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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】粘着組成物および粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20220603BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220603BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220603BHJP
【FI】
C09J133/08
C09J4/02
C09J7/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020508005
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 KR2018011496
(87)【国際公開番号】W WO2019066528
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0127777
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522063974
【氏名又は名称】コザ ノベル マテリアル コリア カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Koza Novel Materials Korea Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】301-1, B1, No. 327 Gangnam Avenue, Seocho-gu, Seoul Special City (Daelong Seocho Tower, Seocho-dong), Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ス・ウン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】フ・ヨン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・マン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-170884(JP,A)
【文献】特開2013-040256(JP,A)
【文献】特表2016-505668(JP,A)
【文献】特開2015-214601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位および第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位を含む低分子量プレポリマー;および第3(メタ)アクリレート単量体を含む粘着組成物であって、
前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量は、5,000以上100,000以下であり、
前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量以上であり、
前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記粘着組成物100重量部に対して、40重量部以上70重量部以下であり、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記粘着組成物100重量部に対して、30重量部以上60重量部以下であり、
前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、前記第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の総重量100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であり、
前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体は、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートであり、
前記第2(メタ)アクリレート単量体は、脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体であり、
前記第3(メタ)アクリレート単量体は、脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体を含むものである、粘着組成物。
【請求項2】
前記低分子量プレポリマーのガラス転移温度は、-50℃以上100℃以下である、請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の粘着組成物を用いて製造された粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、前記粘着組成物を1次硬化して製造された半硬化粘着フィルムである、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着フィルムは、前記1次硬化後、追加硬化して製造された完全硬化粘着フィルムである、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記半硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、0.03MPa以上である、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、3.0kgf/25.4mm以上である、請求項又はに記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、0.05MPa以上である、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、3.0kgf/25.4mm以上である、請求項又はに記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2017年9月29日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2017-0127777号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。
【0002】
本発明は、粘着組成物および粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォン、タブレットパソコン(PC)などのように軽量化されたスマート機器が大きな市場を形成している。特に、スマート機器は、外形的または審美的な面から、既存の平面構造の代わりに曲面構造への機器形態の切替を多角的に試みられている。
【0004】
ただし、曲面構造で前記スマート機器の形態を構成する場合、曲面構造が平面構造に回帰(repositioning)しようとする性質のため、曲面構造のスマート機器の設計が困難である問題点がある。
【0005】
具体的には、前記スマート機器のディスプレイ部に用いられる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)などは、曲面構造を形成するためにこれを曲げると、平面構造に戻ろうとする性質があるため、曲面構造のスマート機器の設計が困難である問題点がある。
【0006】
前記の問題点を解決するための方法の一つとして、前記を改善するために、前記スマート機器のディスプレイ部と他の装置部との間の接着力を向上させることを考慮することができる。
【0007】
これに関連し、前記スマート機器のディスプレイ部と他の装置部に粘着フィルムを介在させることで、前記スマート機器のディスプレイ部と他の装置部との間の粘着力を向上させようとする研究が続いている。
【0008】
このような粘着フィルムは、従来のアクリル単量体の基本処方に低分子量アクリル系樹脂を少量添加して製造された粘着組成物を硬化して製造されることが一般的である。ただし、このような粘着フィルムは、応力緩和能力、粘着物性および曲面ディスプレイ部への初期段差埋め込み性を向上させることができない問題がある。
【0009】
そこで、応力緩和能力、粘着物性および初期段差埋め込み性を向上させることができる粘着剤に関する研究が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】KR10-2009-0078211A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粘着組成物および粘着フィルムを提供しようとする。
【0012】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていない他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様は、光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位および第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位を含む低分子量プレポリマー;および第3(メタ)アクリレート単量体を含む粘着剤組成物であり、前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量は、5,000g/mol以上100,000g/mol以下であり、前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量以上である粘着組成物を提供する。
【0014】
また、本発明の一実施態様は、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施態様に係る粘着組成物は、段差埋め込み性および応力緩和能力に優れた粘着フィルムを提供することができる。
【0016】
本発明の一実施態様に係る粘着組成物は、高い粘着力を有する粘着フィルムを提供することができる。
【0017】
本発明の一実施態様に係る粘着組成物は、最終硬化により優れた信頼性を確保可能な粘着フィルムを提供することができる。
【0018】
本発明の一実施態様に係る粘着組成物を用いた粘着フィルムは、曲面構造のOLEDへの適用時、装置部からディスプレイ部が離れる問題点を解決することができるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0020】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0021】
本願明細書全体において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを通称する意味で使われる。
【0022】
本願明細書全体において、用語「単量体に由来する繰り返し単位」は、その単量体が重合反応を経てその重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味することができる。
【0023】
本願明細書全体において、単位「重量部」は、各成分間の重量の比率を意味することができる。
【0024】
本願明細書全体において、「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によって測定されるポリスチレンに対する換算数値であってもよい。
【0025】
本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Calorimeter、DSC-STAR3、METTLER TOLEDO社)を用いて、-70℃~100℃の温度範囲で加熱速度5℃/minで昇温して測定して、DSC曲線の中間点で決定された値であってもよい。
【0026】
本願明細書全体において、用語「脂肪族官能基」は、鎖状および/または枝状に結合した炭化水素を含む官能基を意味することができ、具体的には、炭素数1~20のアルキル基を含む官能基を意味することができる。
【0027】
本願明細書全体において、用語「脂環式官能基」は、環状に結合した炭化水素を含む官能基を意味することができ、具体的には、炭素数3~20のシクロアルキル基を含む官能基を意味することができ、より具体的には、官能基内に不飽和結合が存在しない炭素環構造を含み、炭素数3~20の単環(monocyclic ring)または多環(polycyclic ring)を含む官能基を意味することができる。
【0028】
本願明細書全体において、用語「粘着フィルムの常温貯蔵弾性率」は、製造された粘着フィルム試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、25℃の温度で現れる貯蔵弾性率を意味することができる。
【0029】
本願明細書全体において、用語「粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率」は、製造された粘着フィルム試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、80℃の温度で現れる貯蔵弾性率を意味することができる。
【0030】
本願明細書全体において、用語「半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力」は、製造された半硬化粘着フィルムをポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalte;PET)フィルムに150μmの厚さに貼り合わせた試験片を製造し、前記試験片を1inの幅に裁断した後、1.1Tの厚さのガラス基材に付着させ、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成した後、180゜の剥離角度および300mm/minの剥離速度で測定した粘着力を意味することができる。
【0031】
本願明細書全体において、用語「完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力」は、製造された半硬化粘着フィルムをポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalte;PET)フィルムに150μmの厚さに貼り合わせた試験片を製造し、前記試験片を1inの幅に裁断した後、1.1Tの厚さのガラス基材に付着させ、前記ガラス基材に付着した試験片を完全硬化した後、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成した後、180゜の剥離角度および300mm/minの剥離速度で測定した粘着力を意味することができる。
【0032】
本発明者らは、低分子量プレポリマーを添加剤として含む粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムは、応力緩和能力、粘着物性、および曲面ディスプレイ部への初期段差埋め込み性を向上させることができない問題点があることを確認し、前記問題点を解決するために様々な研究を行った結果、下記のような発明をするに至った。
【0033】
本発明者らは、前記低分子量プレポリマーを、添加剤ではない主(main)樹脂として含む粘着組成物を発明するに至った。本発明に係る粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムは、既存の粘着フィルムが解決できなかった優れた応力緩和能力、優れた粘着物性および優れた曲面ディスプレイ部への初期段差埋め込み性を確保することができる。
【0034】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0035】
本発明の一実施態様は、光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位および第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位を含む低分子量プレポリマー;および第3(メタ)アクリレート単量体を含む粘着剤組成物であり、前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量は、5,000g/mol以上100,000g/mol以下であり、前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量以上である粘着組成物を提供する。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーは、光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位を含むものであってもよい。具体的には、前記低分子量プレポリマーが前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位を含むことにより、前記低分子量プレポリマーを含む粘着組成物の半硬化物を含む粘着フィルムの最終硬化を誘導することができる。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記第1(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体に光重合官能基が結合したものであってもよい。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記光重合官能基は、水素脱離型であってもよい。具体的には、前記光重合官能基は、エステル結合(-CO-)を含むことができ、前記エステル結合は、前記粘着組成物の硬化時、酸素ラジカルおよび炭素ラジカルに分解される。より具体的には、前記酸素ラジカルは、(メタ)アクリレート単量体の側の水素と炭素との結合を分解して(メタ)アクリレート単量体から水素ラジカルを脱離させることができ、炭素ラジカルを含む(メタ)アクリレート単量体を形成することができる。
【0039】
また、前記光重合官能基の酸素ラジカルは、前記(メタ)アクリレート単量体から脱離した水素ラジカルと結合してヒドロキシ基を形成することができ、前記粘着組成物の硬化時、前記光重合官能基の炭素ラジカルが前記(メタ)アクリレート単量体の炭素ラジカルと単結合を形成することができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記光重合官能基は、ベンゾフェノン系官能基、キノン官能基系およびチオキサントン系官能基のうちの少なくとも1つであってもよい。すなわち、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体にベンゾフェノン系官能基、キノン系官能基、およびチオキサントン系官能基のうちの少なくとも1つの官能基が結合したものであってもよい。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記ベンゾフェノン系官能基は、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチルエーテル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、および3,3’-メチル-4-メトキシベンゾフェノンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物に由来する官能基であってもよい。
【0042】
本発明の一実施態様によれば、前記キノン系官能基は、キノン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、および2,6-ジクロロ-9,10-アントラキノンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物に由来する官能基であってもよい。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、前記チオキサントン系官能基は、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、およびイソプロピルチオキサントンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物に由来する官能基であってもよい。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体の単結合酸素に結合した脱離基が前記光重合官能基で置換されたものであってもよい。具体的には、前記光重合官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、ベンゾフェノン(メタ)アクリレートであってもよい。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記第2(メタ)アクリレート単量体および前記第3(メタ)アクリレート単量体は、それぞれ独立に、脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0046】
すなわち、前記低分子量プレポリマーは、光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位;および脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つの単量体に由来する繰り返し単位;を含むことができる。
【0047】
また、前記粘着組成物は、前記低分子量プレポリマー;および脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つの単量体;を含むことができる。
【0048】
すなわち、前記粘着組成物は、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位;および脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つの単量体に由来する繰り返し単位;を含む低分子量プレポリマー、そして、脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つの単量体を含むことができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位は、前記低分子量プレポリマーの粘着物性を付与することができる。
【0050】
また、本発明の一実施態様によれば、前記第3(メタ)アクリレート単量体は、前記粘着組成物においてベース(base)単量体として作用することにより、前記粘着組成物の構造的安定性を確保することができる。
【0051】
具体的には、前記脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体に前述した脂肪族官能基が結合したものであってもよく、前記脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体に前述した脂環式官能基が結合したものであってもよいし、前記極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体に極性官能基が結合したものであってもよい。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーは、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体;そして、脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体、脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体、および極性官能基含有単量体のうちの少なくとも1つの単量体;を含む単量体混合物を重合して製造されたものであってもよく、具体的には、前記単量体混合物を溶液重合して製造されたものであってもよい。ただし、前記重合方法は、溶液重合に限定されるものではなく、前記低分子量プレポリマーの製造方法は、当業界で一般的に用いられる重合方法であってもよい。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、前記第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の総重量100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であってもよい。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、前記低分子量プレポリマーの製造時に使用される単量体混合物における前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体の含有量と同一であってもよい。また、前記第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の総重量は、前記低分子量プレポリマーの製造時に使用される単量体混合物における前記第2(メタ)アクリレート単量体の総重量と同一であってもよい。
【0055】
すなわち、前記低分子量プレポリマーを重合するための単量体混合物において、前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記第2(メタ)アクリレート単量体の総重量100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であってもよい。
【0056】
前記光重合官能基含有の第1(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の含有量と前記第2(メタ)アクリレート単量体に由来する繰り返し単位の含有量とを前述した範囲に調節することにより、前記低分子量プレポリマーは、後述するガラス転移温度および重量平均分子量を有することができ、前記低分子量プレポリマーを含む粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムが光照射などによって追加硬化を可能にする。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーは、これを含む粘着フィルムの柔軟性、ガラス転移温度、粘着力および段差埋め込み性を調節する役割を果たすことができ、前記低分子量プレポリマーを含む粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムが光照射などによって追加硬化を可能にする。また、前記低分子量プレポリマーを重合するための単量体混合物は、当業界で一般的に知られた分子量調節剤、重合開始剤、および硬化剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量は、5,000g/mol以上100,000g/mol以下、5,000g/mol以上50,000g/mol以下、5,000g/mol以上30,000g/mol以下、10,000g/mol以上100,000g/mol以下、10,000g/mol以上50,000g/mol以下、10,000g/mol以上30,000g/mol以下、15,000g/mol以上100,000g/mol以下、15,000g/mol以上50,000g/mol以下、または15,000g/mol以上30,000g/mol以下であってもよい。
【0059】
前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量が前述した範囲内の場合、前記低分子量プレポリマーを含む粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムは、優れた段差埋め込み性を有することができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーの重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によって測定されるポリスチレンに対する換算数値で表したものであってもよい。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーのガラス転移温度は、-50℃以上100℃以下、-50℃以上50℃以下、-50℃以上0℃以下、-30℃以上100℃以下、-30℃以上50℃以下、-20℃以上100℃以下、-20℃以上50℃以下、または-20℃以上0℃以下であってもよい。
【0062】
前記低分子量プレポリマーのガラス転移温度が前述した範囲内の場合、前記低分子量プレポリマーを含む粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムの打抜性を確保することができる。
【0063】
前記ガラス転移温度(Tg)は、前記低分子量プレポリマーを、DSC(Differential Scanning Calorimeter、DSC-STAR3、METTLER TOLEDO社)を用いて、-70℃~100℃の温度範囲で加熱速度5℃/minで昇温して測定して、DSC曲線の中間点で決定された値であってもよい。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量以上であってもよい。これは、前記低分子量プレポリマーが前記粘着組成物において主(main)樹脂として作用することを意味することができる。
【0065】
前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量以上の前記低分子量プレポリマーを含むことにより、常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差が大きい粘着フィルムを製造することができ、これによって、優れた段差埋め込み性、優れた応力(stress)緩和能力および高い粘着力を有する粘着フィルムを製造することができる。
【0066】
具体的には、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムは、常温貯蔵弾性率に比べて80℃の貯蔵弾性率が急激に減少するものであってもよい。これによって、本発明の一実施態様に係る粘着フィルムは、優れた段差埋め込み性、優れた応力緩和能力および高い粘着力を有することができる。また、前記常温貯蔵弾性率および前記80℃の貯蔵弾性率に関する説明は、前述した通りである。
【0067】
本発明の一実施態様によれば、前記脂肪族官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。具体的には、前記アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体にアルキル基が結合したものであってもよい。前記アルキル基含有(メタ)アクリレート単量体は、、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、およびイソオクチル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0068】
本発明の一実施態様によれば、前記脂環式官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。具体的には、前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート単量体にシクロアルキル基が結合したものであってもよい。前記シクロアルキル基含有(メタ)アクリレート単量体は、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)、イソボルニルメタクリレート(IBOMA)、イソボルニルメチル(メタ)アクリレート、および3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(TMCHA、3,3,5-trimethylcyclohexylacrylate)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0069】
本発明の一実施態様によれば、前記極性官能基含有(メタ)アクリレート単量体は、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単量体、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート単量体、および窒素含有(メタ)アクリレート単量体のうちの少なくとも1つの単量体であってもよい。
【0070】
本発明の一実施態様によれば、前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0071】
本発明の一実施態様によれば、前記カルボキシ基含有(メタ)アクリレート単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2-カルボキシエチル、アクリル酸3-カルボキシプロピル、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ酪酸、およびアクリル酸二量体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0072】
本発明の一実施態様によれば、前記窒素含有(メタ)アクリレート単量体は、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリルアミドのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0073】
本発明の一実施態様によれば、前記低分子量プレポリマーの含有量は、前記粘着組成物100重量部に対して、40重量部以上70重量部以下、40重量部以上60重量部以下、50重量部以上70重量部以下、または50重量部以上60重量部以下であってもよい。
【0074】
前記粘着組成物中の前記低分子量プレポリマーの含有量が前述した範囲内の場合、前記粘着組成物は、前記低分子量プレポリマーを主樹脂として含むものであってもよいし、前記粘着組成物は、温度増加によって圧縮強度の減少幅が大きく、最終硬化が可能であり、優れた段差埋め込み性を有する粘着フィルムを提供することができる。
【0075】
従来は、前記低分子量プレポリマーを粘着組成物に添加剤の形態で少量含んでいたが、この場合、温度変化による貯蔵弾性率の減少幅が大きくなく、低い粘着力および劣る段差埋め込み性を有する問題点があった。
【0076】
これに対し、本発明の一実施態様に係る粘着組成物は、前記低分子量プレポリマーを主樹脂として含むことにより、最終硬化が可能でありながらも、優れた段差埋め込み性および高い粘着力を有する粘着フィルムを提供することができる。
【0077】
本発明の一実施態様によれば、前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記粘着組成物100重量部に対して、30重量部以上60重量部以下、30重量部以上50重量部以下、40重量部以上60重量部以下、または40重量部以上50重量部以下であってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、前記低分子量プレポリマーの含有量に応じて適宜調節可能である。
【0078】
前記第3(メタ)アクリレート単量体の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムは、相対的に高いガラス転移温度を有し、これによって優れた打抜性を有することができる。
【0079】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着組成物は、重合開始剤、具体的には、光重合開始剤および/または熱重合開始剤をさらに含んでもよい。また、前記重合開始剤は、当業界で知られた一般的な重合開始剤の中から自由に選択されるものであってもよい。
【0080】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着組成物は、硬化剤、具体的には、光硬化剤および/または熱硬化剤をさらに含んでもよい。また、前記硬化剤は、当業界で知られた一般的な硬化剤の中から自由に選択されるものであってもよい。
【0081】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着組成物は、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、および酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含む添加剤をさらに含んでもよい。ただし、前記粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、および酸化防止剤の種類は特に限定されるものではなく、当業界で知られたものの中から選択されるものであってもよい。
【0082】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着組成物は、別途の溶媒を含まないものであってもよい。すなわち、前記粘着組成物は、無溶剤型粘着組成物であってもよい。
【0083】
本発明の一実施態様は、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムを提供する。具体的には、前記粘着フィルムは、前記粘着組成物を硬化して製造されたものであってもよい。より具体的には、前記粘着フィルムは、前記粘着組成物を光硬化して製造されたものであってもよい。
【0084】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着フィルムは、前記粘着組成物を1次硬化して製造された半硬化粘着フィルムであってもよい。また、前記粘着フィルムは、前記1次硬化後、追加硬化して製造された完全硬化粘着フィルムであってもよい。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムは、前記半硬化粘着フィルムを追加硬化して製造されたものであってもよい。すなわち、前記完全硬化粘着フィルムは、前記粘着組成物を1次硬化し、前記1次硬化された粘着組成物を追加硬化して製造されたものであってもよい。
【0086】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムは、前記粘着組成物にブラックライト(black light)を3分以上の時間照射して製造されたものであってもよい。
【0087】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムは、前記半硬化粘着フィルムに光量3,000mJ/cm以上の光を照射して製造されたものであってもよい。具体的には、前記半硬化粘着フィルムに製造される光の光源は、メタルハライド、高圧水銀ランプ、またはUV LEDであってもよいが、紫外線波長の光照射が可能な光源であれば、当業界で知られたものの中から自由に選択可能である。
【0088】
より具体的には、前記完全硬化粘着フィルムは、前記粘着組成物にブラックライト(black light)を3分以上の時間照射して半硬化粘着フィルムを製造した後、前記半硬化粘着フィルムに光量3,000mJ/cm以上の光を照射して製造されるものであってもよい。
【0089】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムのゲル含有量は、0%超過70%以下であってもよい。また、前記完全硬化粘着フィルムのゲル含有量は、70%超過100%以下であってもよい。すなわち、前記半硬化粘着フィルムは、ゲル含有量が0%超過70%以下の粘着フィルムを意味することができ、前記完全硬化粘着フィルムは、ゲル含有量が70%超過100%以下の粘着フィルムを意味することができる。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着フィルムのゲル含有量は、下記式1のような方法で測定されるものであってもよい:
(式1)
ゲル含有量(%)=(C-B)/A
前記式1中、
前記Aは、5cm×5cmの大きさに裁断した粘着フィルム試験片をポリエチレン素材の瓶に入れて測定した重量を意味し、
前記Bは、14cm×14cmの大きさに裁断した鉄製網の重量を意味し、
前記Cは、前記粘着フィルム試験片を前記鉄製網で濾過した後、前記粘着フィルム試験片の残留物が残っている前記鉄製網を、110℃の温度、50RH%の相対湿度の条件で2時間乾燥した後に測定した重量を意味する。
【0091】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムが段差の備えられた部材に貼り合わされる場合、前記段差の備えられた部材の凹凸部に前記半硬化粘着フィルムが十分に埋め込まれ、前記部材に対する前記粘着フィルムの粘着力を高く維持することができる。
【0092】
一般的な半硬化粘着フィルムが追加硬化される場合、段差の備えられた部材に十分に埋め込まれず、前記部材に対する粘着力が低下する問題点があった。
【0093】
ただし、本発明の一実施態様に係る粘着フィルムは、前記部材に貼り合わされた半硬化粘着フィルムを最終硬化して完全硬化粘着フィルムを形成しても、前記完全硬化粘着フィルムが前記部材上に備えられた段差に十分に埋め込まれ、前記完全硬化粘着フィルムが前記部材に十分に固定されるようにできるという利点がある。
【0094】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムは、前記粘着組成物の半硬化物を含むことができる。また、前記完全硬化粘着フィルムは、前記粘着組成物の完全硬化物を含むことができる。
【0095】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着組成物の半硬化物は、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムのゲル含有量が0%超過70%以下のものを意味することができる。また、前記粘着組成物の完全硬化物は、前記粘着組成物を用いて製造された粘着フィルムのゲル含有量が70%超過100%以下のものを意味することができる。
【0096】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、0.03MPa以上であってもよい。
【0097】
具体的には、前記半硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、前記常温貯蔵弾性率から前記80℃の貯蔵弾性率の差の絶対値を意味することができる。
【0098】
また、本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率は、0.05MPa以上、具体的には、25℃で0.05MPa以上であってもよい。また、前記常温貯蔵弾性率は、前述した方法により測定されるものであってもよい。
【0099】
具体的には、前記半硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率は、前記粘着フィルム試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、25℃の温度で現れる貯蔵弾性率の値で決定されるものであってもよい。
【0100】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、0.02MPa以下、具体的には、80℃で0.02MPa以下であってもよい。また、前記半硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、前述した方法により測定されるものであってもよい。
【0101】
具体的には、前記半硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、前記半硬化粘着フィルム試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、80℃の温度で現れる貯蔵弾性率の値で決定されるものであってもよい。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率が常温貯蔵弾性率に比べて減少し、常温に比べて80℃のでの貯蔵弾性率が大幅に減少することを確認することができる。これによって、前記半硬化粘着フィルムは、優れた段差埋め込み性、優れた応力緩和能力および高い粘着力を有することができる。
【0103】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、3.0kgf/in以上であってもよい。具体的には、前記半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、25℃および50RH%で3.0kgf/in以上であってもよい。
【0104】
また、前記半硬化粘着フィルムの前記ガラス基材に対する粘着力は、前述した方法で測定されるものであってもよい。具体的には、前記半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、前記半硬化粘着フィルムをポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalte;PET)フィルムに貼り合わせた試験片を製造し、前記試験片を1inの幅に裁断した後、1.1Tの厚さのガラス基材に付着させ、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成した後、180゜の剥離角度および300mm/minの剥離速度で測定された粘着力の値で決定されるものであってもよい。
【0105】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、0.05MPa以上であってもよい。
【0106】
具体的には、前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率と80℃の貯蔵弾性率との差は、前記常温貯蔵弾性率から前記80℃の貯蔵弾性率の差の絶対値を意味することができる。
【0107】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率は、0.08MPa以上、具体的には、25℃で0.08MPa以上であってもよい。
【0108】
また、前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率は、前述した方法により測定されるものであってもよい。具体的には、前記完全硬化粘着フィルムの常温貯蔵弾性率は、前記完全硬化粘着フィルムの試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、25℃の温度で現れる貯蔵弾性率の値で決定されるものであってもよい。
【0109】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、0.03MPa以下、具体的には、80℃で0.03MPa以下であってもよい。
【0110】
また、前記完全硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、前述した方法により測定されるものであってもよい。具体的には、前記完全硬化粘着フィルムの80℃の貯蔵弾性率は、前記完全硬化粘着フィルムの試験片を600~800μmの厚さに積層し、積層された試験片を直径8mmの円形試験片に裁断し、ARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、1rad/secの角速度、および-20℃~100℃の温度範囲で測定された貯蔵弾性率中、80℃の温度で現れる貯蔵弾性率の値で決定されるものであってもよい。
【0111】
すなわち、このような内容を通して、前記半硬化粘着フィルムが追加可能であることを確認することができる。
【0112】
また、前記完全硬化粘着フィルムの常温および80℃の貯蔵弾性率により、前記半硬化粘着フィルムが最終硬化されて完全硬化粘着フィルムになっても、最終硬化される前の半硬化粘着フィルムと同じく、常温貯蔵弾性率に比べて低い80℃の貯蔵弾性率値を有することを確認することができる。
【0113】
これによって、前記半硬化粘着フィルムは、最終硬化されても、優れた段差埋め込み性、優れた応力緩和能力および高い粘着力を維持可能であることを確認することができる。
【0114】
本発明の一実施態様によれば、前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、3.0kgf/in以上であってもよい。具体的には、前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、25℃および50RH%で3.0kgf/in以上であってもよい。
【0115】
また、前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、前述した方法で測定されるものであってもよい。
【0116】
具体的には、前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力は、前記半硬化粘着フィルムをポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalte;PET)フィルムに貼り合わせた試験片を製造し、前記試験片を1inの幅に裁断した後、1.1Tの厚さのガラス基材に付着させ、前記ガラス基材に付着した試験片を追加硬化した後、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成した後、180゜の剥離角度および300mm/minの剥離速度で測定された粘着力の値で決定されるものであってもよい。
【0117】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力および前記完全硬化粘着フィルムのガラス基材に対する粘着力が大きな差はないことを確認することができる。
【0118】
これによって、本発明の一実施態様に係る半硬化粘着フィルムは、追加硬化が可能なものであり、前記追加硬化により製造された前記完全硬化粘着フィルムは、前記半硬化粘着フィルムと同等水準の優れた粘着力を維持可能であることを確認することができる。
【0119】
本発明の一実施態様は、前記粘着組成物の硬化物を含む粘着フィルムを提供する。
【0120】
本発明の一実施態様によれば、前記粘着フィルムは、前記粘着組成物の半硬化物を含む半硬化粘着フィルムであってもよい。また、前記粘着フィルムは、前記粘着組成物の完全硬化物を含む完全硬化粘着フィルムであってもよい。
【0121】
本発明の一実施態様によれば、前記半硬化粘着フィルムおよび前記完全硬化粘着フィルムそれぞれに関する説明は、前述した通りである。
【実施例
【0122】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0123】
[製造例]
低分子量プレポリマーの製造
2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)50重量部、イソボルニルアクリレート(IBOA)30重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20重量部、およびベンゾフェノンメタクリレート(BPMA)2重量部を溶液重合して、低分子量プレポリマーを製造した。
【0124】
前記低分子量プレポリマーのGPC(Gel Permeation Chromatography)によって測定される、ポリスチレンに対する換算数値で表した重量平均分子量は5,000~40,000g/molであった。
【0125】
また、前記低分子量プレポリマーを、DSC(Differential Scanning Calorimeter、DSC-STAR3、METTLER TOLEDO社)を用いて、-70℃~100℃の温度範囲で加熱速度5℃/minで昇温して測定して、DSC曲線の中間点で決定されたガラス転移温度は-30℃~0℃であった。
【0126】
実施例1
粘着組成物100重量部に対して、60重量部の低分子量プレポリマーおよび40重量部の第3(メタ)アクリレート単量体を含む粘着組成物を製造した。
【0127】
また、前記粘着組成物に光開始剤[Irgacure651(2,2-Dimethoxy-1,2-diphenylethan-1-one)]、架橋剤、およびカップリング剤を、下記のゲル含有量を得るように添加した。
【0128】
前記第3(メタ)アクリレート単量体は、2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)50重量%、イソボルニルアクリレート(IBOA)40重量%、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)10重量%が混合されたものである。
【0129】
そして、前記粘着組成物にブラックライト(Black Light)を3分以上照射して、150μmの厚さの半硬化粘着フィルムを製造した。
【0130】
また、前述した式1による方法で測定した前記半硬化粘着フィルムのゲル含有量は52%であった。
【0131】
実施例2
50重量部の低分子量プレポリマーおよび50重量部の第3(メタ)アクリレート単量体を含み、ゲル含有量が40%となるように製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で半硬化粘着フィルムを製造した。
【0132】
比較例1
低分子量プレポリマーの含有量が10重量部であり、第3(メタ)アクリレート単量体の含有量が90重量部であることと、ゲル含有量が64%となるように製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で粘着フィルムを製造した。
【0133】
比較例2
第3(メタ)アクリレート単量体を含まず、ゲル含有量が10%未満となるように製造したことを除けば、実施例1と同様の方法で粘着フィルムを製造した。
【0134】
前記実施例1~実施例2および比較例1~比較例2の情報をまとめると、下記表1の通りである。
【0135】
【表1】
【0136】
<実験例>
1.貯蔵弾性率の測定
(1)追加硬化前の貯蔵弾性率の測定
実施例1~実施例2および比較例1~比較例2による半硬化粘着フィルムを、600~800μmの厚さに積層した試験片を用意した。
【0137】
前記試験片を直径約8mmの円形に裁断してARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した後、10%の変形率、0~100℃の温度で、1rad/secの角速度で温度範囲に応じた貯蔵弾性率を測定した。
【0138】
そして、25℃および80℃それぞれの温度で現れる前記試験片の貯蔵弾性率を、下記表2に示した。
【0139】
(2)最終硬化後の貯蔵弾性率の測定
前記実施例1~実施例2および比較例1~比較例2による粘着フィルムに3,000mJ/cmの光量のメタルハライド(Metal Halide)光を照射して完全硬化粘着フィルムを製造した後、前記完全硬化粘着フィルムを600~800μmの厚さに積層したことを除けば、追加硬化前の貯蔵弾性率の測定と同様の方法で25℃および80℃それぞれの温度で現れる前記試験片の貯蔵弾性率を、下記表2に示した。
【0140】
2.粘着力の測定
(1)追加硬化前の粘着力の測定
実施例1~実施例2および比較例1~比較例2による半硬化粘着フィルムをポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate;PET)フィルム上に貼り合わせて試験片を作製した。
【0141】
前記試験片を1inの幅に裁断し、1.1Tの厚さのガラス基材(soda lime glass)に付着させ、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成後、180゜の剥離角度および300mm/minの剥離速度で粘着力を測定し、これを下記表3に示した。
【0142】
(2)追加硬化後の粘着力の測定
前記試験片をガラス基材に付着させた後、25℃および50RH%の条件下で1時間熟成する前に、3,000mJ/cmの光量のメタルハライド光を照射して完全硬化粘着フィルムを製造したことを除けば、前記追加硬化前の粘着力の測定と同様の方法で前記試験片の粘着力を測定し、これを下記表3に示した。
【0143】
4.応力緩和能力(Stress Relaxation)試験
(1)追加硬化前の応力緩和能力試験
実施例1~実施例2および比較例1~比較例2による半硬化粘着フィルムを600~800μmの厚さに積層した試験片を用意した。
【0144】
前記粘着試験片を直径約8mmの円形に裁断してARES-G2測定器の円形平行板の間に積載した。
【0145】
前記円形平行板の軸方向に2Nの力を1分間印加してから、印加を止めた後、25℃の温度条件で50%の変形率を5分間維持した時の初期軸方向に印加された力に対する前記試験片の応力を百分率で測定して、下記表4に示した。
【0146】
(2)追加硬化後の応力緩和能力試験
実施例1~実施例2および比較例1~比較例2による半硬化粘着フィルムに3,000mJ/cmの光量のメタルハライド光を照射して完全硬化粘着フィルムを製造し、前記完全硬化粘着フィルムを600~800μmの厚さに積層したことを除けば、前記追加硬化前の応力緩和能力試験と同様の方法で前記試験片の応力を測定して、下記表4に示した。
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
前記表2によれば、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムは、25℃の貯蔵弾性率に比べて、80℃の貯蔵弾性率値が著しく減少することを確認することができた。
【0151】
温度増加に伴って貯蔵弾性率が減少する場合、段差埋め込み性を確保することが知られているので、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムは、高い段差埋め込み性を実現可能であることを確認することができた。
【0152】
また、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムは、追加硬化後にも、25℃の貯蔵弾性率に比べて、80℃の貯蔵弾性率値が著しく減少することを確認することができた。
【0153】
これによって、本発明の一実施態様に係る半硬化粘着フィルムは、最終硬化が可能であり、これを追加硬化して完全硬化粘着フィルムに製造しても、高い段差埋め込み性を実現可能であることを確認することができた。
【0154】
前記表3によれば、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムは、追加硬化前後による粘着力の差が大きくないので、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムを追加硬化して完全硬化粘着フィルムを製造しても、前記完全硬化粘着フィルムは、半硬化粘着フィルムと同等水準の高い粘着力を維持することを確認することができた。
【0155】
また、前記表4によれば、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムは、初期軸方向に印加された力に対する応力が最終硬化を伴っても、低分子量プレポリマーを本発明の一実施態様に係る範囲に及ばない範囲で含む比較例1より低いことを確認することができた。
【0156】
一般的に、初期印加された力に対する応力が低いほど外部刺激に対する緩和能力が高いことが知られているので、前記実施例1および実施例2は、比較例1より優れた外部刺激に対する緩和能力を有することを確認することができた。
【0157】
前記内容をまとめると、前記実施例1および実施例2により裏付けられる本発明の一実施態様に係る半硬化粘着フィルムは、高い段差埋め込み性および粘着力を有し、前記半硬化粘着フィルムを最終硬化しても、前記半硬化粘着フィルムの高い段差埋め込み性および粘着力を維持可能であることを確認することができる。
【0158】
これに対し、低分子量プレポリマーの含有量が本発明の一実施態様に係る範囲を外れる比較例1の場合、25℃の貯蔵弾性率対比、80℃の貯蔵弾性率の減少幅が前記実施例1および実施例2より少ないことを確認することができ、これによって、比較例1による粘着フィルムは、前記実施例1および実施例2による半硬化粘着フィルムより低い段差埋め込み性を有することを確認することができた。
【0159】
さらに、低分子量プレポリマーのみを含む比較例2の場合、実施例1および実施例2による半硬化性粘着フィルムより温度に応じた貯蔵弾性率の減少幅および粘着力が大きく、外部刺激に対する緩和能力に優れていることを確認することができた。
【0160】
ただし、前記比較例2は、常温で前記実施例1および実施例2より低い貯蔵弾性率値を有するので、打抜性が減少して実際の工程上に適用できない問題点があることを確認することができた。
【0161】
上記の内容をまとめてみれば、優れた段差埋め込み性および応力緩和能力を有しながらも、高い粘着力を有する粘着フィルムを提供するためには、前記実施例1および実施例2のように、低分子量プレポリマーの含有量を本発明の一実施態様に係る範囲、すなわち主樹脂として含まなければならないことを確認することができる。