(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/26 20060101AFI20220602BHJP
C22C 13/02 20060101ALI20220602BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20220602BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
C22C13/02
B23K35/14 Z
B23K35/22 310A
(21)【出願番号】P 2020010072
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0009505
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520030981
【氏名又は名称】キョン ドン エム テック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KYUNG DONG MTEC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ソン,フンラク
(72)【発明者】
【氏名】ペク,ポムギュ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ソンヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョンテ
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527466(JP,A)
【文献】特開2015-020181(JP,A)
【文献】特表2017-528327(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0131280(KR,A)
【文献】特開2002-020807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/26
C22C 13/02
B23K 35/14
B23K 35/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、Ag:0.1~10質量%、Bi:1.0~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、又はAg:0.1~10質量%、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金の何れか1種の無鉛ソルダ合金において、
無鉛ソルダ合金中に粒子として分散された添加剤として、粒径が1,000nm未満のセラミックス粉末であ
る、La
2O
3、TiO
2、ZrC、又はCrNからなる群から選ばれる1種を0.01乃至2.0wt%含むことを特徴とする、高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の無鉛ソルダ合金及び添加剤とフラックスを含むことを特徴とする、ソルダペースト。
【請求項3】
請求項
1に記載の無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成される、ソルダフリーフォーム。
【請求項4】
請求項
1に記載の無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成される、ソルダボール。
【請求項5】
請求項
1に記載の無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成される、ソルダワイヤ。
【請求項6】
請求項
1に記載の無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成される、ソルダバー。
【請求項7】
Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、Ag:0.1~10質量%、Bi:1.0~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、又はAg:0.1~10質量%、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金の何れか1種の無鉛ソルダ合金を溶融させるステップと、前記溶融された無鉛ソルダ合金に、
粒径が1,000nm未満のセラミックス粉末である添加剤としてLa
2O
3、TiO
2、ZrC、又はCrNからなる群から選ばれる1種を0.01乃至2.0wt%を添加するステップと、を含むことを特徴とする、合金組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の無鉛ソルダを代替できる、汎用の無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法に関し、高温及び振動環境に適合し、湿潤性及びボイド特性に優れ、作動温度の領域において高い耐疲労性を有する、長期信頼性の無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法に関し、これを用いたソルダペースト、ソルダフリーフォーム、ソルダボール、ソルダワイヤ及びソルダバーに関する。
【背景技術】
【0002】
過去の代表的なソルダ合金Sn-37Pbソルダは、低い融点(溶融点183℃)と、高い機械的な物性を有しているので、産業用、家庭用電子製品及び自動車電装用製品に汎用的に使用されてきたが、鉛(Pb)の成分が環境汚染及び人体に害を及ぼす環境汚染物として指定されて、その使用を制限するRoHS,WEEEなどが発議されて家電製品の分野で鉛ソルダの使用を禁止した。なお、ヨーロッパでELV規制が実施されて、自動車用電装品においても鉛ソルダを代替する無鉛ソルダの開発が多様に進行されてきた。
【0003】
特に、Sn‐Cu系合金、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Bi系合金、Sn-Zn系合金などの様々な無鉛ソルダ合金が開発された。これらの無鉛ソルダ合金の中でもSn-(0.1-3.5)%Ag-( 0.5-0.7)%Cu組成のソルダ(溶融点約217℃)が湿潤性と強度のバランスに優れているので、主に使用されている。しかしながら、既存の鉛ソルダであるSn-37Pb(溶融点183℃)ソルダに比して、湿潤性及びはんだ特性が不足し、安定的なソルダリング歩留まりを確保するためには、250℃以上のピーク温度プロファイルを適用しなければならない。この時、250℃以上のピーク温度では、ソルダ接合部の界面に過度な金属間化合物(Intermetallic Compound,IMC)層が生成されることができる。特に、既存の鉛ソルダ(Sn-37Pb)は、鉛(Pb)による靱性が良くて、使用に対する良い信頼性を持っていたが、無鉛ソルダに転換することにより、せん断強度は向上した反面、靱性不足により基板の発熱及び振動環境により信頼性が低下する問題が提起された。
【0004】
斯かる問題点を改善するために、大韓民国特許出願公開第10-2014-0063662号及び大韓民国特許出願公開第10-2017-0131280号では、Sn-Ag-Cu系はんだソルダ合金に、Cu,Ag,Al,Au,Cr,In,Sb,Sc,Y,Zn,Ce,Co,Ge,Mn,Ni及びTiなどを含む多原系合金のソルダが提案されたことがあり、大韓民国登録特許公開第10-1142814号では、Ag含有量(0.05~2.0wt%)を低減させながら、Cu,Sb,Bi,In,Ge,Co残部は、Snからなる無鉛ソルダ合金であって、優れた信頼度を確保できるソルダペーストが提案されたことがある。
【0005】
このような方法は、多原系微量の合金を通じて析出強化させることにより、析出強化された構造により強度を増加させて性能を向上させる方法である。しかしながら、析出強化型は、温度が上昇するほど強度が急激に低くなる短所と、長期使用時に析出強化粒子が濃度差によって消滅されたり、マトリックスと反応して粗大化されたりし、クラックを誘発する短所を有している。なお、依然として鉛ソルダに比して、湿潤性が落ちてボイド(Void)を誘発するなどの問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために案出されたものであり、無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を添加することにより、ナノ分散強化を通じて組織を微細化して靱性(Toughness)を向上させ、温度上昇による強度低下率を減少させて高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法を提供することを解決課題とする。なお、添加剤を使用することにより致命的な脆性を起こす金属間化合物(IMC)が成長することを抑制させて、クラック(crack)の発生率を下げ、接合強度を増加させた無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法を提供することを解決課題とする。
なお、前記無鉛ソルダ合金組成物からなるソルダペースト、ソルダフリーフォーム、ソルダボール、ソルダワイヤ、及びソルダバーを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための手段であって、本発明の高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物は、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、Ag:0.1~10質量%、Bi:1.0~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、又はAg:0.1~10質量%、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金に、粒子として分散された添加剤として、粒径が1,000nm未満のセラミックス粉末が添加されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の無鉛ソルダ合金組成物の製造方法は、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、Ag:0.1~10質量%、Bi:1.0~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、又はAg:0.1~10質量%、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金を溶融させるステップと、前記溶融された無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を添加するステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
なお、添加剤の含量は、無鉛ソルダ合金組成物に比して0.01乃至2.0wt%であることを特徴とする。
なお、添加剤の大きさは、1,000nm未満であることを特徴とする。
本発明のソルダペーストは、無鉛ソルダ合金及び添加剤とフラックスを含むことを特徴とする。
本発明のソルダフリーフォームは、前記無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成されたことを特徴とする。
本発明のソルダボールは、前記無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成されたことを特徴とする。
本発明のソルダワイヤは、前記無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成されたことを特徴とする。
本発明のソルダバーは、前記無鉛ソルダ合金組成物を使用して形成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の無鉛ソルダ合金組成物の製造方法は、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、Ag:0.1~10質量%、Bi:1.0~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金、又はAg:0.1~10質量%、Cu:0.1~10質量%、Bi:0.1~10質量%、残部Sn及び不可避的不純物からなる無鉛ソルダ合金を溶融させるステップと、前記溶融された無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を添加するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法は、従来の無鉛ソルダに比して、接合強度に優れ、高温及び振動環境において強度の低下率が改善され、機械的性質、拡散性、湿潤性などに優れる効果がある。
なお、基地組織(matrix)の結晶粒と金属間化合物の成長によって発生するクラック(Crack)を抑制させる役割をすることにより、ソルダの信頼度とソルダ継手の寿命を増加させる効果がある。
【0012】
なお、Bi析出強化物の周りにナノサイズのセラミックス粉末が分散されることにより、析出強化粒子が濃度差により消滅されたり、マトリックスと反応して粗大化されることを防止するために二重効果を有する。
なお、本発明の無鉛ソルダ合金組成物は、ナノサイズのセラミックス粉末が添加されていない従来のSn-Cu-Bi,Sn-Ag-Bi,Sn-Ag-Cu-Bi合金に比して、熱衝撃に対する抵抗が大きな効果がある。
なお、流動性(flow)と湿潤性(wetting properties)が向上して、はんだ付け部の不良を抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】
図1(a)は、添加剤が添加されていないSn-0.5Ag-4Biソルダの微細組織写真である。
【
図1b】
図1(b)は、ナノ粒径のセラミックス粉末(La
2O
3)が添加剤として添加されたSn-0.5Ag-4Biソルダの微細組織写真である。
【
図1c】
図1(c)は、添加剤が添加されていないSn-0.5Ag-4BiソルダのIMC写真である。
【
図1d】
図1(d)は、ナノ粒径のセラミックス粉末(La
2O
3)が添加剤として添加されたSn-0.5Ag-4BiソルダのIMC写真である。
【
図2】
図2は、析出強化と分散強化の温度による強度変化グラフである。(参考: イ ドン 二ョン、材料強度学)
【
図3】
図3は、析出状にナノ粒径のセラミックス粉末が分散された状態を示すTEM写真である。
【
図4a】
図4(a)は、MLCC 1210の熱衝撃前後のせん断強度の測定結果グラフである。
【
図4b】
図4(b)は、QFP44の熱衝撃前後のせん断強度の測定結果グラフである。
【
図5】
図5は、本発明による無鉛ソルダの熱衝撃前後の靭性(toughness)測定結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物及びその製造方法についてより詳しく説明する。
本発明の高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物は、Sn-(0.1~10)wt%Cu-(0.1~10)wt%Bi,Sn-(0.1~10)wt%Ag-(1.0~10)wt% Bi又はSn-(0.1~10)wt%Ag-(0.1~10)wt%Cu-(0.1~10)wt%Biの無鉛ソルダ合金に、ナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を添加することを特徴とする。
【0015】
本発明の無鉛ソルダ合金組成物の製造方法は、Sn-(0.1~10)wt%Cu-(0.1~10)wt%Bi,Sn-(0.1~10)wt%Ag-(1.0~10)wt%Bi又は Sn-(0.1~10)wt%Ag-(0.1~10)wt%Cu-(0.1~10)wt%Biの無鉛ソルダ合金を溶融させるステップと、前記溶融された無鉛ソルダ合金に、ナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を添加するステップと、を含む。
本発明の無鉛ソルダ合金組成物は、Biによる析出強化形態であるSn-Cu-Bi,Sn-Ag-Bi又はSn-Ag-Cu-Bi合金系に基づき、分散強化で追加されたナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る無鉛ソルダ合金は、Ag含量が0.1wt%未満であると、強度向上及び信頼性向上の効果が現れず、10wt%を超えると金属間化合物が増加する。なお、Bi含量が0.1wt%未満の場合、析出強化の効果が不足し、10wt%を超える場合、融点の凝固範囲が広がるようになって、はんだ付け部位に反復的に加わる熱疲労性のために熱亀裂現状が発生できる。なお、Cu含量が、0.1wt%未満の場合、純粋錫と近いために湿潤性が悪く、10wt%を超える場合、融点が増加する短所がある。
【0017】
本発明は、前記無鉛ソルダ合金に添加剤を添加することを特徴とする。前記添加剤は、ナノサイズのセラミックス粉末であることが好ましい。前記セラミックス粉末は、B(ホウ素),Ti(チタニウム),Al(アルミニウム),V(バナジウム),Cr(クロミウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zr(ジルコニウム),Nb(ノイブ),Mo(モリブデン),Y(イトリウム),La(ランタン),Sn(錫),Si(シリコン),Ag(銀),Bi(ビスマス),Cu(銅),Au(金),Mg(マグネシウム),Pd(パラジウム),Pt(白金)、又はZn(亜鉛)元素の酸化物、窒化物、及び炭化物からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。
本発明の添加剤は、下記表1のような化学式を有し得る。前記元素の酸化物、窒化物及び炭化物の代表的な化学式を例示したものであって、これに限ることではなく、前記元素の酸化物、窒化物及び炭化物形態の他の化学式を有し得る。
【0018】
【0019】
前記添加剤の含量は、無鉛ソルダ合金組成物に比して、0.01乃至2.0wt%である。0.01wt%未満の場合、従来のSn-Cu-Bi,Sn-Ag-Bi,Sn-Ag-Cu-Bi合金に比して、高温及び振動環境において改善された特性が現れず、2.0wt%を超える場合には、添加剤によりソルダリング性が低下し、湿潤不良であるディウェッティング(dewetting)現状が発生する。
前記添加剤の粒径はナノサイズであって、1,000nm未満であることが好ましい。添加剤の大きさが1,000nm以上の場合、合金内で不純物として作用する問題がある。ただし、添加剤の粒径が小さくなっても、コスト増加の問題を除いては、効果的であるため、下限を置かない。
【0020】
図1(a)に示すように、添加剤が未添加された無鉛ソルダ合金組成物は、平均結晶粒が約2.7μmで観察され、
図1(b)に示すように、添加剤としてLa
2O
3が添加された無鉛ソルダ合金組成物は、平均結晶粒が約1.9μmで観察され、本発明に係る添加剤が添加されていない無鉛ソルダ合金組成物に比して、平均結晶粒径が約29%減少することを確認した。
【0021】
なお、本発明に係る添加剤が添加されていない無鉛ソルダ合金組成物の平均IMC層の厚さは、約5.9μmで観察され、La2O3が添加された無鉛ソルダ合金組成物の平均IMC層の厚さは、2.3μmで観察されて、本発明に係る添加剤が添加されていない無鉛ソルダ合金組成物に比して、平均IMC層の厚さが約61%減少することを確認した。
【0022】
即ち、本発明の添加剤の添加により、ソルダの結晶粒が微細化され、IMC層もまた大きさが減少する。特に、脆性が強いAg3Sn,Cu6Sn5などの金属間化合物は、反復的な熱衝撃及び疲労試験時、クラック(Crack)及び剥離を誘発するが、このようなIMCの大きさが減少することにより高温環境でクラック(Crack)及び剥離を制御することができる。なお、一般的に、金属の結晶粒子が微細化されると、Hall‐Petch式により降伏強度と引張強度が増加する。
【0023】
図2は、析出強化とナノ分散強化の温度上昇による引張強度の低下率を示したグラフであり、
図3は、析出状にナノサイズのセラミックス粉末が分散されている状態をTEMを利用して写真で示したことである。
析出強化型合金は、初期温度が増加した時、結晶粒径を抑制させるが、一定の温度以上で持続的に使用時は濃度差により析出状が消滅されたり、粒内と粒界で結晶粒と持続成長した析出状は脆性を起こして、初期クラック(Crack)の発生地点になり得、粗大化した結晶粒は、クラック(Crack)が容易に進行されることができるので、強度値の低下が大きい。
しかし、ナノ分散強化型合金は、温度が上昇してもナノサイズのセラミックス粉末が成長するか、消滅しないので、結晶粒の周りに均一に分散されて合金の結晶粒及び金属間化合物が粗大化されることを抑制することができる。
【0024】
本発明は、Bi析出強化物の周りにナノサイズのセラミックス粉末が分散されることにより、析出強化粒子が濃度差によって消滅されたり、マトリックスと反応して粗大化されたりすることを防止するため、二重効果を有する。よって、温度が上昇しても初期微細化された結晶粒及び金属化合物によるクラック(Crack)の進行を持続的に抑制するため、強度値の変化が少ない。追加的に、ナノサイズのセラミックス粉末により結晶粒及び金属間化合物の抑制により拡散性及び湿潤性が向上してボイド(Void)の発生が抑制される特性を見せる。
【0025】
本発明のソルダペーストは、本発明に係る無鉛ソルダ合金の粉末及び添加剤とフラックスを含むことを特徴とする。本発明に係るソルダペーストは、無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末が分散されず、フラックスに分散されても同じ効果を有する。即ち、無鉛ソルダ合金粉末とナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を混合し、これをフラックスと混合してソルダペーストを製造することもでき、フラックスにナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を分散させ、無鉛ソルダ合金粉末を混合して製造することもできる。この時、ナノサイズのセラミックス粉末を単純に分散されると、その効果が少なく、網目構造の形態で分散させてこそソルダリング時、合金の間に再分散されながらナノ分散強化型合金を形成する。
【0026】
本発明の無鉛ソルダ合金組成物は、分散強化及び組織の微細化が可能なソルダボール、ソルダバー(bar)、ソルダワイヤ、ソルダフリーフォームなどの形態でも製造されることができる。
本発明のソルダフリーフォームは、本発明に係る無鉛ソルダ合金組成物からなり、シートの形態であることを特徴とする。本発明のソルダボールは、本発明に係る無鉛ソルダ合金組成物からなり得る。本発明のソルダワイヤは、本発明に係る無鉛ソルダ合金組成物からなり得る。本発明のソルダバーは、本発明に係る無鉛ソルダ合金組成物からなり得る。前記の製品形態で製造された高温及び振動環境に適合した無鉛ソルダ合金組成物は、電子製品又は自動車電装品、半導体デバイスに接合用材料として利用できる。
【0027】
以下、具体的な実施例及び比較例を通じて本発明を詳細に説明し、このような実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【0028】
実施例1
無鉛ソルダ合金にセラミックス粉末である添加剤を無鉛ソルダ合金組成物に比して、0.01乃至2.0wt%混合した無鉛ソルダ合金組成物とフラックスを88.5wt%:11.5wt%の比率で混合して、ソルダペーストを製造する。
【0029】
実施例2
セラミックス粉末である添加剤をフラックスに分散させた後、無鉛ソルダ合金の粉末と混合してソルダペーストを製造する。
【0030】
実施例3~4及び実施例7~10
無鉛ソルダ合金にセラミックス粉末である添加剤を無鉛ソルダ合金組成物に比して、0.01乃至2.0wt%混合した無鉛ソルダ合金組成物とフラックスを88.5wt%:11.5wt%の比率で混合してソルダペーストを製造する。
【0031】
実施例5~6
無鉛ソルダ合金にセラミックス粉末である添加剤を無鉛ソルダ合金組成物に比して、0.01乃至2.0wt%混合した無鉛ソルダ合金組成物を、圧延を通して0.1mmのソルダフリーフォームを製造する。
【0032】
比較例1~4及び比較例7~8
セラミックス粉末である添加剤を添加せずに、無鉛ソルダ合金の粉末とフラックスを混合してソルダペーストを製造する。
【0033】
比較例5~6
セラミックス粉末である添加剤を添加しない無鉛ソルダ合金を、圧延を通して0.1mm厚さのソルダフリーフォームを製造する。
【0034】
比較例9
無鉛ソルダ合金に、セラミックス粉末である添加剤を0.005wt%混合した無鉛ソルダ合金組成物とフラックスを88.5wt%:11.5wt%の比率で混合して、ソルダペーストを製造する。
【0035】
比較例10
無鉛ソルダ合金に、セラミックス粉末である添加剤を2.1wt%混合した無鉛ソルダ合金組成物とフラックスを88.5wt%:11.5wt%の比率で混合して、ソルダペーストを製造する。
【0036】
前記実施例1乃至10及び比較例1乃至10において使用された無鉛ソルダ合金及び添加剤の種類、含量及び製品の形態に関し、下記表2に示した。
【0037】
【0038】
本発明の無鉛ソルダ合金組成物について、下記の項目を評価した。
<評価項目>
1.OSP,HASL,Snなどの表面処理されたPCB基板の上端にペースト塗布。
2.微細構造の観察:結成粒径(Grain size)、金属間化合物(IMC)のサイズ。
3.熱衝撃テスト:高温環境耐久性評価(-40℃~125℃,各10分維持,3000cycle)
4.接合強度:熱衝撃前/後 せん断強度
5.拡散性試験(spreading test):JIS Z 3197
6.粘着力試験:JIS Z 3284
7.ボイド(Void)評価:ソルダリング後、X-Rayでボイド含量測定。
8.湿潤性試験:JIS Z 3284
【0039】
<細部試験方法>
(1)熱衝撃テスト及び接合強度
熱衝撃テスト及び接合強度は、高温環境における信頼性があるかどうかを確認するために実施した。熱衝撃テストは、エレベーター式熱衝撃テスタを使用し、-40℃で10分間維持後、125℃で10分維持を1cycleとして、1000cycle,2000cycle,3000cycleである時の強度変化を測定し、靭性(toughness)を計算した。接合強度は、せん断強測定器を用いて、shear height 60 μm, test speed 300μm/s, Land speed 100μm/sで測定し、5つの試片を測定してその平均及び平均偏差を測定し、靭性(toughness)は、Stress-Strain curveで面積値を、積分を通して計算した。
【0040】
(2)拡散性の試験
拡散性の実験は、JIS Z 3197規格によって実施した。先ず、A 30mmX30mmX0.3mmの銅彫刻を研磨した後、アルコールで洗浄する。乾燥後、均一な酸化膜を生成するために、150℃の温度で1時間の間加熱する。0.3gのソルダ粉末を0.03gのフラックスと混合し、銅彫刻の中央に置く。その彫刻を250℃で加熱されたホットプレートに置く。しばらくして銅彫刻の中央に位置したソルダ粉末が溶け始める。銅彫刻を250℃で溶融されたソルダ槽に30秒の間維持して、ソルダ粉末が完全に溶けて広がると、銅彫刻をソルダ槽から取り出し、常温で冷却させる。冷却された銅板上に広がっているソルダを使用して拡散性を実験し、その拡散率を測定する。
【0041】
(3)粘着性試験
粘着性の試験は、厚さ0.2mm、直径6.5mmの孔を有するメタルマスクを用いて、グラス板又はセラミックス基板にソルダペーストを印刷する。前記印刷されたソルダペーストを円柱形STS材質のプローブ(直径5.10±0.13mm)を用いて加圧計が取り付けられた粘着性測定器から以下の条件で粘着性を測定し、この時の最大荷重を5回測定して平均値を算出する。
‐プローブ下降速度:2.0mm/s
‐ペースト加圧圧力:50±5g
‐ペースト加圧時間:0.2秒以内
‐プローブ上昇速度:10mm/s
【0042】
(4)ボイド(Void)試験
Void試験は、ソルダリング直後、チップ(Chip)の下部にソルダが形成された層のボイドサイズをX-Ray装備を介して測定する。全体面積対比ボイドが占める面積を比率で計算して結果を記録する。ボイド面積が大きいほどソルダ接合面積が小さいという意味であり、これは電気抵抗が増加し、熱放出性能域から超えて性能に悪影響を与える。
【0043】
(5)湿潤性試験
湿潤性の試験は、スクリンプリントを利用してソルダペーストをPCB基板に塗布し、 reflow工程時、隣り合う回路とブリッジが形成されるかどうかを評価することであって、評価方法は、JIS Z 3284附属書10の表1(下記表3)に示した拡散された状態により区分して表示する。
【0044】
【0045】
<評価結果>
(1)接合強度及び靭性(toughness)
本発明において、製造したソルダ合金組成物をペーストとフリーフォームで製造して、PCB基板に実装及びレフロー以後、初期、1000cycle,2000cycle,3000cycleの熱衝撃テスートを進行した。以後、接合強度を、測定結果をチップの大きさと種類によって
図4(a) MLCC 1210、
図4(b) QFP44で示した。
【0046】
図4(a)、(b)から本発明に係る無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末が添加された場合、初期強度値が高く、熱衝撃が進行することにより強度低下率が少ない反面、ナノサイズのセラミックス粉末が添加されていない場合には、初期において1000cycle,2000cycleで進行される過程で強度低下率が急激に低くなることを確認した。
【0047】
このような効果が発生する理由は、
図1から見られるように、ナノサイズのセラミックス粉末が合金内に分散されて、粒界成長(Grain size)及び金属間化合物の成長を妨害し、組織の微細化は、結局、靭性(Toughness)の向上と熱衝撃に対するクラック伝播妨害及び衝撃エネルギーの吸収率を高めて、ソルダの接合強度低下を阻止させたもと判断される。
【0048】
図5は、靱性(Toughness)を示したグラフである。無鉛ソルダ合金にナノサイズのセラミックス粉末が添加されていない合金対比ナノサイズのセラミックス粉末が添加された合金の場合、靱性が向上して、熱衝撃により発生する応力に対する抵抗能力が高まったものと判断される。
【0049】
(2)拡散性
下記表4には、無鉛ソルダ合金の組成別の拡散率を測定した結果を示した。比較例5乃至6及び実施例5乃至6の場合、製品の形態がソルダフリーフォームのため、評価結果から除外した。
製品の形態がソルダペーストである試料の拡散率を測定した結果、表4のように比較例よりナノサイズのセラミックス粉末である添加剤を0.01~2.0wt%添加した実施例が拡散性が優秀なことを確認した。しかしながら、ナノサイズのセラミックス粉末が0.005wt%では(比較例9)効果がなかった。これは、ナノサイズのセラミックス粉末が0.01~2.0wt%で添加された時は、合金の流動性がよくなって、拡散性に影響を与えるが、範囲を0.01wt%未満では効果がないのが分かる。拡散率がよいソルダは、はんだ付け時に敏感な電子部品や回路基板によく拡散されて、はんだ付け部のヒレがよく形成されるので、はんだ付け部の不良減少と感度向上などの長所として作用することができる。
【0050】
【0051】
(3)ボイド(Void)
下記表5には、無鉛ソルダ合金組成別にボイド測定結果を示した。
比較例より0.01~2.0wt%のナノサイズのセラミックス粉末が添加された実施例の場合を見る時、ボイド特性が優秀なことを確認した。これは、ナノサイズのセラミックス粉末が添加されることにより、合金の流動性がよくなって、ボイド減少に影響を与えるものと判断した。しかしながら、前記数値範囲を脱した0.005wt%では(比較例9)、ナノサイズのセラミックス粉末が効果がないのが分かり、2.1wt%では(比較例10)、ナノサイズのセラミックス粉末が添加されることにより、ディウェッティング(dewetting)を発生させ、ボイド率を高めることが分かる。なお、Bi含量を増加させると、融点が低下し、湿潤性が一部よくなれるが、Biが適正含量以上の場合、硬化させる特性があるので、ボイドも同様に増加されることができる。よって、Bi含量は、10wt%以下であるのが望ましい。
【0052】
【0053】
(4)湿潤性
下記表6には、無鉛ソルダ合金組成別湿潤性の測定結果を示した。
比較例より0.01~2.0wt%のナノサイズのセラミックス粉末を添加した実施例の湿潤程度を比較してみたとき、その特性が優秀なことを確認した。これは、ナノサイズのセラミックス粉末が添加されることにより、合金の流動性がよくなって、湿潤性に影響を与えるものと判断した。しかしながら、前記数値範囲を脱した0.005wt%のナノサイズのセラミックス粉末が添加された場合(比較例9)には、効果がないことがわかり、2.1wt%のナノサイズのセラミックス粉末が添加された場合(比較例10)には、かえって湿潤性が低下することがわかる。
【0054】
【0055】
表6において、湿潤程度の区分は、:1(ソルダペースで溶融したはんだが、試験板を濡らして、ペーストを塗布した面積以上で拡散された状態)、2(ソルダペーストを塗布した部分は、すべてがはんだによって湿潤状態)、3(ソルダペーストを塗布した部分の殆どがはんだによって湿潤状態、dewettingも含む。)、4(試験板は、はんだが湿潤状態であるものがなく、溶融したはんだが1つ又は多数のソルダボールからなる状態(nonwetting))をいう。