(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】空調システムの吹出口ユニット及び空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/068 20060101AFI20220603BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20220603BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20220603BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
F24F13/068 B
F24F11/56
F24F11/74
F24F13/02 C
(21)【出願番号】P 2018015328
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福森 幹太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎介
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-039147(JP,U)
【文献】特開2002-243234(JP,A)
【文献】特開平03-186144(JP,A)
【文献】特開2014-126313(JP,A)
【文献】特開2008-071142(JP,A)
【文献】実開昭63-134340(JP,U)
【文献】特開平11-257713(JP,A)
【文献】特開平11-248196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 13/068
F24F 7/10
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気を送り出す空調機と、該空調機から送り出された空調空気を対象区域に向かって導く給気ダクトと、
対象区域の天井の上方に位置する空間であり前記給気ダクトの下流側に設置された給気チャンバと、該給気チャンバに送り込まれた空調空気を対象区域の熱負荷に応じて対象区域へ送り出すよう構成された空調システムに設置され、
上部開口と下部開口を
備えてグラスウールまたはロックウールで構成され互いに向かい合う屋根状の斜面として構成された上面を有した筐体と、
向かい合う2つの前記上面に各々設けられた前記上部開口に設けた
複数のファンと、前記下部開口に設けた吹出部とを備え、
縦横の野縁として天井下地を構成する天井構造材により形成されるグリッドを備えた天井の前記グリッドに設置可能に構成され、
複数の前記ファンにより前記給気チャンバ内の空調空気を前記筐体に引き込んで、
前記筐体の内部に向かって斜め下方に送り込み互いに衝突させて下方に向かわせて前記吹出部に対して下向きの風として送り前記吹出部から送り出すよう構成されている
ことを特徴とする空調システムの吹出口ユニット。
【請求項2】
全体の重量を1.9~2.0kgに抑えることで、
別途吊具等を設けなくても、天井構造材を支える吊具で天井構造材ごと支持可能であることを特徴とする
請求項1に記載の空調システムの吹出口ユニット。
【請求項3】
前記ファンの動作は、電力線通信により制御されることを特徴とする
請求項1または2に記載の空調システムの吹出口ユニット。
【請求項4】
前記ファンのオフ時に、前記筐体内の流路を閉塞するダンパを備えたことを特徴とする
請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システムの吹出口ユニット。
【請求項5】
前記ダンパの動作は、電力線通信により制御されることを特徴とする請求項
4に記載の空調システムの吹出口ユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の空調システムの吹出口ユニットを適用したことを特徴とする空調システム。
【請求項7】
前記吹出口ユニットは、各々が一個の前記グリッド内に設置可能に構成されていること
を特徴とする
請求項6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記吹出口ユニットのファン毎に紐付けられ、該ファンの動作を個別に制御可能な操作装置を備えていることを特徴とする
請求項6または7に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムにおいて対象区域に空調空気を供給する吹出口ユニット、及びこれを用いた空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビルなど業務や商業用途の建物では、保健空調として空調対象空間の温度(室温)を快適に一定に保つ空調システムが設置されるが、その際、変風量単一ダクト方式の空調システムが採用されることが多い。変風量単一ダクト方式の空調システムは、定風量単一ダクト方式と比較して室温追従性能が高く、また、送風量が対象ゾーンの熱負荷により絞られるため、搬送エネルギー面でも有利である。
【0003】
すなわち、変風量単一ダクト方式の空調システムでは、後述するロードリセット制御が働かない場合、給気温度を一定にし、室内側の熱負荷変動には給気風量を可変にして対応する。室内における設定温度や熱負荷に応じ、ゾーン毎に給気風量を変えることで、ゾーンごとの熱負荷変動に対応するようにしている。このようにすると、基本的には風量のみを変化させることで比例的に熱量処理を制御できるので、ゾーン毎にばらばらな熱処理に対し、簡単な装置構成で緻密に対応できるという点で優れている。
図10、
図11は従来における一般的な変風量単一ダクト方式の空調システムの一例を示しており、オフィスビルの部屋等である対象区域Aに向かい、対象区域A外の空調機1から給気ダクト2を通して空調空気3が導かれるようになっている。給気ダクト2は、空調機1から延びるメインダクト4と、該メインダクト4から対象区域Aに向かって分岐する分岐ダクト5と、該分岐ダクト5から対象区域Aに設置された吹出口6へ分岐する末端ダクト7とを備えて構成されている。
【0004】
分岐ダクト5における末端ダクト7への分岐点より上流側の位置には変風量ユニット8が設置されており、ここでメインダクト4から分岐ダクト5より先に流れ込む空調空気3の量を調整できるようになっている。こうして、メインダクト4を流通する空調空気3は、分岐ダクト5の変風量ユニット8にて風量を調整されたうえで、末端ダクト7の終端にあたる吹出口6に供給される。変風量ユニット8は、VAV(Variable Air Volume)等と称される装置であり、風速センサにより自己の風量を計測する仕組みを備えたダンパユニットである。
【0005】
風量制御の観点からは、対象区域Aに設置された吹出口6を、分岐ダクト5ないし変風量ユニット8毎に区分することができる。ここに図示した例では、空調機1の受け持つ対象区域A全体に計18の吹出口6を設置しており、このうち、
図11中の左に図示された6個の吹出口6(左群)における空調空気3の風量を分岐ダクト5aに設置された変風量ユニット8aが、中央に図示された6個の吹出口6(中央)における空調空気3の風量を分岐ダクト5bに設置された変風量ユニット8bが、右側に図示された6個の吹出口6(右群)における空調空気3の風量を分岐ダクト5cに設置された変風量ユニット8cが、それぞれ制御するようになっている。すなわち、対象区域Aのうち、左群の吹出口6の設置された領域を制御領域A1、中央群の吹出口6の設置された領域を制御領域A2、右群の吹出口6の設置された領域を制御領域A3と称するとすると、制御領域A1が分岐ダクト5aの受け持ちゾーン、制御領域A2が分岐ダクト5bの受け持ちゾーン、制御領域A3が分岐ダクト5cの受け持ちゾーンである。そして、変風量ユニット8aが制御領域A1の風量制御を、変風量ユニット8bが制御領域A2の風量制御を、変風量ユニット8cが制御領域A3の風量制御を、それぞれ担当することになる。尚、通常、1台の変風量ユニットが担当する制御領域の面積は50m2を超えるが、この数値は変風量ユニットの性能その他によって変動し得る。
【0006】
図10に示す如く、対象区域Aにおける下方の位置(ここでは、床下)には還気口9が設けられており、天井10に設置された吹出口6から供給された空調空気3は、床11に開口した吸込口12を通って床下の空間に抜け、還気口9から還気ダクト13を通って還気14として空調機1へ戻されるようになっている。
【0007】
対象区域A1~A3の適宜位置(ここでは、床下)にはそれぞれ域内温度センサ15,16,17が備えられており、それぞれの位置で室内熱負荷を処理した後の空気温度を計測するようになっている。各域内温度センサ15,16,17の計測値は、温度信号15a,16a,17aとして制御装置18に設けられた温度調整回路(図示せず)へ入力されるようになっている。前記温度調整回路は、温度信号15a,16a,17aに基づき、各変風量ユニット8a,8b,8cに対し制御信号8dを入力するようになっている。尚、ここでは図示の都合上、各変風量ユニット8a,8b,8cへの制御信号8dをまとめて表示しているが、実際には各変風量ユニット8a,8b,8cへは互いに異なる信号レベルにてそれぞれ別々に制御信号8dが出力される。
【0008】
つまり、各変風量ユニット8a,8b,8cは、各分岐ダクト5a,5b,5cの受け持ちゾーン(制御領域A1~A3)に一対一で対応しており、各ゾーンに設置された域内温度センサ15,16,17の計測値に基づいて風量を制御される。各変風量ユニット8a,8b,8cに対しては、前記温度調整回路(図示せず)から、各対象ゾーンにおける設定温度と計測温度との偏差に基づき、各々の設定風量が入力される。こうして、各分岐ダクト5の受け持ちゾーン毎に、変動する熱負荷が処理される。
また、還気ダクト13の途中には還気温度センサ19が設置され、還気14の温度を計測するようになっている。検出された温度値は、温度信号19aとして制御装置18に設けられた風量調整回路(図示せず)へ入力されるようになっている。前記風量調整回路は、特定の条件下において、各変風量ユニット8a,8b,8cにおけるダンパ開度が特定の範囲の値になった場合に、温度信号19aの示す値に応じ、空調機1の送風機(図示せず)に対して制御信号1aを入力する。空調機1の前記送風機は、制御信号1aに基づいて風量が変更されるようになっている。
【0009】
制御装置18は、前記温度調整回路(図示せず)を分岐ダクト5の数だけ(ここでは3つ)備え、また前記風量調整回路1つを備えているほか、ロードリセット制御回路(図示せず)を備えている。このロードリセット制御回路は、前記温度調整回路のすべてが変風量ユニット8のダンパ開度を絞るような制御を行っているにもかかわらず還気14の温度が過剰に冷え、あるいは熱くなっている場合に、空調機1に対してロードリセット制御を行うよう、制御信号1aを入力する回路である。ロードリセット制御は、必要最小限の換気量を確保する等の目的で行われる制御であり、例えば、空調機1を構成する冷水コイルや加熱コイルの熱媒流量を制御する制御弁に対し、各変風量ユニット8へ供給される給気が冷え過ぎている場合には設定給気温度を上げるように指示が入力され、熱すぎる場合には設定給気温度を下げるように指示が入力される。
【0010】
このように、空調機1の熱負荷や風量、変風量ユニット8を通過する空調空気3の風量は、制御装置18から入力される制御信号1a,8dにより制御されるようになっている。
【0011】
尚、この種の空調システムに関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述の如き従来の空調システムでは、変風量ユニット8毎に風量を制御するようになっており、制御領域A1,A2,A3内で吹出口6毎に風量を操作することはできない。したがって、例えば、制御領域A1の一部に高負荷の領域がある場合、該高負荷の領域においては十分な風量が得られない可能性がある。特に、域内温度センサ15の設置位置が高負荷の領域から離れている場合、域内温度センサ15の検出値によって変風量ユニット8aにおける風量が決定され、これにより6個の吹出口6全体の風量が決まるため、前記高負荷の領域においては好適な室温を得ることができない。また逆に、域内温度センサ15の設置位置が高負荷の領域の直近である場合は、該高負荷の領域における要求風量に合わせて吹出口6の群(ここでは、6個の吹出口)全体の風量が決まるため、前記高負荷の領域以外においては空調空気3の供給量が多すぎてしまい、やはり好適な室温を得ることができない。このように、制御領域毎に風量の決まる従来の空調システムでは、対象区域内における負荷の偏りの結果、均一な室温を保つことが困難であった。
また、上述の如き従来の空調システムでは、天井裏に複雑な配管構成による給気ダクト2を配置するため、該給気ダクト2の設置に多大な材料費や手間が生じる。また、分岐ダクト5や末端ダクト7に支持具を設ける必要があり、こうした支持具の設置にも費用や手間が発生する。
【0014】
さらに、例えば対象区域A内におけるパーテーション(図示せず)の位置を変えたり、排熱の大きい機器類の位置を移動させるなど、対象区域A内の状況が変化する際には、天井10における吹出口6の位置を変更する必要が生じることが想定されるが、こうした場合に吹出口6を移動させることが難しいという問題もある。吹出口6を動かすには、付随する末端ダクト7や、場合によっては分岐ダクト5の配管構成等をも変更する必要があり、配管の大規模な組み替え作業が発生してしまうからである。また、吹出口6や分岐ダクト5、末端ダクト7等に支持具を取り付けている場合には、こうした支持具の取り外しや再施工も行わなくてはならない。
【0015】
このように、従来の空調システムにおいては、空調空気の供給に係る配管構成や、その組み替えに大きなコストや手間がかかってしまっていた。
【0016】
本発明は、斯かる実情に鑑み、空調空気の供給に係る配管構成を簡素化し得る空調システムの吹出口ユニット及び空調システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、空調空気を送り出す空調機と、該空調機から送り出された空調空気を対象区域に向かって導く給気ダクトと、対象区域の天井の上方に位置する空間であり前記給気ダクトの下流側に設置された給気チャンバと、該給気チャンバに送り込まれた空調空気を対象区域の熱負荷に応じて対象区域へ送り出すよう構成された空調システムに設置され、
上部開口と下部開口を備えてグラスウールまたはロックウールで構成され互いに向かい合う屋根状の斜面として構成された上面を有した筐体と、向かい合う2つの前記上面に各々設けられた前記上部開口に設けた複数のファンと、前記下部開口に設けた吹出部とを備え、
縦横の野縁として天井下地を構成する天井構造材により形成されるグリッドを備えた天井の前記グリッドに設置可能に構成され、
複数の前記ファンにより前記給気チャンバ内の空調空気を前記筐体に引き込んで、前記筐体の内部に向かって斜め下方に送り込み互いに衝突させて下方に向かわせて前記吹出部に対して下向きの風として送り前記吹出部から送り出すよう構成されている
ことを特徴とする空調システムの吹出口ユニットにかかるものである。
【0018】
本発明の空調システムの吹出口ユニットにおいて、全体の重量を1.9~2.0kgに抑えることで、
別途吊具等を設けなくても、天井構造材を支える吊具で天井構造材ごと支持可能にすることができる。
【0021】
本発明の空調システムの吹出口ユニットにおいて、前記ファンの動作は、電力線通信により制御することができる。
【0022】
本発明の空調システムの吹出口ユニットは、前記ファンのオフ時に、前記筐体内の流路を閉塞するダンパを備えることができる。
【0023】
本発明の空調システムの吹出口ユニットにおいて、前記ダンパの動作は、電力線通信により制御することができる。
【0024】
また、本発明は、上述の空調システムの吹出口ユニットを適用したことを特徴とする空調システムにかかるものである。
【0025】
本発明の空調システムにおいて、前記吹出口ユニットは、各々が一個の前記グリッド内に設置可能に構成することができる。
【0026】
本発明の空調システムは、前記吹出口ユニットのファン毎に紐付けられ、該ファンの動作を個別に制御可能な操作装置を備えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の空調システムの吹出口ユニット及び空調システムによれば、空調空気の供給に係る配管構成を簡素化し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施による空調システムの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施例における給気ダクトや吹出口の配置を示す概略平面図である。
【
図3】本発明の実施例における天井及び吹出口ユニットの形態を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施による吹出口ユニットの形態の一例を示す断面図であり、
図3のIV-IV矢視相当図である。
【
図5】本発明の実施による吹出口ユニットの斜め上方から視た形態を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施による吹出口ユニットの斜め下方から視た形態を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施による吹出口ユニットの静音性能に関する試験の結果を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施による吹出口ユニットから供給される空調空気の到達距離に関する試験の結果を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施による吹出口ユニットの形態の別の一例を示す断面図である。
【
図10】従来の空調システムの一例を示す概略図である。
【
図11】従来の空調システムにおける給気ダクトや吹出口の配置の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1~
図6は本発明の実施による空調システム、及び空調システムの吹出口ユニットの形態の一例を示しており、図中、
図10、
図11と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0031】
本実施例による空調システムの基本的な構成は
図10、
図11に示す従来例と共通しており、
図1、
図2に示す如く、空調機1から送り出される空調空気3が給気ダクト2を通して対象区域Aに向かって導かれるようになっている。ただし、本実施例の場合、給気ダクト2としては空調機1から延びるメインダクト4と、該メインダクト4から対象区域Aに向かって分岐する分岐ダクト5のみを備えており、上記従来例における末端ダクト7(
図10、
図11参照)に相当する配管は設けていない。また、上記従来例では対象区域Aに計3本の分岐ダクト5を備えていたが、本実施例では対象区域A全体に対して1本の分岐ダクト5のみを設置している。
【0032】
そして、本実施例においては、末端ダクト7(
図10、
図11参照)を設置する代わりに、給気ダクト2の下流側にあたる天井10の上方の空間を給気チャンバCとして設定し、該給気チャンバCから天井10に設けた吹出口20を通して対象区域A内へ空調空気3を供給するようにしている。給気チャンバCに設定された天井10の上方の空間は、全体が給気圧に耐えられるよう設計されており、特に給気圧が掛かっても漏れが発生してはならない部位に関しては、空調空気3が給気チャンバCの外へ漏れ出ないよう構成されている。分岐ダクト5には、対象区域Aの手前の位置に変風量ユニット8が備えられており、分岐ダクト5を通って給気チャンバCへ送り込まれる空調空気3の量を操作できるようになっている。
【0033】
こうした給気ダクト2の構成の違いに加え、本実施例においては、吹出口20がそれぞれ吹出部20aの上方にファン20bを備えた吹出口ユニットとして構成されており、ファン20bの動作により、給気チャンバC内の空調空気3を吹出部20aから対象区域Aに送り出すようになっている。尚、標準的には、吹出口ユニット20により送り出される風量は例えば200m3/h程度であり、対象区域Aにおいては、およそ10m2毎に1台の吹出口ユニット20を設置すると良い。ただし、こうした吹出口ユニット20の仕様や風量設定、配置数、配置密度等は適宜変更し得る。
【0034】
対象区域Aにおける下方の位置(ここでは床下)には還気口9が設けられており、天井10に設置された吹出口ユニット20から供給された空調空気3は、床11に開口した吸込口12を通って床下の空間に抜け、還気口9から還気ダクト13を通って還気14として空調機1へ戻される。
【0035】
還気ダクト13の途中には還気温度センサ19が設置され、還気14の温度が温度信号19aとして制御装置18の温度調整回路(図示せず)へ入力される。前記温度調整回路では、還気温度センサ19から検出値として入力される温度信号19aの実測値と温度調整回路で設定された設定温度との偏差を算出し、温度偏差に応じた制御信号8dとして各変風量ユニット8へ設定風量値を入力する。変風量ユニット8では、変風量ユニット8自身が備える風速センサにより、逐一風速計測値から導かれる実測風量と上記設定風量値との偏差に応じて変風量ユニット8内のダンパ開度を制御する。こうして、制御信号8dに基づき、変風量ユニット8における風量が制御される。さらに、吹出口ユニット20に備えたファン20bは、後述するように制御装置18から入力される制御信号201により制御される。
【0036】
本実施例における天井10、及び吹出口ユニット20の構成を
図3~
図6に示す。本実施例の場合、天井10はグリッド式のシステム天井として構成されており、
図3に示す如く、野縁である天井構造材10aを縦横に組んでグリッド10bを形成し、該グリッド10b毎に、パネル10cや吹出口ユニット20、後述する照明器具10eやその他の天井設備機器を嵌め込むように設置できるようになっている。天井構造材10aは、例えばTバー等の名称でシステム天井用の部材として販売されている建築材であり、吊具10dにより上方から吊り下げられて天井下地を構成し、グリッド10bに設置されたパネル10cやその他の器具類ごと天井10全体を支持するようになっている。尚、グリッド10bにパネル10c以外の器具類を設置する場合、該器具類の重量が十分に小さければ該器具類を天井構造材10aごと吊具10dにより支持すれば良いが、前記器具類の重量がある程度以上大きければ、該器具類を支持するため、該器具類を直接吊り下げる図示しない吊具等を別途備える必要がある。
【0037】
吹出口ユニット20は、各々が一個のグリッド10b内に設置可能に構成されており、吹出部20aの上方にファン20bを備えた吹出口ユニット20の全体を天井構造材10aに支持できるようになっている。具体的には、
図3~
図6に示す如く、箱型の筐体20cの上部にファン20bを、下部に吹出部20aを備えて、給気チャンバC内の空調空気3(
図1参照)を筐体20cの上方からファン20bにより引き込み、吹出部20aから下方へ送り出すようになっている。筐体20cは、吹出部20aの上方にファン20bを支持すると共に、ファン20bから空調空気3を引き込み、且つ送り出す空間を形成する部材であり、軽量且つ難燃性の素材、例えばグラスウールやロックウールにより形成される。筐体20cは、全体に五角柱を横倒しにした形状を有し、平面視では長方形、側面視では水平な底辺と、鉛直な側方の2辺の上方に2つの斜辺を有する五角形をなしている。長方形状の底面は対象区域A(
図1参照)に面した下部開口20dとなっており、該下部開口20dを覆うように吹出部20aが取り付けられる。
【0038】
吹出部20aは、
図4~
図6に示す如く、筐体20cの底面の下部開口20dに対象区域Aに面するように設置される配風用の部材である。吹出部20aには、筐体20cの底面に沿って、下方へ向かうほど外側へ広がるよう角度を付した複数の整流板20eを配列しており、
図4に示す如く、該整流板20eに対して上方から空調空気3を吹き付けることで、整流板20eに衝突した空調空気3を四方に広げながら下方の対象区域A(
図1参照)に向かって送り出すようになっている。
【0039】
吹出部20aの底面の四方を囲む側面はそれぞれ鉛直面をなしており、該側面の上方には、互いに屋根状に向かい合う斜面をなす2つの上面が形成されている。該2つの上面には、それぞれ上部開口20fが形成されており、該上部開口20fにそれぞれ2つのファン20bが嵌め込まれる形で設置される。尚、
図6では説明の都合上、ファン20bやその周辺の取付構造については片側のみ図示している。
【0040】
こうした配置は、限られた大きさの吹出口ユニット20において十分な風量を確保するための構成である。すなわち、吹出口ユニット20をグリッド10bに設置することを考えた場合、吹出口ユニット20全体の寸法がグリッド10bの寸法により制約を受けることになるが、ここで例えば筐体20cの上面を本実施例の如く2面の斜面とせず、水平な1面として構成すると、ファンを設置するための面積が限られ、設置可能なファン台数が極端に減って十分な風量を得ることが難しくなる。また、限られた面積で風量を確保しようとすればインペラ回転数の高い大容量のファンを採用することにもなり、静音設計上の問題を抱えてしまう可能性がある。そこで、本実施例の如く筐体20cの上面を斜面として構成し、それぞれに小型のファン20bを2台ずつ設置することで、複数のファン20bにより十分な風量を得ながら、静粛性にも優れた仕様や運転状態(羽根の枚数やインペラ回転数)を実現することができる。
【0041】
また、この際、各ファン20bは吹出部20aに対して傾斜しているが、2つの斜面にファン20b同士が互いに向かい合うように配置されることで、
図4に示す如く、該ファン20bから筐体20cの内部に向かって斜め下方に送り込まれた空調空気3が互いに衝突して下方に向かい、吹出部20aに対しては下向きの風が送られることになる。尚、1台の吹出口ユニット20に装備するファン20bの数や、1つの上面に対して取り付けるファン20bの数はここに図示した例に限定されず、筐体20cの寸法やファン20bの性能その他の条件に合わせて適宜増減することができる。
【0042】
筐体20cは、上述の如くグラスウールやロックウール等により構成される。グラスウールやロックウールは、所定の厚みを備えた板状に形成された製品が販売されているので、そうした板状の素材を適宜切断し、粘着テープ等を用いて
図3~
図6に示す如き形状に組み合わせることで、筐体20cを形成することができる。板状のグラスウールやロックウールは、ここに示す如き形状の筐体20cを形成した場合、ファン20bや筐体20c自体の重量を支持し、筐体20cの形状を維持するのに十分な強度を有している。
【0043】
筐体20cを形成する際、各側面は下部開口20dに吹出部20aを嵌め込めるよう、底面が吹出部20aに合った寸法となるように形成する。また、上面にファン20bを取り付けるにあたっては、2台のファン20bの寸法に合わせて上部開口20fを設け、該上部開口20fにファン20bを嵌め込むように取り付ける。その際、例えば上部開口20fの辺に沿って、
図4~
図6に示す如き取付板20gを固定する。取付板20gは、上部開口20fの四辺に沿い、筐体20cの上面と直交する面をなして浅い筒型を形成する側面20hと、該側面20hの上端から外側に張り出す上側フランジ部20iと、側面20hの下端から内側に張り出す下側フランジ部20jとを備えている。側面20hの外寸は上部開口20fの内寸に合致し、側面20hの内寸は2台のファン20bの外寸に合致するように形成する。そして、上部開口20fに対して側面20hを挿し込むと共に、上側フランジ部20iを筐体20cの上面に対して粘着テープ等で固定する。さらに、側面20hにファン20bを外側から嵌め込み、下側フランジ部20jに対し、ファン20bをボルト等の締結具20kにより固定すれば良い。尚、ファン20bの筐体20cへの取付けに係る構造は、上述の如き取付板20gに限定されるものではない。ファン20bを上部開口20fに対し好適に取付け可能な限りにおいて、ファン20bの取付構造としてはここに説明した以外に種々の構造を採用し得る。
【0044】
このような構成の吹出口ユニット20によれば、空調システムの吹出口として必要な風量、及び静音性能の両方を満足することが可能である。本願出願人の実施した試験によれば、本実施例の如き吹出口ユニット20においてファン20bを作動させたところ、50%の出力では吹出部20aにおいて199m3/hの風量が確認された。
【0045】
また、
図7は本実施例の如き吹出口ユニット20に関する静音試験の結果を示している。ファン20bを50%の出力で作動させた場合において、吹出部20aの真下1mの位置での音量はNC28となり、十分な静音性能が確認された。
【0046】
さらに、吹出口ユニット20から供給される気流の到達距離についても試験を行った。
図8は、吹出部20aにおける風量が223m
3/hである場合の、吹出口ユニット20周辺における気流の分布を示しており、図中の曲線は、風速が0.5m/sである地点を示している。このように、吹出部20aに備えた整流板20e(
図4、
図5参照)により、ファン20bからの風が四方に放出され、十分な距離(吹出部20aの長辺に直交する向きに2,100mm、短辺に直行する向きに1,100mm)まで空調空気3が到達している。このように、本実施例の吹出口ユニット20によれば、空調空気3の到達距離や風量分布に関し、一般的なシステム天井の吹出口用に市販されている製品と同等の性能が得られる。よって、吹出口ユニット20の吹出口としての性能は従来の製品と同様と考えて問題なく、配置計画等については従来と同じように決定すれば良い。
【0047】
そして、上述の如き吹出口ユニット20は、
図3に示す如く、各々が一個のグリッド10b内に設置可能に構成されており、筐体20cに吹出部20aやファン20bを備えた吹出口ユニット20の全体をグリッド10b内に配置し、天井構造材10aに支持できるようになっている。
【0048】
吹出部20aとしては、例えばアネモスタット(登録商標)やディフューザー等と呼称される製品を流用することができる。
図3に図示した天井10の如きグリッド式のシステム天井の場合、グリッド10bの寸法は600mm四方あるいは640mm四方に規格化されており、該グリッド10bに嵌め込むパネル10cやその他の器具類についても、規格に適合した製品が種々販売されている。そこで、グリッド10bの規格に適合した寸法を有し、システム天井用の空調の吹出口として販売されている製品(「アネモスタット」等として販売されている製品)の吹出部20aを用い、該吹出部20aに合わせて上述の如く筐体20cを製造し、吹出口ユニット20として組み立てれば良い。
【0049】
このようにすると、吹出口ユニット20をグリッド10bに支持するにあたって簡便である。システム天井用の空調の吹出口としては、照明器具10eと共にグリッド10b内に設置するように設計されたものが販売されており、以下に説明するように、これを吹出部20aとして使用することで、照明器具10eや吹出口ユニット20をグリッド10bに対して上方から嵌め込むようにして、吹出口ユニット20全体を天井構造材10aに支持することができるのである。
【0050】
照明器具10eは、長辺の寸法がグリッド10bの一辺に合致しており、一対の照明器具10eが、一個のグリッド10bの向かい合う二辺にそれぞれ沿うように配置される。各照明器具10eは、吹出口ユニット20に接する辺以外の三辺を、グリッド10bを構成する天井構造材10aに支持される。
【0051】
一方、吹出口ユニット20の吹出部20aは、短辺の寸法がグリッド10bの一辺と、照明器具10eの短辺の2倍との差に合致するように設計されており、一個のグリッド10b内に支持された一対の照明器具10eの間に吹出口ユニット20を配置することができる。ここで、照明器具10eの吹出口ユニット20に接する辺には、下面に吹出口ユニット20側へ張り出す板状の張出部10fを備えている。張出部10fは、吹出口ユニット20の長辺に沿い、該長辺に直交する2本の天井構造材10a同士の間に張り渡すように配置される。2台の照明器具10eに挟まれた吹出口ユニット20は、吹出部20aの2つの長辺を両側の照明器具10eの張出部10fに載置される形で、グリッド10b内に支持される。
【0052】
吹出口ユニット20の寸法は、要求される吹出し風量によって異なる。ここに示した例では、吹出口ユニット20の吹出部20aは、長辺の寸法がグリッド10bの一辺より小さくなっており、このため、グリッド10bに照明器具10eと吹出口ユニット20を設置すると吹出口ユニット20の両脇に隙間が生じるが、該隙間は例えば
図3に示す如き設備パネル10gを嵌め込んで埋めることができる。尚、吹出口ユニット20をグリッド10bに設置するにあたり、採用し得る構成はここで説明した例に限定されない。例えば、吹出口ユニット20の割り当て吹出し風量によっては、吹出部20aを長辺の寸法がグリッド10bの一辺と一致するように設計とする場合があるが、その場合、設備パネル10gは省略することができる。また、照明器具10eを介さず、吹出口ユニット20を直接天井構造材10aに支持するようにしても良い。また、照明器具10eの代わりに別の設備パネルを設置しても良い。吹出口ユニット20をグリッド10bに好適に支持することができれば、吹出口ユニット20やその周辺の構成は適宜変更し得る。
【0053】
ここで、本実施例の吹出口ユニット20は重量を十分に軽く構成することができるため、
図3に示す如く天井構造材10aに支持するにあたって簡便である。本実施例の吹出口ユニット20は、従来例の吹出口6(
図10、
図11参照)と比較してファン20bの分だけ重量が加算されると言えるが、一方で末端ダクト7(
図10、
図11参照)を廃し、給気チャンバCから吹出口ユニット20を通じて空調空気3を供給する方式を採用している。よって、吹出口ユニット20は従来例における末端ダクト7の如き配管を接続しない分、ファン20bを備えても全体としての重量を小さく抑えることができるのである。加えて、上述の如く筐体20cをグラスウールやロックウールのような軽量の部材により構成することで、吹出部20aやファン20bを含めた吹出口ユニット20全体の重量を1.9~2.0kg程度に抑えることができる。システム天井用の吹出口用のユニットとして一般的に販売されている製品は、重量がおおむね1.6kg程度であるので、1.9~2.0kgは十分に軽量である。この程度の重量であれば、吹出口ユニット20と照明器具10eを載置しても、天井構造材10aの許容たわみ量に対し、1.6倍以上の安全率を確保することができる。よって、吹出口ユニット20に関し別途吊具等を設けなくとも、天井構造材10aを支える吊具10dで十分に吹出口ユニット20を天井構造材10aごと安全に支持することができる。仮に、吹出口ユニット20の重量が天井構造材10aを支える吊具10dだけでは支持できない程度に大きい場合には、吹出口ユニット20自体に別途吊具等の支持具を備える必要があるが、一般的な規格のシステム天井である天井10に本実施例の如き吹出口ユニット20を設置する場合には、吹出口ユニット20を含む天井10の支持には天井構造材10aに備えた吊具10dで十分であり、吹出口ユニット20自体に取り付ける支持具は必要ない。
【0054】
このように、本実施例においては、空調システムの吹出口として各々がファン20bを備えた吹出口ユニット20を採用し、且つ該吹出口ユニット20をグリッド式のシステム天井である天井10のグリッド10bに配置すると共に、上述の如く給気チャンバCから空調空気3を供給する方式を採用している。これにより、上記従来例の如き末端ダクト7(
図10、
図11参照)を廃して配管の設置に係る材料費や作業の手間を削減するほか、吹出口ユニット20の配置に関して高い自由度を実現している。
【0055】
すなわち、末端ダクト7により吹出口6まで空調空気3を導く従来例の方式(
図10、
図11参照)では、吹出口6の配置を変更しようとすれば合わせて末端ダクト7の配置まで変更せざるを得ないが、本実施例では天井10における吹出口ユニット20の位置を動かすだけで良く、配管類に手を加える必要はない。しかも、上述の如く十分に軽量な吹出口ユニット20であれば、該吹出口ユニット20を支持するにあたって吊具10d(
図3参照)以外に別途吊具等を用いなくとも良いため、例えば単に吹出口ユニット20や照明器具10eと、パネル10bの位置を入れ替えるだけで配置の変更が完了する。
【0056】
このため、対象区域A内で例えばパーテーション(図示せず)等の配置が変更された場合には、該パーテーションの位置に合わせて吹出口ユニット20の設置位置を調整するといったことが容易に行える。また、例えば対象区域A内において排熱を発する機器類の位置を変更するなど、負荷の高い領域に変動があった場合には、該負荷の高い領域の周辺における吹出口ユニット20の配置を密に変更するといった対応も可能である。
【0057】
また、本実施例の如く給気チャンバCにより空調空気3を供給する方式を採用した場合、上述の如く末端ダクト7(
図10、
図11参照)を省略することができるほか、メインダクト4や分岐ダクト5に必要な長さも短くなる。これにより、給気ダクト2の全長が短くなって該給気ダクト2における圧力損失が小さくなると共に、吹出口20における圧力損失も小さくなり、空調機1に要求される空調空気3の搬送のための動力が低減されるという省エネルギー効果も見込める。
【0058】
さらに、本実施例の場合、吹出口20毎にファン20bを備えた構成により、吹出口20における風量を、室内である対象区域Aからファン20b毎に個別に制御することも可能である。
図1に示す如く、ファン20bの動作は、制御装置18から各々入力される制御信号20lにより、運転のオンオフや風量を個別に制御されるようになっており、その制御信号20lは、対象区域A内に配置された操作装置21から制御装置18に入力される操作信号21aに基づいてファン20bに入力される。この際、ファン20bの動作は、例えば1台のファン20b毎に1台の操作装置21を紐付け、特定の吹出口ユニット20におけるファン20bの動作を特定の操作装置21により操作するにしても良いし、また例えば、1台の操作装置21により複数あるいは対象区域Aにおける全ての吹出口ユニット20におけるファン20bの動作を操作するようにしても良い。また、複数の操作装置21により同じ吹出口ユニット20のファン20bを操作できるようにしても良い。
【0059】
あるいは、各操作装置21に温度センサと温度設定器を内蔵すると共に、ファン20bに変風量機構を設けても良い。この場合、各操作装置21に備えた前記温度センサの検出値、および前記温度設定器の設定値を制御装置18内の個別風量制御回路(図示せず)に入力する。前記個別風量制御回路では、設定温度信号と温度センサの計測信号との温度偏差に基づいて各吹出口ユニット20のファン20bにおける目標風量を算出し、ファン20bの変風量機構に制御信号20dを入力し、風量を制御する。こうした方式は、操作装置21が対象区域A内に多数設置されている場合に特に有効である。
【0060】
操作装置21としては、一般的な空調機に使用されるようなコントローラを設けても良いし、例えば対象区域A内の在室者に割り当てられたPCやスマートフォン、タブレットのような情報端末装置を利用することもできる。
【0061】
ここで、
図1では制御装置18として1つのブロックを図示しているが、実際の空調システムにおいては、制御装置18を例えば空調機1の制御を行う制御装置と、ファン20の制御を行う制御装置とに分けて備えても良い。また、操作装置21として情報端末装置を利用する場合、操作信号の入力はネットワークを介して行うようにしても良い。
【0062】
こうして、制御装置18では、操作装置21から入力される操作信号21aに応じ、各吹出口ユニット20のファン20bを操作できるようになっている。空調機1の熱負荷は、対象区域Aにおける設定温度や還気14の温度に応じて制御されると共に、空調機1における風量は、対象区域Aに備えた吹出口ユニット20におけるファン20bの稼働台数、もしくは風量の合計により決定される。また、変風量ユニット8の風量は、下流の吹出口ユニット20における風量の合計に基づき決定される。
【0063】
このように空調システムを構成すれば、吹出口ユニット20のファン20bの風量を個別に操作することで、対象区域A内における負荷の偏り等に対応することができる。
図10、
図11に示す従来の空調システムでは、変風量ユニット8に対応した領域毎に吹出口6における風量を全体制御していたため、対象区域A内に局所的に負荷の偏り等があった場合には均一な室内温度を保つことが困難であった。一方、本実施例においては、吹出口ユニット20毎に風量を個別に操作することができるため、例えば対象区域A内の一部に排熱の大きい機器が設置されている等、高負荷の領域があった場合には、該高負荷の領域付近に位置する吹出口ユニット20についてのみ風量を大きくし、他の吹出口ユニット20については風量を小さくまたはオフにすることで、高負荷の領域と、それ以外の領域との両方について好適な風量により空調空気3を供給し、室温の均一化を図ることができる。
【0064】
また、対象区域A内に人がいる場合には、各人が操作装置21を用いて近くの吹出口ユニット20の風量を操作することにより、それぞれにとって快適な室温を得ることもできる。このように、本実施例の空調システムでは、対象区域A内の状況に合わせた局所的な風量操作が可能となっている。
【0065】
さらに、各ファン20bのオンオフを切り替えることで、対象区域Aの空調に関して吹出口ユニット20毎に省エネルギーを図ることもできる。例えば、対象区域A内の一部にのみ人がいる場合には、必ずしも対象区域Aの全域に対して空調空気3を供給する必要はなく、人のいる領域にのみ供給すれば十分である場合も想定できるが、本実施例によれば、各ファン20bのオンオフを個別に切り替えることができるので、必要な領域にのみ空調空気3を供給し、不要な領域への供給は停止して、空調に係るエネルギーの浪費を防ぐことができる。
【0066】
こうした省エネルギー効果を具体的に実現する策としては、例えば付近における人の有無に応じ、吹出口ユニット20におけるファン20bのオンオフを自動的に切り替えるようにすることができる。例えば、対象区域Aの各所に人感センサを設置し、人が離席した際には近くの吹出口ユニット20のファン20bを停止しても良いし、また、操作装置21から特定の吹出口ユニット20に対し最後に操作があった後、一定時間が経過した場合に該吹出口ユニット20のファン20bを停止するタイマー機能を備えても良い。後者を採用する場合、もしファン20bを停止した時に対象区域A内に人がいれば、ファン20bの停止に気がついて操作装置21からファン20bを作動させる操作を行うので、特に問題は生じない。あるいは、ある時刻からある時刻までの間だけファン20bを動作させるようなスケジュール機能により、各ファン20bのオンオフを制御しても良い。
【0067】
このように対象区域Aから人が操作装置21を用いて吹出口ユニット20における風量を制御することを前提とする場合、上記従来例の如き域内温度センサ15,16,17(
図10、
図11参照)は必ずしも必要ない。域内温度センサによって対象区域A内の状態を監視する代わりに人が監視し、各吹出口ユニット20の要求風量を直接決定することができるからである。ただし、本実施例の如き空調システムにおいても、操作装置21による操作に加えて別途域内温度センサを備えるようにしても良い。
【0068】
吹出口ユニット20には、例えば
図9に示す如く、ファン20bの下面にダンパ20mを備え、ファン20bのオン時にはダンパ20mを開き、オフ時にはダンパ20mを閉じるようにしても良い。このようにすると、ファン20bのオフ時には吹出口ユニット20の上部開口20fが閉塞されることになり、対象区域A内の空調空気3が筐体20c内を通って給気チャンバCへ抜ける漏気を防止することができる。よって、対象区域Aが特に漏気を嫌うような場所である場合に有効である。ダンパ20mの開閉動作は、ファン20bと同様に制御装置18からの制御信号により制御すれば良い。尚、ここではダンパ20mを上部開口20fを閉塞可能な位置に取り付けた場合を例示したが、ダンパ20mの取付位置はこれに限定されず、例えば下部開口20dを閉塞するよう、ダンパ20mを吹出部20aの直上の位置に取り付けても良い。このほか、ファン20bのオフ時に筐体20c内の流路を閉塞することができれば、ダンパ20mの取付位置はどこでも良い。
【0069】
制御装置18においては、吹出口ユニット20の風量やオンオフを変更した際、ファン20bの稼働台数または風量の合計に基づき、空調機1から送り出す空調空気3の量を決定する。また、変風量ユニット8における風量は下流におけるファン20bの合計風量と同等とし、給気チャンバC内に空調空気3を充満させ、対象区域Aにおけるスムーズな空調を確保する。
【0070】
尚、ここでは操作装置21から操作信号21aを制御装置18に入力し、該制御装置18において操作信号21aに基づき吹出口ユニット20に制御信号20lを入力する場合を例に説明したが、このほかに、例えば操作装置21から吹出口ユニット20に対し制御信号を直接入力するよう構成することも可能である。操作装置21への操作入力により、吹出口ユニット20における風量が制御できればどのような構成であっても良い。
【0071】
また、吹出口ユニット20に対する制御信号20lの入力は、無線あるいは有線のいずれの方式を用いて行っても良く、種々の方式を採用し得るが、特に好適には、吹出口ユニット20に電力を供給するための図示しない電源ラインを介した電力線通信によって行うことができる。電力線通信は、吹出口ユニット20のファン20bに供給されるAC100Vなどの交流電源に信号を重畳させて通信する技術であり、装置としては、ファンモータを制御し運転するファンコントローラ部、信号を処理する電力線通信ユニット、通信データを絶縁するブロッキングフィルタ(同一電源系統に接続される他の機器に影響を及ぼさないよう設置される)、電力線通信インターフェース、といった機器類を備えている。重畳する信号に低い周波数帯域(100~400kHz程度)を利用すると、伝送速度をある程度速くすることができ、他の電子精密機器から漏洩する電波の影響も少なく、電力の波形ともうまく重畳できるうえ、信号(制御信号20d)の分離もしやすい。
【0072】
このようにすると、無線通信用の装置を吹出口ユニット20に別途設ける必要がなく、また、電源ライン以外に通信用の配線等を設置する必要もないので、吹出口ユニット20の構成や、吹出口ユニット20や制御装置18の間の配線構成を簡素なものとすることができ、後述するように吹出口ユニット20の配置上の自由度の確保にも資する。吹出口ユニット20に付随する配線類を電源ケーブルのみとすることができるため、吹出口ユニット20の配置の設計や変更にあたって複雑な配線を行う必要がなく、最低限の手間で済む。尚、
図9に示す如く吹出口ユニット20にダンパ20mを備える場合も、該ダンパ20mに対する制御信号の入力を電力線通信により行っても良い。
【0073】
こうして、制御装置18では、操作装置21から入力される操作信号21aに応じ、吹出口ユニット20のファン20bを操作できるようになっている。
また、空調機1における送風量や熱処理量は、対象区域Aに設置された全吹出口ユニット20の総給気風量や、対象区域Aにおける設定温度や還気14の温度に応じて制御される。すなわち、還気14は、対象区域Aにおいて熱を回収した後の空調空気であるが、この還気14の設定温度と、還気温度センサ19から温度信号19aとして取得される実測温度との偏差により、空調機1において供給される熱量が制御される。空調機1の送風機における風量は、対象区域Aに備えた吹出口ユニット20におけるファン20bの稼働台数、あるいは風量の合計といった条件によって決定される。制御装置18では、これらの値に応じ、空調機1の送風ファンに備えた変風量装置(インバータ等)に制御信号1aを入力する。また、変風量ユニット8の風量は、上述の如く制御装置18の温度調整回路(図示せず)において温度信号19aの検出値により算出される設定風量と実測風量との偏差に基づき制御されるほか、下流の吹出口ユニット20における風量の合計に基づき決定される。
【0074】
また、制御装置18は、前記温度調整回路(図示せず)と前記個別風量調整回路(図示せず)のほか、ロードリセット制御回路(図示せず)を備えている。前記ロードリセット回路では、必要最小限の換気量を確保する等の目的で、冷水コイルや加熱コイルの熱媒流量を制御する制御弁に対し、各変風量ユニット8へ供給される給気が冷え過ぎている場合には設定給気温度を上げ、また熱すぎる場合には設定給気温度を下げるといった制御が行われる。
【0075】
また、ここでは説明の便宜上、対象区域A及び分岐ダクト5や変風量ユニット8をそれぞれ1ずつ図示しているが、一基の空調機1に係る対象区域Aや分岐ダクト5、変風量ユニット8等の数はこれより多くても良いことは勿論である。また、対象区域Aあたりの分岐ダクト5や変風量ユニット8、吹出口ユニット20等の数についても、対象区域Aの大きさや要求される空調性能その他の条件に応じて適宜変更し得る。
【0076】
以上のように、上記本実施例の空調システムの吹出口ユニット20は、空調空気3を送り出す空調機1と、該空調機1から送り出された空調空気3を対象区域Aに向かって導く給気ダクト2と、該給気ダクト2の下流側に設置された給気チャンバCとを備え、該給気チャンバCに送り込まれた空調空気3を対象区域Aの熱負荷に応じて対象区域Aへ送り出すよう構成された空調システムに設置され、上部開口と下部開口を備えた筐体と、前記上部開口に設けたファンと、前記下部開口に設けた吹出部とを備え、前記ファンにより給気チャンバC内の空調空気3を前記筐体に引き込んで前記吹出部から送り出すよう構成されている。末端ダクト7(
図10、
図11参照)に相当する配管を不要とすると共に、該配管の設置に必要な吊具等も不要とし、配管の設置に係る材料費や作業の手間を削減することができる。また、吹出口ユニット20の配置に関して高い自由度を確保することができる。
【0077】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20において、筐体20cは、互いに向かい合う屋根状の斜面として構成された上面を有し、ファン20bは、前記上面に設けられた上部開口20fに設置されているので、限られた大きさの吹出口ユニット20において十分な風量を確保することができる。
【0078】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20は、縦横の野縁として天井下地を構成する天井構造材10aにより形成されるグリッド10bを備えた天井10のグリッド10bに設置可能に構成されているので、吹出口ユニット20の配置に関してさらに高い自由度を確保することができる。
【0079】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20において、筐体20cは、グラスウールまたはロックウールで構成されているので、吹出口ユニット20全体の重量を軽量に抑えることができる。
【0080】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20において、ファン20bの動作は、電力線通信により制御することができ、このようにすれば、吹出口ユニット20の配置の設計や変更にあたり、配線に係る手間を抑えることができる。
【0081】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20は、ファン20bのオフ時に、筐体20c内の流路を閉塞するダンパ20mを備えることができ、このようにすれば、対象区域A内の空調空気3が筐体20c内を通って給気チャンバCへ抜ける漏気を防止することができる。
【0082】
本実施例の空調システムの吹出口ユニット20において、ダンパ20mの動作は、電力線通信により制御することができる。
【0083】
また、本実施例は、上述の空調システムの吹出口ユニット20を適用した空調システムにかかるものである。
【0084】
本実施例の空調システムにおいて、給気チャンバCは、対象区域Aの天井10の上方に位置する空間であり、天井10は、縦横の野縁として天井下地を構成する天井構造材10aによりグリッド10bを形成し、吹出口ユニット20は、各々が一個のグリッド内10bに設置可能に構成されているので、吹出口ユニット20の配置に関してさらに高い自由度を確保することができる。
【0085】
本実施例の空調システムは、前記吹出口ユニットのファン毎に紐付けられ、該ファンの動作を個別に制御可能な操作装置を備えているので、対象区域A内の状況に合わせた局所的な風量操作が可能である。
【0086】
したがって、上記本実施例によれば、空調空気の供給に係る配管構成を簡素化し得る。
【0087】
尚、本発明の空調システムの吹出口ユニット及び空調システムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1 空調機
2 給気ダクト
3 空調空気
10 天井
10a 天井構造材
10b グリッド
20 吹出口ユニット
20a 吹出部
20b ファン
20c 筐体
20d 下部開口
20f 上部開口
20m ダンパ
A 対象区域
C 給気チャンバ