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特許7083043固体電解質、並びにその調製方法及び応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】固体電解質、並びにその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20220602BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220602BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220602BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20220602BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01B1/06 A
H01M50/403 D
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/44
H01M50/446
H01M50/489
H01M50/497
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020565016
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2019078874
(87)【国際公開番号】W WO2019154438
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】201810748844.2
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515206126
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米倣生研究所
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU INSTITUTE OF NANO-TECH AND NANO-BIONICS(SINANO),CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】No 398, Ruoshui Road, SEID, SIP Suzhou, Jiangsu 215125 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡▲チェン▼吉
(72)【発明者】
【氏名】瀋炎▲ビン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ル▼威
(72)【発明者】
【氏名】陳立▲ウェ▼
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0084912(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101805454(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319599(US,A1)
【文献】国際公開第01/091220(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103456985(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01B 1/06
H01M 50/403 - 406
H01M 50/409 - 446
H01M 50/489 - 497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材と電解質塩を含む固体電解質であって、前記膜材は高分子材料で形成される有機相を含み、
前記有機相は高分子繊維が集まって形成する膜であり、三次元的に連通する界面を含み比界面積が1×10cm/cm以上であり、
前記電解質塩は前記有機相に溶解することを特徴とする固体電解質。
【請求項2】
前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10-4S/cm以上であり、及び/又は、前記膜材の厚さは5~90μmであり、及び/又は、前記固体電解質の室温での単位面積コンダクタンスは500~2500mS/cmであり、及び/又は、前記有機相の比界面積は1×10cm/cm~1×10cm/cmであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10-4S/cm~1.0×10-2S/cmであり、及び/又は、前記膜材の厚さは10~60μmであり、及び/又は、前記固体電解質の室温での単位面積コンダクタンスは1000~2500mS/cm であり、及び/又は、前記有機相の比界面積は3×10cm/cm~1×10cm/cmであることを特徴とする請求項2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10 -4 s/cm~2.0×10 -3 s/cmであり、及び/又は、前記膜材の厚さは10~30μmであり、及び/又は、前記固体電解質の室温での単位面積コンダクタンスは2000~2500mS/cm であることを特徴とする請求項3に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記膜材の厚さは20~30μmであることを特徴とする請求項4に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記電解質塩と前記有機相との質量比は1:2~1:10であることを特徴とする請求
項1に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記電解質塩と前記有機相との質量比は1:3~1:6であることを特徴とする請求項6に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記膜材は前記有機相により構成され、又は前記膜材は前記有機相の比界面積を増加するための無機粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記有機相は一次構造単位が集合する及び/又は重なるように形成する二次構造を有し、該二次構造は前記三次元的に連通する界面を提供し、あるいは、前記膜材は前記有機相の比界面積を増加するための無機粒子をさらに含み、前記無機粒子は前記一次構造単位間に分布することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記一次構造単位は高分子繊維、高分子粒子及び高分子シートから選ばれる1種又は複数種の組み合わせであり、前記無機粒子は前記一次構造単位の表面に付着する及び/又は前記一次構造単位間に介入していることを特徴とする請求項9に記載の固体電解質。
【請求項11】
前記無機粒子の粒径は2nm~10μmであり、及び/又は、前記無機粒子は無機非イオン伝導体であり、あるいは、前記無機粒子は無機イオン伝導体であり、あるいは、前記無機粒子は無機非イオン伝導体と無機イオン伝導体との組み合わせであり、及び/又は、前記固体電解質に無機粒子の含有量は95wt%以下であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の固体電解質。
【請求項12】
前記無機粒子の粒径は10nm~2μmであり、及び/又は、前記無機非イオン伝導体は酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物、塩化物及び炭化物から選ばれるいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり、及び/又は、前記固体電解質に無機粒子の含有量は80wt%以下であることを特徴とする請求項11に記載の固体電解質。
【請求項13】
前記無機粒子の粒径は20nm~2μmであり、及び/又は、前記固体電解質に無機粒子の含有量は20wt%~80wt%であることを特徴とする請求項12に記載の固体電解質。
【請求項14】
前記無機粒子の粒径は50nm~2μmであり、及び/又は、前記固体電解質に無機粒子の含有量は50wt%~80wt%であることを特徴とする請求項13に記載の固体電解質。
【請求項15】
前記無機粒子の粒径は50nm~500nmであり、及び/又は、前記固体電解質に無機粒子の含有量は70wt%~80wt%であることを特徴とする請求項14に記載の固体電解質。
【請求項16】
前記高分子材料の分子構造は前記電解質塩の金属イオンと錯化できる極性基を有し、及び/又は前記高分子材料は分子構造にエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミン基、フッ素、アミド基及びニトリル基から選ばれる1種又は多種の極性基を有する高分子材料であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項17】
前記高分子材料はポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールジアミンから選ばれるいずれか1種又は多種の組み合わせであることを特徴とする請求項16に記載の固体電解質。
【請求項18】
前記固体電解質は前記膜材と電解質塩からなることを特徴とする請求項1、8~10及び16~17のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項19】
前記電解質塩はリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩又はアルミニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項20】
前記電解質塩はリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム及び六フッ化リン酸リチウムの中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする請求項19に記載の固体電解質。
【請求項21】
(1)以下の方式a又は方式bにより前記膜材を獲得し、
a)静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して高分子繊維を集合させて三次元構造を形成し、その後、加圧処理して前記三次元構造をより緻密にさせることにより、前記三次元的に連通する界面を有する有機相を得て、前記膜材とし、
b)静電紡糸技術を採用して高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して高分子繊維を集合させて三次元構造を形成し、静電紡糸をすると同時に、静電噴霧技術を採用して無機粒子の分散液を前記選択された受け面に噴射し、前記有機相と無機粒子からなる複合材料を得て、その後、前記複合材料を加圧処理してより緻密にさせることにより、前記膜材とし、ここで、前記高分子溶液を噴射するための静電紡糸出液口と前記無機粒子の分散液を噴射するための静電噴霧出液口をサイドバイサイド型のように平行に設置し、前記静電紡糸出液口の噴射方向と前記静電噴霧出液口の噴射方向との間を0以上90°未満の成す角度にさせ、
(2)前記電解質塩の溶液を前記膜材中に滴下し又は噴射し、あるいは、前記膜材を前記電解質塩の溶液中に浸漬することを特徴とする請求項1~20のいずれか1項に記載の固体電解質の調製方法。
【請求項22】
前記受け面は受け装置の表面であり、前記受け装置はローラー受け装置、平面受け装置及び水溶液受け装置の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであり、及び/又は、前記受け装置はローラー受け装置であり、噴射をする時に、ローラーは回転状態を保持していることを特徴とする請求項21に記載の調製方法。
【請求項23】
方式b)において、噴射をする時に、前記静電紡糸出液口及び/又は静電噴霧出液口と前記受け面との間は前記受け装置の軸方向、長さ方向又は幅方向に沿って相対的に運動することを特徴とする請求項22に記載の調製方法。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか1項に記載の固体電解質を含むことを特徴とする電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に属し、具体的に固体電解質、その調製方法及び該固体電解質を含む電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年間において、消費者向け携帯式電子産業の急速な発展に伴って、リチウム電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性及びレート特性がよくので、商業化が大きな成功を収めている。しかしながら、過去数十年に連続発生したリチウム電池の安全事故が常に分野の恐れである。
リチウムイオン電池は、内部短絡や他の原因により電池内部温度が過大であり発火爆発の危険を引き起こすおそれがある、最も主な原因は高温で可燃性有機電解液をリチウムイオン伝導ネットワークとして使用していることである。従って、電池の内部温度は様々な原因(例えば、電池内部短絡)で有機溶剤の引火点を達すると、電池の発火引き起こし、さらに爆発し、電池エネルギー密度は高いほど、危害は大きくなる。この安全問題はリチウムイオン電池の誕生の初めからすでに存在している。ここ数十年間の研究で、全固体リチウムイオン電池の発展により、この安全面の懸念を根源から解決する可能があると考えられている。
【0003】
具体的に、図1のように、全固体リチウムイオン電池におけて、可燃しやすく分解しやすい有機溶剤がないので、電池の安全特性を大きく向上させることができると同時に、電池には、漏液、液涸れ、膨張など、電池電気化学特性を影響する問題がない。そして、全固体電池の質量はより小さく、体積エネルギー密度が高く、電池の設計組立てもより柔軟である。そのため、燃焼が困難な全固体リチウムイオン電池を発展することは、高安全性、高エネルギー密度、高電力密度、長サイクル寿命を有する次世代電池を発展する必然的な選択である。しかし、現在の全固体電池の普及応用はまだ多くの技術方面の制約を受け、特に固体電解質の開発には多くの技術挑戦がある。一般的に、電池が作動できる一つの重要な必要条件はイオンが電池内部の正負極間で往復伝送できるであるが、電子は外回路により利用可能な電流を形成できる。液系電池にとっては、正負電極間にイオン伝導率の良い液状電解液がイオン輸送媒体としてあり、且つ液状電解液と正負極との接触がいずれも十分であるため、正負極間のイオンの輸送は自然的に問題がない。現在すでに産業化した準固態電池にとって、ゲル状態の電解質の性質は液状電解液と類似しており、ただ電気伝導率がやや悪く、正負極電極材料粒子との接触も相対的に緊密であるため、正負極間のイオンの輸送も問題がない。しかし、全固体イオン電池にとって、正負極間のイオン輸送は固体電解質を依頼することを要するため、一般固体電解質のイオン伝導率は液状電解液よりも2桁低く、且つ固体電解質と正負極材料との間は緊密な接触であっても、通常は点対点接触の状態にもあるため、正負極材料間のイオン輸送は特に困難である。
【0004】
従って、全固体電池のコア成分は固体電解質であり、理論上的に良好な固体電解質は以下の特徴があることを要する。
(1)良好なイオン伝導率は、通常10-3S/cmに接近する。現在固体電解質のリチウムイオン伝導率は比較的に低く(一般液状電解液よりも2桁低い)、電池の実際応用、特に大電流充放電の需要を満たすことが難しい。
(2)低い界面インピーダンスが、固体電極と電解質との間の界面インピーダンス、及び電極と電解質内部粒子との間の界面インピーダンスを含む。現在固体電解質と正負極の固態活性粒子との界面インピーダンが大きく、及び電極と電解質内部粒子との間のインピーダンスが大きく、電池を正常に充放電させにくい。
(3)固体電解質はできるだけ薄くすることにより、単位面積コンダクタンスが高く、電
解質の総抵抗が小さいと同時に、正負極を有効に分離してリチウムデンドライトを抑制するために、良好な機械的性質を有し、また、良好な加工性能が得られ、及び充放電池正負極材料による大きな体積変化を包むことができるために、ある程度の柔軟性を有する。
以上の点に加えて、固体電解質は良好な熱安定性、電気化学安定性、及び電池正負極化学ポテンシャルと照合することなどをさらに要する。
【0005】
従来の固体電解質は無機固体電解質及び有機ポリマー固体電解質に分けることができ、通常無機固体電解質は室温でのイオン伝導率は、ポリマー固体電解質に対して、イオン伝導率に1~2桁の上昇がある。しかし、その欠点は、調製の条件が過酷で、且つコストが高すぎ、界面インピーダンスが大きく、かつ成膜厚さと材料の可撓性が矛盾する(厚さが小さいと、脆化割れやすい)、完全に無機材料からなる固体電解質は将来の全固体電池の大規模産業化生産に適用できない。従来の技術で作製する有機ポリマー固体電解質は室温イオン伝導率が低く、一般に10-7~10-5S/cmの範囲にあり、エネルギーを貯蔵するデバイスの要求をまだ満足できない。しかし、有機ポリマー固体電解質は、無機固体電解質よりも、通常良好な柔軟性及び易加工性を有し、液状電解液電池で使用するセパレータの形態と類似することに容易に加工する、大規模産業化によく適する。従って、高電気伝導率、高機械的強度及び高安定性を有する有機ポリマー固体電解質の開発は、全固体電池産業化を実現する重要な研究方向の一つである。
【0006】
1973年に、Wrightの課題グループがポリエチレンオキシド(PEO)とリチウム塩コンプレックスのイオン伝導性を初めて研究し、その後、研究者らが新型なポリマー電解質系を探索する方面で大量の研究を行い、同時にポリマー電解質の導電メカニズムなどについて広範な研究を行った。リチウム塩の改良、ポリマーの改良、及びフィラーの添加などの方式により、ポリマー電解質のイオン伝導率及びその他の性能を直接または間接的に高める。フィラーの添加については、ある研究で、添加後にイオン伝導率を著しく向上させと考えされ、ある研究で、イオン電導率への影響は小さいと考えられる。要するに、現在固体ポリマーのイオン伝導メカニズムについて統一的な認識がまだ形成されておらず、イオン伝導メカニズムはさらに深く研究する必要もある。今まで、大部分の改良のポリマー固体電解質のイオン伝導性能は10-5S/cmにしか達せず、少数の報告の方案は10-4S/cm(例えば、CN102780032Aでの実施例2、3に開示されたポリマー電解質)に達することができる。室温イオン伝導率が10-3S/cmに達することができるポリマー固体電解質の報告が稀に見つかる。また、イオン伝導率が10-4S/cm以上に達することができる既報のポリマー固体電解質は、特定の材料および/または高価な材料の使用に依存することを要するが一般的である。例えば、CN102780032Aでの実施例2、3に開示されたポリマー電解質のイオン伝導率は10-4S/cmに達することができるが、それは特定のアナターゼ型酸化チタンを必須添加する。CN107492680Aでの実施例1に開示された電解質膜のイオン伝導率は10-4S/cmに達することができたが、それは特定のポリマーを必須採用する。また、いくつかのポリマー電解質は、高いイオン伝導率を得るために、高価な高速イオン伝導体を必須添加する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来技術の不足を克服するために、改良のポリマー固体電解質を提供することを目的とする。
本発明は同時に固体電解質の調製方法を提供する。
上記目的を実現するため、本方面の第1の側面は固体電解質を提供し、膜材及び電解質塩を含み、そのうち、膜材は高分子材料で形成される有機相を含み、前記有機相は三次元的に連通する界面を含み、且つ比界面積は1×10cm/cm以上であり、前記の電解質塩は前記有機相に溶解する。
【0008】
好ましくは、前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10-4S/cm以上である。
【0009】
本発明によるいくつかの具体的な且つ好ましい実施形態において、前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10-4S/cm~1.0×10-2S/cmである。
【0010】
本発明によるいくつかの具体的な更なる実施形態において、前記固体電解質の室温イオン伝導率は1.0×10-4S/cm~1.0×10-3S/cmである。
【0011】
本発明によれば、前記固体電解質の室温イオン伝導率は有機相の比界面積の向上と共に高まる。従って、前記の有機相の比界面積は大きいほど良い。
【0012】
本発明の好ましい一側面によれば、前記の有機相の比界面積は1×10cm/cm~1×10cm/cmである。さらに好ましくは、前記の有機相の比界面積は3×10cm/cm~1×10cm/cmである。
【0013】
本発明の膜材によれば、それは任意の実際に必要な厚さに便利に作成されることができる。さらに、前記膜材の厚さ(すなわち固体電解質の厚さ)は5~90μmであってもよい。好ましくは、前述の膜材の厚さは5~89μmである。よりさらに好ましくは、前記の膜材の厚さは10~60μmである。本発明によるいくつかの特別に好ましい実施形態において、膜材の厚さは10~30μmである。本発明による他の好ましい実施形態において、膜材の厚さは10~30μmである。本発明の膜材は、その厚さが10~30μmである時に、良好な機械的性質と加工性を有するだけでなく、且つ単位面積コンダクタンスも高く、電解質の全抵抗が小さく、室温イオン伝導率が高い。
【0014】
本発明の一側面によれば、前記固体電解質の室温での単位面積コンダクタンスは500~2500mS/cm であり、好ましくは1000~2500mS/cm である、より好ましくは2000~2500mS/cm である。
【0015】
本発明の一側面によれば、前記の電解質塩と前記有機相との質量比は1:2~1:10であることが好ましく、1:3~1:6(具体的に例えば、1:5)であることが特に好ましい。他の条件が同じである際、電解質塩と前記有機相を前記範囲内に制御し、最適な室温イオン伝導率が得られる。
【0016】
本発明によれば、前記の有機相の重要な特徴の一つは三次元的に連通する界面を有することであり、この三次元的に連通する界面は導電イオンが固体電解質の両側の正負極間で横方向に導通することを実現でき、同時に導電イオンが固体電解質内部で縦方向に導通することを実現できる。前記の有機相の重要な特徴の二つ目は、この三次元的に連通する界面の面積が高くとなり、イオンの急速な導通を実現できる。
【0017】
本発明によれば、有機相の具体的な形態及び調製方法について制限がされない。本発明に係る有機相の好適な一実施態様として、有機相は高分子繊維が集合することによって形成される。前記の高分子繊維の直径は、例えば50nm~2μmであってもよく、好ましくは100nm~1μmであり、さらに好ましくは100nm~800nm、特に好ましくは100nm~500nm、最も好ましくは100~400nm。具体的には、例えば約100nm、150nm、200nm、300nm又は400nmなどであってもよい。
【0018】
本発明の具体的な且つ好ましい一側面によれば、前記有機相は、静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して連続の二次元もしくは三次元構造を形成して加圧処理して形成した緻密な薄膜である。該有機相は、良好な機械的性質と加工
性を有し、且つ高い比界面積を提供する。
【0019】
本発明の一側面によれば、前記の膜材は前記の有機相により構成され、すなわち、膜材は有機相のみを含む。
【0020】
本発明の更なる一側面によれば、前記の膜材は、有機相に加えて、前記の有機相の比界面積を増加するための無機粒子をさらに含む。
【0021】
本発明の好ましい一側面によれば、前記有機相は一次構造単位が集合する及び/又は重なるように形成する二次構造を有し、該二次構造は前記三次元的に連通する界面を提供する。さらに好ましくは、前記の膜材は有機相の比界面積を増加するための無機粒子をさらに含み、無機粒子は一次構造単位間に分布する。本発明によるある好ましい実施形態において、一次構造単位は高分子繊維、高分子粒子、高分子シートから選ばれる1種又は複数種の組み合わせであり、無機粒子は一次構造単位の表面に付着する及び/又は一次構造単位間に介入している
【0022】
本発明によれば、一般的に、前記の無機粒子の粒径は2nm~10μmであり、好ましくは10nm~2μmであり、さらに好ましくは20nm~2μmであり、より好ましくは50nm~2μmであり、よりさらに好ましくは50nm~500nmであり、特に好ましくは50nm~300nmである。
【0023】
本発明に係る前記の無機粒子は、より高い比界面積を提供することを目的とし、無機粒子がイオン伝導体かどうかについて特に制限はない、例えば、無機非イオン伝導体であってよく、無機イオン伝導体であってもよく、無機非イオン伝導体と無機イオン伝導体との組合せであってもよい。
【0024】
本発明の好ましい一側面によれば、無機粒子は無機非イオン伝導体であり、この態様で得られる固体電解質は、良好な室温伝導率を有し、且つコストが小さい。無機非イオン伝導体は具体的に、例えば、酸素化物、硫化物、窒化物、フッ化物、塩化物及び炭化物などの中の一種又は多種の組み合わせであってもよい。
【0025】
本発明によれば、前記の固体電解質に無機粒子は、含有量が高いほど、より高い比界面積を提供する。一定の範囲では、固体電解質の含有量が高いほど良い。好ましくは、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は5wt%以上であり、より好ましくは10wt%以上であり、さらに好ましくは20wt%以上である。無機粒子の含有量は、固体電解質の柔軟性及び電解質のイオン伝導率を影響しないかぎりにおいて、あまり高くすぎない。好ましくは、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は95wt%以下である。より好ましくは、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は80wt%以下である。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は20wt%~80wt%である。本発明のいくつかの更なる実施形態によれば、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は50wt%~80wt%である。
【0026】
本発明の一つの特に好ましい実施形態によれば、前記の固体電解質に無機粒子の含有量は70wt%~80wt%である。このとき、固体電解質は良好な室温イオン伝導率を有するだけでなく可撓性も良好さを保持している。
【0027】
本発明の具体的な且つ好ましい一側面によれば、固体電解質は以下の手順により調製する。
静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して繊維形式の一次構造とし、繊維形式の一次構造を集合させて三次元の二次構造を形成し、その後、加圧処理して二次構造をより緻密にさせ、前記有機相が得られ、前記膜材とする。
前記電解質塩の溶液を前記膜材中に滴下又は溶射し、あるいは、膜材を前記電解質塩の溶液中に浸漬する。
上記工程で調製した固体電解質は、他の方法で調製した固体電解質に比べ、電解質塩は有機相中にうまく錯化でき、結晶がない、一方、採用する高分子材料原料の質量が同じ際、それはより高い三次元的に連通する比界面積(10cm/cm以上)を有し、より高い室温イオン伝導率を有する。
【0028】
本発明の具体的な且つ好ましい更なる一側面によれば、固体電解質は以下の手順により調製する。
静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して繊維形式の一次構造とし繊維形式の一次構造を集合させて三次元の二次構造を形成し、静電紡糸をすると同時に、静電噴霧技術を採用して無機粒子の分散液を前記選択された受け面に噴射し、高分子材料により構成される有機相と無機粒子からなる複合材料が得られ、その後、前記複合材料を加圧処理してより緻密にさせた後、前記の膜材とする。
前記電解質塩の溶液を前記膜材中に滴下又は溶射し、あるいは、膜材を前記電解質塩の溶液中に浸漬する。
【0029】
上記工程で調製した固体電解質は、他の方法で調製した固体電解質に比べ、電解質塩は有機相中にうまく錯化でき、結晶がない、一方、採用する高分子材料原料の質量が同じ際、それはより高い三次元的に連通する比界面積(10cm/cm以上)を有し、より高い室温イオン伝導率を有する。
【0030】
本発明の具体的な一側面によれば、前記の高分子材料の分子構造は電解質塩の金属イオンと錯化できる極性基を有する。前記極性基はエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミン基、フッ素、アミド基、ニトリル基などを含むが、これらには限らない。該高分子材料は通常電解質塩に対して良好な溶解性を有する。
【0031】
本発明の具体的な一側面によれば、前記の高分子材料は分子構造中がエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミン基、フッ素、アミド基、ニトリル基から選ばれる1種又は多種の極性基を有する高分子材料である。
【0032】
さらに、前記高分子材料はポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアミンから選ばれるいずれか1種又は多種の組み合わせであってもよい。
【0033】
本発明の具体的な且つ好ましい一側面によれば、前記の高分子材料はポリアクリロニトリルである。このとき、得られた固体電解質は良好な室温伝導率を有するだけでなく、良好な機械的性質と電気化学安定性も有する。本発明の具体的な一側面によれば、ポリアクリロニトリルの分子量(重量平均)は90000~150000である。
【0034】
本発明の好ましい一側面によれば、前記の固体電解質は前記の膜材と電解質塩からなる。該固体電解質は、すでに優れた総合性能が得られ、且つ構造が簡単で、調製が便利である。
【0035】
本発明の他の好ましい一側面によれば、膜材は、前記の有機相により構成され、あるいは、有機相と有機相の界面に分散する無機粒子により構成され、そのうち、前記固体電解質における無機粒子の含有量は80wt%を超えない。
【0036】
本発明における第2の側面は固体電解質を提供し、それは連続有機相を含み、前記連続有機相は静電紡糸技術を採用して高分子溶液を選択された受け面に噴射して連続の二次元もしくは三次元構造を形成して加圧処理によって形成される緻密な薄膜であり、且つ前記連続有機相を構成する高分子繊維の内と前記連続有機相が含む孔の内にいずれも電解質塩が分布し、そして、前記固体電解質は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが5μm以上90μm未満である。
【0037】
さらに、前記の電解質塩と高分子繊維との質量比は1:2~1:10であり、好ましくは1:3~1:6(具体的に、例えば1:5)。
【0038】
好ましくは、前記固体電解質は複数個の無機粒子をさらに含み、前記複数個の無機粒子は前記連続有機相が含む孔の内に充填され、前記無機粒子は前記に記載された無機粒子であってもよい。
【0039】
好ましくは、前記固体電解質内に無機粒子の含有量が0以上95wt%以下であり、好ましくは50wt%~95wt%であり、特に好ましくは70wt%~95wt%であり、特に好ましくは70wt%~80wt%である。
【0040】
好ましく、前記固体電解質は、静電紡糸技術を採用して高分子溶液を選択された受け面に噴射して前記二次元もしくは三次元構造を形成すると同時に、静電噴霧技術を採用して前記無機粒子の分散液を前記選択された受け面に噴射し、その後、得られた複合材料を加圧処理して緻密な薄膜を形成し、さらに電解質塩溶液に浸漬した後で形成される。
【0041】
好ましく、前記高分子繊維の材質はポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンの中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0042】
本発明によれば、前記電解質塩は、本領域で知られているものであってもよく、特に制限されていない。電解質塩は、具体的には二次金属電池電解液中で使用するそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩又はアルミニウム塩などであり、そのうち、高分子材料に容易に溶解する塩であることが好ましい。本発明の一側面として、固体電解質はリチウム電池の調製に用いられる際、前記の電解質塩は、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸リチウムのようなリチウム塩であってもよい。具体的には、前記の電解質塩は、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTf)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム及び六フッ化リン酸リチウムの中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記固体電解質の密度は1~6g/cmである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記固体電解質薄膜の曲げ強度は5~20MPaである。
【0045】
本発明における第3の側面は前記の固体電解質の調製方法を提供し、それは、
(1)以下の方式a)又はb)により前記膜材は得られ、
a)静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して高分子繊維を集合させて三次元構造を形成し、その後、加圧処理して前記三次元構造をより緻密にさせることにより、前記三次元的に連通する界面を有する有機相を得て、前記膜材とし、
b)静電紡糸技術を採用して高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して高分子繊維を集合させて三次元構造を形成し、静電紡糸をすると同時に、静電噴霧技術を採用して無機粒子の分散液を前記選択された受け面に噴射し、前記有機相と無機粒子からなる複合材料を得て、その後、前記複合材料を加圧処理してより緻密にさせることにより前記膜材とし、ここで、前記高分子溶液を噴射するための静電紡糸出液口と前記無機粒子の分散液を噴射するための静電噴霧出液口をサイドバイサイド型のように平行に設置し、前記静電紡糸出液口の噴射方向と前記静電噴霧出液口の噴射方向との間を0以上90°未満の成す角度にさせ、
(2)前記電解質塩の溶液を前記膜材中に滴下し又は噴射し、あるいは、前記膜材を前記電解質塩の溶液に浸漬し、を含む。
【0046】
上記方法で調製した固体電解質は、その有機相が三次元的に連通する界面を有するだけでなく、比界面積も1×10cm/cm以上に容易に達することができる。また、この方法は電解質塩が有機相によく溶解することを保証できる。
【0047】
本発明によれば、前記の静電紡糸技術、静電噴霧技術は全て従来技術である。
【0048】
本発明によれば、前記受け面は受け装置の表面であってもよく、前記受け装置はローラー受け装置、平面受け装置及び水溶液受け装置の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせである。
【0049】
本発明の好ましい一側面によれば、前記受け装置に負電荷発生装置が設置されている。
【0050】
好ましくは、前記受け装置はローラー受け装置であり、噴射をする時に、前記ローラーは回転状態を保持している。
【0051】
好ましくは、求めされる有機相をより良く得るために、工程(1)では、噴射をする時に、静電紡糸出液口及び静電噴霧出液口と前記受け面との間は前記受け装置の軸方向、長さ方向又は幅方向に沿って相対的に運動する。
【0052】
本発明の固体電解質は電気化学デバイスの製造に特に適用している。このために、本発明は電気化学デバイスをさらに提供し、それは前記に記載された固体電解質を含む。
【0053】
さらに、前記電気化学デバイスはエネルギー貯蔵装置やエレクトロクロミック素子であってもよい。前記エネルギー貯蔵装置は、例えば電池であってもよく、電池は全固体電池であることが好ましく、さらに、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、鉄イオン電池、亜鉛イオン電池などであってもよい。前記エレクトロクロミック素子は、例えば電子書であってもよく、電子書は、さらに白黒電子書であってもよく、カラー電子書であってもよい。
【0054】
本発明は全固体電池にさらに関し、それは正極、負極及び本発明に記載された固体電解質。
【0055】
本発明の一側面によれば、前記正極は正極集電体に正極材料を被覆することによって形成される。さらに、前記正極材料は正極活性材料と固体電解質材料との複合体である。
【0056】
本発明の更なる一側面によれば、前記正極は正極集電体に膜状正極複合材料を被覆することによって形成される。
【0057】
好ましくは、前記正極複合材料は、
イオン伝導体機能を少なくとも有する有機繊維材料が集合することによって形成される連続の有機相と、
連続の有機相が含む孔の内に分布する正極活性材料と、
前記有機繊維材料内及び前記有機繊維材料と正極活性材料により構成されるネットワーク構造が含む孔の内に分布する電解質塩と、
前記固体正極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる電子導体添加剤と、
前記固体正極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる無機イオン伝導体添加剤と、を含み、
そして、前記固体正極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0058】
本発明の一側面によれば、前記負極は金属リチウム上に固体電解質材料を被覆することによって構成される。
【0059】
本発明の更なる一側面によれば、前記負極は負極集流体上に膜状負極複合材料を被覆することによって形成される。
【0060】
好ましくは、前記膜状負極複合材料は、
イオン伝導体機能を少なくとも有する有機繊維材料が集合することによって形成される連続の有機相と、
連続の有機相が含む孔の内に分布する負極活性材料と、
前記有機繊維材料内及び前記有機繊維材料と負極活性材料により構成されるネットワーク構造が含む孔の内に分布する電解質塩と、
前記固体負極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる電子導体添加剤と、
前記固体負極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる無機イオン伝導体添加剤と、を含み、
そして、前記固体負極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0061】
以上の技術案の実施により、本発明は従来技術と比べると以下の利点がある。
リチウムイオンなどの導電イオンがポリマー内から伝導していると考えられる原理とは異なり、本発明の発明者は、ポリマー固体電解質にとって、導電イオンは主にポリマーの界面から伝導していると大量実験研究で意外に発見した。これによって、本発明が提供する三次元的に連通する界面を有する且つ比界面積が高い有機相はイオンが正極と負極との間で速く伝導することを実現でき、著しく向上した室温イオン伝導率を有する。この原理を利用して、発明者はすでに室温伝導率が10-3S/cm以上である固体電解質を調製し、固体電池応用の需要を満たす。また、本発明の固体電解質は、特種ポリマーやフィラーの添加に依存せず、調製が簡便で、コストが低く、原料源が広いなどの利点を有する。
本発明で提供する固体電解質の調製方法は、室温伝導率が高く、均一性と安定性が良く、且つ厚さが薄い固体電解質(本発明に係る実施例で調製した5μm厚さの固体電解質、その単位面積コンダクタンスは2400mS/cmに達し、現在で報告する固体電解質の中で最高レベルにある)を大量に獲得でき、且つ方法は再現性と安定性が良い。また、この方法は制御性が良く、種々の比界面積の固体電解質を便利に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
本発明の実施例や従来技術での技術案をより明確に説明するために、以下は、実施例又は従来技術の記述において必要な図面を用いて簡単に説明を行う。明らかに、以下の説明における図面は、本発明の単にいくつかの実施例を表し、この技術分野の当業者にとって、創造的な労働を出さないという前提で、これらの図面から他の図面を依然として導き出し
得る。
図1】液状リチウムイオン電池と全固体電池の構造比較概略図である。
図2】本発明の実施例1-1における静電紡糸技術で調製されたポリアクリロニトリル繊維をリチウム塩に浸漬させることによって形成される固体電解質の電気化学インピーダンス図である。
図3】本発明の実施例1-2における静電紡糸技術で調製されたポリメチルメタクリレート繊維をリチウム塩に浸漬させることによって形成される固体電解質の電気化学インピーダンス図である。
図4】本発明の典型的な一実施例における静電紡糸技術と静電噴霧法を同時に採用して固体電解質薄膜を調製する方法模式図である。
図5】本発明の典型的な一実施例における固体電解質で組み立てる電池の構造概略図である。
図6】本発明の典型的な一実施例における静電紡糸技術と静電噴霧法を同時に採用して固体電解質薄膜を調製する電子顕微鏡写真である。
図7】本発明の典型的な一実施例における静電紡糸技術と静電噴霧法を同時に採用して固体電解質薄膜を調製するマクロ写真である。
図8】本発明の実施例1-4における静電紡糸技術で調製されたポリアクリロニトリル繊維をリチウム塩に浸漬させることによって形成される固体電解質の導電率がリチウム塩の含有量の変化に伴い変化する傾向図である。
図9】本発明の実施例1-6における静電紡糸技術と静電噴霧法を同時に採用して調製された固体電解質薄膜の導電率がリチウム塩の含有量の変化に伴い変化する傾向図(そのうち、無機粒子がイオン伝導体である)である。
図10】本発明の実施例1-7における静電紡糸技術と静電噴霧法を同時に採用して調製された固体電解質薄膜の導電率がリチウム塩の含有量の変化に伴い変化する傾向図(そのうち、無機粒子は非イオン導体である)である。
図11】本発明の実施例2-1における調製された柔軟性固体正極薄膜の走査型電子顕微鏡図である。
図12】本発明の実施例2-1における調製された柔軟性固体正極薄膜のマクロ写真である。
図13】本発明の実施例2-1におけるリチウム塩を滴下した後に得られた柔軟性固体正極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図14】本発明の実施例2-1における調製された柔軟性固体正極複合材料の電気化学サイクル性能図である。
図15】本発明の実施例2-2における調製された柔軟性固体正極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図16】本発明の実施例2-2における調製された柔軟性固体正極複合材料が正極である時の初回充放電曲線図である。
図17】本発明の実施例2-3における調製された柔軟性固体正極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図18】本発明の実施例2-3における調製された柔軟性固体正極複合材料の充放電曲線である。
図19】本発明の実施例2-4における調製された柔軟性固体正極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図20】本発明の比較例2-2における調製された柔軟性固体正極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図21】本発明の実施例3-1における調製された柔軟性固体負極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図22】本発明の実施例3-1における調製された柔軟性固体負極複合材料のマクロ写真である。
図23】本発明の実施例3-2における調製された柔軟性固体負極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図24】本発明の比較例3-1における調製された柔軟性固体負極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図25】本発明の実施例3-7における調製された柔軟性固体負極複合材料の走査型電子顕微鏡図である。
図26】異なる直径の高分子繊維が集合することによって形成される繊維膜のSEM図である。そのうち、Aは直径が約200nmである高分子繊維が集合することによって形成される繊維膜であり、Bは直径が約300nmである高分子繊維が集合することによって形成される繊維膜であり、Cは直径が約400nmである高分子繊維が集合することによって形成される繊維膜であり、Dは直径が約500nmである高分子繊維が集合することによって形成される繊維膜である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
[関連用語の説明]
本発明において、有機相の比界面積とは、単位体積内で有機相が有する界面の面積ものである。前記の界面は、有機相がその有機相以外の物質(大気環境、無機粒子または化学組成が有機相と異なる有機材料などを含むことに限らず)と接触する界面と、この有機相内の界面(例えば、この有機相は一次構造単位例えば、高分子繊維、高分子粒子、高分子シートなどが集合する、重なるように二次構造を形成する際、互いに接触する一次構造単位間に生じる界面である)とを含む。
【0064】
有機相の比界面積は単位体積で有機相が有する界面面積であり、そのうち、界面面積は本発明に記載された界面の面積であり、本発明における界面面積の一般計算法により界面面
積の値を決定する。例えば、
(1)有機相は高分子繊維が集合することによって形成される時に、計算方法は以下のとおりである。
高分子繊維にとって、そのモデルが一つの円筒体とすることができ、
その表面積の公式は、S=π×d×l 式(1)
ここで、πは円周率であり、dは繊維の直径であり、lは繊維の長さであり、
l=V/(π×d/4) 式(2)
ここで、Vは繊維の体積であり、
よって、表面積S=π×d×V/(π×d/4) 式(3)
また、V=m/ρ 式(4)
ここで、ρは高分子の密度であり、mは質量であり、
よって、S=π×d×m/ρ/(πd/4)=4m/(ρ×d) 式(5)
S´=S/V´ 式(6)
ここで、V´は高分子繊維膜の体積であり、S´は単位体積の表面積であり、すなわち比界面積であり、
V´=m/ρ´ 式(7)
よって、S´=4ρ´/(d×ρ)
ここで、ρ´は高分子繊維膜の圧密度である。
(2)有機相は高分子繊維が集合することによって形成され、且つ比界面積を増加する無機粒子を添加した時に、計算方法は以下のとおりである。
有機相中に比界面積が高い無機粒子は充填された際、有機相の比界面積は高分子繊維の比界面積と無機粒子の比界面積との体積加重平均値であり、具体的な公式はS´=(S+S)/Vであり、そのうち、S´は有機相の比界面積であり、S、Sはそれぞれ高分子繊維と無機粒子の表面積であり、Vは高分子繊維と無機粒子が複合することによって形成された膜材の体積である。
高分子繊維にとって、その表面積S=4m/(ρ×d)、そのうち、mは高分子繊維の質量であり、ρは高分子繊維の密度であり、dは高分子繊維の直径であり、
無機粒子にとって、球体とすることができ、その表面積S=π×d ×nであり、
ここで、πは円周率、dは無機粒子の直径、nは無機粒子の数であり、式()
n=m/m 式()
ここで、mは無機粒子の総質量であり、mは単一無機粒子の質量であり、
また、m=4/3×π×(d/2)×ρ、ここで、ρは密度であり、 式(10
よって、S=π×d ×m/m 式(11
よって、S´=(S+S)/V=[4m/(ρ×d)+π×d ×m2/m]/V 式(12
また、V=(m+m)/ρ´、ここで、ρ´は複合材料の圧密度であり、
よって、S´=[4m/(ρ×d)+π×d ×m/m]×ρ´/(m+m)。
(3)有機相は高分子材料を含む混合物を塗布することによって形成される時に、計算方法が以下のとおりである。
塗布した高分子材料にとって、緻密な膜とすることができ、その表面積S=l×d 式(13
ここで、l、dはそれぞれ膜の長さと幅であり
その体積V=l×d×h 式(14
ここで、hは膜の厚さであり、
よって、S´=S/V=l/h 式(15
ここで、S´は単位体積内で塗布した高分子材料の表面積であり、すなわち比界面積である。
【0065】
本発明において、固体電解質の電気伝導率の測定方法及び条件:固体電解質の両側に200nmの金の金属をスパッタリングしてイオン伝導率の測定に使用し、そのうち、金の面積は0.28cmであり、測定は室温(25℃)で行われる。
【0066】
[固体電解質]
本発明は固体電解質のイオン伝導率を高める新しい考え方を提供する。
【0067】
本発明が提供する柔軟性フィルム形態の固体電解質を提供し、それは膜材及びその膜材に溶解する電解質塩を含む。そのうち、膜材は、高分子材料で形成され且つ三次元的に連通する界面を有する有機相を含む。そのうち、有機相の比界面積を1×10cm/cm以上に制御することによって、室温イオン伝導率を10-4S/cm以上に達させることができる。有機相の比界面積をさらに高め、室温イオン伝導率を1.0×10-3S/cmまでさらに高めることができ、さらにより高い。
【0068】
前述比界面積を有することを得る方法は有機相自体の構造を最適化することおよび有機相に無機粒子を添加する方法などを含む。
高い比界面積を有する有機相は、高分子繊維が集合することによってよく容易に得られ、具体的には良く知られている静電紡糸技術を採用して調製できる。高分子繊維の直径、高分子繊維が集合する緊密さなどを調節することによって、比界面積が異なる有機相を得ることができる。
【0069】
静電紡糸を実行して高分子繊維を調製する時の条件とパラメータ設定は通常の実行条件を採用でき、特に制限がない。
【0070】
いくつかの具体的な実施形態において、静電紡糸技術を採用して前記高分子材料の溶液を選択された受け面に噴射して連続の三次元構造を形成し(すなわち高分子繊維が集合して形成する)、その後加圧処理を行って前記三次元構造をより緻密にさせ、前記連続の有機
相を得て、前述膜材とする。そのうち、静電紡糸出液口と前記受け面との間隔は5~30cmとすることができ、静電電圧は、例えば5~50KVであってもよい。前記加圧処理の圧力は100KPa~20MPaであり、時間は1~60分であり、好ましくは1~10分であり、温度は25~60℃である。
【0071】
無機粒子の添加は有機相の比界面積をさらに高めることができる。具体的には、添加した無機粒子の量および無機粒子の大きさを調節することによって、比界面積が異なる膜材は得られる。無機粒子の量は、一般的には、多いほど良くなるが、調製される固体電解質の柔軟性を過多に影響することができない。
【0072】
無機粒子添加の方法は多種であってもよく、しかし、静電噴霧の方法を採用することが好ましく、且つ静電紡糸技術をすると同時に添加する。このように添加した無機粒子は、有機相界面の連続性を遮断しない。この添加方法のもう一つの良さは、他の可能な添加方法と比べて、広い範囲で無機粒子の量(0~95wt%)を調節できることである。そして、その方法は、添加した無機粒子が固体電解質の含量に対して70%を超える時に、良い柔軟性を依然として保持する。
【0073】
いくつかの具体的な実施形態において、静電紡糸技術を採用して高分子溶液を選択された受け面に噴射するように連続の三次元構造を形成し(すなわち高分子繊維が集合して形成する)、同時に、静電噴霧技術を採用して前記無機粒子の分散液を前記選択された受け面に噴射し、高分子材料により構成される有機相と無機粒子からなる複合材料が得られ、その後、前記複合材料を加圧処理してより緻密化させた後、前記の膜材とする。そのうち、静電紡糸出液口と前記受け面との間隔は5~30cmとすることができ、静電電圧は、例えば5~50KVであってもよい。前記加圧処理の圧力は100KPa~20MPaであってもよく、時間は1~60分であり、好ましくは1~10分であり、温度は25~60℃である。良い実施態様の一つとして、前記調製方法は、100KPa~20MPaの圧力で、受け面から収集して得られた薄膜を転圧機械に置いて転造を繰り返してことを含む。
【0074】
具体的には、前記高分子溶液と前記無機粒子分散液との流量比は100:1~1:100であり、好ましくは1:10~1:50であり、特に好ましくは1:3~1:7である。紡糸と噴霧との両方の流速比を制御することによって固体電解質含有量が異なる柔軟性薄膜を調製できる。
【0075】
上記の実施態様において、加圧処理により高分子繊維を緻密な連続有機相に形成させ、次いで電解質塩を添加し、電解質塩の用量割合を大幅に低減させることができると同時に、有機高分子固体電解質のイオン伝導率をさらに大幅に向上させる。
【0076】
また、好ましくは前記高分子溶液を噴射するための静電紡糸出液口と前記無機粒子分散液を噴射するための静電噴霧出液口をサイドバイサイド型のように平行に設置し、並びに前記静電紡糸出液口の噴射方向と前記静電噴霧出液口の噴射方向との間を0以上90°未満の成す角度にさせる。
【0077】
さらに、前記静電紡糸出液口及び/又は静電噴霧出液口の形状は円形またはスリット形を含み、好ましくはスリット形であり、そのうち、スリット型は高い生産性を持っている。スリット構造を採用した出液口は受け面に噴射される高分子溶液と無機粒子分散液をより均一に分布させることができる。
【0078】
好ましく、無機粒子が分散液で沈降することによって静電噴霧出液口の詰まり及び噴射不均一を引き起こし、形成した固体電解質膜の均一性及び性能を影響することを防ぐために
、前記無機粒子分散液は界面活性剤をさらに含む。前記界面活性剤は、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などのイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、複合界面活性剤及び他の界面活性剤などを選択できるが、これらには限らない。界面活性剤は、一般的には、無機粒子分散液での含有量が0.1~1wt%。
【0079】
さらに、受け面と静電紡糸出液口及び/又は静電噴霧出液口との間に外部電界を印加し、前記外部電界の作用とともに、静電紡糸技術を採用して前記高分子溶液を前記受け面に噴射し、並びに、静電噴霧技術を採用して前記無機粒子分散液を前記受け面に噴射した。いくつかの実施例において、前記受け面は受け装置の表面である。受け装置はローラー受け装置、平面受け装置及び水溶液受け装置の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであるが、これらには限らない。受け面に負電荷発生装置が設けられることができる。
【0080】
さらに、前記受け面へ前記高分子溶液及び無機粒子分散液を噴射する時に、前記静電紡糸出液口及び静電噴霧出液口と前記受け面との間は前記受け装置の軸方向又は長さ方向又は幅方向に沿って往復の相対運動をする。
【0081】
よりさらに、前記受け面と前記静電紡糸出液口及び静電噴霧出液口との間は設定角度となり、例えば0~89.9°で設置されている。
【0082】
いくつかの実施例において、前記ローラー受け装置のローラーの表面へ前記高分子溶液及び無機粒子分散液を噴射する時に、前記ローラーは回転状態を保持している(回転速度、例えば300~1000rpm)。上記の作業状態を一定時間保持すると、一枚の薄膜が得られ、得られた生成物は容易にローラーから剥がれることができる。
【0083】
本発明において、これらの具体的に選択可能な高分子材料はポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアミンを含むが、これらには限らない。良い電解質塩を溶解する能力及び良い力学と電気などの特性を有することが好ましい。
【0084】
前記高分子溶液を調製する方法は通常高分子材料を相応する溶媒に溶解すればよいである。例えば、上記の高分子材料にとって、選択可能な溶媒は水、N-メチルピロリドン、エタノールなどのすべてのアルコール類の液体、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドの中のいずれか1種又は2種以上の組合せなどの前記の高分子材料を溶解できる全ての液体を含むが、これらには限らない。
【0085】
本発明において、具体的に選択可能な無機粒子はすべての酸化物、硫化物、窒化物、フッ化物、塩化物及び炭化物などの無機非イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体、マグネシウムイオン伝導体及びアルミニウムイオン伝導体などの無機イオン伝導体などを含むが、これらには限らない。無機粒子分散液を調製する溶媒は水、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類の液体、アセトンなどのケトン類の液体の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせを具体的に選択できるが、これらには限らない。
【0086】
上記するように比界面積が高い膜材を得た後、液体を滴下する又は噴霧する方式のいずれかのように、電解質塩溶液を前記膜材に浸漬し、又は膜材を電解質塩溶液中に浸漬し、その後、高温で溶媒を乾燥し、即ち所望の固体電解質を調製して得る。電解質塩溶液の濃度、浸漬の時間及び浸漬時の外部条件、例えば真空、加圧など、を調節することによって、電解質塩と有機相との必要な割合を制御することが得られる。例えば、いくつかの実施形
態において、電解質塩溶液で前記固体電解質を浸漬し、時間は1分~24時間であり、好ましくは5~10分であり、その後乾燥処理を行う。
【0087】
上記方法のように調製され、柔軟な膜状である固体電解質は、無機電解質及び有機電解質の優位な相補性を実現し、即ち、無機電解質導体と比べ可能な電気伝導率を有し、同時に良好な加工性能を持っている。より具体的に、従来の無機電解質導体の導電率は高く、一般的に1.6×10-3S/cmに達することができるが、一般的に厚さはミリメートルレベルである。そのため、単位面積コンダクタンスが低く、且つ加工性能が悪い。それに対して、本発明が提供する固体電解質は、非常に薄く作られる場合(5~20μm)、特に高い単位面積コンダクタンスが得られ、且つ良い機械的完全性を保持しでき、高い柔軟性を有し、曲げが断裂せず、加工性が良好である。同時に有機電解質に比べて、本発明が提供する固体電解質の高い機械的モジュラスは、デンドライトを抑制でき、燃焼した後依然として形態を維持し、正負極間で直接接触ための内部短絡を生じないことを保証でき、そのため、安全性が高い。
【0088】
本発明が提供する固体電解質薄膜は以下の性能特徴を有し:1)イオン伝導性が高く(電気化学デバイス応用の要求に達する)、2)特殊な機械的性質を有し、非常に薄く作られる場合、依然として機械的完全性を保持でき、曲げが断裂せず、加工性が良好であり、3)二次電池応用で良好な電気化学的性能を示す。
【0089】
上記技術案により、本発明に係る固体電解質の調製過程が簡単で、大量に調製でき、且つ使用原料のコストが低く、条件が穏やかで、高価な生産設備を必要とせず、収率が高く且つ調節可能で、再現性と安定性が良く、異なる電池システムに適用できる。それは、全固体電池の開発に良いアイデアを提供する。
【0090】
また、紡糸の繊維自体は優れた柔軟性を備えるため、この方法により調製された薄膜も同様に柔軟性を備えることも保証でき、且つ紡糸と噴霧との両方の流速比を制御することによって固体電解質含有量が異なる柔軟性薄膜を調製することができる。このシステムにとって、プロセスをしやすく、調製過程を制御しやすい特性を利用して、柔軟な固体電解質薄膜の調製を実現することができる。
【0091】
[固体電池の正極]
本発明のいくつかの実施形態において、固体正極を提供し、それは正極集電体を含み、前記正極集電体に固体正極複合材料が被覆されている。
【0092】
さらに、前記正極集電体はアルミニウム箔、炭素被覆アルミニウム箔、カーボンフェルト、カーボンペーパーの中のいずれか1種を含むが、これらには限らない。
【0093】
さらに、前記固体正極複合材料が正極集電体表面に均一に被覆され、且つ前記固体正極複合材料の厚さが30~500μmであり、好ましくは50~300μmであり、さらに好ましくは150~250μmであり、25℃でイオン伝導率は1.0×10-4~1.0×10-2S/cmである。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態において、固体正極複合材料を提供し、それは、
イオン伝導体機能を少なくとも有する有機繊維材料が集合することによって形成される連続の有機相と、
連続の有機相が含む孔の内に分布する正極活性材料と、
前記連続の有機相に溶解する電解質塩と、
前記固体正極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる電子導体添加剤と、
前記固体正極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる無機イオン伝導体添加剤
と、を含み、
そして、前記固体負極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0095】
前記連続有機相は上記の固体電解質の有機相の方法で得られる。
【0096】
本発明の実施例の一側面が提供する固体正極複合材料は主に複合材料が加圧処理され、電解質塩溶液で浸漬されることによって形成される。
【0097】
前記複合材料は、
連続有機相と、前記連続有機相は静電紡糸技術を採用してポリマー溶液を選択された受け面に噴射して連続の二次元又は三次元構造を形成し、前記有機繊維材料はイオン伝導体の機能を少なくとも有し、
前記ポリマー溶液を噴射すると同時に、静電噴霧技術を採用して正極活性材料の分散液又は正極活性材料と電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤との混合分散液を前記選択された受け面に噴射して形成されるネットワーク構造とを含み、
そのうち、前記正極活性材料は前記連続の有機相が含む孔の内に分布し、前記電解質塩は有機相中に溶解し、
そのうち、電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤が存在すると、前記電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤が前記固体正極複合材料内に分散し、
そして、前記固体正極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0098】
いくつかの良い実施態様において、前記固体正極複合材料は、
主に前記有機繊維材料が緊密に集合することによって形成される連続の二次元又は三次元構造と、
前記二次元又は三次元構造に分散する正極活性材料と、並びに、
前記有機相中に溶解する電解質塩と、を含む。
【0099】
いくつかの実施態様において、前記有機繊維材料は電子伝導体の機能をさらに有する。対応して、前記固体正極複合材料は正極活性材料、有機繊維材料及び電解質塩のみを含むことができる。
【0100】
他のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料は電子伝導体の機能をさらに有するにもかかわらず、固体正極複合材料の性能をさらに改善するために、前記固体正極複合材料は電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤などをさらに含むこともできる。これらの電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0101】
これらの実施態様において、前記有機繊維材料はイオン伝導体の機能のみを有する。対応して、前記固体正極複合材料は正極活性材料、電子伝導体添加剤、有機繊維材料および電解質塩を含むことができる。これらの電子伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0102】
本発明のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料はイオン伝導体の機能のみを有する。これに対して、前記固体正極複合材料は正極活性材料、電子伝導体添加剤、無機イオン伝導体添加剤、有機繊維材料および電解質塩を含むことができる。これらの電子伝導体添加剤、無機イオン伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0103】
いくつかのよい実施態様において、前記固体正極複合材料の厚さは30~500μmであ
り、好ましくは50~300μmであり、特に好ましくは150~250μmである。
【0104】
さらに、前記固体正極複合材料のイオン伝導率は1.0×10-4~1.0×10-2S/cmである。
【0105】
さらに、前記固体正極複合材料は25℃でイオン伝導率が1.0×10-4~1.0×10-2S/cmである。
【0106】
さらに、前記固体正極複合材料の密度は1~5g/cmである。
【0107】
さらに、前記固体正極複合材料の曲げ強度は1~20MPaである。
【0108】
好ましくは、前記固体正極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:2~1:10であり、好ましくは1:3~1:6である。
【0109】
さらに、前記固体正極複合材料に電解質塩の含有量は1~10wt%であり、好ましくは1~5wt%。
【0110】
好ましくは、前記電解質塩はリチウム塩であってもよく、例えば、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などの中の1種又は2種以上の組み合わせであり、小分子ポリマーのリチウム塩であってもよく、例えば、スクシノニトリル-リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであるが、これらには限らない。なお、前記電解質塩はナトリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩などの全ての二次金属電池が使用する電解質塩であってもよい。
【0111】
いくつかの実施例において、前記固体正極複合材料内に有機繊維材料の直径は50nm~2μmであり、好ましくは100nm~1μmであり、さらに好ましくは150nm~800nm、特に好ましくは300nm~600nm。
【0112】
さらに、前記固体正極複合材料内に有機繊維材料の含有量は5~60wt%であり、好ましくは10~20wt%である。
【0113】
いくつかの実施例において、前記有機繊維材料の材質はポリマを含み、それはイオン伝導性機能を少なくとも有する。
【0114】
好ましくは、前記ポリマーはポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むが、これらには限らない。
【0115】
より好ましくは、前記有機繊維材料は導電性高分子とイオン伝導性高分子をブレンドしてグラフトすることによって形成され、且つイオンと電子伝導体機能を同時に有するポリマーを含む。
【0116】
いくつかのよい実施態様において、前記固体正極複合材料内に正極活性材料の含有量は30~95wt%であり、好ましいは50~90wt%であり、さらに好ましくは60~80wt%であり、特に好ましくは70~80wt%である。本発明において、正極活性材料粒子の含有量が70wt%以上である時に、前記固体正極複合材料は優れた柔軟性を依然として有することができる。
【0117】
いくつかの実施例において、前記無機正極活性材料粒子の粒径は2nm~20μmであり、好ましくは5nm~1μmであり、さらに好ましくは10nm~1μmであり、特に好ましくは20nm~1μmである。
【0118】
いくつかのよい実施態様において、前記正極活性材料の材質は、酸化物正極材料、硫化物正極材料、ポリアニオン系の正極材料などの中のいずれか1種又は任意の幾つかの前駆体であってもよく、ナトリウムイオン電池正極材料、マグネシウムイオン電池正極材料、アルミニウムイオン電池正極材料などの全ての二次電池に適用できる正極材料及びその前駆体であってもよい。
【0119】
好ましくは、前記正極活性材料の材質はリン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(Li(NiCoMn)O)、マンガン酸リチウム及びニッケルマンガン酸リチウムのいずれか1種又は2種以上の組み合わせを含むが、これらには限らない。
【0120】
いくつかの実施例において、前記固体正極複合材料内に電子伝導体添加剤の含有量は0~50wt%であり、好ましくは0~20wt%であり、さらに好ましくは0~10wt%である。
【0121】
さらに、前記電子伝導体添加剤はアセチレンブラック、SuperP導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、導電性グラファイトの中のいずれか1種又は2種以上の組合せを含むが、これらには限らない。
【0122】
いくつかの実施例において、前記固体正極複合材料内に無機イオン伝導体添加剤の含有量は0~70wt%であり、好ましくは0~40wt%であり、さらに好ましくは0~20wt%である。
【0123】
さらに、前記無機イオン伝導体添加剤はリチウムイオン導体添加剤、ナトリウムイオン伝導体添加剤、マグネシウムイオン伝導体添加剤又はアルミニウムイオン伝導体添加剤を含み、そのうち、前記リチウムイオン導体添加剤はNASICON型リチウムセラミック電解質、ペロブスカイト型リチウムセラミック電解質、ガーネット型リチウムセラミック電解質、LISICON型リチウムセラミック電解質、LiN型リチウムセラミック電解質、リチオ化BPO4導リチウムセラミック電解質及びLiSiOを前駆体とするリチウムセラミック電解質の中のいずれか1種又は2種以上の組合せであり、例えば、タンタルドープリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZTO)であってもよいが、これらには限らない。
【0124】
本発明の固体正極複合材料に正極活性材料の添加量は70wt%を超えることができる。その添加は、電解質塩の解離を強化することができ、有機相の自由体積を増加し、結晶化度を低下させることで、リチウムイオン電池のサイクル寿命を延長し、電池のクーロン効率を向上させる。同時に、正極活性材料が添加されている場合、本発明の固体正極複合材料に有機繊維材料、正極活性材料及び電解質塩の三者が相互に協力し、固体正極複合材料のイオン伝導率をさらに高めることができ、二次電池応用に良好な電気化学性能を示している。
【0125】
好ましくは、前記固体正極複合材料は柔軟性フィルム形態である。
【0126】
本発明のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料は電子伝導体の機能をさらに有する。対応して、前記固体正極複合材料は正極活性材料、有機繊維材料及び電解質塩のみ
を含むことができる。
【0127】
本発明の他のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料が電子伝導体の機能をさらに有するにもかかわらず、固体正極複合材料の性能をさらに改善するために、前記固体正極複合材料は電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤などをさらに含むこともできる。これらの電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0128】
本発明のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料はイオン伝導体の機能のみを有する。対応して、前記固体正極複合材料は正極活性材料、電子伝導体添加剤、有機繊維材料及び電解質塩を含むことができる。これらの電子伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0129】
本発明のいくつかの実施態様において、前記有機繊維材料はイオン伝導体の機能のみを有するが、前記固体正極複合材料は正極活性材料、電子伝導体添加剤、無機イオン伝導体添加剤、有機繊維材料及び電解質塩を含むことができる。これらの電子伝導体添加剤、無機イオン伝導体添加剤は前記固体正極複合材料内に分散できる。
【0130】
好ましくは、前記ポリマー溶液と前記正極活性材料の分散液又は混合分散液との流量比は100:1~1:100であり、好ましくは1:10~1:50であり、特に好ましくは1:5~1:7である。本発明は紡糸と噴霧との両方の流速比を制御することによって正極材料含有量が異なる柔軟性薄膜を調製できる。
【0131】
前記加圧処理の圧力は100KPa~20MPaであり、時間は1~60分であり、好ましくは1~10分であり、温度は25~60℃である。
【0132】
前記浸漬の時間は1分~24時間であり、好ましくは5~10分である。
【0133】
好ましくは、前記固体正極複合材料はフィルム状であり、特に好ましくは柔軟な膜状である。
【0134】
要するに、本発明の固体正極複合材料に有機繊維材料の添加は正極材料に柔軟性の特徴を与え、極めて薄く作ることができる(10~20μm)とともに、良好な完全性と加工性能を保持する。無機材料はリチウムイオン電池などのようなエネルギー貯蔵装置にリチウムデンドライトなどの成長を有効的に抑制することができることで、これらの設備のサイクル寿命を延長し、電池のクーロン効率を向上させる。
【0135】
上記するような固体正極複合材料は以下の性能特徴を有し:1)イオン伝導性が高く(電気化学デバイス応用の要求に達する)、2)特殊な機械的性質を有し、薄い膜を作った場合、依然として機械的完全性を保持でき、曲げが断裂せず、加工性が良好であり、3)二次電池応用で良好な電気化学的性能を示した。
【0136】
本発明の実施例の他の一側面は固体正極複合材料の調製方法をさらに提供し、それは、
静電紡糸技術を採用してポリマー溶液(溶液1と称すことができる)を選択された受け面に噴射して連続の二次元又は三次元構造を形成し、前記有機繊維材料はイオン伝導体機能を少なくとも有し、
前記ポリマー溶液を噴射すると同時に、静電噴霧技術を採用して正極活性材料の分散液又は正極活性材料と電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤との混合分散液(溶液2と称すことができる)を前記選択された受け面に噴射し、その後得られた複合材料を加圧処理して緻密化させ、前記正極活性材料を連続の有機相が含む孔の内に分布させ、
さらに電解質塩溶液で前記複合材料を浸漬することによって、電解質塩を前記複合材料内の有機繊維材料内及び前記有機繊維材料と正極活性材料により構成されるネットワーク構造が含む孔の内に入らせ、前記固体正極複合材料を形成し、
そのうち、電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤が存在すると、前記電子伝導体添加剤及び/又は無機イオン伝導体添加剤が固体正極複合材料内に分散し、
そして、前記固体正極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0137】
上記の実施態様において、加圧処理により有機繊維材料を緻密な連続有機相に形成させ、次いで電解質塩を添加し、電解質塩の用量割合を大幅に低減させるとともに、有機高分子固体正極複合材料のイオン伝導率をさらに大幅に向上させることができる。
【0138】
好ましくは、前記固体正極複合材料はフィルム状であり、好ましくは柔軟なフィルム状である。
【0139】
前記静電紡糸技術、静電噴霧技術は既知技術である。固体正極複合材料の有機相の調製を実行する時に、具体的には次のように設定できる。
静電紡糸出液口と前記受け面との間隔は5~30cmであり、静電電圧は5~50KVである。
【0140】
静電噴霧技術では、静電噴霧出液口と前記受け面との間隔は5~30cmであり、静電電圧は5~50KVである。
【0141】
いくつかの実施例において、前記ポリマー溶液を噴射するための静電紡糸出液口と前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液を噴射するための静電噴霧出液口をサイドバイサイド型のように平行に設置する。前記静電紡糸出液口の噴射方向と前記静電噴霧出液口の噴射方向との間を0以上90°未満の成す角度にさせる。
【0142】
いくつかの実施例において、前記静電紡糸出液口の噴射方向と前記静電噴霧出液口の噴射方向との間は0以上90°未満の成す角度となる。
【0143】
前記静電紡糸出液口及び/又は静電噴霧出液口の形状は円形またはスリット形を含み、好ましくはスリット形であり、そのうち、スリット型は高い生産性を持っている。スリット構造を採用した出液口は受け面に噴射されるポリマー溶液と前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液をより均一に分布させることができる。
【0144】
いくつかの実施例において、正極活性材料が分散液で沈降することによって静電噴霧出液口の詰まり及び噴射不均一を引き起こし、形成した固体電解質膜の均一性及び性能を影響することを防ぐために、前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液は界面活性剤をさらに含む。一般的には、前記界面活性剤は前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液での含有量は0.1~1wt%である。界面活性剤はカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などのイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、複合界面活性剤及び他の界面活性剤などを選択できるが、これらには限らない。
【0145】
具体的には、受け面と静電紡糸出液口及び/又は静電噴霧出液口との間に外部電界を印加し、前記外部電界と作用するとともに、静電紡糸技術を採用して前記ポリマー溶液を前記受け面に噴射し、並びに、静電噴霧技術を採用して前記正極活性材料の分散液又は混合分散液を前記受け面に噴射する。
【0146】
いくつかの実施例において、前記受け面は受け装置の表面である。受け装置はローラー受
け装置、平面受け装置及び水溶液受け装置の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであるが、これらには限らない。いくつかの実施例において、前記受け面は負電荷発生装置をさらに有する。
【0147】
さらに、前記受け面へ前記ポリマー溶液及び前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液を噴射する時に、前記静電紡糸技術出液口及び静電噴霧出液口と前記受け面との間は前記受け装置の軸方向に沿って相対運動をし、又は受け面の長さ方向又は幅方向に沿って往復の相対運動をする。
【0148】
よりさらに、前記受け面と前記静電紡糸出液口及び静電噴霧出液口との間は設定角度となり、例えば0~89.9°で設置されている。
【0149】
いくつかの実施例において、前記ローラー受け装置のローラー表面へ前記ポリマー溶液及び前記正極活性材料の分散液又は前記混合分散液を噴射する時に、前記ローラーは回転状態を保持している(例えば、回転速度は300~1000rpmである)。上記の作業状態を一定時間保持すると、一枚の薄膜が得られ、得られた生成物は容易にローラーから剥がれることができる。
【0150】
具体的には、ポリマーを溶解する溶媒は水、N-メチルピロリドン、エタノールなどのすべてのアルコール類の液体、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドの中のいずれか1種又は2種以上の組合せなどの全ての上記のポリマーを溶解できる液体を含むが、これらには限らない。
【0151】
上記正極活性材料、電子伝導体添加剤及び無機イオン伝導体添加剤を分散する溶媒は水、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類の液体、アセトンなど他のケトン類の液体の中のいずれか1種又は2種以上の組み合わせであってもよいが、これらには限らない。
【0152】
[固体電池の負極]
本発明のいくつかの実施形態において、固体負極を提供し、それは負極集電体を含む、前記負極集電体に固体負極複合材料が被覆されている。
【0153】
本発明の実施例の一側面に固体負極複合材料が提供され、それは、
イオン伝導体機能を少なくとも有する有機繊維材料が集合することによって形成される連続の有機相と、
前記連続の有機相が含む孔の内に分布する負極活性材料と、
前記有機相に溶解する電解質塩と、
前記固体負極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる電子導体添加剤と、並びに、
前記固体負極複合材料内に分散し、添加又は無添加を選択できる無機イオン伝導体添加剤と、を含み、
そして、前記固体負極複合材料は柔軟性フィルム形態であり、且つ厚さが30~500μmである。
【0154】
そのうち、連続の有機相、電解質塩、電子伝導体添加剤、無機イオン伝導体添加剤などの具体的な態様は上記固体電池の正極に記載されたものと全て同じである。固体負極複合材料の調製方法及び条件は上記固体電池の正極に記述されたものを同様に参照することができる。
【0155】
いくつかのよい実施例において、前記固体負極複合材料の厚さが30~500μmであり
、好ましくは50~300μmであり、特に好ましくは150~250μmである。
【0156】
さらに、前記固体負極複合材料のイオン伝導率は1.0×10-4~1.0×10-2S/cmである。
【0157】
さらに、前記固体負極複合材料は25℃でイオン伝導率が1.0×10-4~1.0×10-2S/cmである。
【0158】
さらに、前記固体負極複合材料の密度は0.5~5g/cmである。
【0159】
さらに、前記固体負極複合材料の曲げ強度は1~20MPaである。
【0160】
いくつかのよい実施例において、前記固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:2~1:10であり、好ましくは1:3~1:6である。
【0161】
さらに、前記固体負極複合材料に電解質塩の含有量は1~10wt%であり、好ましくは1~5wt%。
【0162】
いくつかのよい実施態様において、前記固体負極複合材料内に負極活性材料の含有量は30~95wt%であり、好ましいは50~90wt%であり、さらに好ましくは60~80wt%であり、特に好ましくは70~80wt%である。本発明において、負極活性材料粒子の含有量が70wt%以上である時に、前記固体負極複合材料は優れた柔軟性を依然として有することができる。
【0163】
いくつかの実施例において、前記無機負極活性材料粒子の粒径は2nm~20μmであり、好ましくは5nm~10μmであり、さらに好ましくは10nm~1μmであり、特に好ましくは20nm~1μmである。
【0164】
いくつかのよい実施案において、前記負極活性材料の材質は、炭素材料負極及び非炭素材料負極又は2種の組み合わせであってもよく、そのうち、非炭素材料はスズ基材料、ケイ素基材料、チタン基材料、酸化物負極材料、窒化物負極材料などであってもよく、且つそのうち、負極材料はリチウムイオン電池負極材料、ナトリウムイオン電池負極材料、マグネシウムイオン電池負極材料、アルミニウムイオン電池負極材料などの全ての二次電池に適用できる負極材料及び前駆体に適用することであってもよいが、これらには限らない。
【0165】
好ましくは、前記負極活性材料の材質はチタン酸リチウム、グラフェン、ナノシリコン、グラファイト及び酸化モリブデンのいずれか1種又は2種以上の組合せを含むが、これらには限らない。
【0166】
いくつかの実施例において、前記固体負極複合材料内に電子伝導体添加剤の含有量は0~50wt%であり、好ましくは0~20wt%であり、さらに好ましくは0~10wt%である。
【0167】
[全固体電池]
本発明に記載された全固体電池はリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、鉄イオン電池、亜鉛イオン電池などであってもよい。
【0168】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、全固体電池は正極、負極及び本発明に係る固体電解質を含み、そのうち、正極は正極集電体に正極活性材料と固体電解質複合体を
塗布することによって形成され、そのうち、固体電解質は有機高分子複合リチウム塩及び/又は低融点固体電解質であり、前記有機高分子複合リチウム塩はポリエチレンオキシド複合リチウム塩、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン複合リチウム塩、ポリオキシメチレン樹脂複合リチウム塩、ポリ塩化ビニル複合リチウム塩、ポリプロピレン複合リチウム塩又はポリカーボネート複合リチウム塩であり、前記低融点固体電解質は逆ペロブスカイト構造の固体電解質Li3-xBCであり、そのうち、Aはアルカリ土類金属元素であり、Bは酸素族元素であり、Cはハロゲン元素又はイオンクラスターである。負極は負極集電体に負極活性材料と固体電解質複合体を塗布することによって形成され、そのうち、固体電解質は有機高分子複合リチウム塩及び/又は低融点固体電解質であり、前記有機高分子複合リチウム塩はポリエチレンオキシド複合リチウム塩、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン複合リチウム塩、ポリオキシメチレン樹脂複合リチウム塩、ポリ塩化ビニル複合リチウム塩、ポリプロピレン複合リチウム塩又はポリカーボネート複合リチウム塩であり、前記低融点固体電解質は逆ペロブスカイト構造の固体電解質Li3-xBCであり、そのうち、Aはアルカリ土類金属元素であり、Bは酸素族元素であり、Cはハロゲン元素又はイオンクラスターである。正極活性材料と固体電解質複合体、負極活性材料と固体電解質複合体は従来技術の態様を参照して調製される。
【0169】
本発明の他の具体的な実施形態によれば、全固体電池は正極、負極及び本発明に係る固体電解質を含み、そのうち、正極は本発明の上記に調製された固体正極(即ち正極集電体に柔軟な膜状の固体正極複合材料を被覆することによって構成される)である。負極は負極集電体に負極活性材料と固体電解質複合体を塗布することによって構成される。そのうち、負極活性材料と固体電解質複合体は従来技術の態様を参照して実施できる。
【0170】
本発明のいくつかの具体的な更なる実施形態によれば、全固体電池は正極、負極及び本発明に係る固体電解質を含み、そのうち、正極は正極集電体に正極活性材料と固体電解質複合体を塗布し、負極は本発明の上記に調製された固体負極(即ち負極集電体に柔軟な膜状の固体負極複合材料を被覆することによって構成される)である。正極活性材料と固体電解質複合体は従来技術の態様を参照して調製される。
【0171】
本発明のさらに他の具体的な実施形態によれば、全固体電池は正極、負極及び本発明に係る固体電解質を含み、そのうち、正極は本発明の上記に調製された固体正極(即ち正極集電体に柔軟な膜状の固体正極複合材料を被覆することによって構成される)である。負極も本発明の上記に調製された固体負極(即ち負極集電体に柔軟な膜状の固体負極複合材料を被覆することによって構成される)である。
【0172】
以下に、本発明の技術案について明確的、全面的に説明し、明らかに、説明されている実施例は、本発明の実施例の全てではなく、単なる一部である。本発明の実施例に基づいて、当業者にとって、創造的な労働を出さないという前提で得られた全てのその他の実施例は、本発明の保護範囲内である。本発明の以下の実施例において未解明の実験手段又は試験手段は、特に説明がない場合、全ては本分野の従来の手段となる。
【0173】
実施例1-1
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を7gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。続いて15KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は15cmであり、ポリアクリロニトリル溶液の流速は15μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性ポリマー薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に5分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、ポリマー/リチウム塩の質量比が2:1である20μm厚の固体電解質が得られ、その密度は1.9g/cmであると測定された。
この固体電解質の比界面積は約1×10cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。固体電解質の電気伝導率は2.3×10-4S/cmであると測定された。固体電解質の電気化学インピーダンスを測定した結果を図2に示した。
【0174】
比較例1-1
1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)と過塩素酸リチウムを質量比2:1の割合で10gのDMF溶媒に溶解し、長時間撹拌して均一にさせ、その後ナイフコーティングで調製し、20μm厚の固体電解質薄膜を得た。
この固体電解質の比界面積は約500cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。固体電解質の電気伝導率は1.2×10-7S/cmであると測定された。
【0175】
実施例1-2
約1gの市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末を9gのDMFに溶解し、ポリメチルメタクリレート溶液を得た。続いて15KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は15cmであり、ポリメチルメタクリレート溶液の流速は15μL/minであった。このように約7時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性ポリマー薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム/エタノール溶液に5分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、ポリマー/リチウム塩の質量比が4:1である30μm厚の固体電解質が得られ、その密度は2.2g/cmであると測定された。
この固体電解質の比界面積は約3.5×10cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。固体電解質の電気伝導率は3.1×10-4S/cmであると測定された。固体電解質の電気化学インピーダンスを測定した結果を図3に示した。
【0176】
実施例1-3
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を9gのN-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。続いて15KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は15cmであり、ポリフッ化ビニリデン溶液の流速は15μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性ポリマー薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に5分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、ポリマー/リチウムイオン塩の質量比が3:1である5μm厚の固体電解質が得られ、その密度は1.2g/cmであると測定された。
この固体電解質の比界面積は約6×10cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。固体電解質の導電率は8.1×10-4S/cmであると測定された。
【0177】
実施例1-4
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を7gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。続いて15KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は15cmであり、ポリアクリロニトリル溶液の流速は15μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性ポリマー薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後種々の濃度の六フッ化リン酸リチウム/エタノール溶液に5分間ぞれぞれ浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、いくつかの異なるリチウム塩含有量(リチウム塩含有量はぞれぞれ10%、15%、20%、25%であった)の20μm厚の固体電解質を得た。
異なるリチウム塩濃度に対する固体電解質の電気伝導率を測定し、結果によって曲線を描き、図8に示した。図8から、イオン伝導率はリチウム塩濃度とともに極大値を示すが、リチウム塩濃度は電気伝導率を調節する重要な因子であることが分かった。
【0178】
実施例1-5
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を7gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。続いて50KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は30cmであり、ポリアクリロニトリル溶液の流速は15μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性固体電解質薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後種々の濃度の過塩素酸リチウム/エタノール溶液に1分間ぞれぞれ浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、いくつかの異なるリチウム塩含有量(リチウム塩含有量はぞれぞれ10%、15%、20%、25%であった)の20μm厚の固体電解質を得た。異なるリチウム塩濃度に対する固体電解質の電気伝導率を測定し、得られた電気伝導率分布は図8と類似した。
【0179】
実施例1-6
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約400nmである無機粒子(Li6.8LaZr1.8Ta0.212、LLZTO粉末)を約20gの約1wt%の界面活性剤(ポリビニルピロリドン)を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約70μL/minであり、このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性薄膜を剥ぐことができた。次に約1MPaで約10分間転造し、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に2分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、25μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、LLZTOの含有量は約75wt%に達し、リチウム塩含有量は4wt%であり、ポリマー含有量は21wt%、この固体電解質の電気伝導率は約10-3S/cmであった。
この固体電解質の比界面積は約8.0×10cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。
他の条件を一定に保ち、リチウム塩の含有量を変えて、異なるリチウム塩含有量の固体電解質を得て、電気伝導率を測定し、結果によって曲線を描き、図9に示した。
【0180】
比較例1-2(ナイフコーティングで製膜した)
従来技術は、質量比2:1の割合で1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)と過塩素酸リチウム、及び約3gの粒子の大きさが約400nmである無機固体セラミック粒子Li6.8LaZr1.8Ta0.212(LLZTO)粉末を10gのDMFに分散し、長時間撹拌して均一にさせ、その後ナイフコーティング方法を選択して固体電解質薄膜を調製し、得られた固体電解質薄膜における無機含有量は低く(約50wt%未満)、イオン伝導率は10-4S/cm未満であった。
【0181】
比較例1-3(ノズルサイドバイサイドとノズル鉛直)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約400nmである無機固体セラミック粒子Li6.8LaZr1.8Ta0.212(LLZTO)粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散してLLZTO分散液を得た。約25KVの高圧下で2つのノズルが相互に鉛直
となるように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルにリチウムイオン電解質分散液の流速は約100μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性リチウムイオン電解質薄膜を剥ぐことができ、そのうち、LLZTOの含有量が約60wt%であり、且つ均一性が劣っていた。
そのうち、ノズルサイドバイサイドとは、静電紡糸ノズルがローラーの軸方向に沿って走行して形成された平面と静電噴霧ノズルがローラーの軸方向に沿って走行して形成された平面は重合した。ノズル鉛直とは、静電紡糸ノズルがローラーの軸方向に沿って走行して形成された平面と静電噴霧ノズルがローラーの軸方向に沿って走行して形成された平面は相互に鉛直となった。
【0182】
比較例1-4(有機相と無機相が混合した後に同時紡糸をした)
約0.5gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末と約0.25gの過塩素酸リチウムを10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリルポリマー溶液を得た。続いて約1.25gの粒子の大きさが約400nmである無機固体セラミック粒子Li6.8LaZr1.8Ta0.212(LLZTO)粉末を上記ポリアクリロニトリルポリマー溶液に添加して撹拌分散して混合溶液を得た。約20KVの高圧下で紡糸し、ノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸ノズルに混合溶液の流速は約10μL/minであり、このように約20時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の薄膜を剥ぐことができ、その後約2MPaで約10分間転造した。そのうち、LLZTOの含有量は約60wt%に達するが、この固体電解質の比界面積は約7×10cm/cmであることを、本発明の上記に記載された比界面積計算方法に基づいて計算して得た。しかしながら、得られた固体電解質薄膜の緻密性及び導電率はいずれも劣っていた(10-4S/cm未満)。これは、この方法で調製された固体電解質薄膜に無機粒子が有機相の界面をある程度遮断したので、有機相が三次元的に連通する界面を形成しないあるいは三次元的に連通する界面の面積を著しく低下させた。
【0183】
実施例1-7(非イオン伝導体無機粒子‐酸化亜鉛)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約20nmである酸化亜鉛粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約1000μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性セラミック薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に10分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、30μmの柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、酸化亜鉛の含有量は約70wt%に達した。また、異なるリチウム塩含量の固体電解質薄膜を調製し、イオン伝導率の値を測定し、図10に示し、そのうち、最高のイオン伝導率は1.0×10-3S/cmであった。
【0184】
実施例1-8(非イオン伝導無機粒子‐ジルコニア)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約100nmであるジルコニア粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は
約5cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約50μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性セラミック薄膜を剥ぐことができた。次に約20MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に2分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、30μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、ジルコニアの含有量は約50wt%に達した。また、異なるリチウム塩含量の固体電解質薄膜を調製し、イオン伝導率の値を測定し、その電気伝導率の大きさ及びそれがリチウム塩の変化に従って変化するルールは図10と類似することを見出した。
【0185】
実施例1-9(非イオン伝導体無機粒子‐硫化カドミウム)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約100nmである硫化カドミウム粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約30μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性セラミック薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に2分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、ポリマー/リチウム塩の質量比が6:1である30μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、硫化カドミウムの含有量は約50wt%に達した。
【0186】
実施例1-10(非イオン伝導体無機粒子‐窒化ホウ素)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約100nmである窒化ホウ素粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約500μL/minであった。このように約6時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性セラミック薄膜を剥ぐことができた。次に約100KPaで約60分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に4分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、ポリマー/リチウム塩の質量比が5:1である20μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、窒化ホウ素の含有量は約70wt%に達した。
【0187】
実施例1-11
約1gの市販のポリビニルピロリドン(PVP)粉末を10gのエタノールに溶解し、ポリビニルピロリドン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが約300nmである無機粒子(LiPON型固体電解質粉末)を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むアセトンに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約30KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸ノズルにポリビニルピロリドン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約100μL/minであった。このように約3時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性リチウムイオン電解質薄膜を剥ぐことができた。次に約20MPaで約1分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に2分間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、ポリマー/リチウム塩の質量比が6:1である10μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得ら
れ、そのうち、LiPONの含有量は約75wt%に達し、電気伝導率は1.0×10-4S/cmであり、密度は3.1g/cmであると測定された。
【0188】
実施例1-12
約1gの市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリメチルメタクリレート溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約200nmである酸化マグネシウム粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含む水に添加して撹拌分散して酸化マグネシウム分散液を得た。約5KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約30cmであり、紡糸ノズルにポリメチルメタクリレート溶液の流速は約200μL/minであり、噴霧ノズルに酸化マグネシウム分散液の流速は約2μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性マグネシウムイオン電解質薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後マグネシウム塩溶液に24時間浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、ポリマー/マグネシウム塩の質量比が10:1である50μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、マグネシウムイオン伝導体の含有量は約76wt%に達し、電気伝導率は1.1×10-3S/cmであり、密度は3.0g/cmであった。
【0189】
実施例1-13
約1gの市販のポリテトラフルオロエチレン粉末を約10gのジメチルアセトアミドに溶解し、ポリテトラフルオロエチレン溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約10μmである無機粒子(アルミナ粉末)を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約50KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約25cmであり、紡糸ノズルにポリテトラフルオロエチレン溶液の流速は約7μL/minであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約100μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後アルミニウム塩溶液に2分間浸漬すれば、柔軟性固体電解質薄膜が得られ、そのうち、アルミナの含有量は約90wt%に達した。
【0190】
以上の実施例1-1、1-2、1-3及び比較例1-1から、本発明の電解質製作プロセスにより、多様な異なる固体電解質を作製するのに適しており、従来のナイフコーティング法よりも高い電気伝導率が得られることが分かった。実施例1-4及び1-5から、本発明の電解質プロセスで作製されたリチウムイオン固体電解質はリチウム塩の濃度を調整することにより電気伝導率の極大値を得ることができ、且つこの法則が異なるリチウム塩種に適用できることが分かった。以上の実施例1-6及び比較例1-2、1-3、1-4から、本発明の電解質製作プロセスが有機と無機の2種の固体電解質を複合することにより得られた固体電解質の導電率は従来のナイフコーティング法、及び無機物を有機繊維の中に複合して調製された有機無機複合電解質よりもはるかに高いことが分かった。以上の実施例1-7、1-8、1-9、1-10から、非導体型の無機セラミックを複合電解質とする無機相により得られた有機無機複合電解製膜の導電率はイオン型無機セラミックを含む複合電解質膜と類似していることが分かった。以上の実施例1-11から、本発明の電解質製作プロセスは他の有機物と無機セラミックを組み合わせた複合固体電解質の調製に適していることが分かった。以上の実施例1-12、1-13から、本発明の電解質製作プロセスはマグネシウムイオン固体電解質、アルミニウムイオン固体電解質のような多様な異なるタイプの電解質の調製に適していることが分かった。
【0191】
実施例1-5、1-6で得られた柔軟性固体電解質薄膜のイオン伝導性が高く(電気化学デバイス応用の要求に達する)、同時に特殊な機械的性質を持ち、極めて薄い膜を作った場合、依然として機械的完全性を保持でき、曲げが断裂せず、加工性がよかった。二次電
池応用で良好な電気化学的性能を示した。
【0192】
本発明実施例1-6で得られたPAN:LLZTO-CSE柔軟性固体電解質の性能を、以下の先行文献1~7で得られた電解質と比較した結果は、表1-1を参照した。本発明で得られた固体電解質は電気伝導率が高く、且つ電解質が極めて薄くできるので、例えば、5μmの場合に、この固体電解質の単位面積コンダクタンスは2400mS/cmであり、現在で報告した固体電解質の中で最高レベルにあった。
【0193】
文献1Kamaya.N,et al.,“A lithium superionic
conductor,”Nature Materials.10(2011)682-686、調製された硫化物Li10GeP12のイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0194】
文献2Kato.Y,et al.,“High-power all-solid-state batteries using sulfide superionic conductors,”Nature Energy.1(2016)16030、調製された硫化物Li9.54Si1.741.4411.710.3のイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0195】
文献3Liu.Z,et al.,“Anomalous high ionic conductivity of nanoporous β-LiPS,”Journal of the American Chemical Society.135(2013)975-978、調製された硫化物β-LiPSのイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0196】
文献4Murugan.R,Thangadurai. V,Weppner. W,“Fast lithium ion conduction in garnet-type LiLaZr12,”Angewandte Chemie International Edition.46(2007)7778-7781、調製された酸化物LiLaZr12のイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0197】
文献5Fu.K.K,et al.,“Flexible,solid-state,ion-conducting membrane with 3D garnet nanofiber networks for lithium batteries,”Proc Natl Acad Sci U S A.113(2016)7094-7099、調製された複合電解質FRPCのイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0198】
文献6Zhao.C.Z,et al.,“An anion-immobilized
composite electrolyte for dendrite-free
lithium metal anodes,”Proc Natl Acad Sci U S A.2017、調製された複合電解質PLLのイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0199】
文献7Zhang.X,et al.,“Synergistic coupling between Li6.75LaZr1.75Ta0.2512 and poly(vinylidene fluoride)induces high ionic conductivity, mechanical strength, and thermal stability of solid composite elec
trolytes,”Journal of the American Chemical Society.2017、調製された複合電解質PVDF/LLZTO-CPEのイオン伝導率、厚さ、単位面積コンダクタンス、柔軟性など性能パラメータは表1を参照した。
【0200】
【表1】
【0201】
また、本件発明者は実施例1-1から実施例1-13の形態までも参照し、本明細書における他の原料及び条件などについて試験し、且つイオン伝導性が高く(10-4S/cm以上)、機械的性質と電気化学的性能に優れた柔軟性固体電解質を同様に調製した。
【0202】
実施例1-14
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を7gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。続いて15KVの静電電圧で紡糸し、ノズルがローラー収集器からの距離は15cmであり、ポリアクリロニトリル溶液の流速は15μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー装置から一枚の柔軟性ポリマー薄膜を剥ぐことができた。そのうち、ポリアクリロニトリルの繊維径が約400nmであり。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去し、ポリマー/リチウム塩の質量比が5:1である20μm厚の固体電解質が得られ、固体電解質のイオン伝導率は5×10-4S/cmであると測定された。
【0203】
実施例1-15
実施例1-14の方法に基づき、異なる孔径の紡糸ノズルを採用して、ポリアクリロニトリル繊維の直径(異なる直径のポリアクリロニトリル繊維が調製した繊維膜のSEM写真を図26に示す)を改変することで、膜材が異なる比界面積を有する固体電解質(他の条件は完全に実施例14と同じである)を得て、且つ固体電解質のイオン伝導率を測定した結果を表1-2に示した。
【0204】
【表2】
表1-2から見ると、他の条件が変わらない時に、固体電解質のイオン伝導率は有機相の比界面積の増加につれて向上した。
【0205】
実施例1-16
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの粒子の大きさが約20nmである無機粒子(酸化亜鉛粉末)を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して無機粒子分散液を得た。約15KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、紡糸径が400nmであり、噴霧ノズルに無機粒子分散液の流速は約1000μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性セラミック薄膜を剥ぐことができた。次に約2MPaで約10分間転造し、その後1mol/Lの過塩素酸リチウム/エタノール溶液に浸漬し、次いで真空乾燥でその溶媒を除去すれば、ポリマー/リチウム塩の質量比が5:1であり、酸化亜鉛の含有量は約70wt%に達する30μm厚の柔軟性固体電解質薄膜が得られた。
【0206】
上記のほぼ同様の方法に基づいて、無機粒子の含有量を変えるだけで、異なる無機粒子含有量の柔軟性固体電解質薄膜を調製した。比界面積を計算し固体電解質のイオン伝導率を測定し、結果を表1-3に示した。
【0207】
【表3】
表1-3から見ると、異なる量の無機粒子を加えることにより、異なる比界面積の膜材が得られ、且つこれにより調製された固体電解質のイオン伝導率は有機相の比界面積の増加につれて増えた。
【0208】
また、本発明が提供した固体電解質の調製方法はリチウムイオン電池システムにも適用でき、Mg/Alなどのイオン電池システムにも適用でき、全固体電池の開発に良好な構想を提供した。同時に,本発明が提供した方法は、固体電解質薄膜の調製だけでなく、すべての無機材料薄膜の調製にも適用でき、普遍的な意味があった。
【0209】
実施例2-1
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるリン酸鉄リチウム粉末と0.14gの市販のアセチレンブラックを約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して正極活性材料とアセチレンブラックとの混合分散液を得た。約20KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約8cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約80μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性正極薄膜を剥ぐことができ、その後約100KPaで約60分間圧延しすれば、80μm厚の柔軟性固体正極薄膜が得られ、密度は2.5g/cmであった。そのうち、正極活性材料の含有量は約70wt%に達した。本実施例により調製された柔軟性固体正極薄膜の走査電子顕微鏡図は図11を参照し、そのマクロ写真が図12を参照する。また、スクシノニトリル-5wt%リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(SN-5wt%LITFSI)を加熱して溶融した後、この柔軟性正極薄膜中に1ドロップ滴下し、固体正極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:6とさせ、即ち固体正極複合材料を得た。その走査電子顕微鏡図は図13に参照し、これを全固体リチウムイオン電池に適用して良好な電気化学的性能を示し、そのサイクル性能を図14に示した。
【0210】
実施例2-2
約1gの市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10gのN-メチルピロリドンに溶解し、ポリテトラフルオロエチレン溶液を得た。約0.8gの市販の粒子の大きさが700nmであるリン酸鉄リチウム粉末と0.14gの市販の粒子の大きさが30~45nmであるケッチェンブラック、及び0.2gの粒子の大きさが300~450nmであるリチウムイオン高速導体タンタルドープリチウムランタンジルコニウム酸化物(LL
ZTO)を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約15KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸針にポリテトラフルオロエチレン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約100μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体正極薄膜を剥ぐことができた。この薄膜は、約1MPaで約1分間転造した後に厚さが100μmであり、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に約20分間浸漬し乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:3とさせ、即ち柔軟性固体正極複合材料を得た。そのイオン伝導率は1.0×10-3S/cmであり、密度は2.8g/cmであった。そのうち、リン酸鉄リチウム正極活性材料の含有量は約80wt%に達した。本実施例により調製された柔軟性固体正極複合材料の走査電子顕微鏡図は図15を参照し、その初回充放電曲線を図16に示した。
【0211】
実施例2-3
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gのニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn0.5)粉末と0.14gの市販のケッチェンブラックを約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約15KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約15cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約70μL/minであった。このように約16時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体正極薄膜を剥ぐことができ、約1MPaで約1分間転造した後に厚さは250μmであり、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:5とさせ、即ち固体正極複合材料を得た。そのイオン伝導率は1.0×10-4S/cmであり、密度は3.8g/cmであった。そのうち、ニッケルマンガン酸リチウムの含有量は約85wt%であった。本実施例により調製された柔軟性固体正極複合材料の走査電子顕微鏡図は図17を参照し、その初回充放電曲線を図18に示した。
【0212】
実施例2-4
約0.4gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN-メチルピロリドンに溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが5μmであるニッケルコバルトマンガン酸リチウムLi(NiCoMn)O粉末と約0.15gの市販の粒子の大きさが30~45nmであるアセチレンブラックを約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含むアセトンに添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約50KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約20cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約200μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約2μL/minであった。このように約15時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体正極薄膜を剥ぐことができた。その後約10MPaで約5分間転造し、即ち厚さが200μmである柔軟性固体正極薄膜は得られた。そのうち、無機正極活性材料粒子ニッケルコバルトマンガン酸リチウムの含有量は約95wt%に達した。また、1mol/Lのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド-エタノール溶液をこの柔軟性正極薄膜中に滴下し乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:4とさせ、即ち固体正極複合材料を得た。そのイオン伝導率は1.0×10-4S/cmであり、密度は4.3g/cmであった。その走査電子顕微鏡図は図19を参照した。
【0213】
実施例2-5
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのジメチルスルホキシド
に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約2gの市販の粒子の大きさが700nmであるマンガン酸リチウム粉末を約20gのイソプロパノールに添加して撹拌分散してマンガン酸リチウム分散液を得た。約5KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針にマンガン酸リチウム分散液の流速は約500μL/minであった。このように約30時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体正極薄膜を剥ぐことができた。この膜は、約20MPaで約1分間転造した後に厚さが300μmであり、その後リチウム塩溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:3とさせ、即ち柔軟性固体正極複合材料を得た。その密度は2.5g/cmであった。そのうち、マンガン酸リチウムの含有量は約60wt%であった。
【0214】
実施例2-6
約1gの市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末を約10gのアセトニトリルに溶解し、ポリメチルメタクリレート溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるコバルト酸リチウム粉末と約0.14gの市販の粒子の大きさが30~45nmであるアセチレンブラックを約20gの水に添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約25KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約30cmであり、紡糸針にポリメチルメタクリレート溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約30μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体正極薄膜を剥ぐことができた。続いて約100KPaで約60分間転造した後に厚さは30μmであり、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:5とさせ、即ち柔軟性固体正極複合材料は得られた。そのイオン伝導率は1.0×10-4S/cmであり、密度は1.9g/cmであった。そのうち、コバルト酸リチウムの含有量は約30wt%に達した。
【0215】
実施例2-7
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるコバルト酸ナトリウム(Na0.5CoO)粉末を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して正極活性材料の分散液を得た。約15KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約6cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約2μL/minであり、噴霧針に正極活性材料の分散液の流速は約200μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性薄膜を剥ぐことができ、その後約5MPaで約5分間転造し、即ち厚さが500μmである柔軟性固体電解質が得られた。そのうち、正極活性材料の含有量は50wt%に達した。次にこの柔軟性正極薄膜中に適量の0.5Mの過塩素酸ナトリウム-エタノール溶液を滴下し、且つ真空加熱状態でエタノール溶液を除去し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:10とさせ、即ち固体正極複合材料は得られた。そのイオン伝導率は1.0×10-4S/cmであり、密度は2.6g/cmであった。
【0216】
比較例2-1(サイドバイサイドと互いに鉛直する)
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが0.5μmであるニッケルマンガン酸リチウムを約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散してニッケルマンガン酸リチウム分散液を得た。約25KVの高圧下で2つのノズルは、互いに鉛直するように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸と噴霧の2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約10cmであり、
紡糸ノズルにポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルにニッケルマンガン酸リチウム分散液の流速は約70μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性正極薄膜を剥ぐことができた。そのうち、ニッケルマンガン酸リチウムの含有量は約60wt%であった。本比較例により調製された薄膜の走査電子顕微鏡図は図20を参照し、図20から、ニッケルマンガン酸リチウムの分布が非常に均一ではなかった。
【0217】
比較例2-2(ポリマーと正極活性材料が複合した後に一緒に紡糸した)
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と1gの市販の粒子の大きさが0.5μmであるニッケルマンガン酸リチウム粉末をN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散し、長時間撹拌して均一にさせた。均一に混合した溶液を約15KVの高圧下で紡糸した。紡糸ノズルがローラー受け装置からの距離は約8cmであり、紡糸ノズルに正極混合溶液の流速は約15μL/minであった。このように約20時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の薄膜を剥ぐことができた。その後約1000KPaで約10分間転造し、無機粒子固形分は約50%であった。
【0218】
比較例2-3(ナイフコーティング)
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と1gの市販の粒子の大きさが0.5μmであるニッケルマンガン酸リチウム粉末をN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散し、長時間撹拌して均一にさせた。その後ナイフコーティング又は流延の方法を選択することにより正極薄膜を調製した。この方法が調製した正極薄膜は正極材料の分散が不均一であり、極片電気伝導率が低かった。
【0219】
実施例2-1~2-7並びに比較例2-1~2-3から、本発明の上述の技術案により得られた柔軟性固体正極複合材料のイオン伝導性が高く(電気化学デバイス応用の要求に達する)、同時に良好な機械的性質を有し、曲げが断裂せず、加工性がよく、二次電池応用でよい電気化学的性能を示すことが分かった。
【0220】
また、本件発明者は実施例2-1から実施例2-7の形態までも参照し、本明細書における他の原料と条件などについて試験し、且つイオン伝導性が高く、機械的性質と電気化学的性能に優れた柔軟性固体電解質を同様に調製した。
【0221】
実施例3-1
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販のナノシリコン粉末と0.14gの市販のアセチレンブラックを約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散してナノシリコンとアセチレンブラックとの混合分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約70μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができ、その後約100KPaで約60分間転造した。また、スクシノニトリル-5wt%リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(SN-5wt%LITFSI)を加熱して溶融した後、この柔軟性負極薄膜中に1ドロップ滴下し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:6とさせ、即ち柔軟性固体負極複合材料は得られた。そのうち、ナノシリコンの含有量は60wt%である。本実施例により調製された固体負極複合材料の走査電子顕微鏡図は図21を参照し、そのマクロ写真は図22を参照した。その厚さは60μmであり、密度は1.3g/cmであると測定された。また、本実施例の柔軟性固体負極複合材料を全固体リチウムイオン電池に適用して良好な電気化学的性能も示した。
【0222】
実施例3-2
約1gの市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を10gのエタノールに溶解し、ポリテトラフルオロエチレン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが400nmである酸化マンガン粉末と約0.14gの市販のアセチレンブラックを約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して負極炭素材料混合分散液を得た。約20KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸針にポリテトラフルオロエチレン溶液の流速は約5μL/minであり、噴霧針に負極炭素材料混合分散液の流速は約250μL/minであった。このように約30時間働いた後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約500KPaで約10分間転造し、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:5とさせ、即ち250μm厚の柔軟性固体負極複合材料は得られた。そのイオン伝導率は約1.0×10-4S/cmであり、密度は3.5g/cmであると測定された。そのうち、負極酸化マンガンの含有量は約85wt%に達した。本実施例により調製された柔軟性固体負極複合材料の走査電子顕微鏡図は図23を参照した。
【0223】
実施例3-3
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるチタン酸リチウム粉末と約0.1gの市販のグラフェンを約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して負極活性材料のエタノール分散液を得た。約15KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約8cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に負極活性材料のエタノール分散液の流速は約80μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約100KPaで約1分間転造し、その後過塩素酸リチウム/エタノール溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、電解質塩と有機繊維材料との質量比を1:3とさせ、即ち厚さが50μmである柔軟性固体負極複合材料は得られた。その密度は3.2g/cmであり、そのうち、負極活性材料の含有量は約95wt%に達すると測定された。
【0224】
実施例3-4
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販の直径が0.2μmである酸化モリブデン粉末(MoO)を約20gの約1wt%の界面活性剤を含むエタノールに添加して撹拌分散して酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液を得た。約20KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液の流速は約100μL/minであった。このように約20時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができる。続いて約10MPaで約5分間転造し、また、1mol/Lのリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド-エタノール溶液をこの柔軟性負極薄膜中に滴下し乾燥し、即ち厚さが150μmである固体負極複合材料は得られた。その密度は3.7g/cmであると測定された。そのうち、酸化モリブデンの含有量は約75wt%であり、固体負極内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:10であった。
【0225】
実施例3-5
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホル
ムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販の直径が0.3μmである酸化モリブデン粉末(MoO)、及び0.2gの粒子の大きさが300nmであるリチウムイオン高速導体タンタルドープリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZTO)を約20gのエタノールに添加して撹拌分散して酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液を得た。約50KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液の流速は約50μL/minであった。このように約10時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約400KPaで約1分間転造し、その後リチウム塩溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが80μmである固体負極複合材料が得られた。そのうち、酸化モリブデンの含有量は約60wt%であり、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:4であった。
【0226】
実施例3-6
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN-メチルピロリドンに溶解し、N-メチルピロリドン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるチタン酸リチウム粉末と約0.14gの市販のグラファイトを約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含むアセトンに添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約30KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約20cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約200μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約2μL/minであった。このように約35時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約200KPaで約20分間転造し、その後リチウム塩溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが300μmである柔軟性固体負極複合材料は得られた。そのうち、負極活性材料の含有量は約70wt%に達し、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:2であった。
【0227】
実施例3-7
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのジメチルスルホキシドに溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販のナノシリコン粉末を約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含むイソプロパノールに添加して撹拌分散してナノシリコン分散液を得た。約5KVの高圧下でサイドバイサイド平行のように同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約5cmであり、紡糸針にポリアクリロニトリル溶液の流速は約5μL/minであり、噴霧針にナノシリコン分散液の流速は約500μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約100KPaで約60分間転造し、その後リチウム塩溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが60μmである柔軟性固体負極複合材料は得られた。そのうち、ナノシリコンの含有量は約80wt%であり、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:3であった。この固体負極複合材料の走査電子顕微鏡図は図25に示した。
【0228】
実施例3-8
約1gの市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)粉末を約10gのエタノールに溶解し、ポリメチルメタクリレート溶液を得た。約1gの市販の直径が0.3μmである酸化モリブデン粉末を約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含む水に添加して撹拌分散して酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液を得た。約25KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約30cmであり、紡糸針にポリメチルメタクリレート溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液の流速は約30μL/minであった。このように約
5時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができった。続いて約800KPaで約25分間転造し、その後リチウム塩に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが30μmである固体負極複合材料は得られた。そのうち、酸化モリブデンの含有量は約50wt%であり、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:6であった。
【0229】
実施例3-9
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN-メチルピロリドンに溶解し、N-メチルピロリドン溶液を得た。約1gの市販の粒子の大きさが700nmであるチタン酸リチウム粉末と約0.14gの市販のグラファイトを約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含むアセトンに添加して撹拌分散して混合分散液を得た。約30KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約20cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に混合分散液の流速は約100μL/minである。このように約35時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約200KPaで約20分間転造し、その後ナトリウム塩溶液に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが500μmである柔軟性固体負極複合材料は得られた。そのうち、負極活性材料の含有量は約70wt%に達し、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:3であった。
【0230】
実施例3-10
約1gの市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)を約10gのエタノールに溶解し、ポリメチルメタクリレート溶液を得た。約1gの市販の直径が0.3μmである酸化モリブデン粉末を約20gの約0.1wt%の界面活性剤を含む水に添加して撹拌分散して酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液を得た。約25KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約30cmであり、紡糸針にポリメチルメタクリレート溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針に酸化モリブデン負極活性物質前駆体分散液の流速は約30μL/minであった。このように約5時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性固体負極薄膜を剥ぐことができた。続いて約800KPaで約25分間転造し、その後ナトリウム塩に一定時間浸漬してから乾燥し、即ち厚さが30μmである固体負極複合材料は得られた。そのうち、酸化モリブデンの含有量は約50wt%であり、固体負極複合材料内の電解質塩と有機繊維材料との質量比は1:6であった。
【0231】
比較例3-1(ローラーに負電圧がなかった)
約1gの市販のポリフッ化ビニリデン(PVDF)粉末を約10gのN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、ポリフッ化ビニリデン溶液を得た。約1gの市販のチタン酸リチウム粉末を約20gのエタノールに添加して撹拌分散してチタン酸リチウム分散液を得た。約15KVの高圧下で同時に紡糸と噴霧を行い、従来の受け面が負電荷発生装置を持っているローラーと違い、この比較例におけるローラーが接地した。紡糸及び噴霧針はローラー受け装置からの距離は約10cmであり、紡糸針にポリフッ化ビニリデン溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧針にチタン酸リチウム分散液の流速は約70μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性負極薄膜を剥ぐことができた。そのうち、負極材料チタン酸リチウムの含有量は75wt%に達し、紡糸過程では、フィラメントが飛び乱し、且つ最終的な膜の均一性が劣っていた。本比較例により調製された柔軟性負極薄膜の走査電子顕微鏡図は図24に示した。
【0232】
比較例3-2(サイドバイサイドと互いに鉛直する)
約1gの市販のポリアクリロニトリル(PAN)粉末を約10gのN、N-ジメチルホル
ムアミド(DMF)に溶解し、ポリアクリロニトリル溶液を得た。約1gの市販のナノシリコン粉末を約20gのエタノールに添加して撹拌分散してナノシリコン分散液を得た。約15KVの高圧下で2つのノズルは、互いに鉛直するように同時に紡糸と噴霧を行い、2つのノズルがローラー受け装置からの距離は約8cmであり、紡糸ノズルにポリアクリロニトリル溶液の流速は約10μL/minであり、噴霧ノズルにナノシリコン分散液の流速は約70μL/minであった。このように約8時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の柔軟性負極薄膜を剥ぐことができた。そのうち、ナノシリコンの含有量は約60wt%であり、均一性が劣っていた。
【0233】
比較例3-3(ポリマーと負極材料が複合した後に一緒に紡糸した)
約1gの市販のポリエチレンオキシド(PEO)を約10gのエタノールに溶解し、ポリエチレンオキシド溶液を得た。次に約2gの市販の粒子の大きさが700nmであるチタン酸リチウム粉末と約0.14gの市販のグラフェンを上記ポリエチレンオキシド溶液に添加して撹拌分散して負極混合溶液を得た。約15KVの高圧下で紡糸を行い、ノズルがローラー受け装置からの距離は約8cmであり、紡糸ノズルに負極混合溶液の流速は約10μL/minであった。このように約20時間作動した後、即ちローラー受け装置から一枚の薄膜を剥ぐことができた。続いて約100KPaで約10分間転造し、その後リチウム塩に2分間浸漬し、即ち厚さが140μmである柔軟性チタン酸リチウム薄膜は得られた。そのうち、無機負極粒子の含有量は約66wt%に達したが、膜の緻密性及び導電率はいずれも劣っており、且つこの比較例の生産プロセスは収率が低かった。
【0234】
比較例3-4(ナイフコーティング)
約1gの市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、約1gの市販の粒子の大きさが400nmである酸化マンガン粉末と約0.14gの市販のアセチレンブラック、及び適量の過塩素酸リチウムをN、N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散して、長時間撹拌して均一にさせた。その後ナイフコーティング又は流延の方法を選択することにより負極薄膜を調製し、無機粒子固形分が約50%である薄膜は得られた。これらの方法が調製した負極薄膜は無機負極粒子の分布が不均一であり、且つ電気伝導率が低かった。
【0235】
実施例3-1~3-10から、本発明の上述の技術案により得られた柔軟性固体負極複合材料のイオン伝導性が高く(電気化学デバイス応用の要求に達する)、同時に良好な機械的性質を有し、加工性がよく、二次電池応用でよい電気化学的性能を示すことが分かった
【0236】
また、本件発明者は実施例3-1から実施例3-10の形態までも参照し、本明細書における他の原料と条件などについて試験し、且つイオン伝導性が高く、機械的性質と電気化学的性能に優れた柔軟性固体負極複合材料を同様に調製した。
【0237】
実施例4-1
本実施例は全固体リチウム電池を提供し、それは正極、負極及び柔軟性固体電解質薄膜を含んだ。そのうち、正極は正極集電体に正極活性材料と固体電解質複合体を塗布することにより構成され、負極は負極集電体に負極活性材料と固体電解質複合体を塗布するにより構成された。正極活性材料と固体電解質複合体、負極活性材料と固体電解質複合体は従来技術の態様を参照して調製された。そのうち、柔軟性固体電解質薄膜は実施例1-6を参照して調製された固体電解質であった。
正極活性材料と固体電解質複合体とのコーティングの厚さは50~100μmであり、組成及び塗布過程は以下のとおりであった。正極活性物質、固体電解質、導電性カーボンブラック、接着剤を6:3:0.5:0.5の質量比で溶媒に均一に混合し、続いてそれを集流体に塗布し、その後高温で加熱して溶媒が揮発し、正極材料は形成された。そのうち、固体電解質はポリエチレンオキシド複合リチウム塩であった。
負極活性材料と固体電解質複合体とのコーティングの厚さは50~100μmであり、組
成及び塗布過程は以下のとおりであった。負極活性物質、固体電解質、導電性カーボンブラック、接着剤を6:3:0.5:0.5の質量比で溶媒に均一に混合し、続いてそれを集流体に塗布し、その後高温で加熱して溶媒が揮発し、負極材料は形成された。そのうち、固体電解質はポリエチレンオキシド複合リチウム塩であった。
調製された全固体リチウム電池は良好な電気化学的性能と機械的性質を有した。
【0238】
実施例4-2
本実施例は全固体電池を提供し、それは正極、負極及び固体電解質を含んだ。そのうち、正極は正極集電体に実施例2-1の柔軟な膜状固体正極複合材料を被覆することにより構成され、負極は負極集電体に実施例3-1の柔軟な膜状固体負極複合材料を被覆することにより構成された。固体電解質は実施例1-1が調製した固体電解質であった。調製された全固体リチウム電池は良好な電気化学的性能と機械的性質を有した。
【0239】
上述した実施例の各技術特徴は任意に組み合わせることができるが、簡潔に説明するために上述した実施例の各技術特徴の可能な組合せについてすべて説明するわけではないと説明すべきである。しかしながら、これらの技術特徴の組合せに矛盾がなければ、本明細書に記載の範囲と考えられるべきである。
【0240】
上述した実施例は本発明の幾つかの実施形態を示したものにすぎず、その説明が具体的で詳細であったとしても、これによって発明特許の範囲への限定と理解されてはならない。指摘すべきものとして、当業者にとっては、本発明の構想を逸脱しない前提で、若干の変形及び改良が可能である。これらの変形及び改良は、いずれも本発明の保護範囲に属する。それゆえ、本発明特許の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に従うべきである。
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