(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】ムコン酸産生形質転換微生物及びその利用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20220603BHJP
C12N 15/52 20060101ALI20220603BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220603BHJP
C12P 7/44 20060101ALI20220603BHJP
C12R 1/40 20060101ALN20220603BHJP
【FI】
C12N15/53 ZNA
C12N15/52 Z
C12N1/21
C12P7/44
C12R1:40
(21)【出願番号】P 2017182566
(22)【出願日】2017-09-22
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2017086589
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業ALCA「糖質に依存しないムコン酸のバイオ生産」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】園木 和典
(72)【発明者】
【氏名】政井 英司
(72)【発明者】
【氏名】上村 直史
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/106257(WO,A1)
【文献】特表2007-535923(JP,A)
【文献】特表2005-522993(JP,A)
【文献】Appl. Microbiol. Biotechnol.,2015年,Vol.99,p.5217-5225
【文献】リグニン由来フェノール類を原料としたムコン酸生産,日本農芸化学会大会講演要旨集,2016年,発表番号2A028
【文献】Metabolic Engineering Communications,2016年,Vol.3,p.111-119
【文献】Metabolic Engineering,2015年,Vol.28,p.240-247
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C12P1/00-41/00
C12N1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主微生物が染色体上にpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子及びcatB遺伝子を有するシュードモナス(Pseudomonas)属微生物であり、
染色体上にある該pcaH遺伝子、該pcaG遺伝子及び該catB遺伝子が欠失しており、
挿入されたpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を発現し、かつ、
挿入されたaroY遺伝子を発現する、
形質転換微生物であって、
挿入された前記aroY遺伝子、挿入された前記pcaH遺伝子及び前記pcaG遺伝子は、宿主微生物の染色体に導入せずに、自律的に増幅するDNAコンストラクトに含まれ、
挿入された前記aroY遺伝子は、プロトカテク酸・デカルボキシラーゼを発現し、かつ配列番号42のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子であり、
挿入された前記pcaH遺伝子は、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼのβサブユニットを発現し、かつ配列番号38のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子であり、かつ
挿入された前記pcaG遺伝子は、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼのαサブユニットを発現し、かつ配列番号39のアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する遺伝子である、
前記形質転換微生物。
【請求項2】
挿入された前記aroY遺伝子と、挿入された前記pcaH遺伝子及び前記pcaG遺伝子とは、同一プロモーターの制御下にある、請求項1に記載の形質転換微生物。
【請求項3】
前記宿主微生物がさらに染色体上にpobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子を有するシュードモナス属微生物である、請求項1~2のいずれか1項に記載の形質転換微生物。
【請求項4】
前記宿主微生物がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の形質転換微生物。
【請求項5】
p-ヒドロキシフェニルリグニン由来の芳香族化合物及び/又はグアイアシルリグニン由来の芳香族化合物を、請求項1~4のいずれか1項に記載の形質転換微生物に作用させることにより、ムコン酸を得る工程
を含む、ムコン酸の製造方法。
【請求項6】
前記工程が、溶存酸素濃度が1~13%である条件下で、p-ヒドロキシフェニルリグニン由来の芳香族化合物及び/又はグアイアシルリグニン由来の芳香族化合物を、請求項1~4のいずれか1項に記載の形質転換微生物に作用させることにより、ムコン酸を得る工程である、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムコン酸が生産可能な形質転換微生物及び該形質微生物を利用したムコン酸の製造方法に関する。特に、本発明は、リグニン由来の芳香族化合物を単一炭素源として増殖及びムコン酸の生産が可能な形質転換微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
リグニンは植物の維管束細胞壁成分として存在する無定形高分子物質であって、フェニルプロパン系の構成単位が複雑に縮合したものであり、メトキシ基を含有することが化学構造上の大きな特徴になっている。リグニンは木質化した植物細胞を相互に膠着し、組織を強化する働きをしており、木材中に約18~36%、草本中には約15~25%存在する。そこで、木材を有効利用するために、リグニンを分解し、有用化合物を得ようとする試みが種々なされている。
【0003】
一方、cis,cis-ムコン酸(以下、単にムコン酸とよぶ場合がある。)は、分子内に二重結合及びカルボキシ基が2個あることにより、反応性が高い化合物である。ムコン酸を出発物質とする種々のムコン酸誘導体が知られており、例えば、ラクトン、スルホン、ポリアミド、ポリエステル、チオエステル、付加ポリマーなどが挙げられる。このようなムコン酸誘導体は、様々な用途を有するものとして知られており、例えば、界面活性剤、難燃剤、UV光安定化剤、熱硬化性プラスチック、コーティング剤などとして使用され得る。
【0004】
このように、ムコン酸は、ムコン酸誘導体の形で種々の用途に供されるところ、リグニンからムコン酸を製造することができれば、資源の再生が達成され、非常に有用である。そこで、リグニン又はリグニンに由来する物質から、ムコン酸を製造する方法が試みられている。特にこのような方法として、微生物を用いたバイオコンバージョンが研究されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)を宿主微生物として、染色体上のpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子(以下、合わせてpcaHG遺伝子とよぶ場合がある。)並びにcatR遺伝子、catB遺伝子、catC遺伝子およびcatA遺伝子を破壊し、かつ、挿入したcatA遺伝子とaroY遺伝子とを、又はcatA遺伝子とaroY遺伝子とecdB遺伝子とを発現する形質転換微生物を作製し、該形質転換微生物をグルコースにより増殖させ、次いでp-クマル酸によりムコン酸を製造したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】C.W. Johnson et al., Metabolic Engineering Communications, 3, 111-119, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いることにより、p-クマル酸からムコン酸を製造することができる。しかし、非特許文献1に記載の形質転換微生物は、増殖のための炭素源として高価なグルコースを要求することから、非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いるムコン酸の製造方法は経済性が悪いという問題がある。また、菌体増殖のためのグルコースと、ムコン酸生産の基質としてのp-クマル酸というように二種以上の炭素源が求められることから、これらの炭素源の総量を基準にして考えれば、非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いるムコン酸の製造方法はムコン酸の収率が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、経済性が良好であり、かつ、収率が高いムコン酸の製造を可能にする微生物及び該微生物を利用したムコン酸の製造方法を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題の解決を試みようとして、まずは収率が高いムコン酸生産微生物について鋭意検討した。
【0010】
図1に、非特許文献1に記載の形質転換微生物の代謝経路を示す。
図1に示すように、非特許文献1に記載の形質転換微生物は、宿主微生物がプロトカテク酸・3,4-環開裂経路を経た分解を行うシュードモナス・プチダである。このことより、非特許文献1に記載の形質転換微生物によって効率よくムコン酸を製造しようとした場合、宿主微生物の染色体上のpcaHG遺伝子及びcatB遺伝子を欠失させ、さらに挿入したaroY遺伝子を発現させなければならない。こうすることによってはじめて、p-クマル酸などのリグニン由来の芳香族化合物をプロトカテク酸に一旦は収束して、ムコン酸へと変換することができるようになる。
【0011】
しかし、非特許文献1に記載の形質転換微生物は、染色体上のpcaHG遺伝子を欠失していることから、微生物の増殖のために、グルコースなどのリグニン由来の芳香族化合物以外の基質を必要とする。したがって、非特許文献1に記載の形質転換微生物は、外見上は、リグニン由来の芳香族化合物からムコン酸を製造する方法として収率が高い方法であるようにみえるが、実際の収率の計算では増殖用基質の量も加味しなければならず、結果として非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いる方法は、ムコン酸の製造方法として収率の低い方法である。
【0012】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねたところ、宿主微生物の染色体上のpcaHG遺伝子及びcatB遺伝子を破壊した後、別途、外来遺伝子として挿入したpcaHG遺伝子及びaroY遺伝子を過剰発現する形質転換微生物を創作することに成功した。そして、驚くべきことに、本発明者らが作製した形質転換微生物は、グルコースを用いなくとも、リグニン由来の芳香族化合物を利用して増殖しつつ、ムコン酸を製造し得ることを見出した。このようにして、本発明者らは、本発明者らが作製した形質転換微生物を用いて、リグニン由来の芳香族化合物からムコン酸を製造する方法を創作することに成功した。
【0013】
さらに驚くべきことに、本発明者らが作製した形質転換微生物を用いる方法は、リグニン由来の芳香族化合物を唯一の炭素源として用いながらも、グルコース及びリグニン由来の芳香族化合物を基質として必要とする非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いる方法と比べて、ムコン酸の収率について同程度又はそれ以上であることを見出した。
【0014】
リグニン由来の芳香族化合物は、廃資材などのバイオマスから得ることができ、グルコースと比べて非常に安価である。したがって、本発明者らが作製した形質転換微生物を用いるムコン酸の製造方法は、非特許文献1に記載の形質転換微生物を用いる方法と比べて経済的に有利な方法である。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0015】
したがって、本発明の一態様によれば、以下の(1)~(4)の形質転換微生物が提供される。
(1)宿主微生物が染色体上にpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子及びcatB遺伝子を有するシュードモナス(Pseudomonas)属微生物であり、
染色体上にある該pcaH遺伝子、該pcaG遺伝子及び該catB遺伝子が欠失しており、
挿入されたpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を発現し、かつ、
挿入されたaroY遺伝子を発現する、
形質転換微生物。
(2)挿入された前記aroY遺伝子と、挿入された前記pcaH遺伝子及び前記pcaG遺伝子とは、同一プロモーターの制御下にある、(1)に記載の形質転換微生物。
(3)前記宿主微生物がさらに染色体上にpobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子を有するシュードモナス属微生物である、(1)~(2)のいずれか1項に記載の形質転換微生物。
(4)前記宿主微生物がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である、(1)~(3)のいずれか1項に記載の形質転換微生物。
【0016】
本発明の別の一態様によれば、以下(5)及び(6)のムコン酸の製造方法が提供される。
(5)p-ヒドロキシフェニルリグニン由来の芳香族化合物及び/又はグアイアシルリグニン由来の芳香族化合物を、(1)~(4)のいずれか1項に記載の形質転換微生物に作用させることにより、ムコン酸を得る工程
を含む、ムコン酸の製造方法。
(6)前記工程が、溶存酸素濃度が1~13%である条件下で、p-ヒドロキシフェニルリグニン由来の芳香族化合物及び/又はグアイアシルリグニン由来の芳香族化合物を、請求項1~4のいずれか1項に記載の形質転換微生物に作用させることにより、ムコン酸を得る工程である、(5)に記載の製造方法。
【0017】
本発明の別の一態様によれば、以下(7)の組換えベクターが提供される。
(7)aroY遺伝子と、pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子とを含む組換えベクター。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様の形質転換微生物及び本発明の一態様のムコン酸の製造方法によれば、従前の微生物を用いる方法と比べて、安価かつ収率を維持又は改善して、ムコン酸を製造することができる。したがって、本発明の一態様の形質転換微生物及び本発明の一態様のムコン酸の製造方法によれば、リグニンを含むバイオマスの有効利用の一環として、工業的規模でのムコン酸の製造が期待できる。本発明の一態様の組換えベクターによれば、本発明の一態様の形質転換微生物の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、非特許文献1のFig.1に記載のシュードモナス・プチダの代謝経路の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一態様である形質転換微生物、ムコン酸の製造方法及び組換えベクターの詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0021】
(形質転換微生物の概要)
本発明の一態様である形質転換微生物は、宿主微生物の染色体上にある特定の遺伝子が欠失しており、かつ、外来遺伝子として挿入した特定の遺伝子を発現するように、宿主微生物を形質転換した微生物である。
【0022】
本明細書における「遺伝子の欠失」は、遺伝子が正常に転写されないこと、遺伝子の発現によって産生されるべきタンパク質が正常に翻訳されないことなどのように、遺伝子が正常に機能せずに遺伝子の発現が妨げられていることを意味する。遺伝子の欠失は、例えば、遺伝子の全部又は一部が破壊、欠損、置換、挿入などにより遺伝子の構造が変化することによって生じ得る。ただし、遺伝子の欠失は、遺伝子の構造に変化が生じずに、例えば、遺伝子の制御領域をブロックするなどの手段によって遺伝子の発現が抑えられることによっても生じ得る。
【0023】
本明細書における「遺伝子の発現」とは、転写や翻訳などを介して、遺伝子によってコードされるタンパク質が本来の構造や活性を有する態様で生産されることを意味する。また、本明細書における「遺伝子の過剰発現」とは、遺伝子が挿入されたことにより、宿主微生物が本来発現する量を超えて、該遺伝子によってコードされるタンパク質が生産されることを意味する。
【0024】
(欠失又は挿入する遺伝子)
形質転換微生物について、宿主微生物は染色体上にpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子及びcatB遺伝子を有する。これらの遺伝子のうち、形質転換微生物は、宿主微生物の染色体上にあるpcaH遺伝子、pcaG遺伝子及びcatB遺伝子が欠失している。形質転換微生物について、宿主微生物は染色体上に本来有するpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子の両方が欠失していることが好ましいが、pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子のいずれか一方が欠失していればよいという蓋然性がある。
【0025】
pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子は、それぞれプロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼのβサブユニット及びαサブユニットを発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、それぞれ配列番号29及び30の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。
【0026】
catB遺伝子は、cis,cis-ムコン酸・サイクロイソメラーゼを発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号32の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。
【0027】
catA遺伝子は、カテコール・1,2-ジオキシゲナーゼ(Catechol 1,2-dioxygenase)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号31の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。カテコール・1,2-ジオキシゲナーゼ(EC 1.13.11.1)は、1,2-ジヒドロキシベンゼン・1,2-ジオキシゲナーゼなどともよばれる。カテコール・1,2-ジオキシゲナーゼは、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) KT2440株が保有し、カテコールからcis,cis-ムコン酸を生成する反応を触媒する活性を有し、Fe3+を補因子として要求する。
【0028】
カテコール・1,2-ジオキシゲナーゼのアミノ酸配列(accession no.Q88I35)中にIntradiol dioxygenaseドメインを有する。該ドメインは [LIVMF]-x-G-x-[LIVM]-x(4)-[GS]-x(2)-[LIVMA]-x(4)-[LIVM]-[DE]-[LIVMFYC]-x(6)-G-x-[FY](Prosite entry no.P00083)からなり、配列中のYが補因子であるFe3+の結合に関わる。カテコール・1,2-ジオキシゲナーゼのアミノ酸配列中のL137からY165が上記ドメインに相当する。
【0029】
形質転換微生物は、挿入されたpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を発現する。ただし、宿主微生物が染色体上に本来有するpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子の一方が欠失している場合は、その欠失した遺伝子を挿入して発現すればよいという蓋然性がある。形質転換微生物は、さらに挿入されたaroY遺伝子を発現する。
【0030】
aroY遺伝子は、プロトカテク酸・デカルボキシラーゼを発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号33の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。プロトカテク酸・デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.63)は、3,4-ジヒドロキシ安息香酸・カルボキシリアーゼ(3,4-dihydroxybenzoate carboxy-lyase)ともよばれる。プロトカテク酸・デカルボキシラーゼは、プロトカテク酸からカテコールを生成する反応を触媒する酵素であれば、特に限定されない。なお、3-O-メチルガリック酸から3-メトキシカテコールを生成する反応やガリック酸からピロガロールを生成する反応を触媒する活性を有する酵素についても、プロトカテク酸・デカルボキシラーゼとして使用できる可能性がある。また、バニリン酸脱炭酸酵素や4-ヒドロキシ安息香酸の脱炭酸酵素についても、プロトカテク酸を脱炭酸する可能性があることから、プロトカテク酸・デカルボキシラーゼとして使用できる可能性がある。プロトカテク酸・デカルボキシラーゼは、構造上は、UbiDドメイン(Domain architechture ID 10487953)を含むタンパク質群(UbiDスーパーファミリー)に分類される。
【0031】
プロトカテク酸・デカルボキシラーゼの具体例としては、クレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシーズ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subsp.pneumoniae) A170-40株(ATCC 25597株)に由来するタンパク質(accession no.AB479384;AB479384タンパク質)などが挙げられる。AB479384タンパク質のアミノ酸配列と配列同一性の高いアミノ酸配列を有するタンパク質としては、Enterobacter cloacae MBRL1077株由来のprotocatechuate decarboxylase(accession no.AMJ70686;配列同一性 87.2%)、E.cloacae e1026株由来のprotocatechuate decarboxylase(accession no.CZU76022;配列同一性 85.7%)などのprotocatechuate decarboxylaseとして登録されているタンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの酵素は、補因子としてMn2+、プレニル化フラビン・モノヌクレオチド(prenylated flavin mononucleotide;prenyl-FMN)を要求する一連の酵素群として特徴付けられる。
【0032】
形質転換微生物は、kpdB遺伝子を挿入したものであってもよい。kpdB遺伝子は、プロトカテク酸脱炭酸酵素の補因子であるプレニル-FMNの合成を行っていると想定されるタンパク質であり、一細胞内でプロトカテク酸脱炭酸酵素とともに発現することによってプレニル-FMNの供給が高まり、プロトカテク酸脱炭酸酵素活性が向上する蓋然性がある。そこで、aroY遺伝子とともにkpdB遺伝子を発現させて脱炭酸活性を向上することができれば、ムコン酸の生産収率が上昇すると想定される。
【0033】
kpdB遺伝子は、フラビン・プレニルトランスフェラーゼとしての酵素活性を有する4-ヒドロキシ安息香酸・デカルボキシラーゼ・サブユニットBを発現する遺伝子であり、例えば、配列番号34の塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。
【0034】
形質転換微生物は、宿主微生物が染色体上に、pcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子及びcatB遺伝子に加えて、pobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子の1種、2種又は3種全部の遺伝子を有することが好ましい。本明細書では、vanA遺伝子及びvanB遺伝子をまとめてvanAB遺伝子とよぶ場合がある。また、宿主微生物がpobA遺伝子、vanA遺伝子及び/又はvanB遺伝子を染色体上に有していない場合は、これらの遺伝子を発現するように形質転換微生物に挿入することが好ましい。さらに、形質転換微生物は、宿主微生物が染色体上に、バニリン・デヒドロゲナーゼ(vdh)遺伝子、p-ヒドロキシベンズアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(PP_1948)遺伝子及び/又はスフィンゴビウム(Sphingobium) sp.SYK-6株由来のアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(ligV)遺伝子を有することが好ましい。また、宿主微生物がvdh遺伝子、PP_1948遺伝子及び/又はligV遺伝子を染色体上に有していない場合は、これらの遺伝子を発現するように形質転換微生物に挿入することが好ましい。
【0035】
pobA遺伝子は、p-ヒドロキシ安息香酸・モノオキシゲナーゼ(p-hydroxybenzoate monooxygenase)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号35の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。p-ヒドロキシ安息香酸・モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.2またはEC 1.14.13.33)としては、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株由来のPobA(accession no.Q88H28)などが挙げられる。
【0036】
vanA遺伝子は、バニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分(vanillate demethylase oxygenase component)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号36の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。
【0037】
バニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分(EC 1.14.13.82)としては、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株由来のVanA(accession no.Q88GI6)などが挙げられる。バニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分は、Oxidoreductase componentを介して供給されるNADH又はNADPH由来の電子と、分子状酸素から供給される酸素原子とを利用して、バニリン酸のメチルエーテル結合を開裂し、プロトカテク酸、ホルムアルデヒド及び水を生成する。
【0038】
バニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分は、そのアミノ酸配列中にRieske[2Fe-2S]iron-sulfur domain(W7-V107,PROSITE entry no.PS51296)を有し、該ドメイン中のC及びH(C47,H49,C66,H69)がFe-Sの結合に関わる。
【0039】
vanB遺伝子は、バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分(vanillate demethylase oxidoreductase component)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号37の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。
【0040】
バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分(EC 1.14.13.82)としては、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株由来のVanB(accession no.Q88GI5)などが挙げられる。バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分は、NADH又はNADPHから電子を抜き取り、酸素添加酵素(オキシゲナーゼ)へと伝達する酸化還元酵素の一つとして知られている。バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分はバニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分であるVanAにNADH又はNADPH由来の電子を伝達する。
【0041】
バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分は、そのアミノ酸配列中に、2Fe-2S Ferredoxin type iron-sulfer binding domain(G229-I316、PROSITE entry no.PS51085)を有し、該アミノ酸配列中のC(C265、C270、C273、C303)がFe-Sの結合に関わる。また、バニリン酸・デメチラーゼ・オキドレダクターゼ成分は、そのアミノ酸配列中に、NAD-binding domain(L109-D201,Pfam entry no.PF00175)及びFerredoxin reductase type FAD-binding domain(M1-A101、PROSITE entory no.PS51384)を有する。
【0042】
vdh遺伝子はバニリン・デヒドロゲナーゼ(vanillin dehydrogenase)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号43の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。バニリン・デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.67)としては、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株由来のVdh(accession no.Q88HJ9)などが挙げられる。
【0043】
PP_1948遺伝子はp-ヒドロキシベンズアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(p-hydroxybenzaldehyde dehydrogenase)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号44の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。p-ヒドロキシベンズアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.64)としては、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株由来のp-ヒドロキシベンズアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(accession no.Q88LI4)、シュードモナス・プチダ mt-2株由来のp-ヒドロキシベンズアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(XylC、accession no.P43503)などが挙げられる。
【0044】
ligV遺伝子は、バニリン、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、シリンガアルデヒド、プロトカテクアルデヒド、ベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類を基質とするアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(aldehyde dehydrogenase)を発現する遺伝子であれば特に限定されないが、例えば、配列番号45の塩基配列を有する遺伝子などが挙げられる。アルデヒド・デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.-)としては、例えば、スフィンゴビウム(Sphingobium) sp.SYK-6株由来のアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(accession no.AB287332)が挙げられる。
【0045】
挿入する遺伝子は、遺伝子を有する由来生物が本来保有する遺伝子(すなわち、野生型遺伝子)と完全に同一でなくともよく、少なくとも野生型遺伝子が発現するタンパク質(すなわち、野生型タンパク質)と同一の、又は近似する酵素学的性質を有するタンパク質を発現する遺伝子である限り、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAなどであってもよい。
【0046】
本明細書における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、野生型遺伝子の塩基配列を有するDNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味する。
【0047】
本明細書における「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリッドのシグナルが非特異的なハイブリッドのシグナルと明確に識別される条件であり、使用するハイブリダイゼーションの系と、プローブの種類、配列及び長さによって異なる。そのような条件は、ハイブリダイゼーションの温度を変えること、洗浄の温度及び塩濃度を変えることにより決定可能である。例えば、非特異的なハイブリッドのシグナルまで強く検出されてしまう場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を上げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を下げることにより特異性を上げることができる。また、特異的なハイブリッドのシグナルも検出されない場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を下げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を上げることにより、ハイブリッドを安定化させることができる。
【0048】
ストリンジェントな条件の具体例としては、例えば、プローブとしてDNAプローブを用い、ハイブリダイゼーションは、5×SSC、1.0%(w/v) 核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ロシュ・ダイアグノスティクス社)、0.1%(w/v) N-ラウロイルサルコシン、0.02%(w/v) SDSを用い、一晩(8~16時間程度)で行う。洗浄は、0.1~0.5×SSC、0.1%(w/v) SDS、好ましくは0.1×SSC、0.1%(w/v) SDSを用い、15分間、2回行う。ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行う温度は65℃以上、好ましくは68℃以上である。
【0049】
また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAとしては、例えば、コロニー若しくはプラーク由来の野生型遺伝子の塩基配列を有するDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることによって得られるDNAや0.5~2.0MのNaCl存在下にて、40~75℃でハイブリダイゼーションを実施した後、好ましくは0.7~1.0MのNaCl存在下にて、65℃でハイブリダイゼーションを実施した後、0.1~1×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。プローブの調製やハイブリダイゼーションの方法は、Molecular Cloning:A laboratory Manual,2nd-Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1-38,John Wiley&Sons,1987-1997(以下、これらの文献を参考技術文献とよぶ場合がある。)などに記載されている方法に準じて実施することができる。なお、当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度や温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブ長さ、反応時間などの諸条件を加味して、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
【0050】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAとしては、プローブとして使用する野生型遺伝子の塩基配列を有するDNAの塩基配列と一定以上の配列同一性を有するDNAが挙げられ、例えば、野生型遺伝子の塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%又は99%以上、さらに好ましくは99.5%以上の配列同一性を有するDNAが挙げられる。
【0051】
野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列としては、例えば、野生型遺伝子の塩基配列において1から数個、好ましくは1から300個、より好ましくは1から200個、さらに好ましくは1から100個、なおさらに好ましくは1から50個、特に好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個程度の塩基の欠失、置換、付加などを有する塩基配列を含む。ここで、「塩基の欠失」とは配列中の塩基に欠落又は消失があることを意味し、「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていることを意味し、「塩基の付加」とは新たな塩基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
【0052】
野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質は、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされるタンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列を有するタンパク質である蓋然性があるが、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされるタンパク質と同じ酵素活性を有するものである。
【0053】
野生型タンパク質と同一の、又は近似する酵素学的性質を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。ここで、アミノ酸配列の「1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加」における「1から数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1~100個、好ましくは1~80個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個程度を意味する。また、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落又は消失を意味し、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを意味し、「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
【0054】
「1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加」の具体的な態様としては、1から数個のアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えられた態様がある。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などを挙げることができる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0055】
野生型タンパク質が有するアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列としては、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列と一定以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられ、例えば、野生型タンパク質が有するアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%又は99%以上、さらに好ましくは99.5%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
【0056】
(配列同一性を算出するための手段)
塩基配列やアミノ酸配列の配列同一性を求める方法は特に限定されないが、例えば、通常知られる方法を利用して、野生型遺伝子や野生型遺伝子が発現する野生型タンパク質のアミノ酸配列と対象となる塩基配列やアミノ酸配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を算出するためのプログラムを用いることにより求められる。
【0057】
2つの塩基配列やアミノ酸配列における一致率を算出するためのプログラムとしては、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268、1990;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877、1993)が知られており、このアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltschulなどによって開発されている(J.Mol.Biol.215:403-410、1990)。さらに、BLASTより感度よく配列同一性を決定するプログラムであるGapped BLASTも知られている(Nucleic Acids Res.25:3389-3402、1997)。したがって、当業者は例えば上記のプログラムを利用して、与えられた配列に対し、高い配列同一性を示す配列をデータベース中から検索することができる。これらは、例えば、米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイト(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)において利用可能である。
【0058】
上記の各方法は、データベース中から配列同一性を示す配列を検索するために通常的に用いられ得るが、個別の配列の配列同一性を決定する手段としては、Genetyxネットワーク版 version 12.0.1(ジェネティックス社)のホモロジー解析を用いることもできる。この方法は、Lipman-Pearson法(Science 227:1435-1441、1985)に基づくものである。塩基配列の配列同一性を解析する際は、可能であればタンパク質をコードしている領域(CDS又はORF)を用いる。
【0059】
(挿入する遺伝子の由来)
挿入する遺伝子は、挿入する遺伝子を保有する微生物などに由来する。挿入する遺伝子の由来生物としては、例えば、プロトカテク酸からムコン酸を製造することができる微生物やプロトカテク酸を資化することによって増殖可能な微生物などが挙げられる。
【0060】
挿入する遺伝子の由来生物の具体例としては、pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・アルカリゲネス、シュードモナス・シュードアルカリゲネス、シュードモナス・メンドシナ、シュードモナス・エルギノーサ、シュードモナス・セパシアといったシュードモナス属微生物やアシネトバクター・ベイリー、アシネトバクター・カルコアセチカスといったアシネトバクター属微生物など;catA遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・エルギノーサ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・レイネケイといったシュードモナス属微生物やアシネトバクター・カルコアセチカス、アシネトバクター・ラジオレシステンスといったアシネトバクター属微生物、ロドコッカス・オパカス、ロドコッカス・ピリジニボラス、ロドコッカス・ロドクロウスなどロドコッカス属微生物など;aroY遺伝子についてはクレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・オキシトカ、クレブシエラ・クアシニューモニエといったクレブシエラ属微生物やエンテロバクター・クロアカ、エンテロバクター・アエロゲネスといったエンテロバクター属微生物、セディメントバクター・ヒドロキシベンゾイカスなど;pobA遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレセンス、シュードモナス・エルギノーサといったシュードモナス属微生物やアシネトバクター・ベイリー、アシネトバクター・カルコアセチカス、アシネトバクター・バウマンニといったアシネトバクター属微生物、クレブシエラ・ニューモニエ、クレブシエラ・バリコラといったクレブシエラ属微生物など;vanA遺伝子及びvanB遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレセンス、シュードモナス・レジノボランス、シュードモナス・エルギノーサといったシュードモナス属微生物やコマモナス・テストステロニ、コマモナス・チオオキシダンスといったコマモナス属微生物、アセトバクタ―・パツツリアヌス、アセトバクタ―・アセチ、アセトバクタ―・トロピカリスといったアセトバクタ―属微生物など;vdh遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレセンス、シュードモナス・シリンゲなどのシュードモナス属微生物、ロドコッカス・ジョスティ、ロドコッカス・エリスロポリスといったロドコッカス属微生物、バークホルデリア・セパシア、バークホルデリア・セノセパシアといったバークホルデリア属微生物、スフィンゴビウム・スピーシーズといったスフィンゴビウム属微生物;PP_1948遺伝子についてはシュードモナス・プチダ、シュードモナス・メンドシナ、シュードモナス・フルオレセンス、シュードモナス・シリンゲなどのシュードモナス属微生物、スフィンゴビウム・ヤノイクヤエ、スフィンゴビウム・スピーシーズといったスフィンゴビウム属微生物、ロドコッカス・ジョスティ、ロドコッカス・エリスロポリスといったロドコッカス属微生物、バークホルデリア・セパシア、バークホルデリア・セノセパシアといったバークホルデリア属微生物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上記のとおり、挿入する遺伝子の由来生物は特に限定されないが、形質転換微生物において発現される遺伝子が宿主微生物の生育条件によって不活化せず、又は活性を示すために、遺伝子を挿入することによって形質転換すべき宿主微生物や宿主微生物と生育条件が近似する微生物であることが好ましい。
【0062】
(遺伝子工学的手法による遺伝子のクローニング)
欠失及び挿入する遺伝子は、適当な公知の各種ベクター中に挿入することができる。さらに、このベクターを適当な公知の宿主微生物に導入して、遺伝子を欠失した、又は遺伝子を挿入した形質転換体(形質転換微生物)を作製できる。欠失する遺伝子は野生型遺伝子の全部又は一部が破壊、欠損、置換、挿入などにより遺伝子の構造が変化したものであることが好ましい。挿入する遺伝子は、野生型遺伝子と同一又は近似するタンパク質を発現する遺伝子であることが好ましい。
【0063】
欠失及び挿入する遺伝子の取得方法、これらの遺伝子の塩基配列やこれらの遺伝子が発現するタンパク質のアミノ酸配列に関する情報の取得方法、各種ベクターの製造方法や形質転換微生物の作製方法などは、当業者にとって適宜選択することができる。また、本明細書では、形質転換や形質転換体にはそれぞれ形質導入や形質導入体を包含する。欠失及び挿入する遺伝子のクローニングの一例を非限定的に後述する。
【0064】
例えば、欠失又は挿入する遺伝子に関連する野生型遺伝子を有する由来生物や種々の微生物から、常法、例えば、参考技術文献に記載の方法により、染色体DNAやmRNAを抽出することができる。抽出したmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAやcDNAを用いて、染色体DNAやcDNAのライブラリーを作製することができる。
【0065】
例えば、挿入する遺伝子は、該遺伝子に関連する野生型遺伝子を有する由来生物の染色体DNAやcDNAを鋳型としたクローニングにより得ることができる。野生型遺伝子の由来生物は上記したとおりのものであり、具体的な例としては、遺伝子の種類によって、シュードモナス・プチダ KT2440株及びクレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシーズ・ニューモニエ A170-40株などを挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株を培養し、得られた菌体から水分を取り除き、液体窒素中で冷却しながら乳鉢などを用いて物理的に磨砕することにより細かい粉末状の菌体片とし、該菌体片から通常の方法により染色体DNA画分を抽出する。染色体DNA抽出操作には、DNeasy Blood & TissueKit(キアゲン社)などの市販の染色体DNA抽出キットなどが利用できる。本明細書において、染色体DNAとゲノムDNAとは同義である。
【0066】
次いで、染色体DNAを鋳型として、5’末端配列及び3’末端配列に相補的な合成プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction;PCR)を行うことにより、DNAを増幅する。プライマーとしては、挿入する遺伝子を含むDNA断片の増幅が可能であれば特に限定されない。その例としては、pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を増幅するものとして、シュードモナス・プチダ KT2440株のゲノム配列を参考として設計した配列番号9及び10で表されるプライマーなどが挙げられる。なお、このようなプライマーを用いると、目的遺伝子全長が増幅できる。別の方法として、ショットガンライブラリーからの目的遺伝子クローンのスクリーニングや、Inverse PCR、Nested PCR、5’RACE法、3’RACE法などの適当なPCRにより、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることなどができる。
【0067】
また、欠失又は挿入する遺伝子を取得する方法は、上記したとおりに特に限定されず、遺伝子工学的手法によらなくとも、例えば、化学合成法を用いて遺伝子を構築することが可能である。
【0068】
PCRにより増幅された増幅産物や化学合成した遺伝子における塩基配列の確認は、例えば、次のように行うことができる。まず、配列を確認したいDNAを通常の方法に準じて適当なベクターに挿入して組換え体DNAを作製する。ベクターへのクローニングには、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)、TA Cloning Kit(インビトロジェン社)などの公知又は市販のキット;pUC4K(Gene,vol.19、p259-268、1982を参照)、pEX18Amp(Gene,vol.212,p77-86,1998を参照)、pPS858(Gene,vol.212,p77-86,1998を参照)、pUC118(タカラバイオ社)、pJB866(Plasmid,vol.38,p35-51,1997を参照)、pMCL200(Gene,vol.162,p157-158,1995を参照)、pQE30(キアゲン社)、pUC119(タカラバイオ社)、pUC18(タカラバイオ社)、pBR322(タカラバイオ社)などの公知又は市販のプラスミドベクター;λEMBL3(ストラタジーン社)などの公知又は市販のバクテリオファージベクターなどが使用できる。
【0069】
構築した組換え体DNAを大量に得たい場合は、組換え体DNAを、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、好ましくは大腸菌 JM109株(タカラバイオ社)や大腸菌 DH5α株(タカラバイオ社)などに導入して形質転換し、次いで得られた形質転換体に含まれる組換え体DNAを、QIAGEN Plasmid Mini Kit(キアゲン社)などを用いて精製することができる。
【0070】
組換え体DNAに挿入されている各遺伝子の塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Methods in Enzymology、101、20-78、1983などを参照)などにより行う。塩基配列の決定の際に使用する配列解析装置は特に限定されないが、例えば、Li-COR MODEL 4200Lシークエンサー(アロカ社)、370DNAシークエンスシステム(パーキンエルマー社)、CEQ2000XL DNAアナリシスシステム(ベックマン社)などが挙げられる。そして、決定された塩基配列を元に、翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列を知り得る。
【0071】
(遺伝子を含む組換えベクターの構築)
欠失又は挿入する遺伝子を含む組換えベクター(組換え体DNA)は、欠失又は挿入する遺伝子を含むPCR増幅産物と各種ベクターとを、遺伝子の欠失又は発現が可能な形で結合することにより構築することができる。なお、欠失する遺伝子の場合は、組換えベクターを宿主微生物に導入して、相同組換えによって、組換えベクター中の遺伝子が宿主微生物中の遺伝子に置き換わるために、組換えベクターは欠失する遺伝子の上流及び下流の領域を含むことが好ましい。
【0072】
非限定的な例として挿入する遺伝子を含む組換えベクターを作製する方法は、例えば、適当な制限酵素で挿入する遺伝子のいずれかを含むDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な制限酵素で切断したプラスミドベクターとを、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)などの市販の組換えベクター作製キットなどを用いて連結することにより構築することができる。または、プラスミドベクターと相同的な配列を両末端に付加した遺伝子を含むDNA断片と、インバースPCRにより増幅したプラスミド由来のDNA断片とを、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)などの市販の組換えベクター作製キットを用いて連結させることにより得ることができる。
【0073】
欠失又は挿入する遺伝子を含む組換えベクターは、欠失又は挿入する遺伝子とプラスミドベクター由来の遺伝子(塩基配列)とを少なくとも含む。組換えベクターの一例であり、かつ、本発明の別の一態様として、aroY遺伝子、pcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を含む組換えベクターなどが挙げられる。本発明の一態様の組換えベクターは、本発明の一態様の形質転換微生物を作製するために使用される。本発明の一態様の組換えベクターは、aroY遺伝子とpcaHG遺伝子とに加えて、pobA遺伝子、vanAB遺伝子、vdh遺伝子及びPP_1948遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種、2種、3種又は4種の遺伝子を含むことができる。また、本発明の一態様の組換えベクターは、上記した遺伝子以外の遺伝子を、本発明の課題解決を妨げない限りに含むものであってもよい。
【0074】
本発明の一態様の組換えベクターは、異種遺伝子又は異種核酸配列を含むことが好ましい。異種遺伝子は宿主微生物に本来的に存在しない(not naturally occuring)遺伝子であれば特に限定されず、例えば、宿主微生物由来の核酸配列に依拠しない合成遺伝子、挿入する遺伝子と由来生物が相違する生物に由来する遺伝子、宿主微生物と相違する他の微生物、植物、動物、ウイルスなどの生物に由来する遺伝子などが挙げられる。宿主微生物がシュードモナス属微生物である場合の異種遺伝子の具体例としては、pUC118由来のDNA断片、例えば、ラクトースプロモーター領域(Plac)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0075】
本発明の一態様の組換えベクターの具体的態様は、後述する実施例に記載があるpTS110プラスミドベクター及びpTS119プラスミドベクターなどであるが、これらに限定されない。
【0076】
(形質転換微生物の作製方法)
形質転換微生物の作製方法は特に限定されず、例えば、常法に従って、遺伝子の欠失又は挿入が実現する態様で宿主微生物に挿入する方法などが挙げられる。具体的には、挿入する遺伝子のいずれかを発現誘導プロモーター及びターミネーターの間に挿入したDNAコンストラクトを作製し、次いで該DNAコンストラクトによって宿主微生物を形質転換することなどにより、挿入する遺伝子を発現する形質転換微生物が得られる。又は、欠失する遺伝子並びに該遺伝子の上流及び下流の領域を含むDNAコンストラクトを作製し、次いで該DNAコンストラクトによって宿主微生物を形質転換することなどにより、遺伝子を欠失する形質転換微生物が得られる。本明細書では、宿主微生物を形質転換するために作製された組換えベクターをDNAコンストラクトと総称してよぶ。
【0077】
DNAコンストラクトを宿主微生物に導入する方法は特に限定されないが、例えば、当業者に知られているとおりである、導入したDNAコンストラクトが自律的に増殖して遺伝子を発現するように宿主微生物に導入する方法;相同組換えを利用することによりDNAコンストラクトを宿主微生物の染色体上に直接的に挿入する方法などが挙げられる。
【0078】
挿入する遺伝子を含むDNAコンストラクトを宿主微生物に導入する方法として、相同組換えを利用する方法では、染色体上の組換え部位の上流領域及び下流領域と相同な配列の間に、DNAコンストラクトを連結し、宿主微生物のゲノム中に挿入することができる。
【0079】
形質転換微生物の作製に用いられるベクター-宿主系は、宿主微生物中において、挿入する遺伝子が発現し得る、又は染色体上の遺伝子が欠失し得る系であれば特に限定されないが、例えば、pJB866-シュードモナス属微生物の系、pKT230(Gene,vol.16,p237-247,1981)-シュードモナス属微生物の系などが挙げられる。
【0080】
挿入する遺伝子を含むDNAコンストラクトは、宿主微生物の染色体に導入しない形で、自律的に増幅して、挿入する遺伝子を発現しても、宿主微生物の染色体に導入した形で挿入する遺伝子を発現しても、どちらでもよい。
【0081】
DNAコンストラクトには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子は特に限定されず、例えば、ゲンタマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、カルベニシリンなどの薬剤に対する薬剤耐性遺伝子などが挙げられる。マーカー遺伝子は、欠失する遺伝子の途中に、又は欠失する遺伝子に置換するように含まれていてもよい。
【0082】
挿入する遺伝子を含むDNAコンストラクトは、遺伝子の種類によっては、宿主微生物中で遺伝子を発現することを可能にするプロモーター及びターミネーターに加えて、その他の制御配列(例えば、オペレーターなどの転写制御に関わるシス配列など)を含むことができる。
【0083】
DNAコンストラクトの一実施態様は、例えば、後述する実施例に記載があるpVTS007プラスミドベクター、pTS108プラスミドベクター、pTS110プラスミドベクター、pTS119プラスミドベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
シュードモナス属微生物への形質転換方法としては、当業者に知られる方法を適宜選択することができ、例えば、エレクトロポレーション(電気穿孔)法、接合伝達法などによって実施できる。
【0085】
形質転換微生物を選択及び増殖させるための培地は、用いる宿主微生物とマーカー遺伝子とに応じて適切なものを用いる。例えば、宿主微生物としてシュードモナス・プチダを用い、マーカー遺伝子としてカナマイシン、ゲンタマイシン及びテトラサイクリンの耐性遺伝子を用いた場合は、形質転換微生物の選択及び増殖は、例えば、形質転換微生物をこれらの薬剤を含むLB培地で培養することなどによって実施できる。
【0086】
形質転換微生物が作製されたことの確認は、例えば、遺伝子の欠失した形質転換微生物のみが生存し得る条件や挿入する遺伝子を発現する形質転換微生物のみが生存し得る条件下で形質転換微生物を培養することなどにより達成し得る。また、形質転換微生物を培養し、次いで培養後に得られた培養物におけるムコン酸の量が、同じ条件下で培養した宿主微生物の培養物におけるムコン酸の量よりも大きいことを確認することなどにより、形質転換微生物が作製されたことを確認することができる。
【0087】
形質転換微生物が作製されたことの確認は、形質転換微生物から染色体DNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行い、形質転換が起きた場合に増幅が可能なPCR産物が生じることやPCR産物の特性や塩基配列を確認することなどにより行ってもよい。
【0088】
例えば、欠失又は挿入する遺伝子のプロモーターの塩基配列に対するフォワードプライマーと、マーカー遺伝子の塩基配列に対するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、想定の長さの産物が生じることを確認する。
【0089】
相同組換えにより形質転換を行う場合には、用いた上流側の相同領域より上流に位置するフォワードプライマーと、用いた下流側の相同領域より下流に位置するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、相同組換えが起きた場合に想定される長さの産物が生じることを確認することが好ましい。
【0090】
(宿主微生物)
宿主微生物は、染色体上にpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子及びcatB遺伝子を有するシュードモナス属微生物であれば特に限定されず、好ましくは染色体上にpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子、catB遺伝子、pobA遺伝子、vanA遺伝子、vanB遺伝子、vdh遺伝子及びPP_1948遺伝子を有する、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・エルギノーサといったシュードモナス属微生物であり、より好ましくはこれらの遺伝子を有し、かつ、プロトカテク酸からムコン酸を製造することができるシュードモナス・プチダである。
【0091】
(欠失又は挿入する遺伝子の具体例)
欠失又は挿入する遺伝子として、pcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子、catB遺伝子、pobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子の具体例は、シュードモナス・プチダ KT2440株が保有するpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子、catB遺伝子、pobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子であり、それぞれの塩基配列は配列番号29~32及び35~37に記載のものである。同様に、aroY遺伝子の具体例は、クレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシーズ・ニューモニエ A170-40株が保有するaroY遺伝子であり、塩基配列は配列番号33に記載のものである。kpdB遺伝子の具体例は、クレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシズ・ニューモニエ NBRC14940株が保有するkpdB遺伝子であり、塩基配列は配列番号34に記載のものである。また、これらの遺伝子が発現するタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号25~28及び38~42に記載のものである。
【0092】
シュードモナス・プチダやクレブシエラ・ニューモニエ以外の微生物から欠失又は挿入する遺伝子を得る方法は特に限定されないが、例えば、シュードモナス・プチダ KT2440株が保有するpcaH遺伝子、pcaG遺伝子、catA遺伝子、catB遺伝子、pobA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子の塩基配列(配列番号29~32及び35~37);クレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシーズ・ニューモニエ A170-40株が保有するaroY遺伝子の塩基配列(配列番号33)に基づいて、その他の微生物のゲノムDNAをBLAST相同性検索して、上記塩基配列と配列同一性の高い塩基配列を有する遺伝子を特定することにより得ることができる。また、その他の微生物の総タンパク質を基に、上記遺伝子が発現するタンパク質のアミノ酸配列(配列番号25~28及び38~42)と配列同一性の高いアミノ酸配列を有するタンパク質を特定し、該タンパク質を発現する遺伝子を特定することにより得ることができる。得られた遺伝子が欠失又は挿入する遺伝子に相当することは、得られた遺伝子により由来生物を宿主微生物として形質転換し、宿主微生物に比してムコン酸の生産量が増強されていることで確認できる。
【0093】
シュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレッセンス、及びシュードモナス・エルギノーサは生育条件が近似していることから、これらそれぞれが有する遺伝子を挿入することにより、相互に形質転換できる蓋然性がある。例えば、シュードモナス・プチダから得られた遺伝子を、宿主微生物としてシュードモナス・フルオレッセンスやシュードモナス・エルギノーサに導入して形質転換することができる。また、シュードモナス・プチダから得られた遺伝子を、宿主微生物としてクレブシエラ属微生物、エンテロバクター属微生物、大腸菌などに導入して、発現させることも可能である。なお、挿入する遺伝子は、宿主微生物に発現させるために、コドン、二次構造、GC含量などを最適化した遺伝子であってもよい。
【0094】
(形質転換微生物の一実施態様)
形質転換微生物の具体的一態様は、宿主微生物がシュードモナス・プチダ、シュードモナス・フルオレッセンス及びシュードモナス・エルギノーサからなる群から選ばれるシュードモナス属微生物であって、染色体上にあるpcaH遺伝子、pcaG遺伝子及びcatB遺伝子が欠失し、挿入されたpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を発現し、かつ、挿入されたaroY遺伝子を発現する、形質転換シュードモナス属微生物である。また、形質転換微生物の別の具体的一態様は、該形質転換シュードモナス属微生物において、挿入されたpobA遺伝子、catA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子を発現する、形質転換シュードモナス属微生物である。
【0095】
このような形質転換微生物は、染色体上にあるpcaH遺伝子、pcaG遺伝子及びcatB遺伝子が欠失し、挿入されたpcaH遺伝子及びpcaG遺伝子を発現し、かつ、挿入されたaroY遺伝子が発現するという態様を少なくともとることにより、非特許文献1に記載の形質転換微生物では不可能である、バニリン酸やp-ヒドロキシ安息香酸などのリグニン由来の芳香族化合物を唯一の炭素源として、増殖及びムコン酸の製造が可能である。後述する実施例に記載があるとおり、リグニン由来の芳香族化合物の資化性を考えれば、形質転換微生物の好ましい態様は、挿入されたcatA遺伝子、vanA遺伝子及びvanB遺伝子を過剰発現する形質転換微生物である。
【0096】
本発明の一態様の形質転換微生物の具体的態様は、後述する実施例に記載があるIDPC/pTS110株及びIDPC/pTS119株などであるが、これらに限定されない。
【0097】
(ムコン酸の製造方法)
本発明の一態様のムコン酸の製造方法は、バニリン酸、p-ヒドロキシ安息香酸といったリグニン由来の芳香族化合物を、本発明の一態様の形質転換微生物に作用させることにより、ムコン酸を得る工程を少なくとも含む。
【0098】
リグニン由来の芳香族化合物を形質転換微生物に作用させる方法は、リグニン由来の芳香族化合物と形質転換微生物とが接触して、形質転換微生物が有する酵素によってムコン酸が生産できる方法であれば特に限定されないが、例えば、リグニン由来の芳香族化合物を含有し、かつ、形質転換微生物の生育に適した培地を用いて、形質転換微生物に適した各種培養条件下で形質転換微生物を培養することによって、ムコン酸を製造する方法などが挙げられる。培養方法は特に限定されず、例えば、通気条件下で行う固体培養法や液体培養法などが挙げられる。
【0099】
培地は、宿主微生物を培養する通常の培地、すなわち、炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を適切な割合で含有するものであれば、合成培地及び天然培地のいずれでも使用できる。宿主微生物はシュードモナス属微生物であることから、後述する実施例に記載があるようなMM培地などを利用することができるが、特に限定されない。炭素源は、リグニン由来の芳香族化合物、糖や有機酸などのその他の炭素源又はこれらの組み合わせを用いることができる。ただし、培地成分には、ムコン酸の製造に関与する酵素の活性化に必要な成分、例えば、Fe2+が含まれることが好ましい。鉄イオン、マグネシウムイオンなどを化合物として培地に添加することができるが、ミネラル含有物として添加してもよい。
【0100】
リグニン由来の芳香族化合物は、グアイアシルリグニン及びp-ヒドロキシフェニルリグニンのいずれかのリグニン並びにこれらのリグニンから誘導し得る芳香族化合物であれば特に限定されないが、例えば、p-ヒドロキシフェニルリグニンやグアイアシルリグニンの分解物に相当する化合物などが挙げられ、具体的には、p-クマル酸、フェルラ酸、p-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、プロトカテク酸、バニリン、p-ヒドロキシベンズアルデヒドなどが挙げられるが、フェノール、安息香酸、グアイアコールなどからのカテコールであってもよい。リグニン由来の芳香族化合物は、リグニンのモデル化合物とされている化合物、例えば、グアイアシルグリセロール-β-グアイアシルエーテルなどを含む。リグニン由来の芳香族化合物は、リグニンを含むバイオマスや該バイオマスを前処理に供して抽出したものであることが好ましいが、該バイオマスとは関係なく化学的に合成及び精製したものであってもよい。リグニン由来の芳香族化合物は、上記したものを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0101】
リグニンを含むバイオマス(以下、リグノセルロースとよぶ場合がある。)は特に限定されないが、例えば、草や木などの天然物、これら天然物に処理を加えて得られるもの、農業廃棄物などが挙げられるが、具体的には広葉樹や針葉樹などの木質系のバイオマスなどが挙げられる。例えば、針葉樹は、p-ヒドロキシフェニルリグニンやグアイアシルリグニンを多く含むことが知られている。
【0102】
リグノセルロースは、前処理の有無などによって、例えば、固体状、懸濁状、液体状などであり得る。例えば、リグノセルロースを粉砕したものを液体に加えて得られる懸濁液とすることもできる。
【0103】
リグノセルロースは、リグニン抽出物であってもよい。リグニン抽出物としては、例えば、リグノセルロースの粉末化したものを、0.1%W/V~50%W/V、好ましくは1%W/V~20%W/Vとなるように、リグニンの抽出に適した溶媒中に懸濁した懸濁液などが挙げられる。また、リグニン抽出物は、該懸濁液を10℃~150℃、好ましくは20℃~130℃、より好ましくは20℃~80℃で、数時間~数日間、好ましくは1時間~6日間の抽出処理に供し、次いで抽出処理液から固形分を除いた液体状のリグニン抽出物、又は液体状のリグニン抽出物から溶媒を留去し、乾固することにより得られる、固体状のリグニン抽出物などであってもよい。
【0104】
リグニン抽出物の調製方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法などが挙げられる。すなわち、小型オートクレーブ装置(耐圧硝子工業株式会社、ポータブルリアクター TVS-1)のステンレスベッセルに2M NaOH 50mL、脱脂スギ木粉 1.5g、ニトロベンゼン 3mLを入れ、500rpmで攪拌しながら170℃で2.5時間処理する。60℃以下まで放冷し、遠心分離(6,000g、10min)により上清を回収する。得られた上清を、ジエチルエーテル抽出を3回繰り返す(水層を回収)。水層を塩酸で酸性化した後、ジエチルエーテル抽出を3回繰り返す(エーテル層を回収)。エーテル層に硫酸ナトリウムを加え、冷蔵庫内で一晩脱水処理する。エーテル層を回収し、抽出物を減圧乾固する。エーテル抽出物を、水酸化ナトリウムを加えながらイオン交換水に溶解し(pH≒9)、スギリグニン由来の芳香族化合物溶液とする。
【0105】
リグニンの抽出や処理に適した溶媒は特に限定されず、例えば、水、ジオキサン、メタノール、イソプロパノールなどの低分子アルコール、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0106】
培養条件は、当業者により通常知られるシュードモナス属微生物の培養条件を採用すればよく、例えば、培地の初発pHは5~10に調整し、培養温度は20~40℃、培養時間は数時間~数日間、好ましくは1~7日間、より好ましくは2~5日間など、適宜設定することができる。培養手段は特に限定されず、通気撹拌深部培養、振盪培養、静地培養などを採用することができるが、通気をするなどして溶存酸素濃度が十分になるような条件で培養することが好ましく、溶存酸素濃度が0.1~15%になるような条件で培養することがより好ましく、溶存酸素濃度が1~13%になるような条件で培養することがさらに好ましく、溶存酸素濃度が2~10%になるような条件で培養することがなおさらに好ましい。例えば、培地及び培養条件の一例として、後述する実施例に記載があるとおりの、炭素源としてバニリン酸、p-ヒドロキシ安息香酸及び/又はスギリグニン由来芳香族化合物水溶液を含有するMM培地を用いた、30℃、180rpm、溶存酸素濃度が5~10%での1~5日間の振盪培養や撹拌培養などが挙げられる。なお、炭素源その他の成分は、培養開始後に適宜追加することができる。
【0107】
培養終了後に培養物からムコン酸を取得する方法は特に限定されない。ムコン酸は培養液中に蓄積することから、培養物から濾過、遠心分離などの通常の固液分離操作により菌体と培養上清とを分離し、回収した培養上清からカラムを用いた固相抽出やムコン酸が可溶性のある溶媒を用いた溶媒抽出などによりムコン酸を抽出する。
【0108】
抽出溶媒はムコン酸が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなどの有機溶媒;これらの有機溶媒と水とを混合させた含水有機溶媒などが挙げられる。抽出温度は特に限定されないが、例えば、室温から100℃に設定することができる。
【0109】
ムコン酸の抽出方法の具体的一態様としては、例えば、Vardonらの方法(Green chemistry,vol.18,p3397-3413,2016)や該方法を一部変更した方法などが挙げられる。具体的には、培養上清に活性炭(12.5%(w/v)、100メッシュ)を添加し、1時間攪拌する。吸引ろ過により活性炭を除去し、ろ液を回収する。回収したろ液に塩酸を加え、pH≒2に調製した後、4℃で一晩静置する。吸引ろ過により沈殿物を回収し、沈殿物はイオン交換水で洗浄した後、吸引ろ過により回収し、減圧乾燥する。乾燥した固体をエタノールに懸濁し、吸引ろ過により不要物を除去し、ろ液を回収する。ろ液をエバポレーターで減圧乾固して、精製ムコン酸を得る。
【0110】
ムコン酸の定性的又は定量的分析は特に限定されず、例えば、HPLCなどにより行うことができる。HPLC分離条件は当業者であれば適宜選択することができ、例えば、後述する実施例に記載がある条件で実施できる。
【0111】
形質転換微生物を用いれば、ムコン酸を高収率で得ることができる。例えば、50mM バニリン酸を炭素源とした場合は48時間の培養で2.7wt%の収率でムコン酸を得ることができ;50mM p-ヒドロキシ安息香酸を炭素源とした場合は56時間の培養で11.9wt%の収率でムコン酸を得ることができ;25mM バニリン酸及び25mM p-ヒドロキシ安息香酸を炭素源とした場合は48時間の培養で17.7wt%の収率でムコン酸を得ることができ;スギリグニン由来フェノール類水溶液を炭素源とした場合は48時間の培養で8.9~24.2mg/Lのムコン酸を得ることができる。
【0112】
本発明の製造方法では、本発明の目的を達成し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
【0113】
(ムコン酸の用途)
本発明の一態様の形質転換微生物や製造方法を利用して得られたムコン酸は、種々の産業上有用な化合物に変換することができ、例えば、界面活性剤、難燃剤、UV光安定化剤、熱硬化性プラスチック、コーティング剤などとしての利用が期待できるムコン酸誘導体の原料として利用することができる。具体的には、ムコン酸誘導体の一つであるアジピン酸は、ナイロン66(ポリアミドの一つ)として現実に利用されている。
【0114】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0115】
[1.P.putida IDPC株の作製]
以下の手順により、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)からプロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子(pcaHG遺伝子)及びcis,cis-ムコン酸・サイクロイソメラーゼ遺伝子(catB遺伝子)を破壊した変異株である、P.putida IDPC株を作製した。
【0116】
P.putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号1及び2のプライマー1及び2からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ・βサブユニット(protocatechuate 3,4-dioxygenase beta subunit;pcaH)遺伝子の上流領域約1.2kbpのDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片をEcoRI及びSacIで消化し、予めEcoRI及びSacIで消化したpEX18AmpプラスミドDNA(Gene,vol.212,p77-86,1998を参照)と連結することにより、pVTS003プラスミドDNAを得た。
【0117】
P.putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号3及び4のプライマー3及び4からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ・αサブユニット(protocatechuate 3,4-dioygenase alpha subunit;pcaG)遺伝子の下流約1.2kbpのDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片をSacI及びBamHIで消化し、予めSacI及びBamHIで消化したpVTS003プラスミドDNAと連結することにより、pVTS004プラスミドDNAを得た。
【0118】
pPS858(Gene,vol.212,p77-86,1998を参照)をSacIで消化して得られた約1.8kbpのDNA断片(ゲンタマイシン(Gm)耐性遺伝子を含む)を、予めSacIで消化したpVTS004プラスミドDNAと連結することにより、pVTS007プラスミドDNAを得た。
【0119】
pVTS007プラスミドDNAを用いて、エレクトロポレーション法により、P.putida KT2440株を形質転換した。形質転換体は、ナリジクス酸(Nal) 25mg/L及びGm 50mg/Lを含むLB寒天培地上で生育可能であるNal-Gm耐性株として選抜した。得られたNal-Gm耐性株を、Nal 25mg/L、Gm 50mg/L及び10%(w/v)ショ糖を含むLB液体培地に接種し、30℃で16時間振盪培養した。
【0120】
培養液の一部を、新鮮なNal 25mg/L、Gm 50mg/L及び10%(w/v)ショ糖を含むLB液体培地に接種し、30℃で16時間振盪培養する操作をさらに2回繰り返した。次いで、得られた培養液を、Nal 25mg/L及びGm 50mg/Lを含むLB寒天培地上に塗抹し、30℃で一晩静置培養した。生育した複数のコロニーから、ゲノムDNAをそれぞれ抽出し、PCR法及びサザンハイブリダイゼーション法により、ゲノムDNA上のpcaG遺伝子座及びpcaH遺伝子座にGm耐性遺伝子を含む約1.8kbpのDNA断片が挿入されている形質転換体を、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子破壊株としてスクリーニングした。
【0121】
P.putida PpY1100株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号5及び6のプライマー5及び6からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、cis,cis-ムコン酸・サイクロイソメラーゼ(catB)遺伝子の一部を含む約1.0kbpのDNA断片を増幅し、予めPstI及びXbaIで消化したpK19mobsacBプラスミドDNA(Gene、Vol.145、p69-73、1994を参照)にInfusion cloning HD Kitを用いて連結することにより、pTS073プラスミドDNAを得た。
【0122】
pUC4KプラスミドDNA(Gene,vol.19、p259-268、1982を参照)をSalIで消化し、カナマイシン(Km)耐性遺伝子を含む約1.2kbpのDNA断片を、予めSalIで消化したpTS073プラスミドDNAと連結することにより、pTS076プラスミドDNAを得た。
【0123】
pTS076プラスミドDNAを用いて、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子破壊株を形質転換した。形質転換体は、Nal 25mg/L、Gm 50mg/L及びKm 25mg/Lを含むLB寒天培地上で生育可能であるNal-Gm-Km耐性株として選抜した。得られたNal-Gm-Km耐性株を、Nal 25mg/L、Gm 50mg/L、Km 25mg/L及び10%(w/v)ショ糖を含むLB液体培地に接種し、30℃で16時間振盪培養した。
【0124】
培養液の一部を、新鮮なNal 25mg/L、Gm 50mg/L、Km 25mg/L及び10%(w/v)ショ糖を含むLB液体培地に接種し、30℃で16時間振盪培養する操作をさらに2回繰り返した。得られた培養液を、Nal 25mg/L、Gm 50mg/L及びKm 25mg/Lを含むLB寒天培地上に塗抹し、30℃で一晩静置培養した。生育した複数のコロニーから、ゲノムDNAをそれぞれ抽出し、PCR法及びサザンハイブリダイゼーション法により、ゲノムDNA上のcatB遺伝子の中にKm耐性遺伝子が挿入されている形質転換体をスクリーニングした。スクリーニングして得られた形質転換体は、プロトカテク酸・3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子及びcis,cis-ムコン酸・サイクロイソメラーゼ遺伝子の両方が破壊された変異株であり、P.putida IDPC株と命名した。
【0125】
[2a.IDPC/pTS108株の作製及び評価]
以下の手順により、pcaG遺伝子及びpcaH遺伝子を発現するプラスミドであるpTS108プラスミドDNAを用いて、P.putida IDPC株を形質転換し、IDPC/pTS108株を作製した。
【0126】
pUC118プラスミドDNAを鋳型として、配列番号7及び8のプライマー7及び8からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、ラクトースプロモーター領域(Plac)を含む約200bpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)によって、pJB866プラスミドDNAのNotIサイトにクローニングすることにより、pTS093プラスミドDNAを得た。
【0127】
P.putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号9及び10のプライマー9及び10からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、pcaG遺伝子及びpcaH遺伝子を含む約1.3kbpのDNA断片を増幅した。増幅したDNA断片をSacI及びBamHIで消化し、予めSacI及びBamHIで消化したpUC118プラスミドDNAにクローニングすることにより、pTS107プラスミドDNAを得た。
【0128】
pTS107プラスミドDNAをSacI及びBamHIで消化することによって得られたpcaG遺伝子及びpcaH遺伝子を含む約1.3kbp DNA断片を、pTS093プラスミドDNAのSacI-BamHIサイトに連結することにより、pTS108プラスミドDNAを得た。
【0129】
pTS108プラスミドDNAを用いてP.putida IDPC株を形質転換することにより、IDPC/pTS108株を作製した。
【0130】
[2b.IDPC/pTS110株の作製]
以下の手順により、pcaH遺伝子、pcaG遺伝子及びaroY遺伝子を発現するプラスミドであるpTS110プラスミドDNAを用いて、P.putida IDPC株を形質転換し、IDPC/pTS110株を作製した。
【0131】
クレブシエラ・ニューモニエ・サブスピーシーズ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae subspecies pneumoniae) A170-40株のゲノムDNAの部分断片を鋳型として、配列番号11及び12のプライマー11及び12からなるプライマーセットを用いたPCR法によってプロトカテク酸・デカルボキシラーゼ(protocatechuate decarboxylase;aroY)遺伝子を含む約1.5kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、KpnIで消化し、予めKpnIで消化したpMCL200プラスミドDNAにクローニングすることにより、pTS036プラスミドDNAを得た。
【0132】
pTS036プラスミドDNAを鋳型として、配列番号13及び14のプライマー13及び14からなるプライマーセットを用いたPCR法によって、aroY遺伝子を含む約1.5kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社)によって、pTS093プラスミドDNAのNotIサイトにクローニングすることにより、pTS109プラスミドDNAを得た。pTS107プラスミドDNAをSacI及びHindIIIで消化して得られた約1.3kbpのDNA断片を、pTS109プラスミドDNAのSacI-HindIIIサイトに連結することにより、pTS110プラスミドDNAを得た。
【0133】
得られたpTS110プラスミドDNAを用いて、P.putida IDPC株を形質転換することにより、IDPC/pTS110株を作製した。
【0134】
[3.バニリン酸(VA)を炭素源としたcis,cis-ムコン酸(ccMA)生産(1)]
IDPC/pTS108株及びIDPC/pTS110株のそれぞれを、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びテトラサイクリン(Tc) 20mg/Lを含むLB液体培地 5mLに接種し、30℃で16時間振盪培養した。得られた培養液 50μLを、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L、Tc 20mg/L及び25mM バニリン酸(VA)を含むMM液体培地(Na2HPO4 13.56g/L、KH2PO4 6g/L、NaCl 1g/L、NH4Cl 2g/L、2mM MgSO4、100μM CaCl2及び18μM FeSO4) 5mLに接種し、30℃で振盪培養した。
【0135】
培養開始後、一定時間毎に、培養液の光学密度(optical density;OD)を測定し、さらに培養液を遠心分離して得た培養上清について、VA及びccMAの濃度を測定した。OD測定には600nmの波長を使用し、miniphoto 518R(タイテック株式会社)を用いてOD600値を測定した。VA及びccMAの濃度は、高速液体クロマトグラフ(Agilent1200シリーズ;アジレントテクノロジー株式会社)を用いて測定した。カラムはZORBAX Eclipse Plus C18 column(径 4.6mm、長さ 150mm、粒径 0.5μm)を使用し、40℃で保温した。勾配(グラジエント)溶離モード(溶媒A:5%(v/v)CH3OH、1%(v/v)CH3COOH、溶媒B:50%(v/v)CH3OH、1%(v/v)CH3COOH)を使用し、溶媒Aで平衡化した後、分析開始から8分かけて溶媒Bの割合を20%まで上昇させ、その後5分かけて溶媒Bの割合を100%まで上昇させた。移動相の流速は1.0mL/minとし、測定波長は280nmとした。
【0136】
IDPC/pTS108株について、培養時間0、48、56及び72時間後のOD600値、VA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表1aに示す。また、IDPC/pTS110株について、培養時間0、24、32及び48時間後のOD600値、VA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表1bに示す。
【0137】
【0138】
【0139】
表1a及び表1bが示すとおり、IDPC/pTS108株はVAを利用して増殖したがccMAを生産しなかったのに対して、IDPC/pTS110株は、VAを利用して増殖し、かつ、ccMAを経時的に生産した(収率は1.4wt%)。また、IDPC/pTS108株に対して、IDPC/pTS110株のVAの代謝速度及び比増殖度は非常に大きかった。なお、収率は、消費された基質(VA)の量に対するccMAの量により求めた。
【0140】
また、MM液体培地に含有させるVAの濃度を25mMから50mMに代えたこと以外は、上記と同様にして、IDPC/pTS110株を培養した。培養時間0、24、32及び48時間後のOD600値、VA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表1cに示す。
【0141】
【0142】
表1cが示すとおり、IDPC/pTS110株は、VAを利用して増殖し、かつ、ccMAを生産した(収率は2.7wt%)。
【0143】
[4.p-ヒドロキシ安息香酸(HBA)を炭素源としたccMA生産(1)]
IDPC/pTS108株及びIDPC/pTS110株のそれぞれについて、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びTc 20mg/Lを含むLB液体培地 5mLに接種し、30℃で16時間振盪培養した。得られた培養液 50μLを、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L、Tc 20mg/L及び25mM HBAを含むMM液体培地 5mLに接種し、30℃で振盪培養した。
【0144】
培養開始後、一定時間毎に培養液の光学密度(OD600)と、培養液中のHBA及びccMA濃度とを測定した。OD600測定並びにHBA及びccMAの濃度測定は上記3に記載の方法と同様に行った。
【0145】
IDPC/pTS108株について、培養時間0、24、48及び56時間後のOD600値、HBA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表2aに示す。また、IDPC/pTS110株について、培養時間0、24、32及び48時間後のOD600値、HBA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表2bに示す。
【0146】
【0147】
【0148】
表2a及び表2bが示すとおり、IDPC/pTS108株はHBAを利用して増殖したがccMAを生産しなかったのに対して、IDPC/pTS110株は、HBAを利用して増殖し、かつ、ccMAを経時的に生産した(収率は4.1wt%)。また、IDPC/pTS108株に対して、IDPC/pTS110株のHBAの代謝速度及び比増殖度は非常に大きかった。なお、収率は、消費された基質(HBA)の量に対するccMAの量により求めた。
【0149】
また、MM液体培地に含有させるHBAの濃度を25mMから50mMに代えたこと以外は、上記と同様にして、IDPC/pTS110株を培養した。培養時間0、24、32、48及び56時間後のOD600値、HBA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表2cに示す。
【0150】
【0151】
表2cが示すとおり、IDPC/pTS110株は、HBAを利用して増殖し、かつ、ccMAを生産した(収率は11.9wt%)。
【0152】
[5.VA及びHBAの混合物を炭素源としたccMA生産]
IDPC/pTS110株を、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びTc 20mg/Lを含むLB液体培地 5mLに接種し、30℃で16時間振盪培養した。得られた培養液 50μLを、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L、Tc 20mg/L、25mM VA及び25mM HBAを含むMM液体培地 5mLに接種し、30℃で振盪培養した。
【0153】
培養開始後、一定時間毎に培養液の光学密度(OD600)と、培養液中のVA、HBA及びccMA濃度とを測定した。OD600測定並びにVA、HBA及びccMAの濃度測定は上記3に記載の方法と同様に行った。
【0154】
培養時間0、24、32及び48時間後のOD600値、VA濃度、HBA濃度及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表3に示す。
【0155】
【0156】
表3が示すとおり、IDPC/pTS110株は、VA及びHBAを利用して増殖し、かつ、ccMAを経時的に生産した(収率は17.7wt%)。なお、収率は、消費された基質(VA及びHBA)の量に対するccMAの量により求めた。
【0157】
[6.スギリグニン由来フェノール類を炭素源としたccMA生産(1)]
常法に従い、スギ木粉をアルコール-ベンゼン抽出処理に供し、次いで処理後のスギ木粉 1.5gをアルカリニトロベンゼン酸化分解処理及びジエチルエーテル抽出処理に供した(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、文永堂出版を参照)。ニトロベンゼン酸化分解後のアルカリ溶液をジエチルエーテル抽出処理し、得られた水層を酸性化処理に供し、さらにジエチルエーテル抽出処理に供した。エーテル層として得られたジエチルエーテル抽出物をスギリグニン由来芳香族化合物とし、スギリグニン由来芳香族化合物水溶液(pH≒9)を唯一の炭素源として添加したMM培地におけるccMA生産を評価した。
【0158】
IDPC/pTS110株を、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びTc 20mg/Lを含むLB液体培地 5mLに接種し、30℃で16時間振盪培養した。得られた培養液 50μLをNal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びTc 20mg/Lを含むMM液体培地 5mLに接種し、炭素源としてスギリグニン由来フェノール類水溶液 0.5mLを添加し、30℃で振盪培養した。培養開始24時間後に、スギリグニン由来芳香族化合物水溶液 0.5mLをさらに添加して、30℃で振盪培養した。
【0159】
培養開始後、一定時間毎に培養液の光学密度(OD600)と、培養液中のccMA濃度とを測定した。OD600測定及びccMAの濃度測定は上記3に記載の方法と同様に行った。
【0160】
培養時間0、24及び48時間後のOD600値及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表4に示す。
【0161】
【0162】
表4が示すとおり、IDPC/pTS110株は、実バイオマスから得られたリグニン由来の芳香族化合物を利用して増殖し、かつ、ccMAを経時的に生産した。
【0163】
[7.IDPC/pTS119株の作製]
以下の手順により、pcaH遺伝子、pcaG遺伝子、aroY遺伝子、catA遺伝子vanA遺伝子及びvanB遺伝子を発現するプラスミドであるpTS119プラスミドDNAを用いて、P.putida IDPC株を形質転換し、IDPC/pTS119株を作製した。
【0164】
P.putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号15及び16のプライマー15及び16からなるプライマーセットを用いたPCR法によってカテコール・1,2-ジオキシゲナーゼ(catechol 1,2-dioxygenase;catA)遺伝子を含む約1kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片をKpnI及びSmaIで消化し、予めKpnI及びSmaIで消化したpUC118プラスミドにクローニングすることにより、pNI001プラスミドDNAを得た。
【0165】
pNI001プラスミドDNAを鋳型として、配列番号17及び18のプライマー17及び18からなるプライマーセットを用いたPCR法によって増幅することにより、catA遺伝子を含む約1kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、予めNotIで消化したpTS109プラスミドDNAにInfusion cloning HD kitを用いて連結することにより、pTS115プラスミドDNAを得た。
【0166】
P.putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号19及び20のプライマー19及び20からなるプライマーセットを用いたPCR法によって増幅することにより、バニリン酸・デメチラーゼ・オキシゲナーゼ成分(vanillate demethylase oxygenase component;vanA)遺伝子及びバニリン酸・デメチラーゼ・オキシドレダクターゼ成分(vanillate demethylase oxidoreductase component;vanB)遺伝子を含む約2.0kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片をSacI及びSmaIで消化し、予めSacI及びSmaIで消化してpQE30プラスミドDNAと連結することにより、pKY001プラスミドDNAを得た。
【0167】
pKY001プラスミドDNAを鋳型として、配列番号21及び22のプライマー21及び22からなるプライマーセットを用いたPCR法により増幅することによって、vanA遺伝子及びvanB遺伝子を含む約2.0kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、予めNotIで消化したpTS115プラスミドDNAとInfusion HD Cloning Kitを用いて連結することにより、pTS116プラスミドDNAを得た。
【0168】
pTS107プラスミドDNAを鋳型として、配列番号23及び24のプライマー23及び24からなるプライマーセットを用いたPCRにより増幅することにより、pcaG遺伝子及びpcaH遺伝子を含む約1.3kbpのDNA断片を得た。得られたDNA断片を、予めHindIIIで消化したpTS116プラスミドDNAとInfusion HD cloning kitを用いて連結することにより、pTS119プラスミドDNAを得た。
【0169】
得られたpTS119プラスミドDNAを用いて、P.putida IDPC株を形質転換することにより、IDPC/pTS119株を作製した。
【0170】
[8.スギリグニン由来芳香族化合物を炭素源としたccMA生産(2)]
IDPC/pTS119株を用いた以外は上記6と同様にして、スギリグニン由来芳香族化合物水溶液(pH≒9)を唯一の炭素源として添加したMM培地におけるccMA生産を評価した。
【0171】
培養開始後、一定時間毎に培養液の光学密度(OD600)と、培養液中のccMA濃度とを測定した。OD600測定及びccMAの濃度測定は上記3に記載の方法と同様に行った。
【0172】
培養時間0、24及び48時間後のOD600値及びccMA濃度の測定結果をまとめたものを表5に示す。
【0173】
【0174】
表5が示すとおり、IDPC/pTS119株は、実バイオマスから得られたリグニン由来の芳香族化合物を利用して増殖し、かつ、ccMAを経時的に生産した。
【0175】
[9.VA及びHBAの混合物を炭素源としたccMA生産(2)]
IDPC/pTS110株を、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L及びTc 20mg/Lを含むLB液体培地 10mLに接種し、30℃で一晩振盪培養した。得られた培養液 10mLを、Nal 25mg/L、Km 25mg/L、Gm 50mg/L、Tc 20mg/L、25mM VA及び25mM HBAを含むMM液体培地 1.0Lに接種し、30℃、pH 7、24~100時間で、培養期間中の溶存酸素濃度(DO)を一定の範囲に保ちながら通気撹拌培養した。
【0176】
培養後のVA、HBA及びccMA濃度について、上記3に記載の方法と同様に測定した。得られた測定結果より、消費された基質(VA及びHBA)の量に対するccMAの量により、ccMAの収率を算出した。ccMAの収率、通気量及びDOの値をまとめたものを表6に示す。
【0177】
【0178】
表6が示すとおり、生産されるccMAの収率は、通気量による影響はほとんどないものの、培養液中の溶存酸素濃度が5~10%である条件下において良好な結果となった。なお、IDPC/pTS119株を用いた場合は、生産されるccMAの収率は、培養液中の溶存酸素濃度が2.5%及び5.0%である条件下において約30%であった。
【0179】
配列表に記載の配列は以下のとおりである:
[配列番号1]プライマー1
ATGAATTCCTGATTCGTGCAGGGGTTAT
[配列番号2]プライマー2
GCTTCACCTCAGAAGAGCTCGGGCATGCCGGTTTCCTCTC
[配列番号3]プライマー3
GAGCTCTTCTGAGGTGAAGCTTGGG
[配列番号4]プライマー4
ATGGATCCTCCATCCTGTTCGTCATCAA
[配列番号5]プライマー5
ACAAGCTTGCATGCCGATGCACACCATGCAGCAG
[配列番号6]プライマー6
CCGGGGATCCTCTAGACAGCTCTGTACCCCAGGTG
[配列番号7]プライマー7
ATGTGAATTGCGGCCAGCGCCCAATACGCAAACC
[配列番号8]プライマー8
TCTGGTACCGCGGCCGCGTAATCATGGTCATAGCTGTTTC
[配列番号9]プライマー9
ATGCGAGCTCATTAAAGAGGAGAAATTAACTATGCCCGCCCAGGACAAC
[配列番号10]プライマー10
ATGCGGATCCCCCAAGCTTCACCTCAGAAG
[配列番号11]プライマー11
AGCTGGTACCATTAAAGAGGAGAAATTAACTATGACCGCACCGATTCAG
[配列番号12]プライマー12
AGCTGGTACCTTATTTTGCGCTACCCTGGTT
[配列番号13]プライマー13
CATGATTACGCGGCCGCATTAAAGAGGAGAAATTAACTATGACCGCACCGATT
[配列番号14]プライマー14
TCTGGTACCGCGGCCTTATTTTGCGCTACCCTGGTT
[配列番号15]プライマー15
ATGCGGTACCTTAAAGAGGAGAAATTAACTATGACCGTGAAAATTTCCCA
[配列番号16]プライマー16
AGCTCCCGGGTCAGCCCTCCTGCAACGCCC
[配列番号17]プライマー17
CATGATTACGCGGCCGCTTAAAGAGGAGAAATTAACTATGACCGTGA
[配列番号18]プライマー18
CTCTTTAATGCGGCCTCAGCCCTCCTGCAACGC
[配列番号19]プライマー19
ATGCGAGCTCATGTACCCCAAAAACACCT
[配列番号20]プライマー20
ATGCCCGGGTCAGATGTCCAGCACCAGCA
[配列番号21]プライマー21
CATGATTACGCGGCCATTAAAGAGGAGAAATTAAC
[配列番号22]プライマー22
CCTCTTTAAGCGGCCGCTCAGATGTCCAGCACCAG
[配列番号23]プライマー23
TCACCATGGGAAGCTATTAAAGAGGAGAAATTAACTAT
[配列番号24]プライマー24
TGGATCCACGAAGCTCCCAAGCTTCACCTCAGA
[配列番号25]KpdB
MKLIIGMTGATGAPLGVALLQALRDMPEVETHLVMSKWAKTTIELETPWTAREVAALADFSHSPADQAATISSGSFRTDGMIVIPCSMKTLAGIRAGYAEGLVGRAADVVLKEGRKLVLVPREMPLSTIHLENMLALSRMGVAMVPPMPAYYNHPETVDDITNHIVTRVLDQFGLDYHKARRWNGLRTAEQFAQEIE
[配列番号26]PobA
MKTQVAIIGAGPSGLLLGQLLHKAGIDNIIVERQTAEYVLGRIRAGVLEQGTVDLLREAGVAERMDREGLVHEGVELLVGGRRQRLDLKALTGGKTVMVYGQTEVTRDLMQAREASGAPIIYSAANVQPHELKGEKPYLTFEKDGRVQRIDCDYIAGCDGFHGISRQSIPEGVLKQYERVYPFGWLGLLSDTPPVNHELIYAHHERGFALCSQRSQTRSRYYLQVPLQDRVEEWSDERFWDELKARLPAEVAADLVTGPALEKSIAPLRSLVVEPMQYGHLFLVGDAAHIVPPTGAKGLNLAASDVNYLYRILVKVYHEGRVDLLAQYSPLALRRVWKGERFSWFMTQLLHDFGSHKDAWDQKMQEADREYFLTSPAGLVNIAENYVGLPFEEVA
[配列番号27]VanA
MYPKNTWYVACTPDEIATKPLGRQICGEKIVFYRARENQVAAVEDFCPHRGAPLSLGYVEDGNLVCGYHGLVMGCDGKTVSMPGQRVRGFPCNKTFAAVERYGFIWVWPGDQAQADPALIPHLEWAVSDEWAYGGGLFHIGCDYRLMIDNLMDLTHETYVHASSIGQKEIDEAPPVTTVTGDEVVTARHMENIMAPPFWRMALRGNGLADDVPVDRWQICRFTPPSHVLIEVGVAHAGKGGYHAEAQHKASSIVVDFITPESDTSIWYFWGMARNFAAHDQTLTDNIREGQGKIFSEDLEMLERQQQNLLAHPERNLLKLNIDAGGVQSRKVLERIIAQERAPQPQLIATSANPA
[配列番号28]VanB
MIDAVVVSRNDEAQGICSFELAAADGSLLPAFSAGAHIDVHLPDGLVRQYSLCNHPEERHRYLIGVLNDPASRGGSRSLHEQVQAGARLRISAPRNLFPLAEGAQRSLLFAGGIGITPILCMAEQLSDSGQAFELHYCARSSERAAFVERIRSAPFADRLFVHFDEQPETALDIAQVLGNPQDDVHLYVCGPGGFMQHVLDSAKGLGWQEANLHREYFAAAPVDASNDGSFAVQVGSTGQVFEVPADRTVVQVLEENGIEIAMSCEQGICGTCLTRVLQGTPDHRDLFLTEEEQALNDQFTPCCSRSKTPLLVLDI
[配列番号29]pcaH遺伝子
ATGCCCGCCCAGGACAACAGCCGCTTCGTGATCCGTGATCGCAACTGGCACCCTAAAGCCCTTACGCCTGACTACAAGACCTCCGTTGCCCGCTCGCCGCGCCAGGCACTGGTCAGCATTCCGCAGTCGATCAGCGAAACCACTGGTCCGGACTTTTCCCATCTGGGCTTCGGCGCCCACGACCATGACCTGCTGCTGAACTTCAATAACGGTGGCCTGCCCATTGGCGAGCGCATCATCGTCGCCGGCCGTGTCGTCGACCAGTACGGCAAGCCTGTGCCGAACACTTTGGTGGAGATGTGGCAAGCCAACGCCGGCGGCCGCTATCGCCACAAGAACGATCGCTACCTGGCGCCCCTGGACCCGAACTTCGGTGGTGTTGGGCGGTGTCTGACCGACCGTGACGGCTATTACAGCTTCCGCACCATCAAGCCGGGCCCGTACCCATGGCGCAACGGCCCGAACGACTGGCGCCCGGCGCATATCCACTTCGCCATCAGCGGCCCATCGATCGCCACCAAGCTGATCACCCAGTTGTACTTCGAAGGTGACCCGCTGATCCCGATGTGCCCGATCGTCAAGTCGATCGCCAACCCGCAAGCCGTGCAGCAGTTGATCGCCAAGCTCGACATGAGCAACGCCAACCCGATGGACTGCCTGGCCTACCGCTTTGACATCGTGCTGCGCGGCCAGCGCAAGACCCACTTCGAAAACTGCTGA
[配列番号30]pcaG遺伝子
ATGCCAATCGAACTGCTGCCGGAAACCCCTTCGCAGACTGCCGGCCCCTACGTGCACATCGGCCTGGCCCTGGAAGCCGCCGGCAACCCGACCCGCGACCAGGAAATCTGGAACTGCCTGGCCAAGCCAGACGCCCCGGGCGAGCACATTCTGCTGATCGGCCACGTATATGACGGAAACGGCCACCTGGTGCGCGACTCGTTCCTGGAAGTGTGGCAGGCCGACGCCAACGGTGAGTACCAGGATGCCTACAACCTGGAAAACGCCTTCAACAGCTTTGGCCGCACGGCTACCACCTTCGATGCCGGTGAGTGGACGCTGCAAACGGTCAAGCCGGGTGTGGTGAACAACGCTGCTGGCGTGCCGATGGCGCCGCACATCAACATCAGCCTGTTTGCCCGTGGCATCAACATCCACCTGCACACGCGCCTGTATTTCGATGATGAGGCCCAGGCCAATGCCAAGTGCCCGGTGCTCAACCTGATCGAGCAGCCGCAGCGGCGTGAAACCTTGATTGCCAAGCGTTGCGAAGTGGATGGGAAGACGGCGTACCGCTTTGATATCCGCATTCAGGGGGAAGGGGAGACCGTCTTCTTCGACTTCTGA
[配列番号31]catA遺伝子
ATGACCGTGAAAATTTCCCACACTGCCGACATTCAAGCCTTCTTCAACCGGGTAGCTGGCCTGGACCATGCCGAAGGAAACCCGCGCTTCAAGCAGATCATTCTGCGCGTGCTGCAAGACACCGCCCGCCTGATCGAAGACCTGGAGATTACCGAGGACGAGTTCTGGCACGCCGTCGACTACCTCAACCGCCTGGGCGGCCGTAACGAGGCAGGCCTGCTGGCTGCTGGCCTGGGTATCGAGCACTTCCTCGACCTGCTGCAGGATGCCAAGGATGCCGAAGCCGGCCTTGGCGGCGGCACCCCGCGCACCATCGAAGGCCCGTTGTACGTTGCCGGGGCGCCGCTGGCCCAGGGCGAAGCGCGCATGGACGACGGCACTGACCCAGGCGTGGTGATGTTCCTTCAGGGCCAGGTGTTCGATGCCGACGGCAAGCCGTTGGCCGGTGCCACCGTCGACCTGTGGCACGCCAATACCCAGGGCACCTATTCGTACTTCGATTCGACCCAGTCCGAGTTCAACCTGCGTCGGCGTATCATCACCGATGCCGAGGGCCGCTACCGCGCGCGCTCGATCGTGCCGTCCGGGTATGGCTGCGACCCGCAGGGCCCAACCCAGGAATGCCTGGACCTGCTCGGCCGCCACGGCCAGCGCCCGGCGCACGTGCACTTCTTCATCTCGGCACCGGGGCACCGCCACCTGACCACGCAGATCAACTTTGCTGGCGACAAGTACCTGTGGGACGACTTTGCCTATGCCACCCGCGACGGGCTGATCGGCGAACTGCGTTTTGTCGAGGATGCGGCGGCGGCGCGCGACCGCGGTGTGCAAGGCGAGCGCTTTGCCGAGCTGTCATTCGACTTCCGCTTGCAGGGTGCCAAGTCGCCTGACGCCGAGGCGCGAAGCCATCGGCCGCGGGCGTTGCAGGAGGGCTGA
[配列番号32]catB遺伝子
ATGACAAGCGTGCTGATTGAACACATAGATGCAATTATCGTCGATCTCCCGACCATTCGCCCGCACAAGCTGGCGATGCACACCATGCAGCAGCAGACCCTGGTGGTATTGCGACTGCGCTGCAGCGATGGCGTGGAAGGCATCGGTGAAGCCACCACCATCGGTGGCCTGGCGTATGGCTACGAAAGCCCCGAAGGGATCAAGGCCAACATCGACGCGTACCTCGCCCCAGCGTTGATTGGCCTGCCGGCAGACAACATCAATGCCGCCATGCTCAAGCTGGACAAGCTGGCCAAGGGCAACACCTTCGCCAAGTCCGGCATCGAAAGCGCCTTGCTCGACGCCCAGGGCAAACGCCTGGGCCTGCCGGTCAGCGAACTGCTGGGTGGCCGCGTGCGTGACAGCCTGGAAGTGGCCTGGACCCTGGCCAGCGGCGACACCGCCCGCGACATCGCCGAAGCACAGCACATGCTGGACATTCGCCGGCACCGCGTGTTCAAGCTGAAAATCGGCGCCAACCCGGTGGCGCAGGACCTCAAGCACGTGGTCGCGATCAAGCGCGAGCTGGGTGACAGCGCCAGCGTGCGGGTCGACGTCAACCAGTACTGGGACGAGTCCCAGGCCATCCGCGCCTGCCAGGTATTGGGCGACAACGGCATCGACCTGATCGAGCAGCCGATTTCGCGCATCAACCGCGCTGGCCAGGTGCGCCTGAACCAGCGCAGTCCGGCTCCGATCATGGCCGATGAGTCGATCGAAAGCGTCGAGGACGCCTTCAGCCTGGCCGCCGACGGCGCCGCCAGCATCTTCGCCCTGAAAATCGCCAAGAATGGTGGCCCGCGCGCGGTTCTGCGCACTGCACAGATCGCCGAGGCCGCTGGCATCGCCTTGTACGGCGGCACCATGCTCGAAGGTTCGATCGGCACCCTGGCTTCGGCTCATGCATTCCTCACCCTGCGCCAGCTCACCTGGGGTACAGAGCTGTTCGGGCCGCTGCTGCTGACCGAGGAGATCGTCAACGAGCCGCCGCAATACCGCGACTTCCAGCTGCACATCCCCCACACCCCAGGCCTGGGCCTGACGTTGGACGAACAGCGCCTGGCGCGCTTCGCCCGTCGCTGA
[配列番号33]aroY遺伝子
ATGACCGCACCGATTCAGGATCTGCGCGACGCCATCGCGCTGCTGCAACAGCATGACAATCAGTATCTCGAAACCGATCATCCGGTTGACCCTAACGCCGAGCTGGCCGGTGTTTATCGCCATATCGGCGCGGGCGGCACCGTGAAGCGCCCCACCCGCATCGGGCCGGCGATGATGTTTAACAATATTAAGGGTTATCCACACTCGCGCATTCTGGTGGGTATGCACGCCAGCCGCCAGCGGGCCGCGCTGCTGCTGGGCTGCGAAGCCTCGCAGCTGGCCCTTGAAGTGGGTAAGGCGGTGAAAAAACCGGTCGCGCCGGTGGTCGTCCCGGCCAGCAGCGCCCCCTGCCAGGAACAGATCTTTCTGGCCGACGATCCGGATTTTGATTTGCGCACCCTGCTTCCGGCGCCCACCAACACCCCTATCGACGCCGGCCCCTTCTTCTGCCTGGGCCTGGCGCTGGCCAGCGATCCCGTCGACGCCTCGCTGACCGACGTCACCATCCACCGCTTGTGCGTCCAGGGCCGGGATGAGCTGTCGATGTTTCTTGCCGCCGGCCGCCATATCGAAGTGTTTCGCCAAAAGGCCGAGGCCGCCGGCAAACCGCTGCCGATAACCATCAATATGGGTCTCGATCCGGCCATCTATATTGGCGCCTGCTTCGAAGCCCCTACCACGCCGTTCGGCTATAATGAGCTGGGCGTCGCCGGCGCGCTGCGTCAACGTCCGGTGGAGCTGGTTCAGGGCGTCAGCGTCCCGGAGAAAGCCATCGCCCGCGCCGAGATCGTTATCGAAGGTGAGCTGTTGCCTGGCGTGCGCGTCAGAGAGGATCAGCACACCAATAGCGGCCACGCGATGCCGGAATTTCCTGGCTACTGCGGCGGCGCTAATCCGTCGCTGCCGGTAATCAAAGTCAAAGCAGTGACCATGCGAAACAATGCGATTCTGCAGACCCTGGTGGGACCGGGGGAAGAGCATACCACCCTCGCCGGCCTGCCAACGGAAGCCAGTATCTGGAATGCCGTCGAGGCCGCCATTCCGGGCTTTTTACAAAATGTCTACGCCCACACCGCGGGTGGCGGTAAGTTCCTCGGGATCCTGCAGGTGAAAAAACGTCAACCCGCCGATGAAGGCCGGCAGGGGCAGGCCGCGCTGCTGGCGCTGGCGACCTATTCCGAGCTAAAAAATATTATTCTGGTTGATGAAGATGTCGACATCTTTGACAGCGACGATATCCTGTGGGCGATGACCACCCGCATGCAGGGGGACGTCAGCATTACGACAATCCCCGGCATTCGCGGTCACCAGCTGGATCCGTCCCAGACGCCGGAATACAGCCCGTCGATCCGTGGAAATGGCATCAGCTGCAAGACCATTTTTGACTGCACGGTCCCCTGGGCGCTGAAATCGCACTTTGAGCGCGCGCCGTTTGCCGACGTCGATCCGCGTCCGTTTGCACCGGAGTATTTCGCCCGGCTGGAAAAAAACCAGGGTAGCGCAAAATAA
[配列番号34]kpdB遺伝子
ATGAAACTGATTATTGGGATGACGGGGGCCACCGGGGCACCGCTTGGGGTGGCATTGCTGCAGGCGCTGCGCGATATGCCGGAGGTGGAAACCCATCTGGTGATGTCGAAATGGGCCAAAACCACCATCGAGCTGGAAACGCCCTGGACGGCGCGCGAAGTGGCCGCGCTGGCGGACTTTTCCCACAGCCCGGCAGACCAGGCCGCCACCATCTCATCCGGTTCATTTCGTACCGACGGCATGATCGTTATTCCCTGCAGTATGAAAACGCTTGCAGGCATTCGCGCGGGTTATGCCGAAGGACTGGTGGGCCGCGCGGCGGACGTGGTGCTCAAAGAGGGGCGCAAGCTGGTGTTGGTCCCGCGGGAAATGCCGCTCAGCACGATCCATCTGGAGAACATGCTGGCGCTGTCCCGCATGGGCGTGGCGATGGTCCCGCCGATGTCAGCTTACTACAACCACCCGGAGACGGTTGACGATATCACCAATCATATCGTCACCCGGGTGCTGGATCAGTTTGGCCTCGACTATCACAAAGCGCGCCGCTGGAACGGCTTGCGCACGGCAGAACAATTTGCACAGGAGATCGAATAA
[配列番号35]pobA遺伝子
ATGAAAACTCAGGTTGCAATTATTGGTGCAGGTCCGTCTGGCCTGCTGCTGGGCCAGCTGCTGCACAAGGCCGGTATCGATAACATCATCGTCGAACGCCAGACTGCCGAGTACGTACTAGGCCGCATCCGCGCCGGGGTGCTAGAGCAAGGCACGGTCGACCTGCTGCGCGAGGCTGGCGTGGCCGAGCGCATGGACCGTGAAGGCCTGGTGCACGAGGGGGTTGAACTGCTGGTTGGCGGGCGCCGCCAGCGTCTGGATCTCAAAGCCCTGACCGGCGGCAAGACGGTGATGGTCTACGGCCAGACCGAAGTCACCCGTGACCTGATGCAGGCCCGCGAAGCCAGTGGTGCGCCGATCATTTATTCAGCCGCCAACGTTCAGCCGCATGAATTGAAAGGCGAGAAGCCCTACCTGACGTTCGAAAAGGATGGCCGGGTGCAGCGGATTGACTGCGACTATATCGCCGGCTGCGACGGCTTCCACGGTATCTCGCGGCAGAGCATCCCGGAGGGCGTGCTGAAACAGTATGAGCGGGTTTACCCGTTTGGCTGGCTGGGCCTGCTGTCGGACACACCGCCAGTCAATCACGAGTTGATCTACGCCCACCATGAGCGCGGTTTCGCGTTGTGTAGCCAACGCTCGCAAACACGCAGCCGCTACTACCTGCAGGTACCTTTGCAGGATCGGGTCGAGGAGTGGTCTGACGAGCGTTTCTGGGACGAACTGAAAGCCCGTCTGCCCGCCGAGGTGGCGGCGGACCTGGTCACAGGCCCCGCGTTGGAAAAAAGTATTGCGCCGCTGCGTAGCCTGGTGGTCGAACCCATGCAGTATGGTCACCTGTTCCTGGTGGGGGACGCGGCGCACATCGTCCCCCCTACGGGTGCCAAAGGCCTTAACCTGGCGGCCTCCGACGTCAACTACCTGTACCGCATTCTGGTCAAGGTGTACCACGAAGGGCGCGTCGACCTGCTTGCGCAATACTCGCCGCTGGCACTGCGCCGCGTGTGGAAGGGCGAGCGCTTCAGCTGGTTCATGACCCAACTGCTGCATGACTTCGGTAGCCACAAGGACGCCTGGGACCAGAAGATGCAGGAAGCTGACCGCGAGTACTTCCTGACCTCGCCGGCGGGCCTGGTGAACATTGCCGAGAACTATGTGGGGCTGCCGTTCGAGGAAGTTGCCTGA
[配列番号36]vanA遺伝子
ATGTACCCCAAAAACACCTGGTACGTCGCCTGCACCCCCGATGAGATCGCCACCAAACCCCTGGGCCGGCAGATCTGCGGGGAAAAAATCGTGTTCTACCGCGCCCGCGAGAACCAAGTAGCCGCCGTCGAGGACTTCTGCCCGCACCGCGGCGCACCGTTGTCGTTGGGCTATGTCGAGGACGGCAACCTGGTGTGCGGCTACCACGGCCTGGTGATGGGTTGCGACGGCAAGACCGTGTCGATGCCGGGCCAACGGGTGCGTGGCTTCCCCTGCAACAAGACCTTTGCGGCCGTCGAGCGCTATGGCTTCATCTGGGTCTGGCCCGGTGACCAGGCGCAGGCCGACCCGGCGCTGATTCCGCATCTGGAATGGGCGGTGAGTGATGAGTGGGCCTACGGCGGCGGGCTGTTCCACATCGGTTGCGACTACCGCCTGATGATCGACAACCTCATGGACCTCACCCATGAAACCTATGTGCACGCCTCCAGCATCGGCCAGAAGGAGATCGACGAGGCACCGCCGGTCACCACCGTCACCGGCGACGAAGTGGTCACCGCCCGGCACATGGAAAACATCATGGCGCCACCGTTCTGGCGCATGGCCTTGCGTGGCAATGGCCTGGCCGACGATGTACCAGTGGACCGCTGGCAGATCTGCCGTTTCACCCCACCTAGCCATGTGCTGATCGAAGTGGGTGTAGCGCATGCCGGCAAGGGCGGCTACCACGCCGAGGCACAGCATAAGGCGTCGAGCATCGTGGTCGACTTCATCACCCCTGAGAGCGATACCTCTATCTGGTACTTCTGGGGCATGGCGCGCAACTTCGCTGCGCACGACCAGACCCTGACCGACAACATTCGTGAGGGCCAGGGCAAGATTTTCAGCGAAGACCTGGAAATGCTCGAACGCCAGCAGCAGAACCTGCTGGCCCACCCCGAGCGCAACTTGCTGAAGCTGAATATCGACGCCGGCGGCGTGCAGTCACGCAAAGTGCTGGAGCGGATCATCGCCCAAGAGCGTGCGCCGCAGCCGCAACTGATCGCCACCAGCGCCAACCCTGCCTGA
[配列番号37]vanB遺伝子
ATGATCGATGCCGTAGTGGTATCCCGTAACGATGAAGCGCAGGGTATCTGCAGCTTCGAGCTGGCCGCGGCAGATGGCAGCCTGCTGCCGGCGTTCAGCGCCGGCGCCCATATCGACGTGCACCTGCCCGACGGGCTGGTGCGCCAGTATTCGCTGTGCAACCACCCCGAAGAACGCCATCGCTATCTGATTGGCGTACTCAACGACCCGGCTTCGCGGGGCGGTTCTCGTAGCCTGCACGAACAGGTGCAAGCCGGTGCCCGGCTGCGTATCAGTGCGCCGCGCAACCTGTTCCCGCTGGCCGAGGGTGCGCAGCGCAGTTTGCTGTTTGCTGGCGGTATCGGCATTACCCCAATCCTGTGCATGGCCGAGCAGCTGTCCGACAGCGGCCAGGCCTTCGAGCTGCACTACTGTGCCCGCTCCAGCGAGCGTGCGGCGTTTGTCGAGCGGATCCGCAGCGCGCCGTTCGCTGATCGGCTGTTCGTGCATTTTGACGAGCAGCCGGAAACGGCGCTGGACATCGCCCAGGTGCTGGGCAACCCGCAAGATGATGTGCACCTGTATGTATGCGGGCCCGGCGGGTTCATGCAGCATGTGCTGGACAGCGCGAAGGGGCTGGGCTGGCAGGAGGCCAACCTGCACCGCGAGTACTTCGCCGCAGCACCGGTGGATGCCAGCAACGATGGCAGTTTCGCGGTGCAGGTGGGCAGCACGGGACAGGTGTTCGAGGTGCCAGCCGACCGGACCGTGGTGCAGGTGCTGGAAGAGAATGGTATCGAGATCGCCATGTCGTGCGAGCAGGGTATTTGCGGCACCTGCCTGACACGCGTGCTGCAGGGCACACCGGACCATCGCGATCTGTTTCTCACCGAAGAGGAACAGGCCCTGAACGATCAGTTCACGCCCTGCTGCTCGCGCTCGAAGACGCCGCTGCTGGTGCTGGACATCTGA
[配列番号38]PcaH
MPAQDNSRFVIRDRNWHPKALTPDYKTSVARSPRQALVSIPQSISETTGPDFSHLGFGAHDHDLLLNFNNGGLPIGERIIVAGRVVDQYGKPVPNTLVEMWQANAGGRYRHKNDRYLAPLDPNFGGVGRCLTDRDGYYSFRTIKPGPYPWRNGPNDWRPAHIHFAISGPSIATKLITQLYFEGDPLIPMCPIVKSIANPQAVQQLIAKLDMSNANPMDCLAYRFDIVLRGQRKTHFENC
[配列番号39]PcaG
MPIELLPETPSQTAGPYVHIGLALEAAGNPTRDQEIWNCLAKPDAPGEHILLIGHVYDGNGHLVRDSFLEVWQADANGEYQDAYNLENAFNSFGRTATTFDAGEWTLQTVKPGVVNNAAGVPMAPHINISLFARGINIHLHTRLYFDDEAQANAKCPVLNLIEQPQRRETLIAKRCEVDGKTAYRFDIRIQGEGETVFFDF
[配列番号40]CatA
MTVKISHTADIQAFFNRVAGLDHAEGNPRFKQIILRVLQDTARLIEDLEITEDEFWHAVDYLNRLGGRNEAGLLAAGLGIEHFLDLLQDAKDAEAGLGGGTPRTIEGPLYVAGAPLAQGEARMDDGTDPGVVMFLQGQVFDADGKPLAGATVDLWHANTQGTYSYFDSTQSEFNLRRRIITDAEGRYRARSIVPSGYGCDPQGPTQECLDLLGRHGQRPAHVHFFISAPGHRHLTTQINFAGDKYLWDDFAYATRDGLIGELRFVEDAAAARDRGVQGERFAELSFDFRLQGAKSPDAEARSHRPRALQEG
[配列番号41]CatB
MTSVLIEHIDAIIVDLPTIRPHKLAMHTMQQQTLVVLRLRCSDGVEGIGEATTIGGLAYGYESPEGIKANIDAYLAPALIGLPADNINAAMLKLDKLAKGNTFAKSGIESALLDAQGKRLGLPVSELLGGRVRDSLEVAWTLASGDTARDIAEAQHMLDIRRHRVFKLKIGANPVAQDLKHVVAIKRELGDSASVRVDVNQYWDESQAIRACQVLGDNGIDLIEQPISRINRAGQVRLNQRSPAPIMADESIESVEDAFSLAADGAASIFALKIAKNGGPRAVLRTAQIAEAAGIALYGGTMLEGSIGTLASAHAFLTLRQLTWGTELFGPLLLTEEIVNEPPQYRDFQLHIPHTPGLGLTLDEQRLARFARR
[配列番号42]AroY
MTAPIQDLRDAIALLQQHDNQYLETDHPVDPNAELAGVYRHIGAGGTVKRPTRIGPAMMFNNIKGYPHSRILVGMHASRQRAALLLGCEASQLALEVGKAVKKPVAPVVVPASSAPCQEQIFLADDPDFDLRTLLPAPTNTPIDAGPFFCLGLALASDPVDASLTDVTIHRLCVQGRDELSMFLAAGRHIEVFRQKAEAAGKPLPITINMGLDPAIYIGACFEAPTTPFGYNELGVAGALRQRPVELVQGVSVPEKAIARAEIVIEGELLPGVRVREDQHTNSGHAMPEFPGYCGGANPSLPVIKVKAVTMRNNAILQTLVGPGEEHTTLAGLPTEASIWNAVEAAIPGFLQNVYAHTAGGGKFLGILQVKKRQPADEGRQGQAALLALATYSELKNIILVDEDVDIFDSDDILWAMTTRMQGDVSITTIPGIRGHQLDPSQTPEYSPSIRGNGISCKTIFDCTVPWALKSHFERAPFADVDPRPFAPEYFARLEKNQGSAK
[配列番号43]vdh遺伝子
ATGTTGCAGGTGCCTTTGCTGATTGGCGGGCAGTCGCGCCCCGCCAGCGATGGACGAACCTTCGAGCGCTGTAACCCGGTGACTGGCGAGGTGGTGTCGCAGGCTGCCGCCGCCACACTGGCCGATGCCGATGCCGCGGTGGCTGCTGCCAGCGCGGCGTTTCCGGCCTGGGCCGCCCTGGCACCGGGCGAGCGGCGCAGCCGCTTGCTGGCAGGCGCTGATCTGTTGCAGGCGAGGGCCGCCGAGTTCATCGCCGCCGCCGGTGAAACCGGGGCCATGGCCAACTGGTATGGCTTCAACGTGAAGTTGGCCGCCAACATGCTGCGCGAGGCTGCAGCCATGACCACGCAGATCACCGGTGAAGTGATCCCCTCGGACGTTCCCGGCAGCTTCGCAATGGCCCTGCGCGCGCCCTGCGGCGTGGTGTTGGGCATCGCACCGTGGAACGCCCCGGTGATACTGGCCACGCGTGCCATTGCCATGCCGCTGGCCTGCGGCAACACCGTGGTGCTCAAGGCCTCGGAGCTGAGCCCGGCGGTCCATCGGCTGATCGGCCAGGTGCTGCACGATGCAGGCATCGGCGACGGCGTGGTCAATGTCATCAGCAATGCGCCGCAGGATGCCCCCGCCATCGTCGAGCGGCTGATCGCCAACCCTGCGGTACGCCGGGTCAACTTCACCGGTTCGACGCACGTCGGGCGCATCGTCGGCGAACTGGCGGCCCGCCATCTCAAGCCGGCCCTGCTCGAACTGGGCGGCAAGGCACCTTTGCTGGTGCTCGACGATGCCGACCTGGACGCCACGGTCGAAGCGGCGGCCTTCGGTGCCTACTTCAACCAGGGGCAGATCTGCATGTCCACCGAGCGCCTTGTGGTGGACAGCTGTATTGCCGACGCTTTCGTCGACAAGCTGGCGGTGAAGATCGCCGGGCTGCGTGCAGGTGATCCGCAAGCCAGCACCTCGGTGCTCGGCTCGCTGGTCAGCGCAGCGGCCGGCGAGCGCATCAAGGCACTGATCGACGATGCCGTGGCCAAGGGCGCGCGCCTGGTCAGCGGCGGCCAGCTGGAAGGCAGCATCCTGCAACCGACCTTGCTCGACAACGTCGATGCCAGCATGCGCCTGTACCGCGAGGAGTCCTTCGGCCCGGTGGCGGTGGTACTGCGCGCCGAAGGCGACGAAGCCTTGCTGCAGCTGGCCAACGACTCGGAGTTCGGTCTGTCATCGGCCATTTTCAGCCGCGACACCAGCCGCGCCCTGGCCTTGGCCCAACGGGTGGAGTCGGGTATCTGCCATATCAACGGCCCGACCGTTCACGATGAAGCGCAGATGCCGTTTGGCGGGGTCAAGTCCAGCGGCTATGGCAGCTTCGGCAGCCGCACGGCCATCGATCAGTTCACCCAGTTGCGCTGGGTCACCCTCCAGCACGGCCCGCGTCACTATCCCATCTAG
[配列番号44]PP_1948遺伝子
ATGGCGGTATTTGCCAGTGACTCTTTTGGCCAGCTGAAAGTGGAGAAAATTATGACTGCCCAGTGGAACCACTACATTAACGGGGAATACGTATCACCCGAATCTGAAGAGTATATCCACGAGTTCATCCCAACCACGGCTTTGCCGGGTGACTCAATCGCAAGGGGCTCGGCAGCTGACGTTGATAAGGCTGTTCGTGCCGCGGCAGCGGCTCAGCCTGCCTGGAATGCACGCAAGCCAATTGAGCGGGGTCGTATCCTTCTCGCCATAGCTCGTTTGGTTCGCGCCAACGCAGCGGCTTTCTGCGCCAAAGAAGCGGAAGAAACTGGCAAGCCTCTGAAGATGGCCGCCTTTGAGATCGAGGCATGTGCTCAGTACTTTGAGTATTACGGCGGTTTGGCGACAGCCATCCAGGGCGAAACCATCAACCTCGGCCCCAGCTACCACGCCTATACCACCCGAGAGCCATTTGGAGTGGTGGGGGTCATCCTGCCGTGGAATTCGCCACTGAACCAAGCTGGGCGAGCCATTGCCCCGGCATTGGTTAGCGGGAACACCGTGGTGGTCAAACCTTCAGAGTTCACCTCGGTGACGATGCTCCAGTTCGCGGAACTGGTTGTGAAAGAGGCAGGGTTGCCACCAGGCGTATTGAACGTGGTTACCGGCACCGGTAAGGAAACCGGTGAGCCTCTGGTTAAACACCCTCTGATCCGAAAGGTTGCTTTCACCGGTTCTGTCCGTGCCGGACGGGAGATCGGCAAGCTCGCCGCAGATCGCATCATTCCGCTGTCGCTCGAATTGGGCGGCAAATCCCCGAACATTGTCTTCGAAGACGCAGATCTGGATCGAGCTGTCGCGGGTAGCGTCTTTGCCTTCACCGTCAACACTGGTCAAGTCTGTCTCGCCGGGACCCGTTGCCTGGTGCATGAGTCGATTTTTGAAAAATTCTCCAAGAAGCTTGCCGGTGCTGTAGAGGCGCTTCAGTTCAGCGACGGCGAAAGCTTCGGTCTCGGCCCCCTAACGACCAAGGCTCAGTTTGAGCAGGTTCATCGTTACAACGAGCTGGCCATCCAGGAGGGGGCTCATTGCTTGGTCGGTGGGGAAGCTCCAAGTGACAAAACCGGCTGGTACGTACGACCCACCGTCTACACCAACGTCAACAACTCGATGCGGATTGCTCGGGAAGAAATTTTCGGACCCGTTCTGGTACTGATTCCGTTCAAGGACGAAAACGAGGCGGTGGCCATCGCGAATGACTCGGACTACGGGCTCGCGGCTGGCGTATGGACCACCGATCTGGCTCGCGCGCACCGCGTATCCGCTCAAATCGAAGCGGGCCAGGTGTACGTCAACGAATATCCATCAGGTGGCGTTGAGACTCCATTCGGCGGTTTCAAGCAAAGCGGCCATGGGCGCGAGAAGGGCATTGAAGCACTCCACCATTACACCCAAACAAAGACGACCATCATCCGCATTTGA
[配列番号45]ligV遺伝子
ATGGACTCAGCGCGGATCGCGCCAGACCAGGAGAGAGACAGAATGGAATTTACCCGGCTTAACCCCATGACCGGCGAAGTCGCTTCGTCGGCGCCCGCGCTCAAGGCGGGTGACATTCCCGCGATCGCCCGCAAGGCCCGCGAAGGCTTCACCGCCTGGTCGGTGATGGGCCCCAATGCGCGCCGCGCCGTGCTGATGAAAGCCGCGACGGCGCTGGAAGCCCGCGCGGACGCGTTCGTCGATGCGATGATGGGAGAGATCGGCGCCACCAAGGGCTGGGCTCTGTTCAATCTCGGACTGGCGGCCAGCATGGTGCGCGAGGCAGCGGCCCTGACGACGCAGATCAATGGCGAAGTCATCCCCTCCGACAAGCCCGGCTGCCTCGCCATGGCGCTGCGCGAACCGGTGGGCGTCATTCTCGGCATCGCGCCCTGGAATGCGCCGATCATCCTCGGCGTGCGCGCCATCGCCGTGCCGCTGGCTTGCGGCAACAGCGTGATCCTGAAGGCGAGCGAGACCTGCCCGCGCACCCATGCCCTCATCATCGAGGCATTCGCAGATGCGGGGTTCCCCGAGGGAGTCGTCAACGTCGTCACCAATGCGCCAGCCGATGCGGGCGAAGTGGTCGGCGCGCTGATCGACGCGCCGGAAGTCAAGCGGATCAATTTCACCGGCTCCACCGGGGTCGGCAAGATCATCGCCAAGCGTGCCGCCGAGCATCTCAAGCCCGTGCTGCTGGAGCTGGGTGGCAAAGCCCCGCTCATTGTCCTGGAGGACGCCGATCTGGATGAAGCCGTCAAGGCGGCCGCCTTCGGCGCTTTCATGAACCAGGGGCAGATCTGCATGTCCACGGAGCGGATCATCGTGGTGGATGCGGTGGCCGACGAATTCGCCGCCCGGTTCAAGGCAAAGGTTTCGGCCATGCCTGTTGGCGATCCCCGGCAGGGAAGCACGCCGCTGGGAGCGGTCGTCGACACCAAGACTGTCGCGCATTGCCTGTCCTTGATCGAGGATGCGCTTGGAAAGGGCGCGGAGCAGCTGACGGGCGGCGAGACGACGCAGAATGTGCTGATGCCGGCGCATGTGATCGACCGCGTCACGCCCGACATGAAGCTCTTCCGGGACGAGAGCTTCGGTCCTGTCGTGGGGATCATCCGCGCACGCGACGCCGAGCATGCGATCGAACTGGCCAACGACACCGAATATGGTCTCTCGGCCTCGGTCTTCACGCGCGACACGGCCAAGGGCCTCAGCGTCGCCCGGCGGATCGAATCCGGGATCTGCCATGTCAACGGGCCGACGGTCCATGACGAGGCGCAGATGCCCTTCGGCGGCGTGAAGGCTTCGGGCTATGGTCGTTTCGGCGGCAAGGCCGGCATCGACAGCTTCACGGAGCTGCGCTGGATCACCATCGAGACCCAGCCGGGACATTTCCCGATCTGA
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明の一態様の形質転換微生物やムコン酸の製造方法によって、リグニン由来の芳香族化合物やリグニンを含むバイオマスから、ムコン酸が得られる。ムコン酸は、種々の産業上有用な化合物に変換することができ、例えば、界面活性剤、難燃剤、UV光安定化剤、熱硬化性プラスチック、コーティング剤などの用途があるムコン酸誘導体の原料として利用することができる。
【配列表】