(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ユーザの睡眠覚醒状態を自動的に検出する、経皮的電気神経刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2019147355
(22)【出願日】2019-08-09
(62)【分割の表示】P 2016509034の分割
【原出願日】2014-04-15
【審査請求日】2019-08-13
(32)【優先日】2014-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506335938
【氏名又は名称】ニューロメトリックス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ゴザニ,シャイ
(72)【発明者】
【氏名】コン,スアン
(72)【発明者】
【氏名】フェレー,トム
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/028960(WO,A1)
【文献】特開2008-307382(JP,A)
【文献】特開2008-272449(JP,A)
【文献】特開2000-167067(JP,A)
【文献】特開2005-034402(JP,A)
【文献】国際公開第2011/137193(WO,A1)
【文献】特表2009-515662(JP,A)
【文献】特表2005-527256(JP,A)
【文献】国際公開第2012/106548(WO,A2)
【文献】特表2013-506535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対する経皮的電気神経刺激のための装置であって、
前記装置は、
ハウジングと、
少なくとも1つの神経を電気的に刺激するための刺激手段と、
前記ハウジングに取り外し可能に取り付けられ、前記少なくとも1つの神経を電気的に刺激するための前記刺激手段に接続可能な電極と、
前記ユーザの身体の方向および動きをモニタするためのモニタリング手段と、
前記モニタリング手段がモニタした前記方向および動きを解析して前記ユーザが睡眠状態と起床状態のいずれにあるのかを判定するための解析手段と、
前記ユーザが睡眠状態にあるとき前記刺激の強度レベルを自動的に
修正するための制御手段と、
を含む装置。
【請求項2】
前記身体の方向および動きは、前記ユーザの活動(activity)レベルを推定するために使用される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ユーザの身体の方向および動きの前記モニタリング手段によるモニタは、少なくとも1つの加速度計を用いて達成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
密着した(tight)機械的結合が、前記モニタリング手段と前記ユーザの特定の解剖学的
場所の間で確立されたとき、前記ユーザの解剖学的(anatomical)場所に対する前記加速度計の軸方向が決定され、前記解剖学的場所は前記ユーザのふくらはぎ上部である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記モニタリング手段と前記解剖学的場所の間の前記密着した機械的結合は、ストラップが前記ハウジング、前記モニタリング手段および前記電極を前記解剖学的場所に保持したとき、生成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ストラップは、前記モニタリング手段と前記解剖学的場所の間の緊張(tightness)
を測定する張力計(tension gauge)を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記モニタリング手段と前記解剖学的場所の間の前記密着した機械的結合は、前記電極と前記ユーザの表皮(skin)との接触を検出することによって確認される、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記加速度計からの加速度測定値を前記ユーザの身体の方向および身体の動きにマッピングする、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記ユーザの身体の方向は、前記加速度計の少なくとも1つの軸上への地球の重力加速度ベクトルの射影(projection)値を解析することによって決定される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
地球の重力加速度ベクトルの射影値(projection value)は、あるエポックにわたる(over an epoch)前記加速度計からの少なくとも1つの射影測定値(projection measurement)
の関数である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記射影値は、前記加速度計の軸と水平面の間の角度として表される、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ユーザの身体の方向を直立している(upright)、または横になっている(recumbent)として決定するために、前記角度の絶対値が閾値と比較される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ユーザの身体の方向は、前記角度の前記絶対値が前記閾値より低い場合、横になっているとみなされる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記角度の閾値は、目標値およびオフセットを有し、
前記目標値は、30°または45°である、
請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記目標値は、少なくとも1つの条件の関数であり、
前記少なくとも1つの条件は、周辺光の条件、一日の時間および前記ユーザの最近の睡眠期間のパターンからなる群からの少なくとも1つを含む、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
オフセットは、横になっている姿勢への、およびそれからの迅速な方向変化をなくすために、ヒステリシス成分を有する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記オフセットは、前記射影の推定平均の標準誤差に比例している信頼区間の成分(confidence interval component)を含む、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記オフセットは、前のエポックのユーザ姿勢が横になっている場合、正であり、
および/または、
前記オフセットは、前のエポックのユーザ姿勢が直立している場合、負である、
請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記身体の方向は、少なくとも1つの最新のエポックの前記身体の方向の多数(majority)に従って決定され、
および/または、
前記身体の方向は、前記ユーザの身体の方向が少なくとも1つの最新のエポックの間に
同じままであるのかどうかに従って決定される、
請求項8に記載の装置。
【請求項20】
前記解析手段は、前記身体の方向が横になっている場合、前記ユーザの状態を「ベッド中」(in-bed)として分類する、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記身体の動きの測定結果は、前記加速度の測定値から導き出される少なくとも1つの身体の活動レベルカウントの関数であり、
前記関数は、メジアン関数であり、
または前記関数は、重み付け平均関数である、
請求項8に記載の装置。
【請求項22】
各身体の活動レベルカウントが、あるエポックにわたる加速度計信号の平均である、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記加速度計信号は、瞬間加速度信号を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記瞬間加速度信号は、その3つの軸のそれぞれに沿ったフィルタリングされた加速度計の測定値の二乗値の合計の平方根であり、
前記加速度計の測定値は、バンドパスフィルタによってフィルタリングされる、
請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記解析手段は、前記ユーザが「ベッド中」にいる、かつ「活動が低い」場合、前記ユーザの状態を睡眠として分類する、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記制御手段は、タイマが期限に達した後、前記ユーザが睡眠状態であるとき、前記刺激手段を再スタートさせる、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記タイマは、前記刺激手段がオフのときの区間を定める、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記タイマの期間は、前記ユーザの身体の動き測定の増加が、前記刺激手段がオフである複数期間中に観測された場合、短縮される、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記制御手段は、前記「活動が低い」ステータスが、オンからオフに変化し、前記「ベッド中」ステータスがオンになったとき、刺激の強度レベルを調節することにより、または刺激のパルス周波数を調節することにより、前記刺激手段の動作を変更する、
請求項25に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
継続中の先行特許出願の参照
本特許出願は、
(i)Shai Gozani他による「DETECTING CUTANEOUS ELECTRODE PEELING USING ELECTRODE-SKIN IMPEDANCE」と題する2014年3月31日出願の継続中の先行米国特許出願第14/230,648号(代理人事件番号第NEURO-64号)の一部継続出願であり、 (ii)Shai Gozaniによる「TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL NERVE STIMULATOR WITH AUTOMATIC DETECTION OF PATIENT SLEEP-WAKE STATE」と題する2013年4月15日出願の継続中の先行米国特許仮出願第61/811,864号(代理人事件番号第NEURO-65PROV号)による優先権を主張する。
【0002】
2つの上記に識別した特許出願は、参照によって本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、一般に、痛みの症状を和らげるために、電極を介してユーザの傷のない表皮にわたって電流を加える経皮的電気神経刺激(TENS:Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)装置に関し、より具体的には、装置の夜間に痛みを和らげる利点を高めるために、ユーザの睡眠覚醒状態を検出することに関する。
【背景技術】
【0004】
経皮的電気神経刺激(TENS)装置は、痛みを抑制するために、人体の特定の領域に電流を印加する。TENSのもっとも普通の形態は、従来型TENSと呼ばれる。従来型TENS装置では、電気回路が、規定された特性を有する刺激電流パルスを発生する。パルス波形の仕様書は、強度(mA)、持続期間(マイクロ秒)および形状(通常単相または二相)を含む。パルスパターンの仕様書は、刺激パルスの周波数(Hz)および各連続的な刺激セッションの長さ(分)を含む。
【0005】
電気的刺激は、通常電極を通じてユーザに加えられ、その電気的刺激は、通常約10と200Hzの間の周波数である、低強度(通常100mAより小さい)で短い持続期間(通常50~400マイクロ秒)のパルスの形態である。電極は、痛み領域内に、それに隣接して、またはその近くでユーザの表皮に置かれる。電極は、通常ヒドロゲルを利用して、安定した低インピーダンスの電極・表皮間のインターフェースを生成し、そして痛みを抑制するために、それによって末梢感覚神経を刺激するように、ユーザへ電流を加えることが容易になる。
【0006】
質の悪い睡眠は、慢性の痛みを患っている患者の病的状態の主な原因の1つである(FISHBAIN DA、Hall J、MEYERS AL、Gonzales J、Mallinckrodt C.「Does pain madiate the pain interference with sleep problem in chronic pain?」Findings from studies for management of diabetic peripheral neuropathic pain with duloxetin.J Pain Symptom Manage2008年12月;36(6):639~647)。したがって、患者が、睡眠の間にTENS治療を受けるオプションを有することは、望ましい。実際、いくつかの研究によって、TENS治療が睡眠の質を向上させることができることが示されている(たとえば、Barbarisi M、Pace MC、Passavanti MB他「Pregabalin and transcutaneous electrical nerve stimulation for postherpetic neuralgia treatment」Clin J Pain2010年9月;26(7):567~572参照)。
【0007】
伝統的なTENSの使用に対するかなりの安全性に関する懸案事項は、「電極はがれ」の可能性である(すなわち、TENS装置の電極が、ユーザの表皮から不測に切り離される場合)。そのような電極はがれは、電極-表皮間の接触領域が減少したことによって電流密度および電力密度が増加することになり得る。増加した電流密度および電力密度は、痛い刺激に、そして極端な場合、熱傷に繋がる可能性があることになるはずである。米国食品医薬品局(FDA:The U.S. Food and Drug Administration)によって、不測の電極はがれのリスクのために、睡眠中の従来型TENS装置の使用に対して警告を要求する、TENS装置に関するガイドライン案が公表されている。(Food and Drug Administration、「Draft Guidance for Industry and Staff:Class II Special Control Guidance Document:Transcutaneous Electrical Nerve Stimulator for Pain Relief」2010年4月5日)。その結果、ほとんどのTENS装置は、いずれもの夜間(すなわち、睡眠状態)で動作させずに、昼間に(すなわち、覚醒状態の間)もっぱら動作するように設計されている。
【0008】
Shai Gozani他による「DETECTING CUTANEOUS ELECTRODE PEELING USING ELECTRODE-SKIN IMPEDANCE」と題する2014年3月31日出願の継続中の先行米国特許出願第14/230,648号(代理人事件番号第NEURO-64号)では、夜間(すなわち、睡眠中)に、さらにまた昼間(すなわち、覚醒状態)にTENS治療を施すことを可能にする発明が開示されている。前述の発明によれば、TENS装置は、電極-表皮間の接触領域をモニタするために、TENS治療中、連続的に電極-表皮間のインピーダンスを測定するように適合される。予め構成された電極アレイの既知の形状によって、初期の電極-表皮間の接触領域が確立され、そしてその後の電極-表皮間のインピーダンス変化の解析によって、電極-表皮間の接触領域の正確な推定が可能になる(すなわち、電極はがれの発生を検出するために)。インピーダンスが、過度の刺激の電流密度または電力密度に繋がる恐れがある接触領域の減少(すなわち、電極はがれの発生)に対応する臨界値に達したとき、装置は、痛い刺激、そして極端な場合、熱傷のリスクを回避するために、刺激を自動的に終了させる。
【0009】
痛みを最大に和らげるために、電気的刺激は、適切な強度レベルに保つ必要がある(Moran F、Leonard T、Hawthorne S他「Hypoalgesia in response to transcutaneous electrical nerve stimulation(TENS)depends on stimulation intensity」J Pain12:929~935)。最適なTENSの治療上の強度レベルは、ユーザに「強いがしかし心地よい」感覚を呼び起こす強度レベルとしてしばしば記述される。しかし、昼間(すなわち、覚醒状態)の使用に合わされた刺激の強度レベルは、夜間(すなわち、睡眠状態)の使用には強すぎる恐れがある、というのは、覚醒状態に適した刺激の強度レベルは、睡眠を妨げる恐れがあるからである。
【0010】
TENS装置の別の共通の特徴は、その「オンデマンドの」痛み軽減動作である。痛みを和らげるTENSの治療セッションは、通常、ユーザが、TENS装置上のボタンを押すことによってなど、規定の方法で装置と相互作用したとき、直ちに開始される。各治療セッションは、通常、約60分間持続する。オンデマンドの治療では、各TENSの治療セッションのタイミングにわたってユーザに完全な制御が与えられるとはいえ、オンデマンドの治療は、夜間(すなわち、睡眠状態)の使用にうまく適していない、というのは、ユーザによるTENS装置との故意の手続きに従った相互作用が必要であるからである。
【0011】
これらの理由のために、TENS装置が、ユーザの昼間(すなわち、覚醒状態)または夜間(すなわち、睡眠状態)の必要に従ってその動作を自動的に変化させることができるように、ユーザの睡眠覚醒状態を検出するための自動化された手段を提供することは、好都合なことになるはずである。昼間に有効な痛み治療を施すことに加えて、TENS装置が、睡眠を妨げないように、夜間(すなわち、睡眠状態)、その治療上の刺激パラメータ(刺激の強度レベルなど)を調節することができるとすると、好都合なことになるはずである。それゆえ、睡眠を妨げずに痛みを和らげるための夜間(すなわち、睡眠状態の間)におけるTENS装置の有用性を高めるために、TENS装置は、ユーザの睡眠状態および睡眠の質をモニタし、かつそれに応じてその動作を適合させるべきである(たとえば、その刺激の強度レベルを調節する)。
【0012】
対象者の睡眠覚醒状態を決定する際の究極の基準は、少なくとも3つのはっきりと異なるタイプ(すなわち、EEG、EOGおよびEMG)のデータを含む睡眠ポリグラフィである。これらのタイプのデータを記録し解析する上の困難さのために、活動記録法(actigraphy)が、睡眠/覚醒パターンを研究する実用的な選択肢として、この30年間にわたって開発されて改良されてきた[Ancoli-Israel S、Cole R、Alessi C、Chambers M、Moorcroft W、Pollak CP.「The role of actigraphy in the study of sleep and circadian rhythms」Sleep2003年5月1日;26(3):342~392]。活動記録法は、通常加速度計の使用を通じて、身体の動きを検出する身体に装着する装置によって、身体の動きを連続的に記録するものである。重要なことは、TENSユーザの睡眠を乱すことなく、夜間に(すなわち、睡眠状態中に)おけるTENS治療による痛み軽減の有用性を高めるための新規な方法および装置を提供するために、本発明が、活動記録法ベースの睡眠覚醒分類方法を従来型TENS装置の機能性と統合している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、新規なTENS装置の提供および使用を含み、そのTENS装置は、患者のふくらはぎ上部(または他の解剖学的場所)上に置かれるように設計されるTENS刺激装置と、ふくらはぎ上部(または他の解剖学的場所)の領域中で周辺を取り囲む刺激をもたらすように設計される予め構成された電極アレイとを含む。TENS装置中に組み入れられた加速度計が、ユーザの睡眠覚醒状態を決定するために、ユーザの身体の方向および動きを連続的にモニタする。本発明の重要な特徴は、TENS装置が、身体の方向および動きの前述の解析によって決定されるユーザの睡眠覚醒状態に基づき、その刺激パラメータを調節するように適合されるということである。ユーザは、ユーザの身体の方向が、選択された期間(たとえば、決定ウィンドウ)の選択された部分(たとえば、大部分)について横になっていると決定された場合、「ベッド中」にいると考えられる。活動記録法の概念に基づくユーザの身体の動きの測定は、ユーザの活動レベルを定量化するために使用される。ユーザは、ユーザが「ベッド中」にいる場合、かつユーザの活動レベル(すなわち、身体の動き)が選択された期間、低いままである場合、眠っていると考えられる。「ベッド中」ステータス、低い活動レベルおよび睡眠状態は、刺激パルスの波形パラメータなど、刺激装置の出力を調節するために、TENS装置によって個別的に、または共同で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの好ましい形態では、ユーザ中の経皮的電気神経刺激のための装置が提供され、
その装置は、
ハウジングと、
少なくとも1つの神経を電気的に刺激するための刺激手段と、
ハウジングに取り外し可能に取り付けられ、少なくとも1つの神経の電気的刺激のための刺激手段に接続可能な電極と、
ユーザの身体の方向および動きをモニタするためのモニタリング手段と、
前記方向および動きを解析するための解析手段と、
前記方向および動きの前記解析に応答して、刺激手段の出力を制御するための制御手段とを含む。
【0015】
本発明の別の好ましい形態では、ユーザの身体の方向および動きのステータスに基づき、経皮的電気神経刺激を制御するための方法が提供され、
その方法は、
経皮的電気神経刺激装置をユーザの身体に取り付けて、本装置とユーザの身体の間に密着した機械的結合を生成するステップと、
刺激装置に取り付けられた、ユーザの身体の方向および動きを測定する加速度計からデータを取得するステップと、
加速度計データを解析して、ユーザの身体の方向および動きを決定するステップと、
ユーザの身体の方向および身体の動きのステータスを決定するステップと、
ユーザの身体の方向および身体の動きのステータスに基づき、刺激出力パターンを修正するステップとを含む。
【0016】
本発明の別の好ましい形態では、ユーザ中の経皮的電気神経刺激のための装置が提供され、
前記装置は、
ハウジングと、
神経を電気的に刺激するための、ハウジング内の刺激手段と、
前記ユーザの方向および活動レベルを測定するための、ハウジング内のモニタリング手段と、
ユーザの身体の方向および活動レベルが少なくとも1つの所定の条件を満たしているとモニタリング手段が決定したとき、ユーザの表皮に加えられる電気的刺激を制御するための制御手段とを含む。
【0017】
本発明の別の好ましい形態では、経皮的電気神経刺激をユーザに加えるための方法が提供され、
前記方法は、
刺激手段および加速度計センサをユーザの身体に取り付けるステップと、
1つまたは複数の神経を刺激するために、刺激電流をユーザに印加するステップと、
加速度計のセンサデータを解析して、ユーザの身体の方向および動きレベルを査定するステップと、
ユーザの身体の方向および動きレベルに基づき、刺激出力を修正するステップとを含む。
【0018】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な記述によってより完全に開示する、または明らかにすることにし、その記述は、添付図面と一緒に検討すべきであり、図面では同様の番号は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によって形成される新規なTENS装置を、新規なTENS装置がユーザのふくらはぎ上部に取り付けられている状態で示す概略図である。
【
図2】
図1の新規なTENS装置をより詳細に示す概略図である。
【
図2A】
図1および2に示す新規なTENS装置の概略図である。
【
図2B】そのユーザ活動検出器を含む、
図1および2の新規なTENS装置の概略図である。
【
図3】
図1および2に示す新規なTENS装置の表皮上の検出システム、さらにまた新規なTENS装置がユーザの表皮上にある、またはその上にないとき、その等価回路を示す概略図である。
【
図4】
図1の新規なTENS装置がユーザのふくらはぎ上部に取り付けられたとき、
図1および2の新規なTENS装置中に組み入れられた加速度計の方向を示す概略図である。
【
図5】新規なTENS装置(ユーザの脚上に配置された)が水平面に対してある角度で置かれているとき、重力加速度と新規なTENS装置中の加速度計のy軸加速度ベクトルの間の関係を示す概略図である。
【
図6】新規なTENS装置を装着したユーザの身体姿勢および動きのパターンが様々である状態で、3つの軸すべての加速度計による測定値および計算された瞬間加速度値を3分間示す概略図である。
【
図7】
図6の同じ3分間に関する生のy軸加速度計の測定データ、身体の方向解析の中間結果および身体の方向結果を示す概略図である。
【
図8】30のエポック(epoch)の身体の方向結果に基づく、身体の方向結果および「ベッド中」の分類結果を示す概略図である。
【
図9】
図6に示すデータから計算された瞬間加速度および
図6の3分間の対応する活動レベルカウントを示す概略図である。
【
図10】ユーザの身体の方向および動きのステータスと新規なTENS装置の刺激装置の動作の間の相互作用のタイミング図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明によって形成される新規なTENS装置100を例示し、その新規なTENS装置は、ユーザのふくらはぎ上部140上に装着されている状態で示す。ユーザは、1つのTENS装置100をどちらか一方の脚上に、または2つのTENS装置100を各脚上に装着することができる。
【0021】
TENS装置100は、
図2により詳細に示されており、好ましくは3つの構成要素、すなわち刺激装置105、ストラップ110および電極アレイ120(当該技術で周知であるように、刺激装置105に適切に接続されるカソード電極およびアノード電極を含む)を含む。刺激装置105は、好ましくは3つの機械的および電気的に相互接続された区画部101、102および103を含む。区画部101、102、103は、好ましくはヒンジ機構104(これの1つだけが
図2に示されている)によって相互接続され、それによってTENS装置100がユーザの脚の湾曲した解剖学的構造に合うことが可能になる。好ましい実施形態では、区画部102は、TENS刺激ハードウェア(バッテリを除く)およびユーザインターフェース要素106および108を収納する。また、区画部102は、好ましくは半導体チップの加速度計の形態である加速度計152(
図2Bおよび4参照)を収納し、その加速度計は、ユーザの挙動、ユーザの身体姿勢および方向、およびユーザの動きおよび活動レベルを検出する(以下を参照)。また、区画部102は、リアルタイムクロック505を収納する(
図2B)。好ましい実施形態では、区画部101および103は、より小さい補助区画部であり、それらは、バッテリを収納し、そのバッテリは、TENS刺激ハードウェアと、周辺光状態を決定するための周辺光センサまたは検出器510(
図2Bおよび4)およびTENS装置100が他の要素(たとえば、ユーザの他の脚上に装着されている別のTENS装置)と無線で通信することを可能にするための無線インターフェースユニット(図示せず)など、他の付属要素とに給電する。本発明の別の実施形態では、本発明のTENS刺激ハードウェア、バッテリおよび他の付属要素のすべてを収納するために、側面区画部101および103を必要とせずに、1つの区画部102だけを設けることができる。
【0022】
ここでなお
図2を見ると、インターフェース要素106は、ユーザによる電気的刺激の制御のためのプッシュボタンを含み、インターフェース要素108は、刺激ステータスを示し、そしてユーザへの他のフィードバックを提供するためのLEDを含む。また、追加のユーザインターフェース要素(たとえば、LCDディスプレイ、ベーパまたは音声出力を通じたオーディオフィードバック、振動モータなどの触覚装置、刺激をパルス化することによる電気的フィードバック)を設けることができ、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、
図1に示すように、ユーザのふくらはぎ上部140上に装着されるように設計される。刺激装置105、電極アレイ120およびストラップ110を含むTENS装置100は、この装置を所定位置に置き、次いでストラップ110を締めることによって、ふくらはぎ上部140にしっかりと固定される。本発明の好ましい実施形態がユーザのふくらはぎ上部140上へのTENS装置の配置を含むけれども、追加の解剖学的場所(膝の上、背下部上および上肢上など)が予期され、また本発明の範囲内にあると考えられる。
【0024】
図2Aは、TENS装置とユーザの間における電流の流れの概略図である。
図2Aに示すように、制御された電流源410からの刺激電流415は、カソード電極420を介してユーザの組織430に流入する。カソード電極420は、導電性の裏打(たとえば、銀のハッチ)442およびヒドロゲル444からなる。電流は、ユーザの組織430中を流れてアノード電極432を通じて電流源410に戻る(また、アノード電極432は、導電性の裏打442およびヒドロゲル444を含む)。アノードおよびカソードの電極の呼称は、二相波形の文脈で純粋に表記したものである(すなわち、二相刺激パルスが、二相TENS刺激のその第2のフェーズでその極性を反転させたとき、電流は、インターフェース432を介してユーザの身体に流入し、そしてインターフェース420を介してユーザの身体から流出することになる)ことを認識すべきである。
【0025】
TENS装置100の上述の態様の構築および使用に関するさらなる細部は、(i)Shai N.Gozani他による「APPARATUS AND METHOD FOR RELIEVING PAIN USING TRANSCUTNEOUS ELECTRICAL NERVE STIMMULATION」と題する2012年11月15日出願の継続中の先行米国特許出願第13/678,221号(代理人事件番号第NEURO-5960号)に開示されており、その特許出願は、参照によって本明細書に援用され、かつ(ii)Shai N.Gozani他による「DETECTING CUTANEOUS "ELECTRODE PEELING" USING ELECTRODE-SKIN IMPEDANCE」と題する2014年3月31日出願の継続中の先行米国特許出願第14/230,648号(代理人事件番号第NEURO-64号)に開示されており、その特許出願は、参照によって本明細書に援用される。
【0026】
TENS装置が、ユーザのふくらはぎ上部上の所定位置に固定されたとき、TENS装置100中の加速度計152の位置および方向は、決定されてユーザの下肢に相対的に知られる。TENS装置100と下肢140の間の密着した機械的結合によって、下肢の動きを加速度計152によって正確に測定することが可能になる。そのような密着した機械的結合は、ストラップ110によって確立される。望む場合、張力計109(
図1)をストラップ110上に設けることができ、密着した機械的結合がTENS装置100と下肢140の間に確立されたことを確認する。加速度計152からのデータは、ユーザの下肢140の方向および動きを決定するために、リアルタイムで解析される。下肢140の方向、動きおよび活動レベル(加速度計152からのデータを解析することによって決定される)は、ユーザの睡眠覚醒状態を決定するために使用される。ユーザの睡眠覚醒状態に基づき、TENS装置は、その刺激パターンを修正することができる(刺激の強度レベルおよび刺激の開始など)。強いが心地よい刺激の強度レベルは、昼間(すなわち、覚醒状態中)、ユーザには理想的であり得るが、しかし同じ刺激の強度レベルは、夜間にはユーザが眠りに落ちないように妨げる感覚を呼び起こす可能性がある、または睡眠からユーザを起こす恐れがある。したがってTENS装置は、好ましくは、ユーザが眠っていると決定されたとき、その治療上の刺激の強度レベルを低下させるように構成される。
【0027】
本発明によって測定される方向および動きの成分は、ユーザの睡眠覚醒状態の決定に個別的または共同で寄与することができる。本発明の1つの好ましい形態では、TENS装置は、ふくらはぎの方向を測定し、それは、身体の方向と強く相関している。より具体的には、直立している身体の方向は、一般に、ユーザが覚醒状態であることを示す信頼性のある指示器であり、一方横になっている方向は、安静状態(たとえば、睡眠中に起きるなど)を示唆する。習慣的でしっかりとした身体の動きは、昼間(すなわち、覚醒状態中)のユーザ活動の結果である可能性がより高く、一方穏やかな、または低いレベルの自発的な動きは、夜間(すなわち、睡眠状態中)である可能性がより大きい。また、身体の方向と動きレベルの相互作用は、ユーザの睡眠覚醒状態を識別する際に有用であり得る(すなわち、それによって睡眠覚醒状態の分類を強化する)。具体的に、横になっている身体の方向および低レベルの肉体的な活動は、一般に、ユーザが眠っていることを示す良好な指示器である。さらに、方向および動きのデータの前述の解析から得られた睡眠覚醒状態の分類結果をさらに改良するために、リアルタイムクロック505によって、一日のいずれかの所与の時間における睡眠覚醒状態の自明でない先験的な確率を割り当てることが可能になる(すなわち、ユーザは、午前3:00時には眠っている可能性がより高く、午後4:00時に眠っている可能性はより低い)。本発明の好ましい実施形態では、先験的な睡眠状態の確率が特定の昼間ウィンドウにおいて低いことを反映すると、ユーザの身体の方向が横になっていると分類するための、またはユーザの睡眠覚醒状態を眠っていると分類するための条件をより厳密なものにすることができる。
【0028】
別の実施形態では、周辺光センサ505からの出力は、睡眠覚醒の分類結果を向上させるために、睡眠覚醒状態の自明でない先験的な確率を割り当てるために使用される。言い換えると、周辺光センサ505は、ユーザが照明された、または照明されていない雰囲気の環境下にいるのかどうかを決定するために使用することができる、つまりユーザは、明るく照明された環境下でよりむしろ暗い環境下で眠っている可能性がより高い。
【0029】
図2Bは、「ユーザ活動」検出器500を含むTENS装置100を示し、ユーザ活動検出器500は、前述の加速度計152、リアルタイムクロック505、周辺光検出器510、ユーザ活動を計算するための手段515(たとえば、ユーザ活動の決定を可能にするために、本明細書で開示する機能性をもたらす適切なプログラミングを備える、当該技術で周知である種類のマイクロプロセッサ)およびユーザ活動から下された決定に従って刺激の強度レベル(たとえば、電流の大きさ)を修正するための手段520(たとえば、制御される電流源410を制御するための制御器、その制御器は、当該技術で周知である種類のものであって、本明細書に開示する機能性をもたらすように、前述のマイクロプロセッサによって制御される)を含む。
表皮上検出器
TENS装置がユーザによって装着されたとき、TENS装置100中の加速度計152からの方向および活動の測定値だけが、ユーザの方向および活動と結合されることになることを認識されたい。好ましい実施形態では、表皮上検出器は、TENS装置100がユーザのふくらはぎ上部上に、いつしっかりと置かれたのかどうかを決定するために設けられる。TENS装置100が表皮上にあると決定されたときだけ、TENS装置の加速度計152からの方向および活動データが、ユーザの方向および動きを推定する際に、まさに関係することになる。
【0030】
この目的を達成するために、本発明の好ましい実施形態では、ここで
図3を参照すると、表皮上検出器をTENS装置100内に設けることができる。より具体的には、本発明の1つの好ましい形態では、電圧源204からの20ボルトの電圧が、スイッチ220を閉じることによってTENS刺激装置105のアノード端子212に印加される。TENS装置がユーザによって装着された場合、アノード電極420とカソード電極432の間に挟まれたユーザ表皮430は、電圧分圧回路中の等価抵抗器208を形成することになる。より具体的には、TENS装置100がユーザの表皮上にあるとき、
図3に示す等価回路260が実在のシステムを表し、等価回路260によって、電圧分圧抵抗器206および208を通じてアノード電圧V
a204を送ることが可能になる。増幅器207から測定されたカソード電圧がゼロでなく、ほぼアノード電圧204になる。他方では、TENS装置100がユーザの表皮上にないとき、等価回路270が実在のシステムを表し、増幅器207からのカソード電圧は、ゼロになる。
身体の方向検出
直立している、または横になっている、いずれかのユーザ方向は、TENS装置100がユーザのふくらはぎ上部140上に置かれているとき(
図1)、加速度計152によって測定された静止した方向によって近似することができる。厳密に言うと、加速度計の方向は、下脚の方向と一致する。好ましい実施形態では、ここで
図4を参照すると、加速度計チップ152が、側面区画部102の内部に収納された回路基板151上に置かれているので、TENS装置100がユーザのふくらはぎ上部上に置かれたとき、加速度計の3軸の方向153(すなわち、x軸、y軸、z軸)が知られて決定される。
【0031】
安定し直立しているユーザまたは地上に足を休ませて座っているユーザは、直立のふくらはぎ方向を取ることになる。その結果、加速度計チップ152のy軸加速度は、その値が地球の重力154によって約-1gになる、ただしgは、地球重力による標準加速度である。上記の測定は、ふくらはぎ上部140のまわりの区画部102のまさにその回転位置160にかかわらず、当てはまる。TENS装置100がふくらはぎ上部上に逆さまに、もちろん正当な配置位置であるが、置かれたとき、加速度計の軸の方向は、155で示すように回転する。この場合、安定した直立のユーザは、y軸に沿って測定された加速度の値が約+1gになる。それに反し、脚をベッド上に平らに置いて横たわった、安定して横になっているユーザは、y軸に沿って測定された加速度の値が約0gになる。好ましい実施形態では、y軸加速度の絶対値が閾レベルより大きい場合、ユーザの方向は、直立していると考えられ、そうでなければユーザの方向は、横になっていると考えられる。好ましい実施形態では、直立している/横になっていると決定するためのこの閾レベルは、0.50gであり、水平面から約30°の脚の角度に対応する。しかし、他の閾値も使用することができる。
【0032】
TENS装置100を装着しているユーザが、特に昼間(すなわち、覚醒状態中)、静止した、または動かないままであることを期待することは、非現実的である。したがって、ユーザの身体の動きによって加速度計152のy軸に射影された追加の加速度を考慮する、身体の方向を決定するための方法を提供することは、好都合である。より具体的には、ここで
図5を参照すると、地球の重力ベクトルの方向が下方であるとして決定された場合、角度θ172は、正の加速度計のy軸方向174と真の水平面170の間の角度を表す。したがって、y軸に沿った加速度計の測定値は、いずれかの所与の時間tにおいて、
A
y(t)=±g sin[θ(t)]+m[t]
になる、ただしm[t]は、身体の動きによって引き起こされるy軸でのいずれかの追加の加速度である。gの前の特定の±符号は、ふくらはぎ上部140上のTENS装置の配置によって決まり、各配置に対して決定される。身体の動きの成分m(t)は、身体の方向を決定する文脈で「ノイズ」と考えられる。
【0033】
好ましい実施形態では、ユーザの身体の動きを考慮する方向検出アルゴリズムが、次の様に実現される。
【0034】
ステップ1 角度θに対する目標閾値θ0を、|θ|<θ0が、ユーザのふくらはぎ上部が横になっている場合に対応するように、設定する。好ましい実施形態では、目標角度の閾値θ0は、30°に設定される。
【0035】
ステップ2 不安定なノイズm(t)の効果を減少させるために(すなわち、身体の動きの成分m(t)の効果を減少させるために)、長さN(t=T-N+1、T-N+2、...、T)の時間ウィンドウにわたってAy(t)を平均する。この平均化の結果は、Ay、Tとして示す。推定標準偏差σy、Tが計算され、そして平均の標準誤差が計算される、すなわちSET=σy、T/sqrt(N)。好ましい実施形態では、加速度計の測定値は、50Hzでサンプルされ、平均ウィンドウ長さは、N=3000であり、1分の時間ウィンドウに対応する。各重ならないウィンドウは、「エポック(epoch)」を形成する。次いで、角度θTが、次式
θT=sin-1[Ay、T]
を使用して推定される、ただし、sin-1は、逆三角関数である。
【0036】
ステップ3 角度θの推定誤差を考慮し、そして身体の方向状態の急激な切り替えを防止するためにヒステリシス効果を実現するコンテキスト依存の閾値θC,Tを計算する。目標閾値θ0が、θC,Tに達するように量[θH+α*SET]によって調節される、ただしαは、推定平均Ay、Tの信頼水準である。好ましい実施形態では、ヒステリシスパラメータθHが、2.5°に設定され、αは3.0に設定される。調節は、前の角度の絶対値が閾値θC,T-1より低い場合、θC,T=θ0+[θH+α*SET]になるように、加算によって行われ、そうでなければ、調節は、θC,T=θ0-[θH+α*SET]になるように、減算によって行われる。
【0037】
ステップ4 推定角度θT(ステップ2で決定される)とコンテキスト依存の閾値θC,T(ステップ3で決定される)を比較する。θTの絶対値がコンテキスト依存の閾値θC,Tより大きい場合、身体の方向は、この現在のエポックに関し、直立している(つ
まり身体の方向がそのように分類される)と考えられる。そうでなければ、身体の方向は、横になっているとして分類される。
【0038】
ステップ5 複数の連続したエポックの身体の方向状態を調べる。個別のエポックの身体の方向は正確であるが、さらに、より長い期間にわたるユーザの身体の方向は、ユーザの睡眠覚醒状態を決定する際、より多く情報を与えて関連性を有する。好ましい実施形態では、最後の10のエポックにわたる身体の方向の大多数が、睡眠覚醒分類の目的で、ユーザの身体の方向の真の状態を識別するために使用される。身体の方向状態は、新しいエポックが利用できる毎に同じように迅速に更新することができる、または全体的に新しいセットのエポックが到達するのを待つのと同じようにゆっくりとすることができる。好ましい実施形態では、新しいエポックの到達毎に身体の方向状態が更新される。言い換えると、各エポックが1分の長さの場合、ユーザの身体の方向の決定は、1分に一度と同じように迅速に更新することができる。
【0039】
それゆえ、TENS装置100のユーザ活動検出器500が、加速度計152の出力を使用して、ユーザの身体の方向を決定することが分かるはずである。より具体的に、ユーザ活動検出器500は、加速度計152から受け取ったy軸データを解析して、ユーザの身体の方向を決定する。本発明の1つの好ましい形態では、これは、ユーザの身体の方向を決定するために、加速度計152から報告されたy軸データから身体の動きの成分を取り除き、次いでy軸データを地球の重力ベクトルgと比較することによって実施される。
身体の動きおよび活動レベル
人体の動きは、活動記録法によって、しばしば定量的に測定される。活動記録法は、通常加速度を通じて動きを検出する身体に装着された装置によって、身体の動きを連続的に記録するものである。通常手首装着の装置を用いて測定されるが、動きは、下脚を含む、様々な身体場所で記録することができる。活動記録法は、睡眠覚醒状態を推定し識別する上で有効である、というのは、動きは、睡眠状態の間それほどでなく、覚醒状態の間ではより多い(Ancoli-Israel S、Cole R、Alessi C、Chambers M、Morrcroft W、Pollak CP.「The role of actigraphy in the sstudy of sleep and circadian rhythms」Sleep2003年5月1日;26(3):342~392)。
【0040】
TENS装置100がユーザのふくらはぎ上部140上に装着されたとき、下脚の動きは、TENS装置の加速度計152によって捕らえられることになる。加速度計152の各軸は、その軸に沿った加速度ベクトルの射影を測定する。多くの時変信号のように、各軸の加速度計の測定値は、低周波数(ゆっくりと変化する)成分および高周波数(迅速に変化する)成分からなる。低周波数成分は、加速度計の各軸上への重力の射影を推定することによって、ユーザの身体の方向を査定する上で有用である。身体の方向を決定するための、加速度計のy軸測定値に焦点を合わせた好ましい実施形態は、前に述べた。高周波数成分によって、ウオーキング、ランニング、階段上りなど、ユーザの身体の動きのイベントの結果としての加速度を捕らえる。
【0041】
加速度計の各個別の軸での加速度が、ユーザの身体の動き解析のための独自の有用な情報を含むとはいえ、以下の方程式1で定義される瞬間加速度A(t)は、活動レベル、睡眠覚醒分類のための関連する測定値のレベルを特徴付けるために通常使用される。
【0042】
A(t)=[AX(t)2+Ay(t)2+AZ(t)2]1/2 Eq.1
本発明の好ましい実施形態は、活動記録法の計算のために瞬間加速度A(t)を使用する。しかし、他の形態の加速度の組合せに基づく計算も、使用することができる。
【0043】
好ましい実施形態では、加速度計152の1軸加速度成分Ax(t)、Ay(t)およびAz(t)は、50Hzでサンプルされる(ただし、他のサンプリングレートも使用することができる)。サンプルされた加速度成分は、0.25Hzと12.0Hzの間でバンドパスフィルタによってフィルタリングされる。このバンドパスフィルタのハイパスの態様によって、身体の動きに直接リンクされない加速度成分の効果が減少される。たとえば、各軸上の重力射影が実質的に一定であり、その周波数は、一般に0.25Hzより低いので、ハイパスフィルタは、その加速度成分を取り除くことになる、というのは、その加速度成分は、身体の動きの活動レベルに無関係であると考えられるからである。身体の質量および肉体的な制約によっても、自発的な身体の動きから引き起こされる加速度の周波数は、制限される。12.0Hzより高い加速度成分をフィルタリングアウトすると、ユーザが移動車両中にいるとき、加速度計152によって検知される高周波数の振動など、外部環境ファクタの効果が大幅に減少される。
【0044】
次いで、フィルタリングされた1軸加速度成分Ax(t)、Ay(t)およびAz(t)は、方程式1を介して結合されて、活動記録法信号A(t)が形成される。好ましい実施形態では、A(t)の値は、1分間のエポックにわたって平均されて、1分毎の活動レベルカウントが与えられる。T番目の1分間の活動レベルカウントが、方程式2によって与えられる。
【0045】
MT=AVE[all t in minute T][A(t)] Eq.2
好ましい実施形態では、20の最新の活動レベルカウントのメジアン(MEDIAN)が、「身体の動き測定」(BMM:body movement measure)になる。次いで、BMM値が、所定の閾値χに対して比較される。ユーザは、BMMが閾値χより小さい場合、
BMM=MEDIAN[MT、MT-1、MT-2、MT-19]<χ Eq.3
動きが低い状態にあると考えられる。活動記録法信号A(t)を1分のエポックに分解することが、睡眠研究のための伝統的な活動記録法の解析で通常の行為である(Ancoli-Israel S、Cole R、Alessi C,Chambers M、Moorcroft W、Pollak CP.「The role of actigraphy in the study of sleep and circadian rhythms」Sleep2003年5月1日;26(3):342~392)。また、1分エポックの活動レベルカウントMTは、容易に実現することができ、他の形態のBMMに役に立つ。別の実施形態では、いくつかのエポックの重み付けた平均が、BMMを決定するために使用される。BMMを決定するために、いくつかのエポックの重み付けた平均を使用することの利点は、より最近のエポックからの活動レベルカウントが、より前のエポックからのカウントより身体の動き測定に多く貢献することを可能にすることを含む。
【0046】
動き測定閾値χは、究極の判断基準として睡眠ポリグラフィを使用して(Sadeh A.「The role and validity of actigraphy in sleep medicine:an update」.Sleep Med Rev.2011年8月;15(4):259~267)[Tryon WW.「Issue of validity in actigraphic sleep assessment」Sleep2004年2月1日;27(1):158~165]、既刊文献から導き出すことができる、または実験的に決定することができる[Cole RJ、Kripke DF、Gruen W、Mullaney DJ、Gillin JC.「Automatic sleep/wake identification from wrist activity」Sleep1992年10月;15(5):461~469]。睡眠覚醒分類のための活動記録法信号ベースのBMMの性能は、感度が高いが睡眠に対する特異性が低いと見込まれる(Paquet J、Kawinska A、Carrier J.「Wake detection capacity of actigraphy during sleep」sleep2007年10年;30(10):1362~1369)。言い換えると、ユーザが実際眠っている場合、BMMは、低い可能性がかなり高い。しかし、ユーザが起きているが、くつろいでいる状態にある場合、BMMは、同様に低い可能性がある。好ましい実施形態では、特異性は、横になっている身体姿勢という追加の要件と併せて比較的長い20分のモニタリングウィンドウを使用することによって向上させることができ、それは、特異性を増加させることが示されている(Cole RJ、Kripke DF、Gruen W、Mullaney DJ、Gillin JC.「Automatic sleep/wake identification from wrist activity」Sleep1992年10月;15(5):461~469]。
【0047】
しかし、BMMのための閾値χは、最初に決定することができ、個別のユーザに対してその性能(すなわち、正確さ)を合わせる(すなわち、向上させる)リアルタイムの最適化プロセスから恩恵を受けることができる。同じ身体の動きについて、TENS装置100中に組み入れられた加速度計152によって取得された加速度信号は、位置の変動の結果としてサイズおよびモーフォロジ(morphology)が異なり得る。さらに、異なるユーザは、睡眠の前およびその間で身体の動きパターンが異なることになる。一実施形態では、閾値パラメータχは、BMM値に基づく睡眠分類に対する感度がより高くなるように、最初に高い値に設定される。ユーザが睡眠分類後の目が覚めた状態に一貫してあるとTENS装置が決定した場合、閾値パラメータχは、特異性を高めるために、その値をより低くなるように(すなわち、より厳密になるように)調節される。ユーザが覚醒状態であるという装置の決定は、ユーザと装置の間の意図的な相互作用に、それに続くエポック中でのBMM値の増加に、および身体の直立方向への変化に基づかせることができる。また、誤分類は、リアルタイムクロック505からの睡眠分類イベントのタイムスタンプとユーザによって自己報告された睡眠時間の間の著しい時間遅れによって決定されることがあり得る。しかし、閾値パラメータ調節は、好ましくは、単一の誤分類に基づかせないで、むしろ一連の誤分類に基づかせる。
【0048】
また、BMMのための閾値χは、ユーザの身体の方向状態または方向角度の関数になるようにすることができる。たとえば、方向角度θが横になっている方向の閾値よりちょうど下にあるとき、閾値χは、低い身体の動きの分類の質を高めるために、より小さくすることができる。これは、身体の方向および身体の動きの分類結果が、ユーザの睡眠覚醒状態を決定するために、一緒に使用されるとき、特に有用である。
【0049】
それゆえ、TENS装置100のユーザ活動検出器500は、加速度計152の出力を使用して、ユーザの身体の動きおよび活動レベルを決定することが分かるはずである。より具体的に、ユーザ活動検出器500は、加速度計152から受け取ったx、yおよびz軸のデータを解析して、ユーザの身体の動きの程度を決定する。本発明の1つの好ましい形態では、これは、所定の期間にわたってユーザの身体の瞬間加速度を調べ、それを所定の閾値に対して比較することによって行われる。
夜間の刺激制御
本発明は、TENS装置100の痛みを和らげる治療上の有益さを最大にし、さらにTENS治療が夜間(すなわち、睡眠状態)にユーザに施されているとき、TENS装置100のユーザの睡眠の質に対するいずれかの可能性がある妨害を最小にすることを目的にする。睡眠に対する妨害を最小にするために、TENS装置の動作は、実際のユーザの睡眠フェーズの前およびその間、たとえばTENS刺激の強度レベルを低下させることによって、修正すべきである。たとえば、ユーザがベッド中で眠る準備をしているとき、強い刺激の感覚は、ユーザが眠りに落ちることを妨げる恐れがある。同様に、ユーザが眠っている間、昼間の使用に適したTENS刺激の強度レベルを用いて治療セッションを開始させると、睡眠からユーザを起こす恐れがある。昼間有効な状態を保っているが、夜間の適用についての潜在的な欠点を克服するTENS装置に関し、TENS装置は、ユーザのベッド中ステータスおよび睡眠覚醒状態に従って動作のその方法を修正すべきである(すな
わち、覚醒状態と関連する、より高い刺激の強度レベルは、睡眠状態に適したより低い刺激の強度レベルに低下させるべきである)。
【0050】
身体の方向および身体の動きは、ユーザがベッドの中にいるのかどうかを決定するために、それぞれ使用することができる。身体の方向と身体の動き方向を結合すると、ベッドの中にいることの検出決定の正確さを向上させることができる。
【0051】
1つの好ましい実施形態では、ベッドの中にいることの決定のために、身体の方向だけが考慮される。観測期間中の10の最新のエポックの5つ以上のエポックが、横になっている方向を示したとき、ユーザは、「ベッド中」ステータスであると考えられる。その結果として、刺激強度は、2dBだけ減少させる(刺激電流強度を20%だけ減少させることと等価である)。この低下された刺激強度によって、ユーザがより速く眠りに落ちることができるように、ユーザが感じる刺激の感覚が低下する。
【0052】
別の好ましい実施形態では、方向およびBMMの両方のファクタが考えられる。BMMのための閾値は、ユーザの睡眠覚醒ステータスを分類することを目的とする閾値より高く設定される、というのは、基準は、ユーザが「睡眠前の」ベッド中の状態、つまり身体の動き活動が低い状態で横になっている姿勢であるのかどうかを決定することになるからである。言い換えると、所与のBMMは、寝ている分類のための閾値を満たすことができないが、ベッド中分類のための閾値を満たすことができる。
【0053】
活動記録法ベースの睡眠研究が、睡眠ポリグラフィに基づく参照基準より勝って、人の睡眠状態をしばしば分類することが知られている。(Raquet J、Kawinska A、Carrier J.「Wake detection capacity of actigraphy during sleep」Sleep2007年10月;30(10):1362~1369]。その理由は、身体の少ない動きと結合された横になっている姿勢が、実際の睡眠ステージよりしばしば先行するということである(しかし必ずしも一致しない)。この「睡眠前の」ベッド中の期間の身体姿勢および動きの活動レベルは、実際の睡眠期間のそれと区別ができない。これが、伝統的な睡眠研究の文脈で睡眠状態を分類するために、活動記録法を使用することに対して課題を課すが、ベッド中状態と実際の睡眠状態の間の時間ギャップが、TENS治療を適用するために好都合である。TENS治療セッションが行われているとき、ユーザが迅速に眠りに落ちるのを助けるために、「睡眠前の」フェーズの間、刺激強度を減少させることは、望ましい。そうでなければ、実際の睡眠フェーズは、電流TENS治療セッションが、正常な昼間のTENS刺激強度の強い感覚によって完了するまで、遅らせることができる。
【0054】
好ましい実施形態では、TENS治療セッションは、ベッド中ステータスが有効であるとTENS装置が決定したとき、2時間毎に自動的に再スタートさせることになり、各セッションが1時間持続する。この自動再スタートの特徴によって、定期的に痛み軽減治療を施すために、夜間ずっと(すなわち、睡眠状態中)TENS治療をユーザに施すことが可能になるので、ユーザが痛みによって起こされる尤度が最小になる。
【0055】
それゆえ、TENS装置100のユーザ活動検出器500は、加速度計152の出力を使用して、ユーザの「ベッド中」ステータスを決定することが分かるはずである。より具体的に、ユーザ活動検出器500は、「ベッド中」ステータスが検出されたとき、前述の身体の方向の決定および前述の身体の動きおよび活動レベルの決定を解析して、TENS装置が、刺激の強度レベルを低下させるなど、その動作を修正するために、ユーザのベッド中ステータスを決定する。
睡眠の質をモニタするための活動記録法
本発明の好ましい実施形態では、身体の方向および身体の動きは、オンボード加速度計152によって夜間モニタされる。活動記録法ベースの特徴のBMMは、睡眠の質を査定するために使用され、身体の方向は、ユーザがベッドから出ている可能性がある、いずれかの期間も取り除くために使用される。実際のTENS刺激期間の活動レベルは、夜間の刺激の強度レベルを改善するために使用される。夜間の刺激の強度レベルが強すぎる場合、ユーザの身体の動きが増えるなど、自意識がないが故意の反応を引き起こす恐れがある。したがって、夜間の刺激がユーザを乱さないようにするために(その妨害は、増加されたBMMによって反映される)、必要な場合、夜間の刺激の強度レベルを調節することが望ましい。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施形態では、BMMの増加が夜間のTENS刺激の間に検出されたとき、TENS装置は、所定の期間(たとえば、5分間)、刺激の強度レベルを低下させる。刺激の強度レベルのこの低下がBMMを減少させることに成功した場合(すなわち、刺激強度が、もうユーザを乱すことがないレベルに低下された)、TENS装置100は、今後の夜間のTENS治療セッションのために低下された刺激の強度レベルを「記憶している」ように構成される。
【0057】
本発明の別の実施形態では、刺激の強度レベルの低下がBMMを減少させることに成功した場合、低下された刺激の強度レベルは、今後の治療セッションに直ちに採用されない。その代り、低下された刺激の強度レベルは、刺激強度とBMMの間に同じ相関が2つの追加のその後に続くTENS治療セッション中に観測されたときだけ使用される。
【0058】
夜間のTENS刺激強度が十分強くないとき、TENS治療は、痛みの感覚を効果的に抑えることができない恐れがあり、痛み感覚が睡眠を妨げる恐れがある。この状況では、BMMは、ユーザが感じる痛みのために、高くなることができる。本発明の好ましい実施形態では、BMMの増加は、まず、刺激の強度レベルの減少を引き起こすことになる(すなわち、BMMが過度の刺激強度によって引き起こされた場合)。BMMの目立った減少がその後観測されない場合、またはBMMが増加し続ける場合、夜間のTENS刺激の強度レベルの増加を開始する。BMMが刺激の強度レベルの増加を受けて減少した場合(すなわち、刺激の強度レベルの増加が痛みを阻止することに有効であり、したがってBMMが減少された場合)、TENS装置は、今後の夜間のTENS治療セッションのために、高められた刺激の強度レベルを記憶する。
【0059】
各TENS治療セッションの後、残留した痛み軽減効果は、一般に、ある期間続くことになる。この残留した痛み軽減効果の持続期間は、ユーザ毎に変わることになる。本発明の好ましい実施形態は、前のTENS治療セッションの完了後1時間に、次のTENS治療セッションを自動再スタートさせるために、TENS装置100中に組み入れられたタイマ(図示せず)を設定する。いく人かのユーザについて、2つの夜間のTENS治療セッションの間のこの1時間のギャップは、長すぎて、残留した痛み軽減効果によってその間を埋めることができない恐れがある。それゆえ、本発明の別の好ましい形態では、自動再スタートさせるタイマが期限に達する前に、BMMが増加した場合、TENS装置は、自動再スタートさせるタイマが期限に達するのを待つことなく、次の治療セッションを自動的に再スタートさせるように構成される。本発明の好ましい実施形態は、好ましくは、早期再スタートの事例の履歴を維持する。早期再スタート数が所定の閾値を超えたとき、自動再スタートさせるタイマは、痛みを和らげるTENS治療セッションの間のギャップを狭めるために、短く設定される。
実施例
本発明の好ましい実施形態の使用を以下の実施例で例示する。ユーザは、電極アレイ120をTENS刺激装置105上にパチンと付け、ストラップ110を使用して、ユーザのふくらはぎ上部140上にTENS装置100を、電極と表皮が十分に接触している状態でしっかりと固定する(
図1および2)。新規なTENS装置100が表皮上にあるという状態を検出したとき(すなわち、上記で議論し
図3に示す表皮上検出器を使用して)、TENS装置は、加速度計データの解析を始める。
【0060】
図6は、3分の期間にわたるオンボード加速度計152からのデータのサンプルトレースを示す。より具体的に、
図6に示す上部の3つのトレースは、x軸方向301、y軸方向302およびz軸方向303に関し、加速度計出力データを例示する。
図6に示す第4のトレース304(すなわち、底部のトレース)は、上記の方程式1に従って計算された瞬間加速度A(t)の値をプロットする。
【0061】
図6に示す4つの例示的なトレースによって表されたデータに基づくと、ユーザの身体の方向は、最初の60秒セグメント305の間、横になっていると結論することができる(すなわち、ゼロ加速度が、この期間、y軸に沿って検出されているからである)、そしてユーザの身体の方向は、次の120秒セグメント306の間、直立していると結論することができる(すなわち、1gの加速度が、この期間、y軸に沿って検出されているからである)。次の40秒セグメント308の間、ユーザは、安定した、直立の状態のままであると結論することができる、というのは、瞬間加速度304がほとんど動いていないからである(方向変化以外にない)。しかし、次の80秒セグメント309の間、ユーザは、活動レベルが比較的高いと結論することができる(すなわち、瞬間加速度304が実質的に動いているからである)。それゆえ、
図6に示すデータは、ユーザが横になっているとき、ユーザが直立しているとき、ユーザが実質的に安定しているとき、およびユーザが高いレベルで活動しているときを決定するための基礎を提供する。
【0062】
図7は、同じy軸加速度計の出力データを使用して、ユーザの身体の方向を決定するための好ましい方法を例示する。より具体的に、ここで
図7を調べると、y軸加速度計出力302がユーザの方向を決定するために使用されることになるとき、平均加速度が、まずエポック毎に取得され、それは、この実施例で1分セグメントとして定義される。トレース312は、
図6および7でカバーされる3つのエポックに関する平均加速度値を示す。トレース312の平均加速度値は、y軸加速度計方向174と水平面170の間の角度θ172(
図5)にマッピングされる。それらは、身体の方向が直立であるのか、または横になっているのかを決定するために、コンテキスト依存の角度閾値319(
図7)と比較される。点線314は、好ましい実施形態での30°の目標角度閾値を示す。正のオフセットが、第1のエポックに関しコンテキスト依存の角度閾値319に加えられる、というのは、前の身体の方向が横になっているからである(図示せず)。第1のエポックについての角度316は、閾値311より低いので、身体の方向は、横になっていると分類される。第1のエポックの方向316が横になっているので、オフセットは、目標角度閾値314に加えられて、第2のエポックに関しコンテキスト依存の閾値313が形成される。閾値313は、閾値311よりわずかに大きい、というのは、オフセット中の加算項の効果、すなわち推定角度平均の標準誤差のためであるからである。第2のエポックは、加速度値の変動がより大きく、標準誤差およびオフセット項がより大きくなることに繋がる。第2のエポック317の角度は、閾値313より高いので、身体の方向は、直立していると分類される。身体の方向が、第2のエポックに関し直立していると分類されるので、オフセットは、目標角度閾値314から減算されて、第3のエポックに関しコンテキスト依存の閾値315が形成される。身体の方向が、第3のエポックに関し直立していると分類される、というのは、角度値318がコンテキスト依存の閾値315より高いからである。それゆえ、
図7に示すデータは、ユーザが横になっているとき、およびユーザが直立しているときと決定するための基礎を提供する。
【0063】
図8は、一連の直立している/横になっている身体の方向について「ベッド中」の分類結果を示す。本発明の好ましい実施形態は、10の最新のエポックに基づき、そのエポック毎に「ベッド中」の分類を行う。それゆえ、たとえば、16番目のエポックで、「ベッド中」ステータスが、黒の四角形322で示されているように、「真」と考えられる、というのは、10の最新の身体の方向(16番目のエポックに関する10の最新の身体の方向が、点線ボックス324内に示されている)からの8個が横になっているからである(10の最新の身体の方向の2つだけが、直立していると分類されている)。身体の方向が等しく分割された場合(たとえば、5つの身体の方向が横になっていると分類され、5つの身体の方向が直立していると分類された場合)、前の「ベッド中」の分類が現在のエポックに対して持続される。それゆえ、
図8に示すデータは、ユーザがベッド中にいるときと決定するための基礎を提供する。
【0064】
図9は、活動レベルカウントM
Tについての計算結果を例示する。
図6からの瞬間加速度のトレース304は、
図9に再現されている。あるエポックに関する活動レベルカウントM
Tは、そのエポック内の瞬間加速度データの平均である。この実施例では、瞬間加速度データは、活動が最初のエポック335から次のエポック336に、そして3番目のエポック337に漸進的に高くなっていくことを明らかにしている。実に、3番目のエポック337での活動レベルカウントは、2番目のエポック336のそれより高く、それは、次いで最初のエポック335のそれより高い。特定の時間に関するBMMは、最新の20のエポックに関する活動レベルカウントのメジアンとして定義される。本発明の好ましい実施形態では、BMMは、0.1gの閾値(χ)に対して比較される。BMMがその閾値より低い場合、ユーザの身体は、「低い活動」ステータスを有していると分類される。それゆえ、
図9に示すデータは、ユーザの活動レベルを決定するための基礎を提供する(すなわち、ユーザが「低い活動」ステータスを有するとして分類すべきときと決定するため)。
【0065】
本発明の好ましい実施形態は、「ベッド中」ステータスおよび「低い活動」ステータスの両方、どちらかを個別に、または一緒に使用して、新規なTENS装置の動作を調節する。より具体的に、本発明の好ましい実施形態は、ユーザが「ベッド中」ステータスまたは「低い活動」ステータス、あるいはその両方を有するとして特徴付けられたとき、TENS装置100の刺激の強度レベルを低下させるように構成される。
【0066】
図10に示すタイミング図は、本発明の新規なTENS装置が、加速度計データから導き出されたユーザの身体および測定のステータスに従って、どのようにしてその刺激装置の動作を調節するのかの実施例を提示する。
図10は、上から下に、ユーザの挙動350、ユーザの「ベッド中」ステータス360、ユーザの「低い活動」ステータス370およびTENS刺激装置380の動作を示す。
【0067】
新規なTENS装置は、ユーザのふくらはぎ上部上に位置付けられて、表皮上にあるという状態で起動され、それによって活動モニタリングを開始する。最初、刺激装置105が、夜の活動期間351の強度381を用いて正常な刺激を加える。ユーザの「ベッド中」ステータスは、「オフ」であり、ユーザの「低い活動」ステータスは、「オフ」である(初期の「オン」期間371に続き)。
【0068】
ユーザが、時間352に床についたとき、加速度計152からのデータは、ユーザが横になっている、かつこの身体の方向が一定数のエポックの間維持されていることを示しているので、「ベッド中」ステータスが「オン」状態361に変更される(いくらかの遅延の後、というのは、好ましい実施形態での「ベッド中」検出器が、「ベッド中」という決定を下すために、一定数の横になっている身体姿勢のエポックの解析を必要とするからである)。ユーザは、ユーザがベッド中の間、いくらかの期間、その脚をなお動かす可能性があるが、しかしユーザは、通常、その後BMMが低い状態である平穏な期間に入るので、「低い活動」ステータスが、追加の時間遅延の後、「オン」状態372に変更される。やはり、新規なTENS装置100は、一度「ベッド中」ステータスがオンにされると、刺激の強度レベルを「強いが心地よい」レベル381(それは、昼間のTENS治療により適している)より低く、より低いレベル382(それは、眠りに落ちるのにより適している)に軽減することによって、ユーザが眠りに落ちるのを助けるために、その刺激装置の出力強度をより低いレベル382に低下させる。
【0069】
図10に例示した実施例では、夜間、ユーザは、刺激の感覚(上記で議論した低下された刺激の強度レベル382でさえ)によって乱され、そして時刻353にその脚を動かす。この脚の活動によって、「低い活動」ステータス373からの変化が引き起こされる。TENS刺激装置105は、その刺激の強度レベルを新しい、より低い刺激の強度レベル383にさらに低下させることによって、これについて補償する。時刻354で、TENS刺激がユーザに全く加えられていないとき、痛み感覚によって、ユーザがその脚を動かし(ベッドに入ったままでいることによって横になっている方向を維持しながら)、したがって「低い活動」ステータスが、374で「オフ」に変更される。新規なTENS装置は、刺激「オフ」、「低い活動」ステータス「オフ」および「ベッド中」ステータス「オン」の組合せを認識し、それは、ユーザが、ベッドに横になっている間、痛みを被っていることを反映している。時刻385(タイマが、次のTENS治療セッションを自動的に開始させることになるはずのとき)まで待つ代わりに、TENS装置は、次のTENS治療セッションを早く(時刻384に)開始させる。
【0070】
時刻355で、ユーザが起き、そしてベッドから出て、直立の姿勢になり活動レベルが高くなる。「ベッド中」ステータスおよび「低い活動」ステータスの両方が「オフ」にされ、すべての今後のTENS治療セッションは、正常な刺激強度386(それは、覚醒ステータスの使用に適している)に戻ることになる。
【0071】
それゆえ、大まかに言って、本発明は、TENS装置中に組み入れられた加速度計を使用して、x軸、y軸およびz軸の方向でTENS装置の加速度を測定する(そして故にTENS装置は、それゆえ加速度計は、それが取り付けられた身体の手足の加速度を測定する)ことが分かるはずである。y軸データは、上記で議論した方法で地球の重力ベクトルgと比較されて、ユーザの方向が決定され、そしてこの方向は、「横になっている」ステータスまたは「直立している」ステータスとして特徴付けることができる。x軸データ、y軸データおよびz軸データは、上記で議論した方法で使用されて、身体の動きが決定され、そしてこの身体の動きは、「低い活動」ステータスまたは「低くない活動」ステータスとして特徴付けることができる。横になっている/直立しているステータスおよび低い活動/低くない活動ステータスは、上記で議論した方法で使用されて、ユーザがベッド中にいる可能性があるのかどうかが決定され、そしてこの決定は、「ベッド中」ステータスまたは「ベッド中でない」ステータスとして特徴付けることができる。TENS装置は、ユーザが「ベッド中」ステータスを有する場合、TENS装置が刺激の強度レベルをより高い「覚醒」状態レベルからより低い「睡眠」状態レベルに低下させるように構成される。その後、ユーザの方向および身体の動きがモニタされる。ユーザが横になった状態のままであり、その後、身体の動きが増加した場合(たとえば、痛みによって、ユーザが睡眠から起こされたことを示す可能性がある)、TENS装置は、痛み軽減作用を高め、それによってユーザが眠ったままでいるように助けるために、刺激の強度レベルを高めるように構成される。ユーザが横になった状態のままでいないで、その後身体の動きが増えた場合(たとえば、ユーザが起床して、あちこち動いていることを示す可能性がある)、TENS装置は、高められた痛み軽減作用をユーザに施すために、刺激の強度レベルをより高いレベルに(たとえば、正常の「覚醒」状態レベルに)高めるように構成される。
好ましい実施形態の修正
本発明は、夜間の使用の文脈で時々上記に述べたが、ユーザの活動および方向のステータスは、また、TENS刺激装置の動作を修正するために、昼間の使用の間に利用することができることを認識すべきである。例として、ただし限定せずに、ユーザの活動および方向のステータスは、昼間の睡眠時間の間のTENS刺激装置の動作を修正するように、たとえば昼寝の間の刺激の強度レベルを低下させるために、使用することができる。
【0072】
さらにまた、ユーザの活動および方向のステータスも、ユーザの睡眠覚醒状態に関わりなく、使用することができる。例として、ただし限定せずに、ユーザの活動および方向のステータスは、昼間の仕事時間の間におけるTENS刺激装置の動作を修正するように(たとえば、ユーザが机に座っているとき、刺激の強度レベルを低下させるために)、または通常の日々の活動の間におけるTENS刺激装置の動作を修正するように(たとえば、ユーザがウオーキングまたはランニングしているときになど、刺激の強度レベルを高めるために)、使用することができる。
【0073】
それゆえ、本発明は、ユーザ活動を自動的に検出する、経皮的電気神経刺激装置を提供し、TENS刺激装置は、検出されたユーザ活動に従ってその動作を修正するように前もってプログラムすることができることを認識されたい。
【0074】
さらにまた、本発明の性質を説明するために本明細書に述べ例示してきた細部、材料、ステップおよび部品の配列における多くの追加の変更を、本発明の原理および範囲内になお留まったまま、当業者が実施することができることを理解すべきである。