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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】自律走行システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220602BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G05D1/02 N
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020073889
(22)【出願日】2020-04-17
(62)【分割の表示】P 2016105819の分割
【原出願日】2016-05-27
(65)【公開番号】P2020119597
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-04-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】荒木 信之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】北野 恵大
(72)【発明者】
【氏名】平松 敏史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-269966(JP,A)
【文献】特開2014-184832(JP,A)
【文献】特開昭62-140080(JP,A)
【文献】特開2002-354905(JP,A)
【文献】特開2015-75423(JP,A)
【文献】特開平9-178481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0324772(US,A1)
【文献】特開2014-154047(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119266(WO,A1)
【文献】特開2016-71566(JP,A)
【文献】飛田 幹男 MIKIO TOBITA,航海の安全と省エネ,計測と制御 第50巻 第6号 JOURNAL OF THE SOCIETY OF INSTRUMENT AND CONTROL ENGINEERS,日本,公益社団法人計測自動制御学会 The Society of Instrument and Control Engineers,2011年06月10日,第50巻第6号,p.374~379
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定される前記作業車両の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
前記位置情報に基づく前記作業車両の走行軌跡から走行領域を特定する領域特定部と、
地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
前記領域特定部により特定された前記走行領域が、前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域を含むか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記走行領域に前記禁止領域が含まれると判定された場合、その旨を報知する報知部と、を備えることを特徴とする自律走行システム。
【請求項2】
前記位置情報取得部は、前記作業車両の位置情報を世界測地系により取得可能とし、
前記地図情報取得部は、前記地図情報を日本測地系による位置情報によって取得可能であり、
世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて前記作業車両の位置情報と前記地図情報の位置情報の測地変換を行う測地変換部と、
前記走行領域を登録領域とする登録部と、を備え、
前記登録部は、前記測地変換部による測地変換の後、前記走行領域を登録領域とすることを特徴とする請求項1に記載の自律走行システム。
【請求項3】
予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定され、前記作業車両の位置情報を世界測地系により取得可能な位置情報取得部と、
前記位置情報に基づく前記作業車両の走行軌跡から走行領域を特定する領域特定部と、
日本測地系による位置情報を含む地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて前記作業車両の位置情報と前記地図情報の位置情報の測地変換を行う測地変換部と、
前記領域特定部により特定された前記走行領域が、前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域を含むか否かを判定する判定部と、
前記走行領域の一部に前記禁止領域を含むと前記判定部によって判定された場合、前記測地変換部による測地変換の後、前記走行領域を登録領域とする登録部と、を備えることを特徴とする自律走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような自律走行システムは、例えば、衛星測位システムを用いて作業車両の現在位置を取得し、登録領域内に生成される目標走行経路等に沿って作業車両を自律走行させるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
登録領域の登録については、例えば、登録対象となる領域において、作業車両の位置情報を取得しながら、作業者の操縦等により作業車両を走行させる。そして、登録領域を登録するための基準となる複数の基準地点の夫々における位置情報を取得し、それら複数の基準地点から特定される領域を登録領域として登録している。例えば、作業車両が農作業用である場合には、圃場の角部等を基準地点とし、圃場内の端部側を周回するように作業車両を走行させて、圃場の角部となる複数の基準地点の位置情報を取得し、それら複数の基準地点を結ぶ線にて囲まれた圃場内の領域を登録領域として登録している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-354905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如く、例えば、作業車両が農作業用である場合には、通常、圃場内に登録領域が登録されることになる。しかしながら、登録ミス等により、圃場外の道路等を含む領域を登録領域として登録してしまうと、圃場外の道路等、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域で作業車両を自律走行させてしまうことになる。そこで、作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を阻止するための対策が求められている。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を阻止することができる自律走行システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定される前記作業車両の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
前記作業車両の走行軌跡に基づいて走行領域を特定可能な領域特定部と、
前記領域特定部により特定された走行領域が前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域を含むか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記走行領域に前記禁止領域が含まれないと判定される場合に前記走行領域を前記登録領域として登録する登録部と、を備えると好適である。
【0008】
本構成によれば、登録領域を登録する場合に、例えば、登録対象となる領域において、位置情報取得部にて作業車両の位置情報を取得しながら、作業者の操縦等により作業車両を走行させることができる。この作業車両の走行により、領域特定部が、位置情報取得部にて取得された作業車両の位置情報から作業車両の走行軌跡を把握し、その走行軌跡に基づいて走行領域を特定することができる。そして、判定部は、道路等を含む禁止領域が走行領域に含まれているか否かを判定し、登録部が、判定部により走行領域に地図情報における禁止領域が含まれないと判定される場合に走行領域を登録領域として登録する。これにより、判定部により走行領域に禁止領域が含まれていると判定される場合には、走行領域が登録領域として登録されない。よって、道路等を含む禁止領域が登録領域に含まれることを防止することができ、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を阻止することができる。
【0009】
本発明は、予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定される前記作業車両の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
前記位置情報取得部により取得された前記作業車両の現在位置が前記登録領域内であるか否か、及び、前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域内であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記作業車両の現在位置が前記登録領域内で且つ前記禁止領域内であると判定された場合に前記作業車両の自律走行を禁止する自律走行禁止部と、を備えると好適である。
【0010】
本構成によれば、作業車両を自律走行させる場合に、位置情報取得部にて作業車両の現在位置を取得するので、判定部は、位置情報取得部により取得された作業車両の現在位置が登録領域内であるか否か、及び、位置情報取得部により取得された作業車両の現在位置が地図情報における禁止領域内であるか否かを判定することができる。そして、自律走行禁止部は、判定部により作業車両の現在位置が登録領域内で且つ禁止領域内であると判定された場合に、作業車両を走行停止させる等により作業車両の自律走行を禁止することができる。よって、作業車両を自律走行させているときに作業車両が禁止領域に侵入しても、その自律走行を禁止することで、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を阻止することができる。
【0011】
本発明は、前記位置情報取得部は、基地局の位置情報に基づいてRTK測位により前記作業車両の位置情報を取得可能に構成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、位置情報取得部は、基地局の位置情報に基づいてRTK測位により作業車両の位置情報を取得できるので、作業車両の位置情報として正確な位置情報を取得できる。これにより、作業車両の自律走行を適切に行うことができるだけでなく、上述の判定部による判定も正確に行うことができ、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を適切に阻止することができる。
【0013】
本発明は、前記位置情報取得部は所定の基地局の位置情報に基づいて世界測地系により前記作業車両の位置情報を取得可能であり、
前記地図情報は日本測地系による位置情報を含む地図情報であって、
世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて前記所定の基地局の位置情報又は前記地図情報の位置情報の測地変換を行う測地変換部を備えると好適である。
【0014】
本構成によれば、位置情報取得部が世界測地系により作業車両の位置情報を取得可能であるのに対して、地図情報は日本測地系による位置情報を含む地図情報となっている。世界測地系と日本測地系との間で取得される位置情報に誤差があるので、この誤差が有るまま上述の判定部が判定を行うと、誤判定となる可能性がある。そこで、測地変換部による測地変換を行うことで、その誤差を無くし、世界測地系と日本測地系との間での誤差を無くした状態で上述の判定部による判定を行うことができる。よって、上述の判定部による判定を正確に行うことができ、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を適切に阻止することができる。
【0015】
本発明は、前記補正値を地域毎に対応付けて記憶する記憶部を備え、
前記測地変換部は、前記作業車両の現在位置が属する地域に対応付けられた前記補正値に基づいて前記測地変換を行うと好適である。
【0016】
世界測地系と日本測地系との間での誤差の大きさは地域によって異なる。そこで、本構成によれば、測地変換部は、記憶部に記憶された補正値のうち、作業車両の現在位置が属する地域に対応付けられた補正値に基づいて測地変換を行う。これにより、地域毎で異なる誤差の大きさに応じて適切に測地変換を行うことができ、上述の判定部による判定を行うに当たり、所定の基地局の位置情報及び地図情報の位置情報について正確な位置情報を取得でき、より正確な判定を行うことができる。
【0017】
本発明は、前記測地変換部による前記測地変換における位置情報の誤差を補正する補正モードを実行可能なモード実行部を備え、
前記モード実行部により前記補正モードが実行されたときに単独測位又は前記所定の基地局とは別の基地局の位置情報に基づくRTK測位により前記所定の基地局の位置情報を補正する補正部を備えると好適である。
【0018】
測地変換部による測地変換を行うに当たり、所定の基地局の位置情報自体に誤差があることも考えられる。そこで、本構成によれば、補正部が、モード実行部により補正モードが実行されたときに単独測位又は所定の基地局とは別の基地局の位置情報に基づくRTK測位により所定の基地局の位置情報を補正するので、所定の基地局の位置情報の誤差をも無くし、正確な位置情報を取得することができる。よって、上述の判定部の判定精度をより向上することができ、本来なら作業車両の自律走行を禁止すべき領域における作業車両の自律走行を適切に且つより精度よく阻止することができる。
【0019】
本発明の第1特徴構成は、予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定される前記作業車両の位置情報を取得可能な位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて走行領域を特定する領域特定部と、
地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
前記領域特定部により特定された前記走行領域が、前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域を含むか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記走行領域に前記禁止領域が含まれると判定された場合、その旨を報知する報知部と、を備えることを特徴とする点にある。
【0020】
本発明の第2特徴構成は、前記位置情報取得部は、前記作業車両の位置情報を世界測地系により取得可能とし、
前記地図情報取得部は、前記地図情報を日本測地系による位置情報によって取得可能であり、
世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて前記作業車両の位置情報と前記地図情報の位置情報の測地変換を行う測地変換部と、
前記走行領域を登録領域とする登録部と、を備え、
前記登録部は、前記測地変換部による測地変換の後、前記走行領域を登録領域とすることを特徴とする点にある。
【0021】
本発明の第3特徴構成は、予め登録された登録領域内において作業車両を自律走行させる自律走行システムであって、
衛星測位システムにより特定され、前記作業車両の位置情報を世界測地系により取得可能な位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて走行領域を特定する領域特定部と、
日本測地系による位置情報を含む地図情報を取得可能な地図情報取得部と、
世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて前記作業車両の位置情報と前記地図情報の位置情報の測地変換を行う測地変換部と、
前記領域特定部により特定された前記走行領域が、前記地図情報において前記作業車両の自律走行が禁止される禁止領域を含むか否かを判定する判定部と、
前記走行領域の一部に前記禁止領域を含むと前記判定部によって判定された場合、前記測地変換部による測地変換の後、前記走行領域を登録領域とする登録部と、を備えることを特徴とする点にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】トラクタの全体側面図
図2】トラクタ、基地局、及び、無線通信端末の制御ブロック図
図3】測地変換を行う前の基地局、及び、地図情報等の位置情報を示す図
図4】測地変換を行った後の基地局、及び、地図情報等の位置情報を示す図
図5】基地局と別の基地局とを用いたRTK測位を示す図
図6】登録領域の登録における手順を示すフローチャート
図7】自律走行時における動作を示すフローチャート
図8】登録領域内に禁止領域が存在する場合を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る自律走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自律走行システムは、図1に示すように、予め登録された登録領域内において作業車両としてのトラクタ1を自律走行させるためのシステムである。自律走行システムは、図2に示すように、トラクタ1の位置情報を取得可能な位置情報取得部32、地図情報を取得可能な地図情報取得部33等を備えており、この実施形態では、無線通信端末30に自律走行システムが備えられている。
【0024】
まず、図1に基づいてトラクタ1について説明する。
このトラクタ1は、後方側に作業機50を装着可能な車体部2を備え、車体部2の前部が左右一対の前輪3で支持され、車体部2の後部が左右一対の後輪4で支持されている。車体部2の前部にはボンネット5が配置され、そのボンネット5内に駆動源としてのエンジン6が収容されている。エンジン6は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン6に加えて、或いはエンジン6に代えて、電気モータを採用してもよい。ボンネット5の後方側には、運転者が搭乗するためのキャビン7が備えられ、そのキャビン7内には、運転者が操向操作するためのステアリングハンドル8、運転者の運転座席9等が備えられている。なお、本実施形態では作業車両としてトラクタ1を例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業車両に加え、歩行型作業車両も含まれる。
【0025】
車体部2の後方側には、左右一対のロアリンク10とアッパリンク11とからなる3点リンク機構が備えられ、その3点リンク機構に作業機50が装着可能に構成されている。車体部2の後方側には、図示は省略するが、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置が備えられ、この昇降装置が、3点リンク機構を昇降させることで、作業機50を昇降させている。
【0026】
ここで、作業機50について、図1では、耕耘装置を装着した場合を例示しているが、耕耘装置に限らず、プラウ、施肥装置等、各種の作業機を適用することができる。
【0027】
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン6の回転速度を調整可能なガバナ装置21、エンジン6からの回転駆動力を変速して駆動輪に伝達する変速装置22、ガバナ装置21および変速装置22を制御可能な制御部23等が備えられている。変速装置22は、例えば、油圧式無段変速装置からなる主変速装置とギヤ式多段変速装置からなる副変速装置とを組み合わせて構成されている。
【0028】
このトラクタ1は、運転者がキャビン7内に搭乗して走行できるだけでなく、キャビン7内に運転者が搭乗しなくても、無線通信端末30からの指令等に基づいて、トラクタ1を自律走行可能に構成している。
【0029】
トラクタ1は、図2に示すように、操舵装置24、測位用アンテナ25、無線通信用アンテナ26等を備えており、自己の現在位置情報(車体部2の位置情報)を取得しながら、自律走行可能に構成されている。
【0030】
操舵装置24は、例えば、ステアリングハンドル8の回転軸の途中部に備えられ、ステアリングハンドル8の回転角度(操舵角)を調整可能に構成されている。制御部23が操舵装置24を制御することで、直進走行だけでなく、ステアリングハンドル8の回転角度を所望の回転角度に調整して、所望の旋回半径での旋回走行も行える。
【0031】
測位用アンテナ25は、図1に示すように、例えば、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星63からの信号を受信するように構成されている。測位用アンテナ25は、キャビン7のルーフ13の上面に配置されている。
【0032】
無線通信用アンテナ26は、無線通信端末30等との間で各種の信号を送受信可能に構成されている。無線通信用アンテナ26は、キャビン7のルーフ13の上面に配置されている。無線通信用アンテナ26にて受信した信号は、図2に示すように、制御部23に入力可能であり、制御部23からの信号は、無線通信用アンテナ26にて無線通信端末30の無線通信装置31等に送信可能に構成されている。
【0033】
ここで、衛星測位システムを用いた測位方法としては、単独測位、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
【0034】
この実施形態では、RTK測位を適用しており、図1及び図2に示すように、移動局となるトラクタ1に測位用アンテナ25を備えるのに加えて、基地局測位用アンテナ61を備えた基地局60が備えられている。基地局60は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置に配置されており、基地局60の位置情報は既知であり、その既知の位置情報が予め設定されている。基地局60には、トラクタ1の無線通信用アンテナ26との間で各種の信号を送受信可能な基地局無線通信装置62が備えられ、基地局60とトラクタ1との間で各種の情報が送受信可能に構成されている。
【0035】
RTK測位では、予め位置情報が設定されている基地局60と、位置情報を求める対象の移動局となるトラクタ1の測位用アンテナ25との両方で測位衛星63からの搬送波位相を測定し、基地局60にて測定した測定データ等を基地局無線通信装置62からトラクタ1の無線通信用アンテナ26に送信している。トラクタ1の制御部23は、測位用アンテナ25にて測定した測定データを、基地局60にて測定した測定データや予め設定されている基地局60の位置情報等を用いて補正して、トラクタ1の位置情報を求めている。制御部23は、トラクタ1の位置情報として、例えば、緯度情報・経度情報を求めている。
【0036】
次に、図2に基づいて、無線通信端末30に備えられた自律走行システムについて説明する。
無線通信端末30は、例えば、タッチパネルを有するタブレット型のパーソナルコンピュータ等から構成され、各種情報をタッチパネルに表示可能であり、タッチパネルを操作することで、各種の情報も入力可能となっている。
【0037】
自律走行システムは、登録領域の登録を行い、その登録された登録領域内に目標走行経路を生成し、その生成された目標走行経路に沿ってトラクタ1を自律走行可能に構成されている。
【0038】
無線通信端末30には、登録領域を登録するために、位置情報取得部32、地図情報取得部33、領域特定部34、判定部35、登録部36等が備えられている。また、登録された登録領域内にトラクタ1をどのように走行させるかを示す目標走行経路を生成するために、無線通信端末30には走行経路演算部37が備えられている。
【0039】
トラクタ1に備えられた制御部23は、無線通信用アンテナ26と無線通信装置31との間での無線通信を介して、無線通信端末30との間で各種の情報を送受信可能に構成されている。無線通信端末30は、目標走行経路等、トラクタ1を自律走行させるための各種の情報をトラクタ1の制御部23に送信可能に構成されている。トラクタ1の制御部23は、無線通信端末30から送信された各種の情報に応じて、走行経路演算部37にて生成された目標走行経路に沿って自律走行するように、測位用アンテナ25の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報に基づいて操舵装置24等を制御可能に構成されている。
【0040】
位置情報取得部32は、上述の衛星測位システムのRTK測位を適用して、既知の基地局60の位置情報に基づいて世界測地系により特定されるトラクタ1の位置情報を取得可能に構成されている。ここで、位置情報取得部32は、無線通信装置31、トラクタ1の無線通信用アンテナ26、及び、トラクタ1の制御部23を含めて構成することもできる。上述の衛星測位システムのRTK測位を適用することで、制御部23では、世界測地系によりトラクタ1の位置情報が特定されており、位置情報取得部32は、トラクタ1の無線通信用アンテナ26と無線通信端末30の無線通信装置31との間での無線通信を介して、特定されたトラクタ1の位置情報を取得している。
【0041】
地図情報取得部33が取得可能な地図情報は、日本測地系による位置情報を含む地図情報となっている。地図情報取得部33は、作業者のタッチパネルの操作による入力や無線通信装置31を用いた外部装置との無線通信により、日本測地系による地図情報を取得している。地図情報には、各位置座標がどのような領域であるかを示す情報が含まれていてもよく、例えば、地図情報は複数の領域に分割され、各分割領域がどのような領域であるかを示す情報が含まれていてよい。領域としては、例えば、公道、農道、公園、公共施設、圃場が例示される。また、地図情報には、トラクタ1による自律走行が許可される許可領域であるか、トラクタ1による自律走行が禁止される禁止領域であるかの情報が含まれていてよく、その場合、圃場は許可領域として設定され、圃場以外(公道、農道、公園、公共施設等)は禁止領域として設定される。何れの領域を許可領域とし、何れの領域を禁止領域とするかは作業者が任意に設定可能であってもよい。但し、安全性の観点から、圃場以外の領域を許可領域に設定するにあたっては一定の制限が課せられることが望ましく、例えば地図情報上圃場でないとしても実際は圃場である等、地図上の領域と実際の領域との間に相違が存在する場合に、その領域を圃場に変更することで、許可領域として設定可能となることが望ましい。
【0042】
登録領域を登録する場合には、例えば、作業者の操縦によりトラクタ1を走行させ、そのときのトラクタ1の走行領域に基づいて登録領域を登録可能としている。そこで、領域特定部34は、トラクタ1の走行軌跡に基づいて走行領域を特定可能に構成されている。トラクタ1を走行させたときの位置情報は、位置情報取得部32にて取得しているので、領域特定部34は、その取得されたトラクタ1の位置情報からトラクタ1の走行軌跡を求めて、トラクタ1の走行領域を特定している。
【0043】
判定部35は、領域特定部34にて特定された走行領域が地図情報取得部33にて取得された地図情報において、トラクタ1の自律走行が禁止される禁止領域の一部又は全部を含むか否かを判定可能に構成されている。
【0044】
登録部36は、判定部35により走行領域に禁止領域が含まれないと判定された場合に走行領域を登録領域として登録可能に構成されている。これにより、公道等、本来ならトラクタ1の自律走行を禁止すべき禁止領域を含むことなく、登録領域を登録することができる。
【0045】
ここで、この実施形態では、判定部35にて判定するに当たり、トラクタ1の走行領域が世界測地系により特定されたトラクタ1の位置情報に基づくものであるのに対して、地図情報が日本測地系により取得されたものとなっている。よって、世界測地系により取得される位置情報と日本測地系により取得される位置情報との間に誤差が生じるので、判定部35は、世界測地系によるトラクタ1の走行領域と日本測地系による地図情報とを単に比較するだけでは、誤判定となる可能性がある。
【0046】
そこで、無線通信端末30には、世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて、基地局60の位置情報又は地図情報の測地変換を行う測地変換部39が備えられている。そして、無線通信端末30には、測地変換部39による測地変換を行うために、記憶部40、モード実行部41、補正部42が備えられている。
【0047】
世界測地系と日本測地系との補正値については、地域毎で異なることから、記憶部40は、世界測地系と日本測地系との補正値を地域毎に対応付けて記憶可能に構成されている。そして、測地変換部39は、トラクタ1の現在位置が属する地域に対応付けられた補正値に基づいて測地変換を行うように構成されている。モード実行部41は、測地変換部39による測地変換の誤差を補正する補正モードを実行可能に構成されており、補正部42は、モード実行部41により補正モードが実行されたときにRTK測位により基地局60の位置情報を補正可能に構成されている。
【0048】
図3及び図4に基づいて、測地変換部39による測地変換について説明する。図3及び図4は、圃場の周囲に道路K1,K2が隣接して位置する場合に、圃場を走行領域Qとしたときの走行領域Qの位置情報及び道路K1,K2等の地図情報の位置情報を示している。図3は、測地変換部39による測地変換を行う前の走行領域Q及び道路K1,K2等の位置情報を示している。図4は、測地変換部39による測地変換を行った後の走行領域Q及び道路K1,K2等の位置情報を示している。
【0049】
図3(a)及び図3(b)に示すように、地図情報として、圃場の周囲に隣接する道路K1、K2の位置情報が取得されている。例えば、道路K1は、地点P1(x1,y1)と地点P2(x2,y2)とを通る道路であり、その道路幅がW1であるとの位置情報が取得されている。道路K2は、地点P3(x3,y3)と地点P4(x4,y5)を通る道路であり、その道路幅がW2であるとの位置情報が取得されている。
【0050】
それに対して、圃場内において、作業者の操縦によりトラクタ1を走行させ、そのときのトラクタ1の走行軌跡に基づいて、領域特定部34により圃場内が走行領域Qとして特定されている。例えば、圃場の角部を基準地点とした場合に、領域特定部34は、トラクタ1の走行軌跡から複数の基準地点Q1,Q2,Q3,Q4の夫々における位置情報(u1,v1),(u2,v2),(u3,v3),(u4,v4)を求め、複数の基準地点Q1,Q2,Q3,Q4を結ぶ線にて囲まれた領域を走行領域Qとして特定している。また、トラクタ1の現在位置を(u6,v6)としており、基地局60の位置を(u0,v0)としている。
【0051】
走行領域Qの位置情報と道路K1,K2の位置情報との関係は、図3(a)及び図3(b)の点線で示すように、本来なら走行領域Qとなる圃場の周囲に道路K1,K2が隣接している関係となる。しかしながら、道路K1,K2が日本測地系によるものであり、走行領域Qが世界測地系によるものであり、世界測地系と日本測地系とで誤差が生じるので、走行領域Qの位置情報と道路K1,K2の位置情報との関係は、図3(a)及び図3(b)の実線で示すように、本来の関係からずれたものとなる。ちなみに、図3(a)では、本来の関係から図中左上側にずれた状態を示しており、図3(b)では、本来の関係から図中右下側にずれた状態を示している。
【0052】
そこで、測地変換部39は、世界測地系と日本測地系との補正値に基づいて、基地局60の位置情報又は地図情報の測地変換を行う。このとき、世界測地系と日本測地系との補正値を地域毎に対応付けて記憶部40に記憶させているので、測地変換部39は、トラクタ1の位置情報等により、現在位置がどの地域に属するかを判別し、現在位置に属する地域に対応付けられた補正値を用いて、基地局60の位置情報又は地図情報の測地変換を行う。これにより、取得される位置情報が世界測地系と日本測地系とで測地系が異なることによる誤差が生じる場合でも、その誤差を無くして正確な基地局60の位置情報及び地図情報を取得することができる。
【0053】
また、測地変換部39にて基地局60の位置情報又は地図情報の測地変換を行うに当たり、測地系が異なることによる誤差だけでなく、その他の誤差が生じることも考えられるので、それらの誤差を考慮することで、より正確な位置情報を取得するようにしている。
【0054】
まず、地図自体に誤差があることが考えられるので、地図上の任意の点について位置情報の補正を行っている。地図上の任意の位置として、例えば、圃場の角部となる基準地点Q1,Q2,Q3,Q4、基地局60の位置等を用いることができる。例えば、地図上の任意の位置(例えば、基準地点Q1)にトラクタ1を移動させて、そのときのトラクタ1の位置情報を取得し、地図上の任意の位置(例えば、基準地点Q1)が世界測地系にて特定されるトラクタ1の位置情報と一致するように、地図上の任意の点について位置情報の補正を行っている。これにより、地図上の任意の点の緯度・経度と実際の点の緯度・経度との誤差を補正でき、正確な地図情報を取得することができる。
【0055】
また、世界測位系では、基地局60の位置情報を用いてトラクタ1の位置情報を特定しているので、基地局60の位置自体に誤差があることが考えられる。そこで、モード実行部41は、測地変換部39による測地変換における位置情報の誤差を補正する補正モードを実行可能とし、補正部42は、モード実行部41により補正モードが実行されたときに別の基地局64に基づくRTK測位により基地局60の位置情報を補正している。
【0056】
補正部42(基地局位置情報取得部に相当する)は、図5に示すように、基地局60を移動局とし、別の基地局64を固定局としてRTK測位を行うことで、基地局60の位置情報を特定して、基地局60の位置情報を補正して、正確な基地局60の位置情報を取得している。ここで、別の基地局64として、電子基準点、三角点、公共基準点、仮想基準点(VRS)等、正確な位置情報が測量されて設定されている各種の基準位置を適用することができる。また、基地局60の位置情報を取得するために、RTK測位を用いているが、RTK測位に限らず、単独測位やDGPS(ディファレンシャルGPS測位)等、各種の測位方法を適用可能である。また、所定数以上の測位衛星63により基地局60の位置情報を得られる場合等、測位衛生システムにより安定した状態で位置情報を取得できる場合には、各測位衛星63により取得される基地局60の位置情報の平均値に基づいて、正確な基地局60の位置情報を取得することもできる。
【0057】
例えば、単独測位やDGPSにより、基地局60の位置情報及び別の基地局64の位置情報を特定する場合には、別の基地局64の設定位置情報(x,y)=(x11,y11)、特定された別の基地局64の位置情報(x,y)=(x12,y12)、特定された基地局60の位置情報(x,y)=(x13,y13)とした場合に、補正部42は、基地局60の位置情報(x,y)={x13-(x11-x12),y13-(y11-y12)}として、正確な基地局60の位置情報を求めることができる。
【0058】
以上の如く、地図自体の誤差や基地局60の位置情報の誤差を考慮して、測地変換部39により基地局60の位置情報又は地図情報の測地変換を行うことで、図4に示すように、走行領域Q及び道路K1,K2等の位置情報を正確に取得することができる。図4に示すものでは、測地変換部39により基地局60の位置情報の測地変換を行った状態を示している。図3に示す測地変換前の夫々の位置情報に対して、図4に示す測地変換後の位置情報として、測地変換した位置のみを新たな位置情報にて示している。つまり、基地局60の位置情報を(u10,v10)とし、複数の基準地点Q1,Q2,Q3,Q4の夫々における位置情報をQ1(u11,v11),Q2(u12,v12),Q3(u13,v13),Q4(u14,v14)とし、トラクタ1の現在位置を(u16,v16)にて示している。
【0059】
上述の測地変換部39による測地変換は、登録領域の登録を行う前等に行うことができるが、どのようなタイミングにて行うかは適宜変更が可能である。また、補正部42によるRTK測位を用いた基地局60の位置情報の補正は、測地変換とは別に、基地局60の設置当初や基地局60の設置後等に行うこともできる。例えば、基地局60の設置当初に補正部42によるRTK測位を用いた基地局60の位置情報の補正を行うことで、基地局60の設置当初から、基地局60の位置情報は正確なものとなり、正確なトラクタ1の位置情報を取得することができる。
【0060】
以下、登録領域の登録の前に測地変換部39による測地変換を行い、図4に示すような位置情報を取得可能な状態とした上での登録領域の登録について、図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0061】
まず、登録の対象となる圃場内において、作業車両であるトラクタ1を作業者の操縦により走行させる(ステップ#1)。このとき、圃場の角部を登録領域の基準地点としており、圃場内の端部側を周回走行させて、圃場の角部の夫々に対して、少なくともその近傍までトラクタ1を走行させるようにしている。
【0062】
位置情報取得部32は、トラクタ1の位置情報を取得しており、トラクタ1を走行させたときのトラクタ1の走行軌跡を求め、基準地点の位置情報を取得している(ステップ#2)。例えば、図4では、圃場の角部を登録領域の基準地点Q1,Q2,Q3,Q4としており、トラクタ1の走行軌跡から、基準地点Q1,Q2,Q3,Q4の夫々における位置情報を取得している。
【0063】
領域特定部34は、基準地点Q1,Q2,Q3,Q4の夫々における位置情報から、トラクタ1の走行領域を特定する(ステップ#3)。例えば、図4では、基準地点Q1,Q2,Q3,Q4を結ぶ線にて囲まれた領域を走行領域Qとして特定している。
【0064】
ここで、特定した走行領域Qと取得している地図情報とを比較して、例えば、走行領域Qと道路K1,K2が隣接していない等、走行領域Qの位置情報と地図情報の位置情報とにずれが生じている場合(例えば、図3参照)には、再度、測地変換部39による測地変換を行うことが可能である。このように、再度の測地変換部39による測地変換を行うことで、より正確な位置情報を取得することができる。
【0065】
判定部35は、領域特定部34にて特定された走行領域Qが禁止領域を含むか否かを判定し、登録部36は、走行領域Qが禁止領域を含まなければ、走行領域Qを登録領域として登録する(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5)。また、登録部36は、走行領域Qが禁止領域を含むと、登録領域の登録を行わない(ステップ#4のYesの場合)。例えば、図4において、圃場の周囲に隣接する道路K1,K2が位置する領域を禁止領域Kとしており、走行領域Qがグレーの領域Q5のみを含む領域であると、走行領域Qが禁止領域Kを含まず、その走行領域Qを登録領域として登録する。一方、走行領域Qが、グレーの領域Q5に加えて、点線にて囲む領域Q6をも含む領域であると、走行領域Qが禁止領域Kを含むとして、登録領域の登録が行われない。ちなみに、登録領域の登録が行われない場合は、登録領域の再登録を行うように無線通信端末30のタッチパネル等に表示することができる。
【0066】
上述の如く、走行領域Qに禁止領域Kが含まれている場合でも、禁止領域Kを含む領域を登録領域として登録しないことで、禁止領域Kにおけるトラクタ1の自律走行を阻止することができる。この実施形態では、禁止領域Kにおけるトラクタ1の自律走行を阻止するための対策として、禁止領域Kを含む領域を登録領域として登録しないという対策だけでなく、トラクタ1を自律走行させる場合にも、禁止領域Kにおけるトラクタ1の自律走行を防止するための対策を講じているので、その対策について説明する。
【0067】
判定部35は、位置情報取得部32により取得されたトラクタ1の現在位置が登録領域内であるか否か、及び、地図情報においてトラクタ1の自律走行が禁止される禁止領域K内であるか否かを判定可能に構成されている。そして、図2に示すように、無線通信端末30には、判定部35によりトラクタ1の現在位置が登録領域内で且つ禁止領域K内であると判定された場合にトラクタ1の自律走行を禁止する自律走行禁止部38が備えられている。
【0068】
以下、この自律走行時における対策について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
トラクタ1を自律走行させる場合には、制御部23が、トラクタ1の現在位置を取得しているので、無線通信用アンテナ26と無線通信装置31との無線通信を介して、位置情報取得部32がトラクタ1の現在位置を取得している(ステップ#11)。判定部35は、取得したトラクタ1の現在位置が登録領域内であるか否か、及び、取得したトラクタ1の現在位置が禁止領域K内であるか否かを判定する(ステップ#12、ステップ#13)。
【0069】
自律走行禁止部38は、判定部35による判定により、トラクタ1の現在位置が登録領域T外であると(図8参照)、トラクタ1を走行停止させて自律走行を禁止する(ステップ#12のNoの場合、ステップ#14)。図8は、登録領域T内に禁止領域Kが存在する場合を示している。自律走行禁止部38は、判定部35による判定により、トラクタ1の現在位置が登録領域T内であっても禁止領域K内であると、トラクタ1を走行停止させて自律走行を禁止する(ステップ#12のYesの場合、ステップ#13のYesの場合、ステップ#14)。自律走行禁止部38によりトラクタ1の自律走行を禁止する場合には、自律走行禁止部38が、トラクタ1の自律走行を禁止するための指示信号を、無線通信装置31と無線通信用アンテナ26との間の無線通信を介して、トラクタ1の制御部23に送信する。制御部23は、自律走行禁止部38からの指示信号に基づいて、トラクタ1を走行停止させて自律走行を禁止すべく、ガバナ装置21や変速装置22等を制御する。このとき、無線通信端末30のタッチパネルやトラクタ1のモニタ部等に、自律走行を禁止したことにより走行停止した旨を表示することができる。
【0070】
自律走行禁止部38は、判定部35による判定により、トラクタ1の現在位置が登録領域T内であり、且つ、トラクタ1の現在位置が禁止領域K外であると、トラクタ1の自律走行を継続させる(ステップ#12のYesの場合、ステップ#13のNoの場合、ステップ#15)。このとき、自律走行禁止部38から指示信号が送信されることは無く、トラクタ1の制御部23による自律走行が継続される。
【0071】
このように、トラクタ1の現在位置が、登録領域Tから外れた場合だけでなく、登録領域T内であっても禁止領域K内であれば、トラクタ1の自律走行を禁止することができる。これにより、例えば、図8に示すように、登録領域T内に禁止領域Kが存在する場合でも、トラクタ1の現在位置が禁止領域K内になると、トラクタ1が走行停止されるので、禁止領域Kでの自律走行を阻止することができる。しかも、トラクタ1の現在位置を取得する度に判定部35による判定が行われるので、トラクタ1が禁止領域Kに侵入した早い段階でトラクタ1を走行停止させることができ、禁止領域Kでの自律走行をいち早く阻止できる。
【0072】
この実施形態では、禁止領域Kにおけるトラクタ1の自律走行を阻止するための対策として、上述の2つの対策を講じているが、例えば、禁止領域Kを含む領域を登録領域として登録しないという対策だけを講じる、又は、トラクタ1の自律走行時にトラクタ1の現在位置が禁止領域K内となると自律走行を禁止するという対策のみを講じることも可能である。
【0073】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、位置情報取得部32が基地局60の位置情報に基づいて世界測地系によりトラクタ1の位置情報を取得可能であるのに対して、地図情報は日本測地系による位置情報を含む地図情報であり、位置情報を取得する測地系が異なるが、トラクタ1の位置情報及び地図情報の両方を世界測地系又は日本測地系により同一の測地系により取得できる場合には、測地変換部39による測地変換を行わなくてもよい。この場合、測地変換部39による測地変換とは別に、地図自体の誤差や基地局60の位置情報の誤差を無くすための構成を備えることもできる。
【0074】
(2)上記実施形態では、RTK測位によりトラクタ1の位置情報を取得するために、基地局60を設けているが、この基地局60に代えて、別の基地局64を備えることで、RTK測位によりトラクタ1の位置情報を取得することもできる。このように、別の基地局64を備える場合には、RTK測位に限らず、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)等の各種の測位方法を適用することもできる。
【0075】
(3)上記実施形態では、本発明に係る自律走行システムの位置情報取得部32や地図情報取得部33等を無線通信端末30に備えた場合を例示したが、本発明に係る自律走行システムの位置情報取得部32や地図情報取得部33等をどこに備えるかは適宜変更が可能である。例えば、本発明に係る自律走行システムの位置情報取得部32や地図情報取得部33等をトラクタ1の制御部23に備えることも可能であり、また、外部の制御装置等に本発明に係る自律走行システムの位置情報取得部32や地図情報取得部33等を備えることも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 トラクタ(作業車両)
32 位置情報取得部
33 地図情報取得部
34 領域特定部
35 判定部
36 登録部
39 測地変換部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8