(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】トランス電源回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
G05F1/56 310H
G05F1/56 310S
(21)【出願番号】P 2018153177
(22)【出願日】2018-08-16
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】517374937
【氏名又は名称】株式会社マキセンサービス
(73)【特許権者】
【識別番号】518293549
【氏名又は名称】合同会社七彩
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【氏名又は名称】小松 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 正敏
(72)【発明者】
【氏名】松木 一成
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 映江
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-92851(JP,A)
【文献】特開2010-183730(JP,A)
【文献】特開2007-234415(JP,A)
【文献】実開昭54-137839(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束制御形トランスとその制御回路からなるトランス電源回路であって、
前記磁束制御形トランスは、
同一形状で同一特性を有する第1の磁気回路及び第2の磁気回路と、
前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路に共通に巻回された1次入力巻線と、
前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路にそれぞれ巻回された巻数が等しい2次出力巻線と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1の磁気回路の出力に接続されたブリッジ形整流回路及び第1の電流制限回路と、
前記第1の電流制限回路に並列に接続された電流調整用抵抗と、
前記第2の磁気回路の出力に接続されたブリッジ形整流回路及び第2の電流制限回路と、
前記第2の電流制限回路に並列に接続された電流調整用抵抗と、を備えて構成されていることを特徴とするトランス電源回路。
【請求項2】
前記ブリッジ形整流回路の両端出力に、直流化する平滑回路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項3】
前記磁束制御形トランスを三相接続して前記第1の磁気回路と前記第2の磁気回路の2次出力巻線をそれぞれ三相整流する三相全波整流回路が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトランス電源回路。
【請求項4】
前記三相全波整流回路の両端出力に、直流化する平滑回路が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のトランス電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変動が大きな環境で使用可能なLED照明用の電源トランスとその制御回路からなるトランス電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスを使用したLED照明用の電源回路としては、例えば以下のものが知られている。
図24の電源回路は、絶縁トランス、ブリッジ形整流回路、及び平滑コンデンサで構成されている。
図25の電源回路は、絶縁トランス、ブリッジ形整流回路、平滑コンデンサ、及び電流制御用抵抗で構成されている。
図26の電源回路は、絶縁トランス、ブリッジ形整流回路、平滑コンデンサ、及び最大電流を制限する電流制限回路で構成されている。
【0003】
しかしながら、これらの電源回路による制御方法では、入力電圧が+10%~+20%上昇すると、LED照明及び電流制御用抵抗や電流制限回路の発熱量が多くなり、放熱が十分でない場合には故障の原因となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、入力電圧が+10%~+20%程度上昇しても、出力電流の最大値を一定、もしくは変動を少なくすることが可能なLED照明用の電源トランスと制御回路からなるトランス電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、磁束制御形トランスとその制御回路からなるトランス電源回路であって、前記磁束制御形トランスは、同一形状で同一特性を有する第1の磁気回路及び第2の磁気回路と、前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路に共通に巻回された1次入力巻線と、前記第1の磁気回路及び前記第2の磁気回路にそれぞれ巻回された巻数が等しい2次出力巻線と、を備え、前記制御回路は、前記第1の磁気回路の出力に接続されたブリッジ形整流回路及び第1の電流制限回路と、前記第1の電流制限回路に並列に接続された電流調整用抵抗と、前記第2の磁気回路の出力に接続されたブリッジ形整流回路及び第2の電流制限回路と、前記第2の電流制限回路に並列に接続された電流調整用抵抗と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のトランス電源回路において、前記ブリッジ形整流回路の両端出力に、直流化する平滑回路が設けられていても良い。
【0008】
また、本発明のトランス電源回路において、前記磁束制御形トランスを三相接続して前記第1の磁気回路と前記第2の磁気回路の2次出力巻線をそれぞれ三相整流する三相全波整流回路が設けられていても良い。
【0009】
また、本発明のトランス電源回路において、前記三相全波整流回路の両端出力に、直流化する平滑回路が設けられていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトランス電源回路によれば、入力電圧変動(増加)が大きい環境において、入力電圧が+10%~+20%程度上昇しても、出力電流の最大値を一定、もしくは変動を少なくすることにより、トランス電源回路を使用したLED照明装置の故障を無くし、信頼性を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】磁束制御形トランスの実測値データを示すグラフ。
【
図4】磁束制御形トランスの制御回路を示す構成図。
【
図5】
図4の電流制限回路(I
1 >I
2 )の両端電圧を示す波形図。
【
図6】
図4の電流制限回路(I
1 <I
2 )の両端電圧を示す波形図。
【
図7】
図4の電流制限回路(I
1 =I
2 )の両端電圧を示す波形図。
【
図8】
図4の電流制限回路に並列に電流調整用の帰還抵抗を接続した回路図。
【
図9】本発明の基本構成として負荷独立タイプの電源回路を示す回路図。
【
図10】本発明の基本構成として並列・負荷共通タイプの電源回路を示す回路図。
【
図11】本発明の基本構成として直列・負荷共通タイプの電源回路を示す回路図。
【
図12】本発明の第1実施形態のトランス電源回路を示す回路図。
【
図14】本発明の第2実施形態のトランス電源回路を示す回路図。
【
図15】本発明の第3実施形態のトランス電源回路を示す回路図。
【
図16】磁束制御形トランスの三相接続構成を示す回路図。
【
図17】本発明の第4実施形態のトランス電源回路を示す回路図。
【
図18】実測値データを収集した負荷独立タイプの電源回路1の構成図。
【
図19】実測値データを収集した負荷独立タイプの電源回路2の構成図。
【
図20】実測値データを収集した並列・負荷共通タイプの電源回路1の構成図。
【
図21】実測値データを収集した並列・負荷共通タイプの電源回路2の構成図。
【
図24】従来の電源トランスと全波整流回路を備えた電源回路の構成図。
【
図25】従来の電源トランスと全波整流回路と電流制限抵抗を備えた電源回路の構成図。
【
図26】従来の電源トランスと全波整流回路と電流制限回路を備えた電源回路の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明のトランス電源回路1は、例えば電圧変動が大きな機械の休止中、稼働中における電源電圧変動(変動が+10%~+20%)や、高温・低温、電界・磁界の強い場所において、LED照明装置用のトランス電源をより安全に使用するために開発されたものである。このトランス電源回路1は、
図1に示す磁束制御形トランス10とその制御回路20を備えて構成されている。
【0014】
(磁束制御形トランスの構成)
図1は磁束制御形トランスの構成図、
図2は磁束制御形トランスの略図である。本実施形態の磁束制御形トランス10は、トロイダル型トランスであって、リング状のコア(鉄芯)からなる第1の磁気回路11と、同じくリング状のコア(鉄芯)からなる第2の磁気回路12を備えて構成されている。第1の磁気回路11のコアと第2の磁気回路12のコアは、透磁率が高い同じ材料の磁性体で同一形状に形成されており、第1の磁気回路11のコア断面積S
1 と第2の磁気回路12のコア断面積S
2 が等しく設定されている(S
1 =S
2 )。したがって、第1の磁気回路11と第2の磁気回路12は、飽和磁束密度等、同一特性を有している。
【0015】
第1の磁気回路11と第2の磁気回路12には、両者のコアの1次側に共通して銅線をN回巻き付けて巻回された1次入力巻線13が設けられている。また、第1の磁気回路11と第2の磁気回路12には、両者のコアの2次側にそれぞれ銅線を巻き付けて巻回された2次出力巻線14,15が設けられている。第1の磁気回路11の2次出力巻線14の巻数N1 と第2の磁気回路12の2次出力巻線15の巻数N2 は等しい巻数に設定されている(N1 =N2 )。したがって、この条件の磁束制御形トランス10においては、入力電圧VINに関係なく、第1の磁気回路11の出力電流I1 と第2の磁気回路12の出力電流I1 は等しくなる(I1 =I2 )。
【0016】
(磁束制御形トランスの原理説明)
前記のような構成において、1次入力巻線13に電圧VINを印加すると、第1の磁気回路11に磁束Φ1-1 、第2の磁気回路12に磁束Φ1-2 が発生するため励磁電流Iが流れる。
【0017】
第2の磁気回路12に巻回された2次出力巻線15には、第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 に応じた電圧V2 が発生する。ここで第2の磁気回路12の2次出力巻線15に2次出力電流I2 が流れると、第2の磁気回路12の1次入力巻線13による磁束Φ1-2 とは逆向きの磁束Φ2 が発生する。これを打ち消すように1次入力巻線13には電流が流れるが、第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 は減少して2次出力電圧V2 は低下する。このとき第1の磁気回路11の磁束Φ1-1 は1次入力巻線13の印加電圧と誘記電圧が平衡するため、第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 の減少相当分第1の磁気回路11の2次出力電圧V1 は増加する。
【0018】
第1の磁気回路11の2次出力巻線14には、第1の磁気回路11の磁束Φ1-1 に応じた電圧V1 が発生する。ここで第1の磁気回路11の2次出力巻線14に2次出力電流I1 が流れると、第1の磁気回路11の1次入力巻線13による磁束Φ1-1 とは逆向きの磁束Φ1 が発生する。これを打ち消すように1次入力巻線13には電流が流れるが、第1の磁気回路11の磁束Φ1-1 は減少して第1の磁気回路11の出力電圧V1 は低下する。このとき第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 は1次入力巻線13の印加電圧と誘起電圧が平衡するため、第1の磁気回路11の磁束Φ1-1 の減少相当分第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 が増加して第2の磁気回路12上に巻回された1次入力巻線13と2次出力巻線15の鎖交磁束が増加し、2次電圧V2 は増加する。
【0019】
第2の磁気回路12の2次出力巻線15の負荷が減少し、2次出力電流I2 が減少すると、第2の磁気回路12では1次入力巻線13の磁束Φ1-2 に対して逆向きの磁束Φ2 が減少する。したがって、第2の磁気回路12の磁束Φ1-2 が増加して、1次入力巻線13と2次出力巻線15の鎖交磁束が増加するので第2の磁気回路12の2次出力電圧V2 は増加する。また、第1の磁気回路11の2次出力巻線14の電流I1 を減少させると、1次入力巻線13の印加電圧VINにより第1の磁気回路11の磁束Φ1-1 が増加すると、第2の磁気回路12に巻回された、1次入力巻線13と2次出力巻線15の鎖交磁束が減少し、第2の磁気回路12の2次出力電圧V2 は低下する。
【0020】
(磁束制御形トランスの実測値データ)
図3は前記構成からなる磁束制御形トランスの実測値データを示したもので、以下の条件の下、第1の磁気回路11の2次出力電流I
1 と第2の磁気回路12の2次出力電流I
2 を測定したところ、
図3のグラフに示す結果となった。
S
1 =S
2
N
1 =N
2 =360
T
V
IN=100V
V
1 =V
2 =15V
S
1 :第1の磁気回路のコア断面積
S
2 :第2の磁気回路のコア断面積
N
1 :第1の磁気回路の2次出力巻線の巻数
N
2 :第2の磁気回路の2次出力巻線の巻数
V
IN:1次入力巻線への印加電圧
V
1 :第1の磁気回路の出力電圧
V
2 :第2の磁気回路の出力電圧
【0021】
図3のグラフから明らかなように、本実施形態の磁束制御形トランス10の特徴として、第1の磁気回路11の2次出力電流I
1 と第2の磁気回路12の2次出力電流I
2 との間にI
1 =I
2 の関係が成立することが判明した。
【0022】
(磁束制御形トランスの制御回路)
図4は磁束制御形トランスの制御回路を示す構成図である。まず、
図4において電流制限回路30により制限電流I
1 ,I
2 をI
1 >I
2 に設定した場合、第1の制御回路20-1の電圧V
1 と第2の制御回路20-2の電圧V
2 はV
1 <V
2 となり、第1の電流制限回路30-1の両端電圧V
3 と第2の電流制限回路30-2の両端電圧V
4 は、
図5に示すようにV
3 <V
4 となる。
【0023】
次に、
図4において電流制限回路30により制限電流I
1 ,I
2 をI
1 <I
2 に設定した場合、第1の制御回路20-1の電圧V
1 と第2の制御回路20-2の電圧V
2 はV
1 >V
2 となり、第1の電流制限回路30-1の両端電圧V
3 と第2の電流制限回路30-2の両端電圧V
4 は、
図6に示すようにV
3 >V
4 となる。ここで、第1の電流制限回路30-1の損失はV
3 ×I
1 、第2の電流制限回路30-2の損失はV
4 ×I
2 であり、電流制限回路30の損失は、第1の電流制限回路30-1の損失と第2の電流制限回路30-2の損失の合計(V
3 ×I
1 )+(V
4 ×I
2 )となる。しかし、
図5、
図6から電流制限回路30の損失は、回路を流れる電流(設定電流値)が小さい方の電流制限回路の損失に左右され、損失が小さくならない。
【0024】
また、
図4において電流制限回路30により制限電流I
1 ,I
2 をI
1 =I
2 に設定し、第1の電流制限回路30-1の両端電圧V
3 と第2の電流制限回路30-2の両端電圧V
4 がより小さくさらにV
3 =V
4 となるように制限電流I
1 ,I
2 を微調整すると、V
3 とV
4 は
図7のようになり、電流制限回路30の損失は小さくなる。しかし、この制御方法は、回路が不安定であるため、電源回路としては使用することができない。
【0025】
そこで、
図8に示すように、電流調整用の帰還抵抗として、第1の電流制限回路30-1と並列に抵抗r
1 を接続し、第2の電流制限回路30-2と並列にr
2 を接続する。これにより、第1の制御回路20-1に流れる電流はI
1 +Δi
1 、第2の制御回路20-2に流れる電流はI
2 +Δi
2 となる。I
1 ,I
2 は電流制限回路30で一定値に制限されているため、第1の制御回路20-1に流れる電流と第2の制御回路20-2に流れる電流はΔi
1 とΔi
2 に左右される。ここで、V
3 >V
4 ではΔi
1 >Δi
2 となり、第1の制御回路20-1の電流>第2の制御回路20-2の電流となるため、第1の制御回路20-1は第2の制御回路20-2の電流により制限されてV
3 <V
4 となる。逆に、V
3 <V
4 ではΔi
1 <Δi
2 となり、第1の制御回路20-1の電流<第2の制御回路20-2の電流となるため、第2の制御回路20-2は第1の制御回路20-1の電流により制限されてV
3 >V
4 となる。
【0026】
以上のことから、磁束制御形トランス10において、
図8のように電流制限回路30(30-1,30-2)と並列に抵抗r
1 ,r
2 を接続することにより、第1の制御回路20-1と第2の制御回路20-2の電流が相互に影響して、入力電圧の上昇に対して出力電圧の上昇を小さくすることができる。この結果、入力電圧の上昇(+10%~+20%)に対して電流制限回路30の損失を小さくすることができ、電源回路全体の動作を安定させることができる。
【0027】
(本発明の基本構成)
本発明の基本構成としては、例えば
図9~11に示す回路が考えられる。
図9のトランス電源回路1Aは、第1の磁気回路11の出力と第2の磁気回路12の出力をそれぞれ別の独立した負荷50,50に電力供給する負荷独立タイプの電源回路である。
図10のトランス電源回路1Bは、第1の磁気回路11の出力と第2の磁気回路12の出力を並列に接続して共通の負荷50に電力供給する並列・負荷共通タイプの電源回路である。
図11のトランス電源回路1Cは、第1の磁気回路11の出力と第2の磁気回路12の出力を直列に接続して共通の負荷50に電力供給する直列・負荷共通タイプの電源回路である。
【0028】
(本発明の実施形態)
本発明の実施形態としては、例えば
図12~17に示す構成が考えられる。
図12は本発明の第1実施形態のトランス電源回路を示す回路図である。
図12のトランス電源回路1-1は、磁束制御形トランス10と第1の制御回路20-1と第2の制御回路20-2からなる。磁束制御形トランス10は、入力端子16を介して商用電源に接続され、商用電源から供給された入力電圧を定格電圧に変換し、第1の磁気回路11と第2の磁気回路12から出力する。
【0029】
第1の制御回路20-1は、第1の磁気回路11の出力に接続されたブリッジ形整流回路40-1と、ブリッジ形整流回路40-1の出力に接続された第1の電流制限回路30-1と、第1の電流制限回路30-1に並列に接続された電流調整用抵抗41を備えて構成されている。第2の制御回路20-2は、第2の磁気回路12の出力に接続されたブリッジ形整流回路40-2と、ブリッジ形整流回路40-2の出力に接続された第2の電流制限回路30-2と、第2の電流制限回路30-2に並列に接続された電流調整用抵抗42を備えて構成されている。この第1の制御回路20-1と第2の制御回路20-2は、出力端子17を介して、複数個のLED51,51,…を直列に接続したLEDランプ52に接続されている。なお、電流調整用抵抗41,42は、電流制限回路30(30-1,30-2)の両端電圧V3 とV4 を小さくし|V3 -V4 |の値が最小になるように、電流制限回路30を構成する電流制限抵抗の100倍程度の抵抗値を有する帰還抵抗である。
【0030】
図13は電流制限回路の構成を示す回路図である。電流制限回路30は、バイアス抵抗31と、電界効果トランジスタ(FET)32と、トランジスタ33と、電流制限抵抗34を備えてなる。バイアス抵抗31は、一端が逆流防止用のダイオード35と過電圧防止用の抵抗36を介してブリッジ形整流回路40の出力端子Bに接続され、他端が電界効果トランジスタ32のゲートに接続される。電界効果トランジスタ32は、ドレインがLEDランプの入力端子Cに接続され、ソースが電流制限抵抗34の一端に接続される。トランジスタ33は、ベースが電界効果トランジスタ32のソースに接続され、コレクタがバイアス抵抗31の他端に接続され、エミッタが電流制限抵抗34の他端に接続される。なお、ツェナーダイオード37はバイアス電圧を一定に保持するための素子、コンデンサ38はバイアス電圧を直流に整流するための素子、抵抗39はゲートリーク抵抗である。
【0031】
この電流制限回路30の構成によれば、バイアス抵抗31からゲート・ソース間に電圧がかかると、電界効果トランジスタ32がONし、入力端子CからLEDランプ52に電流が流れて個々のLED51,51,…が点灯する。また、電流制限抵抗34に流れる電流が制限電流1Aを超えると、ベースにバイアス電圧がかかりトランジスタ33がONし、コレクタ・エミッタ間に電流が流れる。これにより、ゲート・ソース間の電圧が遮断されて電界効果トランジスタ32がOFFし、LEDランプ52に流れる電流が遮断される。この電界効果トランジスタ32とトランジスタ33のON/OFF切替が高速で行われることにより、LEDランプ52に定格を超える過電流が流れるのを阻止し、制限電流1Aに維持することができる。
【0032】
図14は本発明の第2実施形態のトランス電源回路を示す回路図である。
図14の電源トランス1-2は、
図12のトランス電源回路1-1において、ブリッジ形整流回路40の両端出力に、直流化する平滑回路60が設けられたものである。平滑回路60は、ブリッジ形整流回路40の出力に接続された逆流防止用ダイオード61と、電流制限抵抗62と、平滑用コンデンサ63と、逆流防止用ダイオード61に並列に接続された放電用ダイオード64を備えて構成され、
図14の波形図のようにLED51に流れる電流が最大電流の5%以下にならないようにする。
【0033】
図15は本発明の第3実施形態のトランス電源回路を示す回路図である。
図15の電源トランス1-3は、磁束制御形トランス10を三相接続して第1の磁気回路11と第2の磁気回路12の2次出力巻線14,15をそれぞれ三相整流して一括制御するように構成されている。
【0034】
図16は磁束制御形トランスの三相接続構成を示す回路図である。
図16のように、磁束制御形トランス10を三相接続する構成は、U相、V相、W相からなる三相交流電源に対し、U-V入力端子間、V-W入力端子間、W-U入力端子間にそれぞれ1次入力巻線13を介して第1の磁気回路11と第2の磁気回路12が接続された、三相磁束制御形トランス回路70が設けられている。また、第1の磁気回路11の2次出力巻線14と第2の磁気回路12の2次出力巻線15がそれぞれU-V出力端子、V-W出力端子、W-U出力端子を介してブリッジ形整流回路40に接続された、三相全波整流回路80が設けられている。
【0035】
図17は本発明の第4実施形態のトランス電源回路を示す回路図である。
図17の電源トランス1-4は、
図15のトランス電源回路1-3において、ブリッジ形整流回路40からなる三相全波整流回路80の両端出力に、直流化する平滑回路60が設けられたものである。平滑回路60は、
図14と同様に、ブリッジ形整流回路40の出力に接続された逆流防止用ダイオード61と、電流制限抵抗62と、平滑用コンデンサ63と、逆流防止用ダイオード61に並列に接続された放電用ダイオード64を備えて構成され、
図17の波形図のようにLED51に流れる電流の脈動分を低減することができる。
【0036】
(電流制限回路の損失の比較)
図18~21は入力電圧に対する電流制限回路の損失を比較するために実測値データを収集した電源回路の構成図である。
図18は負荷独立タイプの電源回路において第2の磁気回路の出力2にのみ電流制限回路を設けたもの、
図19は負荷独立タイプの電源回路において第1の磁気回路の出力1と第2の磁気回路の出力2の両方に電流制限回路と並列に電流調整用抵抗を設けたものである。また、
図20は並列・負荷共通タイプの電源回路において第1の磁気回路の出力1と第2の磁気回路の出力2に共通の電流制限回路を設けたもの、
図21は並列0・負荷共通タイプの電源回路において第1の磁気回路の出力1と第2の磁気回路の出力2の両方に電流制限回路と並列に電流調整用抵抗を設けたものである。その実測値データは以下の表1のとおりである。また、その結果を
図22と
図23のグラフに示す。
【0037】
【0038】
図22と
図23のグラフから明らかなように、電流制限回路と並列に電流調整用抵抗を設けた電源回路(
図19と
図21)は、電流調整用抵抗を設けていない電源回路(
図18と
図20)に比べて、入力電圧が上昇したときの電流制限回路の損失を小さく抑えることができることが判明した。
【符号の説明】
【0039】
1:トランス電源回路
10:磁束制御形トランス
11:第1の磁気回路
12:第2の磁気回路
13:1次入力巻線
14:第1の磁気回路の2次出力巻線
15:第2の磁気回路の2次出力巻線
16:入力端子
17:出力端子
20:制御回路
20-1:第1の制御回路
20-2:第2の制御回路
30:電流制限回路
30-1:第1の電流制限回路
30-2:第2の電流制限回路
31:バイアス抵抗
32:電界効果トランジスタ
33:トランジスタ
34:電流制限抵抗
35:逆流防止用ダイオード
36:過電圧防止用抵抗
37:定電圧保持用ツェナーダイオード
38:整流用コンデンサ
39:ゲートリーク抵抗
40:ブリッジ形整流回路
41:電流調整用抵抗
42:電流調整用抵抗
50:負荷
51:LED
52:LEDランプ
60:平滑回路
61:逆流防止用ダイオード
62:電流制限抵抗
63:平滑用コンデンサ
64:放電用ダイオード
70:三相磁束制御形トランス回路
80:三相全波整流回路