IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エアロネクストの特許一覧

<>
  • 特許-回転翼機 図1
  • 特許-回転翼機 図2
  • 特許-回転翼機 図3
  • 特許-回転翼機 図4
  • 特許-回転翼機 図5
  • 特許-回転翼機 図6
  • 特許-回転翼機 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】回転翼機
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20220603BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
B64C39/02
B64C27/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019010653
(22)【出願日】2019-01-24
(62)【分割の表示】P 2017564749の分割
【原出願日】2017-07-27
(65)【公開番号】P2019059480
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/185572(WO,A1)
【文献】米国特許第09630713(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第106005459(CN,A)
【文献】特表2016-507414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0206915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64C 17/02
B64C 27/08
B64D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転翼、当該回転翼を回転させる動力部及び当該動力部を支持するアーム部を備えるフライト部と、
当該フライト部よりも上方において一軸のみで変位可能な状態で接続された搭載部と、
を有し、
前記搭載部は、前記フライト部が前記一軸に直交する向きに傾いた場合に、水平を維持する、回転翼機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転翼機であって、
前記搭載部は、停止時における前記回転翼機の全体に関する重心G、前記フライト部の重心G、複数の前記回転翼が回転することによって発生する揚力の当該回転翼機に対する作用点Gよりも上方において前記フライト部に接続されている、
回転翼機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼機に関する。詳しくは、飛行時に強風を受けた場合であっても、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の上空の狭い範囲において、ホバリングしながら、長時間の撮影することができる回転翼機に関する。更に詳しくは着陸時等に回転翼機の回転翼を停止した場合に、当該回転翼機のフライト部を水平に保持することができる回転翼機に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるドローン又はマルチコプターと呼ばれる回転翼機は、セキュリティ、農業、インフラ監視等の様々な分野で使用されている。回転翼機を活用することにより、災害現場や未開拓地等の人間が近づくことができない場所で発生している現象を観測し、観測したビックデータを解析することも可能となっている。回転翼機の中でも、特に小型で軽量の回転翼機は、主として回転翼機として好適に使用されている。このような回転翼機を用いることによって、タワーマンション、高層マンション等の高層ビル建築現場を高解像度にて撮影することができる、「パノラマ空撮」が可能となっている。
【0003】
近年、小型、軽量で操縦が簡単であり、風の影響が少なく、安定した姿勢を維持することが可能な回転翼機が提案されている(例えば、特許文献1)。この回転翼機は、第一支持棒を回転翼機中心部から当該回転翼機の鉛直下方に位置するように設置しており、第一支持棒の下部に搭載部を設置している。さらに、この回転翼機は、搭載部の下部に第二支持棒を備えており、第二支持棒から繋留ロープが連結されている。
【0004】
回転翼機の飛行範囲は、繋留ロープの長さによって限定されているため、当該回転翼機が操縦不能に陥っても見失うことがない。また、この回転翼機は、繋留ロープを備えており、当該繋留ロープを巻き上げることにより、操縦者が当該回転翼機を掴むことができるため、墜落による破損を防ぐことができる
【0005】
一方、無人航空機等を含む回転翼機を規制する改正航空法によれば、回転翼機を飛行させる際には、当該回転翼機に繋留ロープを取り付けなければならないことが義務付けられている。
【0006】
また、複数の回転翼を有する回転翼機が水平方向を含む方向に進行する場合に、進行方向前方及び後方の各回転翼の回転数の差を小さくすることができる回転翼機が提案されている(例えば、特許文献2)。上記回転翼機は、複数の回転翼と、上記複数の回転翼を指示するアーム部と、物体を搭載する第1搭載部と、前記第1搭載部が所定の範囲で移動可能な状態で当該第1搭載部を前記アーム部に接続する接続部を備えており、上記複数の回転翼が回転することによって回転翼機に発生する揚力の中心が上記接続部の位置にあることを特徴としている。なお、本件特許出願人は、本件発明に関連する文献公知発明として、以下の特許文献を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-79034号公報
【文献】WO2016/185572A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の回転翼機は、タワーマンション間、高層ビル間において発生する横風等の気流を受けて、横揺れする。この横揺れによって、上記回転翼機は、その飛行態勢を崩して傾斜する。そして、上記回転翼機は、横揺れを原因として、タワーマンション、高層マンションの敷地内から大きく外れて、当該敷地の外側領域を飛行する。
【0009】
通常、上記回転翼機がタワーマンション、高層マンションの敷地の外側を飛行した場合には、当該回転翼機に取り付けられている繋留ロープを引くことにより、その飛行態勢を元に戻すことを試みる。しかしながら、上記回転翼機が備えている繋留ロープを引くことにより、上記回転翼機の飛行態勢は、さらに悪化する。最終的には、上記回転翼機は、飛行態勢を崩して、タワーマンション、高層マンションの敷地内から大きく外れて、当該敷地の外側領域を飛行した後、当該敷地の外側領域に墜落してしまう。また、回転翼機に搭載されているGPS装置が飛行中に途絶となった場合には、制御不能となり、当該回転翼機は、タワーマンション、高層マンションの敷地内から当該敷地外へと飛行してしまう。
【0010】
さらに、従来の回転翼機の着陸時において、当該回転翼機が備えている回転翼を駆動するモータの回転を停止すると、当該回転翼を備えたフライト部は、水平を保持することができない。このため、上記回転翼機のフライト部は、傾斜することになる。上記回転翼機のフライト部が傾斜することによって、当該回転翼機は、当該回転翼機の姿勢を保つことができず、転倒してしまう。
【0011】
また、従来の回転翼機は、当該回転翼機が備えている回転翼と対象物を撮影するために必要なカメラの位置が近接しているため、撮影時にカメラの画面に回転翼機の回転翼等が映り込んでしまう事態が発生する。カメラの画面に回転翼機の回転翼等が映り込んでしまうと、対象物を十分に撮影することができないばかりでなく、対象物を動画撮影する場合には、それまで撮影した画像の価値を無くしてしまう。
【0012】
また、従来の回転翼機は、タワーマンション間、高層ビル間において発生する横風等の気流を受けて、横揺れする。この場合には、上記回転翼機は、その回転翼の一方を傾けた状態でホバリングをする。ホバリングをしている状態は、回転翼が傾いた状態であるので、回転翼機が撮影を行うと、上記回転翼が撮影の障害物となり、カメラの画面に回転翼機の回転翼が映り込んでしまうという問題点を有する。
【0013】
そこで、本発明の目的は、飛行時に横風等の強風を受けた場合であっても、回転翼機に取り付けられた繋留ロープを引くことによって、回転翼機の飛行態勢を立て直して、元の飛行状態に戻すことができる回転翼機を提供することにある。また、本発明の目的は、飛行時に強風を受けた場合であっても、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の上空の狭い範囲において、ホバリングしながら、長時間の撮影することができる回転翼機を提供することにある。さらに、本発明は、回転翼機が着陸直前に無通電状態となった場合にフライト部が水平となりセルフレベリングを可能とし、安定した着陸状態を確保することができる回転翼機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明者等は、鋭意検討を行った結果、回転翼機が備えている支持部材の上方端部に接続部を設け、当該接続部を回転翼機に発生する揚力の中心点Uよりも上方に位置させることによって、当該回転翼機の飛行態勢を立て直して、元の飛行状態に戻すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転翼機が着陸直前に無通電状態となった場合にフライト部が水平となりセルフレベリングを可能とし、安定した着陸状態を確保することができる回転翼機を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】回転翼機の構成を示した斜視図である。
図2】回転翼機の真上から見た概略図である。
図3】回転翼機の側面図である。
図4】回転翼機の飛行態勢を示したモデル図である。
図5】他の回転翼機の側面図である。
図6】他の回転翼機の斜視図である。
図7】他の回転翼機の他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による回転翼機は、以下のような構成を備える。
[項目1]
複数の回転翼と、
前記複数の回転翼を支持するアーム部と、
物体を搭載する搭載部と、
前記搭載部が所定の範囲で移動可能な状態で当該搭載部を前記アーム部に接続する接続部とを備え、
前記接続部の位置が、当該アーム部の重心よりも上にある、
回転翼機。
[項目2]
項目1に記載の回転翼機であって、
前記接続部が二軸ジンバル構造を備えている、
回転翼機。
[項目3]
項目1又は項目2に記載の回転翼機であって、
前記搭載部がその長さを伸長させるための調節機構を備えていることを特徴とする回転翼機。
[項目4]
項目1乃至項目3のいずれかに記載の回転翼機であって、
前記搭載部にロープが取り付けられている、
回転翼機。
[項目5]
項目1乃至項目4のいずれかに記載の回転翼機であって、
前記接続部の位置が、前記複数の回転翼が回転することによって機体に発生する揚力の当該回転翼機に対する作用点よりも上にある、
回転翼機。
[項目6]
項目1乃至項目5のいずれかに記載の回転翼機であって、
前記接続部の位置が、当該回転翼機の重心よりも上にある、
回転翼機。
【0018】
<実施形態1>
以下、適宜図面を参酌しながら、本発明の回転翼機1について説明する。
【0019】
(回転翼機の基本構造)
図1は、本発明の回転翼機1の概要を示した斜視図である。図1に示されるように回転翼機1は、複数の回転翼部10A~10Dを備えている。回転翼部10A~10Dは、回転翼12A~12Dと動力部14A~14Dからなる。回転翼12A~12Dは、動力部14A~14Dを駆動源として、所定方向に回転をする。動力部14A~14Dとしては、回転翼12A~12Dを駆動することができるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、電気モータ、小型エンジン等を挙げることができる。なお、本発明の回転翼機が備えている回転翼部10の個数は、特に制限されるものではなく、適宜設定することができる。実施形態1においては、4個の回転翼部を備えた回転翼機1を一例として説明する。
【0020】
回転翼機1は、複数の回転翼部10A~10Dを支持する複数のアーム部16A~16Dと、フライト部18のベースである円環形状のフライト部材162と、フライト部材18の下方に設けられた撮影部20と、フライト部材18と撮影部20とを連結するための支持部材30を備えている。フライト部材18と撮影部20とは、支持部材30の下端部34を介して連結されている。撮影部20は、収納ボックス22と撮影用カメラ本体26からなり、収納ボックス22は、撮影用カメラ本体26を収納するためにボックス形状を有している。
【0021】
図1に示された回転翼機1において、支持部材30の下方端部34は、ボックス形状を有する撮影部20の上面に設置された収納ボックス取付け部24と連結している。回転翼機1は、上記撮影部20の下面から連通し、ボックス形状を有する撮影部20の内部において、撮影用カメラ本体22を固定するための固定用支持部材28を有している。支持部材30と固定用支持部材28は、同一の直線上に位置している。
【0022】
固定用支持部材28の端部282には、回転翼機1の飛行位置及び飛行形態を制御するための繋留ロープ60が取り付けられている。繋留ロープ60は、いわゆる「凧の脚」と同様に、回転翼機1の飛行状態を安定化させる。回転翼機1が安定して飛行することによって、撮影部20を水平に保持することができる。
回転翼機1は、タワーマンション、高層マンション等の展望撮影に最も適しており、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の上空において、飛行することが前提となっている。このため、繋留ロープ60は、回転翼機1がタワーマンション、高層マンション等の敷地外の上空へ飛行することを回避する観点から設けられている。なお、繋留ロープ60を取り付ける形態は、撮影部20の下方に取り付けられるものであれば、その形態は、特に制限されない。例えば、固定用支持部材28の端部282を介することなく、撮影部20の底面に直接取り付けてもよい。
【0023】
回転翼機1は、回転翼部10A~10Dを支持するアーム部16A~16Dを備えている。実施形態1において、フライト部18を構成するアーム部16は、アーム部16A~16Dの4本を備えているが、アーム部16の本数はこれに限定されない。例えば、回転翼機1のアーム部16として、6本、8本、10本、12本等のアーム部を適宜設けてもよい。回転翼機1が安定して飛行して、かつ重量が大きく、精度の高いカメラを搭載する場合には、回転翼部10の個数に合せて、例えば、アーム部16の数を6本以上としてもよい。
【0024】
図1において、4本のアーム部16A~16Dは、円環形状において等間隔となるように4方向に設けられている。すなわち、4本のアーム部16A~16Dは、隣接するアーム部の間隔が、90°となるように設けられている。なお、アーム部16A~16Dは、直線形状を有していても、設計上の観点から直線形状を基調として、折れ曲がった形状を有していてもよい。
【0025】
アーム部16A~16Dは、支持部材30の外周に設けられたリングRを中心として外側に向かって、等間隔にて延伸している。支持部材30は、リングRを連通して、上方向に延伸している。支持部材30の上方端部32は、フライト部18と支持部材30とを接続するための接続部40を有している。
【0026】
図2は、実施形態1の回転翼機1を真上から見た概略図である。図2に示されるように、回転翼機1は、複数のアーム部16A~16Dの回転翼部10A~10D側の底面端部をフライト部材162によって連結させた構造を有していてもよい。複数のアーム部16A~16Dの端部に位置する回転翼部10A~10Dをフライト部材162によって連結すると、隣接する回転翼部10A~10Dが繋がって、回転翼機1の真上から見たフライト部材162の外観形状は、円環形状となる。
【0027】
フライト部材162の形状は、隣接する回転翼部10を連結することができるものであれば、特に限定されるものではなく、円環形状、楕円形状、矩形状の枠体であってもよい。アーム部16の端部に位置する回転翼部10をフライト部材162により連結することによって、フライト部18は、構造上より安定する。なお、フライト部材162の外側側面には、回転翼機1が夜間飛行する際に目印となる発光ダイオード等の発光体164を設けていてもよい。
【0028】
図2に示された回転翼機1は、回転翼機1は、支持部材30の上方端部32に設置された接続部40を通って、対向するフライト部材162上の部分を接続部40と橋架けするための連結部材50を備えている。連結部材50は、支持部材30の支持部材上端32に設けられている接続部40と同期して駆動する。接続部40が駆動することによって、連結部材50は傾斜又は回転する。連結部材50は、フライト部10と連結しているので、接続部40が駆動することによってフライト部10が傾斜又は回転する。フライト部10は、接続部40が駆動する方向、大きさに依拠して、傾斜又は回転をする。回転翼機1は、支持部材30を中心にフライト部10を傾斜又は回転することができる。
【0029】
具体的には、回転翼機1は、回転翼部10Aと回転翼部10Dとの中間に設定されたフライト部材18の中間点181と、回転翼部Bと回転翼部Cとの中間に設定されたフライト部材18の中間点182とを橋架けする連結部材50を備えている。連結部材50は、支持部材30の上方端部32に設けられた接続部40を通過しているので、フライト部18は、接続部40が駆動することによって、接続部40を頂点として傾斜することができる。同様に、フライト部18は、接続部40が駆動することによって、接続部40を頂点として回転することもできる。
【0030】
接続部40は、フライト部10を傾斜又は回転することができる機構であれば、特に制限されるものではない。回転翼機の機能に応じて、適宜設定することができる。例えば、接続部40として、一軸ジンバル構造、二軸ジンバル構造、三軸ジンバル構造を採用してもよい。なお、上記ジンバル構造には、モータ等の駆動装置を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0031】
本発明の回転翼機をタワーマンション、高層マンション等の眺望撮影を目的とする回転翼機として採用する場合には、その飛行態様は、主に垂直上昇用であるので、接続部40を二軸ジンバル構造とすればよい。接続部40が駆動することによって、連結部材50を傾斜させることができ、回転させることもできる。連結部材50が傾斜又は回転することによって、連結部材50と連結しているフライト部18は、傾斜又は回転する。フレーム18が傾斜又は回転することによって、フライト部18に搭載されている回転翼12A~12Dは、傾斜又は回転することができる。
【0032】
図3は、回転翼機1の側面図である。回転翼機1の技術的特徴は、支持部材30の上方端部32に接続部40を備えており、フライト部18は、接続部40を頂点として傾斜又は回転することができ、接続部40が、複数の回転翼12A~12Dが回転することによって前記回転翼機に発生する揚力の中心点Uよりも上方に位置することにある。図3に示される回転翼機1において、支持部材30は、連結部材50と重なっている。このため、図3に示される回転翼機1においては、連結部材50と支持部材30とが同一直線上に存在している。
【0033】
図3に示されるように、接続部40(1)は、複数の回転翼12A~12Dが回転することによって回転翼機に発生する揚力の中心点U(2)よりも上方に位置している。従来の回転翼機は、フライト部と支持部材との接続部が、複数の回転翼が回転することによって回転翼機に発生する揚力の中心点U(2)と一致しているか、又は、回転翼機に発生する揚力の中心点U2)よりも低い位置に設定されている。
【0034】
本発明の回転翼機は、接続部40の中心点Gと回転翼機に発生する揚力の中心点Uとが上記位置関係を採用することによって、回転翼機1が飛行時に横風等の強風を受けた場合であっても、上記回転翼機1に取り付けられた繋留ロープ60を引くことによって、飛行態勢を立て直して、元の飛行状態に戻すことができる。
【0035】
一方、従来の回転翼機は、フライト部18と支持部材30との接続部40の重心点Gが回転翼機1に発生する揚力の中心点Uよりも下方に位置している。このため、従来の回転翼機は、横風等の強風を受けて飛行態勢を崩した態勢から、当該態勢を元に戻すために回転翼機の繋留ロープを引いても、下向きの力がさらに加えられる。その結果、従来の回転翼機は、横風等の強風を受けて飛行態勢を崩した態勢からさらに当該回転翼機の飛行態勢を悪化させる。最終的には、従来の回転翼機は、高層マンション等の敷地内の上空範囲を出て、当該敷地外の上空を飛行し、高層階から落下する場合もある。
【0036】
(回転翼機の飛行態様)
図5は、回転翼機1の飛行態様を示したモデル図である。図5に基づいて、実施形態1の回転翼機1の飛行態様について説明する。回転翼機1の飛行態様を(a)タワーマンション、高層マンション等の敷地内の地上を出発地点とした離陸する工程、(b)垂直に上昇して飛行を開始し、タワーマンション、高層マンション等の高層階を撮影する工程、(c)高層階を撮影した後、着陸する工程とに分けて説明する。
【0037】
(a)タワーマンション等の敷地内の地上を出発地点とした離陸する工程
図5(a)に示されるように、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の出発地において、回転翼機1の撮影部20を構成する収納ボックス22には、撮影用カメラ本体26が搭載されている。回転翼機1の操縦者は、操作部を備えたラジオコントロール用の送信機を操作して、回転翼部10A~10Dの動力部14A~14Dの出力を上昇させて、回転翼12A~12Dの回転数を増加させる。回転翼12A~12Dが回転することによって、回転翼機1を浮上させるために必要な揚力が鉛直上向きに発生する。当該揚力が、回転翼機1に働く重力を超えると回転翼機1は、地面を離れて出発地を離陸する。なお、フライト部18において対向する回転翼は、同じ向きに回転している。具体的に回転翼機1においては、回転翼12Aと回転翼12Cは左向きに回転し、回転翼12Bと回転翼12Dは右向きに回転する。
【0038】
(b)垂直に上昇して飛行を開始し、タワーマンション、高層マンション等の高層階を撮影する工程
図5(b)に示されるように、回転翼機1は、回転翼12A~12Dの回転数を増加させることによって、タワーマンション、高層マンション等の敷地内において、上空に向かって、垂直に上昇する。その後、回転翼機1は、上昇を続けて、一定の高度に到達する。一定の高度に到達した回転翼機1は、当該高度において、空中停止(ホバリング)を行う。当該高度は、回転翼機1の飛行ルート、タワーマンション、高層マンション等の建築物の高さ、回転翼機1に適用される航空法等によって、適宜決定される。操縦者は、種々の条件を勘案して、回転翼機1が空中停止(ホバリング)を行う高度をあらかじめ設定しておいてもよい。
【0039】
回転翼機1にかかる重量と、回転翼12A~12Dの回転によって、回転翼機1に発生している揚力とが力学的に釣り合っているため、当該回転翼機は、空中停止(ホバリング)することができる。回転翼12A~12Dの回転数は、一定レベルに維持されている。空中停止(ホバリング)は、回転翼機1が撮影用カメラ本体26を用い、タワーマンション、高層マンション等の撮影を開始するために行われる。
【0040】
図5(b)に示されるように、回転翼機1が空中停止(ホバリング)している状態から当該高度において水平移動する場合には、フライト部18を傾斜させる。回転翼機1が水平移動する場合には、フライト部18を構成する回転翼12A~12Dの回転数がほぼ同一となるように調整する。回転翼機1は、当該高度を保持しながら、水平移動した位置において、撮影を開始することができる。回転翼機1は、所定の高度において空中停止(ホバリング)をしながら、所定の位置において、タワーマンション、高層マンション等の高層階を撮影する。また、回転翼機1は、必要に応じて、水平方向に飛行し、撮影位置を変えることができる。また、回転翼機1は、垂直方向に飛行し、撮影位置を変えることができる。
【0041】
(c)高層階を撮影した後、着陸する工程
図5(c)に示されるように、回転翼機1は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の目的地に着陸する。図5(c)において、目的地は地表であってもよいし、タワーマンション、高層マンション等に設けられた回転翼機1専用のヘリポートであってもよい。回転翼機1は、目的地上空において回転翼12A~12Dの回転数を減少させる。回転翼機1は、高度を低下させて、着陸態勢に入る。回転翼機1が着陸態勢に入る場合には、フライト部18は地表に対して水平に維持される。フライト部18が傾斜している場合には、当該フライト部18が地表に対して水平となるように回転翼12A~12Dの回転数を調整する。
【0042】
回転翼機1は、着陸直前にフライト部18の回転翼12A~12Dの回転を停止する。回転翼12A~12Dの回転を停止することによって、フライト部18は、それ自身の自重によって、地表に対して水平となる。具体的には、図5(c)に示された回転翼機1は、破線で示されたようにフライト部分18が傾いた状態から、回転翼部12A~12Dが無通電状態となることにより、実線で示されたように実線で示されたようにフライト部分18が水平な状態となる。回転翼12A~12Dは、重力の影響により、自然に水平となる。このように、本発明の回転翼機1は、支持部材30の上方端部32にフライト部18との接続部40を設けているので、回転翼機1が着陸直前に無通電状態となった場合にフライト部18が水平となることにより、安定した着陸状態を確保することができる。
【0043】
このように、実施形態1の回転翼機1は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内において安定した飛行を確保することができ、撮影用カメラ本体26の撮影時のブレが少ないため、夜景撮影にも好適に用いることができる。実施形態1の回転翼機1は、当該回転翼機が空中停止(ホバリング)している限りは、撮影部20を水平に保持することができ、撮影部20は大きく揺れることがない。このため、回転翼機1は、夜景撮影に必要なシャッター速度にも十分対応することができる。
【0044】
<実施形態2>
実施形態2の回転翼機2は、当該回転翼機に発生する揚力の中心点Uと、支持部材30と撮影部20との重力の作用点Gが一致していることを特徴としている。回転翼機2は、上記揚力の中心点Uと重力の作用点Gとが一致するように設計されているので、支持部材30と撮影部20による重力による回転モーメントが発生しない。このため、実施形態2の回転翼機2においては、水平方向に進行する場合において、進行方向に対して前方の回転翼の回転数と後方の回転翼の回転数とをほぼ等しくすることができる。
【0045】
回転翼機2は、繋留ロープの係留地点からほぼ垂直に上昇し、狭い範囲でホバリングしながら長時間の撮影に適したものである。さらに、回転翼機2は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内を水平方向に移動する場合には、利便性がさらに向上する。すなわち、回転翼機2は、タワーマンション、高層マンション等の眺望撮影に適したものであり、繋留ロープの係留地点から垂直(直上)に飛行することを基本動作とする。しかしながら、回転翼機2がタワーマンション、高層マンション等の周囲を撮影する場合、外壁検査等を行う場合には、垂直(直上)に飛行することのみならず、水平方向に飛行することも必要となる。回転翼機2が水平方向に飛行する場合には、フライト部18を傾斜させなければならない。
【0046】
実施形態2の回転翼機2は、水平方向に進行するためにフライト部18を傾斜しなければならない場合であっても、進行方向に対して前方の回転翼の回転数と後方の回転翼の回転数とをほぼ等しくできることによって、回転翼12A~12Dを駆動するための動力部14A~14Dの出力を抑制することができる。
【0047】
<実施形態3>
実施形態3の回転翼機3は、支持部材30が当該支持部材30の長さを伸長させるための調節機構を備えている。調節機構は、支持部材30の外周に設けられたアーム部16A~16Dと係合するリングRを基準として、上部に設けられていても、下部に設けられていてもよい。調節機構は、支持部材30の長さを伸長する。
【0048】
回転翼機3がタワーマンション、高層ビル等の敷地内において、着陸する場合には、上記調節機構によって、鉛直下向きに支持部材30を伸長する。鉛直下向きに支持部材30を伸長することによって、回転翼機3の重心が下方に移動し、安定した着陸状態を確保することができる。
【0049】
本発明の回転翼機は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内において利用することを想定している。このため、回転翼機3がタワーマンション・高層ビル等の付近に発生する上昇気流の影響を受けた場合であっても、着陸態勢に入ると同時に回転翼機3の重心を調節機構により下方に移動することによって、適宜上昇気流に対抗して、安定した飛行状態を保持することができる。
【0050】
調節機構は、支持部材30の長さを伸長することができるものであれば、特に制限されるものではない。調節機構としては、例えば、光学機器等におけるピント合わせに用いられるラック・アンド・ピニオン機構、ステアリング・ギア機構を採用してもよい。また、調節機構は、伸縮性を備えた筒体構造を備えていてもよい。当該調節機構は、支持部材30は、外筒となる支持部材と内筒となる支持部材とから構成されていてもよい。
【0051】
実施形態3の回転翼機3は、調節機構を備えているのでフライト部18と撮影部20との距離を可能な限り、大きくとることができる。このため、実施形態3の回転翼機3は、撮影部20に搭載された撮影用カメラ本体26による撮影視野にフライト部18が映り込むことがなく、上下の深い視野角を確保することができる。
【0052】
さらに、実施形態3の回転翼機3は、通常の回転翼機よりもフライト部18と撮影部20との距離が離れており、下方に位置する撮影部20からタワーマンション、高層マンション等の低層階を撮影することができると同時に、低層階からタワーマンション、高層マンション等の高層階を眺望した撮影をすることができる。
【0053】
<実施形4>
実施形態5の回転翼機5は、図5図7に示されるように、複数の回転翼12A~12Dと、当該回転翼12A~12Dを回転させる動力部(モータ)14A~14Dと、当該動力部(モータ)14A~14を支持するアーム部16と、カメラ等の物体を搭載する搭載部20’と、搭載部20’が所定の範囲(例えば、X方向及びY方向の二軸)で移動(変位)可能な状態で搭載部20’をアーム部16に接続する接続部40’とを備えている。回転翼12A~12Dと動力部(モータ)14A~14Dとアーム部16とはフライト部18を構成する。本実施形態の搭載部20’は、接続部40’から下方に延びるフレームとフレームの先端に取り付けられる搭載部位とを備えている。
【0054】
図5に示されるように、本実施形態の回転翼機5は、下から順に停止時の回転翼機5の全体に関する重心(機体重心)G、フライト部18の重心(フライト重心)G、回転翼12A~12Dが回転することによって機体に発生する揚力の当該回転翼機5に対する作用点(浮力重心)G、接続部40’と並んでいる。即ち、本実施形態の接続部40’は、機体重心G、フライト重心G、浮力重心Gよりも(Z方向において)上に位置している。
【0055】
図6に示されるように、接続部40’はフライト部18を当該接続部40’を中心としてx方向及びy方向の2軸において、図のθx及びθy方向に関し変位が可能に構成されている。
【0056】
このように、実施形態4の回転翼機5は、実施形態1乃至実施形態3の回転翼機と同様に、タワーマンション、高層マンション等の敷地内において安定した飛行を確保することができ、搭載部20’のブレが少ないため、例えば、カメラによる夜景撮影にも好適に用いることができる。また、実施形態4の回転翼機5は、当該回転翼機が空中停止(ホバリング)している限りは、搭載部20’を水平に保持することができ、搭載部40’は大きく揺れることがない。このため、夜景撮影に必要なシャッター速度にも十分対応することができる。
【0057】
また、回転翼機5がタワーマンション、高層ビル等の敷地内において、着陸する場合には、調節機構50によって、鉛直下向きに搭載部20’支持部材30を伸長する。鉛直下向きに支持部材30を伸長することによって、回転翼機3の重心が下方に移動し、より安定した着陸状態を確保することができる。
【0058】
本発明の回転翼機は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内において利用することを想定している。このため、回転翼機3がタワーマンション・高層ビル等の付近に発生する上昇気流の影響を受けた場合であっても、着陸態勢に入ると同時に回転翼機3の重心を調節機構により下方に移動することによって、適宜上昇気流に対抗して、安定した飛行状態を保持することができる。
【0059】
図6及び図7に示されるように、調節機構50は、支持部材30の長さを伸長することができるものであれば、特に制限されるものではない。調節機構としては、例えば、光学機器等におけるピント合わせに用いられるラック・アンド・ピニオン機構、ステアリング・ギア機構を採用してもよい。また、調節機構は、伸縮性を備えた筒体構造を備えていてもよい。当該調節機構は、支持部材30は、外筒となる支持部材と内筒となる支持部材とから構成されていてもよい。
【0060】
実施形態3の回転翼機3は、調節機構を備えているのでフライト部18と搭載部20’との距離を可能な限り、大きくとることができる。このため、実施形態3の回転翼機3は、搭載部20’に搭載された撮影用カメラ本体よる撮影視野にフライト部18が映り込むことがなく、上下の深い視野角を確保することができる。
【0061】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、無通電時(停止時)にフライト部がセルフレベリングが可能となる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は、全て本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の回転翼機は、タワーマンション、高層マンション等の敷地内の上空の狭い範囲において、ホバリングしながら、長時間の撮影に好適に利用することができる。また、本発明の回転翼機は、タワーマンション、高層ビル等の眺望撮影に低層マンションの現場、高層ビルの工事現場における測量現場における利用が期待できることから、マルチコプター・ドローン等の飛行機関連産業、住宅・建設・建築関連分野、セキュリティ分野、農業、インフラ監視等の様々な産業にも利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1~5 回転翼機
10A~10D 回転翼部
12A~12D 回転翼
14A~14D 動力部
16A~16D アーム部
18 指示アーム
162 フライト部材
164 発光体(発光ダイオード)
18 フライト部
181 フライト部材中間点(AD間)
182 フライト部材中間点(BC間)
20 撮影部
20’ 搭載部
22 収納ボックス
24 収納ボックス取り付け部
26 撮影用カメラ本体
28 固定用支持部材
282 固定用支持部材端部
30 支持部材
32 支持部材上方端部
34 支持部材下方端部
40、40’ 接続部
50 調節部
U 揚力中心点
G 重力中心点
70A~D 着陸用脚部(支持部材)
72 直交部材(脚部支持部材AD間)
74 直交部材(脚部支持部材BC間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7