(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物及びそれからなる成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220603BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20220603BHJP
C08G 63/195 20060101ALI20220603BHJP
C08G 63/199 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/13
C08G63/195
C08G63/199
(21)【出願番号】P 2017075608
(22)【出願日】2017-04-05
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2016075896
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 大
(72)【発明者】
【氏名】須藤 嘉祐
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166454(JP,A)
【文献】特開2015-025098(JP,A)
【文献】特開2006-321908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08G 63/00-63/91
C08K 3/00-13/08
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、
エチレングリコールを70~98モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合成分として2~15モル%含有
し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(A)と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、
エチレングリコールを70~98モル%、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分として2~15モル%含有
し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(B)を3/97~60/40の質量比で含有し、極限粘度が0.7~1.3であり、
以下に示す測定方法にて測定を行うb値が2.0以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
b値;日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、色調を測定し、色調の判定をハンターのLab表色計で行い、b値を測定する。
【請求項2】
ポリエステル樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.005~0.5質量%含有する、請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
カルボキシル末端基濃度が35当量/t以下である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類のポリエステル樹脂をブレンドしてなるポリエステル樹脂組成物であって、色調、透明性、耐衝撃性及びリサイクル性に優れた成形体を生産性よく得ることができるポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、機械的特性、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種のシート、フィルム、容器等として幅広く用いられており、特に昨今では、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用等の食品用や化粧品等の生活用品用の中空容器(ボトル)用途の伸びが著しい。しかも、塩化ビニル樹脂製中空成形体におけるような残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性及び安全性が高い点から、従来の塩化ビニル樹脂などからなるボトルからの置き換えも進んでいる。
【0003】
一般に、プラスチック製のボトルなどを製造するにあたっては、成形の容易性、高生産性、成形機械や金型などの設備費が比較的安くてすむなどの点から、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスに通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型に挟んで内部に空気を吹き込むいわゆるダイレクトブロー成形法が採用されている。そして、このダイレクトブロー成形による場合は、成形を円滑に行うために、溶融状態で押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンするのを回避する必要があり、そのため、使用樹脂に高い溶融粘度が要求される。したがって、高い溶融粘度を有する樹脂として、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などがダイレクトブロー成形においては広く用いられている。
【0004】
ダイレクトブロー成形体においても塩化ビニル樹脂からポリエステル樹脂への置き換えが検討されているが、ポリエステル樹脂は、一般にダイレクトブロー成形に適する高い溶融粘度を有していない。このため、押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンし、吹き込み成形が行えないという問題があり、また、ブロー時に結晶化が起こりやすいため、成形が可能であっても白化が生じ、透明性が不十分になるという問題があった。
【0005】
透明性を向上させるために、ポリエチレンテレフタレートに他のモノマー成分を共重合したポリエステル樹脂が提案されている。これにより結晶化は抑制できるが、それだけでは溶融粘度を上昇させることができない。そこで、3官能以上の多価カルボン酸/多価アルコールによる架橋の手段により高粘度化させ、ドローダウンの問題を解決する方法が提案されてきた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような架橋の手段により高粘度化させると、成形性は向上するものの、多価カルボン酸や多価アルコールの量が多い場合は、ゲル化しやすく、熱安定性に劣り、得られる成形体は色調や透明性、耐衝撃性に劣るという問題があった。
【0006】
また、ダイレクトブロー成形では押出機よりダイスを介して押出した円筒状のパリソンを、垂直に二分割された割金型により型締めして挟み込み、この割金型のキャビティーの底辺に配設した刃部であるピンチオフ部で溶融樹脂の下部を切断すると共に熱溶着シールし、上部ではパリソンカッターで筒状の溶融樹脂の上部を切断することで有底筒体のパリソンを形成し、次いで割金型の頂部より挿入のエアノズルによってブローエアをパリソンに吹き込みブロー成形を行うため、切断された樹脂の端材が発生する。この端材については乾燥、結晶化を行った後、再生材として原料樹脂チップにドライブレンドし再びダイレクトブロー成形に使用するリサイクルを行い、コストダウンを図っている。しかしながら、一旦成形体を形成した樹脂組成物は、成形時の熱履歴によって極限粘度が低下しているため、成形工程を経た端材を多量にドライブレンドしてリサイクルすると、成形時にドローダウンが生じ、成形出来ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決し、ブロー成形時にドローダウンや結晶化による白化の問題が生じることなく、色調、透明性、耐衝撃性に優れたブロー成形体を生産性よく得ることができるポリエステル樹脂組成物を提供しようとするものであり、また、一旦成形工程を経て端材となったものを、再度ブロー成形に用いても良好に成形が可能となる、リサイクル性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供しようとするものである。さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールを70~98モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合成分として2~15モル%含有し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(A)と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールを70~98モル%、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分として2~15モル%含有し、全酸成分の含有量を100モル%とするとき、テレフタル酸を70モル%以上含有するポリエステル樹脂(B)を3/97~60/40の質量比で含有し、極限粘度が0.7~1.3であり、以下に示す測定方法にて測定を行うb値が2.0以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
b値;日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、色調を測定し、色調の判定をハンターのLab表色計で行い、b値を測定する。
(2)ポリエステル樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.005~0.5質量%含有する、(1)記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)カルボキシル末端基濃度が35当量/t以下である、(1)又は(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、特定の組成を満足する2種類のポリエステル樹脂を特定の比率で含有し、特定の粘度を有するものであることにより、特に、ダイレクトブロー成形時にドローダウンや結晶化による白化の問題が生じることなく、色調、透明性、さらには耐衝撃性にも優れたブロー成形体を生産性よく得ることができる。さらに、ポリエステル樹脂組成物のカルボキシル末端基濃度を適切な範囲に調整することにより、ブロー成形時の熱処理による熱分解が生じにくく、熱安定性に優れている。
このため、本発明のポリエステル樹脂組成物は、一旦成形工程を経て端材となったものを、再度ブロー成形に用いても、端材を構成する樹脂組成物はブロー成形時に熱分解が生じていないため、リサイクル成形を行っても、耐衝撃性に優れたブロー成形体を生産性よく得ることができる(リサイクル性にも優れている)。
そして、本発明の成形体は、色調、透明性、耐衝撃性に優れているため、種々の用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略すことがある)を共重合成分として特定量有するポリエステル樹脂(A)と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体(以下BAEOと略すことがある)を共重合成分として特定量含有するポリエステル樹脂(B)を適量含有するものである。
【0012】
ポリエステル樹脂(A)について説明する。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、CHDMを共重合成分として2~15モル%含有するものであり、CHDMの共重合量は、中でも2~12モル%であることが好ましい。CHDMを含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、得られるブロー成形体の耐衝撃性を向上させることができる。
CHDMの共重合量が2モル%未満の場合、CHDMを共重合することによる上記効果を十分に奏することができず、ブロー成形体の耐衝撃性を向上させることが困難となる。一方、CHDMの共重合量が15モル%を超えると、結晶化速度の調整が困難となり、成形性が悪化するとともに、リサイクル性に劣るものとなる。
【0013】
ポリエステル樹脂(A)中のエチレングリコールの割合は、70~99モル%であることが好ましく、中でも85~99モル%であることが好ましい。エチレングリコールとCHDM以外のグリコール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ダイマージオールなどを挙げることができる。
【0014】
グリコール成分のエチレングリコールの割合が70モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすいため、耐衝撃性やリサイクル性に劣るものとなりやすい。一方、エチレングリコールの割合が98モル%を超えると、CHDMの共重合量が少なくなるため、CHDMを共重合することによる上記した効果を十分に奏することが困難となる。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)中の酸成分としては、テレフタル酸の割合が70モル%以上であることが好ましく、中でもテレフタル酸の割合は80モル%以上、さらには90モル%以上であることが好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、樹脂の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすく、耐衝撃性やリサイクル性に劣るものとなりやすい。
【0016】
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、0.65~1.3であることが好ましく、中でも0.8~1.2であることが好ましい。極限粘度が0.65未満であると、得られる樹脂組成物の極限粘度が低くなりすぎるため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。また、成形体を得ることができたとしても耐衝撃性に劣るものとなる。一方、極限粘度が1.3を超えると、得られる樹脂組成物の極限粘度が高くなりすぎるため、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなり、耐衝撃性も低下する。
【0018】
次に、ポリエステル樹脂(B)について説明する。
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合成分として2~15モル%含有するものであり、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量は、中でも2~8モル%であることが好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を含有(共重合)することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐことができる。そして、ポリエステル樹脂(A)による耐衝撃性を向上させる効果をより優れたものにすることが可能となる。
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量が上記の範囲外のものであると、結晶化速度の調整ができず、また、ポリエステル樹脂(A)による耐衝撃性の向上効果をより優れたものにすることができない。
【0019】
ポリエステル樹脂(B)中のエチレングリコールの割合は、70~99モル%であることが好ましく、中でも85~99モル%であることが好ましい。エチレングリコールとビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体以外のグリコール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ダイマージオールなどを挙げることができる。
【0020】
ポリエステル樹脂(B)中の酸成分としては、テレフタル酸の割合が70モル%以上であることが好ましく、中でもテレフタル酸の割合は80モル%以上、さらには90モル%以上であることが好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、樹脂の結晶性が低下し、非晶性のものとなりやすく、耐衝撃性やリサイクル性に劣るものとなりやすい。
【0021】
テレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0022】
ポリエステル樹脂(B)の極限粘度は、0.8~1.3であることが好ましく、中でも0.9~1.2であることが好ましい。極限粘度が0.8未満であると、得られる樹脂組成物の極限粘度が低くなりすぎるため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。また、成形体を得ることができたとしても耐衝撃性に劣るものとなる。一方、極限粘度が1.3を超えると、得られる樹脂組成物の極限粘度が高くなりすぎるため、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなり、耐衝撃性も低下する。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)を3/97~60/40とすることが必要であり、中でも5/95~40/60とすることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の割合が上記範囲よりも少ない場合、ポリエステル樹脂(A)を添加することによる、耐衝撃性の向上効果を奏することができない。一方、ポリエステル樹脂(A)の割合が上記範囲よりも多い場合、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを均一に混合することが困難となり、成形性が悪くなったり、厚さ斑の生じたブロー成形体となる。
【0024】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物においては、質量割合の大きいポリエステル樹脂(B)をベース樹脂とし、ポリエステル樹脂(A)を顔料や他の添加剤等を添加したマスターバッチとすることが好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂(A)中に含有させる顔料や他の添加剤等としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ナフトール系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、フタロシアニン系、ジオキサジン系の有機顔料および酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、群青、酸化クロム、モリブデンレッドなどの無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛などの分散助剤等が挙げられ、これらは組み合わせて複数種用いることもできる。
【0026】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、上記のようなポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を主成分とするものであり、樹脂組成物中の両樹脂の割合は、80質量%以上であることが好ましく、中でも90質量%以上であることが好ましい。
【0027】
そして、本発明のポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が、0.7~1.3であることが必要であり、中でも0.75~1.2であることが好ましく、ダイレクトブロー成形用に用いる際には、0.8~1.2であることが好ましい。
なお、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)及びポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0028】
ポリエステル樹脂組成物の極限粘度が0.7未満の場合は、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。そして、得られるブロー成形体は耐衝撃性に劣るものとなる。
一方、極限粘度が1.3を超える場合は、成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調や透明性が悪くなる。また、ブロー成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなる傾向があるため好ましくない。
【0029】
そして、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.005~0.5質量%含有することが好ましく、中でも0.01~0.3質量%含有することが好ましい。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、ポリエステル樹脂の重合反応工程中に添加することが好ましい。重合反応工程中に添加することで、該化合物の一部がポリエステル樹脂中に共重合される。これにより、ポリエステル樹脂中に分子鎖の絡み合いが生じ、架橋に似た状態が生じるものと想定され、ポリエステル樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
【0030】
本発明においては、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)のいずれの樹脂中にヒンダードフェノール系抗酸化剤が含まれていてもよいが、中でもポリエステル樹脂(A)中に含まれていることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)は、特にヒンダードフェノール系抗酸化剤を添加することによる分子鎖の絡み合いが生じやすく、耐衝撃性を向上させる効果が増加する。ポリエステル樹脂(A)中のヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、中でも0.05~0.3質量%であることが好ましい。
【0031】
また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、架橋に似た状態を生じやすく、コスト的にも有利であることから、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含有することによって、樹脂組成物の熱安定性が向上し、得られる成形体は、色調や透明性に優れたものとなるとともに、リサイクル性にも優れたものとすることができる。
【0033】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が0.005質量%未満では、上記したような分子鎖の絡みが生じた樹脂組成物とならないため、樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることが困難となり、また、溶融粘度を高くすることが困難となり、ブロー成形時のパリソンのドローダウンを防ぐことが困難となる。さらには、樹脂組成物の熱安定性が向上せず、得られる成形体は耐熱性、色調や透明性に劣ったものとなりやすく、リサイクル性にも優れたものとすることが困難となる。
【0034】
一方、含有量が0.5質量%を超えると、成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなりすぎ、得られる成形体は表面が荒れて光沢感が損なわれたものとなる。また、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、成形時に成形温度を上げる必要があり、得られる成形体の色調が悪くなる。さらに、熱安定性を向上させる効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0035】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、カルボキシル末端基濃度が35当量/t以下であることが好ましく、中でも30当量/t以下であることが好ましく、さらには25当量/t以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂組成物のカルボキシル末端基濃度を35当量/t以下とすることによって、ブロー成形時に樹脂組成物の熱分解が生じることがなく、安定した成形が可能となる。そして、得られるブロー成形体はリサイクル性にも優れたものとなる。
【0036】
カルボキシル末端基濃度が35当量/tを超える場合は、ブロー成形時の熱処理によって樹脂の熱分解が生じ、このため、パリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。このため、得られるブロー成形体はリサイクル性に劣るものとなり、まら厚みムラが生じたものとなりやすい。
【0037】
また、得られる成形体もカルボキシル末端基濃度が増加したものとなっているため、成形時に発生する端材もカルボキシル末端基濃度が高いものとなっている。このため、端材を再生材として再びブロー成形に供すると、ブロー成形時に樹脂組成物の熱分解が生じ、安定的な生産が困難となり、得られる成形体は厚みムラが生じたものとなる。
【0038】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物中には、ゲルマニウム化合物が、ポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10-5モル~6.0×10-4モル含有されていることが好ましく、中でも1×10-4モル~5.0×10-4モル含有されていることが好ましい。
ゲルマニウム化合物はポリエステル樹脂を得る際に重合触媒として使用されるものであり、ゲルマニウム化合物の含有量が5×10-5モル未満であると、目標の重合度のポリエステル樹脂が得られない、あるいは、重合反応において重合時間が長くなり、その結果、得られるポリエステル樹脂の色調が悪くなる。一方、3.0×10-4モルを超えても、重合触媒としての効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0039】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド等が挙げられ、重合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0040】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述したように、ブロー成形に適したものであるが、本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成形や延伸法を採用することによっても、色調、透明性、耐衝撃性に優れた、射出成形体、シート、フィルム等の成形体を得ることができる。
【0041】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について説明する。ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)をそれぞれ得たのち、これらのポリエステル樹脂をブレンドする方法について説明する。
本発明におけるこれらのポリエステル樹脂は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることが困難となりやすい。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂組成物は色調が悪いものとなる。
【0042】
具体的には、例えば、次のような方法で製造することができる。
ポリエステル樹脂(A)は、酸成分としてテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコール及びCHDMを所定の割合でエステル化反応器に仕込み、エステル化反応を行った後、重合反応器に移し、重合触媒や添加剤を添加し、溶融重合反応を行い、プレポリマーを得る。得られたプレポリマーを用いて、固相重合反応を行い、目標の極限粘度のCHDMを共重合したポリエステル樹脂(A)を得る。
【0043】
ポリエステル樹脂(B)は、酸成分としてテレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体、グリコール成分としてエチレングリコール及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を所定の割合でエステル化反応器に仕込み、所定の温度でエステル化反応を行った後、重合反応器に移し、重合触媒や添加剤を添加し、所定の温度で溶融重合反応を行い、プレポリマーを得る。得られたプレポリマーを用いて、固相重合反応を行い、目標の極限粘度のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体を共重合したポリエステル樹脂(B)を得る。
【0044】
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、ポリエステル樹脂組成物の極限粘度を高くすることが困難となる。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂組成物は色調が悪いものとなる。固相重合反応における工程や条件を特定のものにすることによって、特有の粘性を有し、かつカルボキシル末端基濃度の低い本発明のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
上記のようにして得られた2種類のポリエステル樹脂は、それぞれをチップ状のものとして得た後、両ポリエステル樹脂のチップをブレンドすることにより、本発明のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
ブレンドする際には、単軸あるいは二軸の押出機を使用し、温度250~300℃の範囲で練り込む方法を採用することもできる。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体は、成形体がブロー成形体である場合、汎用のダイレクトブロー成形機や延伸ブロー成形機を用いて製造することが可能であり、成形機のシリンダー各部及びノズルの温度は、230~280℃の範囲とするのが好ましい。
本発明の成形体(ブロー成形体)を得る際には、チップ状のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)をブロー成形機にそれぞれ投入し、成形機のシリンダー各部及びノズルを上記の温度として、ブロー成形を行ってもよい。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)共重合成分の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量
得られた樹脂組成物を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合量と含有量を求めた。
【0047】
(c)成形性
得られた中空容器1(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が95本以上であるものを○、95本未満であるものを×とした。
(d)リサイクル性
得られた中空容器1を粉砕機で粉砕した粉砕品50質量部、各例にて得られたポリエステル樹脂組成物50質量部をブレンドし、除湿乾燥機に投入し乾燥した後、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器2を得た。得られた中空容器2(サンプル数100本)につき、(c)と同様にして成形性を評価した。合格のサンプル数が90本以上であるものを○、90本未満であるものを×とした。
【0048】
(e)色調
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2から切り出してサンプル片(20個)を作成し、日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、サンプル片の色調を測定した。色調の判定はハンターのLab表色計で行い、b値を測定し、n数20の平均値とした。なお、b値が2.0以下を色調良好であると判定した。
(f)ヘーズ
得られた中空容器1と(d)で得られた中空容器2から切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好である。
【0049】
(g)耐衝撃性
(c)成形性の評価にて、合格となった中空容器1(サンプル数100本)と、(d)で得られた中空容器2であって、(c)成形性の評価にて合格となった中空容器2(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数で耐衝撃性を評価した。なお、中空容器1の割れなかった成形体の本数が90本未満の場合は、中空容器2の評価は行わなかった。
(h)カルボキシル末端基濃度
得られたポリエステル樹脂組成物0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
【0050】
実施例1
〔ポリエステル樹脂(A)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物99.0質量部を重合反応器に仕込み、続いて、CHDM4.89質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.021質量部、酢酸コバルト4水和物0.006質量部、リン酸0.025質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤〔ADEKA社製「アデカスタブAO-60」:テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン)〕0.09質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で3時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.65であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、35時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(A)を得た。
【0051】
〔ポリエステル樹脂(B)〕
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物99.0質量部を重合反応器に仕込み、続いて、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体4.75質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.021質量部、酢酸コバルト4水和物0.006質量部、亜リン酸0.021質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.70であった。このプレポリマーを150℃で5時間予備乾燥した後、窒素気流中で210℃、30時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂(B)を得た。
【0052】
〔ポリエステル樹脂組成物〕
上記の2種類のポリエステル樹脂を乾燥させた後、二軸押出機(東芝機械社製:TEM26SS)に、質量比(A/B)=10/90で投入し、温度280℃にて練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、このポリエステル樹脂組成物を用い、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用いて、押出温度270℃、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで成形し、350ccの中空容器1を得た。
【0053】
実施例2~9 比較例1~2
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の質量比(A/B)やポリエステル樹脂(A)中のヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0054】
実施例10~13、比較例5~8
ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量、またはポリエステル樹脂(B)のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体の共重合量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして重合反応を行い、それぞれ表1に示す極限粘度を有するポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を得た。これらを実施例1と同様に練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0055】
実施例14
ポリエステル樹脂(A)を得る際の固相重合時間を15時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A)を得た。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0056】
実施例15
ポリエステル樹脂(A)を得る際の固相重合時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A)を得た。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0057】
ポリエステル樹脂(A)を得る際の固相重合時間を10時間に変更し、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(A)を得た。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0058】
比較例3
ポリエステル樹脂(B)として、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)の固相重合を行う前のプレポリマーを用いた。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(A)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0059】
比較例4
ポリエステル樹脂(A)として、実施例1で用いたポリエステル樹脂(A)の固相重合を行う前のプレポリマーを用いた。ポリエステル樹脂(B)を得る際の固相重合時間を8時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂(B)を得た。
得られたポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0060】
比較例9
ポリエステル樹脂(A)に代えて、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートである、ベルポリエステルプロダクツ社製の「PIFG5H」を使用した。そして、実施例1で用いたポリエステル樹脂(B)を用い、実施例1と同様にして両樹脂を練り込み、ポリエステル樹脂組成物を得た。
そして、得られたポリエステル樹脂組成物を用い、実施例1と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器1を得た。
【0061】
実施例1~16及び比較例1~9で得られたポリエステル樹脂組成物の組成、極限粘度、成形性・リサイクル性の評価及び成形体(中空容器1、2)の色調、ヘーズ、耐衝撃性の評価結果を表1に示す。
【0062】
【0063】
表1から明らかなように、実施例1~16で得られたポリエステル樹脂組成物は、特定の組成を満足する2種類のポリエステル樹脂を特定量含有し、特定の極限粘度を有していたため、熱安定性に優れており、結晶化による白化の問題が生じることなく、操業性よくダイレクトブロー成形を行うことができた。そして、得られたダイレクトブロー成形体(中空容器1)は厚さ斑のない均一な厚みを有するものであり、着色がなく色調に優れ、透明性が良好なものであり、さらに、耐衝撃性も優れたものであった。
また、中空容器1を粉砕したものを未成形のポリエステル樹脂組成物とともに用いてリサイクル使用した場合の成形性にも優れており、中空容器1と遜色のない、厚み斑がなく、色調、透明性、耐衝撃性に優れた成形体(中空容器2)を得ることができた。
【0064】
一方、比較例1で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)の含有量が少ないため、耐衝撃性に劣るものであった。比較例2で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)の含有量が多くなりすぎたため、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを均一に混合させることができず、成形性が悪くなり、得られた成形体(中空容器1、2)は、厚さ斑の生じたものとなった。
比較例3、4で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物の極限粘度が低すぎたため、成形性に劣るものであり、得られた成形体(中空容器1、2)は厚み斑の生じたものとなり、中空容器1は耐衝撃性に劣るものであった。
比較例5で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量が少なすぎたため、比較例6で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)のBAEOの共重合量が少なすぎたため、ともに得られた成形体(中空容器1、2)は、耐衝撃性に劣るものであった。
比較例7で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)のCHDMの共重合量が多過ぎたため、比較例8で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)のBAEOの共重合量が多過ぎたため、ともに成形性、リサイクル性に劣るものであった。
比較例9で得られたポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)に代えて、イソフタル酸を共重合成分とする共重合ポリエステル樹脂を用いたため、リサイクル性に劣るとともに、得られた成形体は耐衝撃性に劣るものであった。