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  • 特許-鉄道レールの積み卸し装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】鉄道レールの積み卸し装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 29/16 20060101AFI20220603BHJP
   B61D 15/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
E01B29/16
B61D15/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018110407
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019210780
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390027292
【氏名又は名称】根本企画工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】起田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】北井 健博
(72)【発明者】
【氏名】根本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢治
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3116107(JP,U)
【文献】特開2000-169075(JP,A)
【文献】実開昭51-085499(JP,U)
【文献】実開昭51-023960(JP,U)
【文献】特開平10-338902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0279239(US,A1)
【文献】特開2000-178922(JP,A)
【文献】特開2010-089948(JP,A)
【文献】特開平10-129479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
B61F 1/00-99/00
B61D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール運搬車のフラットな床面に取り付けられるベースプレートと、
前記ベースプレートの前記レール運搬車における床面の左右の側縁部側に位置するそれぞれの端部に、前記床面に対して起立した状態と前記床面に沿ってレールの方向に倒れた状態とに姿勢を変えられるように取り付けられた一対2基のポストと、
一対2基の前記ポストのそれぞれの頂部に、前記床面に沿って倒れた状態の前記ポストの前記頂部の側に延ばした延長方向と、起立した状態の前記ポストに対して直角となって前記床面の中央側を向く直角方向とに折り曲げ可能に取り付けられたガーダーと、
前記ガーダーに、前記ガーダーの長さ方向に移動自在に取り付けられかつレールを吊り上げおよび吊り下ろしできる昇降ユニットと
からなることを特徴とする鉄道レールの積み卸し装置。
【請求項2】
前記昇降ユニットは、前記ガーダーに対して移動しないように固定できることを特徴とする請求項1に記載の鉄道レールの積み卸し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール運搬車の床面またはその近傍に取り付けて、レール基地やレール交換現場においてレール運搬車に対してレールの積み卸しを行えるようにした鉄道レールの積み卸し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路においてレールは典型的な消耗部分であり、とくに曲線の外側レールはもっとも消耗が激しく、所定期間毎に、あるいは所定量摩耗する毎にレールを交換する必要がある。鉄道路線には沿線の適当な場所にレールを管理するレールセンター等のレール基地が設けられており、新しいレールを受け入れ、取り外した古いレールを処理している。新しいレールは国内の製鉄所から専用貨車でこのレール基地に運搬されるが、レール基地とレール交換現場との間の輸送は、自走式あるいは機関車牽引式のレール運搬車で行なわれる。特許文献1に示されているレール運搬車両は全長18mの無蓋貨車である。
【0003】
鉄道レールには定尺レールとロングレールとがあるので、このような無蓋貨車を使用する場合は運搬するレールの長さに合わせて適当な両数の無蓋貨車を連結する。なお、25mの定尺レール輸送専門に設計された2両連結の自走式レール運搬車もある。ディーゼル機関で駆動する自走式であれば、電化区間、非電化区間を問わずあらゆる路線に対応できる。しかしいずれにしてもレール運搬車自体は積み卸し機能を持たないのが普通であるから、レール交換の作業現場でレールを積み卸しするには、レール交換現場に近いしかるべき拠点において必要分のレールをレール運搬車から積み卸し機能を有する積み卸し台車に積み替えて作業現場まで運搬することが必要である。
【0004】
従来から使用されているレール積み卸し台車の一例を図6に示す。ここに示す積み卸し台車Lは走行用の車輪91と連結器92とを備えたフラットな小型貨車である。台車床面90には回転自在なターンテーブル93が設けられ、その一端にポスト94とガーダー95とからなり、ガーダー95にチェーンブロック等の揚重機96を搭載した簡単な積み卸し装置97を取り付けてある。レールを交換現場に運搬する場合、この積み卸し台車Lをレールの長さに応じて何両か連結し、各積み卸し台車Lにまたがってターンテーブル93上にレールを複数本並べ、さらに重ねて積み、その状態で機関車等により積み卸し台車Lをレール交換現場まで牽引する。ターンテーブル93を設けるのは、輸送中の線路に曲線等があった場合に対応するためである。
【0005】
1本の線路の左右両側のレールを同時に交換するものとすれば、到着したレール交換現場ではレールを2本ずつ地上に下ろして行くことになる。25mの定尺レールの場合、60キロレールであれば1本のレールの重量は1.5トンである。レールを地上に下ろすには、一般に、台車の側面と地上との間に斜めにガイド部材を立てかけ、レールを吊り上げている積み卸し機を徐々にゆるめながらレールをガイド部材に沿ってすべり落とす作業方法が行われている。
【0006】
なお、ロングレールを地上に下ろす技術として、特許文献2にはレール運搬車にウインチを設け、案内部材をガイドとして貨車をゆっくり移動させながら連続的にレールを地上に下ろして行く技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-129479号公報
【文献】特開2000-110102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている積み卸し台車Lを使用して交換現場にレールを下ろす場合、積み卸し台車Lの一方の側には積み卸し装置97のポスト94があるため、ポスト94のない側へしかレールを下ろすことができない。そのため、とりあえず線路の片側にレールを2本とも下ろし、ついで積み卸し台車Lをレールの長さだけ移動して次の位置で再度レールを2本下ろし、このような作業を繰り返すことにより次々に2本ずつレールを下ろして行かざるを得ない。そして、新しいレールを線路の両側に1本ずつ置くためには、山越機と称する線路の両側にまたがる門形の枠を設置し、積み卸し台車Lによって地上に下ろした2本のうちの1本のレールを改めてチェーンブロック等で吊り上げて反対側に移す作業が必要である。このようにしてレール交換の準備が完了する。なお、レール交換後取り外した古いレールを台車に積み込む場合は、以上の手順を逆に行うことになる。
【0009】
このように、新しいレールを交換場所のレールの両外側に1本ずつ置いて行くのに、レール運搬車からレール積み卸し台車Lへの載せ替え、現地での山越機によるレールの移動などの手間が掛かってしまう。これに対して、交換現場での作業は終列車から始発列車までの限られた時間しか許されないから、1回あたりの作業量が限られる。そのため、従来では、全体として大変な日数がかかってしまっているのが実状である。
【0010】
なお、特許文献2に記載された技術はロングレールに関する技術であり、25mなどの定尺レールの積み卸し・運搬を効率よく行うための技術は特許文献2に開示されていない。
【0011】
本発明は、レール積み卸し作業全体を大幅に効率化することのできる鉄道レールの積み卸し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の本発明は、レール運搬車のフラットな床面に取り付けられるベースプレートと、前記ベースプレートの前記レール運搬車における床面の左右の側縁部側に位置するそれぞれの端部に、前記床面に対して起立した状態と前記床面に沿ってレールの方向に倒れた状態とに姿勢を変えられるように取り付けられた一対2基のポストと、一対2基の前記ポストのそれぞれの頂部に、前記床面に沿って倒れた状態の前記ポストの前記頂部の側に延ばした延長方向と、起立した状態の前記ポストに対して直角となって前記床面の中央側を向く直角方向とに折り曲げ可能に取り付けられたガーダーと、前記ガーダーに、前記ガーダーの長さ方向に移動自在に取り付けられかつレールを吊り上げおよび吊り下ろしできる昇降ユニットとからなることを特徴とする鉄道レールの積み卸し装置である。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明は、前記昇降ユニットは、前記ガーダーに対して移動しないように固定できることを特徴とする請求項1に記載の鉄道レールの積み卸し装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レール運搬車に積み卸し機能を付与することによって、レール運搬車と他の適宜の台車との間でのレールの積み替えをなくすことができ、しかも線路の両側にレールを積み卸しできるため従来必要としていた山越器を使用するレールの移動も不要となり、新旧レールの積み卸し作業が大幅に効率化されるという、すぐれた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の鉄道レールの積み卸し装置の第1の実施例を示す斜視図である。
図2図1の鉄道レールの積み卸し装置の起伏状態を説明する説明図である。
図3】本発明の鉄道レールの積み卸し装置の第1の実施例における自在継手周辺を示す部分側面図である。
図4】本発明の鉄道レールの積み卸し装置の第2の実施例を示す斜視図である。
図5】本発明の鉄道レールの積み卸し装置の使用状況を示す説明図である。
図6】従来公知の鉄道レールの積み卸し台車を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明の実施例について図面により詳細に説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は本発明に係る鉄道レールの積み卸し装置の第1の実施例を示す斜視図である。この積み卸し装置1は、追って図5に示すようなレール運搬車Tのフラットな床面Dにまくら木C方向(レール運搬車Tが停車している線路のまくら木Cと同じ向き)に固定した細長いベースプレート2と、その両端部、すなわちレール運搬車Tの床面Dの側縁部に取り付けられ、基部側蝶番3を介して垂直方向に起立、水平方向に倒置自在な一対のポスト4と、このポスト4の頂部に、ポスト4の延長方向と直角方向とに折り曲げ可能で、起立状態において水平方向となるように取り付けられたガーダー7とを備えている。前記ポスト4が起立している状態において、前記ガーダー7に、ガーダー7の長さ方向に横行自在な昇降ユニット8が取り付けられる。昇降ユニット8はチェーンブロック等の揚重機を備えている。昇降ユニット8は、ガーダー7に対して取り付け・取り外し可能であってよく、またガーダー7の任意の位置で移動しないように固定できるように構成されている。したがって、ガーダー7の任意の位置においてレール等の重量物を昇降ユニット8によって吊り上げ、その状態で昇降ユニット8をガーダー7の長さ方向に移動させた後、任意の位置で昇降ユニット8を固定し、この重量物を吊り下ろしできる。
【0019】
なお、この実施例ではベースプレート2は、レールの積載に邪魔にならない床面Dの外縁部分や、補剛部材である側板(図5に符号Fで示す)の上部などに固定してある。
【0020】
レール積み卸し現場に停車している2両連結のレール運搬車Tから、レール運搬車Tの側縁部に取り付けられた本発明の鉄道レールの積み卸し装置1によりレールRを地上に吊り下ろしている状況を図5に示す。2両連結の自走式レール運搬車Tの床面Dには交換予定の新レールが積み込まれている。このうちの1本をここで下ろすのである。符号Gは線路脇の地上からレール運搬車Tに向けて立てかけられたガイド部材で、昇降ユニット8の揚重機をゆるめるとレールRはこれに沿って斜めにすべり落ちる。なお、作業中の使用状態ではガーダー7の先端は車両限界よりも外側まで突出している。作業終了後はガーダー7を後述する図2に示すように折り畳み、ポスト4を倒して車両限界内に収容してから走行するので問題はない。
【0021】
図5からもわかるように、吊り上げ、吊り下ろしできるのはレール運搬車Tの停車している線路の片側、ポスト4がない側のみである。
【0022】
そこで本発明においては、この鉄道レールの積み卸し装置1を一対2基、レール運搬車Tの床面付近にまくら木C方向に固定されているベースプレート2の両端に向かい合わせに取り付け、一対2基のどちらも使用できるようにした。そして使用していない積み卸し装置1については、図1に示すように、前記ポスト4を矢印aのように水平に倒し、前記ガーダー7を矢印bのようにその延長方向(ポスト4をその頂部の側に延ばした方向)、すなわちレール方向(レール運搬車が停車している線路のレールと同じ向き)に向けて前記ベースプレート2と同じ床面Dに水平状態に寝かせることができる。このようにすると、使用していない側の積み卸し装置1はあたかもレール運搬車Tに積載されているレールRと同じような存在であり、積み卸しするレールRは自由にその上を通過できるから、一対2基の積み卸し装置1のうちいずれかを使用することにより線路のいずれの側へもレールの積み卸しが可能となるのである。
【0023】
図2は、図1の積み卸し装置1におけるポスト4の構成およびその起伏を説明する説明図である。ポスト4は2枚の板状部材4a,4bで構成され、それぞれがベースプレート2と基部側蝶番3a,3bでピン結合され、先端側は先端部蝶番5a,5bで自在継手6とピン結合されて平行四辺形のリンクを構成している。したがってポストが起倒しても自在継手6は傾倒しないで同じ姿勢で上下する。
【0024】
図3はこの実施例における自在継手周辺を示す部分側面図である。断面形状がコの字状の自在継手6がポスト4上端の先端部蝶番5に支持されている。その中心位置に縦ピン61が嵌まっており、ガーダー7が縦ピン61を中心として首振り自在に支持されている。レールの積み卸しの際はガーダー7をまくら木C方向にして使用する。
【0025】
ところで、前記したように線路の曲線部分はレールの摩耗が激しいのでレール交換の頻度が高い。すなわちレール運搬車Tが曲線箇所に停車してレールの積み卸しを行うことはしばしばある。曲線部分のレールは、通過する列車の遠心力を軽減するために内軌に対して外軌を高くする「カント」と呼ばれる傾斜を設けているため、レール運搬車Tは傾いた状態で停車している。したがってポスト4も同じ角度で傾斜しており、ガーダー7も水平ではない。在来線の軌間1067mmにおいて曲線の最少半径を300mとすれば、カント量は105mm程度であり、傾斜角度は約6度である。
【0026】
しかしその状態ではチエーンブロックなどの昇降ユニット8が横移動するのに不都合であるから、ポスト4に対してガーダー7を俯仰可能とし、その位置における傾斜分だけガーダー7を傾けて水平にするか、あるいはガーダー7に取り付けられる昇降ユニット8にガーダー7の任意の位置で固定できるブレーキなどを設けることが好ましい。この実施例では特に図示しないが昇降ユニット8をチェーン駆動で横移動させ、回転モータを停止すれば昇降ユニットは停止位置から動かないようにしている。
【0027】
(実施例2)
第2の実施例を図4により説明する。なお、図4では昇降ユニット8を省略してある。第1の実施例と比較して、ポスト4は2枚の板ではなく一体の柱体であり、基部側蝶番3も単純な蝶番である。自在継手は、ポスト4の上端に直接取り付けられており、前述した先端部蝶番はない。そしてガーダー7は縦ピンではなく、水平ピン68で自在継手6に取り付けられ、向きはまくら木Cの方向に固定されている。使用しない場合はポスト4を矢印cのように倒し、90度に曲がっていたガーダー7を矢印dのように(ポスト4をその頂部の側に延ばした方向に)伸ばしてポスト4と直線状にして寝かせるのである。電化区間の場合、伸ばす過程でガーダー7の先端が車両限界を超えて架線に接触しないように注意が必要である。寝かせることによる効果は第1の実施例と同じである。
【0028】
以上説明したように、本発明の鉄道レールの積み卸し装置は、レール運搬車Tの床面Dに対して起伏自在であって使用しない場合には、レールRの積み卸しの障害にならない。そのため、レール運搬車Tの左右両側の側縁部に設け、いずれか一方のみを使用することが可能であり、どちらか一方のみを使用し、使用しない側の積み卸し装置は床面D上に倒しておくので、必要に応じて線路のどちら側にもレールを積み卸しすることができる。
【0029】
なお、ポストとガーダーを倒す場合、本発明ではポストに対してガーダーを90度曲げてポストとガーダーを直線状にするのであるが、ガーダーを180度曲げて完全に折り畳んだり、ポストの中にガーダーを引き込んだりすることも考えられないわけではないが、昇降ユニットを取り付けたままガーダーを引き込むことには問題があり、また揚重設備であるから各構造部材や蝶番部分の強度は十分保証されなければならず、さらに人力で行わなければならないようなやや複雑な取扱いは作業を自動化するという観点からは不利である。
【0030】
本発明の鉄道レールの積み卸し装置は、レール運搬車に油圧ユニットを備えることにより、ポストの起倒、ガーダーの伸ばし等の操作を容易に自動化でき、レール交換作業を一層効率化することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…積み卸し装置、 2…ベースプレート、 3…基部蝶番、 4…ポスト、 5…先端部蝶番、 6…自在継手、 7…ガーダー、 8…昇降ユニット(揚重機)、 61…縦ピン、 90…台車本体、 91…車輪、 92…連結器、 93…ターンテーブル、 C…まくら木、 D…床面、 F…(レール運搬車の)側板、 G…ガイド部材、 L…レール積み卸し台車、 R…レール、 T…レール運搬車。
図1
図2
図3
図4
図5
図6