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特許7083160有機物のメタン発酵における消化液の処理装置及びその処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】有機物のメタン発酵における消化液の処理装置及びその処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20220603BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20220603BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20220603BHJP
   B03C 1/18 20060101ALI20220603BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20220603BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220603BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
B03C1/00 B
B03C1/02 A
B03C1/18
B07B1/28 Z
B09B3/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018143812
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020018964
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】517306640
【氏名又は名称】株式会社下瀬微生物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下瀬 眞一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-290753(JP,A)
【文献】特開2005-000791(JP,A)
【文献】特開2005-334713(JP,A)
【文献】特開2013-067803(JP,A)
【文献】特開平07-017787(JP,A)
【文献】特開2004-262720(JP,A)
【文献】特開2004-298688(JP,A)
【文献】特開2007-044579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を発酵させるメタン発酵槽と、
該メタン発酵槽に接続され、発酵槽内で生成された消化液を貯留する消化液槽と、
該消化液槽に接続され、消化液を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機物の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥装置とを設け、
前記減圧発酵乾燥装置は、
少なくとも2基以上の一次減圧発酵乾燥機と、
前記一次減圧発酵乾燥機に直列に接続され、前記一次減圧発酵乾燥機の設置基数以下の二次減圧発酵乾燥機と、を有し、
さらに、前記消化液槽に接続された主配管と、
前記主配管からそれぞれ分岐した分配管と、
前記分配管にそれぞれ接続された少なくとも2基以上の前記一次減圧発酵乾燥機と、
前記分配管にそれぞれ設けられた開閉弁と、を有し、
前記一次減圧発酵乾燥機による発酵乾燥処理に要する処理時間、および前記二次減圧発酵乾燥機による発酵乾燥処理に要する処理時間は、前記メタン発酵槽における発酵処理に要する処理時間よりも短時間であり、
前記2基以上の一次減圧発酵乾燥機によって同時期に発酵乾燥処理を行う場合、前記開閉弁のそれぞれの開度を調整することにより、前記消化液槽から前記2基以上の一次減圧発酵乾燥機に対して、それぞれ最適な量の消化液を供給することを特徴とする有機物のメタン発酵における消化液の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機物のメタン発酵における消化液の処理装置において、
前記二次減圧発酵乾燥機から排出される乾燥物に混入している異物を除去する選別装置を備えていることを特徴とする有機物のメタン発酵における消化液の処理装置。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか1つに記載の有機物のメタン発酵における消化液の処理装置において、
前記メタン発酵槽で生成されたメタンガスをガス発電用に燃焼させ、その熱エネルギーの一部を減圧発酵乾燥装置の熱源に利用させることを特徴とする有機物のメタン発酵における消化液の処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の有機物のメタン発酵における消化液の処理装置を用いた、有機物のメタン発酵における消化液の処理方法であって、
有機物のメタン発酵工程と、
前記メタン発酵後に生成された消化液の貯留工程と、
前記消化液を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機物の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥工程と、を備えていることを特徴とする有機物のメタン発酵における消化液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物をメタン発酵槽などで発酵処理させた後、残りかすである消化液を処理する装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に記載するように、下水汚泥、し尿、食品廃棄物、畜産廃棄物などの有機性廃棄物、あるいは資源作物またはその廃棄物などの有機物をメタン発酵によりメタンガスを回収するシステムがある。
【0003】
一方、メタン発酵よりメタンガスを効率よく、またガス回収量の変動を抑えるためには、定期的にメタン発酵槽の消化液を排出し、新規に有機物を投入する必要がある。また、前記消化液を公共下水道や河川に放流するためには、高度な浄化処理設備が必要になったり、さらにその下水道を整備するなど、前記消化液を廃棄処理するには色々と課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-44579号公報
【文献】特許第4153685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような実情を考慮してなされたものであって、メタン発酵により排出される消化液に対して、高度な浄化処理設備を利用して公共下水道や河川に放流することなく、また、最終工程で製造される廃棄物を有価物として利用するものであり、廃棄物をほとんど発生させない装置及びその処理方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、有機物を発酵させるメタン発酵槽と、該メタン発酵槽に接続され、発酵槽内で生成された消化液を貯留する消化液槽と、前記消化液槽に接続され、消化液を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機物の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥装置とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、高度な浄化処理施設がなくても、メタン発酵による排出される消化液を処理することができる。また、最終工程で発生する廃棄物は有機肥料として利用できるので、ほとんど廃棄物を発生させないものである。
【0008】
本発明において、前記減圧発酵乾燥装置は、少なくとも2基以上の一次減圧発酵乾燥機を備え、前記複数基の一次減圧発酵乾燥機に直列に接続され、一次減圧発酵乾燥機の設置基数以下の二次減圧発酵乾燥機と、を備えていることが好ましい。この構成によれば、二次減圧発酵乾燥機の設置基数を減らことが可能であるので、その設置スペースを減らし、またランニングコストも抑えることが可能である。
【0009】
本発明において、前記二次減圧発酵乾燥機から排出される二次乾燥物に混入している異物を除去する選別装置を備えていることが好ましい。この構成によれば、最終工程で製造される有機肥料から、すでに異物が除去されており、この有機肥料を安心して使用することができる。
【0010】
本発明において、前記消化液槽に接続された主配管と、前記主配管からそれぞれ分岐した分配管と、前記分配管にそれぞれ接続された複数基の一次減圧発酵乾燥機と、前記分配管に開閉弁をそれぞれ設けることが好ましい。この構成によれば、前記それぞれの開閉弁を調整することで、前記消化液槽から2基以上の一次減圧発酵乾燥機のそれぞれに最適量の消化液を投入することができる。また、前記それぞれの開閉弁の内、少なくともひとつの開閉弁を閉にすることにより、その開閉弁に対応する一次減圧発酵乾燥機を停止させることができ、消化液の排出量が少ない時にランニングコストを抑えることができる。
【0011】
本発明において、前記メタン発酵槽で生成されたメタンガスをガス発電用に燃焼させ、その熱エネルギーの一部を減圧発酵乾燥装置の熱源に利用させることが好ましい。この構成によれば、前記減圧発酵乾燥機に設けている蒸気発生ボイラーが不要となり、設備構成が簡単でランニングコストを抑えることができる。
【0012】
また、本発明は、有機物のメタン発酵工程と、前記メタン発酵後に生成された消化液の貯留工程と、前記消化液を密閉容器に収容し、減圧下において所定の温度範囲に加熱しながら撹拌するとともに、微生物を利用して有機物の有機成分を分解させ、減容した乾燥物を得る減圧発酵乾燥工程と、を備えていることを特徴とする有機物のメタン発酵における消化液の処理方法であり、有機物のメタン発酵における消化液の処理装置と同じ効果が期待できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る有機物のメタン発酵における消化液の処理装置及びその処理方法によれば、高度な浄化処理施設がなくても、メタン発酵による排出される消化液を処理することができる。また、最終工程で発生する廃棄物は有機肥料として利用できるので、ほとんど廃棄物を発生させないものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る有機物のメタン発酵における消化液の処理装置の概略構成を示す図である。
図2図1のメタン発酵槽の概略構成を示す図である。
図3図1の一次減圧発酵乾燥機の概略構成を模式的に示す図である。
図4図1の減圧発酵乾燥装置の正面を示す図である。
図5図1の二次減圧発酵乾燥機の排出部を示す図である。
図6図1の選別装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有機物のメタン発酵における消化液の処理装置の概略構成を示す図、図2は、メタン発酵槽の概略構成を示す図、図3は、一次減圧発酵乾燥機の概略構成を模式的に示す図、図4は、減圧発酵乾燥装置の正面を示す図である。
【0016】
図1および図2に示すように、1はメタン発酵槽であり、1aの投入口より、下水汚泥、し尿、食品廃棄物、畜産廃棄物などの有機性廃棄物、あるいは資源作物またはその廃棄物などの有機物が発酵槽1b内に投入され、メタン発酵させることができる。その間、減速機付モータ1cに連結した回転軸1dに上下2段に取り付けられた複数枚の回転羽根1e,・・・により撹拌され、有機物のメタン発酵が促進され、メタンガスGが発生する。前記メタン発酵槽1内では発生したメタンガスGは、ガス回収管1fからガスタンク6に回収され、その間に不要な炭酸ガスを排除してガスタンク6に貯留される。
【0017】
前記ガスタンク6に貯留されたメタンガスGは、ガス発電ボイラー7の燃料として供給され、メタンガスGを燃焼させ、その熱エネルギーをタービンの動力エネルギーに変換して電気エネルギーに変換するものである。また、この熱エネルギーを後述の減圧発酵乾燥装置の加熱用蒸気として利用したりすることができるほか、余剰電気エネルギーは電力会社にも供給することができる。
【0018】
前記メタン発酵槽1でメタン発酵させ続けると、発酵液のpHの濃度が低下するが、pH調整剤としてアルカリ剤を投入すると、pH濃度は回復し、安定的にメタン発酵を続けることができる。これらのことを繰り返してアルカリ剤を投入するが、ひと月が経過するころから、メタンガスG発生効率が落ちてくる。
【0019】
そこで、前記発酵槽1b内の発酵かすである消化液Lをその下部に設けた排出口1gから、排出管2aを介して消化液槽2に移し替える必要がある。また、前記排出管2aの途中には搬送ポンプ2bと開閉バルブ2cが直列に設けられており、前記搬送ポンプ2bを駆動して開閉バルブ2cを開閉操作することにより、メタン発酵槽1から消化液Lを消化液槽2に移し替えることができる。また、前記投入口1aから再び有機物を投入することなど、前記同様のことを繰り返すことにより、メタンガスGを安定的に連続してガスタンク6に供給することができる。
【0020】
前記消化液槽2にはメタン発酵槽1でひと月かけて発酵処理され、そのかすである消化液Lが貯留されている。前記消化液槽2からは減圧発酵乾燥装置Aに消化液Lを供給することができる。本実施例では、前記減圧発酵乾燥装置Aは3基の一次減圧発酵乾燥機3と、一基のみの二次減圧発酵乾燥機3’とで構成されている。前記消化液槽2はその下部に設けた主配管2dからそれぞれ三つに分岐した分配管2eを介して一次減圧発酵乾燥機3に接続されており、また前記それぞれの分配管2eには開閉バルブ2fが設けられている。前記開閉バルブ2fのそれぞれの開度を調整することにより、一次減圧発酵乾燥機3にはそれぞれ最適な量の消化液Lを供給することができる。なお、本実施例では消化液Lを消化液槽2から一次減圧発酵乾燥機3に重力で押し出すようにして供給しているが、ポンプを設けて強制的に供給するようにしてもよい。
【0021】
前記減圧発酵乾燥装置Aには3基の一次減圧発酵乾燥機3を設けているが、すべて同じ構成であるので、その一つについて説明する。前記一次減圧発酵乾燥機3は、図1及び図3に示すように、主配管2dから分配管2e、さらに投入口30aを経て供給される消化液Lを収容する密閉容器として、内部を大気圧以下に保持するように気密に形成された略円筒状のタンク(耐圧タンク)30を備えている。このタンク30の周壁部には、加熱ジャケット31が設けられ、ガス発電ボイラー7で発生した加熱用蒸気が加熱ジャケット31に供給されるようになっている。なお、ガス発電ボイラー7から供給される蒸気の温度は、例えば140℃程度が好ましい。
【0022】
また、前記加熱ジャケット31に取り囲まれるようにして、タンク30の内部にはその長手方向(図3の左右方向)に延びる撹拌シャフト32が設けられている。撹拌シャフト32は、電動モータ32aによって所定の回転速度で回転される。撹拌シャフト32には、その軸方向に離間して複数の撹拌板32bが設けられており、これら撹拌板32bによって、消化液Lが撹拌されるとともに、消化液Lから一次発酵乾燥処理された一次乾燥物がタンク30の長手方向に送られるようになっている。
【0023】
前記タンク30の前壁上部には消化液Lの投入口30aが設けられており、この投入口30aから投入された消化液Lが、加熱ジャケット31によって加熱されながら、撹拌シャフト32の回転によって撹拌される。そして、所定時間経過した後、前記一次乾燥物がタンク30の後壁下部に設けられた排出部30bから排出される。なお、電動モータ32aの代わりに、油圧モータを用いてもよい。
【0024】
前記一次減圧発酵乾燥機3のそれぞれの排出部30bには排出分配管3aが接続されており、これら三つの排出分配管3aは一つの排出主配管3bに集合されている。なお、これら排出分配管3a及び排出主配管3bには、粘性のある一次乾燥物を排出するために、図4に示すように配管内にはスクリューコンベア3cを設けている。
【0025】
前記排出主配管3bは、右上がりに傾斜して二次減圧発酵乾燥機3’の投入口30’aに接続されている。このようにして、一次乾燥物は一次減圧発酵乾燥機3から二次減圧発酵乾燥機3’に投入される。そして、所定時間経過した後、図5に示すように二次減圧発酵乾燥機3’の排出部30’bから二次乾燥物を排出することができる。なお、二次減圧発酵乾燥機3’は一次減圧発酵乾燥機3とほぼ同じ構成であるので詳細は省略する。
【0026】
図1では1基のクーリングタワー8に対して、3基の一次減圧発酵乾燥機3と1基の二次減圧発酵乾燥機3’を接続しているが、図3では分り易くするために、一次減圧発酵乾燥機3に対して1基のクーリングタワー8を設けていることにして説明する。さらに、前記ガス発電ボイラー7についても、クーリングタワー8と同様である。
【0027】
前記タンク30の上部には、加熱された消化液Lから発生する蒸気を凝縮部33へ案内する案内部30cが突設されている。前記案内部33cを介して連通路34に支持された凝縮部33の内部には、1対のヘッド33aによって支持された複数の冷却管33bを備えており、これら複数の冷却管33bと、クーリングタワー8との間には、冷却水経路80が設けられている。本実施形態では、凝縮部33は、タンク30の長手方向に沿って平行に延びており、案内部30cの後方側に凝縮部33が配置されている。
【0028】
そして、凝縮部33において冷却管33b内を流通し、高温の蒸気との熱交換によって温度が上昇した冷却水は、図3に模式的に矢印で示すように冷却水経路80を流通してクーリングタワー8の受水槽81に流入する。クーリングタワー8には、その受水槽81から冷却水を汲み上げる汲み上げポンプ82と、汲み上げた冷却水を噴射するノズル83とが設けられている。このノズル83から噴射された冷却水は、流下部84を流下する間にファン85からの送風を受けて温度が低下し、再び受水槽81に流入するようになっている。
【0029】
クーリングタワー8で冷却された冷却水は、冷却水ポンプ86によって送水され、冷却水経路80によって凝縮部33に送られて、再び複数の冷却管33b内を流通する。そして、上述のようにタンク30の内部で発生した蒸気との熱交換によって温度が上昇した後に、再び冷却水経路80を流通して、クーリングタワー8の受水槽81に流入する。つまり、冷却水は凝縮部33とクーリングタワー8との間の冷却水経路80を循環する。
【0030】
上述のように循環する冷却水の他に、クーリングタワー8では、加熱された消化液Lから発生する蒸気が凝縮部33において凝縮した凝縮水も注水される。なお、図示しないが凝縮部33の下方に、高温の蒸気と熱交換することによって生成した凝縮水が集められるようになっている。また、凝縮部33には連通路35を介して真空ポンプ36が接続され、タンク30内を減圧するようになっている。
【0031】
すなわち、真空ポンプ36の作動によって、連通路35を介して凝縮部33から空気および凝縮水が吸い出され、さらに連通路34および案内部30cを介してタンク30内の空気および蒸気が吸い出される。こうして、凝縮部33からは凝縮水が真空ポンプ36に吸い出され、この真空ポンプ36から導水管によって、クーリングタワー8の受水槽81に導かれる。なお、前記連通路34には、開閉バルブ3dが設けられており、一次減圧発酵乾燥機3を停止している際には、その内部から空気などが吸引されないようにしている。
【0032】
こうしてクーリングタワー8の受水槽81に導かれた凝縮水は、冷却水と混ざり合って上述のように汲み上げポンプ82に汲み上げられ、ノズル83から噴射された後に、流下部84を流下しながら冷却される。なお、凝縮水には、タンク30内に添加されたものと同じ微生物が含まれており、この凝縮水に含まれる臭気成分等が分解されているので、臭気はタンク外部へ発散しないようになっている。
【0033】
上記構成の一次減圧発酵乾燥機3の作動について説明すると、タンク30内に収容された消化液Lは、加熱ジャケット31に供給される加熱用蒸気によって加熱されながら、撹拌シャフト32の回転に伴い撹拌される。そして、タンク30内を取り囲む加熱ジャケット31による外側からの加熱と、撹拌シャフト32などによる内側からの加熱とを受けて、タンク30内に収容された消化液Lが効果的に昇温されるとともに、撹拌シャフト32によって消化液Lが撹拌される。加えて、真空ポンプ36の作動によって減圧されているため、タンク30内では沸点が低下し、微生物によって消化液Lの有機成分の分解が促進される温度領域で水分が蒸発する。
【0034】
なお、一次減圧発酵乾燥機3による減圧発酵乾燥工程では1工程(1サイクル)は、例えば24時間であることが好ましく、まず30分かけて消化液Lが投入され、23時間かけて消化液Lの有機成分を分解させる発酵工程と同時に、消化液を乾燥させる乾燥工程とを設け、さらに30分かけて一次乾燥物(含水率30~40%)を排出している。その間、タンク30内を-0.06~-0.07MPa(ゲージ圧;以下、ゲージ圧は省略する)に減圧すると、タンク30内の水分温度は76~69℃(飽和蒸気温度)に維持される。その結果、消化液Lは、後述する微生物によって、一次発酵分解乾燥が促進される。
【0035】
次に、二次減圧発酵乾燥機3’による減圧発酵乾燥処理する工程もほぼ上記同様の工程で、30分かけて一次乾燥物をタンク30’内に投入し、前記同様23時間かけて一次乾燥物の未発酵分の有機物を発酵させ、さらに乾燥させることになる。その間、タンク30’内を-0.09~-0.10MPaに減圧すると、タンク30’内の水分温度は46~42℃(飽和蒸気温度)に維持される。その結果、一次乾燥物は、後述する微生物によって、二次発酵分解乾燥が促進される。そして、二次減圧発酵乾燥機3’の排出部30’bから二次乾燥物(含水率10%以下)を排出させることができる。
そして、そのような乾燥処理を行う際に、タンク30,30’内の有機物に添加する微生物としては、例えば特許文献2に記載されているように、複数種類の土着菌をベースとし、これを予め培養した複合有効微生物群が好ましく、通称、SHIMOSE 1/2/3群がコロニーの中心になる。
【0036】
なお、SHIMOSE 1は、FERM BP-7504(経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1-3)に、2003年3月14日に国際寄託されたもの)である。また、SHIMOSE 2は、FERM BP-7505(SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、塩に耐性を有するピチアファリノサ(Pichiafarinosa)に属する微生物であり、SHIMOSE 3は、FERM BP-7506(SHIMOSE 1と同様に国際寄託されたもの)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)に属する微生物である。
【0037】
ここで、前記一次減圧発酵乾燥機3による有機物の減圧発酵乾燥処理の手順について説明する。まず、前記消化液槽2に収容された消化液Lを一次減圧発酵乾燥機3のタンク30の投入口30aからに投入する。そして、開閉バルブ2fを閉じて、タンク30内を大気圧状態で密閉する。
【0038】
その後、タンク30内の消化液Lに所定の微生物を添加した後に、真空ポンプ36近傍に設けた大気開放バルブ36aを閉じてタンク30内を密閉する。そして、タンク30内を減圧下で加熱し、その内部に収容した消化液Lの有機成分を一次発酵乾燥させる。すなわち、ガス発電ボイラー7から加熱用蒸気を供給し、タンク30内を加熱する。
【0039】
そうして加熱用蒸気によってタンク30内を加熱するとともに、撹拌シャフト32を所定の回転速度(例えば、8rpm程度)で回転させ、さらに、真空ポンプ36の作動によってタンク30内を減圧し、これにより、タンク30内の温度が微生物の活動至適環境となり、微生物による有機物の有機成分の分解が好適に促進される。なお、撹拌シャフト32の回転速度(8rpm)は一例であって、有機物の有機成分の分解が可能であれば他の値であってもよい。
【0040】
このようにしてタンク30内の温度および圧力を維持しつつ、所定の時間が経過した場合、真空ポンプ36およびガス発電ボイラー7からの加熱蒸気の供給を停止し、大気開放バルブ36aを開放して大気圧状態とする。一方、撹拌シャフト32を逆回転させ、タンク30の排出部30bの蓋を開いて、タンク30から一次乾燥物を排出する。このとき、タンク30から排出される一次乾燥物は減容されている。
【0041】
次に、前記二次減圧発酵乾燥機3’に一次乾燥物が投入され、その一次乾燥物の二次減圧発酵乾燥処理の手順は、ほぼ一次減圧発酵乾燥処理と同じであるので、その詳細については省略する。このようにして、前記二次減圧発酵乾燥機3’の排出部30’bから二次乾燥物を排出することができる。
【0042】
そして、図5に示すように前記二次減圧発酵乾燥機3’によって二次減圧発酵乾燥処理された二次乾燥物は、排出コンベア41によって、選別装置4へ向けて搬送される。つまり、排出コンベア41によって、二次減圧発酵乾燥機3’のタンク30’下部の排出部30’bから排出される二次乾燥物を、排出部30bよりも高い位置に設けられた選別装置4まで搬送する。選別装置4によって、減圧発酵乾燥装置Aによる減圧発酵乾燥処理では分解されない異物、具体的には、プラスチックや金属等を取り除くようにしている。
【0043】
選別装置4は、図6に概略を示すように、磁選機42と振動ふるい機43とを備えている。磁選機42は、例えば吊り下げ式のもので、排出コンベア41上に吊り下げられている。磁選機42は、排出コンベア41によって搬送される乾燥物の中から金具や、鉄片等の磁性物(黒丸で示す)を磁石によって吸着し、プーリ42a間を移動するベルト42bによって連続的に排出容器42cへ排出するように構成されている。磁選機42によって、乾燥物に混入している金具や、鉄片等の金属が除去される。
【0044】
振動ふるい機43は、二次減圧発酵乾燥機3’から排出され、排出コンベア41によって搬送された二次乾燥物から、大き目の異物をふるい分けるものである。振動ふるい機43には、所定の大きさの網目(開口部)を有する金網43aと、金網43aを振動させる振動モータ43bとを備えている。振動ふるい機43は、複数(例えば4つ)のコイルばね43cによって下台43dに支持されている。また、金網43aが斜め下方に向けて傾斜した状態で設けられており、金網43aの一端側(図6の左端側)が、他端側(図6の右端側)よりも低い位置に設けられている。本実施形態では、金網43aの網目が、5mm×5mmの大きさに設定されている。なお、網目のサイズは一例であって、他の値であってもよい。振動ふるい機43によって、二次乾燥物に混入しているプラスチック等の異物が選別される。
【0045】
このように、振動ふるい機43は、コイルばね43cによって下台43dに対しフローティング支持されているので、振動モータ43bの駆動により、排出コンベア41から金網43aに供給された乾燥物がふるい分けられる。具体的には、二次乾燥物は、金網43aの網目を通過して、下方に落下し、振動ふるい機43の下方に配置された貯留容器44に貯留される。一方、プラスチック等の大き目の異物は、金網43aの網目を通過できないため、金網43aの傾斜面に沿って滑り落ちたり、転がり落ちたりしながら一端側(前方側)へ移動し、振動ふるい機43の前方下方に配置された排出容器43eに排出される。このように、上述したように、減圧発酵乾燥装置Aにより発酵乾燥され、減容されることによって乾燥物は、ふるい分けに適したものになっており、異物以外の乾燥物がほとんど金網43aの網目を通過して、貯留容器44に貯留されるようになっている。
【0046】
このように、二次乾燥物から金属片やプラスチックなどの異物が除去され、貯留容器44には良質な有機肥料が貯留される。なお、本発明の実施例では最終工程で製造される廃棄物を有価物としての有機肥料として利用しているが、添加物を配合することにより、廃棄物を有価物である家畜用の有機飼料や、養殖用の有機飼料として利用してもよい。
【0047】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、有機物のメタン発酵において、発酵かすである消化液の処理装置及びその処理方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
A 減圧発酵乾燥装置
1 メタン発酵槽
2 消化液槽
3 一次減圧発酵乾燥機
3’ 二次減圧発酵乾燥機
4 選別装置(磁選機、振動ふるい機)
6 ガスタンク
7 ガス発電ボイラー
8 クーリングタワー
図1
図2
図3
図4
図5
図6