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▶ テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッドの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】補強されたキャッチャを有するダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
F16F9/32 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017055650
(22)【出願日】2017-03-22
(65)【公開番号】P2017172801
(43)【公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】15/077,214
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
【住所又は居所原語表記】500 North Field Drive, Lake Forest, Illinois 60045, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ブロックス
(72)【発明者】
【氏名】トマス グルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ウィルキン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ボイトビッチ
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063200(JP,A)
【文献】特開2014-181776(JP,A)
【文献】特開2015-052355(JP,A)
【文献】特開2016-053409(JP,A)
【文献】特開2016-186362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023529(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010028290(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にハウジングから突出するテレスコープ式ピストンロッド及びハウジングを有する緩衝装置と、
コイルスプリングと、
前記ピストンロッドの遠位端に動作可能に結合されるアッパースプリングシートと、
前記緩衝装置の前記ハウジングに動作可能に結合されロアスプリングシートと
を備え、
前記アッパーおよびロアスプリングシートがその間にコイルスプリングを捕捉し、
前記ロアスプリングシートが、
前記緩衝装置の前記ハウジングを受けるための開口を有し、前記ハウジングにしっかりと固定可能であるベース部分と、
前記ベース部分から延在し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの壊れた部分を捕らえるためのキャッチャを形成する略円周の壁部分と、
ロアスプリングシートのベース部分上に形成され、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように構成される衝撃吸収構造と
を含み、
前記衝撃吸収構造が、前記ベース部分から延在し、前記キャッチャのまわりで円周方向に配設される、複数の離間した衝撃吸収構造を備え、
前記衝撃吸収構造が、
前記キャッチャの内壁面からおよび前記コイルスプリングから離れて、前記ベース部分から前記ベース部分の軸の方向に伸びて前記コイルスプリングと対向する平面部分と、
前記平面部分と前記キャッチャの内壁面とをつなぐ部分とを有する、ストラット型ダンパ。
【請求項2】
少なくとも部分的にハウジングから突出するテレスコープ式ピストンロッド及びハウジングを有する緩衝装置と、
コイルスプリングと、
前記ピストンロッドの遠位端に動作可能に結合されるアッパースプリングシートと、
前記緩衝装置の前記ハウジングに動作可能に結合されロアスプリングシートとを備え、
前記アッパーおよびロアスプリングシートがその間にコイルスプリングを捕捉し、
前記ロアスプリングシートが、
前記緩衝装置の前記ハウジングを受けるための開口を有し、前記ハウジングにしっかりと固定可能であるベース部分と、
前記ベース部分から延在し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの壊れた部分を捕らえるためのキャッチャを形成する略円周の壁部分と、
ロアスプリングシートのベース部分上に形成され、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように構成される衝撃吸収構造とを含み、
前記衝撃吸収構造が、
前記ロアスプリングシートの軸心の方へ前記キャッチャの内壁面から略内向きに突出するように配設され、第1の高さを有し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの前記壊れた部分によって潰され、前記コイルスプリングの壊れた部分からエネルギーを吸収するように機能する、第1のクラッシュリブと、
ベース部分から上向きに突出し、前記コイルスプリングの前記壊れた部分によって潰され、前記コイルスプリングの前記壊れた部分からのエネルギーの吸収をさらに支援するように機能する、第2のクラッシュリブと
を備え、
前記第1のクラッシュリブが、前記ロアスプリングシートの略軸心の方へ半径方向内向きに突出するように配設され、
前記第2のクラッシュリブが、前記ロアスプリングシートの軸心に対して接線方向に配設される、ストラット型ダンパ。
【請求項3】
少なくとも部分的にハウジングから突出するテレスコープ式ピストンロッド及びハウジングを有する緩衝装置と、
コイルスプリングと、
前記ピストンロッドの遠位端に動作可能に結合されるアッパースプリングシートと、
前記緩衝装置の前記ハウジングに動作可能に結合されロアスプリングシートとを備え、
前記アッパーおよびロアスプリングシートがその間にコイルスプリングを捕捉し、
前記ロアスプリングシートが、
前記緩衝装置の前記ハウジングを受けるための開口を有し、前記ハウジングにしっかりと固定可能であるベース部分と、
前記ベース部分から延在し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの壊れた部分を捕らえるためのキャッチャを形成する略円周の壁部分と、
ロアスプリングシートのベース部分上に形成され、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように構成される衝撃吸収構造とを含み、
前記衝撃吸収構造が、
前記ロアスプリングシートの軸心の方へ前記キャッチャの内壁面から略内向きに突出するように配設され、第1の高さを有し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの前記壊れた部分によって潰され、前記コイルスプリングの壊れた部分からエネルギーを吸収するように機能する、第1のクラッシュリブと、
ベース部分から上向きに突出し、前記コイルスプリングの前記壊れた部分によって潰され、前記コイルスプリングの前記壊れた部分からのエネルギーの吸収をさらに支援するように機能する、第2のクラッシュリブと
を備え、
前記第2のクラッシュリブが、前記キャッチャの内壁面からおよび前記コイルスプリングから離れて、前記ベース部分から前記ベース部分の軸の方向に伸びて前記コイルスプリングと対向する平面部分を有し、
前記第1のクラッシュリブが、前記平面部分と前記キャッチャの内壁面とをつなぐ部分を有する、ストラット型ダンパ。
【請求項4】
前記第1のクラッシュリブが、前記ロアスプリングシートの略軸心の方へ半径方向内向きに突出するように配設される、
請求項3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項5】
前記第2のクラッシュリブが、前記ロアスプリングシートの軸心に対して接線方向に配設される、
請求項4に記載のストラット型ダンパ。
【請求項6】
前記第1のクラッシュリブおよび前記第2のクラッシュリブのそれぞれの厚さはキャッチャの厚さより薄い、請求項5に記載のストラット型ダンパ。
【請求項7】
前記第2のクラッシュリブが、前記第1のクラッシュリブに略垂直に延在するように形成される、
請求項2または3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項8】
前記第1のクラッシュリブおよび前記第2のクラッシュリブが、前記キャッチャおよび前記ベース部分と一体的に形成される、
請求項2または3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項9】
前記ロアスプリングシート、前記第1のクラッシュリブ、および前記第2のクラッシュリブのすべてが、プラスチックから一体的に形成される、
請求項2または3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項10】
前記ロアスプリングシートが、前記ベース部分上に形成される少なくとも1つのコイル位置決めリブをさらに含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のストラット型ダンパ。
【請求項11】
前記コイル位置決めリブが、前記キャッチャの内側表面と接触する部分を含む、
請求項10に記載のストラット型ダンパ。
【請求項12】
前記第2のクラッシュリブが、前記第1のクラッシュリブと異なる厚さを有する、
請求項2または3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項13】
前記第1のクラッシュリブが、第1の厚さを有する上部と、第2の厚さを有する下部とを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さより大きい、
請求項2または3に記載のストラット型ダンパ。
【請求項14】
前記衝撃吸収構造が、前記ベース部分から前記キャッチャの内壁部分まで延在する複数の衝撃吸収構造を備える、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のストラット型ダンパ。
【請求項15】
前記衝撃吸収構造が、前記ベース部分および前記壁部分を相互に接続する複数の衝撃吸収構造を備え、前記ロアスプリングシートが、キャッチャの外面上に設けられる複数のさらなる支持構造体としての補強リブをさらに備える、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のストラット型ダンパ。
【請求項16】
ストラット型ダンパであって、
少なくとも部分的にハウジングから突出するテレスコープ式ピストンロッド及びハウジングを有する緩衝装置と、
コイルスプリングと、
前記ピストンロッドの遠位端に動作可能に結合されるアッパースプリングシートと、
前記緩衝装置の前記ハウジングに動作可能に結合されロアスプリングシートとを備え、
前記アッパーおよびロアスプリングシートがその間にコイルスプリングを捕捉し、
前記ロアスプリングシートが、
前記緩衝装置の前記ハウジングを受けるための開口を有し、前記ハウジングにしっかりと固定可能であるベース部分と、
前記ベース部分から延在し、前記コイルスプリングが壊れたときに前記コイルスプリングの壊れた部分を捕らえるためのキャッチャを形成する略円周の壁部分と、を含み、
前記ストラット型ダンパはさらに、前記ロアスプリングシートのキャッチャの内面壁部分の直径より小さい外径のフロア部分を有して前記ロアスプリングシートのベース部分に配置されるプレートを含み、
前記プレートが、前記フロア部分上に形成され、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように構成される衝撃吸収構造を含み、
前記衝撃吸収構造が、
前記キャッチャの内壁面からおよび前記コイルスプリングから離れて、前記ベース部分から前記ベース部分の軸の方向に伸びて前記コイルスプリングと対向する平面部分と、
前記平面部分と前記プレートの内壁面とをつなぐ部分とを有する、ストラット型ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の懸架装置で使用されるダンパに関するものであり、より詳細にはダンパのコイルスプリングが壊れた場合に発生するエネルギーを吸収し、壊れたコイルスプリングが車両のホイールに接触する可能性を有意に減少させるように作動する方法および材料で設計されたスプリングシートを有するダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本段落の説明は、単に本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、先行技術を構成しなくてもよい。
【0003】
ストラット型懸架装置は、自動車業界でよく知られている。このような伸縮可能な懸架装置はまた、マクファーソン緩衝装置として一般に知られている。ストラット型緩衝装置アセンブリは通常、油圧ダンパを組み込み、自動車のホイールの位置決め部材の1つとして使用される。ストラット型緩衝装置アセンブリは典型的に、緩衝装置のまわりに同心円状に配設されるコイルスプリングを含む。コイルスプリングは、ストラット型緩衝装置アセンブリの頂部マウントアセンブリの一部であるアッパースプリングシートと、ストラット型緩衝装置アセンブリの緩衝装置構成要素に取り付けられるロアスプリングシートとの間で延在する。
【0004】
ロアスプリングシートは、金属またはプラスチックから作られる一体形構成要素とすることができる。プラスチック製のスプリングシートは、その金属製の相当物より重量が軽く、そのため、アセンブリ全体の重量を減少させるという理由のために、自動車製造業者には特に望ましい。ロアスプリングシートの環状の内部は、緩衝装置のアウタチューブと接続するように設計される。ロアスプリングシートは、車両のさまざまな駆動条件のもとで、コイルスプリングの正しい位置を支持して維持する。ロアスプリングシートは、石および他の道路のごみ屑による制動荷重、損耗、摩耗、変動加重、および衝撃に抵抗する。
【0005】
しかしながら、深刻な衝撃において、コイルスプリングが機能しなくなる(すなわち、壊れる)ことがある。このため、ロアスプリングシートは、壊れたスプリングを捕らえ、壊れたスプリングが車両のホイールに接触する可能性を減少させる「キャッチャ」として作用するいくつかの構造を組み込んでもよい。よって、ロアスプリングシートの構成は、ストラット型緩衝装置アセンブリの設計における非常に重要な考慮事項である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US 8939439
【文献】US 8696004
【文献】US 8616538
【文献】US 8496383
【文献】US 8348029
【文献】US 8196941
【文献】US 8109492
【文献】US 7416175
【文献】US 7090058
【文献】US 6692012
【文献】US 6412879
【文献】US 6382648
【文献】US 6155544
【文献】US 6126155
【文献】US 5788262
【文献】US 5664892
【文献】US 5553713
【文献】US 5467971
【文献】US 5454585
【文献】US 4562997
【文献】US 4462608
【文献】US 20160031282
【文献】DE 102010028290
【文献】DE 102011051403
【文献】DE 10312085
【文献】GB 2347906
【文献】EP 2960542
【文献】JP 2010116113
【文献】US 2147660
【文献】US 3857726
【文献】US 4119748
【文献】US 4366969
【文献】US 4683993
【文献】US 5620172
【文献】US 6367830
【文献】US 6398201
【文献】US 7077390
【文献】US 8382080
【文献】US 20030047399
【文献】US 20030218286
【文献】US 20040051270
【文献】US 20040074589
【文献】US 20040159993
【文献】US 20070194507
【文献】US 20100032877
【文献】US 20100230877
【文献】US 20110266765
【文献】US 20120181127
【文献】US 20130052392
【文献】US 20130147149
【文献】US 20140045400
【文献】DE 102008043527
【文献】EU 1483137
【文献】EU 567845
【文献】WO 0144549
【文献】WO 2003076234
【文献】WO 2004101909
【文献】WO 2005118263
【文献】WO 2009062764
【文献】WO 2013041254
【文献】WO 2013041255
【非特許文献】
【0007】
【文献】MATTHIJ, Paul, et al., "Tailored Fiber Placement-Mechanical Properties and Applications", Journal of Reinforced Plastics and Composites, June 1998, pages 774-786, Vol. 17, No. 9, Technomic Publishing, US.
【文献】CROTHERS, P.J., et al., "Tailored Fibre Placement to Minimise Stress Concentrations", Composites Part A: Applied Science and Manufacturing, January 1, 1997, pages 619-625, Vol. 28A, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam, NL.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プラスチックまたは複合材料の補強されたスプリングシート構成要素を設計する際の重要な課題は、プラスチックまたは複合材料から作られるスプリングシートの、鋼などの一般的な金属から作られるスプリングシート構成要素と比較した場合の、一般により小さい靭性である。そのため、スプリングシート部材、特に、キャッチャの靭性を、その重量または費用の明白な増加なしに改善することが、重要な課題であると判明している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において、本開示はストラット型ダンパに関するものである。ダンパは、少なくとも部分的にそこから突出するテレスコープ式ピストンロッドを有するハウジングを有する緩衝装置と、コイルスプリングと、アッパースプリングシートと、ロアスプリングシートとを備えてもよい。アッパースプリングシートは、ピストンロッドの遠位端に、動作可能に結合されてもよい。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングに、動作可能に結合されてもよい。アッパーおよびロアスプリングシートは、その間にコイルスプリングを捕捉する。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングを受けるための開口を有するベース部分を含み、ハウジングにしっかりと固定可能である。ロアスプリングシートはまた、コイルスプリングが壊れたときにコイルスプリングの一部を捕らえるためのキャッチャを形成するベース部分から延在する略円周の壁部分を含む。衝撃吸収構造は、キャッチャおよびベース部分の両方に隣接するロアスプリングシート上に形成され、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように構成される。
【0010】
別の態様において、本開示はストラット型ダンパに関するものである。ダンパは、少なくとも部分的にそこから突出するテレスコープ式ピストンロッドを有するハウジングを有する緩衝装置を備えてもよい。ダンパはまた、コイルスプリングと、アッパースプリングシートと、ロアスプリングシートとを備えてもよい。アッパースプリングシートは、ピストンロッドの遠位端に、動作可能に結合されてもよい。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングに、動作可能に結合されてもよく、アッパーおよびロアスプリングシートは、その間にコイルスプリングを捕捉する。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングを受けるための開口を有するベース部分を含んでもよく、ハウジングにしっかりと固定可能でもよい。ロアスプリングシートはまた、ベース部分から延在し、ベース部分と一体的に形成される略円周の壁部分を含んでもよい。略円周の壁部分は、コイルスプリングが壊れたときにコイルスプリングの一部を捕らえるためのキャッチャを形成する。ロアスプリングシートは、キャッチャおよびベース部分の両方に隣接するロアスプリングシート上に形成され、キャッチャの内壁部分から延在する、複数の円周方向に離間した衝撃吸収構造をさらに含む。各衝撃吸収構造は、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように、そして、破壊されたコイルスプリングの壊れた部分からエネルギーを吸収して放散させるように構成される。
【0011】
さらに別の態様において、本開示はストラット型ダンパに関するものである。ダンパは、少なくとも部分的にそこから突出するテレスコープ式ピストンロッドを有するハウジングを有する緩衝装置と、コイルスプリングと、アッパースプリングシートと、ロアスプリングシートとを備えてもよい。アッパースプリングシートは、ピストンロッドの遠位端に、動作可能に結合される。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングに、動作可能に結合され、アッパーおよびロアスプリングシートは、その間にコイルスプリングを捕捉する。ロアスプリングシートは、緩衝装置のハウジングを受けるための開口を有するベース部分を含んでもよく、ハウジングにしっかりと固定可能である。ロアスプリングシートはまた、ベース部分から延在し、ベース部分と一体的に形成される略円周の壁部分を含む。略円周の壁部分は、コイルスプリングが壊れたときにコイルスプリングの一部を捕らえるためのキャッチャを形成する。複数の円周方向に離間した衝撃吸収構造は、キャッチャおよびベース部分の両方に隣接するロアスプリングシート上に形成され、キャッチャの内壁部分から延在してもよい。各衝撃吸収構造は、コイルスプリングの破壊が生じた場合に潰されるように、そして、破壊されたコイルスプリングの壊れた部分からエネルギーを吸収して放散させるように構成される。各衝撃吸収構造は、ロアスプリングシートの軸心の方へ半径方向内向きに、キャッチャの内壁部分から延在する第1のクラッシュリブを含んでもよい。第1のクラッシュリブは、コイルスプリングが壊れたとき、コイルスプリングの一部からエネルギーを吸収して放散させるように構成される。各衝撃吸収構造はまた、破壊されたコイルスプリングの一部からのエネルギーの吸収および放散をさらに支援するための第2のクラッシュリブを含んでもよい。第2のクラッシュリブは、第1のクラッシュリブと一体的に形成され、ロアスプリングシートの軸心に対して略接線方向に配設されてもよい。ロアスプリングシートおよび衝撃吸収構造はまた、一体形構成要素として一体的に形成されてもよい。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、衝撃を吸収するための独立したシステムを使用することを含む。独立したシステムは、プレートのフロア部分から外方に突出する複数のリブ構造を有するプレートによって形成される。プレートは、ロアスプリングシートのキャッチャ部分に載置されるように意図される。
【0013】
本発明の他の適用領域は、本明細書の開示から明らかになるであろう。説明および特定の例は、説明のためのものであることのみ意図され、本開示の範囲を限定することは意図しないことは理解されるべきである。
【0014】
本明細書に記載される図面は、説明のみを目的とするものであり、いかなる意味においても本開示の範囲を限定することは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ダンパが、ダンパのコイルスプリングが壊れた場合に制御可能にエネルギーを吸収するための新しいキャッチャを有するスプリングシート構造を組み込む、本開示の1つの実施形態によるストラット型ダンパの斜視図である。
図2図1のダンパのロアスプリングシートの斜視図である。
図3】キャッチャおよび衝撃吸収構造をよりよく示す、ロアスプリングシートの一部の拡大図である。
図4】クラッシュリブのそれぞれ1つの厚さに対する、キャッチャの外面上の補強リブの厚さをよりよく示す、ロアスプリングシートの一部の別の拡大図である。
図5】構造の第2のクラッシュリブの厚さが構造の第1のクラッシュリブの厚さより大きい、衝撃吸収構造の別の実施形態の斜視図である。
図6】クラッシュリブが第1の厚さを有する上部と第2の厚さを有する下部とを有し、第2の厚さが第1の厚さより大きい、衝撃吸収構造の別の実施形態の斜視図である。
図7】コイル位置決めリブの一部が延在してキャッチャに接触し、それによりキャッチャの強化をさらに支援する、コイル位置決めリブの別の実施形態の斜視図である。
図8】第1および第2のクラッシュリブによって形成される複数の衝撃吸収構造が、キャッチャ内のロアスプリングシートのベース部分に適合する独立したプレート上に代わりに形成される、本開示の別の実施形態を示す側部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は本質的に単なる例示的なものであり、本開示、応用、または用途を限定することを意図しない。図面を通して、対応する参照数字は類似のまたは対応する部品および特徴を示すことは理解されるべきである。
【0017】
図1を参照すると、本開示の1つの実施形態によるストラット型ダンパ10が示される。ダンパ10は、この例において、管状体を有する緩衝装置12と、アッパースプリングシート14と、コイルスプリング16と、ロアスプリングシート18とを含む。取付けフランジ20は、その下端で、車両のホイール構成要素、典型的にステアリングナックルにダンパ10を固定することを可能にする。緩衝装置12のテレスコープ式ピストンロッド(図示せず)は典型的に、車両の本体に結合される。ロアスプリングシート18は、管状緩衝装置12の外面、ハウジング12aに固定的に取り付けられる。
【0018】
図2を参照すると、ロアスプリングシート18をより詳細に参照することができる。ロアスプリングシート18は、内側環状フランジ24の画定を支援する偏心的に位置付けられた穴22を含む。内側環状フランジ24は、緩衝装置12のハウジング12aを受けるように寸法が決められる。内側環状フランジ24は、ベース部分26から上向きに延在する。円周方向壁が、ベース部分26から垂直に延在し、キャッチャ28を形成する。ハブ部分30もベース部分26から上向きに延在し、ロアスプリングシート18へのコイルスプリング16の下端の設置を支援する。コイル位置決めリブ32、34および36も、ベース部分26から上向きに突出し、ロアスプリングシート18へのコイルスプリング16の下端の設置を支援するように形成されてもよい。
【0019】
ロアスプリングシート18は、この例において、高強度プラスチックまたは複合材料などの、非金属の軽量材料から形成されてもよい。キャッチャ28の主要な特徴は、複数の一体的に形成された、半径方向に配設された衝撃吸収構造38の介在である。この例において、衝撃吸収構造38は、平面的に見たとき(すなわち、ベース部分26の内側表面26a上でまっすぐに見下ろしたとき)、T字形構造の形態をとる。
【0020】
図3を参照すると、複数の衝撃吸収構造38をより詳細に参照することができる。各衝撃吸収構造38は、この例において、第1のクラッシュリブ40を形成する半径方向配設部分40(すなわち、ベース部分26の軸心に対して略半径方向に配設される)と、第2のクラッシュリブ42を形成する接線方向配設部分とを有する。各第1のクラッシュリブ40は好ましくは、その第2のクラッシュリブ42と一体的に形成される。
【0021】
第1のクラッシュリブ40が、キャッチャ28の内面壁部分28aだけでなく、ベース部分26の内側表面26aからも突出するため、コイルスプリング16が壊れた場合、それらはコイルスプリングの衝撃に直接さらされる。したがって、第1のクラッシュリブ40は、コイルスプリング16が壊れた場合、破壊されたコイルスプリング部分からのエネルギーを少なくとも部分的に吸収して放散させるために変形する(すなわち、部分的または実質的に潰れる)ように設計される衝撃吸収要素を形成する。第1のクラッシュリブ40は、1つの例において、好ましくは約1mm~3mmの厚さを有するが、この寸法は、コイルスプリング16の寸法および/またはそのコイルの断面厚さを含むが、それらに限定されないさまざまな要因に応じて変化してもよいことが理解されるであろう。第2のクラッシュリブ42は、コイルスプリング16の壊れた部分による衝撃を受けるときに、第1のクラッシュリブ40がベース部分26の方へあまりにも容易に「折り重なる」または崩壊することがないことを保証することをさらに支援する円周面を集合的に形成するように設計される。いくつかの例においては、第2のクラッシュリブ42のうちの1つまたは複数が、破壊されたコイルスプリングからの衝撃力のすべてまたは大部分を受けることになってもよい。次いで要約すると、第1および第2のクラッシュリブ40および42の両方が、コイルスプリング16が壊れたときに発生するエネルギーを吸収して放散させるように協調して機能する。
【0022】
図4を簡単に参照すると、本実施形態において、キャッチャ28はまた、その外面28cに形成される複数の円周方向に離間した補強リプ28bを有してもよい。本実施形態において、補強リプ28bは、一般的に、キャッチャ28およびロアスプリングシート18にさらなる構造強度を提供する。各補強リプ28bの厚さは好ましくは、各クラッシュリブ40の厚さより少なくともわずかに大きいことも気付かれるであろう。さらにまた、クラッシュリブ40および42が最初に変形し、コイルスプリング破壊現象からのエネルギーを吸収することの保証を支援するために、第1および第2のクラッシュリブ40および42のそれぞれの厚さは、好ましくは、それぞれ、キャッチャ28の厚さより薄い。補強リプ28bは、キャッチャ28が、キャッチャに大きな重量または容積を追加することなく、コイルスプリング16の壊れた部分を捕らえて、抑制する十分な強度を有することの保証を支援する。
【0023】
図5を参照すると、衝撃吸収構造38’の別の実施形態が示される。本実施形態は、上記の衝撃吸収構造38に類似しているが、構造の第1のクラッシュリブ40’より厚い第2のクラッシュリブ42’を組み込む。第1のクラッシュリブ40’を超える第2のクラッシュリブ42’の厚さの増加は、たとえば10%~100%、または、できる限りより多く、有意に変化してもよい。あるいは、第1のクラッシュリブ40’の厚さは、第2のクラッシュリブ42’の厚さより大きくなるように選択されてもよい。クラッシュリブ40’および42’のそれぞれの正確な厚さは、特定の用途の要求に最も合うように選択されてもよい。しかしながら、いくつかの用途において、図5に示されるように、第1のクラッシュリブ40’よりわずかに厚い第2のクラッシュリブ42’を提供することが望ましいことがあることが予想される。いくつかの例において、厚さの増加により、コイルスプリングが壊れた場合に、コイルスプリング16の壊れた部分の移動の吸収および抑制をさらに支援する面の面積の増加を支援してもよい。
【0024】
図6は、第1のクラッシュリブ40’’が1つの厚さの上部40a’’と、厚さの増した下部40b’’とを有する、衝撃吸収構造38’’の別の実施形態を示す。第2のクラッシュリブ42’’は、第1のクラッシュリブ40’’の上部40a’’の厚さより大きい厚さを有し、この例においては、概して、下部40b’’の厚さに従う。そのため、本実施形態は、第2のクラッシュリブ42’’が形成する表面領域面さえさらに拡張し、コイルスプリング16の壊れた部分の移動を減速させ、エネルギーの吸収を支援し、抑制する。
【0025】
図7を参照すると、コイル位置決めリブ34の別の実施形態34’が示される。コイル位置決めリブ36は、コイル位置決めリブ34’と同一の方法で同様に構築される可能性がある。コイル位置決めリブ34’は、第1の部分34a1および第2の部分34a2を有する半径方向部分34a’を含むように修正されている。第2の部分34a2は、ロアスプリングシート18の壁部分28に向けて外方へ延在する。したがって、第2の部分34a2は、キャッチャ28の補強をさらに支援する。
【0026】
図8を参照すると、本開示の別の実施形態によるプレート100が示される。プレート100は、クラッシュリブ40および42を含まないロアスプリングシート18の修正バージョンで使用されることが意図される。その代わりに、第1のクラッシュリブ102および第2のクラッシュリブ104によって形成される衝撃吸収構造が、プレート100のフロア部分106に形成される。プレート100は、スプリング16がロアスプリングシート18上に組み立てられる前に、ロアスプリングシート18のベース部分26に配置される。キャッチャ28の内面壁部分28aは、プレート100のフロア部分106の外径よりほんのわずかに大きい直径を有し、その結果、プレートはキャッチャ28の内径内にしっかりと適合する。第1および第2のクラッシュリブ102および104は一般に、プレート100のフロア部分106と一体的に形成されてもよい、上向きに突出した、T字状、リブ状の構造を形成する。任意選択的に、プレート100のフロア部分106は、コイル位置決め構造32~36がそれを通して突出することを可能にする1つまたは複数の切り抜きを含んでもよく、あるいは、コイル位置決め構造32~36が、プレート100のフロア部分106上に形成されてもよい。この構成はまた、これらの2つの構成要素が本実施形態において互いから独立しているので、ロアスプリングシート18およびプレート100の製造時に、わずかに異なる材料構成が使用されることを可能にしてもよい。
【0027】
本明細書に記載される衝撃吸収構造38のさまざまな実施形態の構成および寸法は、それらを、特定のコイルスプリング寸法、ばね定数、および他の要因に合わせるように大幅に変化させてもよいことが理解されるであろう。また、ストラット型ダンパ10が使用される車両の重量および/または種類が、衝撃吸収構造38の数および正確な構成および/または配置に影響してもよい。
【0028】
したがって、ロアスプリングシート18、および特にキャッチャ28の構成は、その重量、寸法または容積、あるいは製造コストを大きく増加させることなく、キャッチャを大きく強化する手段を形成する。重要なことに、本開示のキャッチャ28は、コイルスプリングの構成、または、ストラット型ダンパの任意の他の部分に、任意の大きな修正を必要としない。ロアスプリングシート18全体、キャッチャ28、あるいは衝撃吸収構造38、38’、または38’’は、高強度プラスチック、複合材料、または任意の他の好適に強固で軽量の材料から単一の構成要素として一体的に形成されてもよい。
【0029】
さまざまな実施形態が記載されているが、当業者は、本開示を逸脱しない範囲で行われることがある修正または変化を認識するであろう。例はさまざまな実施形態を示すが、本開示を限定することを意図しない。したがって、説明および特許請求の範囲は、関連する先行技術を考慮して必要である限定のみによって、自由に解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0030】
10 ストラット型ダンパ
12 緩衝装置
12a ハウジング
14 アッパースプリングシート
16 コイルスプリング
18 ロアスプリングシート
26 ベース部分
26a 内側表面
28 キャッチャ
28a 内面壁部分
28b 補強リプ
28c 外面
32、34、34’、36 コイル位置決めリブ
34a’ 半径方向部分
34a1 第1の部分
34a2 第2の部分
38、38’、38’’ 衝撃吸収構造
40、40’、40’’ 第1のクラッシュリブ
40a’’ 上部
40b’’ 下部
42、42’、42’’ 第2のクラッシュリブ
100 プレート
102 第1のクラッシュリブ
104 第2のクラッシュリブ
106 フロア部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8