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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-01
(45)【発行日】2022-06-09
(54)【発明の名称】クリーンルーム施設
(51)【国際特許分類】
   E04H 5/02 20060101AFI20220602BHJP
【FI】
E04H5/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022515086
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034079
【審査請求日】2022-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 典俊
(72)【発明者】
【氏名】今口 信弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3145829(JP,U)
【文献】特開2004-353875(JP,A)
【文献】特開平8-68221(JP,A)
【文献】特開2019-99585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 5/00
E04H 5/02
F24F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームの床ベースの上側に設けられ、前記クリーンルームの床面を形成している第1シートと、
前記床ベースと前記第1シートとの間に介在している第2シートと、を備え、
前記第2シートは、前記クリーンルームの側壁であるパネル部材の下側にも設けられ、さらに、前記クリーンルームを含む建物の外壁の付近まで延在しているクリーンルーム施設。
【請求項2】
クリーンルームの床ベースの上側に設けられ、前記クリーンルームの床面を形成している第1シートと、
前記床ベースと前記第1シートとの間に介在している第2シートと、を備え、
前記第2シートは、前記クリーンルームのドアの外枠の下側にも設けられ、さらに、前記クリーンルームを含む建物の外壁の付近まで延在しているクリーンルーム施設。
【請求項3】
前記ドア自体のフレームは、その内部が中空であり、
前記フレームの下側にも前記第2シートが設けられていること
を特徴とする請求項2に記載のクリーンルーム施設。
【請求項4】
前記フレームの下面には開口が設けられ、
中空の前記フレームの前記内部と、前記開口と、が連通していること
を特徴とする請求項3に記載のクリーンルーム施設。
【請求項5】
前記外枠が前記第2シートに接触している面の縁付近に設けられるシール部材を備えること
を特徴とする請求項2に記載のクリーンルーム施設。
【請求項6】
前記面の縁付近において、前記外枠の前記クリーンルーム側に設けられる前記シール部材に、前記第1シートが連なっていること
を特徴とする請求項5に記載のクリーンルーム施設。
【請求項7】
前記建物には、複数の前記クリーンルームが設けられ、
複数の前記クリーンルームに亘って、前記第2シートが一体的に設けられていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーンルーム施設。
【請求項8】
前記外壁は、前記建物を囲むように設けられ、
前記第2シートは、前記外壁の前記クリーンルーム側の壁面の下端付近まで延在していること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーンルーム施設。
【請求項9】
前記第2シートの構成材料には、塩化ビニル樹脂が含まれていること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリーンルーム施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム施設に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療や医薬品の製造の他、半導体や精密機械の製造等において、空気の清浄度の高いクリーンルームが用いられている。このようなクリーンルームへの虫の侵入を防止する技術として、例えば、特許文献1には、「昆虫類が対象領域内に床面を伝って侵入することを防止するための昆虫類侵入防止装置」を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-223926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の昆虫類侵入防止装置では、送風機の空気圧で昆虫類を排除するために、床下空間に送風機が設けられる。このように送風機専用の床下空間を設ける構成では、クリーンルーム施設の設備コストが高くなる。また、例えば、既設の床ベースの床下空間に送風機を新たに設置することは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、クリーンルームへの虫の侵入を抑制する、低コストのクリーンルーム施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係るクリーンルーム施設は、クリーンルームの床ベースの上側に設けられ、前記クリーンルームの床面を形成している第1シートと、前記床ベースと前記第1シートとの間に介在している第2シートと、を備え、前記第2シートは、前記クリーンルームの側壁であるパネル部材の下側にも設けられ、さらに、前記クリーンルームを含む建物の外壁の付近まで延在していることとした。なお、その他については、実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーンルームへの虫の侵入を抑制する、低コストのクリーンルーム施設を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るクリーンルーム施設の各部屋の間取りを示す説明図である。
図2】実施形態に係るクリーンルーム施設の部分的な断面図である。
図3】実施形態に係るクリーンルーム施設の部分的な分解斜視図である。
図4】実施形態に係るクリーンルーム施設の別の箇所の部分的な断面図である。
図5】実施形態に係るクリーンルーム施設において、平面視での捨て貼りシートの設置範囲を示す説明図である。
図6A】第1の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁、床ベース、及び捨て貼りシートを含む断面図である。
図6B】第2の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁、床ベース、及び捨て貼りシートを含む断面図である。
図6C】第3の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁、床ベース、及び捨て貼りシートを含む断面図である。
図6D】第4の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁、床ベース、及び捨て貼りシートを含む断面図である。
図7】比較例に係るクリーンルーム施設の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
図1は、実施形態に係るクリーンルーム施設100の各部屋の間取りを示す説明図である。
なお、図1では、所定のドア(例えば、ドアDm)が開かれた場合に空気が流れる向きを白抜きの破線矢印で示している。また、以下では、一例として、クリーンルーム施設100が再生医療施設として用いられる場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
図1に示すクリーンルーム施設100は、前処理室R3や調製室R7といった複数のクリーンルームを有する施設である。このようなクリーンルーム施設100では、空気の清浄度の異なるクリーンルームが複数設けられることが多い。そして、清浄度の低いクリーンルームから、清浄度の高いクリーンルームへの空気の漏れを抑制するために、隣り合うクリーンルームの室圧に差を設けるようにしている。
【0011】
その一例を挙げると、図1に示す前処理室R3は、1次更衣室R2よりも室圧が高い。したがって、例えば、作業員が1次更衣室R2から前処理室R3に入る際にドアDeを開くと、図1の破線矢印で示すように、高圧側の前処理室R3から低圧側の1次更衣室R2へと空気が流れ込むが、逆向きの流れが生じないように室圧が制御されているため、逆向きの流れが生じることはほとんどない。これによって、1次更衣室R2から前処理室R3への塵埃の流入が抑制され、前処理室R3の清浄度が保たれる。なお、図1において、隣り合う2つのクリーンルームの一方から他方に向かう白抜きの破線矢印を示しているものは、前記した一方のクリーンルームの方が、他方よりも室圧が高くなっている。
【0012】
図1の例では、着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。作業員が前処理室R3で作業を行う場合には、例えば、前記した順で各クリーンルームを通り抜ける。前処理室R3には、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC1が設けられている。バイオハザードキャビネットBSC1で用いられる試料は、前室R4及びパスボックスPB1を順次に介して、搬入される。一方、バイオハザードキャビネットBSC1で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB2及び前室R5を順次に介して、搬出される。なお、パスボックスPB1,PB2は、コンタミネーション(試料汚染)を抑制するための空間である。
【0013】
また、着脱室R1、1次更衣室R2、2次更衣室R6、エアロックAL1、調製室R7、エアロックAL2、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。作業員が調製室R7で作業を行う場合には、例えば、前記した順で各クリーンルームを通り抜ける。エアロックAL1,AL2は、清浄度が高い調製室R7への塵埃の流入を抑制するための空間であり、他のクリーンルームに比べて室圧が高くなっている。
【0014】
また、調製室R7と前処理室R3との間も、パスボックスPB5を介して、試料等の出し入れが可能になっている。調製室R7は、その清浄度が前処理室R3よりも高く、また、室圧が前処理室R3よりも高くなっている。これによって、ドアDxやドアDyが開けられた場合のコンタミネーション(試料汚染)を抑制できる。
【0015】
図1の例では、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC2,BSC3が調製室R7に設けられている。バイオハザードキャビネットBSC2,BSC3で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB3及び前室R8を順次に介して、搬出される。一方、廃棄物等は、パスボックスPB4及び前室R9を順次に介して、搬出される。
【0016】
図1に示すエアハンドリングユニット30は、各クリーンルームに供給される空気の温度等を調整する機器である。図1の例では、エアハンドリングユニット30は、パスボックスPB3,PB4の間の所定の空間R13に壁を介して隣り合っている。図1に示すファンフィルタユニット41~46は、所定のクリーンルームからの排気(又は、不図示のチャンバへの還気)を行うものである。
【0017】
なお、図1に示す着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、前室R4,R5、2次更衣室R6、調製室R7、前室R8,R9、脱衣室R10、前室R11、及びエアロックAL1,AL2のそれぞれが、「クリーンルーム」に相当する。そして、それぞれのクリーンルームの温度や室圧が所定に維持されるようになっている。
【0018】
また、図1に示すように、複数のクリーンルームを有する建物10が、外壁20で囲まれている。外壁20は、例えば、コンクリート製であってもよいし、また、他の材料で構成されていてもよい。なお、図1では図示を省略しているが、外壁20には少なくとも一つのドアが設けられ、このドアを介して出入りが可能になっている。
【0019】
図2は、クリーンルーム施設100の部分的な断面図である。
図2に示すように、クリーンルーム施設100は、前記した外壁20(図1も参照)の他に、パネル部材1と、床ベース2と、レール部材3と、受け部材4と、を備えている。さらに、クリーンルーム施設100は、捨て貼りシート5(第2シート)と、仕上げシート6(第1シート)と、を備えている。
【0020】
パネル部材1は、クリーンルームRを他(クリーンルームRの外側の空間)から仕切る断熱性の板状部材である。このパネル部材1によって、クリーンルームRの側壁が形成されている。パネル部材1の下面には、上側に凹んでなる溝1aが設けられている。また、パネル部材1は、外壁20に対向している。
【0021】
このように、外壁20に対向しているパネル部材1(側壁)を有するクリーンルームRは、例えば、図1に示す調製室R7であってもよいし、また、他のクリーンルームであってもよい。具体的には、その周囲が他のクリーンルーム等で囲まれている前処理室R3(図1参照)以外のほとんどのクリーンルームは、図2に示すように、パネル部材1が外壁20に対向している箇所が存在する。なお、ファンフィルタユニット41~46(図1参照)が設けられている箇所でも、クリーンルームRの側壁を構成しているパネル部材1の下端付近が外壁20に対向している。
【0022】
図2に示す床ベース2は、パネル部材1の下側の受け部材4の他、クリーンルームRに設けられる各機器(図示せず)を支持する肉厚の板状部材である。このような床ベース2は、例えば、コンクリートで形成され、水平方向に延在している。図2に示す外壁20は、前記したように、クリーンルームRの建物10(図1参照)を囲むように設けられる壁である。以下では、図2の他、図3の分解斜視図も参照しながら説明を行う。
【0023】
図3は、クリーンルーム施設100の部分的な分解斜視図である。
なお、図3では、外壁20(図2参照)の図示を省略している。
図3に示すレール部材3は、その上面に沿ってパネル部材1を滑らかに移動させるための部材である。レール部材3は、樹脂又は金属で形成され、パネル部材1の下面の溝1aに係合するようになっている(図2も参照)。
図3に示す受け部材4は、レール部材3を支持する金属製(例えば、アルミニウム製)の部材である。この受け部材4は、床ベース2の上側に設置され、レール部材3と同一方向に延在している。床ベース2とレール部材3との間には、後記する捨て貼りシート5が介在している(図2も参照)。
【0024】
なお、クリーンルーム施設100の施工時には、クリーンルームR(図2参照)と、その外部空間(他のクリーンルーム等)と、の間の平面視における境界線上に受け部材4が設置される。さらに、受け部材4にレール部材3が嵌め込まれ、ビス等(図示せず)で固定される。そして、パネル部材1の溝1aにレール部材3に係合させることで、パネル部材1が設置される。なお、直線状のレール部材3に複数枚のパネル部材1が順次に設置されることが多い。そして、作業員が、レール部材3に沿って、パネル部材1を所定に移動させることで、隣り合うパネル部材1の側面(図2の紙面の手前側・奥側の面)が互いに接触するようになっている。
【0025】
図2図3に示す捨て貼りシート5(第2シート)は、クリーンルームRに虫(例えば、チャタテムシ)が侵入することを防止するためのシートである。このような捨て貼りシート5の構成材料として、例えば、塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)が用いられるが、これに限定されるものではない。なお、捨て貼りシート5に含まれる「捨て貼り」という文言は、クリーンルームRへの虫の侵入を防止するために、クリーンルームRの内部からは見えないように貼られるシートであること意味している。
【0026】
図2に示すように、捨て貼りシート5は、クリーンルームRの平面視での領域において、床ベース2と仕上げシート6との間に介在している。また、捨て貼りシート5は、クリーンルームRの側壁であるパネル部材1の下側にも設けられている。図2の例では、パネル部材1の下側の受け部材4と、床ベース2と、の間に捨て貼りシート5が介在している。
【0027】
捨て貼りシート5は、クリーンルームRを含む建物10(図1参照)の外壁20の付近まで延在している。なお、捨て貼りシート5が、外壁20のクリーンルームR側の壁面20aの下端付近まで延在していることが好ましい。図2の例では、捨て貼りシート5の縁部が、外壁20のクリーンルームR側の壁面20aの下端に位置している。つまり、床ベース2と仕上げシート6との間に設けられた捨て貼りシート5が、パネル部材1の下側を介して、外壁20の壁面20aの下端まで延在している。詳細については後記するが、捨て貼りシート5を外壁20の付近まで設けることで、クリーンルームRへの虫の侵入を防止するようにしている。
【0028】
なお、捨て貼りシート5は、その使用前においてロール状に巻回された状態であることが多い。クリーンルーム施設100の施工時には、作業員が、ロール状の捨て貼りシート5を床ベース2上で転がして、その巻回を解くことで、帯状の捨て貼りシート5が床ベース2に設置される。具体的には、所定の接着剤を用いて、捨て貼りシート5が床ベース2の上面に接着される。なお、隣り合っている複数の帯状の捨て貼りシート5は、例えば、捨て貼りシート5を溶かして液状にしたもの(又は捨て貼りシート5と同様の構成材料)で溶着されて一体化される。
【0029】
図2図3に示す仕上げシート6(第1シート)は、クリーンルームRの床面を形成しているシートであり、クリーンルームRの床ベース2の上側に設けられている。この仕上げシート6と床ベース2との間には、前記したように、捨て貼りシート5が介在している。なお、仕上げシート6の構成材料として、例えば、塩化ビニル樹脂が用いられるが、これに限定されるものではない。例えば、仕上げシート6において、耐薬品性の他、防滑性や帯電防止性を高めるための所定物質を追加的に用いるようにしてもよい。図2の例では、仕上げシート6の縁部が、受け部材4の付近で湾曲し、さらに、受け部材4の上端まで設けられている。
【0030】
仕上げシート6も、捨て貼りシート5と同様に、その使用前においてロール状に巻回された状態であることが多い。クリーンルーム施設100の施工時には、作業員が、ロール状の仕上げシート6を捨て貼りシート5の上で転がして、その巻回を解くことで、帯状の仕上げシート6が設置される。帯状の仕上げシート6は、クリーンルームRの形状に合わせて、所定に切断される。そして、所定の接着剤を用いて、仕上げシート6が捨て貼りシート5の上面に接着される。なお、隣り合っている複数の帯状の仕上げシート6は、例えば、仕上げシート6を溶かして液状にしたもの(又は仕上げシート6と同様の構成材料)で溶着されて一体化される。このような一体化された仕上げシート6が、それぞれのクリーンルームRに個別に設けられる。
【0031】
図4は、クリーンルーム施設100の別の箇所の部分的な断面図である。
なお、図4に示す床ベース2や外壁20は、図2に示すものと同一である。図4に示すクリーンルームRは、例えば、図1に示す前室R9である。また、図4に示すドア7は、例えば、図1に示す前室R9のドアDwである。なお、図4に示すクリーンルームRは、前室R9に限定されず、例えば、図1に示す着脱室R1であってもよいし、また、前室R4,R5,R11等であってもよい。また、図4では、ドア7と外壁20との間の隙間が狭くなっているが、実際には、ドア7を開けたときに外壁20がドア7に干渉しない程度の隙間が設けられている。
【0032】
図4に示すように、クリーンルーム施設100は、前記した床ベース2や外壁20、仕上げシート6(第1シート)、捨て貼りシート5(第2シート)の他に、ドア7と、外枠8と、シール部材9a,9bと、を備えている。
ドア7は、クリーンルームRから人が出入りする際に開閉される扉である。ドア7は、枠体であるフレーム7aと、このフレーム7aの内側に設けられる断熱材(図示せず)と、を備えている。
【0033】
図4に示すように、開閉可能なドア7自体のフレーム7aは、その内部7bが中空になっている。また、フレーム7aの下面には、開口7cが設けられている。そして、中空のフレーム7aの内部7bと、開口7cと、が連通している。また、閉状態のドア7のフレーム7aの下側にも捨て貼りシート5が設けられている。
【0034】
外枠8は、閉状態のドア7を囲むように設けられる四角枠状の金属部材である。外枠8には、ドア7を開閉可能に軸支するためのヒンジ(図示せず)が設けられている。図4に示すように、外枠8は、規制部8aと、パッキン8bと、を備えている。規制部8aは、ドア7が開かれる際の回動の向きを規制する部分である。
【0035】
図4の例では、外枠8において、ドア7の下端付近のクリーンルームR側(内側)に規制部8aが設けられている。また、ドア7の下端よりも規制部8aの上端の方が、高さ位置が高くなっている。そして、クリーンルームRから人が出る際には、ドア7のノブ等(図示せず)を押すことでドア7が開くようになっている。規制部8aのドア7側には、クリーンルームRの気密性を高めるためのパッキン8bが設けられている。
【0036】
シール部材9a,9bは、クリーンルームRの気密性を高める他、クリーンルームRへの虫の侵入を防止するためのものであり、ドア7の外枠8の内側・外側に設けられている。このようなシール部材9a,9bとして、例えば、シリコーンが用いられる。2つのシール部材9a,9bは、それぞれ、断面視でL字状(又は逆L字状)を呈し、ドア7の外枠8に沿って延びている。また、シール部材9a,9bは、外枠8が捨て貼りシート5に接触している面8cの縁付近に設けられている。
【0037】
一方のシール部材9aは、図4に示す面8cの縁付近において、外枠8のクリーンルームR側(内側)に設けられている。すなわち、シール部材9aは、外枠8のクリーンルームR側(内側)の壁面に密着するとともに、捨て貼りシート5の上面に密着している。また、仕上げシート6の縁部は特に湾曲しておらず、シール部材9aに突き当てられている。つまり、外枠8が捨て貼りシート5に接触している面8cの縁付近において、シール部材9aに仕上げシート6が連なっている。これによって、仮に、外枠8と床ベース2との間の微小な隙間に虫が入り込んだ場合でも、その虫がクリーンルームRに侵入することを防止できる。また、シール部材9aと仕上げシート6とが略面一になっているため、クリーンルームRの内部から見た場合の見栄えがよくなる。
【0038】
他方のシール部材9bは、図4に示す面8cの縁付近において、外枠8の外壁20側(外側)に設けられている。このシール部材9aは、外枠8の外壁20側(外側)の壁面に密着するとともに、捨て貼りシート5の上面に密着している。これらのシール部材9a,9bを設けることで、外枠8と床ベース2との間の微小な隙間を介して、クリーンルームRに虫が侵入することを防止できる。
【0039】
前記したように、捨て貼りシート5は、床ベース2と仕上げシート6との間に介在している。また、捨て貼りシート5は、クリーンルームRのドア7の外枠8の下側にも設けられ、さらに、クリーンルームRを含む建物10(図1参照)の外壁20の付近まで延在している。図4の例では、捨て貼りシート5の縁部が、外壁20のクリーンルームR側の壁面20aの下端に位置している。つまり、床ベース2と仕上げシート6との間に設けられた捨て貼りシート5が、ドア7の外枠8の下側を介して、外壁20のクリーンルームR側の壁面20aの下端まで延在している。
【0040】
図5は、平面視での捨て貼りシート5の設置範囲を示す説明図である。
なお、図5に示す外壁20は、図1に示す外壁20と同一のものである。また、図5では、複数のクリーンルームを有する建物10(図1参照)の平面視での範囲を一点鎖線で示している。さらに、図5では、捨て貼りシート5(図2も参照)の平面視での設置範囲をドット表示で示している。
【0041】
図5に示す建物10には、前記したように、複数のクリーンルーム(図1に示す前処理室R3や調製室R7等)が設けられている。そして、複数のクリーンルームに亘って、捨て貼りシート5が一体的に設けられている。さらに、図5の例では、平面視において、捨て貼りシート5が、外壁20の内側(クリーンルームR側:図2参照)の壁面の位置まで延在している。なお、外壁20においてドア(図示せず)が設けられている箇所には、例えば、ドアの外枠の位置まで捨て貼りシート5が設けられている。
【0042】
このような構成によれば、クリーンルーム施設100(図1参照)の施工の際、仮に、床ベース2(図2参照)の上に虫(又は虫の卵)が存在している場合でも、捨て貼りシート5によって、クリーンルームR(図2参照)への虫の侵入を防止できる。すなわち、図5に示すように、外壁20で囲まれている範囲の略全域に捨て貼りシート5が設けられているため、捨て貼りシート5と床ベース2(図2参照)との間の微小な隙間に存在する虫を、この隙間に閉じ込めることができる。なお、クリーンルームRに侵入する可能性がある虫は、施工時において、床ベース2の上に既に存在していたものであることが多い。
【0043】
図7は、比較例に係るクリーンルーム施設の部分的な断面図である。
図7の比較例では、床ベース2の上に捨て貼りシート5が設けられておらず、また、クリーンルームRの領域において、床ベース2の上に仕上げシート6が設けられている。また、図7の比較例では、クリーンルームRへの虫の侵入を防止するためのシール部材9c,9dが、受け部材4の内側・外側に設けられている。
【0044】
図7に示す構成では、例えば、クリーンルーム施設の施工の際、パネル部材1の外側(外壁20の側)の床ベース2に虫(又は虫の卵)が存在していた場合、図7の破線矢印で示す経路を通って、クリーンルームRに虫が侵入する可能性がある。例えば、パネル部材1とレール部材3との間の隙間を介して、クリーンルームRに虫が侵入する可能性がある。
【0045】
また、前記した隙間の他、レール部材3と受け部材4との間にも微小な隙間が存在している。これらの隙間を介して、レール部材3の延在方向に沿って虫が移動し、クリーンルームRの周囲を動き回り、結果的にクリーンルームRに侵入する可能性がある。その他にも、床ベース2と仕上げシート6との間に存在していた虫が、仕上げシート6の縁部と受け部4との微小な隙間を介して、クリーンルームRに侵入する可能性もある。
【0046】
また、例えば、クリーンルームRのドア7(図4参照)が設けられている箇所では、中空のフレーム7aの内部7bを虫が這い上がり、さらに、ドア7の鍵の差込口(図示せず)付近の微小な隙間を介して、クリーンルームRに虫が侵入する可能性がある。このように、捨て貼りシート5が設けられていない比較例の構成では、さまざまな経路を通って、クリーンルームRに虫が侵入する可能性がある。
【0047】
前記したように、クリーンルームRに侵入する可能性がある虫は、施工時において、床ベース2の上に既に存在していたものであることが多い。特に、既設の床ベース2を用いて、クリーンルーム施設を建てる(又は改装する)場合には、施工時に床ベース2の上の虫(又は虫の卵)を除去しきれないことが多く、床ベース2の上に残存している虫がクリーンルームRに侵入する可能性が高くなる。なお、床ベース2の上の虫を完全に除去するためには、薬剤散布等を行う必要があるが、実際には、薬剤散布等を十分に行えないことが多い。殺虫剤等の薬剤を使用する場合、製品(細胞加工品等)への薬剤の混入の他、人体や環境へのリスクを伴う可能性があるからである。
【0048】
これに対して、本実施形態によれば、クリーンルームRにおいて、床ベース2と仕上げシート6との間に捨て貼りシート5が介在し(図2図4参照)、さらに、パネル部材1(又は、ドア7の外枠8)の下側を介して、外壁20の付近まで捨て貼りシート5が延在している(図5も参照)。これによって、床ベース2の上に虫が存在していた場合でも、捨て貼りシート5と床ベース2との間に虫が閉じ込められる。つまり、虫の上方への移動が捨て貼りシート5によって妨げられる。その結果、パネル部材1(図2参照)の下側の隙間等を介して、クリーンルームRに虫が侵入することを防止できる。
【0049】
また、本実施形態では、前記した特許文献1のように、空気圧で虫を排除するための送風機(図示せず)を床下空間に設ける必要が特にないため、クリーンルーム施設100の設備コストを削減できる。このように、本実施形態によれば、クリーンルームRへの虫の侵入を抑制する、低コストのクリーンルーム施設100を提供できる。
【0050】
≪変形例≫
以上、本発明に係るクリーンルーム施設100について実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、図2図4に示すように、外壁20におけるクリーンルームR側の壁面20aの下端まで捨て貼りシート5が延在している場合について説明したが、これに限らない。すなわち、図6A図6Dのような構成であってもよい。
【0051】
図6Aは、第1の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁20、床ベース2、及び捨て貼りシート5Aを含む断面図である。
なお、図6Aでは、仕上げシート6(図2図4参照)の他、パネル部材1(図2参照)やレール部材3(図2参照)、受け部材4(図2参照)等の図示を省略している。図6Aに示す第1の変形例では、捨て貼りシート5Aの縁部と、外壁20のクリーンルーム側の壁面20aの下端と、の間に隙間M1が設けられている。このような構成でも、捨て貼りシート5Aを設けることで、床ベース2からクリーンルームRへの虫の侵入を抑制できる。また、図6Aに示す構成も、捨て貼りシート5Aが外壁20の付近まで延在している、という事項に含まれる。
【0052】
図6Bは、第2の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁20、床ベース2、及び捨て貼りシート5Bを含む断面図である。
図6Bに示す第2の変形例では、捨て貼りシート5Bの縁部が略直角に折り曲げられている。そして、床ベース2の上面に捨て貼りシート5Bが接着されるとともに、外壁20におけるクリーンルーム側の壁面20aの下端付近に捨て貼りシート5Bの縁部が接着されている。このような構成でも、捨て貼りシート5Bを設けることで、床ベース2からクリーンルームRへの虫の侵入を抑制できる。また、図6Bに示す構成も、捨て貼りシート5Bが外壁20の付近まで延在している、という事項に含まれる。
【0053】
図6Cは、第3の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁20、床ベース2、及び捨て貼りシート5Cを含む断面図である。
図6Cに示す第3の変形例では、外壁20と床ベース2との間にも捨て貼りシート5Cが設けられている。このような構成でも、捨て貼りシート5を設けることで、床ベース2からクリーンルームRへの虫の侵入を抑制できる。また、図6Cに示す構成も、捨て貼りシート5Cが外壁20の付近まで延在している、という事項に含まれる。
【0054】
図6Dは、第4の変形例に係るクリーンルーム施設の外壁20、床ベース2、及び捨て貼りシート5Dを含む断面図である。
図6Dに示す第4の変形例では、外壁20は、その下端部がクリーンルーム側(図6Dの紙面右側)に突出してなる突出部20bを備えた構成になっている。捨て貼りシート5Dは、床ベース2の上面から突出部20bの壁面に沿うように所定に折り曲げられている。そして、床ベース2の上面や突出部20bの壁面に捨て貼りシート5Dが接着されている。
【0055】
図6Dの例では、突出部20bの上面の途中における所定位置まで、捨て貼りシート5Dが延在している。このような構成でも、捨て貼りシート5Dを設けることで、床ベース2からクリーンルームRへの虫の侵入を抑制できる。また、図6Dに示す構成も、捨て貼りシート5Dが外壁20の付近まで延在している、という事項に含まれる。なお、図6Dには、突出部20bが外壁20の一部である場合を示しているが、外壁20とは別に突出部20bが設けられていてもよい。
【0056】
また、実施形態(図2図4参照)の他、第1~第4の変形例(図6A図6D参照)を適宜に組み合わせてもよい。例えば、クリーンルーム施設100の建物10を囲んでいる外壁20(図1参照)の所定範囲では、捨て貼りシート5が実施形態(図2参照)の構成であり、外壁20における別の範囲では、第1の変形例の構成(図6A参照)であってもよい。その他にも、さまざまな組合せが可能である。
【0057】
また、実施形態では、クリーンルーム施設100(図1参照)の建物10が外壁20に囲まれている場合について説明したが、これに限らない。すなわち、外壁20の一部が開放されていてもよい。このような場合、外壁20が開放されている箇所では、例えば、外壁20の壁面20aの下端を延長して結んだ線の付近まで捨て貼りシート5を設けるようにしてもよい。
【0058】
また、実施形態では、クリーンルームRに片開き式のドア7(図4参照)が設けられる場合について説明したが、これに限らない。例えば、両開き式のドアの他、引き戸式のドアであってもよいし、また、人検知センサ(図示せず)やドア鍵(図示せず)の検知結果に基づいて、自動的に開くドアであってもよい。
また、実施形態では、仕上げシート6や捨て貼りシート5の構成材料に塩化ビニル樹脂が含まれる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、虫に食い破られるおそれがほとんどない材料であれば、仕上げシート6や捨て貼りシート5として、他の構成材料を用いるようにしてもよい。
【0059】
また、実施形態では、ドア7(図4参照)の外枠8の内側・外側にシール部材9a,9bが設けられる場合について説明したが、これらのシール部材9a,9bを省略してもよい。
また、実施形態において、受け部材4(図2参照)の内側・外側にシール部材(図示せず)を設けるようにしてもよい。これによって、クリーンルームRへの虫の侵入をさらに抑制できる。
【0060】
また、実施形態(図2図4参照)では、クリーンルーム施設100に捨て貼りシート5や仕上げシート6が設けられる場合について説明したが、他のシートが追加的に設けられてもよい。例えば、捨て貼りシート5と仕上げシート6との間に別のシート(図示せず)が設けられてもよい。また、床ベース2と捨て貼りシート5との間に別のシート(図示せず)が設けられてもよい。
【0061】
また、図1に示すクリーンルーム施設100の構成は一例であり、これに限定されるものではなく、さまざまな間取りのクリーンルーム施設にも実施形態を適用できる。
また、実施形態では、クリーンルーム施設100が再生医療施設として用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、工業品の製造や食品産業、医薬品の製造等、他の様々な分野にも実施形態を適用できる。
【0062】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0063】
1 パネル部材
2 床ベース
3 レール部材
4 受け部材
5,5A,5B,5C,5D 捨て貼りシート(第2シート)
6 仕上げシート(第1シート)
7 ドア
7a フレーム
7b 内部
7c 開口
8 外枠
8a 規制部
8b パッキン
8c 面
9a,9b シール部材
10 建物
20 外壁
20a 壁面
100 クリーンルーム施設
AL1,AL2 エアロック(クリーンルーム)
R クリーンルーム
R1 着脱室(クリーンルーム)
R2 1次更衣室(クリーンルーム)
R3 前処理室(クリーンルーム)
R4,R5,R8,R9,R11 前室(クリーンルーム)
R6 2次更衣室(クリーンルーム)
R7 調製室(クリーンルーム)
R10 脱衣室(クリーンルーム)
【要約】
クリーンルームへの虫の侵入を抑制する、低コストのクリーンルーム施設を提供する。クリーンルーム施設(100)は、クリーンルーム(R)の床ベース(2)の上側に設けられ、クリーンルーム(R)の床面を形成している仕上げシート(6)と、床ベース(2)と仕上げシート(6)との間に介在している捨て貼りシート(5)と、を備え、捨て貼りシート(5)は、クリーンルーム(R)の側壁であるパネル部材(1)の下側にも設けられ、さらに、クリーンルーム(R)を含む建物の外壁(20)の付近まで延在している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7