(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのデジタルビーム形成
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20220602BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20220602BHJP
G01S 13/48 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S7/03 220
G01S13/48
(21)【出願番号】P 2019551702
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 US2018025489
(87)【国際公開番号】W WO2018222266
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-12-06
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リエン,ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】グー,チャンジャン
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166859(JP,A)
【文献】特開2016-001175(JP,A)
【文献】特開2002-055160(JP,A)
【文献】特開2014-036325(JP,A)
【文献】特開昭63-283302(JP,A)
【文献】特表2013-515275(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152902(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/062566(WO,A1)
【文献】特開2007-208702(JP,A)
【文献】特表2013-539854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S13/00-13/95
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
アンテナアレイと、
複数の受信機を含む無線通信チップセットを含み、前記無線通信チップセットは、
前記複数の受信機の一部を、デジタルビーム形成に用いられる複数個の受信機として選択し、
前記選択に基づいて、選択された複数個の受信機を、前記アンテナアレイ内の複数個のアンテナ素子とそれぞれ接続し、
ターゲットによって反射されたレーダー信号を、前記選択された複数個の受信機を介して受信し、
前記選択された複数個の受信機を介してベースバンドデータを生成するように構成され、前記ベースバンドデータは、受信された前記レーダー信号に基づいており、前記無線通信チップセットはさらに、
前記アンテナアレイの前記複数個のアンテナ素子への前記選択された複数個の受信機の前記接続に基づいて
、前記アンテナアレイ内のいずれのアンテナ素子が前記選択された複数個の受信機に接続されているかに応じた、前記選択された複数個の受信機に対応する複数の複合重みを
設定し、
前記複数の複合重みをデジタルビーム形成器に提供するように構成され、前記装置はさらに、
前記デジタルビーム形成器を含み、前記デジタルビーム形成器は、
前記選択された複数個の受信機によって生成された前記ベースバンドデータを
複数個取得し、
前記ターゲットの角度位置が判定されることを可能にするように、
取得された前記
複数個のベースバンドデータに
、前記選択された複数個の受信機にそれぞれ対応する複合重みを乗算することによって
、異なる角度についての振幅および位相情報を表す空間応答を生成するように構成される、装置。
【請求項2】
前記無線通信チップセットは、無線通信のための通信信号を、前記選択された複数個の受信機を介して受信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記無線通信チップセットに、無線通信のための前記通信信号を受信させる、または、レーダー感知のための前記レーダー信号を受信させるように構成されたコントローラを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アンテナアレイ内の前記複数個のアンテナ素子は、2次元配置で配置され、
前記無線通信チップセットは、前記複数個のアンテナ素子と前記選択された複数個の受信機との間にそれぞれ結合された複数個のスイッチと、コントローラとを含み、
前記コントローラは、前記複数個のスイッチに、前記複数個のアンテナ素子を前記選択された複数個の受信機に接続することを行なわせることによって、前記無線通信チップセットが、前記複数個のアンテナ素子を使用して前記レーダー信号を受信可能となるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記複数個のアンテナ素子間の間隔、
前記レーダー信号の中心波長、および、
前記アンテナアレイ内の前記複数個のアンテナ素子の2次元配置、
のうちの少なくとも1つに基づいて、前記アンテナアレイの前記複数個のアンテナ素子を選択するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記選択された複数個の受信機から前記ベースバンドデータを取得し、
前記ベースバンドデータを分析することによってノイズ源の角度位置を判定し、
前記ノイズ源の前記角度位置の近くにアンテナパターンのヌルを位置付ける前記複数の複合重みを生成するように構成され、
前記デジタルビーム形成器は、
前記コントローラから前記複数の複合重みを取得し、
前記空間応答における前記ノイズ源を減衰させるために、前記複数の複合重みに基づいて前記空間応答を生成するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記ベースバンドデータは、同相および直交位相データを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記空間応答は、複数のターゲットがレーダー感知のために分解されることを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アンテナアレイは、前記無線通信チップセット内に一体化される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
方法であって、
複数の受信機の一部を、デジタルビーム形成に用いられる複数個の受信機として選択するステップと、
前記選択に基づいて、選択された複数個の受信機を、アンテナアレイ内の複数個のアンテナ素子とそれぞれ接続するステップと、
前記アンテナアレイ内の前記複数個のアンテナ素子への前記選択された複数個の受信機の前記接続に基づいて
、前記アンテナアレイ内のいずれのアンテナ素子が前記選択された複数個の受信機と接続されているかに応じた、前記選択された複数個の受信機に対応する複数の複合重みを
設定するステップと、
前記複数の複合重みをデジタルビーム形成器に提供するステップと、
ターゲットによって反射されたレーダー信号を、前記複数個のアンテナ素子および前記選択された複数個の受信機を介して受信するステップと、
前記選択された複数個の受信機を介して、受信された前記レーダー信号に基づいたベースバンドデータ
を複数個生成するステップと、
前記
複数個のベースバンドデータを前記デジタルビーム形成器に提供するステップと、
提供された前記
複数個のベースバンドデータに
、前記選択された複数個の受信機にそれぞれ対応する複合重みを乗算することによって、前記デジタルビーム形成器を介して、
異なる角度についての振幅および位相情報を表す空間応答を生成するステップと、
前記空間応答に基づいて前記ターゲットの角度位置を判定するステップとを含む、方法。
【請求項11】
前記ターゲットの前記角度位置を判定するステップに関連付けられた角度曖昧性を制御するために、前記アンテナアレイの前記複数個のアンテナ素子を選択するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲットは、ユーザの手であり、
前記方法は、
前記手の前記角度位置に関連付けられたジェスチャーを判定するステップ、または、
前記手の前記角度位置に基づいて前記ユーザの近接を検出するステップ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アンテナアレイの前記複数個のアンテナ素子に複数個の送信機を接続するステップと、
デバイスと無線通信するために、前記複数個のアンテナ素子を介して無線通信信号を送信するステップとをさらに含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アンテナアレイを介した前記無線通信信号の送信と、前記アンテナアレイを介した前記レーダー信号の受信とを切換えるステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アンテナアレイの他の複数個のアンテナ素子に複数個の送信機を接続するステップと、
前記他の複数個のアンテナ素子を介して無線通信信号を送信し、同時に前記複数個のアンテナ素子を介して前記レーダー信号を受信するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記無線通信信号および前記レーダー信号は、異なる無線通信チャネルに関連付けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記無線通信信号および前記レーダー信号は、互いに直交している、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
プロセッサによる実行に応答してコントローラとデジタルビーム形成器とを実現するコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ読取可能プログラムであって、
前記コントローラは、
複数の受信機の一部を、デジタルビーム形成に用いられる複数個の受信機として選択し、
前記選択に基づいて、選択された複数個の受信機を、アンテナアレイ内の複数個のアンテナ素子とそれぞれ接続し、
前記アンテナアレイの前記複数個のアンテナ素子への前記選択された複数個の受信機の前記接続に基づいて
、前記アンテナアレイ内のいずれのアンテナ素子が前記選択された複数個の受信機に接続されているかに応じた、前記選択された複数個の受信機に対応する複数の複合重みを
設定し、
前記複数の複合重みを前記デジタルビーム形成器に提供するように構成され、
前記デジタルビーム形成器は、
前記選択された複数個の受信機の各々に関連付けられたベースバンドデータを、前記選択された複数個の受信機から取得するように構成され、
複数個の前記ベースバンドデータは、ターゲットによって反射されて前記選択された複数個の受信機および複数個のアンテナ素子によって受信されたレーダー信号から得られ、前記デジタルビーム形成器はさらに、
前記ターゲットの角度位置が判定されることを可能にするように、
取得された前記
複数個のベースバンドデータに
、前記選択された複数個の受信機にそれぞれ対応する複合重みを乗算することによって、
異なる角度についての振幅および位相情報を表す空間応答を生成するように構成される、コンピュータ読取可能プログラム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記複数個のアンテナ素子間のそれぞれの間隔が互いにほぼ等しくなるように前記複数個のアンテナ素子を選択するように構成される、請求項18に記載のコンピュータ読取可能プログラム。
【請求項20】
前記コントローラは、
複数の送信機の一部の送信機を選択し、
前記一部の送信機を、前記アンテナアレイの他のアンテナ素子に接続し、
前記他のアンテナ素子を使用して、前記一部の送信機に前記レーダー信号を送信させるように構成される、請求項18に記載のコンピュータ読取可能プログラム。
【請求項21】
請求項10~17のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2017年5月31日に出願された米国仮出願第62/512,943号の優先権を主張する、2018年3月22日に出願された米国通常出願第15/928,273号の利益を主張する。これらの出願の開示は、それら全体がここに引用により援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
レーダーは、物体を検出して追跡し、表面をマッピングし、ターゲットを認識することができる有用なデバイスである。多くの場合、レーダーは、カメラのようなかさ高く高価なセンサに取って代わり、薄暗い照明や霧といった異なる環境条件の存在下で、もしくは、動いているかまたは重なっているターゲットに対して、向上した性能を提供し得る。
【0003】
レーダー感知を使用することは有利であり得るものの、レーダーセンサを商用デバイスに組込むことに関する多くの課題が存在する。たとえば、より小型の消費者デバイスはレーダーセンサのサイズに制限を課し、それは性能を制限し得る。さらに、従来のレーダーは、レーダー固有信号を生成するために特注設計のレーダー固有ハードウェアを使用する。組込まれる場合、このハードウェアは高価となり、消費者デバイスにおいて追加のスペースを必要し得る。その結果、追加のコストおよび空間制約により、消費者デバイスがレーダーセンサを組込む可能性は低い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのデジタルビーム形成を可能にする技術および装置が説明される。コントローラが、ターゲットによって反射されたレーダー信号を受信するために複数の受信機チェーンを使用するように、無線通信チップセットを初期化または制御する。複数の受信機チェーンの各々はベースバンドデータを生成し、それはデジタルビーム形成のために使用される。無線通信チップセットはベースバンドデータをデジタルビーム形成器に提供することができ、それはベースバンドデータに基づいて空間応答を生成する。空間応答を分析することにより、ターゲットの角度位置が判定され得る。コントローラはさらに、レーダー信号を受信するためにどのアンテナが使用されるかを選択することができる。このように、コントローラは、デジタルビーム形成のために無線通信チップセットをさらに最適化することができる。これらの技術を利用することにより、無線通信チップセットは、無線通信またはレーダー感知のために再利用または使用され得る。
【0005】
以下に説明される局面は、無線通信チップセットと、プロセッサと、プロセッサによる実行に応答してデジタルビーム形成器を実現するコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ読取可能記憶媒体とを含む。無線通信チップセットは、少なくとも3つの受信機にそれぞれ結合された少なくとも3つのアンテナを含む。無線通信チップセットは、ターゲットによって反射されたレーダー信号を、少なくとも3つのアンテナおよび少なくとも3つの受信機を介して受信するように構成される。無線通信チップセットはまた、少なくとも3つの受信機を介してベースバンドデータを生成するように構成される。ベースバンドデータは、受信されたレーダー信号に基づいている。デジタルビーム形成器は、少なくとも3つの受信機によって生成されたベースバンドデータを取得するように構成される。デジタルビーム形成器はまた、ターゲットの角度位置が判定されることを可能にするように、ベースバンドデータに基づいて空間応答を生成することによってデジタルビーム形成を行なう。
【0006】
以下に説明される局面はまた、無線通信チップセットの複数の受信チェーンを介してレーダー信号を受信する方法を含む。レーダー信号は、ターゲットによって反射される。方法はまた、複数の受信チェーンの各々に関連付けられたベースバンドデータを、無線通信チップセットを介して生成するステップを含む。加えて、方法は、ベースバンドデータをデジタルビーム形成器に提供するステップを含む。デジタルビーム形成器を介して、方法は、ベースバンドデータに基づいて空間応答を生成することによってデジタルビーム形成を行なうステップを含む。方法はさらに、空間応答に基づいてターゲットの角度位置を判定するステップを含む。
【0007】
以下に説明される局面はまた、プロセッサによる実行に応答してコントローラとデジタルビーム形成器とを実現するコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ読取可能記憶媒体を含む。コントローラは、無線通信チップセットに、ターゲットによって反射されたレーダー信号を受信するために複数の受信チェーンを使用させるように構成される。デジタルビーム形成器は、複数の受信チェーンの各々に関連付けられたベースバンドデータを、無線通信チップセットから取得するように構成される。デジタルビーム形成器はまた、ターゲットの角度位置が判定されることを可能にするように、ベースバンドデータに基づいて空間応答を生成することによってデジタルビーム形成を行なうように構成される。
【0008】
以下に説明される局面はまた、レーダー信号を受信するために複数の受信チェーンを使用するように無線通信チップセットを制御するための手段と、デジタルビーム形成のために無線通信チップセットからベースバンドデータを取得するための手段とを有する、システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのデジタルビーム形成を可能にするための装置および技術が、以下の図面を参照して説明される。同じ機能および構成要素を参照するために、同じ番号が図面全体にわたって使用される。
【
図1】無線通信チップセットを使用するレーダー感知が説明される例示的な環境を示す図である。
【
図2】無線通信およびレーダー感知を行なっている複数の通信デバイスを有する例示的な環境を示す図である。
【
図3】例示的なコンピューティング装置を示す図である。
【
図4】例示的な無線通信チップセットを示す図である。
【
図5】全二重動作のための例示的な通信デバイスを示す図である。
【
図6-1】連続波レーダーのための無線通信チップセットの全二重動作を示す図である。
【
図6-2】パルスドップラーレーダーのための無線通信チップセットの全二重動作を示す図である。
【
図7】例示的なデジタルビーム形成器とデジタルビーム形成のための無線通信チップセットとを示す図である。
【
図8-1】デジタルビーム形成のための例示的な無線通信チップセットを示す図である。
【
図8-2】デジタルビーム形成のための他の例示的な無線通信チップセットを示す図である。
【
図9】例示的なレーダー変調器とレーダー変調のための無線通信チップセットとを示す図である。
【
図10】無線通信およびレーダー感知を行なう例示的な通信デバイスを示す図である。
【
図11】無線通信チップセットを使用するレーダー感知のための全二重動作を行なうための例示的な方法を示す図である。
【
図12】無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのデジタルビーム形成を行なうための例示的な方法を示す図である。
【
図13】無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのレーダー変調を行なうための例示的な方法を示す図である。
【
図14】レーダー感知のための無線通信チップセットを具現化する、または、当該無線通信チップセットの使用を可能にする技術が実現され得る、例示的なコンピューティングシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
概説
多くのコンピューティングデバイスはレーダーセンサを有していないかもしれないが、これらのコンピューティングデバイスはレーダー感知から利益を得ることがある。レーダー感知は、たとえば、ジェスチャー認識を介したユーザーインターフェイス、近接検出を介した省電力技術などを向上させることができる。
【0011】
しかしながら、コンピューティングデバイスは無線通信チップセットを含む場合があり、それは、ユーザが友人と話したり、情報をダウンロードしたり、写真を共有したり、家庭用デバイスを遠隔制御したり、全地球測位情報を受信したり、または、ラジオ局の放送を聞くことを可能にすることができる。無線通信チップセットは無線通信信号を送受信するために使用されるものであるが、無線通信チップセットは、アンテナ、送受信機、およびプロセッサといった、レーダーセンサと同様のコンポーネントを多く含む。さらに、無線通信のために使用される周波数は、レーダー感知に使用されるもの(たとえば、Sバンド、Cバンド、Xバンド、ミリメートル波周波数など)と同様である場合がある。
【0012】
しかしながら、無線通信チップセットは典型的には、レーダー感知ではなく無線通信のために設計されている。たとえば、無線通信チップセットは、通信信号の送信と受信とを切換えるために時分割二重化技術を使用するようにセットアップされ得るが、それは、レーダー感知のための近距離ターゲットの検出を容易にしないかもしれない。加えて、無線通信チップセットは、単一の送信または受信チェーンを利用するようにセットアップされ得るが、それは、レーダー感知のためのターゲットの角度位置の判定を容易にしないかもしれない。さらに、無線通信チップセットは、通信変調を利用するようにセットアップされ得るが、それは、レーダー感知のためのターゲットの距離およびドップラーの判定を容易にしないかもしれない。
【0013】
そのため、この文献は、レーダー感知技術を実現するために無線通信チップセットを使用するための技術およびデバイスを説明する。これらの技術は、無線通信チップセットが、無線通信信号に加えて、または無線通信信号の代わりにレーダー信号を送受信することを可能にする、コントローラを利用する。特に、コントローラは、無線通信チップセットに、全二重動作を行ない、デジタルビーム形成をサポートし、またはレーダー変調を生成することを行なわせることができる。
【0014】
全二重動作は、送信および受信が時間の同じ部分にわたって起こることを可能にし、それにより、連続波レーダーまたはパルスドップラーレーダー技術の使用を可能にする。デジタルビーム形成は、ターゲットの角度位置を判定するための特注ビームステアリングおよび成形を可能にする。デジタルビーム形成技術を使用して、さまざまなレーダー場が無線通信チップセットによって送信または受信され得る。レーダー変調は、レーダー信号が無線通信チップセットによって送受信されることを可能にし、それにより、レーダー感知のための周波数変調(frequency modulation:FM)測距技術またはドップラー感知技術をサポートする。
【0015】
これらの技術を使用して、無線通信チップセットは、ユーザの存在の検出、非接触制御のためのユーザのジェスチャーの追跡、自律駆動のための衝突回避の提供などを行なう、レーダーベースのアプリケーションのために使用され得る。コンピューティングデバイスの目的に依存して、無線通信チップセットは、レーダー感知のために再利用可能であり、または、無線通信およびレーダー感知の双方を提供可能である。したがって、無線通信チップセットを含むコンピューティングデバイスは、レーダーセンサまたはレーダー固有ハードウェアを使用することなく、レーダー感知を利用し、レーダー感知から利益を得ることができる。さらに、これらの技術のうちのいくつかは、異なる構成を有するさまざまな異なる無線通信チップセットのために調整または最適化され得る。レーダー感知を多くのコンピューティングデバイスにとって手頃で利用可能なものにすることはさらに、複数のコンピューティングデバイスが、能動、受動、またはバイスタティックレーダー技術を実現することを可能にすることができる。この文献はこれから例示的な環境を説明し、その後、例示的な装置、例示的な方法、および例示的なコンピューティングシステムを説明する。
【0016】
例示的な環境
図1は、無線通信チップセットを使用するレーダー感知を使用する技術、および、当該レーダー感知を含む装置が具現化され得る、例示的な環境100の図である。環境100はコンピューティングデバイス102を含み、それは、無線通信リンク108(無線リンク108)を通して基地局106と通信するための無線通信チップセット104を含む。この例では、コンピューティングデバイス102はスマートフォンとして実現される。しかしながら、コンピューティングデバイス102は、
図2および
図3に関してより詳細に説明されるように、任意の好適なコンピューティングデバイスまたは電子デバイスとして実現されてもよい。
【0017】
基地局106は、無線リンク108を介してコンピューティングデバイス102と通信し、無線リンク108は、任意の好適なタイプの無線リンクとして実現されてもよい。基地局106はセルラーネットワークのタワーとして図示されているが、基地局106は、人工衛星、ケーブルテレビヘッドエンド、地上波テレビ放送タワー、アクセスポイント、ピアツーピアデバイス、メッシュネットワークノード、インターネット・オブ・シングス(Internet of-Things:IoT)デバイスなどといった、他のデバイスを表わすかまたは他のデバイスとして実現されてもよい。したがって、コンピューティングデバイス102は、無線リンク108を介して基地局106または他のデバイスと通信してもよい。
【0018】
無線リンク108は、基地局106からコンピューティングデバイス102に通信されるデータまたは制御情報のダウンリンク、もしくは、コンピューティングデバイス102から基地局106に通信される他のデータまたは制御情報のアップリンクを含み得る。無線リンク108は、セルラーネットワーク用のもの(たとえば、第3世代パートナーシップ・プロジェクト・ロング・ターム・エボリューション(3rd Generation Partnership Project Long-Term Evolution:3GPP LTE)または第5世代(5G))、IEEE 802.11(たとえば、802.11n/ac/ad/g/a/b)、Wi-Fi、WiGig(登録商標)、WiMAX(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、マルチ入力マルチ出力(multiple-input multiple-output:MIMO)ネットワークなどを含む、任意の好適な通信プロトコルまたは規格を使用して実現されてもよい。
【0019】
レーダーセンサを有する代わりに、コンピューティングデバイス102は、無線通信チップセット104をレーダー感知のために利用する。
図1に示すように、例示的なレーダー感知アプリケーションは、閉塞ジェスチャー認識アプリケーション110-1を含み、それは、ハンドバッグに入れられて運ばれているコンピューティングデバイス102が、ハンドバッグの外部で行なわれたジェスチャーを検出することを可能にする。他のジェスチャー認識アプリケーション110-2は、(ウェアラブルスマートウォッチとして示された)コンピューティングデバイス102が、ユーザがコンピューティングデバイス102と対話するためにジェスチャーを行ない得る(破線の立方体として示された)レーダー場を提供することを可能にする。例示的な医療診断アプリケーション110-3は、コンピューティングデバイス102が、ユーザの生理的特徴を測定すること、または顔面痙攣などの異常な体の動きを評価することを可能にする。これらの測定は、さまざまな病状(たとえば、発作またはパーキンソン病の症状)の診断を支援することができる。例示的なマッピングアプリケーション110-4は、コンピューティングデバイス102が、状況認識のために周囲環境の3次元マップを生成することを可能にする。無線通信チップセット104を使用して、コンピューティングデバイス102は、
図2に関してより詳細に説明されるように、能動または受動レーダー感知技術を実現することができる。
【0020】
図2は、無線通信およびレーダー感知を行なっている複数の通信デバイス102を有する例示的な環境200を示す。環境200におけるコンピューティングデバイス102は、
図1のコンピューティングデバイス102と、スマートフォン202と、スマート冷蔵庫204とを含み、それらの各々は無線通信チップセット104を含む。無線通信チップセット104を使用して、コンピューティングデバイス102およびスマートフォン202は、無線リンク108-1および無線リンク108-2をそれぞれ介して基地局106と通信する。同様に、スマート冷蔵庫204は、無線リンク108-3を介してコンピューティングデバイス102と通信する。
【0021】
無線リンク108を介して通信信号を送受信することに加えて、これらのデバイスの各々はレーダー感知を行なうこともできる。無線通信チップセット104を使用して、コンピューティングデバイス102、スマートフォン202、およびスマート冷蔵庫は、レーダー場206-1、206-2、および206-3によってそれぞれ示されたそれら自体のレーダー信号を送受信することにより、モノスタティックレーダーとして動作することができる。
【0022】
環境200のように2つ以上のコンピューティングデバイス102が存在する環境では、複数のコンピューティングデバイス102は、バイスタティックレーダー、マルチスタティックレーダー、またはネットワークレーダーを実現するために連携することができる。言い換えれば、1つ以上のコンピューティングデバイス102がレーダー信号を送信することができ、他の1つ以上のコンピューティングデバイス102がそれらのレーダー信号を受信することができる。協調的なレーダー感知のために、コンピューティングデバイス102は、原子時計、全地球測位システム(global-positioning system:GPS)時間、セルラー同期、無線通信などを使用して時刻同期され得る。
【0023】
場合によっては、レーダー感知動作が、コンピューティングデバイス102間で、各デバイスの能力および位置に従って割当てられ得る。たとえば、レーダー信号を送信するために、たとえば最も高い送信パワーまたはより広い視野を有するデバイスが使用され得る。協調的または非協調的な技術を通して集められたレーダーデータを全コンピューティングデバイス102で共有することもでき、それは、検出確率、ターゲット位置精度、ターゲット追跡、ならびに、ターゲット配向および形状推定を向上させることができる。複数のコンピューティングデバイス102によって提供されたレーダーデータを、誤認警報を減少させ、三角測量を実行し、または干渉分光法をサポートするために使用することもできる。
【0024】
レーダー感知のための複数のコンピューティングデバイス102の使用は、周囲環境の大部分が照射されること、および、レーダーデータが異なる視点から集められることを可能にする。レーダー感知に関連付けられた時間またはパワーコストを、複数のコンピューティングデバイス102中に分散させることもでき、それにより、制限されたリソースを有するコンピューティングデバイス102がレーダー感知を行なうことを可能にする。
【0025】
より詳細には、無線通信チップセット104をコンピューティングデバイス102の一部として示す
図3を考慮されたい。コンピューティングデバイス102は、デスクトップコンピュータ102-1、タブレット102-2、ラップトップ102-3、テレビ102-4、コンピューティングウォッチ102-5、コンピューティング眼鏡102-6、ゲーミングシステム102-7、電子レンジ102-8、および車両102-9を含む、さまざまな非限定的な例示的デバイスを有して示される。無線ルータ、ドローン、トラックパッド、ドローイングパッド、ネットブック、eリーダ、ホームオートメーションおよび制御システム、ならびに他の家電といった、他のデバイスも使用されてもよい。なお、コンピューティングデバイス102はウェアラブルであってもよく、ウェアラブルではないもののモバイルであってもよく、または、比較的固定されたもの(たとえばデスクトップおよび設備)であってもよい。
【0026】
コンピューティングデバイス102は、有線、無線、または光学ネットワークを通してデータを通信するためのネットワークインターフェイス302を含んでいてもよい。たとえば、ネットワークインターフェイス302は、ローカルエリアネットワーク(local-area-network:LAN)、無線ローカルエリアネットワーク(wireless local-area-network:WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(personal-area-network:PAN)、広域ネットワーク(wide-area-network:WAN)、イントラネット、インターネット、ピアツーピアネットワーク、ポイントツーポイントネットワーク、メッシュネットワークなどを通してデータを通信してもよい。コンピューティングデバイス102はまた、ディスプレイ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0027】
コンピューティングデバイス102はまた、1つ以上のコンピュータプロセッサ304と、コンピュータ読取可能媒体306とを含み、コンピュータ読取可能媒体306はメモリ媒体および記憶媒体を含む。コンピュータ読取可能媒体306は、コンピューティングデバイス102の命令、データ、および他の情報を格納するように実現されており、このため、一時的な伝搬信号または搬送波を含んでいない。コンピュータ読取可能媒体306上のコンピュータ読取可能命令として具現化されたアプリケーションおよび/またはオペレーティングシステム(図示せず)が、ここに説明される機能性のうちのいくつかを提供するためにコンピュータプロセッサ304によって実行され得る。コンピュータ読取可能媒体306は、レーダーベースのアプリケーション308と、コントローラ310とを含む。レーダーベースのアプリケーション308は、ユーザの存在の検出、非接触制御のためのユーザのジェスチャーの追跡、自律駆動のための障害物の検出などといったレーダー感知機能を行なうために、無線通信チップセット104によって提供されるレーダーデータを使用する。
【0028】
コントローラ310は、無線通信またはレーダー感知のための無線通信チップセット104の動作を制御する。
図3では、コントローラ310は、コンピュータ読取可能媒体306上に格納され、コンピュータプロセッサ304によって実行されるソフトウェアモジュールであるように示されている。いくつかの実現化例では、コントローラ310は、無線通信チップセット104に転送されるかまたは無線通信チップセット104上に格納され、無線通信チップセット104によって実行されるソフトウェアまたはファームウェアを含む。他の場合では、コントローラ310は、無線通信チップセット104内に一体化されたコントローラである。
【0029】
コントローラ310は、レーダー感知のための機能を提供するために、無線通信チップセット104を始動し、設定し、または動作させる。これらの機能は、全二重動作、デジタルビーム形成、またはレーダー変調を含む。コントローラ310はまた、優先順位、レーダーベースのアプリケーション308、またはレーダー感知のための予め定められた更新レートに基づいて、無線通信またはレーダー感知のための無線通信チップセット104の時分割を管理することができる。無線通信またはレーダー感知に対する要求が、コンピューティングデバイス102に関連付けられた他のアプリケーションから、コントローラ310によって取得され得る。場合によっては、コントローラ310は、
図10に関してより詳細に説明されるように、無線通信チップセット104が無線通信およびレーダー感知の双方を同時に提供することを引き起こすことができる。無線通信チップセット104は、
図4に関してさらに説明される。
【0030】
図4は例示的な無線通信チップセット104を示し、それは通信インターフェイス402を含む。通信インターフェイス402は、コンピューティングデバイス102または遠隔デバイスに、無線通信のための通信データ、またはレーダー感知のためのレーダーデータを提供する。しかしながら、無線通信チップセット104がコンピューティングデバイス102内に一体化されている場合、通信インターフェイス402を使用する必要はない。レーダーデータは、未加工の同相または直交位相(in-phase or quadrature:I/Q)データ、予め処理された距離ドップラーマップなどを含んでいてもよく、それらはさらに、レーダーベースのアプリケーション308またはコントローラ310を介して、コンピュータプロセッサ304によって処理されてもよい。
【0031】
無線通信チップセット104はまた、少なくとも1つのアンテナ404と、少なくとも1つの送受信機406とを含む。アンテナ404は、無線通信チップセット104から離れていてもよく、または、無線通信チップセット104内に一体化されてもよい。アンテナ404は、アンテナダイバーシティ、送信ビーム形成、またはMIMOネットワークのための複数のアンテナ404を含み得る。場合によっては、複数のアンテナ404は2次元形状(たとえば平面アレイ)で編成される。複数のアンテナ404間の間隔は、レーダー信号の中心波長の半分よりも小さくてもよく、またはそれよりも大きくてもよく、またはそれと等しくてもよい。アンテナ404を使用して、コントローラ310は、無線通信チップセット104に、ステアリングされているかまたはステアリングされていない、広いかまたは狭い、もしくは成形された(たとえば、半球、立方体、扇形、円錐、円筒)ビームを形成させることができる。ステアリングおよび成形は、以下により詳細に説明されるように、デジタルビーム形成技術を使用して実現され得る。
【0032】
送受信機406は、アンテナ404を介して送信または受信される信号を整えるための、フィルター、スイッチ、増幅器、混合器などといった回路および論理を含む。送受信機406はまた、合成、符号化、変調、復号、復調などといった同相および直交位相(I/Q)動作を行なうための論理を含み得る。無線通信チップセット104によってサポートされる無線通信のタイプに基づいて、送受信機406は、1GHz~400GHzの範囲、4GHz~100GHzの範囲、および、57GHz~63GHzといったより狭い帯域で、マイクロ波放射を放出し、受信することができる。
【0033】
無線通信チップセット104はまた、1つ以上のシステムプロセッサ408と、システム媒体410(たとえば、1つ以上のコンピュータ読取可能記憶媒体)とを含む。システムプロセッサ408はまた、アナログ/デジタル変換、デジタル/アナログ変換、高速フーリエ変換(fast-Fourier transform:FFT)、利得補正、スキュー補正、周波数変換などを含み得る高速サンプリングプロセスを行なうためのベースバンド回路を含んでいてもよい。一般に、システムプロセッサ408は、送信のために送受信機406に通信データを提供することができる。システムプロセッサ408はまた、データを生成するために送受信機406からのベースバンド信号を処理することができ、データは、無線通信またはレーダー感知のために通信インターフェイス402を介してコンピューティングデバイス102に提供され得る。場合によっては、コントローラ310の一部は、システム媒体410において利用可能であってもよく、システムプロセッサ408によって実行されてもよい。
【0034】
コントローラ310は、無線通信チップセット104がレーダー感知のための追加機能を提供することを可能にする。特に、コントローラ310は、第1の無線通信チップセット104-1に全二重動作416を提供することを行なわせ、第2の無線通信チップセット104-2にデジタルビーム形成器418を介してデジタルビーム形成をサポートすることを行なわせ、または、第3の無線通信チップセット104-3にレーダー変調器420を実現することを行なわせることができる。
【0035】
全二重動作416は、
図5に示すように、コントローラ310が無線通信チップセット104における異なる送受信機406と異なるアンテナ404との接続を制御することによって実現され得る。全二重動作416のいくつかの実現化例は、
図6-1に示すように、無線通信チップセット104が連続波レーダーのために使用されることを可能にする。全二重動作416の他の実現化例は、
図6-2に示すように、パルスドップラーレーダーのための送信および受信の迅速なインターリーブを可能にする。全二重動作416は、無線通信チップセット104が、近距離ターゲットを検出するために、ならびに、ターゲットの距離および距離変化率を測定するために使用されることを可能にする。
【0036】
デジタルビーム形成は、
図7、
図8-1、および
図8-2に示すように、コントローラ310が、無線通信チップセット104に、ベースバンドデータを複数の受信チェーン(たとえば、複数の送受信機406および複数のアンテナ404)からデジタルビーム形成器418に提供することを行なわせることによって、実現され得る。いくつかの実現化例では、デジタルビーム形成器418は、コンピュータプロセッサ304およびコンピュータ読取可能媒体306を介して、コンピューティングデバイス102によって実現される。無線通信チップセット104が、高速フーリエ変換(FFT)を行なう回路およびロジックを含む場合、デジタルビーム形成器418は代替的に、システムプロセッサ408およびシステム媒体410によって実現され得る。さらに、デジタルビーム形成器418は、位相シフト動作および振幅テーパリング動作をデジタル的に行なうことによって、アナログ位相シフタといった追加のハードウェアコンポーネントに代わるものを提供する。
【0037】
デジタルビーム形成は多くの利点を提供する。たとえば、受信のためにデジタルビーム形成技術を適用することは、より少数のアンテナ404がレーダー信号を送信するために使用されることを可能にする(たとえば、レーダー感知のための送信ビーム形成への依存を減少させる)。複数の狭いペンシルビームを時間をかけて送信する代わりに、複数のビームが受信中にデジタル的に形成されることを可能にすることによって、利用可能なタイミングリソースも効率的に利用される。加えて、デジタルビーム形成器418はさまざまなパターンが生成されることを可能にし、それは、異なる無線通信チップセット104にわたるアンテナ404の異なる配置をサポートするための柔軟性を提供する。
【0038】
レーダー変調は、
図9に示すように、コントローラ310が、無線通信チップセット104に、同相および直交位相(I/Q)変調器および復調器をレーダー変調器420として動作させることを行なわせることによって、実現され得る。たとえば、I/Q変調器は、ターゲットの距離およびドップラーが判定されることを可能にするレーダー固有変調をデジタル的に生成するように、コントローラ310によってプログラムされ得る。これらのレーダー変調は、他のレーダー信号または通信信号への干渉を減少させることもできる。場合によっては、レーダー変調器420は、
図10に示すように同時の無線通信およびレーダー感知を可能にすることができる。
【0039】
別々に示されているものの、全二重動作416と、デジタルビーム形成器418と、レーダー変調器420との異なる組合せが、無線通信チップセット104を使用するレーダー感知のために、ともに実現され得る。これらの機能は、
図5~10に関してさらに説明される。
【0040】
全二重動作
図5は、全二重動作のための例示的な通信デバイス102を示す。無線通信チップセット104は、複数の送受信機406-1、406-2…406-Nを含み、ここで「N」は正の整数を表わす。各送受信機406はそれぞれ、送信機502-1、502-2…502-Nおよび受信機504-1、504-2…504-Nによって表わされた送信および受信チェーンを含む。無線通信チップセット104はまた、スイッチ506-1、506-2…および506-Nと、アンテナ404-1、404-2…404-Nとを含む。スイッチ506およびアンテナ404は、無線通信チップセット104の内部にあってもよく、または外部にあってもよい。
図5では、アンテナ404、スイッチ506、および送受信機406の数は同じであるように示されているが、異なる数量も可能である。場合によっては、送受信機406は2つ以上のアンテナ404に結合されてもよく、または、アンテナ404は2つ以上の送受信機406に結合されてもよい。
【0041】
図示された実現化例では、各スイッチ506は、対応する送信機502または受信機504のいずれかを、対応するアンテナ404に結合する。無線通信についてのいくつかの状況では、無線通信チップセット104は、異なる時間に送信または受信するために時分割二重化(time-division duplexing:TDD)を使用してもよい。このため、スイッチ506は、任意の所与の時間に送信機502または受信機504をアンテナ404に結合する。
【0042】
しかしながら、レーダー感知については、無線通信チップセット104が送受信機406の全二重動作416を提供することを可能にし、それにより、近距離レーダー感知を可能にすることが有利である。全二重動作416は、コントローラ310が二重動作信号508を介してスイッチ506の状態を設定することによって達成され得る。このように、コントローラ310は、
図6-1および
図6-2に関してより詳細に説明されるように、無線通信チップセット104が連続波レーダーまたはパルスドップラーレーダーを実行することを可能にすることができる。スイッチ506の使用はさらに、無線通信チップセット104が、レーダー感知のための全二重動作と、無線通信のための半二重動作とを容易に切換えることを可能にする。
【0043】
図6-1は、連続波レーダー動作のための無線通信チップセット104の全二重動作416を示す。図示された実現化例では、コントローラ310は、送信機502の一部および受信機504の一部がそれぞれのアンテナ404に同時に接続されることを引き起こす。たとえば、二重動作信号508は、スイッチ506-1に、送信機502-1をアンテナ404-1に接続することを行なわせ、スイッチ506-2に、受信機504-2をアンテナ404-2に接続することを行なわせる。このように、送信機502-1は、アンテナ404-1を介してレーダー信号602を送信し、一方、受信機504-2は、ターゲット604によって反射されたレーダー信号602の一部をアンテナ404-2を介して受信する。
【0044】
場合によっては、レーダー信号602は、グラフ606に示すように周波数変調信号を含み得る。グラフ606は、時間の経過に沿った、送信レーダー信号602-1および反射レーダー信号602-2の周波数をプロットしている。グラフ606は全二重動作416を示しており、それにより、送信機502-1が送信レーダー信号602-1を生成し、その時間の一部の間、受信機504-2が反射レーダー信号602-2を受信する。時間の経過に沿って送信レーダー信号602-1と反射レーダー信号602-2との周波数シフトを測定することにより、ターゲット604の距離および距離変化率がレーダーベースのアプリケーション308によって判定され得る。
【0045】
送信および受信チェーン双方のためのコンポーネントを共有する送受信機406(たとえば、任意の所与の時間に送信または受信を行なうことができる送受信機406)については、少なくとも2つの送受信機406を使用して連続波レーダーのための全二重動作416を実現することが可能であり、それにより、送受信機406の各々からの送信または受信チェーンはそれぞれアンテナ404に接続される。それに代えて、別々の送信および受信チェーンを含む送受信機406(たとえば、送信および受信を同時に行なうことができる送受信機406)については、(
図8-2に示すように)送受信機406の送信機502および受信機504をそれぞれアンテナ404に接続することによって、連続波レーダーのための全二重動作416を実現することが可能である。
【0046】
図6-2は、パルスドップラーレーダー動作のための無線通信チップセット104の全二重動作416を示す。図示された実現化例では、コントローラ310は、送信機502と受信機504との迅速な切換えを可能にする。二重動作信号508を使用して、コントローラ310はさらに、複数のスイッチ506にわたって切換えを連携させることができる。パルスドップラーレーダーのために、コントローラ310は、送信レーダー信号602-1のパルスが送信機502-1および502-2によって送信され、反射レーダー信号602-2のパルスが受信機504-1および504-2によって受信され得るように、送信動作および受信動作をインターリーブする。一利点として、パルスドップラーレーダー動作は、単一の送受信機406または単一のアンテナ404を有する無線通信チップセット104がレーダー感知を行なうことを可能にする。
図6-1で説明した連続波レーダー技術と比べ、パルスドップラーレーダーを使用する場合、送信および受信双方のためのアンテナ404の二重使用を可能にすることによって感度を高めることもできる。
【0047】
グラフ608は、時間の経過に沿った、送信レーダー信号602-1および反射レーダー信号602-2の周波数をプロットしている。図示されるように、送信レーダー信号602-1は、複数の送信パルス610-1、610-2…610-Pを含み、ここで「P」は正の整数を表わす。各送信パルス610の合間の時間は、パルス間周期(inter-pulse period:IPP)と呼ばれる。各送信パルス610中、コントローラ310は、送信機502に、当該送信機502をアンテナ404に接続することを行なわせる。各送信パルス610の合間に、コントローラ310は、受信機504に、反射パルス612-1および612-2といった反射パルス612を受信するために当該受信機504をアンテナ404に接続することを行なわせる。グラフ608は、個々のパルスが同じ時間に送信および受信されないことを示しているが、迅速な切換えは、レーダー信号602の一部が同じ期間にわたって送信または受信されることを可能にし、このため、全二重動作416のあるバージョンを実現する。
【0048】
図6-1および
図6-2には2つの送受信機406、2つのアンテナ404、および2つのスイッチ506が明示的に示されているが、連続波レーダーまたはパルスドップラーレーダーのための技術は、任意の数の送受信機406、アンテナ404、およびスイッチ506に適用可能である。スイッチ506の代わりにサーキュレータを使用する無線通信チップセット104については、連続波レーダー動作およびパルスドップラーレーダー動作の双方を行なうことができる。
【0049】
デジタルビーム形成
図7は、例示的なデジタルビーム形成器418とデジタルビーム形成のための無線通信チップセット104とを示す。デジタルビーム形成技術を使用して、広い場、狭い場、成形された場(半球、立方体、扇形、円錐、円筒)、ステアリングされた場、ステアリングされていない場、近距離場、遠距離場などを含む、さまざまなレーダー場を送信または受信することができる。デジタルビーム形成が、レーダー信号602を受信することに関して以下に述べられるが、デジタルビーム形成は、レーダー信号602を送信するためにも実現され得る。図示された構成では、受信機504-1~504-Nは、アンテナ404-1~404-Nを介して受信された反射レーダー信号602-2をそれぞれ処理して、ベースバンドデータ702-1~702-Nを生成する。一般に、アンテナ404からの応答は、個々の受信チェーンによって別々に処理される。ベースバンドデータ702は、レーダー信号602に関連付けられた異なる波数についてある期間にわたって集められたデジタルI/Qデータを含み得る。
【0050】
デジタルビーム形成器418は、(たとえば、デジタルビーム形成器418が無線通信チップセット104から離れて実現されている場合には、通信インターフェイス402を介して)無線通信チップセット104からベースバンドデータ702を取得し、ベースバンドデータ702に複合重み704-1~704-Nを乗算する。デジタルビーム形成器418は、受信チェーンの各々からの結果を組合せるために加算706を行ない、空間応答708を形成する。空間応答708は、ターゲット604の角度位置を判定するためにレーダーベースのアプリケーション308に提供され得る。一般に、空間応答708は、1組の角度、距離、および時間についての振幅および位相情報を含む。
【0051】
いくつかの実現化例では、コントローラ310は、空間応答708を生成するために使用されるアンテナパターンの形状を制御するために、複合重み704を設定または提供することができる。複合重み704は、予め定められた値に基づくことができ、何千ものビームが同時に形成されることを可能にすることができる。複合重み704はまた、(たとえば、アンテナパターンのヌルを干渉の方向にステアリングすることによって)妨害器またはノイズ源からの干渉を減少させるために、コントローラ310によってリアルタイムで動的に調節され得る。コントローラ310はまた、
図8-1および
図8-2に関してより詳細に説明されるように、デジタルビーム形成を向上させるように無線通信チップセット104を構成することができる。
【0052】
図8-1は、デジタルビーム形成のための無線通信チップセット104の例示的な構成を示す。無線通信チップセット104は、複数のアンテナ404を有するアンテナアレイ802を含む。好ましくは、無線通信チップセット104は、少なくとも3つの受信機504にそれぞれ結合された少なくとも3つのアンテナ404を含む。図示された構成では、アンテナアレイ802は、アンテナ404の2次元配置(たとえば、三角形、長方形、円形、または六角形の配置)を有する平面アレイであり、それは、反射レーダー信号602-2の到来角に関連付けられた2次元ベクトルが判定されることを可能にする(たとえば、ターゲット604の方位角および仰角双方の判定を可能にする)。アンテナアレイ802は、角度空間の1つの次元(たとえば、方位角または水平次元)に沿って位置付けられたアンテナ404のうちの2つと、それら2つのアンテナ404のうちの1つに対してアンテナ空間の他の次元(たとえば仰角または垂直次元)に沿って位置付けられた他のアンテナ404とを含み得る。この2次元配置には、少なくとも3つのアンテナが必要である。アンテナアレイ802の他の実現化例は、ターゲット604の方位角または仰角のいずれかが判定され得るように、線形アレイ(たとえば1次元配置)を含み得る。一般に、2次元のアンテナアレイは、2つの平面におけるビームステアリング(たとえば方位角および仰角)と、同じ数のアンテナおよびアンテナ間隔を有する1次元のアンテナアレイよりも高い指向性とを可能にする。
【0053】
図示された構成では、アンテナアレイ802はN×Mの長方形配置を有するように示されており、ここでNおよびMは1よりも大きい正の整数であり、それらは互いに等しくても等しくなくてもよい。例示的な配置は、2×2アレイ、2×3アレイ、4×4アレイなどを含む。デジタルビーム形成のために、コントローラ310は、送受信機406-1~406-NMの一部が、アンテナアレイ802におけるアンテナ404-1~404-NMの一部を使用して、デジタルビーム形成のための反射レーダー信号602-2を受信することを可能にするように、全二重動作416のための技術を実現することができる。
【0054】
いくつかの実現化例では、コントローラ310は、アンテナ404のうちのどれがデジタルビーム形成のために使用されるかを選択することができる。これは、(たとえば、全二重動作416のための上述の技術を介して)アンテナアレイ802におけるアンテナ404のうちのどれが受信機504に接続されるかを制御することによって達成され得る。これは、コントローラ310が、相互結合の影響の減少、指向性の向上などをもたらす予め定められた間隔を実現するアンテナ404を選択することによって、無線通信チップセット104を介したレーダー感知を容易にすることを可能にする。角度曖昧性を制御するために、コントローラ310はまた、レーダー信号602の中心波長に基づいて、効果的なアンテナ間隔を実現するためのアンテナ404を選択することができる。例示的なアンテナ間隔は、レーダー信号602のほぼ中心波長、中心波長の半分、または中心波長の3分の1を含み得る。さらに、コントローラ310は、アンテナアレイ802内で間隔が等しいアンテナ404を選択することによって、デジタルビーム形成の複雑性を減少させることができる。いくつかの実現化例では、アンテナ404は、
図8-2に示すように、2次元アレイが送信および受信のために形成されるように選択され得る。
【0055】
図8-2は、デジタルビーム形成のための他の例示的な無線通信チップセット104を示す。無線通信チップセット104は、8つのアンテナ404-1~404-8と、4つの送受信機406-1~406-4とを含む。アンテナ404-1~404-4は送信アンテナアレイ802-1を形成し、アンテナ404-5~404-8は受信アンテナアレイ802-2を形成する。図示された構成では、送信機502-1~502-4は、送信アンテナアレイ802-1におけるアンテナ404-1~404-4にそれぞれ結合され、受信機504-1~504-4は、受信アンテナアレイ802-2におけるアンテナ404-5~404-8にそれぞれ結合される。このように、デジタルビーム形成は、レーダー信号602の送信および受信双方のために実現され得る。他の実現化例では、送信アンテナアレイ802-1のアンテナ配置、アンテナ404の数、またはアンテナ間隔は、受信アンテナアレイ802-2のものと同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0056】
レーダー変調
図9は、例示的なレーダー変調器420とレーダー変調のための無線通信チップセット104とを示す。図示された構成では、無線通信チップセット104の送受信機406は、I/Q変調器902とI/Q復調器904とを含む。無線通信のために、I/Q変調器902およびI/Q復調器904は、通信データを搬送波信号に変調するために、または、通信データを抽出するように搬送波信号を復調するために、それぞれ使用されてもよい。例示的な変調は、振幅変調、周波数変調、または位相変調を含む。他の例として、直交周波数分割多重化(orthogonal-frequency division-multiplexing:OFDM)が、I/Q変調器902およびI/Q復調器904によって行なわれてもよい。
【0057】
レーダー感知のために、コントローラ310は、I/Q変調器902およびI/Q復調器904に、レーダー変調器420として動作し、予め定められたレーダー変調タイプを利用させるように、変調動作信号906を生成することができる。例示的なレーダー変調は、周波数変調(たとえば、線形周波数変調(linear-frequency modulation:LFM)、鋸歯状周波数変調、または三角形周波数変調)、ステップ周波数変調、位相シフトキーイング(phase-shift keying:PSK)、擬似ノイズ変調、スペクトル拡散変調などを含む。一例として、コントローラ310は、I/Q変調器902にチャープ信号を生成させることができ、I/Q復調器904に周波数変調連続波(frequency-modulated continuous-wave:FMCW)レーダーのためにチャープ信号を復調させることができる。
【0058】
コントローラ310はまた、変調動作信号906を使用して、レーダー信号602を送受信するための無線通信チャネルをさらに規定することができ、それは、レーダー信号602の周波数および帯域幅に影響を与える。いくつかの局面では、レーダー信号の帯域幅を増加させるために、異なる無線通信周波数チャネルを結合することができる。より大きい帯域幅を利用することは、無線通信チップセット104を介するレーダー感知のための距離分解能を向上させる(たとえば、距離精度を高め、複数のターゲットが距離分解されることを可能にする)。I/Q変調器902およびI/Q復調器904はまた、
図10に関してより詳細に説明されるように、複数のレーダー感知動作を同時に行なうこと、または無線通信およびレーダー感知双方を同時に行なうことをサポートするために使用され得る。
【0059】
図10は、コントローラ310および無線通信チップセット104を使用して無線通信およびレーダー感知を行なう通信デバイス102を示す。この例では、無線通信チップセット104は、MIMOおよびOFDMをサポートする。変調動作信号906に基づいて、無線通信チップセット104は、送信機502-1、502-2…502-Nによって表わされる別々の送信チェーンを介して、信号1000-1、1000-2…1000-Nを生成する。信号1000-1、1000-2、および1000-Nは、レーダー感知、無線通信、ならびに、レーダー感知および無線通信双方のためにそれぞれ変調される。信号1000-Nは、レーダー変調を使用して通信データを含む信号を変調することによって獲得され得る。このように、信号1000-Nを受信する他のコンピューティングデバイス102は、(たとえば、
図3で説明されたようなバイスタティックレーダー、マルチスタティックレーダー、またはネットワークレーダーの技術を使用して)、無線通信のために、またはレーダー感知のために、信号1000-Nを処理することができる。
【0060】
複数の信号1000間の干渉を回避するために、コントローラ310は、I/Q変調器902が信号1000を互いに直交させるようにすることができる。他の局面では、信号1000-1、1000-2、および1000-3は、個別の無線通信チャネルを使用して送信され得る。異なるレーダー変調のために異なる無線通信チャネルを使用することもでき、異なるレーダー信号602が同時に送信されることを可能にする。無線通信チップセット104においてタイミング、アンテナ、または送受信機リソースが制限されている場合、コントローラ310は、優先順位、予め定められた更新レート、または他のアプリケーションからの要求に基づいて、無線通信およびレーダー感知が異なる時間に起こるようにスケジューリングすることができる。
【0061】
例示的な方法
図11~13は、無線通信チップセット104を使用するレーダー感知のための例示的な方法1100、1200、および1300を示す。方法1100、1200、および1300は、ここに示す順序または組合せに必ずしも限定されずに実行される動作(または行為)の集合として示される。また、動作のうちの1つ以上のいずれも、多様な追加のおよび/または代替的な方法を提供するために、繰返され、組合され、再編成され、またはリンクされてもよい。以下の説明の一部では、
図1および
図2の環境100および200、ならびに
図3~10で詳述された実体が参照され得るが、それらの参照は例示のためにのみ行なわれる。これらの技術は、1つのデバイス上で動作する1つの実体または複数の実体による実行に限定されない。
【0062】
図11は、無線通信チップセットを使用するレーダー感知のための全二重動作を行なうための例示的な方法を示す。1102で、無線通信チップセットの送信機を第1のアンテナに接続することが行なわれる。たとえば、コントローラ310は、無線通信チップセット104に、送信機502をアンテナアレイ802におけるアンテナ404のうちの少なくとも1つに接続することを行なわせることができる。
【0063】
1104で、無線通信チップセットの受信機を第2のアンテナに接続することが行なわれる。たとえば、コントローラ310は、無線通信チップセット104に、受信機504をアンテナアレイ802における少なくとも1つの他のアンテナ404に接続することを行なわせることができる。送信機502および受信機504は、無線通信チップセット104における同じ送受信機406に関連付けられてもよく、または異なる送受信機406に関連付けられてもよい。
【0064】
1106で、送信機および第1のアンテナを介して信号を送信する。たとえば、送信機502-1およびアンテナ404-1は、レーダー信号602を送信することができる。場合によっては、レーダー信号602は、
図6-1に示すような連続波レーダー信号であってもよく、または、
図6-2に示すようなパルスレーダー信号であってもよい。
【0065】
1108で、ターゲットによって反射された信号を、受信機および第2のアンテナを介して受信する。信号の受信は、送信機が信号を送信している時間の少なくとも一部の間に起こる。たとえば、レーダー信号602は、ターゲット604によって反射され、受信機504-2および第2のアンテナ404-2を介して受信され得る。いくつかの実現化例では、受信機504-1は第1のアンテナ404-1とともに使用され得る。連続波レーダーについては、レーダー信号602の一部は、その信号の他の一部が受信される間に同時に送信される。パルスドップラーレーダーについては、レーダー信号602の異なるパルスが、送信される他のパルスの合間に受信されてもよい。
【0066】
1110で、ターゲットの位置を判定するために、受信された信号を処理する。たとえば、システムプロセッサ408またはコンピュータプロセッサ304は、ターゲット604の距離または角度位置を判定するために、レーダー信号602を処理することができる。
【0067】
図12は、無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのデジタルビーム形成を行なうための例示的な方法を示す。1202で、ターゲットによって反射されたレーダー信号を、無線通信チップセットの複数の受信チェーンを介して受信する。たとえば、
図7に示すように、反射レーダー信号602-2は、無線通信チップセット104の受信機504-1~504-Nの少なくとも一部とアンテナ404-1~404-Nの少なくとも一部とを介して受信され得る。一般に、各受信チェーンは、送受信機406および1つ以上のアンテナ404に関連付けられる。場合によっては、コントローラ310は、二重動作信号508を通して、反射レーダー信号602-2を受信するために無線通信チップセット104を初期化またはセットアップすることができる。コントローラ310はまた、反射レーダー信号602-2を受信するためにどの受信チェーンが使用されるかを選択することができ、それは、デジタルビーム形成のために無線通信チップセット104をさらに最適化することができる。
【0068】
1204で、複数の受信チェーンの各々に関連付けられたベースバンドデータを、無線通信チップセットを介して生成する。たとえば、ベースバンドデータ702-1~702-Nが、無線通信チップセット104によって生成される。ベースバンドデータ702-1~702-Nは、受信機504-1~504-Nによって生成されたデジタルI/Qデータを含み得る。
【0069】
1206で、ベースバンドデータをデジタルビーム形成器に提供する。たとえば、デジタルビーム形成器418は、無線通信チップセット104またはコンピューティングデバイス102内で実現され得る。いくつかの実現化例では、ベースバンドデータ702は、通信インターフェイス402を介してデジタルビーム形成器418に通信され得る。
【0070】
1208で、ベースバンドデータに基づいて空間応答を生成することによって、デジタルビーム形成器を介してデジタルビーム形成を行なう。デジタルビーム形成器418はたとえば、複合重みに従ってベースバンドデータ702をスケール変更し、受信チェーンの各々からのデータを組合せて空間応答708を生成することができる。一般に、空間応答708は、異なる角度についての振幅および位相情報を表わす。
【0071】
1210で、空間応答に基づいてターゲットの角度位置を判定する。角度位置は、空間応答708に基づいて、レーダーベースのアプリケーション308を介して判定され得る。場合によっては、角度位置は、ターゲット604の方位角および仰角双方を含んでいてもよい。
【0072】
図13は、無線通信チップセットを使用するレーダー感知のためのレーダー変調を行なうための例示的な方法を示す。1302で、ターゲットの位置が判定されることを可能にするように第1の変調タイプを選択する。たとえば、第1の変調タイプは、線形周波数変調、ステップ周波数変調、位相シフトキーイングなどといったレーダー変調を含み得る。
【0073】
1304で、通信データが無線通信されることを可能にするように第2の変調タイプを選択する。当該通信変調タイプは、直交周波数分割多重化を含んでいてもよい。
【0074】
1306で、レーダー信号を生成するために、無線通信チップセットを介して、第1の変調タイプに基づいて信号を変調する。たとえば、無線通信チップセット104はI/Q変調器902を含み得る。レーダー信号602、信号1000-1、または信号1000-Nを生成するために、コントローラ310は、変調動作信号906を介して、I/Q変調器902にレーダー変調を使用させることができる。
【0075】
1308で、通信信号を生成するために、無線通信チップセットを介して、第2の変調タイプに基づいて他の信号を変調する。たとえば、信号1000-2または信号1000-Nを生成するために、コントローラ130は、変調動作信号906を介して、I/Q変調器902に通信変調を使用させることができる。
【0076】
1310で、無線通信チップセットを介したレーダー感知および無線通信を可能にするように、レーダー信号および通信信号の送信を制御する。たとえば、無線通信チップセット104が制限されたリソース(たとえば、制限された数の送受信機406およびアンテナ404)を有する場合、コントローラ310は、無線通信チップセット104に、レーダー信号1000-1および通信信号1000-2を異なる時間に送信させることができる。それに代えて、無線通信チップセット104がMIMOをサポートするといった場合、コントローラ310は、無線通信チップセット104に、レーダー信号1000-1および通信信号1000-2を同時に送信させることができる。場合によっては、レーダー信号1000-1および通信信号1000-2の送信は、それぞれの優先順位、レーダー感知の予め定められた更新レート、または、レーダーベースのアプリケーション308といった、無線通信チップセット104に関連付けられたアプリケーションによる要求に基づき得る。
【0077】
例示的なコンピューティングシステム
図14は、無線通信チップセット104を使用するレーダー感知を実現するために、前述の
図1~10を参照して説明されたような任意のタイプのクライアント、サーバ、および/またはコンピューティングデバイスとして実現され得る例示的なコンピューティングシステム1400のさまざまなコンポーネントを示す。
【0078】
コンピューティングシステム1400は、デバイスデータ1404(たとえば、受信されたデータ、受信中のデータ、同報通信のためにスケジューリングされたデータ、データのデータパケット)の有線および/または無線通信を可能にする通信デバイス1402を含む。デバイスデータ1404または他のデバイスコンテンツは、デバイスの構成設定、デバイス上に格納されたメディアコンテンツ、および/またはデバイスのユーザに関連付けられた情報を含み得る。コンピューティングシステム1400上に格納されたメディアコンテンツは、任意のタイプの音声データ、映像データ、および/または画像データを含み得る。コンピューティングシステム1400は1つ以上のデータ入力1406を含み、それを介して、人間の発話、ベースバンドデータ702、空間応答708、他のタイプのレーダーデータ(たとえば、デジタルベースバンドデータ、または距離ドップラーマップ)、ユーザ選択可能入力(明示的または暗示的)、メッセージ、音楽、テレビメディアコンテンツ、録画された映像コンテンツ、ならびに、任意のコンテンツおよび/またはデータソースから受信された任意の他のタイプの音声データ、映像データ、および/または画像データといった、任意のタイプのデータ、メディアコンテンツ、および/または入力が受信され得る。
【0079】
コンピューティングシステム1400はまた、通信インターフェイス1408を含み、それは、シリアルおよび/またはパラレルインターフェイス、無線インターフェイス、任意のタイプのネットワークインターフェイス、モデムのうちのいずれか1つ以上として、および任意の他のタイプの通信インターフェイスとして実現され得る。通信インターフェイス1408は、コンピューティングシステム1400と、他の電子/コンピューティング/通信デバイスがコンピューティングシステム1400とデータを通信するための通信ネットワークとの間に、接続および/または通信リンクを提供する。
【0080】
コンピューティングシステム1400は、1つ以上のプロセッサ1410(たとえば、マイクロプロセッサ、コントローラなどのうちのいずれか)を含み、それは、コンピューティングシステム1400の動作を制御するための、および、無線通信チップセット104を使用するレーダー感知のための技術または当該レーダー感知が具現化され得る技術を可能にするための、さまざまなコンピュータ実行可能命令を処理する。それに代えて、またはそれに加えて、コンピューティングシステム1400は、ハードウェア、ファームウェア、または、概して1412で識別される処理および制御回路に関連して実現される固定論理回路のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを用いて実現され得る。図示されていないものの、コンピューティングシステム1400は、デバイス内のさまざまなコンポーネントを結合するシステムバスまたはデータ転送システムを含み得る。システムバスは、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、ユニバーサルシリアルバス、ならびに/もしくは、さまざまなバスアーキテクチャのうちのいずれかを利用するプロセッサまたはローカルバスといった、異なるバス構造のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを含み得る。
【0081】
コンピューティングシステム1400はまた、(単なる信号伝送とは対照的な)永続的および/または非一時的なデータ記憶を可能にする1つ以上のメモリデバイスといった、コンピュータ読取可能媒体1414を含み、その例は、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)、不揮発性メモリ(たとえば、読出専用メモリ(read-only memory:ROM)、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどのうちのいずれか1つ以上)、およびディスク記憶デバイスを含む。ディスク記憶デバイスは、ハードディスクドライブ、記録可能および/または書換可能コンパクトディスク(compact disc:CD)、任意のタイプのデジタル多用途ディスク(digital versatile disc:DVD)などといった、任意のタイプの磁気デバイスまたは光学記憶デバイスとして実現されてもよい。コンピューティングシステム1400はまた、大容量記憶媒体デバイス(記憶媒体)1416を含み得る。
【0082】
コンピュータ読取可能媒体1414は、デバイスデータ1404、さまざまなデバイスアプリケーション1418、ならびに、コンピューティングシステム1400の動作局面に関する他のタイプの情報および/またはデータを格納するためのデータ記憶メカニズムを提供する。たとえば、オペレーティングシステム1420は、コンピュータ読取可能媒体1414でコンピュータアプリケーションとして維持され、プロセッサ1410上で実行され得る。デバイスアプリケーション1418は、任意の形の制御アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、信号処理および制御モジュール、特定のデバイスに固有のコード、特定のデバイスのためのハードウェア抽象化レイヤーなどといった、デバイスマネージャを含んでいてもよい。
【0083】
デバイスアプリケーション1418はまた、無線通信チップセット104を使用するレーダー感知を実現するための任意のシステムコンポーネント、エンジン、またはマネージャを含む。この例では、デバイスアプリケーション1418は、レーダーベースのアプリケーション308と、コントローラ310と、デジタルビーム形成器418とを含む。
【0084】
結論
無線通信チップセットを使用するレーダー感知を使用する技術、および、当該レーダー感知を含む装置が、機能および/または方法に特有の文言で説明されてきたが、請求項の主題は説明された特定の機能または方法に必ずしも限定されないということが理解されるべきである。むしろ、特定の機能および方法は、無線通信チップセットを使用するレーダー感知の例示的な実現化例として開示されている。