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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】酸化銀及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20220603BHJP
   C01G 5/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C01G5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017140942
(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公開番号】P2019019038
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-03-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 高公
(72)【発明者】
【氏名】當山 真司
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-188974(JP,A)
【文献】特開2002-216750(JP,A)
【文献】特開2001-143687(JP,A)
【文献】特開2010-282832(JP,A)
【文献】特開昭57-111953(JP,A)
【文献】特開2000-195512(JP,A)
【文献】特開2004-265865(JP,A)
【文献】特開2012-235163(JP,A)
【文献】特開2010-177481(JP,A)
【文献】特開2001-172017(JP,A)
【文献】特開2001-278656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 5/00
H01M 4/54
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の形態の酸化銀を水蒸気の存在下で熱処理し、開気孔率が17%以上、嵩密度が3g/cm以上である、成形体の形態の酸化銀を製造する方法。
【請求項2】
成形体が粉体成形体である請求項記載の製造方法。
【請求項3】
成形体が酸化銀粉末のシップ成形体である請求項記載の製造方法。
【請求項4】
加圧又は飽和水蒸気圧下、120℃以上で熱処理する請求項のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な酸化銀などに関する。
【背景技術】
【0002】
酸化銀は、様々な産業分野において使用されうる材料である。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒径5~30μmの単粒子からなり、嵩密度1.4g/cm以上、比表面積(BET値)0.04~0.5m/gであって、解砕量15%以下の酸化銀が電池用として好適であること、嵩密度の上限が2.5g/cm程度であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3269427号公報(特許請求の範囲、段落[0001][014]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規な酸化銀を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、酸化銀の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の方法を採用すること等により、新規な酸化銀(例えば、比較的高い開気孔率や嵩密度を有する酸化銀)が得られること等を見出し、本発明を完成した。
【0008】
なお、前記特許文献1では、酸化銀粒子をアルカリ溶液中で加熱加圧処理することで、酸化銀粒子をアルカリ溶液中で粒成長させ、酸化銀粒子を得ることを目的としている。
このような方法は、酸化銀粒子の粒成長を伴うものであり、得られる粒子は、緻密なものとなる。実際、特許文献1では、開気孔を形成させること、ましてや開気孔率を高めることを全く想定していない。
【0009】
すなわち、本発明の酸化銀は、例えば、開気孔率が17%以上の酸化銀であってもよい。
本発明の酸化銀は、また、嵩密度が3g/cm以上の酸化銀であってもよい。
【0010】
本発明の酸化銀は、回折角33°付近のピーク強度I33と、回折角44°付近のピーク強度I44との強度比I44/I33が、0.1以下の酸化銀であってもよい。
【0011】
代表的な本発明の酸化銀には、
開気孔率が18~25%であり、
嵩密度が4~7g/cmであり、
回折角33°付近のピーク強度I33と、回折角44°付近のピーク強度I44との強度比I44/I33が、0.05以下である、酸化銀などが含まれる。
【0012】
本発明の酸化銀は、成形品、例えば、粉体成形体(粉体成形品)であってもよい。
【0013】
本発明の酸化銀は、冷却材、電極材及び触媒から選択された少なくとも1種の用途に使用するための酸化銀であってもよい。
【0014】
本発明には、酸化銀(原料酸化銀)を水蒸気の存在下(又は水蒸気中)で熱処理し、酸化銀を製造する方法が含まれる。このような方法で製造される酸化銀は、上記酸化銀(例えば、開気孔率が17%以上の酸化銀)であってもよい。
【0015】
このような方法では、酸化銀の成形体[特に、酸化銀の粉体成形体(例えば、酸化銀粉末のシップ(冷間等方圧加圧)成形体)など]を熱処理してもよい。
【0016】
具体的には、本発明の方法は、原料酸化銀を成形[例えば、酸化銀を粉体成形(シップ成形)]する成形工程、得られた原料酸化銀の成形体を熱処理する熱処理工程とで構成してもよい。
【0017】
本発明の方法において、加圧又は飽和水蒸気圧下、120℃以上で熱処理してもよい。
【0018】
本発明には、前記酸化銀(例えば、開気孔率が17%以上の酸化銀)[又はその還元物(すなわち銀)]を含む材料が含まれる。このような材料は、冷却材、電極材及び触媒材料から選択された少なくとも1種の用途に使用するための材料であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、新規な酸化銀(酸化銀(I)、AgO)を提供できる。
また、本発明では、酸化銀の新規な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例において、熱処理前の酸化銀のSEM写真である。
図2】実施例1で得られた酸化銀のSEM写真である。
図3】実施例2で得られた酸化銀のSEM写真である。
図4】実施例3で得られた酸化銀のSEM写真である。
図5】実施例4で得られた酸化銀のSEM写真である。
図6】実施例5で得られた酸化銀のSEM写真である。
図7】参考例1で得られた酸化銀のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[酸化銀]
本発明の酸化銀は、特定の物性(特性)を充足する。本発明の酸化銀が充足する物性は、少なくとも1つであればよく、2以上の物性を充足してもよい。なお、このような物性を充足する酸化銀は、例えば、後述の方法により製造しうる。
【0022】
酸化銀は気孔(又は空孔、特に開気孔)を有していてもよい。なお、気孔は、その全部又は一部が貫通孔であってもよい。開気孔を有する酸化銀の開気孔率は、例えば、10%以上(例えば、12%以上)の範囲から選択してもよく、15%以上(例えば、16%以上、16.5%以上)、好ましくは17%以上(例えば、17.5%以上)、さらに好ましくは18%以上(例えば、19%以上、20%以上など)であってもよい。
【0023】
酸化銀の開気孔率の上限値は、特に限定されないが、例えば、50%、45%、40%、35%、30%、25%、23%、22%などであってもよい。なお、範囲の上限値と下限値とを適宜組み合わせて範囲を設定してもよい(例えば、18~30%など。以下同じ)。
【0024】
このような開気孔率(比較的多孔質)とすることで、比較的比表面積を大きくできる。このような大きい比表面積により、外部との接触点を増大できる。また、酸化銀(成形体)の内部まで媒体(ガスなど)を拡散や透過しやすくなる。そのため、冷却材、触媒、電極材料などの用途において好適に使用しうる材料となりうる。
【0025】
なお、開気孔率の測定方法は特に限定されないが、例えば、開気孔量(P)は、酸化銀(成形体)の乾燥重量(W)、および水中での重量(W)、含水させた際の重量(W)から、下記の式により求めてもよい。
P(%)=100×(W-W)/(W-W
【0026】
なお、開気孔の大きさは、特に限定されず、例えば、孔径(気孔径)で1~10μm程度であってもよい。
【0027】
酸化銀の嵩密度は、例えば、2g/cm以上の範囲から選択してもよく、2.5g/cm以上(例えば、2.7g/cm以上)、好ましくは3g/cm以上(例えば、3.5g/cm以上)、さらに好ましくは4g/cm以上(例えば、4.5g/cm以上)であってもよく、5g/cm以上(例えば、5.2g/cm以上、5.3g/cm以上、5.4g/cm以上など)であってもよい。
【0028】
酸化銀の嵩密度の上限値は、特に限定されないが、例えば、7g/cm、6.5g/cm、6g/cm、5.8g/cm、5.7g/cmなどであってもよい。
【0029】
比較的大きい嵩密度とすることで、熱伝導性を上昇させやすくなり、蓄冷材用途等において好適に使用しうる材料となりうる。
【0030】
なお、嵩密度の測定方法は特に限定されないが、例えば、アルキメデス法により測定してもよい。
【0031】
酸化銀の理論密度比は、例えば、0.45以上の範囲から選択してもよく、0.5以上(例えば、0.55以上)、好ましくは0.6以上(例えば、0.65以上)、さらに好ましくは0.7以上(例えば、0.73以上、0.75以上、0.76以上、0.77以上など)であってもよい。
【0032】
酸化銀の理論密度比の上限値は、例えば、0.9、0.88、0.85、0.84、0.83、0.82、0.81、0.8、0.79などであってもよい。
【0033】
なお、理論密度比は、酸化銀の理論密度(理論最大密度)d(約7.2g/cm)に対する嵩密度(実際の密度)d1の比(d1/d)である。すなわち、理論密度比は、嵩密度を理論密度で除することで算出できる。
【0034】
酸化銀は、銀(不純物としての銀)を含んでいてもよい。このように銀を含む酸化銀において、銀の割合は、酸化銀の用途等において適宜選択できるが、本発明では、比較的銀の割合が低い酸化銀を効率よく提供しうる。
【0035】
このような銀の割合は、X線回折(XRD)により、酸化銀及び銀に対応するピークの強度比として見積もることができる。例えば、酸化銀のX線回折パターンにおいて、酸化銀に対応する回折角33°付近のピーク強度I33と、銀に対応する回折角44°付近のピーク強度I44との強度比I44/I33は、0.3以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.1以下程度であってもよく、0.08以下、0.05以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下などであってもよい。
【0036】
なお、I44/I33の下限値は、特に限定されず、0、0.00001、0.0001、0.0003、0.0005、0.0007、0.001、0.0015などであってもよい。
【0037】
後述のように、本発明の酸化銀には、成形体の形態、ひいては比較的大きなサイズを有する形態の酸化銀が含まれるが、一般的に、このような大きなサイズの酸化銀は、酸化銀の熱安定性などに起因してか成形過程において銀が含まれやすい。しかし、本発明では、意外なことに、成形体や大きなサイズの酸化銀であっても、高純度の(さらには高純度と上記のような高気孔率や高嵩密度とを両立しうる)酸化銀を提供しうる。
【0038】
なお、後述するように、本発明の酸化銀を銀に変換(還元)して使用することも可能である。このような場合には、必ずしも酸化銀を上記のような高純度とする必要はない。
【0039】
酸化銀の形態は、特に限定されないが、通常、複数の粒子を含む形態(二次粒子、凝集体、凝集粒子)であってもよい。
【0040】
特に、本発明の酸化銀は成形体(酸化銀成形体)の形態であってもよい。例えば、酸化銀は、粉体成形体(粉体成形品)の形態であってもよい。このような成形体は、例えば、酸化銀の粉体(又は粉末)を、加圧下で成形することで得られる。
【0041】
また、複数の粒子を含む形態や成形体の形態の酸化銀において、各粒子は融着又は焼結されていてもよい。
【0042】
このような成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択しうる。例えば、粒状(粒子状)、ペレット状などであってもよい。
【0043】
なお、成形体の大きさは、用途や成形法などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、径は30μm以上、40μm以上、50μm以上などであってもよい。より具体的な態様では、粒状の成形体(例えば、冷却材用途の粒状成形体など)の径は、50μm~2mm程度であってもよい。また、ペレット状の成形体の径(直径、最大径)は、100μm以上(例えば、500μm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上など)であってもよい。
【0044】
[酸化銀の製造方法]
本発明には、酸化銀の製造方法も含まれる。このような製造方法により得られる酸化銀は、上記のような物性を充足してもよく、しなくてもよい。特に、本発明の製造方法は、上記のような酸化銀を効率よく製造する方法として好適である。
【0045】
本発明の製造方法は、酸化銀を水蒸気(又は水蒸気の存在下)で熱処理する工程(熱処理工程)を少なくとも含む。
【0046】
熱処理に供する酸化銀(原料酸化銀)としては、特に限定されず、合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
【0047】
例えば、原料酸化銀は、金属銀及び/又は銀塩(硝酸銀など)と、アルカリ成分(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)とを反応させることにより得てもよい。
【0048】
なお、アルカリ成分の割合は、特に限定されないが、確実に酸化銀(AgO)を形成させるため、金属銀及び/又は銀塩を構成する銀の当量以上[例えば、1モル当量以上(例えば、1.05モル当量以上、1.1モル当量以上、1.15モル当量以上など)]としてもよい。
【0049】
原料酸化銀は、銀などの他の成分を含んでいてもよいが、通常、実質的に酸化銀のみで構成してもよい。
【0050】
原料酸化銀の形態(形状)は、特に限定されず、粉末(粉状、粉体状、粒状)であってもよく、成形体(原料成形体)であってもよい。代表的には、原料酸化銀(熱処理に供する酸化銀)は、粉体成形体(粉体成形品)であってもよい。
【0051】
このような原料成形体は、酸化銀(原料酸化銀)を適当な方法により成形することで得ることができる。
【0052】
例えば、粉体成形体は、原料酸化銀の粉末を、加圧成形することにより得てもよい。加圧成形(法)としては、特に限定されないが、シップ(CIP)成形(冷間等方圧加圧成形)を好適に使用してもよい。
【0053】
なお、加圧成形前に、原料酸化銀の粉末を仮成形してもよい。
【0054】
粉末状の原料酸化銀の粒径は、特に限定されないが、例えば、平均粒径で1~10μm、好ましくは2~8μm、さらに好ましくは3~5μm程度であってもよい。
【0055】
また、原料酸化銀[例えば、粉末状の原料酸化銀(又は粉体成形体)]は、適当なバインダー成分を含んでいてもよいが、本発明ではこのようなバインダー成分を含まない原料酸化銀を好適に使用してもよい。
【0056】
原料成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択しうる。例えば、粒状(粒子状)、ペレット状などであってもよい。
【0057】
熱処理工程では、前記のように、原料酸化銀を水蒸気で熱処理する。このように水蒸気で熱処理することで、前記のような物性(例えば、高開気孔率、高嵩密度など)を有する酸化銀を効率よく得やすい。
また、熱処理工程では、本来、酸化銀が分解して銀へ還元する温度であっても、酸化銀の状態を保持したまま熱処理を行うことができる。
【0058】
熱処理は、水蒸気の存在下で行うことができれば、その温度は特に限定されず、例えば、70℃以上(例えば、80℃以上)程度の範囲から選択でき、100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であってもよく、160℃以上(例えば、180℃以上など)とすることもできる。
なお、温度の上限値は、特に限定されず、例えば、500℃、450℃、400℃、350℃、300℃、270℃、250℃、230℃などであってもよい。
【0059】
また、熱処理は、常圧下又は加圧下で行ってもよく、特に加圧下(加圧水蒸気、過熱水蒸気、水熱条件下)で行ってもよい。加圧下で行う場合、圧力(反応器内圧力、内圧)としては、温度にもよるが、例えば、0.12MPa以上、好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であってもよく、0.3MPa以上などであってもよい。
【0060】
加圧下で行う場合、圧力の上限値は、特に限定されないが、例えば、22MPa、20MPaなどであってもよい。前記のように比較的高い開気孔率や嵩密度を有する酸化銀を効率良く得るためには、極端な高圧を作用させることなく熱処理してもよい。
【0061】
熱処理は、加圧又は飽和水蒸気圧下で行ってもよく、非飽和水蒸気圧下で行ってもよい。
【0062】
なお、熱処理は、水蒸気の存在下で行うことができれば、水以外の成分の存在下で行ってもよい。例えば、水以外の成分(他の成分)を含む水溶液の蒸気中で、熱処理を行うこともできる。
このような他の成分としては、例えば、アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物など)などが含まれる。
【0063】
ただし、このような他の成分の存在下で熱処理することで、酸化銀(特に酸化銀成形体)を不均一化しやすい傾向があるようである(例えば、部位によって組織が密に成長するなど)。そのため、他の成分(例えば、アルカリ成分)の存在下で熱処理する場合でも、このような影響が生じない程度で他の成分を存在させるのが好ましく、特に、実質的に水蒸気のみで熱処理を行うのが好ましい。
【0064】
熱処理(工程)を行う容器(反応器)は、特に限定されず、例えば、オートクレーブなどの加熱(及び加圧)可能な容器を使用してもよい。
【0065】
熱処理において、水蒸気の量は、特に限定されず、飽和状態又は非飽和状態であるか等に応じて適宜選択でき、例えば、水として容器内体積(系内の体積)の0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは2体積%以上などであってもよく、5体積%以上、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上などであってもよい。
なお、上限値としては、特に限定されないが、例えば、水として容器内体積(系内の体積)の90体積%、80体積%、70体積%、60体積%、50体積%などであってもよい。
【0066】
熱処理時間は、原料酸化銀の形状や熱処理条件などに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、10分以上(例えば、30分以上)、好ましくは1時間以上(例えば、1.5時間以上)、さらに好ましくは2時間以上(例えば、2.5時間以上)などであってもよい。
【0067】
なお、熱処理後の酸化銀は、必要に応じて、洗浄処理してもよい。
【0068】
上記のようにして、酸化銀が得られる。特に、原料酸化銀が成形体である場合、当該成形体の形態(形状)を反映した酸化銀が得られる。
【0069】
[酸化銀の用途]
本発明の酸化銀の用途は、特に限定されず、種々の用途[例えば、蓄冷材又は冷却材(冷凍機用の蓄冷材など)、電極材、触媒など]に使用できる。
【0070】
特に、本発明の酸化銀は、比較的大きい開気孔率や嵩密度を有している(さらには高純度で酸化銀を含んでいる)場合が多く、このような物性を生かした用途に好適に使用しうる。
【0071】
また、本発明の酸化銀は、そのまま使用する場合のみならず、銀に還元することで使用することもできる。
【0072】
例えば、触媒用途などでは、本発明の酸化銀をそのままないし酸化銀を還元させた銀の状態で触媒として使用することもできる。
【0073】
銀に還元しても、元の物性(比較的大きい開気孔率や嵩密度)や形状を保持しているため、このような物性や形状を有する銀原料として、本発明の酸化銀を使用することもできる。
【実施例
【0074】
次に、実験例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0075】
なお、各種物性・特性は以下のように測定又は評価した。
【0076】
(開気孔率)
開気孔量(P)は酸化銀(成形体)の乾燥重量(W)、および水中での重量(W)、含水させた際の重量(W)から、下記の式により求めた。
P(%)=100×(W-W)/(W-W
(嵩密度)
アルキメデス法により測定した。
(理論密度比)
アルキメデス法により測定した嵩密度と、酸化銀の理論密度から計算した。
(銀量及び結晶相)
X線回折(XRD)により、酸化銀の主ピーク(33°付近)強度I33と、銀の2番目に高いピーク(44°付近)強度I44との強度比I44/I33を測定した。
結晶相は、I44/I33の値が0.1以下であるとき、酸化銀の単一相と、0.1超であるとき酸化銀及び銀を含む相と決定した。
【0077】
(実施例1~5、参考例1)
濃度5.0質量%硝酸銀水溶液200gに、濃度0.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液707.5g(反応当量の1.2モル倍)を約5分かけて混合し、15分間放置(エージング)した。得られた混合物をデカンテーションにより中性になるまで洗浄後、得られたスラリーを100℃で5時間処理(エージング)し、酸化銀の粉末(平均粒径約4μm)を得た。
【0078】
得られた酸化銀粉末を、一軸加圧により仮成形した後、冷間等方圧加圧(CIP、圧力150MPa、時間4分)により、ペレット状(直径約16mm、厚さ約3mm)に成形した。
【0079】
得られたペレットを、溶液と接しないように試料台を設けたテフロン内張オートクレーブに入れ、表1に示した条件で熱処理を行った。熱処理後、希硝酸(濃度3.0質量%)にて30秒間洗浄し、ペレット状の酸化銀を得た。なお、実施例1~5で得られた酸化銀(の表面)には、4~5μm程度の空孔を確認できた。
【0080】
下記表に条件及び熱処理後の酸化銀の物性をまとめたものを示す。
【0081】
【表1】
【0082】
また、熱処理前のペレット、実施例1~5及び参考例1で得られた酸化銀の微細構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。SEM写真(5000倍)を図1~7に示す。
【0083】
表1の結果及び図からも明らかなように、実施例では、高い開気孔率等を有する酸化銀が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、新規な酸化銀を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7