国際公開番号】W WO2018100219
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】P201631535
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】593005895
【氏名又は名称】コンセホ・スペリオル・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス(セエセイセ)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS(CSIC)
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モラレス サンチェス,ジョアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ペナルバー プエンテ,パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ベルモンテ レーチェ,エフレス
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス レイ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】マテオス マーチン,マリアルイーザ
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/162265(WO,A1)
【文献】特開2015-164903(JP,A)
【文献】国際公開第2003/086414(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0056586(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第103922981(CN,A)
【文献】Park. Byung Ho et al.,Total Synthesis of Chiricanine A, Arahypin-1, trans-Arachidin-2, trans-Arachinin-3, and Arahypin-5 from Peanut Seeds,Journal of Natural Products,2011年,vol.74, no.4,pp.644-649
【文献】Larrosa, Mar et al.,Preventive Oral Treatment with Resveratrol Pro-prodrugs Drastically Reduce Colon Inflammation in Rodents,Journal of Medicinal Chemistry,2010年,vol.53, no.23,pp.7365-7376
【文献】Zhang, Zhaojun et al.,Synthesis of mono- and di-O-β-D-glucopyranoside conjugates of (E)-resveratorol,Synthesis,2006年,no.8,pp.1301-1306
【文献】Falomir, Eva et al.,Cytotoxic, Antiangiogenic and Antitelomerase Activity of Glucosyl- and Acyl- Resveratorol Prodrugs and Resveratrol Sulfate Metabolites,Chem Bio Chem,2016年,vol.17, no.14,pp.1343-1348
【文献】Xu, Zhixiang et al.,Design, synthesis and evaluation of a series of non-steroidal anti-inflammatory drug conjugates as novel neuroinflammatory inhibitors,International Immunopharmacology,2015年,vol.25, no.2,pp.528-537
【文献】Mazzotti, Fabio et al.,The assay of pterostilbene in spiked matrices by liquid chromatography tandem mass spectrometry and isotope dilution method,Journal of Mass Spectrometry,2010年,vol.45, no,4,pp.358-363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


式中、R1、R2、およびR3は、H、SiR4R5R6基、-NH(CO)R7基、または炭水化物の中から独立して選択され、
該炭水化物は、
【化2】

ここで、R 8 は、H及び-C(O)-R 9 から成る群より選択され、R 9 はC 1 -C 22 アルキル及びC 1 -C 22 アルケニルから成る群より選ばれ、
R4、R5、およびR6は、直鎖もしくは分岐のC1-C6アルキル、またはフェニル基の中から独立して選択され、R7は直鎖または分岐のC1-C12アルキルであるが、
ただし、R1、R2、およびR3の少なくとも1つがSiR4R5R6基である化合物、又は
【化3】
から成る群より選ばれる化合物
を含む、炎症性疾患、神経疾患、若しくは神経変性疾患の治療または予防組成物。
【請求項2】
R1およびR2がSiR4R5R6基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R3がH、-NH(CO)R7、及び上記炭水化物から成る群より選ばれる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
R1およびR3がSiR4R5R6基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
R2がH、-NH(CO)R7及び上記炭水化物から成る群より選ばれる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
R1、R2、およびR3がSiR4R5R6基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
R4およびR5がメチル、エチル及びイソプロピルから成る群より選ばれ、R6がtert-ブチル、エチル及びイソプロピルから成る群より選ばれる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
以下の群:
【化4】

【化5】
から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
神経疾患または神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、虚血、およびてんかんから成る群より選択される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
式(I')で表される化合物であって、
【化6】
式中、R1、R2、およびR3は、H、SiR4R5R6基、-NH(CO)R7基、または炭水化物の中から独立して選択され、
R4、R5、およびR6は、直鎖もしくは分岐のC1-C6アルキル、またはフェニル基から独立して選択され、R7は直鎖または分岐のC1-C12アルキルであるが、ただし、R1、R2、およびR3の少なくとも1つがSiR4R5R6基であり、かつ
a) R1およびR2がSiR4R5R6基であり、R3がH、-NH(CO)R7基及び以下の炭水化物
【化7】

式中、R8は、H及び-C(O)-R9から成る群より選択され、R9はC1-C22アルキル及びC1-C22アルケニルから成る群より選ばれる、
である化合物
b) R1およびR3がSiR4R5R6基であり、R2がH、-NH(CO)R7基及び以下の炭水化物
【化8】

式中、R8は、H及び-C(O)-R9から成る群より選択され、R9はC1-C22アルキル及びC1-C22アルケニルから成る群より選ばれる、
である化合物
c) R1、R2、およびR3が、SiR4R5R6基である化合物、
d) 以下の群
【化9】
から選ばれる化合物、
から成る群より選択され、
かつ、
(E)-(5-(4-(トリメチルシリルオキシ)スチリル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(トリメチルシラン)、
(E)-4-(3,5-ビス(トリイソプロピルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
(E)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
(E)-4-(3,5-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
(E)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-(4-ヒドロキシスチリル)フェノール、
(E)-5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)ベンゼン-1,3-ジオール、及び
(E)-(5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(tert-ブチルジメチルシラン)のうちの1つではない、化合物、
又は
以下の群:
【化10】
から成る群より選択される化合物。
【請求項11】
R4およびR5がメチル、エチル及びイソプロピルから成る群より選ばれ、R6がtert-ブチル、エチル及びイソプロピルから成る群より選ばれる、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
以下の群:
【化11】
から成る群より選択される、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換基として少なくとも1つのシリル基を有し、該シリル基が別の基で置換され得る、レスベラトロール由来の化合物群に関する。本発明はまた、炎症性疾患、神経疾患、および神経変性疾患における本化合物の治療用途に関する。したがって、本発明は、薬化学分野および薬理学分野に含まれるものである。
【背景技術】
【0002】
レスベラトロールはフェノール化合物である。フェノール化合物の化学構造は、少なくとも1つの芳香環と1つのヒドロキシル基とからなる。レスベラトロールはフェノール化合物の中のスチルベンであり、フェノール化合物のこの系統は、2つの炭素原子を介して結合した2つのフェノール環構造(C6-C2-C6)により特徴づけられるものである。レスベラトロールは、ブドウや、ワインなどのブドウから製造された製品に含まれており、またピーナッツや一部のベリーなどの食物にもかなり少量ではあるが含まれている。こうした食物では、レスベラトロールは遊離形態か、またはピセイド(レスベラトロール-3-O-グルコシド)として存在している。この化合物は、細胞の寿命を延ばす、抗酸化特性、抗炎症特性、さらには抗腫瘍特性を持つ。
【0003】
レスベラトロールは、発癌の3つの主たる段階を想定した治験において、癌の化学的予防作用を示している。レスベラトロールは、抗酸化剤および抗突然変異原として作用し、抗炎症効果を有し、シクロオキシゲナーゼ(COX)とヒドロペルオキシダーゼを阻害し、さらにはヒト前骨髄球性白血病において細胞分化を誘導する。これらに加えて、レスベラトロールと赤ワインの心血管への効用との関係についても広範に研究されている。レスベラトロールの神経系への用途も提案されている。
【0004】
レスベラトロールが示す種々の有益な生理的効果に鑑み、健康関連特性を改善するこの分子の誘導体を得ることに着目した研究が数多く行われてきた。文献Int.Immunopharmacology 25 (2015) 528-537では、様々なレスベラトロール誘導体の抗炎症特性や、その神経炎症の阻害剤としての可能性について検討している。
【0005】
J. Med.Chem 2010 July 8; 53(13):5033-5043には、硫酸化レスベラトロール誘導体の合成について、さらには、この誘導体の種々の生理学的活性への影響、例えばTNF-α阻害またはシクロオキシゲナーゼ活性への影響について記載されている。
【0006】
文献国際公開第2011/073482号には、糖質の置換基を含み、かつ、特に過敏性腸症候群またはクローン病などの腸の病態において炎症を調節することができる、レスベラトロール誘導体が記載されている。
【発明の概要】
【0007】
第一の態様では、本発明は、以下の式(I)の化合物であって、
【0008】
【化1】
式中、R1、R2、およびR3は、H、SiR4R5R6基、-NH(CO)R7基、または炭水化物の中から独立して選択され、
R4、R5、およびR6は、直鎖もしくは分岐のC1-C6アルキル、またはフェニル基の中から独立して選択され、R7は直鎖または分岐のC1-C12アルキルであるが、
ただし、R1、R2、およびR3の少なくとも1つがSiR4R5R6基である化合物を、
炎症性疾患、神経疾患、または神経変性疾患の治療または予防のための薬剤の製造に使用することに関する。
【0009】
好ましい実施形態では、R1およびR2はSiR4R5R6基である。より好ましい実施形態では、R3はHである。
【0010】
別のより好ましい実施形態では、R3は-NH(CO)R7である。
【0011】
別のより好ましい実施形態では、R3は以下の炭水化物であり、
【0012】
【化2】
式中、R8は、Hまたは-C(O)-R9の中から選択され、R9はC1-C22アルキル基またはC2-C22アルケニル基である。
【0013】
より好ましい実施形態では、R1およびR2がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0014】
別の好ましい実施形態では、R1およびR3はSiR4R5R6基である。
【0015】
より好ましい実施形態では、R2はHである。
【0016】
別のより好ましい実施形態では、R2は-NH(CO)R7である。
【0017】
別のより好ましい実施形態では、R2は以下の炭水化物であり、
【0018】
【化3】
式中、R8は、Hまたは-C(O)-R9の中から選択され、R9はC1-C22アルキル基またはC2-C22アルケニル基である。
【0019】
より好ましい実施形態では、R1およびR3がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0020】
別のより好ましい実施形態では、R1、R2、およびR3はSiR4R5R6基である。
【0021】
より好ましい実施形態では、R1、R2、およびR3がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0022】
別の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、以下の群:
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】

から選択される。
【0025】
好ましい実施形態では、神経疾患または神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、虚血、およびてんかんから選択される。
【0026】
本発明の別の態様は、以下の式(I')の化合物であって、
【0027】
【化6】
式中、R1、R2、およびR3は、H、SiR4R5R6基、-NH(CO)R7基、または炭水化物の中から独立して選択され、
R4、R5、およびR6は、直鎖もしくは分岐のC1-C6アルキル、またはフェニル基の中から独立して選択され、R7は直鎖または分岐のC1-C12アルキルであるが、
ただし、R1、R2、およびR3の少なくとも1つがSiR4R5R6基であり、かつ以下の化合物:
-(E)-(5-(4-(トリメチルシリルオキシ)スチリル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(トリメチルシラン)、
-(E)-4-(3,5-ビス(トリイソプロピルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
-(E)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
-(E)-4-(3,5-ビス(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)フェノール、
-(E)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-(4-ヒドロキシスチリル)フェノール、
-(E)-5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)ベンゼン-1,3-ジオール、
-(E)-(5-(4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)スチリル)-1,3-フェニレン)ビス(オキシ)ビス(tert-ブチルジメチルシラン)のうちの1つではない、化合物に関する。
【0028】
好ましい実施形態では、R1およびR2はSiR4R5R6基である。
【0029】
より好ましい実施形態では、R3はHである。
【0030】
別のより好ましい実施形態では、R3は-NH(CO)R7である。
【0031】
別のより好ましい実施形態では、R3は以下の炭水化物であり、
【0032】
【化7】
式中、R8は、Hまたは-C(O)-R9の中から選択され、R9はC1-C22アルキル基またはC2-C22アルケニル基である。
【0033】
より好ましい実施形態では、R1およびR2がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0034】
好ましい実施形態では、R1およびR3はSiR4R5R6基である。
【0035】
より好ましい実施形態では、R2はHである。
【0036】
別のより好ましい実施形態では、R2は-NH(CO)R7である。
【0037】
別のより好ましい実施形態では、R2は以下の炭水化物であり、
【0038】
【化8】
式中、R8は、Hまたは-C(O)-R9の中から選択され、R9はC1-C22アルキル基またはC1-C22アルケニル基である。
【0039】
より好ましい実施形態では、R1およびR3がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0040】
別の好ましい実施形態では、R1、R2、およびR3はSiR4R5R6基である。
【0041】
より好ましい実施形態では、R1、R2、およびR3がSiR4R5R6基である場合、R4およびR5はメチルであり、R6はtert-ブチルである。別のより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はエチルである。さらなるより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はイソプロピルである。
【0042】
置換基がSiR4R5R6基である別のより好ましい実施形態では、R4およびR5はフェニルであり、R6はtert-ブチルである。さらなるより好ましい実施形態では、R4、R5、およびR6はメチルである。
【0043】
別の好ましい実施形態では、式(I')の化合物は、以下の群:
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】



から選択される。
【0046】
本発明の別の態様は、薬剤の製造に上述の式(I')の化合物を使用することに関する。
【0047】
本発明の別の態様は、上述の式(I')の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0048】
本発明の別の態様は、式(I)または式(I')の化合物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、炎症性疾患、神経疾患、または神経変性疾患を治療する方法に関する。
【0049】
本記載で使用される意味において、「治療有効量」という用語は、疾患の症状を軽減させる所望の効果を得るのに十分な活性化合物の量を表す。使用する用量は、臨床評価で有害かつ治療に使用できないとされる望ましくない副作用を招く量であってはならない。用量は通例、患者の年齢、症状、性別、疾患の程度、さらには投与経路および投与頻度によって異なり、事例毎に決定することができる。
【0050】
本発明において、「アルキル」という用語は、1個~22個、好ましくは1個~12個、より好ましくは1個~6個の炭素原子を有し、一重結合により分子の残部に結合している直鎖または分岐の炭化水素鎖基、例えば、プロピル、エチル、メチル、イソプロピル、ウンデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイルなどを意味する。これらのアルキル基は、任意選択的に、1つまたは複数の位置で、1つまたは複数の基、例えば、ヒドロキシル、アミン類、アミド類、オキソ、シアノ、ハロゲン類、アリールなどにより置換され得る。
【0051】
本発明において、「アルケニル」という用語は、2個~22個の炭素原子を有し、炭素の数に応じて1個~6個の不飽和を有する、不飽和直鎖または分岐の脂肪族鎖を意味し、ビニル、アリル、オレイル、リノレイル、リノレニル、エイコサペンタエノイル、ドコサヘキサエノイルなどを含むが、これらに限定されない。これらのアルキル基は、任意選択的に、1つまたは複数の位置で、1つまたは複数の基、例えば、ヒドロキシル、アミン類、アミド類、オキソ、シアノ、ハロゲン類、アリールなどにより置換され得る。
【0052】
式(I)および式(I')で表される本発明の化合物、より詳細には上述の一般式に属する特定の化合物には、多重結合の有無に応じて異性体(例えば、Z、Eなど)が含まれ、キラル中心の有無によって光学異性体またはエナンチオマー などが含まれ得る。個々の異性体、エナンチオマー、またはジアステレオマー、およびそれらの混合物も、本発明の範囲内に含まれる。個々のエナンチオマーまたはジアステレオマー、およびそれらの混合物は、従来技術を用いて分離することができる。
【0053】
本発明の化合物は、遊離化合物としての結晶形態か、または溶媒和化合物であってもよく、いずれの形態も本発明の範囲内であることを意図するものである。この意味で、「溶媒和化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される溶媒和化合物を含み、すなわち、薬学的に許容される溶媒和化合物または塩の調製に有用と考えられるが薬学的に許容されない溶媒和化合物として薬剤の製造に使用され得る、式(I)または式(I')で表される化合物の溶媒和化合物を含む。薬学的に許容される溶媒和化合物の性質は、それが薬学的に許容される限り重要ではない。特定の実施形態では、溶媒和化合物は水和物である。溶媒和化合物は、当業者に周知の従来からの溶媒和法により得ることができる。
【0054】
式(I)もしくは式(I')の化合物、その異性体、塩、または溶媒和化合物は、治療に使用するために、薬学的に許容される形態または実質的に純粋な形態であることが好ましい。すなわち、該化合物は、薬学的に許容されるレベルの純度を有し、通常の医薬品添加物である希釈剤や担体などを含まず、通常の投与量レベルで有害と考えられる物質も含んでいないことが好ましい。活性物質の純度は、50%超が好ましく、70%超がより好ましく、90%超がさらにより好ましい。好ましい実施形態では、式(I)もしくは(I')の化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物の濃度は95%超である。
【0055】
特に明記されない限り、本発明の化合物は、1つまたは複数の同位体濃縮原子が存在することにおいてのみ異なる化合物も含む。例えば、水素が重水素もしくは三重水素で置換されているか、または炭素が13C-濃縮炭素もしくは14C-濃縮炭素、もしくは15N-濃縮窒素で置換されていることを除き、前述の構造を有する化合物は本発明の範囲に含まれる。
【0056】
治療用途の式(I)または式(I')で表される化合物は、固体形態でまたは薬学的に許容される希釈液に溶かした水性懸濁液として調製される。これらの調製物を任意の適切な投与経路で投与することができるが、その目的のために、調製物は選択した投与経路に適した医薬品形態で製剤化される。例えば、式(I)または式(I')の化合物は、デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、またはシクロデキストリンなどの助剤、ならびに固体製剤または液体製剤の調製で当業者に公知の任意の種類の医薬担体と混合される。特定の実施形態では、本発明で提供される式(I)または式(I')の化合物は、経口的、局所的、経直腸的、または非経口的(例えば、皮下、腹腔内、皮内、筋肉内、静脈内など)に投与される。薬剤投与の種々の医薬品形態、およびこれらを得るために必要な賦形剤に関する総説が、例えば、「Tratado de Farmacia Galenica」("Treatise on Galenic Pharmacy"), C. Fauli i Trillo, 1993, Luzan 5, S.A. Ediciones, Madridに記載されているか、または他の慣例集もしくはスペイン薬局方、ヨーロッパ薬局方、もしくは米国薬局方の同様の文献に記載されている。
【0057】
本発明に記載の化合物ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和化合物と、それらを含有する医薬組成物とは、併用療法を提供するために、他の追加的な薬剤と合わせて使用されてもよい。こうした追加的な薬剤は、その医薬組成物の一部であってもよいか、あるいは、式(I)もしくは式(I')の化合物またはその異性体、溶媒和化合物、もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の投与と同時または非同時に投与するために、別個の組成物の形態で供給されてもよい。
【0058】
本明細書および本特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprises)」およびその変化型の表現は、他の技術的特徴、追加物、成分、または工程を除外することを意図するものではない。当業者には、本発明の他の目的、利点、および特徴が、一つには本明細書から、また一つには本発明の実施から明らかになるであろう。以下の実施例および図面は例証のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】H2O2でダメージを与え、各種の化合物2~化合物9で処置した後の神経芽細胞腫SH-SY5Yにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、H2O2(1%DMSO中H2O2)、RES10μM+H2O2(1%DMSO中H2O2にレスベラトロールを加えたもの)である。
図2】H2O2でダメージを与え、各種の化合物10~化合物11で処置した後の神経芽細胞腫SH-SY5Yにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、H2O2(1%DMSO中H2O2)、RES10μM+H2O2(1%DMSO中H2O2にレスベラトロールを加えたもの)である。
図3】H2O2でダメージを与え、各種の化合物12~化合物13で処置した後の神経芽細胞腫SH-SY5Yにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、H2O2(1%DMSO中H2O2)、RES10μM+H2O2(1%DMSO中H2O2にレスベラトロールを加えたもの)である。
図4】H2O2でダメージを与え、各種の化合物14~化合物15で処置した後の神経芽細胞腫SH-SY5Yにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、H2O2(1%DMSO中H2O2)、RES10μM+H2O2(1%DMSO中H2O2にレスベラトロールを加えたもの)である。
図5】H2O2でダメージを与え、各種の化合物16~化合物20で処置した後の神経芽細胞腫SH-SY5Yにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、H2O2(1%DMSO中H2O2)、RES10μM+H2O2(1%DMSO中H2O2にレスベラトロールを加えたもの)である。
図6】LPSで炎症を引き起こし、各種の化合物2~化合物9で処置した後のRAWマクロファージにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、LPS単体(LPS(100ng/ml))、LPS+RES10μM(LPS(100ng/ml)+レスベラトロール)である。
図7】LPSで炎症を引き起こし、各種の化合物10~化合物11で処置した後のRAWマクロファージにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、LPS単体(LPS(100ng/ml))、LPS+RES10μM(LPS(100ng/ml)+レスベラトロール)である。
図8】LPSで炎症を引き起こし、各種の化合物12~化合物13で処置した後のRAWマクロファージにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、LPS単体(LPS(100ng/ml))、LPS+RES10μM(LPS(100ng/ml)+レスベラトロール)である。
図9】LPSで炎症を引き起こし、各種の化合物14~化合物15で処置した後のRAWマクロファージにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、LPS単体(LPS(100ng/ml))、LPS+RES10μM(LPS(100ng/ml)+レスベラトロール)である。
図10】LPSで炎症を引き起こし、各種の化合物16~化合物20で処置した後のRAWマクロファージにおける細胞生存率。対照は、DMSO(1%DMSO)、LPS単体(LPS(100ng/ml))、LPS+RES10μM(LPS(100ng/ml)+レスベラトロール)である。
図11】RAWマクロファージにおいてLPSで炎症を引き起こし、各種の化合物2~化合物9で処置した後の培地におけるTNF-アルファの濃度。
図12】RAWマクロファージにおいてLPSで炎症を引き起こし、種々の化合物2~化合物9で処置した後の培地におけるNOの濃度。
図13】RAWマクロファージにおいてLPSで炎症を引き起こし、種々の化合物2~化合物9で処置した後の培地におけるIL6の濃度。
図14】化合物RES、化合物6、化合物8、および化合物9の対照に対するAChE活性。ANOVA統計的検定を実施した後に、ダネット多重比較検定を行った。対照に対して#P<0.05、対照+PTZに対して*P<0.05、**P<0.01の場合には有意であるとみなされる。
図15】化合物RES、化合物11、化合物14、化合物15、および化合物17の、対照に対するAChE活性。ANOVA統計的検定を実施した後に、ダネット多重比較検定を行った。対照に対して#P<0.05、対照+PTZに対して*P<0.05、**P<0.01の場合には有意であるとみなされる。
図16】実施例6で行われた実験の計画概略。
図17-1】a)化合物RESおよび化合物15で処置したマウス群の運動能力(4つの動作パラメータの合計)の評価、b)化合物RESおよび化合物15で処置したマウス群のロータロッドにおける5日目の時間(秒)、c)化合物RESおよび化合物15で処置したマウス群の5日目の平均体重、d)化合物RESおよび化合物15で処置したマウス群の血漿におけるインターロイキンIL-6の量。
図17-2】同上。
図18-1】a)化合物15およびEAE-T対照で予防的に処置したマウス群の運動能力の評価、b)化合物RESおよびEAE対照(T無し)で予防的に処置したマウス群の運動能力の評価、c)化合物15およびEAE-T対照で治療的に処置したマウス群の運動能力の評価、d)化合物RESおよびEAE対照(T無し)で治療的に処置したマウス群の運動能力の評価。
図18-2】同上。
【実施例
【0060】
発明者らにより行った、本発明の生成物の有効性を示す試験により、本発明を以下に例証する。
【0061】
実施例1:レスベラトロールのシリル化誘導体の合成
【0062】
【化11】
【0063】
シリル化の一般的方法
レスベラトロール(1当量)とイミダゾール(2.5当量)とを、DMFと共に丸底フラスコに攪拌しながら加え(3ml/mmolのレスベラトロール)、0℃に冷却した。続いて、対応するシリルクロリド(1.4当量~1.55当量)を2回に分け、第1回目は半分を0時間時に、第2回目は残りの半分を3時間時に滴加した。反応物を室温で全6時間攪拌した。反応混合物を濾過し、水で希釈し、酢酸エチル(3×20ml)で抽出した。混合有機相をMgSO4で乾燥し、濾過して、乾燥するまで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでヘキサン/酢酸エチル混合物を用いて溶出することにより精製した。
【0064】
tert-ブチルジメチルシリル・レスベラトロール誘導体系
一般的な方法に従って、レスベラトロール(830mg、3.64mmol)とtert-ブチルジメチルシリルクロリド(849.55mg、5.64mmol)とを用いて、反応混合物をヘキサン/酢酸エチルの勾配(8:1~2:1)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した後に、化合物1、化合物2、および化合物3、さらにはモノシリル化誘導体を得た。
【0065】
【化12】
3,4',5-O-トリ-tert-ブチルジメチルシリル・レスベラトロール:化合物1。収率=5.8%、Rf=0.9(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)。
【0066】
【化13】
3,4',-O-トリ-tert-ブチルジメチルシリル・レスベラトロール:化合物2。収率=22.1%、Rf=0.65(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)。
【0067】
【化14】
3,5,-O-トリ-tert-ブチルジメチルシリル・レスベラトロール:化合物3。収率=6.4%、Rf=0.55(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)。
【0068】
トリイソプロピルシリル・レスベラトロール誘導体系
一般的な方法に従って、レスベラトロール(816mg、3.57mmol)とトリイソプロピルシリルクロリド(1.19、5.54mmol)とを用いて、反応混合物をヘキサン/酢酸エチルの勾配(10:1~1:1)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した後に、化合物4、化合物5、および化合物6、さらにはモノシリル化誘導体を得た。
【0069】
【化15】
3,4',5-O-トリ-トリイソプロピルシリル・レスベラトロール:化合物4。収率=19.4%、Rf=0.9(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.47 (d、J=8.3Hz、2H)、7.05 (d、J=16.2Hz、1H、CH)、6.95 (dd、J=12.4、6.4Hz、3H、CHおよびH)、6.74 (s、2H、H2およびH6)、6.44 (s、1H、H4)、1.41-1.33 (m、9H、CH-Si)、1.29-1.16 (m、54H、CH3)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=157.10、155.96、139.44、130.45、128.39、127.73、126.83、120.17、111.26、1 10.94、18.02、12.78。
【0070】
【化16】
3,4',-O-ジ-トリイソプロピルシリル・レスベラトロール:化合物5。収率=26.1%、Rf=0.65(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.34 (d、J=8.2Hz、2H)、6.96 (d、J=16.2Hz、1H)、6.83 (t、J=12.0Hz、3H)、6.64 (s、1H)、6.55 (s、1H)、6.33 (s、1H)、1.30-1.22 (m、6H)、1.11 (dd、J=16.0、7.4Hz、36H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=158.14、157.12、155.68、139.63、130.56、127.98、127.47、126.57、119.77、109.57、106.15、106.06、17.40、17.37、17.10、12.62、12.59、12.32。TOF MS-ES、質量計算値:C32H51O3Si2 [M-H]=539.3377、質量測定値:[M-H]=539.3390。
【0071】
【化17】
3,5,-O-ジ-トリイソプロピルシリル・レスベラトロール:化合物6。収率=8.7%、Rf=0.5(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。
【0072】
トリエチルシリル・レスベラトロール誘導体系
一般的な方法に従って、レスベラトロール(809mg、3.54mmol)とエチルシリルクロリド(1.19、5.49mmol)とを用いて、反応混合物をヘキサン/酢酸エチルの勾配(10:1~1:1)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した後に、化合物7、化合物8、および化合物9、さらにはモノシリル化誘導体を得た。
【0073】
【化18】
3,4',5-O-トリ-トリエチルシリル・レスベラトロール:化合物7。収率=3.8%、Rf=0.95(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.40 (d、J=8.5Hz、2H)、6.98 (d、J=16.2Hz、1H)、6.90-6.82 (m、3H)、6.64 (d、J=2.0Hz、2H)、6.31 (t、J=2.0Hz、1H)、1.04 (td、J=7.8、2.8Hz、26H)、0.78 (q、J=7.9Hz、18H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=156.61、155.45、139.48、130.60、128.44、127.73、126.76、120.17、111.41、110.93、6.66、5.03。質量計算値:C32H55O3Si3 [M+H]=571.3459、質量測定値:[M+H]=571.3460。
【0074】
【化19】
3,4',-O-トリ-トリエチルシリル・レスベラトロール:化合物8。収率=14.9%、Rf=0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.40 (d、J= 8.6Hz、2H)、6.98 (d、J=16.2Hz、1H)、6.91-6.82 (m、3H)、6.62 (s、1H)、6.61 (s、1H)、6.32 (s、1H)、1.09-1.02 (m、18H)、0.80 (q、J=7.9Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=156.92、156.69、155.45、139.94、130.58、128.82、127.83、126.47、120.25、110.96、106.52、106.40、6.67、6.64、5.03。TOF MS-ES+、質量計算値:C26H41O3Si2 [M+H]=457.2594、質量測定値:[M+H]=457.2593。
【0075】
【化20】
3,5-O-トリ-トリエチルシリル・レスベラトロール:化合物9。収率=6.8%、Rf=0.5(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:7.37 (d、J=8.3Hz、2H)、6.96 (d、J=16.2Hz、1H)、6.82 (t、J=12.6Hz、3H)、6.63 (s、2H)、6.25 (s、1H)、1.02 (t、J=7.9Hz、18H)、0.76 (q、J=7.9Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=157.11、156.55、140.04、128.84、128.66、127.64、127.55、125.16、115.19、110.99、110.08、48.34、48.13、47.92、47.70、47.49、47.28、47.06、5.77、4.66。TOF MS-ES+、質量計算値:C26H41O3Si2 [M+H]=457.2594、質量測定値:[M+H]=457.2586。
【0076】
トリイソプロピルシリル・レスベラトロールおよびエチルカルバミド・レスベラトロール誘導体系
イソシアン酸エチル(1.5当量)とトリエチルアミン(2当量)とを、3,4'-ジチイソプロピルシリル(dithiisopropylsilyl)・レスベラトロールまたは3,5-ジチイソプロピルシリル・レスベラトロール(1当量)のジクロロメタン溶液に加えた。室温で1時間反応させた後、反応物を濃縮し、クロマトグラフィーカラムでヘキサン:酢酸エチル(2:1~0:1)を用いて溶出することにより精製した。
【0077】
【化21】
3,4',-O-ジトリイソプロピルシリル-5-エチルカルバメート・レスベラトロール:化合物10。収率=80.2%。Rf=0.9(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)。1H (300MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.39 (d、J=8.5Hz、2H)、7.02 (d、J=16.2Hz、1H)、6.89 (dd、J=14.6、5.9Hz、5H)、6.60 (s、1H)、3.40-3.26 (m、2H)、1.30 (ddd、J=10.6、7.4、3.7Hz、9H)、1.15 (dd、J=7.0、3.1Hz、36H)。13C (75MHz、CDCl3)のNMR:δ=157.04、156.29、152.30、139.75、130.38、129.38、128.01、126.25、120.39、115.12、112.30、36.38、18.21、18.18、17.97、15.40、12.95、12.93、12.57。TOF MS-ES+、質量計算値:C35H57NO4Si2 [M+H]=612.3904、質量測定値:[M+H]=612.3907。
【0078】
【化22】
3,5-O-ジトリイソプロピルシリル-4-エチルカルバメート・レスベラトロール:化合物11。収率=85.6%。Rf=0.9(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)。1H (300MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.51 (d、J= 8.0Hz、2H)、7.15 (d、J=8.0Hz、2H)、7.01 (d、J= 16.4Hz、1H)、6.93 (d、J=16.1Hz、1H)、6.67 (s、2H)、6.38 (s、1H)、3.41-3.28 (m、2H)、1.32-1.22 (m、9H)、1.15 (d、J=7.2Hz、36H)。13C (75MHz、CDCl3)のNMR:δ=157.31、157.25、139.15、128.14、128.00、127.59、121.99、116.20、116.04、112.17、111.61、111.38、45.95、36.41、18.20、12.95。TOF MS-ES+、質量計算値:C35H57NO4Si2 [M+H]=612.3904、質量測定値:[M+H]=612.3900。
【0079】
トリイソプロピルシリルグルコシル・レスベラトロール誘導体系
攪拌しながら、不活性アルゴン雰囲気下で、3,4'-ジトリイソプロピルシリル・レスベラトロールまたは3,5-ジトリイソプロピルシリル・レスベラトロール(1当量)を無水ジクロロメタン15mLに溶解し、ペルアセチルグルコーストリフルオロアセトイミダート(1.5当量)と三フッ化ホウ素エーテラート(0.1当量)とを加えた。30分間反応させた後、トリエチルアミン5mLを加え、濃縮し、シリカゲル精製カラムに加え、ヘキサンと酢酸エチル(5:1)の混合物を用いて溶出した。得られた生成物を、ジクロロメタン、水、およびメタノール(5mL、2:1:2)の混合液に溶解し、炭酸水素ナトリウム(3当量)を加えた。グルコース単位の中のアセテート単位を脱保護した後に(24時間~48時間)、反応物を濃縮し、カラムクロマトグラフィーでヘキサン:酢酸エチル(1:1~1:3)を用いて溶出することにより精製した。
【0080】
【化23】
3,4'-O-ジトリイソプロピルシリル-5-グルコシル・レスベラトロール:化合物12。収率=70.6%。Rf=0.05(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)。1H (500MHz、CD3OD)のNMR:δ=7.43 (d、J=8.6Hz、2H)、7.05 (d、J=16.3Hz、1H)、6.98-6.89 (m、2H)、6.87 (d、J=8.6Hz、2H)、6.70 (s、1H)、6.55 (t、J=2.0Hz、1H)、4.92-4.88 (m、1H)、3.94-3.88 (m、1H)、3.75 (dd、J=1 1.9、4.8Hz、1H)、3.52-3.38 (m、4H)、1.36-1.23 (m、6H)、1.18-1.10 (m、36H)。13C (126MHz、CD3OD)のNMR:δ=158.94、156.93、155.80、139.83、130.51、128.55、127.51、126.04、119.69、111.96、107.30、107.07、101.13、76.86、76.59、73.48、69.90、61.01、17.05、16.99、12.53、12.51。TOF MS-ES+、質量計算値:C38H62O8Si2 [M+Na]=725.3881、質量測定値:[M+Na]=725.3682。
【0081】
【化24】
3,5-O-ジトリイソプロピルシリル-4'-グルコシル・レスベラトロール:化合物13。収率=75.3%。Rf=0.05(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)。1H (500MHz、CD3OD)のNMR:δ=7.48 (d、J=8.7Hz、2H)、7.09 (d、J=8.7Hz、2H)、6.95 (q、J=16.3Hz、3H)、6.66 (d、J=2.0Hz、2H)、6.32 (t、J=2.1Hz、1H)、4.96-4.90 (m、1H)、3.91 (dd、J=12.1、1.9Hz、1H)、3.73 (dd、J=12.1、5.3Hz、1H)、3.51-3.47 (m、2H)、3.45 (dd、J=5.0、1.7Hz、1H)、3.44-3.38 (m、1H)、1.31-1.23 (m、6H)、1.14 (d、J=7.3Hz、36H)。13C (126 MHz、CD3OD)のNMR:δ=157.41、156.96、139.63、131.54、128.05、127.37、126.65、116.54、110.93、110.28、100.83、76.75、76.57、73.49、69.94、61.10、17.05、12.55。TOF MS-ES+、質量計算値:C38H62O8Si2 [M+Na]=725.3881、質量測定値:[M+Na]=725.3907。
【0082】
トリイソプロピルシリルオクタノイル-グルコシル・レスベラトロール誘導体系
3,4'-O-ジトリイソプロピルシリル-5-グルコシル・レスベラトロールまたは3,5-O-ジトリイソプロピルシリル-4'-グルコシル・レスベラトロール(1当量)を、メチルtert-ブチルエーテルと、オクタン酸ビニル(3当量)と、酵素のLypozyme TL IM(登録商標)(レスベラトロール誘導体とグラム単位で同量)との混合物に溶解した。3日間反応させた後に、酵素を濾過し、酢酸エチルとメタノールとで洗浄した。溶媒を濃縮した後、それをシリカカラムのクロマトグラフィーでヘキサン:酢酸エチル(2:1~1:3)を用いて溶出することにより精製した。
【0083】
【化25】
3,4'-O-ジトリイソプロピルシリル-5-(-6-オクタノイル)グルコシル・レスベラトロール:化合物14。収率=75.3%。Rf=0.05(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)。1H (500MHz、CDCl3)のNMR:δ=1H NMR (500MHz、CDCl3) δ=7.37 (d、J=8.5Hz、2H)、7.12 (d、J=8.5Hz、1H)、6.98 (d、J=16.1Hz、2H)、6.87 (d、J=8.5Hz、2H)、6.75 (s、1H)、6.73 (s、1H)、4.94-4.87 (m、1H)、4.75-4.70 (m、1H)、4.59-4.48 (m、2H)、3.69-3.60 (m、3H)、1.28-1.25 (m、18H)、1.15-1.07 (m、36H)、0.91-0.89 (m、3H)。13C (126MHz、CDCl3)のNMR:δ=171.07、139.75、130.16、127.72、126.19、120.16、119.68、115.09、112.90、109.58、107.50、106.00、104.78、102.13、100.89、66.80、60.38、45.71、38.73、34.00、31.91、30.40、29.69、29.35、28.91、24.47、23.78、22.68、21.03、20.82、17.94、17.89、17.86、14.18、14.10、12.67、12.62、12.54、10.96、8.76。TOF MS-ES-、質量計算値:C46H76O9Si2 [M-H]=827.4950、質量測定値:[M-H]=827.4922。
【0084】
【化26】
3,5-O-ジトリイソプロピルシリル-4'-(6-オクタノイル)グルコシル・レスベラトロール:化合物15。収率=15.5%。Rf=0.07(ヘキサン:酢酸エチル=1:2)。1H (300MHz、CDCl3)のNMR:δ 7.45 (d、J=8.5Hz、2H)、7.07 (d、J=8.4Hz、2H)、6.93 (q、J=16.2Hz、2H)、6.66 (s、2H)、6.37 (s、1H)、4.96 (d、J=6.0Hz、1H)、4.43 (m、2H)、3.77-3.55 (m、4H)、2.36 (t、J=7.5Hz、2H)、1.63 (d、J=6.8Hz、2H)、1.29-1.24 (m、8H)、1.14 (d、J=7.0Hz、36H)、0.92-0.84 (m、3H)。13C (75MHz、CDCl3)のNMR:δ=174.78、157.28、139.28、132.63、127.93、117.30、111.52、74.32、73.59、34.47、31.88、29.97、29.36、29.17、25.12、22.84、18.18、14.29、12.94。TOF MS-ES+、質量計算値:C46H76O9Si2 [M+Na]=851.4926、質量測定値:[M+Na]=851.4966。
【0085】
アシル基を有するトリエチルシリル・レスベラトロール誘導体系
3,5-O-トリエチルシリル・レスベラトロール(9)(1当量)をtert-ブタノールに溶解し、対応する脂肪酸のビニルエステル(6当量)とNovozyme 435(登録商標)(約100mg)とを加えた。反応物を回転振盪させながら50℃で60時間反応させた。反応させた後、酵素を除去するために反応物を濾過し、少量のメタノールで洗浄した。得られた粗製物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより移動相としてヘキサンと酢酸エチルとの混合物の勾配(100:0~1:1)を用いて精製した。
【0086】
【化27】
3,5-O-トリエチルシリル-4'-プロパノイル・レスベラトロール:化合物16。収率=34.0%。Rf=0.35(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ= 7.37 (d、J=8.3Hz、2H)、6.94 (d、J= 16.2Hz、1 H)、6.87-6.73 (m、3H)、6.60 (d、J= 2.3Hz、2H)、6.28 (t、J=2.1Hz、1 H)、2.33 (q、2H)、1.66 (t、3H)、1.01 (t、J=7.9Hz、18H)、0.75 (q、J=7.9Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=180.10 (CO)、156.55 (2×Cq)、155.26 (Cq)、139.39 (Cq)、130.20 (Cq)、128.24 (CH 芳香族)、127.91 (2×CH 芳香族)、126.60 (CH 芳香族)、115.56 (2×CH 芳香族)、111.38 (2×CH 芳香族)、110.93 (CH 芳香族)、29.67 (CH2CO)、14.06 (CH3 CH2CO)、6.60 (6×CH2Si)、5.00 (6×CH3CH2Si)。
【0087】
【化28】
3,5-O-トリエチルシリル-4'-ブタノイル・レスベラトロール:化合物17。収率=39.0%。Rf=0.29(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.37 (d、J= 8.0Hz、2H)、6.93 (d、J=16.2Hz、1H)、6.87-6.76 (m、3H)、6.60 (d、J=2.2Hz、2H)、6.27 (t、J=2.1Hz、1H)、2.34 (t、2H)、1.66 (m、2H)、1.00 (t、J=7.9Hz、18H)、0.94 (t、3H)、0.74 (q、J=7.9Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=179.26 (CO)、156.55 (2×Cq)、155.32 (Cq)、139.40 (Cq)、130.14 (Cq)、128.25 (CH 芳香族)、127.91 (2×CH 芳香族)、126.56 (CH 芳香族)、115.57 (2×CH 芳香族)、111.38 (2×CH 芳香族)、110.91 (CH 芳香族)、29.65 (CH2CO)、22.66 (CH2CH3)、14.06 (CH3)、6.60 (6×CH2Si)、4.99 (6×CH3CH2Si)。
【0088】
【化29】
3,5-O-トリエチルシリル-4'-ヘキサノイル・レスベラトロール:化合物18。収率=66.0%。Rf=0.29(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.36 (d、J=8.0Hz、2H)、6.93 (d、J= 16.2Hz、1H)、6.85-6.76 (m、3H)、6.59 (d、J= 2.2Hz、2H)、6.26 (t、J=2.2Hz、1H)、2.33 (t、J=7.5Hz、2H)、1.70-1.56 (m、2H)、1.32 (m、2H)、1.00 (t、J=7.9Hz、18H)、0.92-0.84 (m、3H)、0.79-0.69 (m、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=180.26 (CO)、156.54 (2×Cq)、155.39 (Cq)、139.41 (Cq)、130.07 (Cq)、128.28 (CH 芳香族)、127.88 (2×CH 芳香族)、126.49 (CH 芳香族)、1 15.57 (2×CH 芳香族)、1 11.36 (2×CH 芳香族)、110.88 (CH 芳香族)、34.02 (CH2CO)、31.16 (CH2 CH2)、24.33 (CH2 CH2)、22.24 (CH2CH3)、13.80 (CH3)、6.58 (6×CH2Si)、4.98 (6×CH3CH2Si)。
【0089】
【化30】
3,5-O-トリエチルシリル-4'-オクタノイル・レスベラトロール:化合物19。収率=63.0%。Rf=0.25 (ヘキサン:酢酸エチル=8:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.36 (d、J=8.3Hz、2H)、6.93 (d、J=16.3Hz、1H)、6.87-6.72 (m、3H)、6.59 (d、J=2.2Hz、2H)、6.26 (t、J=2.2Hz、1H)、2.33 (t、J=7.5Hz、2H)、1.62 (q、J=7.4Hz、2H)、1.29 (m、8H)、1.00 (t、J=7.9Hz、18H)、0.86 (t、J= 6.6Hz、3H)、0.74 (q、J= 7.9Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=180.38 (CO)、156.54 (2×Cq)、155.43 (Cq)、139.40 (Cq)、130.04 (Cq)、128.27 (CH 芳香族)、127.87 (2×CH 芳香族)、126.48 (CH 芳香族)、115.56 (2×CH 芳香族)、111.34 (2×CH 芳香族)、110.87 (CH 芳香族)、34.07 (CH2CO)、31.58 (CH2 CH2)、28.97 (CH2 CH2)、28.85 (CH2 CH2)、24.64 (CH2 CH2)、22.54 (CH2CH3)、13.98 (CH3)、6.58 (6×CH2Si)、4.98 (6×CH3CH2Si)。
【0090】
【化31】
3,5-O-トリエチルシリル-4'-デカノエート・レスベラトロール:化合物20。収率=89.0%。Rf=0.25(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)。1H (400MHz、CDCl3)のNMR:δ=7.36 (d、J=8.2Hz、2H)、6.93 (d、J=16.2Hz、1H)、6.88-6.74 (m、3H)、6.59 (d、J=2.2Hz、2H)、6.26 (t、J=2.2Hz、1H)、2.33 (t、J=7.5Hz、2H)、1.62 (q、J=7.4Hz、2H)、1.41-1.18 (m、12H)、1.00 (t、J=7.9Hz、18H)、0.86 (t、J=6.8Hz、3H)、0.74 (q、J=7.8Hz、12H)。13C (101MHz、CDCl3)のNMR:δ=180.43 (CO)、156.54 (2×Cq)、155.48 (Cq)、139.42 (Cq)、130.00 (Cq)、128.30 (CH 芳香族)、127.86 (2×CH 芳香族)、126.44 (CH 芳香族)、115.57 (2×CH 芳香族)、111.34 (2×CH 芳香族)、110.86 (CH 芳香族)、34.08 (CH2CO)、31.82 (CH2 CH2)、29.35 (CH2 CH2)、29.21 (CH2 CH2)、29.20 (CH2 CH2)、29.02 (CH2 CH2)、24.64 (CH2 CH2)、22.62 (CH2 CH3)、14.02 (CH3)、6.57 (6×CH2Si)、4.98 (6×CH3CH2Si)。
【0091】
実施例2:生存率および神経保護の評価
コラーゲン(100ng/ml)で前処理し、ペニシリン/ストレプトマイシンと10%不活化ウシ胎児血清とを補充したF12培地を入れたペトリ皿で、SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株を培養した。
【0092】
ニューロンを用いた細胞生存率アッセイの準備は、コラーゲンで前処理した96ウェルプレートで、100μLの体積に1ウェルあたり20,000個の細胞を播種し、化合物を加える前にその細胞を24時間インキュベーションすることにより行った。評価する化合物をDMSOに溶解し、3つの異なる濃度(1μM、10μM、100μM)で加え、その毒性を測定した。各ウェルにおけるDMSOの最終的な割合を1%に調節した。化合物を加えた24時間後に、MTTアッセイを製造業者の方法に従って行い細胞生存率を評価した。平均値と標準偏差とを、数回の独立した実験から得た少なくとも8つの異なる測定値から計算した。
【0093】
神経保護評価のために、ニューロンを培養し、細胞生存率の評価で用いた方法と同じ方法で播種した。評価する化合物をDMSOに溶解し、3つの異なる濃度(1μM、10μM、100μM)で加え、10分インキュベーションした後に過酸化水素(100μM)を培地に加えた。各ウェルにおけるDMSOの最終的な割合を1%に調節した。化合物を加えた24時間後に、MTTアッセイを製造業者の方法に従って行い細胞生存率を評価した。平均値と標準偏差とを、数回の独立した実験から得た少なくとも8つの異なる測定値から計算した。本発明の化合物とH2O2とを各実験の陽性対照(ニューロン+H2O2)に加えた後に、ニューロン生存率実験の結果を標準化することにより、神経回復について計算した。
【0094】
RES10μMの対照は、細胞生存率が最大50%まで回復することがわかる(図1図5の破線で表示)。一方で、本発明のシリル化誘導体の多くは、濃度1μΜ~100μΜで80%~120%生存率が回復している。一部は100μΜで毒性を示していると考えられる。
【0095】
実施例3:炎症性評価
RAW264.7マクロファージをP75で、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%不活化ウシ胎児血清を補充した高グルコースDMEMを用いて培養した。
【0096】
RAWマクロファージを用いた細胞生存率アッセイの準備は、96ウェルプレートで100μLの体積に1ウェルあたり25,000個の細胞を播種し、化合物を加える前にその細胞を4時間インキュベーションすることにより行った。評価する化合物をDMSOに溶解し、3つの異なる濃度(1μM、10μM、100μM)で加え、その毒性を測定した。各ウェルにおけるDMSOの最終的な割合を1%に調節した。化合物を加えた24時間後に、MTTアッセイを製造業者の方法に従って行い細胞生存率を評価した。平均値と標準偏差とを、数回の独立した実験から得た少なくとも8つの異なる測定値から計算した。
【0097】
LPSの添加により生じるダメージを軽減させることについて評価するために、RAW264.7マクロファージを上述の手順に従って培養した。評価する化合物をDMSOに溶解し、3つの異なる濃度(1μM、10μM、100μM)で加え、10分インキュベーションした後にLPS(100ng/ml)を培地に加えた。各ウェルにおけるDMSOの最終的な割合を1%に調節した。化合物を加えた24時間後に、MTTアッセイを製造業者の方法に従って行い細胞生存率を評価した。平均値と標準偏差とを、数回の独立した実験から得た少なくとも8つの異なる測定値から計算した。
【0098】
この評価では、10μMのレスベラトロール対照は、細胞生存率が最大62%まで回復することがわかる(図6図10の破線で表示)。一方で、本発明のシリル化誘導体のいくつかは、濃度1μΜ~100μΜでさらに細胞生存率が回復している。一部は100μΜで毒性を示していると考えられる。
【0099】
実施例4:LPSを用いた評価における炎症性パラメータの測定
サイトカインの生成を測定するために、5×105個のRAW264.7マクロファージを24ウェルプレートに播種した(1つのウェルあたり0.5ml)。続いて、評価する化合物を加え(10μM)、マクロファージを、LPS(1μg/ml)を培養培地に添加することによって刺激するか、または刺激しなかった。24時間後、上清のIL-6とTNF-αのレベルを、ELISAでBD PharMingenとPrepoTechから入手した捕捉抗体およびビオチン化抗体を用いて既知のプロトコルに従って測定した。培地の亜硝酸塩の濃度を、グリース試薬を用いて確立されたプロトコルに従って測定することで、24時間時の上清のNOレベルを間接的に測定した。各測定値に対しては最小限、2つの独立した実験と、1つの実験あたり3回の反復測定とを行った。値は平均±標準偏差として表した。
【0100】
前述の評価において、RESかまたは本発明の化合物のいくつか(化合物2、3、5、6、8、および9)で処理した後に、種々の炎症性パラメータのレベルをELISAにより測定した(TNF-α、NO、およびIL-6)。
【0101】
RES10μM対照では、炎症性パラメータ値(TNF-α、NO、およびIL-6)が有意に減少していることがわかる(それぞれ図11図12図13において、太線の棒で表示)。一方で、本発明のシリル化誘導体のいくつかでは、RESよりも良くなり、これらのパラメータ値がさらに減少している。
【0102】
実施例5:ペンチレンテトラゾール(PTZ)により誘発されるゼブラフィッシュ幼生の神経変性モデルにおける様々なシリル化化合物の神経保護能の評価
本評価の目的は、神経毒ペンチレンテトラゾール(PTZ)により誘発される神経毒性モデルにおける様々なレスベラトロールの誘導体の保護効果を分析することである。実験モデルとして、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いて、受精5日後(5dpf)の幼生において化合物がアセチルコリンエステラーゼ活性(AChE)に及ぼす影響を検討した。
【0103】
ゼブラフィッシュの中枢神経系(CNS)を検討したところ、発育24時間で、胚の脳が既に分裂し、神経管、脊索、体節(筋肉および骨前駆体)などの複数の構造を有することが示されている。受精5日目(5dpf)で、この動物は目や耳石といった感覚器官を形成していた。さらに、心臓、肝臓、腎臓、および膵臓、ならびに循環器系、消化器系、および神経系が完全に機能するようになる。この段階で、視覚刺激、嗅覚刺激、機械的刺激に応答することができ、食料を探し始める。
【0104】
ゼブラフィッシュ胚をペトリ皿で希釈水(AD)50ml中に播種し、5dpf(幼生期)まで成長させた。いかなる種類の外面的な異常も示さなかった幼生のみを用いて評価を行った。続いて、パスツールピペットを用いて24ウェルのマイクロプレートに幼生を移し、各ウェルに5つの幼生が含まれ、1実験条件あたり10個の複製を作製するようにした。まず、5dpfの幼生の前処理を行った。このために幼生を、2つの対照群(対照、および対照+PTZ)用のADと、20μMのフィゾスチグミン(Phys)(Phys群に対する酵素AChEの市販の阻害剤)と、濃度10μMの評価化合物とのそれぞれ2ml量で、26±1℃で1時間インキュベートした。次に培地を交換し、幼生を化合物と5mMのPTZとで26±1℃にて6時間インキュベートした。このインキュベーションが終了した後に、全ての幼生を調べ、幼生の状態が目に見える異常または異常な挙動の無い完全に正常な状態であるかを調べた。最後に、幼生をAChE活性の分析にかけた。
【0105】
AChEレベルを測定するために、実験が完了すると、確立した技術研究プロトコルに従って幼生を処理した。幼生を機械的にホモジナイズし、その試料を遠心分離して上清を得て、それを用いてAChE酵素のレベルを施した処理別に測定した。さらに、各実験群の全タンパク質を、確立した技術研究プロトコルに従って測定した。最後に、対照群で測定したAChEレベルを参照測定値とし、100%とみなした。
【0106】
本評価の結果から、シリル化誘導体9(3,5-ジチリルシリル・レスベラトロール)および15(3,5-O-ジトリイソプロピルシリル-4'-(6-オクタノイル)グルコース・レスベラトロール)が、5dpfの幼生においてPTZにより誘発されるAChE活性の減少を有意に抑制し、明らかな神経保護効果を示すことがわかった(図14および図15を参照)。シリル化誘導体8、14、17は、レスベラトロール(RES)で観察された神経保護効果と同様の比較的小さい神経保護効果を示している。
【0107】
実施例6:ハンチントン病の動物モデルにおける化合物15の評価
化合物15を、ハンチントン病のマウスモデルにおける可能性のある治療法として調べた。化合物のレスベラトロール(RES)を参照として追加した。
【0108】
本モデルでは、3-ニトロ-プロピオン酸(3NP)の量を増加させてマウスに注射し、ハンチントン病と極めて類似する表現型で、機械的さらには病理学的に病変をもたらす。ダメージを引き起こした後、RES、化合物15、またはビヒクルでマウスを処置し、種々のパラメータに基づいてマウスへの影響を検討した。行動学的研究(ロータロッド試験)として運動能力を評価し(全身性マウスジストニア、反転能力、および探検能力などの何種類かのパラメータにおいて、0(標準)から4(不能)の段階に分けて一覧にし)、体重をモニタリングし、続いて血漿または脳における炎症性サイトカインの阻害などについて測定を行った。
【0109】
本実験計画について図16に示す。#=行動学的研究およびロータロッド試験、Φ化合物の投与、W=マウスの週齢、D=実験の日数。
【0110】
結果を図17に示す。いずれの場合においても、化合物15は、運動障害の重症度を軽減させるか、もしくはIL-6などの炎症性サイトカインのレベルを低減させることによって、または動物の体重を増やすことによって、3NPにより生じる表現型を改善できることがわかる。化合物15とRESとの違いは大きくはないが、これはこの動物モデルが簡略化されており、かなり極端であるからである。神経損傷、運動損傷、および炎症性損傷がさらにゆっくりとかつ進行性となるモデルで化合物15を評価することが望ましいであろう。その方が患者の現実をより現しており、進行性モデルの方が治療がさらに有効になると考えられるからである。
【0111】
実施例7:多発性硬化症の動物モデルにおける化合物15の評価
化合物15を、多発性硬化症のマウスモデルにおける可能性のある治療法として調べた。化合物のレスベラトロール(RES)を参照として追加した。実験的なアレルギー性脳脊髄炎モデル(EAE)を多発性硬化症の動物モデルとして使用した。
【0112】
このモデルでは、疾患を誘発するために、マウスにミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG、MOG35-55はMOG糖タンパク質の35位~55位の配列に相当する21番目のアミノ酸ペプチドである)と、ウイルス百日咳(百日咳毒素、PTX)とを注射した。誘発した2日後、一部のマウスがEAEの症状を示さなかったため、ウイルスを新たに追加投与した。ダメージを引き起こした後、RES、化合物15、またはビヒクルでマウスを処置し、種々の運動パラメータに基づいてマウスへの影響を0(標準)から4(不能)の段階に分けて検討した。
【0113】
本実験計画について以下に示す:
【0114】
実験群:
-Tween 80乳化剤を含まないビヒクル(対照EAE(T無し))
-Tween 80乳化剤を含むビヒクル(EAE-T対照)
-予防用RES(Tween 80乳化剤を含まない)(RES-PREV)
-治療用RES(Tween 80乳化剤を含まない)(RES-TERAP)
-予防用化合物15(Tween 80乳化剤を含む)(化合物15-PREV)
-治療用化合物15(Tween 80乳化剤を含む)(化合物15-TERAP)
【0115】
予防的レジメン(前処置PREV):化合物(レスベラトロール、化合物15、およびビヒクルであり、Tween 80を含む場合も含まない場合もある)の(腹腔内)投与を誘発5日後に開始する。試験する化合物(20mg/kg)の250μLを週に2回注射し、治療を3週間行った。その後治療を中止したが、マウスの状態をさらに3週間(全47日間)モニタリングした。
【0116】
治療的レジメン(治療TERAP):化合物(レスベラトロール、化合物15、およびビヒクルであり、Tween 80を含む場合も含まない場合もある)の(腹腔内)投与を誘発12日後に開始する。試験する化合物(20mg/kg)の250μLを週に2回注射し、治療を2週間行った。その後治療を中止したが、マウスの状態をさらに3週間(全47日間)モニタリングした。
【0117】
予防的処置を行った場合(図18aおよび図18bを参照)、化合物15は運動能力に大きな効果を及ぼしていないことがわかる(a)。一方で、RESは予防的処置により運動レベルにおけるダメージを低減している(b)。
【0118】
治療的処置を行った場合(図18cおよび18dを参照)、化合物15は対照に比べて、特に試験20日~30日の間(化合物の投与2週間目)でマウスの運動能力の臨床的分類を改善することがわかる。また、薬剤の投与を中断した後でも、臨床的分類の改善が30日~47日間維持されたことも明らかになっている。対照的に、RESを治療用として投与する場合、マウスには生じたダメージについて改善が見られていない。
【0119】
Tween 80乳化剤がそれ自体、薬理作用を有すると考えられ(予防的処置群の対照を参照(a対b))、このことが、多発性硬化症モデルにおけるダメージ低減において、少なくとも部分的に化合物15の想定される作用を不明瞭にする可能性があることも明記されるべきである。
【0120】
各化合物(RESおよび化合物15)の20mg/kgを投与したが、2つの化合物の分子量が大きく異なること(化合物15の分子量=3×RESの分子量)を考慮すると、投与量はバランスのとれたものではない。しがたって、RESの投与量(μmol/kg)≒3×化合物15の投与量となるはずである。そのため、2つの化合物はEAEの処置で同様な有効性を示しているが、化合物15はRESよりもかなり低い濃度で有効性を示しており、有効性がさらに高いと言える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】