(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】貿易決済システム、貿易決済方法および貿易決済プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20220602BHJP
G06Q 10/08 20120101ALI20220602BHJP
【FI】
G06Q20/06
G06Q10/08
(21)【出願番号】P 2020542923
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2019031925
(87)【国際公開番号】W WO2021029029
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】595140170
【氏名又は名称】東京海上日動火災保険株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新谷 哲之介
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/006056(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003414(WO,A1)
【文献】金子 雄介,貿易実務のブロックチェーン利用,実践と課題,デジタルプラクティス,Vol.10 No.3,一般社団法人情報処理学会 [オンライン]https://ww,2019年07月15日,第1-17頁, ISSN 2188-4390,https://www.ipsj.or.jp/dp/contents/publication/39/S1003-S07.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済システムであって、
前記コンピュータのそれぞれは、
貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、
前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理部と、
前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理部と、
を備え、
前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であ
り、
前記処理部は、前記双務契約に係る前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、該双務契約に係る前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項2】
請求項1に記載の貿易決済システムであって、
前記決済は、貿易条件に従って複数の関係者間での電子通貨による支払いを含む決済である、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項3】
請求項2に記載の貿易決済システムであって、
前記決済は、前記貿易の運賃を、前記貿易条件に応じて配送業者へ電子通貨により支払う処理を含む決済である、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項4】
請求項2に記載の貿易決済システムであって、
前記決済は、前記貿易に関する貨物海上保険料を、前記貿易条件に応じて保険引受人へ電子通貨により支払う処理を含む決済である、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の貿易決済システムであって、
前記決済は、仮想通貨による支払いを含む決済である、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項6】
請求項1に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、
前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項7】
請求項1に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、
前記荷送人ノードの前記決済処理部は、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、
前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品の船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項8】
請求項1に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行うとともに、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、
前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品の船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項9】
請求項7に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷送人ノードの前記決済処理部は、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金するとともに前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項10】
請求項7に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金するとともに前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項11】
請求項8に記載の貿易決済システムであって、
前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、
前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、
ことを特徴とする貿易決済システム。
【請求項12】
1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済方法であって、
前記コンピュータのそれぞれは、
貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、
前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理ステップと、
前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理ステップと、
を実施し、
前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であ
り、
前記処理ステップでは、前記双務契約に係る前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、該双務契約に係る前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、
ことを特徴とする貿易決済方法。
【請求項13】
1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済プログラムであって、
前記コンピュータのそれぞれに、
貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、
前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理ステップと、
前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理ステップと、
を実施し、
前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であ
り、
前記処理ステップでは、前記双務契約に係る前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、該双務契約に係る前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、
ことを特徴とする貿易決済プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貿易決済システム、貿易決済方法および貿易決済プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「信用状発行指示を受信すると、取引コードを設定して貿易取引DBにレコードを記憶し、取引コードを含む信用状発行依頼を送信する。貿易取引サーバはこの依頼を受信すると、取引銀行管理コードを設定して、依頼に含まれる取引コードとともに信用状発行通知に含めて送信する。信用状発行通知を受信すると、通知に含まれる取引コードを含む貿易取引DBのレコードに、通知に含まれる取引銀行管理コードを記憶する。貿易取引サーバは船荷証券データが発生すると、取引銀行管理コードを付加して送信する。船荷証券データを受信すると、船荷証券データに含まれる取引銀行管理コードを含む貿易取引DBのレコードに関連付けて、船荷証券DBにレコードを記憶する。」という技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術は、貿易取引に関わるデータ管理を行うことはできるが、債務の同時履行を保証することはできない。
【0005】
本発明の目的は、売買当事者が隔地に存在する貿易取引では、債務の同時履行がかなわず、売買当事者は相手の債務不履行による危険を負っていることから、貿易取引における債務の同時履行を保証する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。本発明の一態様に係る貿易決済システムは、1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済システムであって、前記コンピュータのそれぞれは、貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理部と、前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理部と、を備え、前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であり、前記処理部は、前記双務契約に係る前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、該双務契約に係る前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記決済は、貿易条件に従って複数の関係者間での電子通貨による支払いを含む決済である、ことを特徴とするものであってもよい。
【0010】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記決済は、前記貿易の運賃を、前記貿易条件に応じて配送業者へ電子通貨により支払う処理を含む決済である、ことを特徴とするものであってもよい。
【0011】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記決済は、前記貿易に関する貨物海上保険料を、前記貿易条件に応じて保険引受人へ電子通貨により支払う処理を含む決済である、ことを特徴とするものであってもよい。
【0012】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記決済は、仮想通貨による支払いを含む決済である、ことを特徴とするものであってもよい。
【0013】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、ことを特徴とするものであってもよい。
【0014】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、前記荷送人ノードの前記決済処理部は、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品の船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、ことを特徴とするものであってもよい。
【0015】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の荷送人のノードとなる荷送人ノードと、前記貿易の荷受人のノードとなる荷受人ノードと、前記貿易の配送業者のノードとなる配送業者ノードと、のそれぞれが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行うとともに、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、前記配送業者ノードの前記処理部は、前記貿易によって売買する物品の船荷証券を含む所定の船積書類の名義を前記荷送人から前記荷受人へと変更することで名義変更を処理する、ことを特徴とするものであってもよい。
【0016】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷送人ノードの前記決済処理部は、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金するとともに前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、ことを特徴とするものであってもよい。
【0017】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金するとともに前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、ことを特徴とするものであってもよい。
【0018】
また、上記の貿易決済システムにおいて、前記貿易の保険引受人のノードとなる保険引受人ノードが一つ以上の前記コンピュータにより構成され、前記荷受人ノードの前記決済処理部は、前記荷送人ノードの前記決済処理部に前記物品の売買に係る対価を送金することで決済を行い、前記配送業者ノードの前記決済処理部に前記貿易の運賃を送金することで決済を行い、前記保険引受人ノードの前記決済処理部に前記貿易の貨物海上保険料を送金することで決済を行う、ことを特徴とするものであってもよい。
【0019】
また、本発明の別の態様にかかる貿易決済方法は、1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済方法であって、前記コンピュータのそれぞれは、貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理ステップと、前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理ステップと、を実施し、前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であり、前記処理ステップでは、前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の別の態様にかかる貿易決済プログラムは、1つ以上のコンピュータを用いた貿易決済プログラムであって、前記コンピュータのそれぞれに、貿易によって売買する物品の所有権移転に伴う契約当事者の一方から他方への名義変更と、該売買に係る対価についての所定の電子的貨幣による決済と、の両債務を含む双務契約に関して、前記決済をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより行う決済処理ステップと、前記決済が成功した場合に前記名義変更をブロックチェーンにおけるスマートコントラクトにより処理する処理ステップと、を実施し、前記名義変更の処理は、少なくとも前記物品に関する船荷証券を含む所定の船積書類のブロックチェーンデータの所有者の名義を変更する処理であり、前記処理ステップでは、前記名義変更の処理の全てが正常に成功しているか否かを判断し、一部であっても処理が完遂しない場合には、前記決済および前記名義変更の処理の一切を破棄する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、売買当事者が隔地に存在する貿易取引では、債務の同時履行がかなわず、売買当事者は相手の債務不履行による危険を負っていることから、貿易取引における債務の同時履行を保証する技術を提供することができる。
【0022】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る貿易決済の仕組みの例を示す構成図である。
【
図2】実施形態に係る貿易決済システムの例を示す構成図である。
【
図6】保険証券要求のデータ構造例を示す図である。
【
図8】分散台帳ノードのハードウェア構成例を示す図である。
【
図9】貿易決済システムの詳細な構成例を示す図である。
【
図10】送り状作成承認処理のフローの例を示す図である。
【
図11】船荷証券作成承認処理のフローの例を示す図である。
【
図12】保険証券作成承認処理のフローの例を示す図である。
【
図13】CIFの決済処理のフローの例を示す図である。
【
図14】CFRの決済処理のフローの例を示す図である。
【
図15】FOBの決済処理のフローの例を示す図である。
【
図16】名義変更処理のフローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一態様に係る実施形態を適用した貿易決済システム1について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0025】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0026】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0027】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0028】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0029】
まずは、貿易取引における従来の信用状取引の仕組みの概要を以下に説明する。輸入者である荷受人3が輸出者である荷送人2と売買契約を締結し、荷受人3は、銀行を介して信用状を作成して荷送人2へ受け渡す。荷送人2は、契約条件に従って物品である商品を船積みする。船会社である配送業者5は貨物と引換えに、荷送人2に船荷証券(B/L:Bill of Lading)を発行する。荷送人2は、信用状と船積書類(船荷証券、送り状(インボイス)、貨物海上保険証券等)を添付した上で、取引銀行に荷為替手形(自己指図為替手形)の買取りを依頼する。荷送人2は、ここで商品代金を回収する。荷為替手形の買取依頼に応じた取引銀行は、信用状を発行した荷受人の取引銀行に対して、荷為替手形と船積書類を送付する。荷受人3の取引銀行は、荷為替手形と船積書類等を受け取り、荷送人2の取引銀行に代金を支払う。そして、荷受人3の取引銀行は、荷受人3に対して、荷為替手形の引受けを求める。荷受人3は、荷為替手形の引受けとともに、船荷証券を受け取る。荷受人3は、配送業者5より、船荷証券と引換えに商品を受け取る。
【0030】
図1は、実施形態に係る貿易決済の仕組みの例を示す構成図である。本実施形態に係る貿易決済システム1を用いることで、貿易決済プラットフォーム4を介して、荷送人2、荷受人3、配送業者5、保険引受人6の間での双務契約の債務同時履行が保証される仕組みである。主に、船積書類データ上の所有権の帰属先を示す所有者を、契約当事者の荷送人2から荷受人3に名義変更し、商品代金は荷受人3から荷送人2に口座間で移動する。その他、配送業者5への運賃、保険引受人6への貨物海上保険料についても、同様に貿易決済プラットフォーム4を介して支払い手続がなされる。
【0031】
従来の信用状取引は、必ずしもこれらの物品に関連する資金の移動と、船積書類の帰属先の移動と、が同時に履行されるものではなく、銀行の信用を後ろ盾として債務不履行のリスクを補填する形でなされてきたといえる。
【0032】
本実施形態に係る貿易決済の仕組みによれば、貿易取引において債務の同時履行を保証することができる。この仕組みを実現する具体的な手段について、
図2以降を用いて具体例により説明する。
【0033】
図2は、実施形態に係る貿易決済システムの例を示す構成図である。貿易決済プラットフォーム4は、分散台帳ネットワーク(いわゆるブロックチェーン)により実現される。そのため、貿易決済プラットフォーム4は、分散台帳ノード100と呼ばれる1つ以上のコンピュータにより結合された分散処理環境である。そして、貿易決済プラットフォーム4は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、携帯電話網等、あるいはこれらが複合した通信網であるネットワーク50を介して、操作端末200と通信可能に接続される。
【0034】
なお、ネットワーク50は、携帯電話通信網等の無線通信網上のVPN(Virtual Private Network)等であってもよい。
【0035】
操作端末200は、荷送人2、荷受人3、配送業者5、保険引受人6、の各利用者が用いる端末である。操作端末200は、各利用者のスマートフォンやパーソナルコンピュータ、タブレット装置等の、ブラウザソフトウェアやアプリケーションソフトウェアを経由して貿易決済プラットフォーム4に接続可能なものであればよい。また、分散台帳ノード100についても、スマートフォンやパーソナルコンピュータ、タブレット装置等の、ブラウザソフトウェアやアプリケーションソフトウェアを経由して貿易決済プラットフォーム4を構成可能なものであればよい。
【0036】
ブロックチェーンは、取引のデータ等、ひとまとまりの管理データを「ブロック」と呼ばれるデータとして取り扱い、ブロックを鎖(チェーン)のように以前のデータと連結していく(ブロックを参照するためのハッシュ値等を持たせて、ブロックの前後を辿ることができるように関連付ける)ことにより分散環境においてデータを保管する技術である。ブロックチェーンを利用することで、ブロックチェーン上の過去のデータの実行履歴をすべて記録・公開することが可能となり、参加するノードが増えることで処理能力の限界が高まる柔軟なシステムを構築できるメリットがある。
【0037】
そして、貿易決済プラットフォーム4では、ブロックチェーンを基礎として、決済や名義変更の処理を、スマートコントラクトにより実装する。ブロックチェーン上でのプログラムとしてスマートコントラクトを実行すると、改ざんされないことが保証され、迅速かつ確実に処理を行うことができる。
【0038】
すなわち、荷送人2、荷受人3、配送業者5、保険引受人6、の各利用者は、それぞれの操作端末200を介して貿易決済プラットフォーム4上で船積書類の作成や名義変更(所有権移転に伴う帰属先の変更)、あるいは資金移動の手続を行うことで、貿易取引において双務契約に関する債務の同時履行が可能となる。
【0039】
また、その際に、資金移動に関しては、電子ウォレットの仮想通貨口座を用いることを可能とすることで、簡便に処理を行うことが可能となる。この電子ウォレットによる資金移動を実現するために、貿易決済システム1では、貿易決済プラットフォーム4から通貨決済プラットフォーム450へ連携する。なお、通貨決済プラットフォーム450は、仮想通貨に限られず、電子的貨幣(貨幣とほぼ同様の交換価値を有するものを電子化したもの)の決済を処理するものであってよい。電子的貨幣には、例えば、ドルやユーロ等、各国の政府等が信用を保証する現実の現物通貨を電子化した電子通貨と、私企業等が提供する電子マネー等と、有価証券、不動産等を電子化したものと、その他これらに類する貨幣的な交換価値を有するものを含む。また、仮想通貨は電子的貨幣ではあるが、その特性を考慮して、本実施形態においては、仮想通貨は電子通貨の一部と考える。ただし、これに限られるものではなく、仮想通貨は電子的に取り扱える貨幣的交換価値のあるものであるともいえるし、投機的な面を考慮すると有価証券、不動産等を電子化したものとの類似性もあり、決済の利便性の点では電子マネー的なものとも考えることもできる。
【0040】
通貨決済プラットフォーム450は、例えば、分散台帳ネットワーク(いわゆるブロックチェーン)により実現される。そのため、通貨決済プラットフォーム450は、電子ウォレットノード400と呼ばれる1つ以上のコンピュータにより結合された分散処理環境である。そして、通貨決済プラットフォーム450は、ネットワーク50を介して、貿易決済プラットフォーム4と通信可能に接続される。
【0041】
図3は、分散台帳ノードの構成例を示す図である。分散台帳ノード100は、記憶部110と、制御部130と、通信部160と、を備える。記憶部110には、スマートコントラクト記憶部111と、ノード役割情報記憶部116と、が含まれる。スマートコントラクト記憶部111には、送り状112と、船荷証券113と、保険証券要求114と、保険証券115と、がブロックチェーンデータとして含まれる。
【0042】
図4は、送り状のデータ構造例を示す図である。例えば、送り状112には、送り状コード112Aと、送り状ステータス112Bと、所有者名112Cと、荷送人名112Dと、荷受人名112Eと、輸出港112Fと、輸入港112Gと、インコタームズ112Hと、支払通貨名112Jと、プラットフォーム通貨名112Kと、商品名112Lと、商品分類112Mと、商品単価112Nと、商品数112Pと、送り状作成日時112Qと、送り状作成者の電子署名112Rと、送り状更新日時112Sと、送り状更新者の電子署名112Tと、が含まれる。
【0043】
送り状(インボイス)のうち、送り状ステータス112Bは、ハッシュ化された「承認済み」「未承認」等を意味する文字列であり、送り状のデータに対し変更を加える度に別の文字列へ書き換わり、以前のステータスで示される状態からの更新を防止することで二重取引を防止するための制御情報である。また、所有者名112Cは、当該送り状の所有者の名義を特定する情報であり、債務同時履行時に荷送人2から荷受人3へと書き換えられる項目である。また、インコタームズ112Hは、貿易条件を特定する情報である。その他の項目についても、一般的に送り状を構成するデータ項目である。
【0044】
図5は、船荷証券のデータ構造例を示す図である。例えば、船荷証券113には、船荷証券コード113Aと、船荷証券ステータス113Bと、所有者名113Cと、対象送り状コード113Dと、荷送人名113Eと、荷受人名113Fと、輸送業者名113Gと、輸出元113Hと、輸出先113Jと、支払通貨名113Kと、商品名113Lと、Freight価格113Mと、船荷証券作成日時113Nと、船荷証券作成者の電子署名113Pと、船荷証券更新日時113Qと、船荷証券更新者の電子署名113Rと、が含まれる。
【0045】
船荷証券(B/L)のうち、船荷証券ステータス113Bは、ハッシュ化された「承認済み」「未承認」等を意味する文字列であり、船荷証券のデータに対し変更を加える度に別の文字列へ書き換わり、以前のステータスで示される状態からの更新を防止することで二重取引を防止するための制御情報である。所有者名113Cは、当該船荷証券の所有者の名義を特定する情報であり、債務同時履行時に荷送人2から荷受人3へと書き換えられる項目である。一般に、船荷証券(B/L)は、貿易取引上の物権的効力があるとされており、この所有者名113Cに記載された所有者が、荷貨の所有者であるといえる。また、輸送業者名113Gは、配送業者5を特定する情報である。Freight価格113Mは、配送業者5が荷貨を配送することの対価となる運賃である。その他の項目についても、一般的に船荷証券を構成するデータ項目である。
【0046】
図6は、保険証券要求のデータ構造例を示す図である。保険証券要求とは、保険の申し込みに用いられるデータである。例えば、保険証券要求114には、保険証券要求コード114Aと、保険証券要求ステータス114Bと、保険証券要求者名114Cと、被保険者名114Dと、保険引受人名114Eと、アドバイザー名114Fと、対象送り状コード114Gと、対象船荷証券コード114Hと、保険証券要求作成日時114Jと、保険証券要求作成者の電子署名114Kと、保険証券要求更新日時114Lと、保険証券要求更新者の電子署名114Mと、が含まれる。
【0047】
保険証券要求のうち、保険証券要求ステータス114Bは、ハッシュ化された文字列であり、保険証券要求のデータに対し変更を加える度に別の文字列へ書き換わり、以前のステータスで示される状態からの更新を防止することで二重取引を防止するための制御情報である。保険証券要求者名114Cは、保険証券の申し込み者の名義を特定する情報である。被保険者名114Dは、一般に、保険金の受取人を特定する情報である。
【0048】
図7は、保険証券のデータ構造例を示す図である。保険証券は、申し込まれた保険が引き受けられ、成立すると発行される証券である。例えば、保険証券115には、保険証券コード115Aと、保険証券ステータス115Bと、所有者名115Cと、対象保険証券要求コード115Dと、補償額115Eと、保険料115Fと、保険証券作成日時115Gと、保険証券作成者の電子署名115Hと、保険証券更新日時115Jと、保険証券更新者の電子署名115Kと、が含まれる。
【0049】
保険証券のうち、保険証券ステータス115Bは、ハッシュ化された「承認済み」「未承認」等を意味する文字列であり、保険証券のデータに対し変更を加える度に別の文字列へ書き換わり、以前のステータスで示される状態からの更新を防止することで二重取引を防止するための制御情報である。所有者名115Cは、保険金の受取人を特定する情報であり、債務同時履行時に荷送人2から荷受人3へと書き換えられる項目である。
【0050】
図1の説明に戻る。ノード役割情報記憶部116には、分散台帳ノード100が担う役割を区別する情報が格納される。分散台帳ノード100は、流動的あるいは固定的に、貿易決済プラットフォーム4の一部の役割を担うものである。そのため、分散台帳ノード100は、一時的に、荷送人2のノードか、荷受人3のノードか、配送業者5のノードか、保険引受人6のノードか、いずれかを担う可能性がある。
【0051】
制御部130には、送り状処理部131と、船荷証券処理部132と、保険証券処理部133と、決済処理部134と、出力情報生成部135と、が含まれる。送り状処理部131と、船荷証券処理部132と、保険証券処理部133とは、それぞれ送り状、船荷証券、保険証券のブロックチェーン上に設けられたスマートコントラクトコードを、プロセッサがロードすることにより実現される。
【0052】
送り状処理部131は、送り状のブロックチェーンに関するスマートコントラクトである。具体的には、送り状処理部131は、送り状の作成、承認、名義変更等の変更、削除を行う。
【0053】
船荷証券処理部132は、船荷証券のブロックチェーンに関するスマートコントラクトである。具体的には、船荷証券処理部132は、船荷証券の作成、承認、名義変更等の変更、削除を行う。
【0054】
保険証券処理部133は、保険証券のブロックチェーンに関するスマートコントラクトである。具体的には、保険証券処理部133は、保険証券の作成、承認、名義変更等の変更、削除を行う。
【0055】
決済処理部134は、スマートコントラクトコードに対して、決済処理を行うAPI(Application Programming Interface)を提供する。また、このAPIのコールがされると、決済処理部134は、通貨決済プラットフォーム450に対して、コールされた決済処理に相当する処理を委譲する。例えば、決済処理部134は、指定された電子ウォレットノード間での指定された金額の資金移動を、通貨決済プラットフォーム450に対して指示する。この資金は、通貨決済プラットフォーム450が取り扱える通貨であればよく、例えば仮想通貨のいずれか、あるいは現実の通貨であってもよい。
【0056】
出力情報生成部135は、送り状処理部131と、船荷証券処理部132と、保険証券処理部133と、のそれぞれの処理の指示および結果について、画面上に表示する情報を生成する。具体的には、出力情報生成部135は、送り状の生成を指示するボタンや、送り状のデータ項目の入力を受け付ける領域、あるいは生成された送り状を表示する領域の表示情報を生成する。送り状以外にも、船荷証券、保険証券のそれぞれについても同様に出力情報生成部135は画面に表示する情報を生成する。
【0057】
通信部160は、ネットワーク50を介して他の装置との間で通信を行う。その通信には、TCP/IPプロトコルによるパケット通信が採用されるが、これに限られるものではない。
【0058】
図8は、分散台帳ノードのハードウェア構成例を示す図である。分散台帳ノード100は、いわゆるサーバー装置、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、スマートフォンあるいはタブレット端末の筐体により実現されるハードウェア構成を備える。分散台帳ノード100は、演算装置101と、主記憶装置102と、補助記憶装置103と、入力装置104と、表示装置105と、通信装置106と、各装置をつなぐバス107と、を備える。
【0059】
演算装置101は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置である。
【0060】
主記憶装置102は、例えばRAM(Random Access Memory)などのメモリ装置である。
【0061】
補助記憶装置103は、デジタル情報を記憶可能な、いわゆるハードディスク(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)あるいはフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。
【0062】
入力装置104は、キーボードやマウス、タッチパネル、マイクのいずれかまたは複数の入力を受け付ける装置である。表示装置105は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の各種出力装置のいずれかまたは複数の表示を行う装置である。
【0063】
通信装置106は、ネットワークを介して他の装置と通信するネットワークインターフェースカード(NIC)や、HDMIケーブルを介して他の装置と通信するボード等、あるいは、無線ネットワークを介して他の装置と無線により通信するアンテナ装置や、一対一の無線通信により他の装置と通信する通信モジュール等である。
【0064】
上記した分散台帳ノード100の送り状処理部131と、船荷証券処理部132と、保険証券処理部133と、決済処理部134と、出力情報生成部135とは、演算装置101に処理を行わせるプログラム(スマートコントラクト)によって実現される。このプログラムは、ブロックチェーンの仕組みによりネットワーク経由で他の装置から配信され、主記憶装置102、補助記憶装置103内に記憶され、実行にあたって主記憶装置102上にロードされ、演算装置101により実行される。
【0065】
また、分散台帳ノード100の記憶部110は、主記憶装置102及び補助記憶装置103により実現される。通信部160は、通信装置106により実現される。以上が、分散台帳ノード100のハードウェア構成例である。
【0066】
分散台帳ノード100の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0067】
また、各制御部(送り状処理部131と、船荷証券処理部132と、保険証券処理部133と、決済処理部134と、出力情報生成部135)は、それぞれの機能を実現する専用のハードウェア(ASIC、GPUなど)により構築されてもよい。また、各制御部の処理が一つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。また、分散台帳ノード100は、各制御部を必ずしも恒常的に全て備える必要は無く、全ての制御部または一部の制御部のみを一時的に備えるものであってもよく、ブロックチェーンおよびスマートコントラクトの一部を構成するものであればよい。
【0068】
なお、操作端末200と、電子ウォレットノード400についても、基本的に分散台帳ノードと同様のハードウェア構成を備える。
【0069】
図9は、貿易決済システムの詳細な構成例を示す図である。貿易決済プラットフォーム4と、通貨決済プラットフォーム450とは、ネットワーク及びAPIサーバをインターフェースとして通信可能に接続される。すなわち、貿易決済プラットフォーム4から通貨決済プラットフォーム450へは、APIのコールを介して接続される。APIサーバでは、APIを提供し、呼び出されたインターフェースの種類およびパラメータに応じて、必要な電子ウォレットノード400間の資金移動を制御する。
【0070】
電子ウォレットノード400には、荷送人の電子ウォレットを処理する荷送人ノード400Bと、荷受人の電子ウォレットを処理する荷受人ノード400Aと、配送業者の電子ウォレットを処理する配送業者ノード400Cと、保険引受人の電子ウォレットを処理する保険引受人ノード400Eと、ネットワークオペレーターの電子ウォレットを処理するネットワークオペレーターノード400Dと、が含まれる。また、各電子ウォレットノードは、1つ以上のコンピュータにより構成されるが、構成するコンピュータは動的にウォレットの割り当てが変更されるものであってもよい。
【0071】
分散台帳ノード100には、荷送人のブロックチェーンとスマートコントラクトを処理する荷送人ノード100Bと、荷受人のブロックチェーンとスマートコントラクトを処理する荷受人ノード100Aと、配送業者のブロックチェーンとスマートコントラクトを処理する配送業者ノード100Cと、保険引受人のブロックチェーンとスマートコントラクトを処理する保険引受人ノード100Eと、アドバイザーのブロックチェーンとスマートコントラクトを処理するアドバイザーノード100Dと、が含まれる。また、各分散台帳ノードは、1つ以上のコンピュータにより構成されるが、構成するコンピュータは動的に役割が変更されるものであってもよい。その都度、分散台帳ノード100のノード役割情報記憶部116に、割り当てられた役割が書き込まれ、当該分散台帳ノードはその役割のノードとして振舞う。
【0072】
操作端末200には、荷送人の入出力を処理する荷送人操作端末200Bと、荷受人の入出力を処理する荷受人操作端末200Aと、配送業者の入出力を処理する配送業者操作端末200Cと、保険引受人の入出力を処理する保険引受人操作端末200Eと、アドバイザーの入出力を処理するアドバイザー操作端末200Dと、が含まれる。
【0073】
次に、本実施形態における貿易決済システム1の動作を説明する。
【0074】
図10は、送り状作成承認処理のフローの例を示す図である。送り状作成承認処理は、貿易取引を開始すると、荷送人が開始させる。
【0075】
まず、荷送人操作端末200Bから、送り状作成要求および送り状の項目データを荷送人ノード100Bに送信する(ステップS001)。具体的には、荷送人操作端末200Bは、送り状の各項目のデータの入力を荷送人2から受け付けて、荷送人ノード100Bへ送信する。
【0076】
荷送人ノード100Bでは、送り状スマートコントラクトを作成する(ステップS002)。具体的には、荷送人ノード100Bにおいて、送り状処理部131は、送り状のブロックチェーンを生成する。
【0077】
そして、荷送人ノード100Bの送り状処理部131は、荷受人ノード100Aに送り状ステータスを教えて送り状スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS003)。
【0078】
そして、荷送人ノード100Bから、荷送人操作端末200Bに、送り状データと共に、送り状スマートコントラクト作成結果を通知する(ステップS004)。
【0079】
そして、荷受人ノード100Aは、荷受人操作端末200Aに、送り状データと共に、送り状スマートコントラクト共有を通知する(ステップS005)。
【0080】
以上が、送り状作成のフェーズである。送り状作成により、送り状のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが生成され、荷送人操作端末200Bと荷受人操作端末200Aと、が送り状データを得る。
【0081】
その後、荷受人は、荷受人操作端末200Aを操作して、送り状コードと送り状ステータスとともに送り状の承認要求を荷受人ノード100Aに送信する(ステップS006)。
【0082】
そして、荷受人ノード100Aの送り状処理部131は、送り状スマートコントラクトの承認を行う(ステップS007)。この承認処理は、一般的なブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムにより行われる。
【0083】
そして、荷受人ノード100Aは、荷送人操作端末200Bと、荷受人操作端末200Aと、に送り状データを送信して送り状スマートコントラクトの承認結果を通知する(ステップS008)。
【0084】
以上が、送り状承認のフェーズである。送り状承認により、送り状のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが承認され、荷送人操作端末200Bと荷受人操作端末200Aと、に承認された送り状データが送られる。
【0085】
図11は、船荷証券作成承認処理のフローの例を示す図である。
図11の船荷証券作成承認処理は、貿易の取引条件を示すインコタームズがCIF(Cost Insurance and Freight)またはCFR(Cost and Freight)の場合を示しており、送り状の承認を得た荷送人が開始させる。インコタームズがFOB(Free on Board)の場合には、荷送人操作端末200Bは荷受人操作端末200Aと、荷送人ノード100Bは荷受人ノード100Aと、それぞれ読み替えればよい。
【0086】
まず、荷送人操作端末200Bから、送り状共有要求として、送り状コード、配送業者コードを荷送人ノード100Bに送信する(ステップS101)。具体的には、荷送人操作端末200Bは、送り状コードと、選定した配送業者の配送業者コードとの入力を荷送人2から受け付けて、荷送人ノード100Bへ送信する。
【0087】
荷送人ノード100Bでは、送り状スマートコントラクトを配送業者と共有する(ステップS102)。具体的には、荷送人ノード100Bにおいて、送り状処理部131は、送り状コードを配送業者ノード100Cへ送信する。
【0088】
そして、配送業者ノード100Cは、送り状データを配送業者操作端末200Cへ送信することで送り状スマートコントラクト共有通知を行う(ステップS103)。
【0089】
このステップS101からステップS103までの処理により、配送業者操作端末200Cが送り状データを取得できる。
【0090】
その後、配送業者5は、配送業者操作端末200Cから、船荷証券作成要求および船荷証券の項目データを配送業者ノード100Cに送信する(ステップS104)。具体的には、配送業者操作端末200Cは、船荷証券の各項目のデータの入力を配送業者5から受け付けて、配送業者ノード100Cへ送信する。
【0091】
配送業者ノード100Cでは、船荷証券スマートコントラクトを作成する(ステップS105)。具体的には、配送業者ノード100Cにおいて、船荷証券処理部132は、船荷証券のブロックチェーンを生成する。
【0092】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、荷送人ノード100Bに船荷証券ステータスを教えて船荷証券スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS106)。
【0093】
そして、配送業者ノード100Cから、配送業者操作端末200Cに、船荷証券データと共に、船荷証券スマートコントラクト作成結果を通知する(ステップS107)。
【0094】
そして、荷送人ノード100Bは、荷送人操作端末200Bに、船荷証券データと共に、船荷証券スマートコントラクト共有を通知する(ステップS108)。
【0095】
以上が、船荷証券作成のフェーズである。船荷証券作成により、船荷証券のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが生成され、荷送人操作端末200Bと配送業者操作端末200Cと、が船荷証券データを得る。
【0096】
その後、配送業者5は、配送業者操作端末200Cを操作して、船荷証券コードと船荷証券ステータスとともに船荷証券の承認要求を配送業者ノード100Cに送信する(ステップS109)。
【0097】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、船荷証券スマートコントラクトの承認を行う(ステップS110)。この承認処理は、一般的なブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムにより行われる。
【0098】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、荷受人ノード100Aに船荷証券ステータスを教えて船荷証券スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS111)。
【0099】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、荷送人操作端末200Bと、配送業者操作端末200Cと、に船荷証券データを送信して船荷証券スマートコントラクトの承認結果を通知する(ステップS112)。
【0100】
以上が、船荷証券承認のフェーズである。船荷証券承認により、船荷証券のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが承認され、荷送人操作端末200Bと配送業者操作端末200Cと、に承認された船荷証券データが送られる。
【0101】
図12は、保険証券作成承認処理のフローの例を示す図である。
図12の保険証券作成承認処理は、貿易の取引条件を示すインコタームズがCIFの場合を示しており、送り状の承認および船荷証券の承認を得た荷送人が開始させる。インコタームズがCFRおよびFOBの場合には、荷送人操作端末200Bは荷受人操作端末200Aと、荷送人ノード100Bは荷受人ノード100Aと、それぞれ読み替えればよい。
【0102】
まず、荷送人操作端末200Bから、保険証券作成要求として、送り状コード、船荷証券コード、アドバイザーコード、保険引受人コードを荷送人ノード100Bに送信する(ステップS201)。具体的には、荷送人操作端末200Bは、送り状コードと、船荷証券コードと、選定したアドバイザーのアドバイザーコードと、選定した保険引受人の保険引受人コードとの入力を荷送人2から受け付けて、荷送人ノード100Bへ送信する。なお、アドバイザーは、保険申し込みを仲介する役割を担う。
【0103】
荷送人ノード100Bでは、保険証券作成要求スマートコントラクトを作成する(ステップS202)。具体的には、荷送人ノード100Bにおいて、保険証券処理部133は、保険証券作成要求のブロックチェーンを生成する。
【0104】
そして、荷送人ノード100Bの保険証券処理部133は、アドバイザーコードで特定したアドバイザーノード100Dに保険証券要求ステータスを教えて保険証券要求スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS203)。
【0105】
アドバイザーノード100Dの保険証券処理部133は、保険引受人コードで特定した保険引受人6の保険引受人ノード100Eに保険証券要求ステータスを教えて保険証券要求スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS204)。
【0106】
保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、保険証券スマートコントラクトを作成する(ステップS205)。具体的には、保険引受人ノード100Eにおいて、保険証券処理部133は、保険証券のブロックチェーンを生成する。
【0107】
そして、保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、アドバイザーノード100Dに保険証券ステータスを教えて保険証券スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS206)。
【0108】
そして、アドバイザーノード100Dの保険証券処理部133は、荷送人ノード100Bに保険証券ステータスを教えて保険証券スマートコントラクトを共有可能にする(ステップS207)。
【0109】
以上が、保険証券作成のフェーズである。保険証券作成により、保険証券のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが生成され、荷送人ノード100Bとアドバイザーノード100Dと、が保険証券データを取得できる。
【0110】
その後、保険引受人6は、保険引受人操作端末200Eを操作して、保険証券コードと保険証券ステータスとともに保険証券の承認要求を保険引受人ノード100Eに送信する(ステップS208)。
【0111】
そして、保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、アドバイザーコードで特定したアドバイザーノード100Dに保険証券ステータスを教えて保険証券承認要求を共有可能にする(ステップS209)。
【0112】
そして、アドバイザーノード100Dの保険証券処理部133は、保険証券スマートコントラクトの承認を行う(ステップS210)。この承認処理は、一般的なブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムにより行われる。
【0113】
そして、アドバイザーノード100Dの保険証券処理部133は、荷送人ノード100Bと、保険引受人ノード100Eと、に保険証券データを送信して保険証券スマートコントラクトの承認結果を通知する(ステップS211)。
【0114】
そして、荷送人ノード100Bの保険証券処理部133は、荷送人操作端末200Bに保険証券データを送信して保険証券スマートコントラクトの承認結果を通知する(ステップS212)。
【0115】
以上が、保険証券承認のフェーズである。保険証券承認により、保険証券のブロックチェーンすなわちスマートコントラクトが承認され、荷送人操作端末200Bと、アドバイザーノード100Dと、保険引受人ノード100Eと、に承認された保険証券データが送られる。
【0116】
上記した送り状作成承認処理、船荷証券作成承認処理、保険証券作成承認処理により、送り状と、船荷証券と、保険証券と、をブロックチェーン上に格納することができたといえる。このブロックチェーンおよびスマートコントラクトを用いることで、債務の同時履行を保証する決済処理および名義変更処理を行うことができる。以降には、貿易条件ごとの仮想通貨による決済処理と、名義変更処理と、についてフローを説明する。
【0117】
図13は、CIFの決済処理のフローの例を示す図である。決済処理は、少なくとも送り状、船荷証券が作成・承認された状態で開始される。保険証券の作成・承認の要否は取引ごとにケースバイケースであるため、必須ではないが、本フローの例では保険加入を行う取引例を示す。貿易条件のインコタームズ「CIF」で示される条件では、荷受人が商品代金と運賃および保険料を含めて荷送人に支払い、運賃と貨物海上保険料は荷送人がそれぞれ配送業者5および保険引受人6に支払う。
【0118】
まず、荷送人ノード100Bは、荷受人ノード100Aに対して、支払処理開始要求を行う(ステップS301)。具体的には、荷送人ノード100Bの決済処理部134は、送金元アドレス(ウォレットを特定する情報)、送金先アドレス、送金目的、送金額を少なくとも含む送金情報を、荷受人ノード100Aに送信する。これらの送金情報は、送り状の荷送人、荷受人、商品名、商品単価、商品数、船荷証券のFreight価格、保険証券の保険料を参照して決済処理部134が特定するものとする。しかし、これに限られず、荷送人操作端末200Bにおいて荷送人2から入力された情報を用いるものであってもよいし、その他にも、所定の取引用のシステム上あるいは仮想通貨取引用のシステム上の登録情報を参照するものであってもよい。
【0119】
荷受人ノード100Aの決済処理部134は、荷受人ノード400Aの電子ウォレットに、送金情報を送信して代金支払要求を送信する(ステップS302)。
【0120】
そして、荷受人ノード400Aは、送金元アドレスに指定された荷受人の電子ウォレットから、送金先アドレスに指定された荷送人の電子ウォレットに送金額に指定された金額を送金して代金支払決済残高更新を行う(ステップS303)。そして、荷受人ノード400Aは、代金支払結果を荷受人ノード100Aに通知する(ステップS304)。具体的には、荷受人ノード400Aは、送金ステータスコードおよびトランザクションコードを含む送金結果を荷受人ノード100Aに送信する。
【0121】
そして、荷受人ノード100Aの決済処理部134は、代金支払ステータスを荷送人ノード100Bに送信して共有する(ステップS305)。
【0122】
ここまでが、決済処理における商品代金(運賃、保険料を含む)の支払い処理である。この処理により、
図1に示した荷受人3から荷送人2への売買等代金(通貨)の債務が遂行されることとなる。
【0123】
そして、荷送人ノード100Bは、荷送人ノード400Bに対して、運賃支払要求を行う(ステップS306)。具体的には、荷送人ノード100Bの決済処理部134は、送金元アドレス、送金先アドレス、送金目的、送金額を少なくとも含む送金情報を、荷送人ノード400Bに送信する。これらの送金情報は、船荷証券の荷送人、荷受人、Freight価格を参照して決済処理部134が特定するものとする。しかし、これに限られず、荷送人操作端末200Bにおいて荷送人2から入力された情報を用いるものであってもよいし、その他にも、所定の取引用のシステム上あるいは仮想通貨取引用のシステム上の登録情報を参照するものであってもよい。
【0124】
そして、荷送人ノード400Bは、送金元アドレスに指定された荷送人の電子ウォレットから、送金先アドレスに指定された配送業者の電子ウォレットに送金額に指定された金額を送金して運賃支払決済残高更新を行う(ステップS307)。そして、荷送人ノード400Bは、運賃支払結果を荷送人ノード100Bに通知する(ステップS308)。具体的には、荷送人ノード400Bは、送金ステータスコードおよびトランザクションコードを含む送金結果を荷送人ノード100Bに送信する。
【0125】
ここまでが、決済処理における運賃の支払い処理である。この処理により、荷送人2から配送業者5への運賃の債務が遂行されることとなる。
【0126】
そして、荷送人ノード100Bは、荷送人ノード400Bに対して、保険料支払要求を行う(ステップS309)。具体的には、荷送人ノード100Bの決済処理部134は、送金元アドレス、送金先アドレス、送金目的、送金額を少なくとも含む送金情報を、荷送人ノード400Bに送信する。これらの送金情報は、送り状の荷送人、荷受人、保険証券の保険料を参照して決済処理部134が特定するものとする。しかし、これに限られず、荷送人操作端末200Bにおいて荷送人2から入力された情報を用いるものであってもよいし、その他にも、所定の取引用のシステム上あるいは仮想通貨取引用のシステム上の登録情報を参照するものであってもよい。
【0127】
そして、荷送人ノード400Bは、送金元アドレスに指定された荷送人の電子ウォレットから、送金先アドレスに指定された保険引受人の電子ウォレットに送金額に指定された金額を送金して保険料支払決済残高更新を行う(ステップS310)。そして、荷送人ノード400Bは、保険料支払結果を荷送人ノード100Bに通知する(ステップS311)。具体的には、荷送人ノード400Bは、送金ステータスコードおよびトランザクションコードを含む送金結果を荷送人ノード100Bに送信する。
【0128】
ここまでが、決済処理における貨物海上保険料の支払い処理である。この処理により、
図1に示した荷送人2から保険引受人6への保険料の債務が遂行されることとなる。
【0129】
そして、
図13に示したこれらの決済の全てが成功(完遂)した場合に、
図16に示す名義変更処理が開始される。これらの決済は不可分処理であり、これらの決済の一部であっても処理が完遂しない場合には、この決済処理は一切を破棄される。すなわち、決済処理の開始前の状態に戻る。
【0130】
図14は、CFRの決済処理のフローの例を示す図である。決済処理は、少なくとも送り状、船荷証券が作成・承認された状態で開始される。保険証券の作成・承認の要否は取引ごとにケースバイケースであるため、必須ではないが、本フローの例では保険加入を行う取引例を示す。貿易条件のインコタームズ「CFR」で示される条件では、荷受人が商品代金と運賃を含めて荷送人に支払い、運賃は荷送人が、保険料は荷受人がそれぞれ配送業者5および保険引受人6に支払う。したがって、基本的にはCIFの場合の決済処理と同様の流れとなるが、保険料の支払いの流れに相違がある。そのため、以下には保険料の支払い処理(
図13のステップS309~ステップS311の処理)部分についてCFRの場合の説明を行う。
【0131】
荷受人ノード100Aは、荷受人ノード400Aに対して、保険料支払要求を行う(ステップS309´)。具体的には、荷受人ノード100Aの決済処理部134は、送金元アドレス、送金先アドレス、送金目的、送金額を少なくとも含む送金情報を、荷受人ノード400Aに送信する。これらの送金情報は、送り状の荷送人、荷受人、保険証券の保険料を参照して決済処理部134が特定するものとする。しかし、これに限られず、荷受人操作端末200Aにおいて荷受人3から入力された情報を用いるものであってもよいし、その他にも、所定の取引用のシステム上あるいは仮想通貨取引用のシステム上の登録情報を参照するものであってもよい。
【0132】
そして、荷受人ノード400Aは、送金元アドレスに指定された荷受人の電子ウォレットから、送金先アドレスに指定された保険引受人の電子ウォレットに送金額に指定された金額を送金して保険料支払決済残高更新を行う(ステップS310´)。そして、荷受人ノード400Aは、保険料支払結果を荷受人ノード100Aに通知する(ステップS311´)。具体的には、荷受人ノード400Aは、送金ステータスコードおよびトランザクションコードを含む送金結果を荷受人ノード100Aに送信する。
【0133】
ここまでが、決済処理における保険料の支払い処理である。この処理により、
図1に示した荷受人3から保険引受人6への保険料の債務が遂行されることとなる。
【0134】
そして、
図14に示したこれらの決済の全てが成功(完遂)した場合に、
図16に示す名義変更処理が開始される。これらの決済は不可分処理であり、これらの決済の一部であっても処理が完遂しない場合には、この決済処理は一切を破棄される。すなわち、決済処理の開始前の状態に戻る。
【0135】
図15は、FOBの決済処理のフローの例を示す図である。決済処理は、少なくとも送り状、船荷証券が作成・承認された状態で開始される。保険証券の作成・承認の要否は取引ごとにケースバイケースであるため、必須ではないが、本フローの例では保険加入を行う取引例を示す。貿易条件のインコタームズ「FOB」で示される条件では、荷受人が商品代金を荷送人に支払い、運賃および貨物海上保険料は荷受人がそれぞれ配送業者5および保険引受人6に支払う。したがって、基本的にはCFRの場合の決済処理と同様の流れとなるが、運賃の支払いの流れに相違がある。そのため、以下には運賃の支払い処理(
図14のステップS306~ステップS308の処理)部分についてFOBの場合の説明を行う。
【0136】
そして、荷受人ノード100Aは、荷受人ノード400Aに対して、運賃支払要求を行う(ステップS306´)。具体的には、荷受人ノード100Aの決済処理部134は、送金元アドレス、送金先アドレス、送金目的、送金額を少なくとも含む送金情報を、荷受人ノード400Aに送信する。これらの送金情報は、船荷証券の荷送人、荷受人、Freight価格を参照して決済処理部134が特定するものとする。しかし、これに限られず、荷受人操作端末200Aにおいて荷受人3から入力された情報を用いるものであってもよいし、その他にも、所定の取引用のシステム上あるいは仮想通貨取引用のシステム上の登録情報を参照するものであってもよい。
【0137】
そして、荷受人ノード400Aは、送金元アドレスに指定された荷受人の電子ウォレットから、送金先アドレスに指定された配送業者の電子ウォレットに送金額に指定された金額を送金して運賃支払決済残高更新を行う(ステップS307´)。そして、荷受人ノード400Aは、運賃支払結果を荷受人ノード100Aに通知する(ステップS308´)。具体的には、荷受人ノード400Aは、送金ステータスコードおよびトランザクションコードを含む送金結果を荷受人ノード100Aに送信する。
【0138】
ここまでが、決済処理における運賃の支払い処理である。この処理により、荷受人3から配送業者5への運賃の債務が遂行されることとなる。
【0139】
そして、これらの決済の全てが成功(完遂)した場合に、
図16に示す名義変更処理が開始される。
図15に示したこれらの決済は不可分処理であり、これらの決済の一部であっても処理が完遂しない場合には、この決済処理は一切を破棄される。すなわち、決済処理の開始前の状態に戻る。
【0140】
図16は、名義変更処理のフローの例を示す図である。名義変更処理は、
図13~
図15のいずれかに示した貿易条件ごとの決済処理が成功(完遂)された場合に、開始される。
【0141】
まず、荷送人ノード100Bの送り状処理部131は、送り状スマートコントラクトの所有権を荷受人3へと更新する(ステップS312)。具体的には、送り状処理部131は、送り状の所有者名112Cを、荷送人2から荷受人3へと書き換える処理を行う。
【0142】
そして、荷送人ノード100Bの送り状処理部131は、所有権更新結果を荷受人ノード100A、配送業者ノード100C、保険引受人ノード100Eと共有する(ステップS313)。具体的には、荷送人ノード100Bの送り状処理部131は、送り状コードおよび送り状ステータスを荷受人ノード100A、配送業者ノード100C、保険引受人ノード100Eのそれぞれに送信することで、更新結果を共有する。
【0143】
ここまでが、名義変更処理における送り状の名義変更である。この処理により、荷送人2から荷受人3への船積書類(送り状)についての名義変更の債務が遂行されることとなる。
【0144】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、船荷証券スマートコントラクトの所有権を荷受人3へと更新する(ステップS314)。具体的には、船荷証券処理部132は、船荷証券の所有者名113Cを、荷送人2から荷受人3へと書き換える処理を行う。
【0145】
そして、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、所有権更新結果を荷送人ノード100B、荷受人ノード100A、保険引受人ノード100Eと共有する(ステップS315)。具体的には、配送業者ノード100Cの船荷証券処理部132は、船荷証券コードおよび船荷証券ステータスを荷送人ノード100B、荷受人ノード100A、保険引受人ノード100Eのそれぞれに送信することで、更新結果を共有する。
【0146】
ここまでが、名義変更処理における船荷証券の名義変更である。この処理により、荷送人2から荷受人3への船積書類(船荷証券)についての名義変更の債務が遂行されることとなる。
【0147】
そして、保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、保険証券スマートコントラクトの所有権を荷受人3へと更新する(ステップS316)。具体的には、保険証券処理部133は、保険証券の所有者名115Cを、荷送人2から荷受人3へと書き換える処理を行う。
【0148】
そして、保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、所有権更新結果を荷送人ノード100B、荷受人ノード100A、配送業者ノード100Cと共有する(ステップS317)。具体的には、保険引受人ノード100Eの保険証券処理部133は、保険証券コードおよび保険証券ステータスを荷送人ノード100B、荷受人ノード100A、配送業者ノード100Cのそれぞれに送信することで、更新結果を共有する。
【0149】
ここまでが、名義変更処理における保険証券の名義変更である。この処理により、荷送人2から荷受人3への船積書類(保険証券)についての名義変更の債務が遂行されることとなる。
【0150】
以上が、名義変更処理の流れである。
図13~
図15に示した決済処理と、
図16に示した名義変更処理とは、不可分処理であり、これらの決済の処理および名義変更処理の全てが正常に成功(完遂)したことをもって効力を発揮し、一部であっても処理が完遂しない場合には、この決済処理および名義変更処理は一切を破棄される。すなわち、決済処理および名義変更処理の開始前の状態に戻る。
【0151】
図17は、荷受人画面の例を示す図である。荷受人画面600は、荷受人3が、荷受人ノード100Aにログインした状態で示されるステータス表示画面の例である。荷受人画面600には、契約の一覧601がリスト形式で表示され、リストの各契約には「Type of contract」602と、「Contract reference」603と、「Contract status」604と、「Document owner」605と、が表示される。
【0152】
図18は、荷送人画面の例を示す図である。荷送人画面700は、荷送人2が、荷送人ノード100Bにログインした状態で示されるステータス表示画面の例である。荷送人画面700には、保険契約のサマリー欄701と、荷送人自身の電子ウォレット欄730と、が含まれる。保険契約のサマリー欄701には、保険契約の項目とその値と、保険料支払いステータス702と、保険所有者703と、が表示される。電子ウォレット欄730には、ウォレットの残高731と、支払い請求額732と、支払い後の残高733と、が表示される。保険引受人6も基本的に同様の画面を見ることが可能である。
【0153】
なお、上記の送り状作成承認処理、船荷証券作成承認処理、保険証券作成承認処理、決済処理、名義変更処理の例は、これに限られず、例えば他の貿易条件(EXW、FCA(運送人渡し)、FAS(船側渡し)、CPT(輸送費込み)、CIP(輸送費保険料込み)、DAF(国境持ち込み渡し)、DES(本船持ち込み渡し)、DEQ(ふ頭持ち込み渡し)、DDU(関税抜き持ち込み渡し)、DDP(関税込み持ち込み渡し)等)に対応するようにしてもよい。
【0154】
以上の実施形態のように、貿易決済システム1によれば、貿易取引において債務の同時履行を保証することができる。
【0155】
本発明は、上記の実施形態に制限されない。上記の実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。例えば、上記の実施形態においては、分散台帳ノード100および電子ウォレットノード400は、別のコンピュータで構成されるとしているが、これに限られない。例えば、同一のコンピュータで構成されるものであってもよい。このようにした場合、演算処理の効率化を行うことができる。そのため、規模の大きなプラットフォームでもハードウェアリソースの柔軟な活用を容易に実現できる。
【0156】
また、上記した実施形態の技術的要素は、単独で適用されてもよいし、プログラム部品とハードウェア部品のような複数の部分に分けられて適用されるようにしてもよい。
【0157】
以上、本発明について、実施形態を中心に説明した。
【符号の説明】
【0158】
1・・・貿易決済システム、2・・・荷送人、3・・・荷受人、4・・・貿易決済プラットフォーム、5・・・配送業者、6・・・保険引受人、50・・・ネットワーク、100・・・分散台帳ノード、110・・・記憶部、111・・・スマートコントラクト記憶部、112・・・送り状、113・・・船荷証券、114・・・保険証券要求、115・・・保険証券、116・・・ノード役割情報記憶部、130・・・制御部、131・・・送り状処理部、132・・・船荷証券処理部、133・・・保険証券処理部、134・・・決済処理部、135・・・出力情報生成部、160・・・通信部、200・・・操作端末、400・・・電子ウォレットノード、450・・・通貨決済プラットフォーム。