(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】遷移金属複合体を含む酸化-還元高分子およびこれを利用した電気化学的バイオセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220602BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20220602BHJP
C08F 126/06 20060101ALI20220602BHJP
C08F 8/32 20060101ALI20220602BHJP
C08L 39/08 20060101ALI20220602BHJP
【FI】
G01N27/416 338
G01N27/327 353B
G01N27/327 353R
G01N27/327 353T
C08F126/06
C08F8/32
C08L39/08
(21)【出願番号】P 2021514521
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2019006000
(87)【国際公開番号】W WO2020059997
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0111633
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヒュンソ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ボナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,イン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】グワク,スミン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒュンヒ
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-514924(JP,A)
【文献】特表2003-514823(JP,A)
【文献】特表2006-509837(JP,A)
【文献】特表2020-526748(JP,A)
【文献】特表2010-531976(JP,A)
【文献】特表平07-506674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0294307(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0045147(US,A1)
【文献】Sensors and Actuators B Chemical,2006年,113,p.590-598
【文献】Bioconjugate Chemistry,2011年,22,p.436-444
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/4186
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08L 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
C07D 213/00-213/90
C07D 401/00-421/14
C07F 9/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1~4のうちのいずれか1つの構造を有する、電気化学的バイオセンサの電子伝達媒体用酸化-還元重合体:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
上記式中、
MはOs、Rh、Ru、Ir、FeおよびCoからなる群から選択される1種の遷移金属であり;
上記式中、L
1およびL
2は、互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
L
3およびL
4は、それぞれ互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
L
5およびL
6は、それぞれ互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
前記R
1、R
2およびR’
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群から選択され、
前記R
3~R
20は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~40のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~50のアリール基、置換または非置換の炭素数3~50のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールアミノ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換または非置換の炭素数1~50のアリールアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群から選択され;
前記Adは、第1級および第2級アミン基、アンモニウム基、ハロゲン基、エポキシ基、アジド基、アクリレート基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、イソシアネート、アルコール基およびシラン基からなる群から選択され;
前記Xは対イオン(counter ion)であり;
前記aは1~15の整数であり;
前記bは1~15の整数であり;
前記cは1~15の整数であり;
前記mは10~600の整数であり;
前記nは10~600の整数であり;
前記oは0~600の整数である。
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、下記化学式8または化学式9の構造を有する、請求項1に記載の電子伝達媒体用酸化-還元重合体:
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
【請求項3】
(i)ポリビニルピリジンまたはポリイミダゾールを官能基化させてポリビニルピリジン前駆体またはポリビニルイミダゾール前駆体を製造する段階と;
(ii)遷移金属複合体を官能基化させる段階と;
(iii)前記段階(i)で製造されたポリビニルピリジン前駆体またはポリビニルイミダゾール前駆体、および前記段階(ii)で製造された官能基化された遷移金属複合体をクリック反応によって反応させて請求項1に記載の酸化-還元重合体を製造する段階とを含む、酸化-還元重合体の製造方法:
【請求項4】
前記段階(iii)のクリック反応は、アジド-アルキンヒュスゲン環化付加反応(Azide-alkyne Huisgen cycloaddition)またはチオール-エン反応(Thiol-ene reaction)である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素;および
請求項1に記載の酸化-還元重合体を含む、電気化学的バイオセンサ用組成物。
【請求項6】
前記酵素は、
脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、およびエステル化酵素(esterase)からなる群から選択される1種以上の酸化還元酵素;または
脱水素酵素、酸化酵素、およびエステル化酵素からなる群から選択される1種以上の酸化還元酵素とフラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD)、およびピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)からなる群から選択される1種以上の補助因子を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(flavin adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase、FAD-GDH)、およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(nicotinamide adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase)からなる群から選択される1種以上である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤、水溶性高分子および粘増剤からなる群から選択される1種以上の添加剤および架橋剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の酸化-還元重合体を含む、電気化学的バイオセンサ。
【請求項10】
請求項1に記載の酸化-還元重合体および酸化還元酵素を含むセンシング膜(sensing layer)、拡散膜(diffusion layer)、保護膜(protection layer)、2種以上の電極、絶縁体(insulator)および基板をさらに含む、請求項9に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項11】
前記電極は、作動電極および対向電極からなる2つの電極であるか、または作動電極、対向電極および基準電極からなる3つの電極である、請求項10に記載の電気化学的バイオセンサ。
【請求項12】
前記電気化学的バイオセンサは血糖センサである、請求項9に記載の電気化学的バイオセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年9月18日付の韓国特許出願第10-2018-0111633号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、既存に比べて簡易な工程で製造が可能であり、遷移金属複合体の固定化率が増加し、官能基またはリンカーの導入が容易である、遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、医療分野から環境および食品分野まで目標分析物の定量、定性分析のためにバイオセンサの開発に対する関心が日増しに高まっている。特に酵素を利用したバイオセンサは、生物体の機能物質または微生物など生物体が特定の物質に鋭敏に反応する生物の感知機能を利用して試料に含有されている化学物質を選択的に検出計測するのに使用する化学センサで主に血糖センサなどの医療計測用途として開発され、その他の食品工学や環境計測分野の応用においても研究が活発に行われている。
【0004】
糖尿病の管理にあたって、血糖の定期的な測定は非常に重要であり、そこで、携帯用計測器を利用して容易に血糖を測定できるように多様な血糖測定機が製作されている。このようなバイオセンサの作動原理は光学的方法または電気化学的方法に基づいて、このような電気化学的バイオセンサは、従来の光学的方法によるバイオセンサとは異なり酸素による影響を減らすことができ、試料が混濁していても試料を別途前処理なく使用可能であるという長所を有する。したがって、正確性と精密性を備えた多様な種類の電気化学的バイオセンサが広く使用されている。
【0005】
現在の商用化された電気化学的血糖センサは主に酵素電極を利用するものであって、より具体的には、電気的信号を変換できる電極上にグルコース酸化酵素を化学的または物理的方法で固定させた構造を有する。このような電気化学的血糖センサは、血液などの分析物中のグルコースが酵素によって酸化して発生する電子を電極に伝達して生成される電流を測定することで、分析物中のグルコース濃度を測定する原理によるものである。酵素電極を利用するバイオセンサの場合、酵素の活性中心との距離が遠すぎるため、基質が酸化して発生する電子を直接的に電極に伝達することが容易でない問題が発生する。したがって、このような電子伝達反応を容易に行うために酸化還元媒体、すなわち電子伝達媒体が必須に求められる。したがって、血糖を測定する電気化学的バイオセンサの特性を最も大きく左右するのは、使用する酵素の種類および電子伝達媒体の特性である。
【0006】
採血型血糖値センサの開発推移は、血液(静脈血、毛細管血など)により異なる酸素分圧(pO2)差に応じた測定値の変化を遮断するために血液中のグルコースとの酵素反応で酸素が参加するGOXの代わりに酵素反応で酸素を排除したGDH使用に転換されており、電子伝達媒体の場合湿度に応じた安定性に敏感なferricyanideの代わりに温度および湿度に応じた安定性に優れたキノン誘導体(Phenanthroline quinone、Quineonediimineなど)などの有機化合物とRu complex(ruthenium hexamineなど)やオスミウム錯体などの有機金属化合物に代替されている。
【0007】
最も普遍的に使用される電子伝達媒体としてはフェリシアン化カリウム[K3Fe(CN)6]があるが、価格が低廉で反応性が良くてFAD-GOX、PQQ-GDHまたはFAD-GDHを利用したセンサ全てに有用である。しかし、該電子伝達媒体を利用したセンサは、血液中に存在する尿酸(uric acid)やゲンチジン酸(gentisic acid)などの妨害物質による測定誤差が発生し、温度と湿度によって変質しやすくなるので製造および保管に格別に注意しなければならないし、長時間保管の場合は、ベース電流の変化で低濃度のグルコースを正確に検出することが難しい。
【0008】
ヘキサアンミンルテニウムクロリド[Ru(NH3)6Cl3]は、フェリシアン化物に比べて酸化還元に対する安定性が高くて、該電子伝達媒体を利用したバイオセンサは製造および保管が容易であり、長時間保管の場合でもベース電流の変化が小さくて安定性の高い長所を有するが、FAD-GDHと使用するには互いに反応性が合わず、商業的に有用なセンサを製作することが難しいという短所がある。
【0009】
また、このようなバイオセンサを使用するにあたり、少量の試料で速く正確な測定値を得ることは、使用者の便利さが極大化されるという点で非常に重要な問題である。
【0010】
したがって、このような従来の電子伝達媒体の短所および測定時間の短縮を達成できる新たな電子伝達媒体の開発は依然として要求されているのが実情である。
【0011】
一方、血糖を持続的に観察して糖尿病などの疾患を管理するために持続血糖モニタリング(continuous glucose monitoring;CGM)システムを利用するが、指先から血液を採取する既存の酵素センサは、採血時に針によって相当な苦痛を誘発するので測定頻度が制限されているため、このようなCGMに利用できない。このような問題を解消するために、最近では身体に付着することができて浸湿を最小化する改善したバージョンの酵素センサが開発されてきている。このような持続血糖モニタリング酵素センサの場合、体内へセンサの一部が入るため、上記のように遷移金属などを含む電子伝達媒体が体に吸収されて毒性および副作用が発生しないようにポリビニルピリジンやポリビニルイミダゾールなどの重合体の主鎖で固定して、電子伝達媒体の体内での流出による問題を防止する。
【0012】
このように、電子伝達媒体が連結された酸化-還元高分子の場合、従来は主に高分子主骨格に遷移金属複合体を効率的に固定するために、活性エステル(active ester)であるN-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinimide:NHS)を用いた共役反応を主として使用した。しかし、このような既存の合成方法による場合、最終的に製造される酸化-還元高分子に合成されるまで非常に複雑な段階を経なければならないし、NHSを用いた共役反応の進行時に加水分解による遷移金属複合体の固定化効率が実際に高くなく、高分子の主骨格に他の種類のリンカーや官能基を導入しにくいという問題があるため、このような問題を解決できるバイオセンサ用酸化-還元高分子の開発に対する要求が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存に比べて簡易な工程で製造が可能であり、遷移金属複合体の固定化率が増加し、官能基またはリンカーの導入が容易である、遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体およびその製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の目的は、遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体を含む電気化学的バイオセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、銅触媒および熱を用いたアジド-アルキンの環化付加反応と光を利用したチオール-エン反応などのクリック反応を利用して合成が簡単であり、向上した遷移金属複合体の固定化率を示し、追加的官能基またはリンカーの導入が容易である、遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体および電気化学的バイオセンサ、例えば血糖センサを提供する。
【0016】
本発明による前記遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体は、ポリビニルピリジン(Poly(vinylpyridine):PVP)あるいはポリビニルイミダゾール(Poly(vinylimidazole):PVI)などの重合体骨格(backbone)とオスミウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、鉄、コバルトなどの遷移金属およびその配位子を含む遷移金属複合体、並びに前記重合体骨格と遷移金属複合体を連結するリンカー構造を含むものであり、具体的には、下記化学式1~4の構造を有する:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
上記式中、
MはOs、Rh、Ru、Ir、FeおよびCoからなる群から選択される1種の遷移金属であり;
上記式中、L
1およびL
2は、互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
L
3およびL
4は、それぞれ互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
L
5およびL
6は、それぞれ互いに合わせて下記化学式5~7から選択される二座配位子を形成し;
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
前記R
1、R
2およびR’
1は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群から選択され、
前記R
3~R
20は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~40のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~50のアリール基、置換または非置換の炭素数3~50のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールアミノ基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素数6~30のアリールシリル基、置換または非置換の炭素数1~50のアリールアルキルアミノ基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基、シアノ基、ハロゲン基、重水素および水素からなる群から選択され;
前記Adは、第1級および第2級アミン基、アンモニウム基、ハロゲン基、エポキシ基、アジド基、アクリレート基、アルケニル基、アルキニル基、チオール基、イソシアネート、アルコール基およびシラン基からなる群から選択され;
前記Xは対イオン(counter ion)であり;
前記aは1~15の整数であり;
前記bは1~15の整数であり;
前記cは1~15の整数であり;
前記mは10~600の整数であり;
前記nは10~600の整数であり;
前記oは0~600の整数である。
【0017】
本発明で提供される遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体は特有のリンカー構造を有しているため、既存に比べて合成工程が減少して簡易な工程で製造が可能であり、遷移金属複合体の固定化率が増加し、官能基またはリンカーの導入が容易であるという長所を有する。また、本発明で提供される遷移金属複合体を含む酸化-還元重合体は3種の二座配位子を有することが好ましい。したがって、このような酸化-還元重合体を含む電気化学的バイオセンサ、好ましくは、持続血糖モニタリングセンサは製造時に経済的で、遷移金属による毒性および副作用が顕著に減少し、製造時に収率が高いという長所がある。
【0018】
本発明の一態様は、少なくとも二つの電極を備えた基板に、前記化学式1~4を有する酸化-還元重合体に液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素を塗布した後、乾燥して製作した電気化学的バイオセンサを提供する。前記電極の例としては、作動電極(working electrode)と対向電極(counter electrode)であり、例えば、酵素と遷移金属重合体は作動電極に塗布されるか、またはそれに近接して位置し得る。
【0019】
具体的には、電気化学的バイオセンサの適用可能な例として、グルコースを測定するためのバイオセンサを例示しているが、本発明の試薬組成物に含まれる酵素の種類を異にすることで、コレステロール、乳酸、クレアチニン、過酸化水素、アルコール、アミノ酸、グルタミン酸などの多様な物質の定量のためのバイオセンサに適用することができる。
【0020】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
好ましくは、本発明による前記化学式1~4の酸化-還元重合体では、前記Xの対イオンは陰イオン、例えばF、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸、または陽イオン(好ましくは1価の陽イオン)、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、テトラアルキルアンモニウムおよびアンモニウムから選択される。さらに好ましくは、前記Xは塩化合物である。
好ましくは、前記aは2~10の整数である。
好ましくは、前記bは2~10の整数である。
好ましくは、前記cは2~10の整数である。
好ましくは、前記mは15~550の整数である。
好ましくは、前記nは15~550の整数である。
好ましくは、前記oは0~300の整数である。
【0022】
好ましくは、本発明による酸化-還元重合媒体は下記化学式8または化学式9の構造を有し得るが、これらに限定されるものではない。
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
【0023】
本発明による化学式1~4から選択される構造を有する酸化-還元重合体中の遷移金属複合体は、具体的にはオスミウム複合体、例えば3価オスミウム複合体と2価オスミウム複合体を含むことができ、好ましくは、酸化状態の化合物(3価Os化合物)であり得る。本発明の酸化処理に使用される酸化剤は特に限定されず、具体的な例としては、NaOCl、H2O2、O2、O3、PbO2、MnO2、KMnO4、ClO2、F2、Cl2、H2CrO4、N2O、Ag2O、OsO4、H2S2O8、硝酸二アンモニウムセリウム(CAN:Ceric ammonium nitrate)、クロロクロム酸ピリジニウム(pyridinium chlorochromate)、および2,2’-ジピリジルジスルフィド(2,2’-Dipyridyldisulfide)からなる群から選択される1種以上であり得る。また、遷移金属複合体として酸化状態と還元状態の化合物を含む混合物の場合、酸化処理して酸化状態の遷移金属複合体または酸化状態の遷移金属複合体の塩化合物を提供することができる。
【0024】
本発明による遷移金属複合体は、適当な対イオンおよびイオンを有している塩形態であり得、塩化合物は水あるいは他の水溶液あるいは有機溶媒に高い溶解度を有するのでさらに好ましい。前記塩化合物中でF-、Cl-およびBr-などの小さな対陰イオンからなる場合、水あるいは多様な水溶液によく溶ける傾向があり、I-、ヘキサフルオロリン酸塩(PF6
-)およびテトラフルオロホウ酸(BF4
-)などの大きな対陰イオンからなる群は有機溶媒によく溶ける傾向を有している。したがって、対陰イオンはF、Cl、BrおよびIからなる群から選択されるハロゲン化合物、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸、または対陽イオンとしてLi塩、Na塩、K塩、Rb塩、Cs塩、Fr塩、テトラアルキルアンモニウムおよびアンモニウムからなる群から選択される1種以上の塩化合物であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0025】
具体的な実施形態において、本発明による酸化-還元重合体は、クリック反応(Click reaction)によって重合体骨格と遷移金属複合体を反応させて合成することができる。具体的には、本発明による酸化-還元重合体中の化学式1で表される化合物は、下記のようなアジド-アルキンヒュスゲン環化付加反応(Azide-alkyne Huisgen cycloaddition)により製造することができ、これを反応式1で表されるが、これに限定されるものではない。
[反応式1]
【化10】
【0026】
また、前記化学式2の化合物は、次のようなチオール-エン反応(Thiol-ene reaction)によって製造することができ、これを反応式2により示すことができるが、これに限定されるものではない。
[反応式2]
【化11】
【0027】
好ましくは、前記反応式1または反応式2により酸化-還元重合体を製造するための出発物質は、ポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾールを官能基化させたポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾール前駆体あり得る。このような官能基化されたポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾール前駆体は、それぞれ下記化学式10または化学式11の構造を有する。
[化学式10]
【化12】
[化学式11]
【化13】
前記高分子前駆体構造でR
aおよびR
bは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数1~20のアルコール基、置換または非置換の炭素数1~20のアルキルハロゲン基、置換または非置換の炭素数1~20のチオール基、置換または非置換の炭素数3~20のアルキルアジド基、置換または非置換の炭素数7~30のアリールアジド基、置換または非置換の炭素数2~40のアルケニル基、置換または非置換の炭素数2~40のアルキニル基からなる群から選択される。
【0028】
前記官能基化されたポリビニルピリジンまたはポリビニルイミダゾール前駆体は、例えば、下記反応式3に示すように合成することができる。
[反応式3]
【化14】
【0029】
好ましくは、前記反応式1または反応式2により酸化-還元重合体を製造するための出発物質は、遷移金属複合体を官能基化させたものであり得る。このような官能基化された遷移金属複合体は、例えば、下記反応式4および反応式5に示すように合成することができる。
[反応式4]
【化15】
[反応式5]
【化16】
【0030】
したがって、本発明の他の一態様として、下記の段階を含む化学式1または化学式2の酸化-還元重合体の製造方法を提供する:
(i)ポリビニルピリジンまたはポリイミダゾールを官能基化させてポリビニルピリジン前駆体あるいはポリイミダゾール前駆体を製造する段階と;
(ii)遷移金属複合体を官能基化させる段階と;
(iii)前記段階(i)で製造されたポリビニルピリジン前駆体あるいはポリイミダゾール前駆体、および前記段階(ii)で製造された官能基化された遷移金属複合体をクリック反応によって反応させて前記化学式1または化学式2の酸化-還元重合体を製造する段階とを含む。
前記各段階の具体的な態様は上述した通りである。
【0031】
このような本発明による酸化-還元重合体の遷移金属複合体は正確かつ再現性良く、迅速で連続的に対象物質の分析を可能にするだけでなく、簡易かつ経済的に高い収率で製造することができ、遷移金属流出によって発生する可能性がある毒性や副作用の発生が顕著に低いという長所を有する。
【0032】
本発明による酸化-還元重合体は、作動電極に塗布または積層されるか、または作動電極周辺に位置(例えば溶液内で電極を囲む構造)して作動電極と分析対象物質の間での電子を酵素を通して伝達する。このような酸化-還元重合体は、電気化学的バイオセンサ内で作動電極上にろ過されないコーティングを形成することができる。
【0033】
本発明のさらに他の一態様は、液体性生体試料を酸化還元させ得る酵素と前記酸化-還元重合体を含む電気化学的バイオセンサ用組成物に関する。
【0034】
酸化還元酵素は、生体の酸化還元反応を触媒する酵素を総称するものであり、本発明では測定しようとする対象物質、例えばバイオセンサの場合には測定しようとする対象物質と反応して還元される酵素を意味する。このように還元された酵素は電子伝達媒体と反応し、この時に発生した電流変化などの信号を測定して対象物質を定量する。本発明に使用可能な酸化還元酵素は、各種脱水素酵素(dehydrogenase)、酸化酵素(oxidase)、エステル化酵素(esterase)などからなる群から選択される1種以上のものであり得、酸化還元または検出対象物質によって、前記酵素群に属する酵素の中で前記対象物質を基質とする酵素を選択して使用することができる。
【0035】
より具体的には、前記酸化還元酵素は、グルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase)、グルタミン酸脱水素酵素(glutamate dehydrogenase)、グルコース酸化酵素(glucose oxidase)、コレステロール酸化酵素(cholesterol oxidase)、コレステロールエステル化酵素(cholesterol esterase)、乳酸酸化酵素(lactate oxidase)、アスコルビン酸酸化酵素(ascorbic acid oxidase)、アルコール酸化酵素(alcohol oxidase)、アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)、ビリルビン酸化酵素(bilirubin oxidase)などからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0036】
一方、前記酸化還元酵素は、測定しようとする対象物質(例えば、対象物質)から奪い取った水素を保管する役割を果たす補助因子(cofactor)を共に含み得るが、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、NAD)、ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline quinone、PQQ)などからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0037】
例えば、血中グルコース濃度を測定しようとする場合、前記酸化還元酵素としてグルコース脱水素酵素(glucose dehydrogenase、GDH)を使用することができ、前記グルコース脱水素酵素は、補助因子としてFADを含むフラビンアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(flavin adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase、FAD-GDH)、および/または補助因子としてFAD-GDHを含むニコチンアミドアデニンジヌクレオチド-グルコース脱水素酵素(nicotinamide adenine dinucleotide-glucose dehydrogenase)であり得る。
【0038】
具体例として、使用可能な酸化還元酵素は、FAD-GDH(例えばEC1.1.99.10など)、NAD-GDH(例えばEC1.1.1.47など)、PQQ-GDH(例えばEC1.1.5.2など)、グルタミン酸脱水素酵素(例えばEC1.4.1.2など)、グルコース酸化酵素(例えばEC1.1.3.4など)、コレステロール酸化酵素(例えばEC1.1.3.6など)、コレステロールエステル化酵素(例えばEC3.1.1.13など)、乳酸酸化酵素(例えばEC1.1.3.2など)、アスコルビン酸酸化酵素(例えばEC1.10.3.3など)、アルコール酸化酵素(例えばEC1.1.3.13など)、アルコール脱水素酵素(例えばEC1.1.1.1など)、ビリルビン酸化酵素(例えばEC1.3.3.5など)などからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0039】
本発明による組成物は、酸化還元酵素100重量部を基準として酸化-還元重合体20~700重量部、例えば60~700重量部または30~340重量部を含み得る。前記酸化-還元重合体の含有量は、酸化還元酵素の活性度に応じて適宜調整することができる。
【0040】
また、本発明による組成物は、架橋剤をさらに含み得る。
【0041】
一方、本発明による組成物は、界面活性剤、水溶性高分子、第4級アンモニウム塩、脂肪酸、粘増剤などからなる群から選択される1種以上の添加剤を試薬溶解時の分散剤、試薬製造時の粘着剤、長期保管の安定剤などの役割のためにさらに含み得る。
【0042】
前記界面活性剤は組成物を分注するとき、組成物が電極上に均等に広がって均一な厚さで分注されるようにする役割を果たすものである。前記界面活性剤としては、トリトンX-100(Triton X-100)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(perfluorooctane sulfonate)、ステアリン酸ナトリウム(sodium stearate)などからなる群から選択される1種以上を使用することができる。本発明による試薬組成物は試薬を分注するとき、試薬が電極上に均等に広がって試薬が均一な厚さで分注される役割を適切に果たすために、前記界面活性剤を酸化還元酵素100重量部を基準として3~25重量部、例えば10~25重量部の量で含み得る。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として界面活性剤10~25重量部を含むことができ、酸化還元酵素の活性度がそれよりも高くなると、界面活性剤の含有量をそれよりも低く調整することができる。
【0043】
前記水溶性高分子は、試薬組成物の高分子支持体として酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を果たすものであり得る。前記水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone;PVP)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol;PVA)、ペルフルオロスルホン酸塩(perfluoro sulfonate)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose;HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropyl cellulose;HPC)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose;CMC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、ポリアミド(polyamide)などからなる群から選択される1種以上を使用することができる。本発明による試薬組成物は、酸化還元酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を十分かつ適切に発揮するために、前記水溶性高分子を酸化還元酵素100重量部を基準として10~70重量部、例えば30~70重量部の量で含み得る。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として水溶性高分子30~70重量部を含むことができ、酸化還元酵素の活性度がそれよりも高くなると、水溶性高分子の含有量をそれよりも低く調整することができる。
【0044】
前記水溶性高分子は、支持体および酵素の安定化および分散(dispersing)を助ける役割を効果的に果たすために、重量平均分子量が2,500g/mol~3,000,000g/mol程度、例えば5,000g/mol~1,000,000g/mol程度であり得る。
【0045】
前記粘増剤は、試薬を電極上に堅固に付着させる役割を果たす。前記粘増剤としてはナトロゾール、ジエチルアミノエチル-デキストランヒドロクロリド(DEAE-Dextran hydrochloride)などからなる群から選択される1種以上を使用することができる。本発明による電気化学的センサは、本発明による酸化-還元重合体が電極に堅固に付着するために、前記粘増剤を酸化還元酵素100重量部を基準として10~90重量部、例えば30~90重量部の量で含み得る。例えば、活性度が700U/mgである酸化還元酵素を使用する場合、酸化還元酵素100重量部を基準として粘増剤30~90重量部を含むことができ、酸化還元酵素の活性度がそれよりも高くなると、粘増剤の含有量をそれよりも低く調整することができる。
【0046】
本発明のさらに他の態様として、前記酸化-還元重合体を含む電気化学的バイオセンサを提供する。
具体的には、前記電気化学的バイオセンサの種類に限定はないが、好ましくは、持続血糖モニタリングセンサである。
【0047】
このような持続血糖モニタリングセンサの構成として、本発明は、例えば電極、絶縁体(insulator)、基板、前記酸化-還元重合体および酸化還元酵素を含むセンシング膜(sensing layer)、拡散膜(diffusion layer)、保護膜(protection layer)などを含み得る。電極の場合、作動電極および対向電極などの2種の電極を含むこともでき、作動電極、対向電極および基準電極などの3種の電極を含むこともできる。一実施形態で、本発明によるバイオセンサは、少なくとも2個、好ましくは2個または3個の電極を備えた基板に、前記化学式1または化学式2を有する酸化-還元重合体と液体性生体試料を酸化還元させることができる酵素を含む試薬組成物を塗布した後、乾燥して製作した電気化学的バイオセンサであり得る。例えば、電気化学的バイオセンサにおいて作動電極および対向電極が基板の互いに反対面に備えられ、前記作動電極上に本発明による酸化-還元重合体が含まれるセンシング膜が積層され、作動電極および対向電極が備えられた基板の両側面に順に絶縁体、拡散膜および保護膜が積層されることを特徴とする平面型電気化学的バイオセンサが提供される。
【0048】
具体的な態様として、前記基板は、PET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)およびPI(polyimide)からなる群から選択される1種以上の素材からなる。
【0049】
また、作動電極は炭素、金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができる。
【0050】
また、2電極を有する電気化学的バイオセンサの場合、対向電極が基準電極としての役割も果たすので、対向電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、基準電極も含む3電極の電気化学的バイオセンサの場合、基準電極として金、白金、銀または銀/塩化銀電極を使用することができ、対向電極として炭素電極を使用することができる。
【0051】
拡散膜としてはナフィオン(Nafion)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、シリコーンゴム(silicone rubber)などを使用することができ、保護膜としてはシリコーンゴム(silicone rubber)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリウレタンベースの共重合体などを使用できるが、これらに限定されない。
【0052】
非限定的な例として、2電極の場合、対向電極が基準電極としての役割も果たすので、塩化銀または銀を使用することができ、3電極の場合、基準電極は塩化銀または銀を使用し、対向電極は炭素電極を使用することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明による酸化-還元重合体は、生産段階で工程数が少なくて経済的であり、遷移金属複合体の固定化率が増加し、官能基またはリンカーの導入が容易で、これを適用した電気化学的バイオセンサは簡便かつ検出が迅速で、経済的であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明の一実施形態によるバイオセンサの構造を示す図である。
【
図2】本発明による電子伝達媒体用酸化-還元重合体である化学式8の化合物と単一のOs複合体を使用して循環電圧電流曲線を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を下記の実施形態によってより詳しく説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の内容は下記の実施形態によって限定されるものではない。
【0056】
[実施例]
製造例1:化学式8で表される酸化-還元重合体化合物の合成
【0057】
1-1.2,2’-ビイミダゾールの合成
【化17】
【0058】
500mLの3口丸底フラスコに40%グリオキサール(glyoxal)水溶液79mL(0.69mol)を入れて0℃に冷却した後、アンモニウムアセテート370mL(2.76mol)を滴下漏斗により3時間温度上昇に注意しながら(30℃以下)徐々に滴下した。滴下終了後、45~50℃で一晩攪拌した後、常温に冷却した。生成された固体は、ろ過後、エチレングリコールに溶かしてホットフィルタ(hot-filter)で精製して、最終的には、2,2’-ビイミダゾールを得た(10.1g、収率:33%)。
【0059】
1-2.N-メチル-2,2’-ビイミダゾールの合成
【化18】
【0060】
250mLの3口丸底フラスコに2,2’-ビイミダゾール2g(15mmol)を入れて無水ジメチルホルムアミド60mLに溶かした後、0℃に冷却した。水素化ナトリウム0.6g(15mmol)を温度上昇に注意しながら少量ずつ入れた。該混合物は、0℃で1時間攪拌した後にヨードメタン1mL(15mmol)をシリンジポンプにより徐々に滴下した。滴下終了後、常温で12時間攪拌した。最終反応溶液に酢酸エチル100mLを入れ、生成されたヨウ化ナトリウムはろ過して除去した。濾液を減圧濃縮し、溶媒除去後に残った固体を酢酸エチルとヘキサンを展開溶媒にしてカラムクロマトグラフィーで精製した。最終的には、N-メチル-2,2’-ビイミダゾールを得た(0.8g、収率:37%)。
【0061】
1-3.N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾールの合成
【化19】
【0062】
500mLの3口丸底フラスコに2,2’-ビイミダゾール5g(37mmol)を入れて無水ジメチルホルムアミド60mLに溶かした後、0℃に冷却した。水素化ナトリウム3g(40mmol)を温度上昇に注意しながら少量ずつ入れた。該混合物を0℃で1時間攪拌した後、ヨードメタン2.5mL(40mmol)をシリンジポンプにより徐々に滴下した。滴下終了後、常温で24時間攪拌した。最終反応溶液に水を入れて酢酸エチル(200mL×3)で抽出した後、有機層を集めて硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮して溶媒除去した後、酢酸エチルとヘキサンを展開溶媒にしてカラムクロマトグラフィーで精製した。最終的には、N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾールを得た(5.1g、84%)。
【0063】
1-4.N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾールの合成
【化20】
【0064】
100mLの3口丸底フラスコにN-メチル-2,2’-ビイミダゾール1.5g(10mmol)を入れて窒素下で無水ジメチルホルムアミド30mLに溶かした後、水素化ナトリウム0.5g(13mmol)を加えた。該混合物を常温で1時間攪拌した後、4-ブロモ-1-ブチン1.7g(13mmol)とヨウ化ナトリウム1.5g(10mmol)を入れた。反応溶液を窒素下で80℃で加熱して24時間攪拌した。最終反応溶液を常温に冷却した後、水(100mL)と酢酸エチル(200mL×3)で抽出した後、有機層を集めて硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧濃縮して溶媒を除去し、酢酸エチルとヘキサンを展開溶媒にしてカラムクロマトグラフィーで精製した。最終的には、N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾールを得た(1.5g、74%)。
【0065】
1-5.[オスミウム(III)(N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾール)
2(N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾール)](ヘキサフルオロホスフィン)
3の合成
【化21】
【0066】
100mLの3口丸底フラスコに還流凝縮器、気体流入口および温度計を取り付け、N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾール2g(13mmol)、アンモニウムヘキサクロロオスメート(IV)3g(6.5mmol)と50mLのエチレングリコールを窒素下で140℃で24時間攪拌した。N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾール1.3g(6.5mmol)を10mLのエチレングリコールに溶かした後、前記反応混合物にシリンジを用いて入れた。該混合物を再び窒素下で140℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を常温に冷却し、生成された赤色残余物をろ過して除去した。濾液は300mLの水で希釈した後、AG1X4クロリドレジンを入れて空気中で十分に酸化させるために24時間攪拌した。前記溶液をアンモニウムヘキサフルオロホスフィン水溶液に滴下してイオン交換された金属複合体沈殿物を得た。生成された固体をろ過後に水で複数回洗浄した後、真空オーブンで乾燥させて最終化合物オスミウム(III)複合体を得た(5g、67%)。
【0067】
1-6.ポリ(4-(2-アジドエチル)ピリジニウム)-co-(4-(2-アミノエチル)ピリジニウム)-co-4-ビニルピリジン)の合成
【化22】
【0068】
250mLの3口丸底フラスコに還流凝縮器、気体流入口および温度計を取り付け、ポリビニルピリジン(poly(4-vinylpyridine):number average molecular weight:~160,000g/mol)20gを150mLのジメチルホルムアミドに溶かした。該溶液に1-アジド-2-ブロモエタン4.5g(30mmol)と2-ブロモエチルアミン6.0g(30mmol)を入れた。該溶液を、機械式撹拌機を用いて90℃で24時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を常温に冷却し、酢酸エチル溶液に注いで沈殿物を生成した。溶媒を除去し、生成された固体はメタノール300mLに再び溶かして減圧濃縮した後(150mL)、再びジエチルエーテルで沈殿物を生成した。生成された固体を真空オーブンで乾燥させて、ポリビニルピリジン前駆体を得た。(27g、90%)
【0069】
1-7.酸化-還元重合体1の合成[化学式8]
【化23】
【0070】
50mLのカルチャーチューブにて、ポリ(4-(2-アジドエチル)ピリジニウム)-co-(4-(2-アミノエチル)ピリジニウム)-co-4-ビニルピリジン)0.5gを10mLの蒸留水に溶かした後、5mLのジメチルホルムアミドに溶かした[オスミウム(III)(N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾール)2(N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾール)](ヘキサフルオロホスフィン)30.8gを入れた。反応混合物に銅(I)触媒(CuTc:Copper(I)thiophene carboxylate)25mgを入れて、常温で12時間攪拌した。反応終了後、反応混合物は酢酸エチル溶液に注いで沈殿物を生成した。溶媒を除去し、生成された固体をアセトニトリル50mLに再び溶かし、AG1X4クロリドレジンと水(150mL)を入れて24時間攪拌した。高分子溶液を減圧濃縮した後(50mL)、低分子量(10,000g/mol以下)の物質を除去するために透析(dialysis)した。透析した高分子溶液を凍結乾燥して、最終的に酸化-還元重合体1を得た(0.7g)。
【0071】
実験例:循環電圧電流法を利用した本発明による電子伝達媒体用酸化-還元重合体[化学式8]とOs複合体の電気化学的特性の確認
本発明によるOs複合体を含む酸化-還元重合体の電子伝達媒体としての性能を確認するために、次のような実験方法により循環電圧電流法を利用した電気化学的特性を測定した。
【0072】
実験方法
<1>下記化学式12および化学式13のオスミウム複合体の2種(Os(mbim)
3、Os(mbim)
3-A)、および本発明による化学式8のオスミウム-重合体(Os-polymer)それぞれ20mgを脱イオン水と0.1M塩化ナトリウム(sodium chloride)溶液5mLに溶かした。
<2>溶液中の酸素を除去するために10分間アルゴン雰囲気下で脱気した。
<3>酸素が脱気した前記溶液に作動電極、基準電極、対向電極を連結してアルゴン雰囲気下で電圧の変化に応じた電気的信号の変化を測定した。
<4>上記の実験結果をそれぞれ
図2および表1に示す。
[化学式8]
【化24】
[化学式12]
【化25】
[化学式13]
【化26】
【0073】
実験材料/条件
作動電極(working electrode):ガラス炭素電極(dia:3.0mm)
基準電極(Reference electrode):Ag/AgCl電極
対向電極(Counter electrode):白金ロッド(Platinum rod)
試験パラメーター
-装置:EmStat(PalmSens Co.)
-Technique:cyclic voltammetry
-Potential range:-1.0~1.0V
-Scan rate:10mV/s
【0074】
【0075】
図2および表1に示すように、オスミウム(III)(N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾール)、オスミウム(III)(N,N’-ジメチル-2,2’-ビイミダゾール)
2(N-ブチニル-N’-メチル-2,2’-ビイミダゾール)と共に酸化-還元重合体[化学式8]の循環電圧電流曲線を測定した結果、3個の化合物がほとんど同じ位置で酸化-還元電位を示した。したがって、本発明による酸化-還元重合体の電子伝達媒体としての性能は、単一のオスミウム複合体と同じであることを間接的に確認することができた。