(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】中間クランプ
(51)【国際特許分類】
E04B 1/34 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
E04B1/34 A
(21)【出願番号】P 2018129500
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 公男
(72)【発明者】
【氏名】山下 美帆
(72)【発明者】
【氏名】西谷 隆之
(72)【発明者】
【氏名】津曲 敬
(72)【発明者】
【氏名】久保山 武
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-154508(JP,A)
【文献】特開2000-17897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/34
E04H 15/00 - 15/64
E04B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの軸方向の中間部を前記ケーブルの軸直交方向の両側から挟む一対のプレートと、前記一対のプレートを締結する締結具と、を有する中間クランプにおいて、
前記ケーブルは、線状のケーブル本体と、前記ケーブル本体よりも外径が大きく前記ケーブル本体を挿通した状態で前記ケーブル本体の軸方向の中間部に圧着する中間スリーブと、を有し、前記中間スリーブおよび前記ケーブル本体が前記一対のプレートに前記ケーブルの軸直交方向の両側から挟まれるように構成され、
前記一対のプレートは、互いに対向する位置にそれぞれ形成され前記中間スリーブが配置される中間スリーブ溝部と、
前記中間スリーブ溝部に配置された前記中間スリーブが前記ケーブルの軸方向から対向する中間スリーブ対向面と、を有し、
前記中間スリーブ溝部には、前記中間スリーブと前記中間スリーブ対向面との間を塞ぐシムプレートが設けられることを特徴とする中間クランプ。
【請求項2】
前記一対のプレートの少なくとも一方には、前記中間スリーブ溝部と外部とを連通させ、前記シムプレートを挿通可能なシムプレート挿通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の中間クランプ。
【請求項3】
前記シムプレート挿通孔を塞ぐカバー部材を有することを特徴とする請求項2に記載の中間クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
張弦梁などに用いられるケーブル構造では、ケーブルの長さ方向の中間部や、ケーブルどうしの交差部などに中間クランプを設け、この中間クランプに他の部材が接合されている(例えば、特許文献1参照)。中間クランプは、ケーブルを両側から挟みこむ一対のプレートと、一対のプレートを接合するボルトと、を有している。中間クランプは、摩擦止め方式で、ケーブルと一対のプレートとの摩擦によってケーブルに固定されるように構成されている。
ケーブルの「滑動力(クランプの両側のケーブルの張力差)」に抵抗する中間クランプの「把握力」は、ボルトによりケーブルの軸直交方向に加えられた圧縮力(締付力)に伴う摩擦により得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ケーブルの滑動力が大きい場合には、上述した摩擦止め方式の中間クランプでは、ケーブルと一対のプレートとの接触面を大きくしなければならず、一対のプレートの長さが長くなることや、ボルトの本数が多くなることから、中間クランプが大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ケーブルの滑動力が大きい場合でも、小型化を図ることができる中間クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る中間クランプは、ケーブルの軸方向の中間部を前記ケーブルの軸直交方向の両側から挟む一対のプレートと、前記一対のプレートを締結する締結具と、を有する中間クランプにおいて、前記ケーブルは、線状のケーブル本体と、前記ケーブル本体よりも外径が大きく前記ケーブル本体を挿通した状態で前記ケーブル本体の軸方向の中間部に圧着する中間スリーブと、を有し、前記中間スリーブおよび前記ケーブル本体が前記一対のプレートに前記ケーブルの軸直交方向の両側から挟まれるように構成され、前記一対のプレートは、互いに対向する位置にそれぞれ形成され前記中間スリーブが配置される中間スリーブ溝部と、前記中間スリーブ溝部に配置された前記中間スリーブが前記ケーブルの軸方向から対向する中間スリーブ対向面と、を有し、前記中間スリーブ溝部には、前記中間スリーブと前記中間スリーブ対向面との間を塞ぐシムプレートが設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明では、一対のプレートは、中間スリーブ嵌合溝に嵌合した中間スリーブがケーブルの軸方向から対向する中間スリーブ対向面を有し、中間スリーブ嵌合溝には、中間スリーブと中間スリーブ対向面との間を塞ぐシムプレートが設けられている。これにより、ケーブルの滑動力によって、ケーブルが一対のプレートに対して軸方向に移動しようとしても、中間スリーブがシムプレートを介して中間スリーブ対向面と当接して、この移動を阻止することができる。
また、シムプレートによって中間スリーブと中間スリーブ対向面との間に隙間が生じることを防止されるため、ケーブルの滑動力を一対のプレートに確実に伝達させることができる。
このため、ケーブルの滑動力が大きい場合でも、一対のプレートを大きくする必要がなく、中間クランプの小型化を図ることができる。
さらに、ケーブルの滑動力が大きい場合でも、ケーブルの滑動力を中間スリーブおよびシムプレートを介して中間スリーブ対向面から一対のプレートに伝達させることができる。
【0008】
また、本発明に係る中間クランプでは、前記一対のプレートの少なくとも一方には、前記中間スリーブ溝部と外部とを連通させ、前記シムプレートを挿通可能なシムプレート挿通孔が形成されていてもよい。
このような構成とすることにより、シムプレートを容易に設置することができる。
【0009】
また、本発明に係る中間クランプでは、前記シムプレート挿通孔を塞ぐカバー部材を有していてもよい。
このような構成とすることにより、シムプレートがシムプレート挿通孔を通って中間スリーブと中間スリーブ対向面との間から外れることを防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーブルの滑動力が大きい場合でも、中間クランプの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による中間クランプの一例を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態による中間クランプの一例を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態による中間クランプの一例を示す下面図である。
【
図7】(a)は
図1のC-C線断面図、(b)は(a)のD部分拡大図、(c)は(a)のE部分拡大図である。
【
図10】(a)は第1ケーブルに対応するシムプレートの正面図(厚さ方向から見た図)、(b)は第1ケーブルに対応する平板シムプレートの側面図(幅方向から見た図)、(c)は第1ケーブルに対応する第1楔形シムプレートの側面図、(d)は第1ケーブルに対応する第2楔形シムプレートの側面図である。
【
図11】(a)は第2ケーブルに対応するシムプレートの正面図(厚さ方向から見た図)、(b)は第2ケーブルに対応する平板シムプレートの側面図(幅方向から見た図)、(c)は第2ケーブルに対応する第1楔形シムプレートの側面図、(d)は第2ケーブルに対応する第2楔形シムプレートの側面図である。
【
図12】
図2のH-H線断面図で締結具の表示を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による中間クランプについて、
図1-
図12に基づいて説明する。
図1-
図3に示すように、本実施形態による中間クランプ1は、略水平方向に延びるケーブル2の軸方向の中間部に設けられ、上部に上下方向に延びる束材11(
図1、
図2参照)が接合されている。
中間クランプ1は、ケーブル2の軸方向の中間部を上下方向(ケーブル2の軸直交方向)から挟む一対のプレート3,4と、一対のプレート3,4を締結する締結具5と、を有している。
本実施形態の中間クランプ1は、4本のケーブル2を一対のプレート3,4で挟むように構成されている。
【0013】
図4に示すように、ケーブル2は、線状のケーブル本体21と、ケーブル本体21の軸方向の中間部に取り付けられた中間スリーブ22と、を有している。
ケーブル本体21は、例えば、構造用のストランドケーブルなどで構成されている。
中間スリーブ22は、鋼製でケーブル本体21よりも外径が大きい円筒状に形成されている。中間スリーブ22は、内部にケーブル本体21が挿通された状態で、ケーブル本体21と圧着している。中間スリーブ22とケーブル本体21とは、例えばプレスされることで圧着している。
中間スリーブ22とケーブル本体21とは、互いにずれないように固着されている。中間スリーブ22とケーブル本体21とは、同軸に配置されている。中間スリーブ22の両端面22aは、それぞれ平面状に形成されている。
4本のケーブル2は、それぞれの中間スリーブ22が平行で軸直交方向(軸方向に直交する方向)に間隔をあけて配列されている。
【0014】
本実施形態では、4つのケーブル2は、
図4(a)に示すようなケーブル本体21および中間スリーブ22の径が大きい2本の第1ケーブル23と、
図4(b)に示すようなケーブル本体21および中間スリーブ22の径が第1ケーブル23よりも小さい2本の第2ケーブル24と、から構成されている。
図2、3に示すように、2本の第1ケーブル23が軸方向に直交する水平方向の両側に配置され、2本の第1ケーブル23の間に2本の第2ケーブル24が配置されている。
【0015】
図1-
図3に示すように、一対のプレート3,4は、中間スリーブ22、中間スリーブ22の近傍のケーブル本体21を上下方向から挟んでいる。一対のプレート3,4のうち、ケーブル2の上側に設けられるプレート3を上側プレート3とし、ケーブル2の下側に設けられるプレート4を下側プレート4とする。束材11は、上側プレート3の上面の略中央部に接合され、上側プレート3から上方に延びている。
本実施形態では、上側プレート3と下側プレート4とを締結する締結具5は、ボルト51およびナット52で構成されている。
【0016】
上側プレート3および下側プレート4は、それぞれ板面が長方形となる板状に形成され、板面が上下方向を向き、上下方向に重なった姿勢で4本のケーブル2に取り付けられている。上側プレート3および下側プレート4は、平面視形状(板面の形状に相当)の外形が互いにほぼ同じ形状となるように形成されている。
【0017】
上側プレート3および下側プレート4の板面の長方形の長辺に沿った方向を長辺方向とし、短辺に沿った方向を短辺方向とする。上側プレート3および下側プレート4は、それぞれ短辺方向がケーブル2の軸方向と同じ方向となり、長辺方向がケーブル2の軸方向に直交する水平方向と同じ方向となる姿勢で、上下方向に重なるように構成されている。
以下の上側プレート3および下側プレート4の説明では、上側プレート3と下側プレート4とが上記姿勢で上下方向に重なった状態であるものとする。
【0018】
図5-
図9に示すように、上側プレート3と下側プレート4との間には、4つのケーブル2がそれぞれ配置される4つの空部が形成されている。
上側プレート3の下部側には、4つのケーブル2ぞれぞれの上部側が配置される4つの上側ケーブル溝部31が形成されている。4つの上側ケーブル溝部31は、それぞれ下側に開口する溝部で、上側プレート3の短辺方向全体に延びている。下側プレート4の上部側には、4つのケーブル2ぞれぞれの下部側が配置される4つの下側ケーブル溝部41が形成されている。4つの下側ケーブル溝部41は、それぞれ上側に開口する溝部で、下側プレート4の短辺方向全体に延びている。
上側ケーブル溝部31と下側ケーブル溝部41とは、上下方向に重なっている。上側ケーブル溝部31の内部と下側ケーブル溝部41の内部とが合わさった空部にケーブル2が配置されるように構成されている。
【0019】
上側ケーブル溝部31は、長さ方向(上側プレート3の短辺方向)の中間部に中間スリーブ22が配置される上側中間スリーブ溝部32(中間スリーブ溝部)が形成され、上側中間スリーブ溝部32の短辺方向の両側に連続してケーブル本体21が配置される上側ケーブル本体溝部33が形成されている。
上側中間スリーブ溝部32は、上側ケーブル本体溝部33よりも断面形状が大きく形成されている。
図8、
図9に示すように、上側中間スリーブ溝部32の長さ方向の両端部には、上側ケーブル本体溝部33における上側中間スリーブ溝部32側の端部まで延びる面34が形成されている。この面34は、平面状で短辺方向を向く鉛直面に形成されていて、上側中間スリーブ溝部32の内側を向いている。この面34は、上側中間スリーブ溝部32に配置された中間スリーブ22の端面22aと対向するように構成されている。以下では、この面34を上側中間スリーブ対向面(中間スリーブ対向面)34とする。
【0020】
上側中間スリーブ溝部32は、配置される中間スリーブ22の上部側の断面形状よりもやや大きく、長さ寸法(短辺方向の寸法)も中間スリーブ22の長さ寸法(軸方向の寸法)よりもやや大きく形成されている。
上側ケーブル本体溝部33のうちの第1ケーブル23のケーブル本体21の上部側が嵌合する上側ケーブル本体溝部33は、短辺方向に延び、断面形状がケーブル本体21の上部側の断面形状とほぼ同じ形状に形成されている。
上側ケーブル本体溝部33のうちの第2ケーブル24のケーブル本体21の上部側が嵌合する上側ケーブル本体溝部33は、上側中間スリーブ溝部32と近接する側から離間する側に向かって漸次上側に向かう斜め方向に延びている。このため、第2ケーブル24のケーブル本体21の上部側が嵌合する上側ケーブル本体溝部33は、上側中間スリーブ溝部32と近接する側から離間する側に向かって漸次上方に向かって深く形成されている。
【0021】
図6に示すように、上側プレート3には、ボルト51が挿通される複数の上側ボルト孔35が上側ケーブル溝部31と干渉しない位置に形成されている。
上側ボルト孔35は、上側プレート3の短辺方向の両端部それぞれの近傍に長辺方向に間隔をあけて形成されている。
【0022】
下側ケーブル溝部41は、長さ方向(下側プレート4の短辺方向)の中間部に中間スリーブ22が配置される下側中間スリーブ溝部(中間スリーブ溝部)42が形成され、下側中間スリーブ溝部42の短辺方向の両側に連続してケーブル本体21が配置される下側ケーブル本体溝部43が形成されている。
下側中間スリーブ溝部42は、下側ケーブル本体溝部43よりも断面形状が大きく形成されている。
図8、
図9に示すように、下側中間スリーブ溝部42の長さ方向の両端部には、下側ケーブル本体溝部43における下側中間スリーブ溝部42側の端部まで延びる面44が形成されている。この面44は、平面状で短辺方向を向く鉛直面に形成されていて、下側中間スリーブ溝部42の内側を向いている。この面44は、下側中間スリーブ溝部42に配置された中間スリーブ22の端面22aと対向するように構成されている。以下では、この面44を下側中間スリーブ対向面(中間スリーブ対向面)44とする。
【0023】
下側中間スリーブ溝部42は、配置される中間スリーブ22の下部側の断面形状よりもやや大きく、長さ寸法(短辺方向の寸法)も中間スリーブ22の長さ寸法(軸方向の寸法)よりもやや大きく形成されている。
下側ケーブル本体溝部43は、短辺方向に延び、断面形状がケーブル本体21の下部側の断面形状とほぼ同じ形状に形成されている。
【0024】
図6に示すように、下側プレート4には、ボルト51が挿通される複数の下側ボルト孔45が下側ケーブル溝部41と干渉しない位置に形成されている。
下側ボルト孔45は、下側プレート4の短辺方向の両端部それぞれの近傍に長辺方向に間隔をあけて形成されている。
【0025】
上側プレート3と下側プレート4とが上下に重なると以下のようになる。
図5、
図8および
図9に示すように、上側中間スリーブ溝部32と下側中間スリーブ溝部42とは、上下方向に重なって配置される。以下では、上側中間スリーブ溝部32と下側中間スリーブ溝部42とを合わせて中間スリーブ溝部61とする。
図6、
図8および
図9に示すように、上側ケーブル本体溝部33と下側ケーブル本体溝部43とは、上下方向に重なって配置される。
図8、
図9に示すように、上側中間スリーブ対向面34と下側中間スリーブ対向面44とは、上下方向に連続して面一の平面となるように配置される。以下では、上側中間スリーブ対向面34と下側中間スリーブ対向面44とを合わせて中間スリーブ対向面62とする。
【0026】
上側ボルト孔35と下側ボルト孔45とは、上下方向に重なって配置される。
上側ボルト孔35および下側ボルト孔45には、下側プレート4の下側からボルト51が挿通され、上側プレート3の上側においてボルト51にナット52が締結されるように構成されている。下側ボルト孔45の下部側は、その上部側および上側ボルト孔35よりも大径に形成され、ボルト51の頭部を挿入可能に構成されている。
【0027】
このような上側プレート3および下側プレート4に、ケーブル2が上下方向から挟まれると、中間スリーブ22が上側中間スリーブ溝部32および下側中間スリーブ溝部42に配置され、ケーブル本体21が上側ケーブル本体溝部33および下側ケーブル本体溝部43に配置される。
本実施形態では、第2ケーブル24のケーブル本体21は、中間スリーブ22に近接する側から離間する側に向かって漸次上側に向かうように延びている。このため、第2ケーブル24のケーブル本体21は、大部分が上側ケーブル本体溝部33に配置されている。
【0028】
図8、
図9に示すように、中間スリーブ溝部61は、中間スリーブ22よりも長さ方向の寸法が大きく設定されている。これにより、中間スリーブ22の両端面22aは、それぞれ中間スリーブ溝部61の中間スリーブ対向面62と離間し、中間スリーブ対向面62との間に隙間63が形成される。このため、本実施形態による中間クランプ1は、中間スリーブ22の両端面22aそれぞれと中間スリーブ対向面62との隙間63を埋めるシムプレート7を有している。
【0029】
図3、
図7、
図8および
図9に示すように、本実施形態では、下側プレート4には、下側ケーブル溝部41における下側中間スリーブ溝部42の長さ方向の両端部それぞれに上下方向に貫通し、シムプレート7を挿通可能なシムプレート挿通孔46が形成されている。シムプレート7は、下側プレート4の下側からシムプレート挿通孔46を通って下側中間スリーブ溝部42および上側中間スリーブ溝部32に挿入されるように構成されている。
【0030】
また、本実施形態では、シムプレート挿通孔46から挿入されたシムプレート7がシムプレート挿通孔46から脱落しないためのカバー部材8が設けられている。
カバー部材8は、鋼板をC字形(コの字形)状に屈曲させた部材で、下側プレート4の下面および側面に沿って下側プレート4にネジなどで固定されている。カバー部材8は、シムプレート挿通孔46の下側に配置され、シムプレート挿通孔46を下側から塞ぐように構成されている。
【0031】
図10および
図11に示すように、シムプレート7は、板状の部材で、鋼板などで形成されている。
図10には、第1ケーブル23に対応するシムプレート7を示し、
図11には、第2ケーブル24に対応するシムプレート7を示している。
シムプレート7は、板面がケーブル2の軸方向(上側プレート3および下側プレート4の短辺方向)を向いた姿勢で中間スリーブ22の両端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63に設置される。上記のように設置されたシムプレート7における一対のプレート3,4の長辺方向を幅方向とし、一対のプレート3,4の短辺方向を厚さ方向とする。
【0032】
シムプレート7には、幅方向の中間部に上下方向の中間部から上方に開口する切り欠き部71が形成されている。
図7(a)、(b)に示すように、この切り欠き部71は、ケーブル本体21が挿入されるように構成され、幅寸法がケーブル本体21の径よりもやや大きく設定されている。
図8、
図9に示すように、シムプレート7は、下側中間スリーブ溝部42および上側中間スリーブ溝部32に挿入されると、上部側が上側中間スリーブ溝部32に配置されて上側中間スリーブ対向面34と対向し、下部側が下側中間スリーブ溝部42に配置されて下側中間スリーブ対向面44と対向するように構成されている。
【0033】
図12に示すように、シムプレート7は、中間スリーブ22の両端面22aそれぞれと中間スリーブ対向面62との隙間63にその寸法に合わせて1枚または複数枚設置される(
図12では、4枚のシムプレート7が設けられている)。
本実施形態では、厚さの異なる数種類の平板状の平板シムプレート72と、上部側から下部側に向かって漸次厚くなる楔形の第1楔形シムプレート73と、下部側から上部側に向かって漸次厚くなる楔形の第2楔形シムプレート74と、が用意され、中間スリーブ22の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63の寸法に合わせたシムプレート7が1枚または複数枚設置されるように構成されている。いずれのシムプレート7も、板面が平面状に形成されていて、中間スリーブ22の端面22aまたは中間スリーブ対向面62に隣接する面は、中間スリーブ22の端面22aまたは中間スリーブ対向面62と面接触するように構成されている。
【0034】
本実施形態では、中間スリーブ22を介して中間クランプ1に伝達するケーブル2の滑動力について以下のように設計している。
まず、ケーブル2の滑動力を計算する。
ケーブル2の滑動力:T1-T2
T1:中間スリーブ22の長さ方向の一方側のケーブル本体21に作用する張力(作用方向はケーブル本体21の長さ方向の一方側に向かう方向、
図8参照)
T2:中間スリーブ22の長さ方向の他方側のケーブル本体21に作用する張力(作用方向はケーブル本体21の長さ方向の一方側に向かう方向、
図8参照)
中間スリーブ22のケーブル本体21を把握する把握力を、ケーブル2の滑動力よりも上回るように設計する。
【0035】
中間スリーブ22からシムプレート7を介して中間クランプ1に伝達する支圧耐力を計算する。支圧耐力は以下の式で示される。
支圧耐力:P=fp×Ap
fp:許容支圧応力度(N/mm
2)
Ap:支圧面積(mm
2)
支圧面積は、中間スリーブ22の端面22aのうち、シムプレート7と重なる部分(
図7のドットおよび符号Apで示している部分)の面積を示している。
支圧耐力をケーブル2の滑動力よりもうわまわるように設計する。
【0036】
このとき、中間スリーブ22が中間クランプ1の下側プレート4および上側プレート3に各々当たる場合は、ケーブル2の滑動力は、下側プレート4および上側プレート3の双方に作用する。その際に、下側プレート4に作用するケーブル2の滑動力がボルト51(締結具5)を介して上側プレート3へ伝達するものとし、ボルト51のせん断体力が下側プレート4に作用するケーブル2の滑動力を上回るように設計してもよい。
また、中間スリーブ22が上側プレート3のみに当たる場合は、上側プレート3のみにケーブル2の滑動力が作用し、中間スリーブ33が下側プレート4のみにあたる場合は、下側プレート4のみにケーブルの滑動力が作用する。
【0037】
このような中間クランプ1をケーブル2に設置するには、まず、ケーブル2を上側プレート3と下側プレート4とで挟み、上側プレート3と下側プレート4とを締結具5で仮締めする。このとき、ケーブル2の中間スリーブ22を上側プレート3の上側中間スリーブ溝部32および下側プレート4の下側中間スリーブ溝部42に配置し、ケーブル本体21の中間スリーブ22に接続されている側の端部近傍を上側プレート3の上側ケーブル本体溝部33および下側プレート4の下側ケーブル本体溝部43に配置する。
【0038】
続いて、下側プレート4のシムプレート挿通孔46からシムプレート7を挿入し、中間スリーブ22の両端面22aそれぞれと中間スリーブ対向面62との隙間63を塞ぐ。
中間スリーブ22の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63に複数のシムプレート7を重ねて設置する場合には、まず、中間スリーブ22の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63に1枚または複数枚の平板シムプレート72と第1楔形シムプレート73を設置する。このとき、中間スリーブ22の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63を完全に塞いだ状態にはせず、第2楔形シムプレート74を押し込んで入れることができる隙間を残しておく。そして、第1楔形シムプレート73の隣に、第2楔形シムプレート74をハンマーでたたくなどして押し込むことで、中間スリーブ22の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63をシムプレート7で確実にふさぐことができる。
【0039】
シムプレート7を中間スリーブ22の両端面22aそれぞれと中間スリーブ対向面62との隙間63に設置したら、下側プレート4にカバー部材8を取り付け、シムプレート挿通孔46を下側から塞ぐ。
締結具5を本締めし、上側プレート3と下側プレート4とを固定する。
【0040】
次に、上述した中間クランプ1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による中間クランプ1では、一対のプレート3,4は、中間スリーブ22嵌合溝に嵌合した中間スリーブ22がケーブル2の軸方向から対向する中間スリーブ22対向部を有し、中間スリーブ22嵌合溝には、中間スリーブ22と中間スリーブ22対向部との間を塞ぐシムプレート7が設けられている。これにより、ケーブル2の滑動力によって、ケーブル2が一対のプレート3,4に対して軸方向に移動しようとしても、中間スリーブ22がシムプレート7を介して中間スリーブ22対向部と当接して、この移動を阻止することができる。
また、シムプレート7によって中間スリーブ22と中間スリーブ22対向部との隙間63を塞ぐことができるため、ケーブル2の滑動力をシムプレート7を介して一対のプレート3,4に確実に伝達させることができる。
このため、ケーブル2の滑動力が大きい場合でも、一対のプレート3,4を大きくする必要がなく、中間クランプ1の小型化を図ることができる。
さらに、ケーブル2の滑動力が大きい場合でも、ケーブル2の滑動力を中間スリーブ22およびシムプレート7を介して中間スリーブ対向面62から一対のプレート3,4に伝達させることができる。
【0041】
また、下側プレート4には、シムプレート挿通孔46が形成されていることにより、シムプレート7を容易に設置することができる。
また、中間クランプ1は、シムプレート挿通孔46を塞ぐカバー部材8を有していることにより、シムプレート7がシムプレート挿通孔46を通って中間スリーブ22と中間スリーブ対向面62との間から外れることを防止することができる。
【0042】
以上、本発明による中間クランプの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、上側プレート3と下側プレート4とは、4本のケーブル2を挟むように構成されているが、1~3本や5本以上のケーブル2を挟むように構成されていてもよい。また、上記の実施形態では、上側プレート3と下側プレート4とは、異なる2種類のケーブル2を挟むように構成されているが、1種類のケーブル2を挟むように構成されていてもよいし、3種類以上のケーブル2を挟むように構成されていてもよい。また、ケーブル本体21が延びる方向は適宜設定されてよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、下側プレート4には、シムプレート挿通孔46が形成されているが、下側プレート4に代わって上側プレート3にシムプレート挿通孔46が形成されていてもよい。また、上側プレート3および下側プレート4にシムプレート挿通孔46が形成されておらず、上側プレート3と下側プレート4とでケーブル2を挟む前に中間スリーブ22と中間スリーブ対向面62との間にシムプレート7を設置し、シムプレート7も上側プレート3と下側プレート4との間に設置されるように構成されていてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、中間クランプ1は、シムプレート挿通孔46を塞ぐカバー部材8を有している。これに対し、シムプレート7が中間スリーブ22と中間スリーブ対向面62との間に設置された状態に維持されるのであれば、カバー部材8が設けられていなくてもよいし、カバー部8以外の手段でシムプレート7が中間スリーブ22と中間スリーブ対向面62との間に設置された状態に維持されるようにしてもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、厚さの異なる複数種類のシムプレート7や、平板状のシムプレート7、楔形状のシムプレート7が設けられているが、1枚のシムプレート7が中間スリーブ22と中間スリーブ対向面62との間に設置されるように構成されていてもよい。また、シムプレート7の形状や材質は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、シムプレート7は、中間スリーブ22の両端面22aそれぞれと中間スリーブ対向面62との隙間63に設置されているが、中間スリーブ22の一方の端面22aと中間スリーブ対向面62との隙間63に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 中間クランプ
2 ケーブル
3 上側プレート(プレート)
4 下側プレート(プレート)
5 締結具
7 シムプレート
8 カバー部材
21 ケーブル本体
22 中間スリーブ
34 上側中間スリーブ対向面(中間スリーブ対向面)
44 下側中間スリーブ対向面(中間スリーブ対向面)
46 シムプレート挿通孔
61 中間スリーブ溝部
62 中間スリーブ対向面