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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】スライディングサッシの断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/22 20060101AFI20220603BHJP
   E06B 1/04 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
E06B7/22 B
E06B1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018030237
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019143416
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】畑谷 賢吾
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-70029(JP,A)
【文献】特開2016-69830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠に外障子の上框を案内する上枠外レールを備えたスライディングサッシの断熱構造であって、
前記上枠と前記上框との間に上枠用外樹脂カバーを設け、その上枠用外樹脂カバーには、下端部が前記外障子の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を前記上枠外レールよりも屋内側における前記上枠と前記上框との間において見込み方向に任意の間隔を空けて複数有することによって断熱用空間を形成する外障子用断熱部材が設けられていることを特徴とするスライディングサッシの断熱構造。
【請求項2】
上枠に内障子の上框を案内する上枠内レールを備えたスライディングサッシの断熱構造であって、
前記上枠と前記上框との間に上枠用内樹脂カバーを設け、その上枠用内樹脂カバーには、下端部が前記内障子の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を前記上枠内レールよりも屋内側における前記上枠と前記上框との間において見込み方向に任意の間隔を空けて複数有することによって断熱用空間を形成する内障子用断熱部材が設けられていることを特徴とするスライディングサッシの断熱構造。
【請求項3】
請求項1記載のスライディングサッシの断熱構造において、
前記外障子用断熱部材は、弾性変形可能なことを特徴とするスライディングサッシの断熱構造。
【請求項4】
請求項2記載のスライディングサッシの断熱構造において、
前記内障子用断熱部材は、弾性変形可能なことを特徴とするスライディングサッシの断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシ枠内に建て込まれた障子をスライド移動して開閉するスライディングサッシの断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外障子および内障子が引違いに移動して開閉する引違いサッシの上側には、外障子の上框を案内する上枠外レールと、内障子の上框を案内する上枠内レールとが設けられている(特許文献1参照。)。この引違い窓の構造では、上枠で冷やされた冷気が外障子および内障子の上框に伝わらず、かつ、外障子および内障子をけんどん作業にてサッシ枠に建て込むことができるように、上枠と上框との間に一定の空間を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-138761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の引違いサッシの断熱構造では、上枠と上框との間に一定の空間を確保しているため、外障子および内障子の閉塞時、冬季等においては屋外の外気に触れている上枠によって冷やされた冷気が上枠と上框との間の空間を通って室内側まで伝わり、断熱性能が低下したり、結露が発生し易くなる一方、夏季等においては冷房効率が悪化するという問題がある。
【0005】
そのため、上枠と上框との間の一定の空間に断熱材を充填することも考えられるが、充填した断熱材によって外障子および内障子をサッシ枠に建て込む際のけんどん作業や、外障子および内障子の走行に不具合を与えるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上枠用樹脂カバー下側と障子上側との間に一定の空間を確保している場合でも、室内外を確実に断熱して冷暖房効率を向上させ、冬季等における室内の結露を防止できると共に、サッシ枠に障子をけんどん式により容易に建て込むことができるスライディングサッシの断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るスライディングサッシの断熱構造は、上枠に外障子の上框を案内する上枠外レールを備えたスライディングサッシの断熱構造であって、前記上枠と前記上框との間に上枠用外樹脂カバーを設け、その上枠用外樹脂カバーには、下端部が前記外障子の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を前記上枠外レールよりも屋内側における前記上枠と前記上框との間において見込み方向に任意の間隔を空けて複数有することによって断熱用空間を形成する外障子用断熱部材が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係るスライディングサッシの断熱構造は、上枠に内障子の上框を案内する上枠内レールを備えたスライディングサッシの断熱構造であって、前記上枠と前記上框との間に上枠用内樹脂カバーを設け、その上枠用内樹脂カバーには、下端部が前記内障子の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を前記上枠内レールよりも屋内側における前記上枠と前記上框との間において見込み方向に任意の間隔を空けて複数有することによって断熱用空間を形成する内障子用断熱部材が設けられていることも特徴とする。
また本発明に係るスライディングサッシの断熱構造は、前記外障子用断熱部材は、弾性変形可能なことも特徴とする。
また本発明に係るスライディングサッシの断熱構造は、前記内障子用断熱部材は、弾性変形可能なことも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造では、上枠と障子の上框との間に上枠用樹脂カバーを設け、その上枠用樹脂カバーには、下端部が障子の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を見込み方向に任意の間隔を空けて複数有する障子用断熱部材を設けたため、上枠用樹脂カバー下側と障子上側との間に一定の空間を確保している場合でも、障子用断熱部材によって室内外を確実に断熱して冬季等における結露を防止できると共に、冷暖房効率を向上させることができる。
また、障子用断熱部材は垂下片部を見込み方向に任意の間隔を開けて複数有するので、障子をけんどん式で建て込む際、障子の上框が当接した場合でも、弾性変形し易いので、サッシ枠に障子をけんどん式により容易に建て込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態のスライディングサッシの室内側(内観)を示す正面図である。
図2】本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造の特徴部分の断面構造を示す部分断面図である。
図3図1におけるA-A線断面図である。
図4図1におけるB-B線断面図である。
図5】本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造の上枠を見上げた状態を示す平面図である。
図6】本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造の上枠の斜視図である。
図7】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造を構成する外障子用断熱部材および内障子用断熱部材の斜視図、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造について、図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態はあくまで本発明の一例であり、本発明が下記に説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
本発明に係る実施形態のスライディングサッシの断熱構造が適用される引違いサッシ1は、例えば、図1に示すように、上枠2、下枠3および左右の縦枠4,5により四周枠組みしたサッシ枠の中に外障子6と内障子7を引違いに納めたもので、閉塞時には室内側から見て左側に外障子6、右側に内障子7が位置するように構成されている。
【0012】
<外障子6、内障子7>
外障子6および内障子7は、それぞれ、図1図4に示すように、アルミ等の軽量金属製の上框61,71、戸先框62,72、召合框63,73、下框64,74との間に、二重ガラス65a,65b,75a,75bを嵌めて構成される。
【0013】
(上框61,71)
上框61,71の上部には、それぞれ、後述する上枠外レール21aおよび上枠内レール21bを案内するためのレール案内用凹部61a,71aが設けられている一方、上框61,71の下部には、それぞれ、二重ガラス65a,65b、75a,75bの上端部が収容されるガラス収容用凹部61b,71bが設けられている。
【0014】
そして上框61,71のレール案内用凹部61a,71aの屋外側上端部および屋内側上端部には、それぞれ、図3図4等に示すように、熱可塑性エラストマー(TPE)やゴム等の軟質部材から形成された気密部材66,76を嵌めるための気密部材嵌合用凹部61a1,61a2、71a1,71a2が形成されている。
【0015】
尚、ガラス収容用凹部61b,71bには、図3図4等に示すように、スペーサー65c,75cを介して張り合わされた二重ガラス65a,65b、75a,75bの上端部がシーリング材65d,75d等を介して設けられている。
【0016】
また、上框61,71の屋内側には、それぞれ、上框61,71が冷えた際に屋内側に冷気が遮断されるように外障子樹脂カバー61cと内障子樹脂カバー71cが設けられている。
【0017】
(外障子樹脂カバー61c,内障子樹脂カバー71c)
外障子樹脂カバー61cと内障子樹脂カバー71cは、それぞれ、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂部材を押出し加工等によって図2等に示すような断面形状に形成したもので、上框61,71の屋内側の側面がなるべく露出しないよう、上框61,71の屋内側の側面との間に所定厚の空気層を形成するように形成されている。
【0018】
具体的には、外障子樹脂カバー61cと内障子樹脂カバー71cは、それぞれ、図3および図4に示すように、上框61,71の上側面と面一の上側面61c1,71c1と、上側面61c1,71c1に対し直角に曲がり上框61,71の屋内側面と平行な第1垂直面61c2,71c2と、第1垂直面61c2,71c2下端部から上框61,71のガラス収容用凹部61b,71bの傾斜面に応じて斜め下方に延びる傾斜面61c3,71c3と、傾斜面61c3,71c3下端部から上框61,71のガラス収容用凹部61b,71bの屋内側垂直面に応じて平行に下方に延びる第2垂直面61c4,71c4と、第2垂直面61c4,71c4下端部から上框61,71のガラス収容用凹部61b,71bの屋内側垂直面下端部に向かって延びる下側面61c5,71c5を備える。
【0019】
外障子樹脂カバー61cおよび内障子樹脂カバー71cの上側面61c1,71c1先端である屋外側端部には、それぞれ、ガラス収容用凹部61b,71bから上方に延びた屋内側垂直片の屋内側上端部が嵌合する上側嵌合用凹部61c11,71c11が形成されている一方、下側面61c5,71c5先端である屋外側端部には、それぞれ、ガラス収容用凹部61b,71bを構成する屋内側垂直片の屋内側下端部が嵌合する下側嵌合用凹部61c51,71c51が形成されている。
【0020】
<上枠2>
上枠2は、図2図4等に示すように、上枠本体21と、上枠用外樹脂カバー22、上枠用内樹脂カバー23、内レール用樹脂カバー24、ビス隠し板25a,25bと、風止板26と、外障子用断熱部材27および内障子用断熱部材28等を備えて構成される。尚、図2図3等では、風止板26は省略している。
【0021】
(上枠本体21)
上枠本体21は、アルミ等の軽量金属材を押出し加工や曲げ加工によって所定形状に形成されたもので、図2図4に示すように、見込み方向(図2図4において紙面の横方向)には、外障子6の上框61を案内する上枠外レール21aと、内障子7の上框71を案内する上枠内レール21bとを有しており、長手方向(図2図4において紙面の表裏方向)には左右の縦枠4,5まで延出するように構成されている。
【0022】
上枠本体21は、図2図4に示すように、その下側に上枠用外樹脂カバー22および上枠用内樹脂カバー23をそれぞれビス81a,81bによって固定できるようにビス孔が設けられている。
【0023】
また、上枠本体21には、上枠本体21下側に上枠用外樹脂カバー22をビス81aで固定する際、上枠本体21および上枠用外樹脂カバー22のビス孔同士の位置合わせが容易等になるようL字形状の上枠側係合部21cも設けられている。
【0024】
(上枠用外樹脂カバー22)
上枠用外樹脂カバー22は、外障子樹脂カバー61cや内障子樹脂カバー71cと同様にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂部材を押出し加工等によって見込み方向に図2図4に示すような断面形状に形成したもので、長手方向には図5図6に示すように内観で上枠21の左端から風止板26の左側面まで延出する長さL1で構成されており、上枠本体21の上枠外レール21aと上枠内レール21bとの間にビス81aによって取り付けられるように構成されている。つまり、上枠用外樹脂カバー22は、外障子6および内障子7を閉めた際における外障子6の上方側にのみ設けられる。
【0025】
上枠用外樹脂カバー22の屋外側端部は、外障子樹脂カバー61cの上側面61c1の屋外側端部に形成された上側嵌合用凹部61c11上方近くまで延びており、その屋外側端部には、外障子用断熱部材27の嵌合部27aを嵌合させて取り付ける断熱部材嵌合部22aが形成されている。
【0026】
また、上枠用外樹脂カバー22におけるビス81aが挿入される箇所は、ビス81aの頭部が突出しないよう凹んだビス用凹部22bが設けられ、ビス用凹部22bに長手方向に適宜間隔でビス孔が設けられ、ビス81aが挿入された後、ビス隠し板25aで遮蔽されるように構成されている。
【0027】
断熱部材嵌合部22aとビス用凹部22bとの間には、上方に向かって突出して上枠本体21下側の上枠側係合部21cに係合する上枠用外樹脂カバー側係合部22cが設けられている。
【0028】
(上枠用内樹脂カバー23)
上枠用内樹脂カバー23は、上枠用外樹脂カバー22等と同様にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂部材を押出し加工等によって見込み方向に図2図4に示すような断面形状に形成したもので、上枠本体21と対向して延びる上側面23aと、上側面23aの屋内側端部から垂直に垂れ下がる垂直面23bと、垂直面23b下端部から屋内側へ水平に延びる下側面23c等を備えて断面階段状ないしは略Z形状に形成されている。
【0029】
また、上枠用内樹脂カバー23は、長手方向には図5図6に示すように内観で上枠21の左右両端まで延出する長さL2で構成されており、上枠本体21の上枠内レール21bよりも屋内側にビス81bによって取り付けられるように構成されている。つまり、上枠用内樹脂カバー23は、図5図6に示すように長手方向には上枠用外樹脂カバー22よりも長く外障子6および内障子7の両側に設けられている。
【0030】
上枠用内樹脂カバー23の上側面23aの屋外側端部は、図2図4に示すように上枠内レール21b近くまで延びており、その屋外側端部には、内障子用断熱部材28の嵌合部28aを嵌合させて取り付ける断熱部材嵌合部23a1が形成されている。
【0031】
また、上枠用内樹脂カバー23の上側面23aにおけるビス81bが挿入される箇所は、ビス81bの頭部が突出しないよう凹んだビス用凹部23a2が設けられ、ビス用凹部23a2に長手方向に適宜間隔でビス孔が設けられており、ビス81bが挿入された後、ビス隠し板25bで遮蔽されるように構成されている。
【0032】
(内レール用樹脂カバー24)
内レール用樹脂カバー24は、上枠用外樹脂カバー22や上枠用内樹脂カバー23等と同様にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂部材を押出し加工等によって形成されたもので、図2図4に示すように上枠用外樹脂カバー22と上枠用内樹脂カバー23との間に設けられ、上枠内レール21bで冷やされた冷気が屋内へ侵入しないよう上枠内レール21bを覆うように見込み方向の断面がほぼU字形状に形成され、長手方向には図5図6に示すように内観で上枠21の左右両端まで延出する上枠内レール21bの長さL2とほぼ同じ長さで構成されている。尚、本実施形態では、上枠用内樹脂カバー23と内レール用樹脂カバー24を別部材としているが、これらを一体部材としても良い。
【0033】
(ビス隠し板25a,25b)
ビス隠し板25a,25bは、それぞれ、上枠用外樹脂カバー22と上枠用内樹脂カバー23とを上枠2に固定するビス81a,81bを隠すためのもので、上枠用外樹脂カバー22と上枠用内樹脂カバー23等と同様に合成樹脂等によって形成されており、上枠用外樹脂カバー22のビス用凹部22bと、上枠用内樹脂カバー23のビス用凹部23a2とに嵌めて取り付けられる。
【0034】
(風止板26)
風止板26は、図5図6に示すように上枠2における召合部、すなわち外障子6および内障子7を閉めた際、外障子6および内障子7の召合框63,73同士が重なった上部において、内レール用樹脂カバー24を境にして屋外側と屋内側にそれぞれ設けられるもので、硬質の合成樹脂から構成されたベース部(図示略)に、気密部材66,76と同様な熱可塑性エラストマー(TPE)等の軟質部材が一体成型されている。
【0035】
(外障子用断熱部材27,内障子用断熱部材28)
外障子用断熱部材27および内障子用断熱部材28は、気密部材66,76と同様に熱可塑性エラストマー(TPE)やゴム等の軟質部材から形成されたもので、本実施形態では、同一素材、同一断面形状で構成されており、外障子用断熱部材27は、図5図6に示すように、上枠21の左端から風止板26の左側面まで延出する上枠用外樹脂カバー22とほぼ同じ長さL1で構成されている一方、内障子用断熱部材28は、上枠21の右端から風止板26の右側面までの長さL3で構成されている。なお、外障子用断熱部材27の長さL1と内障子用断熱部材28の長さL3とは同一でも良い。
【0036】
外障子用断熱部材27および内障子用断熱部材28の見込み方向の断面形状は、図7(a),(b)に示すように下方開放の断面コ字形状に形成されており、それぞれ、断熱部材嵌合部22a,23a1に嵌合する嵌合部27a,28aと、嵌合部27a,28aの幅より幅が狭い幅狭部27b,28bと、幅狭部27b,28bから左右の水平方向にほぼW1の幅になるまで広がる幅広部27c,28cと、その幅広部27c,28cから鉛直方向に長さH1だけ垂れ下がり、下端部が断面略半円状に形成された一対の垂下片部27d,27e、28d,28eを備えている。
【0037】
幅広部27c,28cの内幅W1は、図2図4に示すように、外障子樹脂カバー61cの上側面61c1の見込み方向の幅や内障子7の上框71上部の屋内側の気密部材嵌合用凹部71a2の幅等に基づき設定されている一方、垂下片部27d,27e、28d,28eの長さH1は、垂下片部27d,27e、28d,28e下端部がアルミ等の軽量金属部材から構成された外障子6および内障子7の上框61,71に接触するか、あるいは僅かに接触しない(本実施形態では約2mm)程度の長さに設定されている。
【0038】
具体的には、外障子用断熱部材27の屋外側の垂下片部27dは、図2図3に示すように外障子樹脂カバー61cの上側面61c1の屋外側先端部よりも屋内側上方に位置する一方、外障子用断熱部材27の屋内側の垂下片部27eは、外障子樹脂カバー61cの上側面61c1の屋内側端部上方、すなわち外障子樹脂カバー61cの第1垂直面61c2のほぼ上方に位置するように取り付けられ、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,27eは、アルミ等の軽量金属部材から構成された外障子6の上框61の上方からはずれた位置に取り付けられる。
【0039】
そして、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,27eは、それぞれ、その下端部が外障子樹脂カバー61cの上側面61c1に接触するか、あるいは僅かに接触しない程度に近接する長さH1に形成されている。尚、長さH1は、障子の建て付け調整量(下車の上げ寸法)から決めても良い。
【0040】
そのため、外障子用断熱部材27は、外障子樹脂カバー61cの上側面61c1との間で幅W1、高さH1、長手方向に長さL1前後の空気溜りとなる断熱用空間27fを形成する。この断熱用空間27fは空気の対流が少なく、断熱層として機能するので、外障子6および内障子7の閉塞時、上枠外レール21aで冷やされたり暖められた空気が屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達すること等を防止する。
【0041】
これに対し、内障子用断熱部材28の屋外側の垂下片部28dは、図2図4に示すように上框71のレール案内用凹部71aの屋内側上端部の気密部材取付用嵌合部71a2に嵌合した熱可塑性エラストマー(TPE)やゴム等の軟質部材から形成された内障子用気密部材76の上方に位置する一方、内障子用断熱部材28の屋内側の垂下片部28eは、樹脂製の内障子樹脂カバー71cの上側面71c1の屋外側端部上方に位置するように取り付けられ、内障子用断熱部材28の垂下片部28d,28eは、アルミ等の軽量金属部材から構成された内障子7の上框71の上方からはずれた位置に取り付けられる。
【0042】
そして、内障子用断熱部材28の垂下片部28d,28eは、それぞれ、その下端部が内障子用気密部材76または内障子樹脂カバー71cの上側面71c1に接触するか、あるいは僅かに接触しない程度に近接するような長さH1で設けられている。
【0043】
そのため、内障子用断熱部材28は、内障子用気密部材76や内障子7の上框71の気密部材嵌合用凹部71a2、内障子樹脂カバー71cの上側面71c1先端部との間で幅W1、高さH1、長さL3前後の空気溜りとなる断熱用空間28fを形成する。この断熱用空間28fは空気の対流が少なく、断熱層として機能するので、外障子6および内障子7の閉塞時、上枠内レール21bや内レール用樹脂カバー24で冷やされたり暖められた空気が屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達すること等を防止する。
【0044】
<本実施形態の引違いサッシ1の断熱構造の主な効果>
以上説明したように本実施形態の引違いサッシ1の断熱構造では、上枠外レール21aと上枠内レール21bとの間に長手方向で上枠21の左端から風止板26の左側面まで延出する長さL1の上枠用外樹脂カバー22を設け、その上枠用外樹脂カバー22の下側に、下端部が外障子6の上側面を構成する外障子樹脂カバー61cの上側面61c1に接触ないしは近接するまで垂れ下がる一対の垂下片部27d,27eを見込み方向に有する外障子用断熱部材27を設けている。
【0045】
そのため、上枠用外樹脂カバー22下側と外障子6上側との間に外障子6をけんどん式で建て込むための一定の空間を確保している場合、外障子6および内障子7の閉塞時、外障子6側の上枠外レール21aによって冷やされたり暖められた空気がその空間を通って屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達しようとするが、本実施形態の引違いサッシ1の断熱構造では、上枠用外樹脂カバー22下側に外障子用断熱部材27を設けて断熱を図っているので、外障子6および内障子7の閉塞時、外障子6側の上枠外レール21aで冷やされたり暖められた空気が屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達すること等を防止して、冷暖房効率を向上させることができ、冬季等における室内の結露も極力防止できる。
【0046】
特に、外障子用断熱部材27は、熱可塑性エラストマー(TPE)やゴム等の軟質部材から形成されていると共に、見込み方向に任意の間隔W1を開けて2枚の垂下片部27d,27eを有する下方開放の断面コ字形状で形成されているため、外障子6をけんどん式で建て込む際、外障子6の上框61や外障子樹脂カバー61c等が垂下片部27d,27eに当接した場合でも弾性変形し易く、外障子6の建て込みを阻害しないので、引違いサッシ1のサッシ枠に外障子6を容易に建て込むことができる。
【0047】
また、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,27e下端部が、外障子6の上部に接触ないしは僅かに接触しない程度に近接している。
【0048】
そのため、外障子用断熱部材27が外障子樹脂カバー61cの上側面61c1との間で形成する幅W1、高さH1、長さL1前後の断熱用空間27fは空気の対流が少ない断熱層として機能すると共に、全て熱可塑性エラストマー(TPE)やゴム等の軟質部材または樹脂等の熱伝導率が低い部材となるので、外障子6および内障子7の閉塞時、上枠外レール21aで冷やされたり暖められた空気が屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達すること等を防止して、冷暖房効率を向上させることができ、冬季等における室内の結露も極力防止できる。
【0049】
また、上枠内レール21bに内レール用樹脂カバー24を設けない場合、外障子6および内障子7の閉塞時、上枠内レール21bの外側が屋外に露出するが、本実施形態の引違いサッシ1の断熱構造では、上枠内レール21bを内レール用樹脂カバー24によって覆い、熱伝導性の高い金属製の上枠内レール21bが外気に直接触れないように構成したため、この点でも冷暖房効率を向上させることができ、冬季等における室内の結露も極力防止できる。
【0050】
また、本実施形態の引違いサッシ1の断熱構造では、上枠外レール21aと上枠内レール21bとの間に上枠用内樹脂カバー23を設け、その上枠用内樹脂カバー23下側であって上枠21の右端から風止板26の右側面までの長さL3の部分にも、下端部が内障子7の上側面を構成する内障子用気密部材76や内障子樹脂カバー71cの上側面71c1に接触ないしは近接するまで垂れ下がる一対の垂下片部28d,28eを有する内障子用断熱部材28を設けて、外障子側と同様に断熱用空間28fを形成している。
【0051】
そのため、上枠用外樹脂カバー22下側に外障子用断熱部材27を設けただけの場合よりも、外障子6および内障子7の閉塞時、さらに内障子7側の上枠内レール21bや内レール用樹脂カバー24等によって冷やされたり暖められた空気が屋内側に流入したり、その空気の温度が屋内側に伝達することや、その反対に屋内側の空気やその温度が屋外へ伝達すること等を防止でき、さらに冷暖房効率を向上させることができると共に、冬季等における室内の結露もさらに防止できる。
【0052】
また、外障子6および内障子7の開閉の際、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,
27eの下端部がそれぞれ外障子樹脂カバー61cの上側面61c1に接触して摺接したり、内障子用断熱部材28の垂下片部28d,28e下端部がそれぞれ内障子用気密部材76や内障子樹脂カバー71cの上側面71c1に接触して摺接した場合でも、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,27e下端部および内障子用断熱部材28の垂下片部28d,28e下端部が断面略半円状に形成されているため、点で接触して摺接する。よって、断熱用空間27f,28fが閉鎖した形状(中空形状)に形成された場合に、面で接触して摺接することに対して、外障子用断熱部材27の垂下片部27d,27e下端部および内障子用断熱部材28の垂下片部28d,28e下端部の摩耗を防止でき、長期間に亘って冷暖房効率を向上させることが可能となる。また、障子の走行に不具合を与えることもない。
【0053】
尚、上記実施形態の説明では、外障子用断熱部材27と内障子用断熱部材28とは、図7等に示すように、それぞれ、一対、すなわち2枚の垂下片部27d,27e、28d,28eを有すものとして説明したが、本発明では、これに限らず、下端部がそれぞれ外障子6と内障子7の上側面に接触ないしは近接するまで垂れ下がる垂下片部を見込み方向に任意の間隔を空けて複数有し、1または複数の断熱用空間を形成すれば十分であるので、3枚以上の垂下片部を見込み方向に任意の間隔を空けて設けて、2以上の断熱用空間を形成するように構成しても勿論良いし、また垂下片部の下端部を水平方向に連結するように構成しても勿論良い。さらに、本発明に係るスライディングサッシの断熱構造は、引違い窓に限らず、片引き窓(内動、外動)や両引き窓に適用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 引違いサッシ(スライディングサッシ)
2 上枠
21 上枠本体
21a 上枠外レール
21b 上枠内レール
21c 上枠側係合部
22 上枠用外樹脂カバー
22a 断熱部材嵌合部
22b ビス用凹部
22c 上枠用外樹脂カバー側係合部
23 上枠用内樹脂カバー
23a 上側面
23a1 断熱部材嵌合部
23a2 ビス用凹部
24 内レール用樹脂カバー
25a,25b ビス隠し板
26 風止板
27 外障子用断熱部材
27a 嵌合部
27b 幅狭部
27c 幅広部
27d,27e 垂下片部
27f 断熱用空間
28 内障子用断熱部材
28a 嵌合部
28b 幅狭部
28c 幅広部
28d,28e 垂下片部
28f 断熱用空間
3 下枠
4,5 縦枠
6 外障子
61 上框
61a レール案内用凹部
61a1,61a2 気密部材嵌合用凹部
61b ガラス収容用凹部
61c 外障子樹脂カバー
62 戸先框
63 召合框
64 下框
65a,65b 二重ガラス
66 気密部材
7 内障子
71 上框
71a レール案内用凹部
71a1,71a2 気密部材嵌合用凹部
71b ガラス収容用凹部
71c 内障子樹脂カバー
72 戸先框
73 召合框
74 下框
75a,75b 二重ガラス
76 気密部材
81a,81b ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7