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<図1>
  • 特許-モールドベース 図1
  • 特許-モールドベース 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】モールドベース
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
B29C45/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018061687
(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公開番号】P2019171655
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】518106733
【氏名又は名称】谷田部 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】谷田部 忠夫
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-178772(JP,A)
【文献】実開昭63-179113(JP,U)
【文献】実開平03-004018(JP,U)
【文献】実開平04-083618(JP,U)
【文献】特開平09-286047(JP,A)
【文献】実公昭44-014677(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動側取付板と、スペーサブロックと、可動側型板と、固定側型板と、ランナープレートと、固定側取付板とが、この順に重ねて設けられ、
前記可動側取付板から前記固定側取付板まで貫通して形成された複数のガイドピン用孔部内にそれぞれ配置され、前記ランナープレート又は前記ランナープレートに固定された部材と摺接して前記ランナープレートの移動を案内する複数のガイドピンを有し、
前記ガイドピンと摺接する前記ランナープレート側の摺接面が、前記ガイドピンの長手方向において、前記摺接面を形成する前記ランナープレートの部分を除く前記ガイドピン周辺の前記ランナープレートの部分の厚さよりも長いモールドベース。
【請求項2】
前記ランナープレートは、前記ガイドピンの周囲に前記摺接面の一部を形成する突出部を有し、
前記ガイドピンの長手方向における前記突出部側で前記ランナープレートと対向する部材には、前記突出部が収まる凹部が形成されている請求項1に記載のモールドベース。
【請求項3】
前記突出部は、前記ランナープレートに形成された孔部に内嵌したブッシュの一部である請求項2に記載のモールドベース。
【請求項4】
前記ガイドピンの長手方向における前記突出部側の前記ランナープレートの面と対向する部材は、前記固定側型板である請求項2又は3のいずれか一項に記載のモールドベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の射出成形に用いられるモールドベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2プレートタイプのモールドベースと、3プレートタイプのモールドベースがある。3プレートタイプのモールドベースはランナープレートを備える。ランナープレートは樹脂の注入口から成型品まで流れる経路に形成された樹脂の部分(ランナー)を除去するために用いられる。ランナープレートは、ランナープレートの四隅に形成されたガイドピン用孔部をそれぞれ通した4本のガイドピンによって移動が案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-286047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランナープレートは、スペースの都合上、薄くするのが望ましいが、ランナープレートを薄くすると、「ガイドピン用孔部の内径」に対する「ガイドピンの長手方向におけるガイドピン用孔部の長さ」が短くなる。これにより、ランナープレートがガイドピンに対して僅かに傾くだけでガイドピンに対するランナープレートの摺動が悪くなるという問題がある。この問題を解決するためには、ガイドピン用孔部の内径を小さくすることも考えられる。しかし、ガイドピン用孔部の内径を小さくすると、モールドベースの温度が高くなったときにガイドピン用孔部とガイドピンとの隙間が無くなり、ランナープレートが摺動しなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
可動側取付板と、スペーサブロックと、可動側型板と、固定側型板と、ランナープレートと、固定側取付板とが、この順に重ねて設けられ、
前記可動側取付板から前記固定側取付板まで貫通して形成された複数のガイドピン用孔部内にそれぞれ配置され、前記ランナープレート又は前記ランナープレートに固定された部材と摺接して前記ランナープレートの移動を案内する複数のガイドピンを有し、
前記ガイドピンと摺接する前記ランナープレート側の摺接面が、前記ガイドピンの長手方向において、前記摺接面を形成する前記ランナープレートの部分を除く前記ガイドピン周辺の前記ランナープレートの部分の厚さよりも長いものとする。

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ランナープレートを薄くしながらも、ガイドピンとランナープレートの摺動が良好なモールドベースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は本願の実施形態に係るモールドベースの断面図である。
図2図2は本願の実施形態に係るモールドベースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1及び図2を参照しながら本願の実施形態に係るモールドベース100について説明する。図1及び図2において、モールドベース100は、上側に図示した可動側部材と下側に図示した固定側部材とに分解して示されている。
【0009】
可動側部材は、可動側取付板2と、スペーサブロック3と、可動側型板4とが、この順に重なって構成されている。固定側部材は、固定側型板5と、ランナープレート6と、固定側取付板7とが、この順に重なって構成されている。
【0010】
可動側型板4と固定側型板5を対向させて可動側部材と固定側部材を重ね合わせると、モールドベース100は全体として概略直方体状をしている。モールドベース100の四隅には可動側取付板2から固定側取付板7まで各部材を貫通したガイドピン用孔部がそれぞれ形成されている。ガイドピン用孔部には円柱状のガイドピン8a、8b、8c、8dが挿入される。
【0011】
可動側型板4に形成されたガイドピン用孔部には可動側ブッシュ9a、9b、9c、9dが内嵌している。ガイドピン8aから8dはそれぞれ可動側ブッシュ9aから9dの内側に挿入される。
【0012】
固定側型板5に形成されたガイドピン用孔部には固定側ブッシュ10a、10b、10c、10dが内嵌している。ガイドピン8aから8dはそれぞれ固定側ブッシュ10aから10dの内側に挿入される。
【0013】
ランナープレート6に形成されたガイドピン用孔部にはランナーブッシュ11a、11b、11c、11dが内嵌している。ガイドピン8aから8dはそれぞれ可動側ブッシュ11aから11dの内側に挿入される。
【0014】
ガイドピン8aとガイドピン8bの間の固定側型板5、ランナープレート6及び固定側取付板7の部分には、ガイドピン8aから8dと略平行に固定側型板5、ランナープレート6及び固定側取付板7を貫通する連結ピン用孔部が、ガイドピン8a側とガイドピン8b側の2か所に形成されている。連結ピン用孔部には、それぞれ連結ピン12a、12bが通されている。
【0015】
図2に示すように、ガイドピン8cとガイドピン8dの間の固定側型板5、ランナープレート6及び固定側取付板7の部分にも、ガイドピン8aから8dと略平行に固定側型板5、ランナープレート6及び固定側取付板7を貫通する連結ピン用孔部が、ガイドピン8c側とガイドピン8d側の2か所に形成されている。連結ピン用孔部には、それぞれ連結ピン12c、12dが通されている。
【0016】
図1に示すように、連結ピン12aから12dの両端部には拡径部18がそれぞれ形成されている。固定側型板5には、可動側取付板2側の連結ピン12aから12dの拡径部18が収まるザグリ部を形成している。また、固定側取付板7にも、固定側取付板7側の連結ピン12aから12dの拡径部18が収まるザグリ部を形成している。固定側取付板7のザグリ部は、連結ピン12aから12dの長手方向における拡径部18の寸法よりも深く形成されている。
【0017】
連結ピン12aから12dは、その長手方向における固定側取付板7側の部分に、長手方向に隣接する両側よりも径の小さい小径部19を有する。ランナープレート6は小径部19に外嵌している。これにより、ランナープレート6と連結ピン12aから12dは一体に構成されている。
【0018】
固定側型板5とランナープレート6の間にはつるまきバネ13a、13b、13c、13dが配置されている。つるまきバネ13aから13dは、連結ピン12aから12dの長手方向に付勢力を発揮する方向に配置されている。連結ピン12aから12dはつるまきバネ13aから13dの内側を通っている。
【0019】
固定側型板5側の可動側型板4の部分には、ガイドピン8aと連結ピン12aの間、ガイドピン8bと連結ピン12bの間、ガイドピン8cと連結ピン12cの間、ガイドピン8dと連結ピン12dの間で、ガイドピン8aから8dと略平行に形成されたネジ穴に、ネジ15a、15b、15c、15dがそれぞれ螺合している。ネジ15aから15dは固定側型板5側の可動側型板4の面から突出している。ネジ15aから15dに対応する固定側型板5の部分には、ネジ用孔部20a、20b、20c、20dが形成されている。可動側型板4と固定側型板5が重ね合わされたときには、ネジ15aから15dがネジ用孔部20aから20d内にそれぞれ収まる。
【0020】
図2に示すように、スペーサブロック3は、ガイドピン8a、8b側に形成された第1ブロック3aと、ガイドピン8c、8d側に形成された第2ブロック3bとから構成されている。第1ブロック3aと第2ブロック3bの間には第1エジェクタプレート16と第2エジェクタプレート17が重ねて配置されている。第1エジェクタプレート16と第2エジェクタプレート17からは不図示のエジェクタピンが固定側型板5側に向かって延びている。エジェクタピンは、射出成型機が第2エジェクタプレート17を固定側型板5側に押すことにより、可動側型板4に形成されたエジェクタピン用孔部4aから突出する。
【0021】
次に、射出成型機にモールドベース100を取り付け、樹脂の成型が完了するまでの流れの概略を説明する。
【0022】
モールドベース100は、可動側取付板2と固定側取付板7を不図示の射出成型機に固定することによって射出成型機に取り付けられる。射出成型機は、可動側取付板2と固定側取付板7を互いに近づける方向に圧力をかけながら、固定側取付板7の中央に形成された不図示のスプールから液状の樹脂を流し込む。樹脂は、固定側型板5に形成された流路5aを通り、同じく固定側型板5に形成されたポケット5b内に配置され、型が形成された不図示の入れ子内に流れる。なお、ポケット5bを設けず、型を直接可動側型板4及び固定側型板5に形成してもよい。
【0023】
樹脂を冷却固化した後、射出成型機は、可動側取付板2、スペーサブロック3、可動側型板4、及び固定側型板5を、ランナープレート6から引き離す。固定側型板5が可動側取付板2側の連結ピン12aから12dの端部付近まで移動すると、固定側型板5は、連結ピン12aから12dの拡径部18に当接し、連結ピン12aから12dを引っ張る。これにより連結ピン12aから12dと一体的に構成されたランナープレート6が固定側取付板7から引き離され、ランナープレート6と固定側取付板7の内側で固化したランナーが取り出される。
【0024】
固定側型板5は、固定側取付板7側の連結ピン12aから12dの拡径部18が固定側取付板7に当接するまで移動して停止する。一方、可動側取付板2、スペーサブロック3、及び可動側型板4は、その後も射出成型機によって固定側部材から引き離される。
【0025】
固定側型板5と可動側型板4との間の空間が広がったところで、射出成型機は第2エジェクタプレート17を固定側型板5側に押し、エジェクタピン用孔部4aからエジェクタピンを突出させて、成型品を取り出す。以上で成型が完了する。
【0026】
本実施形態のランナープレート6のガイドピン用孔部に内嵌したランナーブッシュ11aから11dは、固定側型板5側のランナープレート6の面から突出している。これにより、ランナーブッシュ11aから11dは、ランナーブッシュ11aから11dが無い場合と比較して、ガイドピン8aから8dの長手方向において、ガイドピン8aと摺接する内周面を長くしている。これにより、ランナープレート6が移動する際に多少傾いたとしてもガイドピン8aから8dとの摩擦を低減することができ、良好な摺動を得ることができる。
【0027】
図1に示すように、固定側型板5には、固定側型板5とランナープレート6が重なったときにランナープレート6から突出したランナーブッシュ11aから11dの部分が収まる固定側凹部21a、21b、21c、21d(21c、21dは不図示)を有している。
【0028】
これと同様に、固定側型板5に形成されたガイドピン用穴部に内嵌した固定側ブッシュ10aから10dは、可動側型板4側の固定側型板5の面から突出しており、可動側型板4には突出した固定側ブッシュ10aから10dの部分が収まる可動側凹部22a、22b、22c、22dが形成されている。
【0029】
以上に説明した本実施形態によれば、ランナープレート6を薄くしながら、ガイドピン8aから8dとランナープレート6との摺動が良好なモールドベースを提供することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、ランナーブッシュ11aから11dがランナープレート6から突出する向きは固定側型板5の側に限らず、固定側取付板7の側とすることもできる。
【0031】
また、ランナーブッシュ11aから11dがランナープレート6から突出するのは一方の側に限らず、両側に突出するものとしても良い。
【0032】
また、上記実施形態においてはランナーブッシュ11aから11dをランナープレート6とは別部材として形成した場合について説明したが、ランナーブッシュ11aから11dとランナープレート6と一体に形成してもよい。
【0033】
また、ガイドピン8aから8dは円柱状でなくてもよく、四角柱状、五角柱状その他の多角柱状、楕円柱状など、とすることもでき、中空の筒状部材としても良い。
【0034】
つまり、上記実施形態に関わらず、ガイドピン8aから8dがランナープレート6の移動を案内する際のランナープレート6側の摺接面が、ガイドピン8aから8dの長手方向において、摺接面を形成するランナープレート6の部分を除くガイドピン8aから8d周辺のランナープレート6の部分の厚さよりも長くなる構成とすれば良い。
【符号の説明】
【0035】
100 モールドベース
2 可動側取付板
3 スペーサブロック
3a 第1ブロック
3b 第2ブロック
4 可動側型板
4a エジェクタピン用孔部
5 固定側型板
5a 流路
5b ポケット
6 ランナープレート
7 固定側取付板
8a、8b、8c、8d ガイドピン
9a、9b、9c、9d 可動側ブッシュ
10a、10b、10c、10d 固定側ブッシュ
11a、11b、11c、11d ランナーブッシュ
12a、12b、12c、12d 連結ピン
13a、13b、13c、13d つるまきバネ
15a、15b、15c、15d ネジ
16 第1エジェクタプレート
17 第2エジェクタプレート
18 拡径部
19 小径部
20a、20b、20c、20d ネジ用孔部
21a、21b、21c、21d 固定側凹部
22a、22b、22c、22d 可動側凹部
図1
図2