(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】内燃機関用マフラー
(51)【国際特許分類】
F01N 1/00 20060101AFI20220603BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20220603BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20220603BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20220603BHJP
F01N 13/20 20100101ALI20220603BHJP
【FI】
F01N1/00 E
F01N1/08 M
F01N13/08 A
F01N13/14
F01N13/20 Z
F01N1/08 L
(21)【出願番号】P 2018151833
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2020-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】江川 尚輝
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0217931(US,A1)
【文献】特開2009-228474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0085072(US,A1)
【文献】実開平02-099216(JP,U)
【文献】特開平11-182229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00- 1/08
F01N 13/08-13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(100)のシリンダ(100b)の排気部(100a)に固定され、前記排気部(100a)からの排ガスを導入する排ガス導入口(6)を有する内燃機関用マフラー(1)であって、
前記排気部(100a)に対面して前記内燃機関用マフラー(1)の第1側面(S1)をなし、前記排気部(100a)に固定されると共に前記排ガス導入口(6)が形成された第1外壁(2)と、
前記第1外壁(2)に対面し、前記第1外壁(2)との間に第1膨張室(21)を形成する第1隔壁(11)と、
前記第1隔壁(11)に対面し、前記第1隔壁(11)との間に前記第1膨張室(21)に連通する第2膨張室(22)を形成する第2隔壁(12)と、
前記第2隔壁(12)よりも前記排気部(100a)から離れる側で前記第2隔壁(12)に対面して前記内燃機関用マフラー(1)の第2側面(S2)をなし、前記第2隔壁(12)との間に断熱層(23)を形成する第2外壁(3)と、を備え、
前記第2隔壁(12)には、前記第2膨張室(22)内の前記排ガスを排出させる第1開口(12a)および前記第1開口(12a)の周縁から突出する第1筒部(12b)が形成され、
前記第2外壁(3)には、前記第1開口(12a)に対面する第2開口(3a)および前記第2開口(3a)の周縁から突出する第2筒部(3b)が形成され、
前記排ガスの流れを基準として上流側に位置する前記第1筒部(12b
)の先端が
下流側に位置する前記第2筒部(3b
)の内部に配置されており、前記第1筒部(12b)と前記第2筒部(3b)とが連結されることで、前記第1開口(12a)および前記第2開口(3a)を通って前記排ガスが排出されるように構成され、
前記第1筒部(12b)および前記第2筒部(3b)の間に径方向のクリアランスが形成されている、内燃機関用マフラー。
【請求項2】
前記第2外壁(3)に取り付けられて、前記第2開口(3a)からの前記排ガスを排出する排ガス排出口(7)を有する排気部材(17)を更に備え、
前記排気部材(17)は、前記第2外壁(3)に沿って延びるように配置されると共に、内燃機関用マフラー(1)の側方から見て前記第2外壁(3)の範囲内で終端している、請求項1に記載の内燃機関用マフラー。
【請求項3】
前記第1開口(12a)および前記第2開口(3a)は楕円形状である、請求項1または2に記載の内燃機関用マフラー。
【請求項4】
前記径方向のクリアランスは、前記第1筒部(12b)または前記第2筒部(3b)の板厚より小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関用マフラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用マフラーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に記載されるように、触媒を含む浄化器を備えたマフラーが知られている。特許文献1に記載されたマフラーでは、エンジンに取り付ける側とは反対側において二重壁面が設けられており、二重壁面間に、断熱材が充填されている。特許文献2に記載されたマフラーでは、酸化触媒を通過した排ガスが流入する第2膨張室を画成するプロテクタが、外壁をなすマフラカバーによって覆われている。プロテクタとマフラカバーによって画成された第3膨張室には高温の排ガスが流れないため、マフラカバーの表面温度は低減される。マフラカバーの端面には、第2膨張室を通過した排ガスを排出するためのテールパイプが設けられている。プロテクタに設けられた排気管とテールパイプとの間には円環状のガス流路が形成されており、このガス流路が第3膨張室に連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3517834号公報
【文献】特開2015-203364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマフラーでは、テールパイプ等の部品を用いて、内部の排ガスを排気していた。二重壁面構造を採用することで、マフラー表面の温度を低減することができる。しかしながら、テールパイプを用いた従来の構造は、排ガスの排出口までを含むマフラー全体のサイズを大きくしてしまう。マフラー全体のサイズが大きくなると、排出口と、マフラーの周囲の部材との距離が短くなり、よってマフラーの周囲の部材の温度を低減することが難しい。
【0005】
本発明は、マフラー全体のコンパクト化を図ることにより、マフラーの周囲に配置される部材の温度を低減させやすい内燃機関用マフラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関(100)のシリンダ(100b)の排気部(100a)に固定され、排気部(100a)からの排ガスを導入する排ガス導入口(6)を有する内燃機関用マフラー(1)であって、排気部(100a)に対面して内燃機関用マフラー(1)の第1側面(S1)をなし、排気部(100a)に固定されると共に排ガス導入口(6)が形成された第1外壁(2)と、第1外壁(2)に対面し、第1外壁(2)との間に第1膨張室(21)を形成する第1隔壁(11)と、第1隔壁(11)に対面し、第1隔壁(11)との間に第1膨張室(21)に連通する第2膨張室(22)を形成する第2隔壁(12)と、第2隔壁(12)よりも排気部(100a)から離れる側で第2隔壁(12)に対面して内燃機関用マフラー(1)の第2側面(S2)をなし、第2隔壁(12)との間に断熱層(23)を形成する第2外壁(3)と、を備え、第2隔壁(12)には、第2膨張室(22)内の排ガスを排出させる第1開口(12a)および第1開口(12a)の周縁から突出する第1筒部(12b)が形成され、第2外壁(3)には、第1開口(12a)に対面する第2開口(3a)および第2開口(3a)の周縁から突出する第2筒部(3b)が形成され、排ガスの流れを基準として上流側に位置する第1筒部(12b)の先端が下流側に位置する第2筒部(3b)の内部に配置されており、第1筒部(12b)と第2筒部(3b)とが連結されることで、第1開口(12a)および第2開口(3a)を通って排ガスが排出されるように構成され、第1筒部(12b)および第2筒部(3b)の間に径方向のクリアランスが形成されている。
【0007】
この内燃機関用マフラー(1)は、内燃機関(100)のシリンダ(100b)に近い位置に配置されて第1側面(S1)をなす第1外壁(2)と、シリンダ(100b)から離れた位置に配置されて第2側面(S2)をなす第2外壁(3)と、を備える。排ガスは、第1外壁(2)と第1隔壁(11)との間に形成された第1膨張室(21)を通過し、その後、第1隔壁(11)と第2隔壁(12)との間に形成された第2膨張室(22)を通過する。第2膨張室(22)内の排ガスは、第1開口(12a)および第2開口(3a)を通って第2外壁(3)の外部に排出される。第2隔壁(12)と第2外壁(3)との間には、排ガスが通過しない断熱層(23)が形成されているので、第2外壁(3)の表面温度が低減される。しかも、排ガスは、第1筒部(12b)と第2筒部(3b)とからなる連結部を通って排出されるので、互いに対面する第2隔壁(12)および第2外壁(3)の間に排気に係る構造が形成されており、マフラー全体のコンパクト化が図られている。すなわち、従来のテールパイプのような、周囲の部材に向けて突出する部材がない。したがって、内燃機関用マフラー(1)の周囲に配置される部材の温度を低減させやすくなっている。なお、径方向のクリアランスは、第1筒部(12b)または第2筒部(3b)の板厚より小さくてもよい。この場合、これらの筒部間のクリアランスが小さくなっており、排ガスが断熱層(23)へと進入することを抑制できる。
【0008】
第2外壁(3)に取り付けられて、第2開口(3a)からの排ガスを排出する排ガス排出口(7)を有する排気部材(17)を更に備え、排気部材(17)は、第2外壁(3)に沿って延びるように配置されると共に、内燃機関用マフラー(1)の側方から見て第2外壁(3)の範囲内で終端していてもよい。この場合、排気部材(17)の排ガス排出口(7)は、側面から見て、第2外壁(3)の範囲内に位置する。すなわち、側面から見て、排ガス排出口(7)が第2外壁(3)から突出していない。よって、排ガス排出口(7)を出た後の通路(空間)を広くとれる。たとえば、排ガス排出口(7)と周囲の部材との間の距離を十分に確保することができる。
【0009】
第1開口(12a)および第2開口(3a)は楕円形状であってもよい。この場合、第1開口(12a)および第2開口(3a)の開口面積を確保しつつも、楕円の短軸に相当する部分の両側に、排気部材(17)等を取り付けるための締結部材等のスペースを確保できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに対面する第2隔壁(12)および第2外壁(3)の間に排気に係る構造が形成されており、マフラー全体のコンパクト化が図られている。したがって、内燃機関用マフラー(1)の周囲に配置される部材の温度を低減させやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関用マフラーが適用された内燃機関の正面図である。
【
図2】
図1の内燃機関の右側面図であり、エンジンカバーの一部を破断して内燃機関用マフラーの右側面を示す図である。
【
図3】
図2中の内燃機関用マフラーを示す斜視図である。
【
図5】内燃機関用マフラーの正面図であり、一部を破断して内部の断面を示す図である。
【
図6】内燃機関用マフラーから排気部材を取り外した状態を示す正面図である。
【
図8】
図4のVIII-VIII切断線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
まず、
図1および
図2を参照して、一実施形態に係る内燃機関用マフラー1およびこの内燃機関用マフラー1が適用されたエンジン(内燃機関)100について説明する。
図1および
図2に示されるように、内燃機関用マフラー1は、たとえば携帯式のエンジン100のシリンダ100bに固定されて、エンジン100の排ガスを流入させ、内部を通じて消音した排ガスを排出する。内燃機関用マフラー1は、排ガスの流入側に配置される椀状のマフラボディー(第1外壁)2と、排ガスの排出側に配置されてマフラボディー2に被さる椀状のマフラカバー(第2外壁)3とを備える。マフラボディー2の縁部とマフラカバー3の縁部とが接合されて、内燃機関用マフラー1の外形が構成されている(
図7も参照)。
【0015】
図1および
図3に示されるように、マフラボディー2は、シリンダ100bに近い位置に配置されて内燃機関用マフラー1の第1側面S1をなす。シリンダ100bの排気部100aに対面するマフラボディー2が、排気部100aに固定される。一方のマフラカバー3は、シリンダ100bから離れた位置に配置されて内燃機関用マフラー1の第2側面S2をなす。
【0016】
内燃機関用マフラー1は、エンジン100のシリンダ100bのたとえば右側面に形成された排気部100aに固定されている。マフラボディー2は、エンジン100のシリンダ100bの排気部100aに対面する取付面部2aを有している。平坦な取付面部2aの中央には、排気部100aからの排ガスを導入する排ガス導入口6(
図7参照)が形成されている。取付面部2aは、図示しないシール部材を介して排気部100aに対面している。
図2、
図3および
図7に示されるように、取付面部2aのうち、排ガス導入口6の周囲には、2つのボルト孔10が設けられている。これらのボルト孔10に通されるボルト10aが、排気部100aに設けられた雌ねじに螺合し締め込まれることにより、マフラカバー3およびマフラボディー2がエンジン100の排気部100aに共締めされて、内燃機関用マフラー1がエンジン100に固定される。
【0017】
図1に示されるように、エンジン100は、シリンダ100bおよび内燃機関用マフラー1を覆うエンジンカバー5を有する。エンジンカバー5は、エンジン100のフレーム等に固定されており、作業者がエンジン100または内燃機関用マフラー1に触れることを防止する。エンジンカバー5は、エンジン100および内燃機関用マフラー1に対する通気を阻害しないよう、多数のスリットを有しており、その大部分において開口している。エンジンカバー5と内燃機関用マフラー1との間には、所定の大きさの空間が設けられている。エンジンカバー5の前面には、内燃機関用マフラー1の排気部材17の軸線上に位置する矩形の排気口5aが形成されている。
図1に示されるように、エンジン100の正面から見て、排気口5aを通じて排ガス排出口7が見えている。
【0018】
続いて、内燃機関用マフラー1について詳細に説明する。
図5および
図7に示されるように、内燃機関用マフラー1の内部には、第1隔壁11およびプロテクタ(第2隔壁)12が固定されている。第1隔壁11およびプロテクタ12は、それらの周縁部が重なり合った状態でマフラボディー2の縁部とマフラカバー3の縁部との間に挟み込まれることにより、固定されている。第1隔壁11は、たとえば平板状である。第1隔壁11は、マフラボディー2よりも排気部100aから離れる側で、マフラボディー2に対面する。
【0019】
プロテクタ12は、第1隔壁11のマフラカバー3側に固定されている。プロテクタ12は、第1隔壁11および酸化触媒4に対面すると共に、マフラカバー3に向けて膨らむ形状をなしている。すなわち、プロテクタ12は、第1隔壁11よりも排気部100aから離れる側で、プロテクタ12に対面する。また、プロテクタ12は、マフラカバー3に対面しており、第1隔壁11とマフラカバー3との間に配置されている。すなわち、マフラカバー3は、プロテクタ12よりも排気部100aから離れる側で、プロテクタ12に対面する。
【0020】
内燃機関用マフラー1の内部には、円柱状の酸化触媒(触媒部)4が設けられている。酸化触媒4は、第1隔壁11に形成された円形の開口11a内に配置されており、その中心軸線が上記のボルト孔10と略平行な向きに取り付けられている。酸化触媒4は、エンジンからの排ガスを通過させることにより、排ガス内の未燃焼炭化水素を燃焼させる。
【0021】
第1隔壁11は、内燃機関用マフラー1の内部を流入側と流出側とに区画している。マフラボディー2と第1隔壁11との間には、第1膨張室21が形成されている。この第1膨張室21には、排ガス導入口6を通じて排ガスが流入する。第1膨張室21に流入した排ガスは、酸化触媒4を通って第1膨張室21から流出する。すなわち、第1膨張室21の流入側にマフラボディー2が設けられており、第1膨張室21の流出側に第1隔壁11が設けられている。
【0022】
第1隔壁11とプロテクタ12との間には、第2膨張室22が形成されている。第1膨張室21と第2膨張室22とは、酸化触媒4に形成された多数の細孔を介して連通している。第2膨張室22には、酸化触媒4を通過した排ガスが通過する。
【0023】
なお、第1隔壁11には、酸化触媒4を覆う防護カバー14が固定されている。防護カバー14は、酸化触媒4のプロテクタ12側(すなわちマフラカバー3側)に取り付けられている。防護カバー14は、有底円筒状のカバーであり、その開口された端縁(シリンダ100b側の端縁)が第1隔壁11に接合されている。防護カバー14の下方には、第2膨張室22に連通するガス流路14aが形成されている。
【0024】
プロテクタ12とマフラカバー3との間には、断熱層23が形成されている。この断熱層23は、第2膨張室22をマフラカバー3側から覆うように設けられている。断熱層23には、酸化触媒4および第2膨張室22を通過した高温の排ガスは流れないように構成されている。
【0025】
内燃機関用マフラー1は、第2膨張室22からの排ガスの排出に係る独自の構造を備える。以下、詳細に説明する。
図5、
図6および
図8に示されるように、プロテクタ12のたとえば下部には、第2膨張室22内の排ガスを排出させる第1開口12aが形成されている。またプロテクタ12には、第1開口12aの周縁からマフラカバー3(マフラカバー3の第2開口3a)に向けて突出する第1円筒部(第1筒部)12bが形成されている。第1開口12aは、たとえば、図示水平方向に向けられた長軸と、図示鉛直方向に向けられた短軸とを有する楕円形状である。この第1開口12aの形状に対応して、第1円筒部12bの軸線に垂直な断面も、楕円形状である。これらの第1開口12aおよび第1円筒部12bは、たとえばバーリング加工によって形成される。第1円筒部12bは、たとえばプロテクタ12の壁面から垂直に突出する。第1円筒部12bは、第1バーリング加工部であると言える。第1開口12aおよび第1円筒部12bは、バーリング金型を用いた公知の方法によって形成され得る。
【0026】
第1円筒部12bは、より詳細には、第1開口12aの周縁に接続されたテーパ部12baと、テーパ部12baの先端に接続された直管部12bbとを含む。テーパ部12baの内径は、マフラカバー3に近づくにつれて、徐々に縮小されている。直管部12bbの内径は一定である。なお、本明細書において「内径」とは、断面が楕円形状の筒部に対しては、たとえば楕円の長径または短径を意味する。断面が円形の筒部に対しては、「内径」は、円の直径を意味する。あるいは、断面が非円形の筒部に対しては、「内径」は、筒部の内面の幅(内面の2点間の距離)を意味する。なお、本明細書における「外径」についても、筒部の断面形状に応じて、「内径」と同様に定められ得る。
【0027】
一方、マフラカバー3のたとえば下部には、プロテクタ12の第1開口12aに対面する第2開口3aが形成されている。またマフラカバー3には、第2開口3aの周縁からプロテクタ12(プロテクタ12の第1開口12a)に向けて突出する第2円筒部(第2筒部)3bが形成されている。第2開口3aは、たとえば、図示水平方向に向けられた長軸と、図示鉛直方向に向けられた短軸とを有する楕円形状である。この第2開口3aの形状に対応して、第2円筒部3bの軸線に垂直な断面も、楕円形状である。これらの第2開口3aおよび第2円筒部3bは、たとえばバーリング加工によって形成される。第2円筒部3bは、たとえばマフラカバー3の壁面から垂直に突出する。第2円筒部3bは、第2バーリング加工部であると言える。第2開口3aおよび第2円筒部3bは、バーリング金型を用いた公知の方法によって形成され得る。
【0028】
第2円筒部3bは、より詳細には、第2開口3aの周縁に接続されたテーパ部3baと、テーパ部3baの先端に接続された直管部3bbとを含む。テーパ部3baの内径は、プロテクタ12に近づくにつれて、徐々に縮小されている。テーパ部3baの内径は一定である。このように、プロテクタ12およびマフラカバー3には、これらの間の空間すなわち断熱層23に突出するようにして、第1バーリング加工部および第2バーリング加工部がそれぞれ形成されている。
【0029】
第1開口12aおよび第1円筒部12bが形成される位置と、第2開口3aおよび第2円筒部3bが形成される位置とは、内燃機関用マフラー1の側面から見て、一致している。これらの位置は、たとえば、内燃機関用マフラー1の右側面から見て、マフラカバー3の幅方向中央部よりも一方側に(
図6における右側、背面側)偏っていてもよい。すなわち、これらの位置は、
図1および
図2に示されるエンジンカバー5の正面に形成された排気口5aから比較的離れた位置であってもよい。
【0030】
第1円筒部12bと第2円筒部3bとは、これらの内部が連通するように、連結されている。より詳細には、
図5および
図8に示されるように、第2円筒部3bと第1円筒部12bとは、同心状に形成されており、共通の軸線を有する。第2円筒部3bの内径は第1円筒部12bの外径よりも大きい。これにより、第1円筒部12bの先端である直管部12bbが、第2円筒部3bの直管部3bbの内部に配置されている。すなわち、排ガスの流れを基準として上流側の第1円筒部12bが、下流側の第2円筒部3bの内部に配置されている。そして、同心状に配置された第1円筒部12bの直管部12bbと第2円筒部3bの直管部3bbとの間には、径方向において僅かなクリアランスが形成されている。このクリアランスは、たとえば楕円形の環状である。クリアランスは、たとえば、第1円筒部12bの板厚より小さく、また第2円筒部3bの板厚より小さい。このクリアランスを介して、第2膨張室22は断熱層23に連通するが、クリアランスが最小限とされていることにより、断熱層23への排ガスの進入は抑制されており、断熱層23による断熱効果が向上している。
【0031】
上記のようにして、第1円筒部12bと第2円筒部3bとが、ガスを流通可能に連結されており、これらの第1円筒部12bおよび第2円筒部3bが、連結部30を構成している(
図8参照)。第1円筒部12bと第2円筒部3bとが連結されることで、内燃機関用マフラー1は、第1開口12aおよび第2開口3aを通って排ガスが排出されるように構成されている。
【0032】
図3~
図7に示されるように、マフラカバー3の下部であって第2開口3aの周囲には、平坦な取付面部3dが形成されている。この取付面部3dに、第2開口3aからの排ガスを排出するための排気部材17が取り付けられている。排気部材17は、たとえば取付面部3dに対して当接する平坦な取付板部17bと、取付板部17bに接続されて断面C字状に膨らむ排気管部17aとを含む。排気管部17aは、マフラカバー3の表面に沿ってたとえば水平方向に延びるように配置されている。
【0033】
図6に示されるように、取付面部3dのうち、第2開口3aの周囲には、2つのボルト孔20が設けられている。より詳細には、2つのボルト孔20は、第2開口3aの短軸に相当する部分の両側すなわち上下両側に形成されている。これらのボルト孔20に通されるボルト20aが、たとえばプロテクタ12に形成された雌ねじに螺合し締め込まれることにより、排気部材17がマフラカバー3の取付面部3dに固定される。
【0034】
図8に示されるように、排気管部17aの第1端(背面側の端部)は閉鎖されており、排気管部17aの第2端(正面側の端部)は開放されて、内燃機関用マフラー1の排ガス排出口7を形成している。排ガス排出口7は、マフラカバー3の第2開口3aからの排ガスを内燃機関用マフラー1の外部に排出する。排気管部17aは、マフラカバー3の取付面部3dに沿って配置され、しかも、内燃機関用マフラー1の側方から見てマフラカバー3の範囲内で終端している。すなわち、排気管部17aは、内燃機関用マフラー1の側方から見て、マフラカバー3から突出していない。これにより、
図4に示されるように、排ガス排出口7は、内燃機関用マフラー1の側方から見て、マフラカバー3上に位置している。
【0035】
本実施形態の内燃機関用マフラー1は、エンジン100のシリンダ100bに近い位置に配置されて第1側面S1をなすマフラボディー2と、シリンダ100bから離れた位置に配置されて第2側面S2をなすマフラカバー3と、を備える。排ガスは、マフラボディー2と第1隔壁11との間に形成された第1膨張室21を通過し、その後、第1隔壁11とプロテクタ12との間に形成された第2膨張室22を通過する。第2膨張室22内の排ガスは、第1開口12aおよび第2開口3aを通ってマフラカバー3の外部に排出される。プロテクタ12とマフラカバー3との間には、排ガスが通過しない断熱層23が形成されているので、マフラカバー3の表面温度が低減される。しかも、排ガスは、第1円筒部12bと第2円筒部3bとからなる連結部30を通って排出されるので、互いに対面するプロテクタ12およびマフラカバー3の間に排気に係る構造が形成されており、マフラー全体のコンパクト化が図られている。すなわち、従来のテールパイプのような、周囲の部材に向けて突出する部材がない。したがって、内燃機関用マフラー1の周囲に配置される部材(たとえば、エンジンカバー5等)の温度を低減させやすくなっている。しかも、内燃機関用マフラー1の上記構造によれば、(従来必要であった)テールパイプの溶接等といった工程が不要になっており、低コスト化が図られている。従来の構造と比して、部品点数の増加も抑えられており、同等の部品点数で構成可能である。
【0036】
排気部材17の排ガス排出口7は、側面から見て、マフラカバー3の範囲内に位置する。すなわち、側面から見て、排ガス排出口7がマフラカバー3から突出していない。よって、排ガス排出口7を出た後の通路(空間)を広くとれる。たとえば、
図2に示されるように、排ガス排出口7とエンジンカバー5の排気口5aとの間の距離Lを十分に確保することができる。たとえば、作業者はエンジンカバー5の排気口5a周辺を触る可能性があるが、そのような場合であっても、作業者に対する安全性が高められている。
【0037】
楕円形状の第1開口12aおよび第2開口3aによれば、これらの開口面積を確保しつつも、楕円の短軸に相当する部分の両側(たとえば上下両側)に、排気部材17を取り付けるためのボルト20a等のスペースを確保できる。
【0038】
第1円筒部12bおよび第2円筒部3bの間のクリアランスが小さくなっており、排ガスが断熱層23へと進入することを抑制できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、連結部30において、第1円筒部12bの内径が第2円筒部3bの外径はよりも大きくなっており、第2円筒部3bの先端である直管部3bbが、第1円筒部12bの直管部12bbの内部に配置されていてもよい。すなわち、排ガスの流れを基準として上流側の第1円筒部12bが、下流側の第2円筒部3bの内部に配置されていてもよい。
【0040】
あるいは、第1円筒部12bおよび第2円筒部3bの先端同士が突き合わせられてもよい。第1円筒部12bおよび第2円筒部3bの先端同士が向かい合うが、互いに接触せずに隙間を有してもよい。第1円筒部12bおよび第2円筒部3bは、上記したように非接触となるように配置されてもよいが、接触していてもよい。
【0041】
第1円筒部12bおよび第2円筒部3bの形状は、適宜に変更可能である。第1円筒部12bおよび第2円筒部3bが、バーリング加工以外の方法をもって形成されてもよい。たとえば、プロテクタ12およびマフラカバー3とは別体として製作された第1円筒部12bおよび第2円筒部3bが、プロテクタ12およびマフラカバー3に接合されてもよい。
【0042】
排気部材17の向きは、上記実施形態と異なる向きに向けられてもよい。第1開口12aおよび第2開口3aは円形であってもよいし、矩形等の他の形状であってもよい。
【0043】
酸化触媒4を覆う防護カバー14は省略されてもよい。第1膨張室21、第2膨張室22、および断熱層23の形状や配置は、適宜に変更可能である。
【0044】
また、本発明の内燃機関用マフラーは、携帯式2サイクルエンジンに限られず、他の形式の携帯式エンジンにも適用することができる。本発明は、どのようなエンジンにも適用可能であり、汎用エンジン全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…内燃機関用マフラー、2…マフラボディー(第1外壁)、3…マフラカバー(第2外壁)、3a…第2開口、3b…第2円筒部(第2筒部)、4…酸化触媒、6…排ガス導入口、7…排ガス排出口、11…第1隔壁、12…プロテクタ(第2隔壁)、12a…第1開口、12b…第1円筒部(第1筒部)、17…排気部材、21…第1膨張室、22…第2膨張室、23…断熱層、30…連結部、100…エンジン(内燃機関)、100a…排気部、100b…シリンダ、S1…第1側面、S2…第2側面。