IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケーティーエム アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-振動ダンパー 図1
  • 特許-振動ダンパー 図2
  • 特許-振動ダンパー 図3
  • 特許-振動ダンパー 図4
  • 特許-振動ダンパー 図5
  • 特許-振動ダンパー 図6
  • 特許-振動ダンパー 図7
  • 特許-振動ダンパー 図8
  • 特許-振動ダンパー 図9
  • 特許-振動ダンパー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】振動ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/44 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
F16F9/44
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019111584
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2019219057
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】10 2018 114 679.5
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ペオゴラロ
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-172394(JP,A)
【文献】国際公開第2011/080795(WO,A1)
【文献】特表2012-526251(JP,A)
【文献】特開2009-085263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンピング流体を受取るために形成されたシリンダー(2)を有し、前記シリンダー(2)内で軸方向に可動である作動ピストン(3)を有する振動ダンパー(1)であって、前記作動ピストン(3)は、軸方向通路(19)を形成されたピストンロッド(4)上に誘導方式で配置され、前記シリンダーの内側チャンバーを第1の作業空間(15)及び第2の作業空間(16)に分割し、
前記振動ダンパー(1)は、
少なくとも前記第2の作業空間(16)から前記第1の作業空間への流体流のための、前記ピストンロッド(4)を少なくとも部分的に軸方向に通過させる流体連通通路(20)を有し、
圧力段ダンピングを設定するための第1の調整デバイス(25)及び牽引段ダンピングを設定するための第2の調整デバイス(35)を有し、
前記第1の調整デバイス(25)は、前記圧力段のために貫通流開口を変更するために設定することができる2つの弁デバイス(26,27)を有し、
前記第2の調整デバイス(35)は、前記牽引段のために第3の弁デバイス(36)の第1の貫通流開口(43)を変更するために前記ピストンロッド(4)の前記軸方向通路(19)内にシフト可能に配置された第1設定ロッド(38)を有し、
前記第2の調整デバイス(35)は、前記第3の弁デバイス(36)と別個に調整することができる第4の弁デバイス(44)であって、調整ニードル(48)を有する、第4の弁デバイス(44)を有し、前記調整ニードル(48)は、前記牽引段のために第2の貫通流開口(49)を変更するために設けられ、
前記調整ニードル(48)は、前記第2の作業空間(16)内の前記ダンピング流体の圧力によって提供される差表面(55)を、前記圧力が、前記第2の貫通流開口(49)の開放方向に前記調整ニードル(48)を提供するように有することを特徴とする、振動ダンパー(1)。
【請求項2】
前記調整ニードル(48)は軸方向変位のために形成され、前記軸方向変位は、前記調整ニードル(48)の軸方向変位量に応じて、前記第2の作業空間(16)から前記第1の作業空間(15)へのダンピング流体のために前記第2の貫通流開口(49)を変更可能に解放することを特徴とする、請求項1に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項3】
前記第4の弁デバイス(44)の前記調整ニードル(48)は、中空円柱であるように形成されたスリーブ本体(50)であって、前記第1設定ロッド(38)または前記第2の調整デバイス(35)の調整ニードル(39)を受取るための内側凹所(51)を有する、スリーブ本体(50)であり、前記第2の貫通流開口(49)の閉鎖位置でスリーブ本体(50)を提供するばねデバイス(47)と接触状態にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項4】
前記第4の弁デバイス(44)の前記調整ニードル(48)は、前記ピストンロッド(4)の前記軸方向通路(19)の領域上に配置され、前記領域はブッシング(71)を備え、シールデバイス(53,54)は、前記第4の弁デバイス(44)の前記調整ニードル(48)の内周上に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項5】
前記第4の弁デバイス(44)の前記調整ニードル(48)は、ダンピング流体のために、前記第4の弁デバイス(44)の前記調整ニードル(48)の前記外周から前記内周の方向に走行する通路(57)を備える、ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項6】
前記ピストンロッド(4)の前記軸方向通路(19)内に配置され、中空円柱であるように形成された第2設定ロッド(46)であって、前記牽引段のために、前記第2の貫通流開口(49)を変更するために前記第2設定ロッド(46)とアクティブな係合状態になるようにもたらすことができる設定要素(45)によって軸方向にシフト可能であるように形成された、前記第2設定ロッド(46)を特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項7】
前記第2の調整デバイス(35)は、前記ピストンロッドに対して軸方向にシフト可能で、円柱であるように形成された前記第2の調整デバイス(35)の調整ニードル(39)を有し、前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)の前記軸方向シフトは、前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)の軸方向シフト量に応じて、前記第2の作業空間(16)から前記第1の作業空間(15)へのダンピング流体のために前記第1の貫通流開口(43)を変更可能に解放することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項8】
前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)は、前記第1設定ロッド(38)と当接状態にもたらすことができるように形成され、前記第1の貫通流開口(43)は、前記第1設定ロッド(38)の軸方向シフトによって変更可能に解放することができることを特徴とする、請求項7に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項9】
前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)は、前側端部上にV状凹所(66)を有し、前記前側端部は、管状であるように形成されたスリーブ本体(42)の凹所内に延在し、前記凹所は、前記端部の構成に相補的であるように形成され、前記端部は前記凹所(67)の内壁に当接することを特徴とする、請求項7または8に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項10】
設定要素(37)であって、前記牽引段のために、前記第1の貫通流開口(43)を変更するために前記第1設定ロッド(38)とアクティブな係合状態になるようにもたらすことができる設定要素(37)を特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項11】
前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)は、前記第2の調整デバイス(35)の前記調整ニードル(39)の軸方向シフトが、前記ダンピング流体を前記第2の作業空間(16)から前記第1の作業空間(15)に通過させるために前記V状凹所(66)の少なくとも1つの部分的領域を解放するように、管状であるように形成された前記スリーブ本体(42)に対して配置されることを特徴とする、請求項9または10に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項12】
前記第1の調整デバイス(25)の2つの前記弁デバイス(26,27)は、前記ダンピング流体の第1のより低い質量流量及び前記第1の作業空間(15)からのダンピング流体の第2のより高い質量流量を、ダンピング流体を受取るために補償チャンバー(23)の方向に変更するように形成されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項13】
一方の前記弁デバイス(27)は、前記第1の質量流量を変更するために、より低い質量流量の形態のダンピング流体の通過のために設けられたボア(29)に対してシフト可能な弁ニードル(28)を有し、他方の前記弁デバイス(26)は、前記第2の質量流量を変更するために、ばねデバイス(33)によって変更可能予張力を提供することができるばね板配置構成(34)を有することを特徴とする、請求項12に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項14】
前記作動ピストン(3)は、前記第1の作業空間(15)と前記第2の作業空間(16)との間のダンピング流体の通過のために少なくとも1つの通路(72)が形成され、ダンピング流体の通路を選択的に解放するためにばねディスク(65)を備えることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【請求項15】
振動ダンパー(1)のダンピング流体の圧力を提供するためのガスばね(24)を特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の振動ダンパー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルによる、ダンピング流体を受取るために形成されたシリンダー、及び、シリンダー内で軸方向に可動の作動ピストンを有する振動ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な振動ダンパーは、乗り物、例えばオートバイに関するばね移動を減衰させるために使用することができる。
【0003】
オートバイ用のフロントホイールフォークが独国出願公告第10 2004 014 458号明細書から知られており、二又ショックアブソーバーがショック吸収デバイスとして使用される。これは、作動ピストンを有する作業シリンダーを有し、作動ピストンは作動シリンダーの内側空間を2つの作業空間に分割する。
【0004】
同様のフロントホイールフォークは、独国出願公告第10 2006 052 228号明細書から知られており、二又ショックアブソーバーを同様に使用する。
【0005】
オートバイ用のフロントホイールフォークは、欧州特許第2 110 300号明細書から同様に知られており、二又ショックアブソーバーがダンピングデバイスとして使用される。
【0006】
オートバイ用のダンパーは、米国特許第8,276,719号明細書から知られており、作動ピストンは、内部が中空であるように形成されるピストンロッド上に配置される。調整ニードルを有する調整ロッドは、ピストンロッドの内部に配置され、その調整ニードルによって、圧縮チャンバーからリバウンドチャンバーに入るダンピング流体の流れは、押込み移動及び引張り移動の両方について調整することができる。そのため、ダンピングは、撓み移動(deflection movement)と伸張移動(extension movement)の両方について設定することができるが、互いに独立に設定することができない。
【0007】
油圧ショックアブソーバーは欧州特許第1 473 483号明細書から知られており、ピストンロッドを有し、ピストンロッドは内部が中空であるように形成され、ピストンロッド内に、設定チューブ及び設定ロッドが配置され、ピストンロッドによって、2つの設定要素を作動することができる。
【0008】
油圧式ダンピング振動ダンパーは、独国特許発明第41 03 356号明細書から知られており、ピストンロッドを有し、ピストンロッドは内部が中空であるように形成され、ピストンロッド内で軸方向にシフト可能な制御ロッドを有する。ボアは、制御ロッドによって覆われるまたは解放されることができ、それにより、振動ダンパーのダンピング特性の変更が可能である。
【0009】
油圧ショックアブソーバーは米国特許第8,235,187号明細書から知られており、中空ピストンロッドを同様に有し、中空ピストンロッド内に、設定ロッドが配置され、調整ニードルが、中空ピストンロッド上に配置されることを見出すことができる。リバウンド移動中のダンパーのダンピング特性は、調整ニードルの長手方向シフトによって調整することができる。調整ニードルのシフトは、撓み移動中のダンピング特性の適応のために同様に役立つ。
【0010】
最後に、互いに独立に設定することができる牽引段及び圧力段についてのダンピングを有する振動ダンパーは、独国特許出願公開第10 2014 112 523号明細書から知られている。
【0011】
知られている更なる振動ダンパーはシリンダーを有し、シリンダー内に、シリンダー内で軸方向に可動の作動ピストンが設けられ、作動ピストンは、軸方向通路を形成されたピストンロッド上に誘導方式で配置され、シリンダーの内側空間を、撓み移動または圧縮移動の減衰のための第1の作業空間及び伸張移動またはリバウンド移動の減衰のための第2の作業空間に分割する。
【0012】
振動ダンパーのピストンロッドは、ダンピング流体の形態の作動流体の流れのための流体連通通路を有し、作動流体は、作動ピストンが牽引段または伸張移動のために第2の作業空間の方向にシフトし、したがって、作動流体の圧力が上昇すると、振動ダンパーの伸張移動中に調整され、作動流体は、ダンピングデバイスによって減衰される圧力段または撓み移動のために設けられた第1の作業空間の方向に減圧される。
【0013】
知られているショックアブソーバーまたは振動ダンパーの撓み移動によって、第1の作業空間内の作動圧力は、作動ピストンの移動のために上方向において上昇し、作動流体は、補償チャンバーの方向において減圧される。ここで、作動流体は、調整可能ダンピングデバイスを介して誘導され、こうして、ダンピング作業が実施される。
【0014】
例えば、クロスカントリースポーツオートバイの形態のオートバイのバックホイール上に、知られている振動ダンパーが配置されると、撓み移動及び伸張移動が、振動ダンパーによって減衰される。
【0015】
作動ピストンがシリンダー内で移動する速度は、とりわけ、オートバイがその上を移動する表面に依存する。起伏または凹所の形態で顕著なでこぼこを有する表面上を、オートバイが運転するとき、作動ピストンがシリンダー内でシフトする速度は、ほんのわずかでかつ顕著でないでこぼこを有する表面上をオートバイが運転するときより実質的に大きい。
【0016】
作動ピストンの高い変位速度について、大量のダンピング作業が振動ダンパーの圧力段によって実施される場合、これは、高いダンピング作業が作動ピストンの急速変位に対抗するため、リアホイールのジャーキー負荷を確実にもたらし、したがって、リアホイールは、運転レーンのでこぼこに追従できない。
【0017】
この問題を回避するために、圧力段ダンピングを調整するための第1の調整デバイスを有する振動ダンパーを設けることが既に知られており、その振動ダンパーは、圧力段のために貫通流開口を変化させるために調整可能である2つの弁デバイスであって、互いに独立に設定できる、2つの弁デバイスを有し、それにより、作動ピストンの高い変位速度の場合、高い流速による作動流体の変位のために、第1の作業空間から補償チャンバーの方向に弁デバイスをシフトでき、作動ピストンの低い変位速度の場合、作動流体が、低い流速を持って、補償チャンバーの方向にシフトできることが達成される。
【0018】
作動ピストンの高い変位速度は、第1の作業空間内の突然の圧力増加を確実にもたらし、一方、作動ピストンの低い変位速度は、第1の作業空間内のゆっくりした圧力増加を確実にもたらし、ゆっくりした圧力増加は、作動流体の高流量弁について、補償チャンバーの方向に弁デバイスを開放するほどには大幅には同様に増加しない。その理由は、作動流体の低流量弁が、補償チャンバーの方向に作動流体の低流量弁のための弁デバイスを介して減圧することができるからである。
【0019】
知られている振動ダンパーは、伸張移動の牽引段を設定するための第2の調整デバイスを同様に有し、第2の調整デバイスによって、ピストンロッドの軸方向通路内にシフト可能に配置された設定ロッドは、牽引段のために弁デバイスの貫通流開口を変更するために変位することができ、こうして、貫通流開口は増大するまたはより小さくなることができ、それにより、ダンピング作業は増大されるまたはより小さくされる。
【0020】
実際には、この知られている振動ダンパーは、最も成功していることが既に分かっているが、それでも、改善についての可能性を有する。その理由は、伸張移動の場合、例えば、オートバイの形態の知られている振動ダンパーを装備する乗り物がその上を移動する運転用トラックの表面構造に応じて、作動ピストンの変位速度が、強い偏移を同様に受けるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】独国特許出願公告第102004014458号明細書
【文献】独国特許出願公告第102006052228号明細書
【文献】欧州特許第2110300号明細書
【文献】米国特許第8276719号明細書
【文献】欧州特許第1473483号明細書
【文献】独国特許発明第4103356号明細書
【文献】米国特許第8235187号明細書
【文献】独国特許出願公開第102014112523号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記に基づいて、述べた問題を回避するために本発明の基礎になる目的は、異なる運転用トラック表面に関してその応答品質を改善するための振動ダンパーを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この目的を解決するために、本発明は、請求項1に指定される特徴を有する。これの有利な実施形態は、更なる請求項で述べられる。
【0024】
本発明は、振動ダンパーを創出し、振動ダンパーは、ダンピング流体を受取るために形成されたシリンダー及びシリンダー内で軸方向に可動である作動ピストンであって、軸方向通路を形成されたピストンロッド上に誘導方式で配置され、シリンダーの内側空間を第1の作業空間及び第2の作業空間に分割する、作動ピストンを有し、振動ダンパーは、少なくとも第2の作業空間から第1の作業空間への流体流のための、ピストンロッドを少なくとも部分的に軸方向に通過させる流体連通通路ならびに圧力段ダンピングを設定するための第1の調整デバイス及び牽引段ダンピングを設定するための第2の調整デバイスを有し、第1の調整デバイスは、圧力段のために貫通流開口を変更するために設定することができる2つの弁デバイスを有し、第2の調整デバイスは、牽引段のために第3の弁デバイスの第1の貫通流開口を変更するためにピストンロッドの軸方向通路内にシフト可能に配置された設定ロッドを有し、第2の調整デバイスは、第3の弁デバイスと別個に調整することができる第4の弁デバイスであって、調整ニードルを有する、第4の弁デバイスを有し、調整ニードルは、牽引段のために第2の貫通流開口を変更するために設けられる。
【0025】
そのため、本発明は、牽引段ダンピングのための調整デバイスを有する振動ダンパーを創出し、この調整デバイスは、振動ダンパーの伸張移動の場合に、作動流体の流れのために互いに独立に設定することができる2つの貫通流開口を有し、それにより、伸張移動中に作動ピストンの異なる変位速度を考慮する可能性が生じる。
【0026】
作動ピストンの低い変位速度が存在する場合、これは、低速によって第2の作業空間内の圧力増加につながり、作動流体を、第1の作業空間の方向に、牽引段のための第3の弁デバイスの第1の貫通流開口によって減圧することができる。
【0027】
対照的に、例えば、高振幅を有する地上起伏上で乗り物を運転するときに、振動ダンパーによって減衰される乗り物ホイールが地上起伏に追従しようと試みるために起こる、振動ダンパーの伸張移動中の作動ピストンの高い変位速度を、これがもたらす場合、第3の弁デバイスの第1の貫通流開口を通る作動流体の貫通流による高いダンピング作業は、乗り物ホイールが地上起伏に追従できないことにつながり、したがって、運転トラック表面との接触を喪失し、したがって、地上と接触しない状態で推進力を全く伝達できない。
【0028】
ここで、本発明は修正処置を創出する。振動ダンパー上にまたはそれとは別個に[裂孔(lacuna)]によって提供される主ばねは、オートバイが地上と接触を全くもたない観測瞬間に、垂直ホイール力の形態の任意の量の対向力によってまたは単に少量の対向力によって抵抗されない、伸張移動の方向における高い戻し力を生成し、したがって、これは、第2の作業空間内での急速な圧力上昇によって作動ピストンの高い変位速度をもたらす。第2の作業空間内の高圧につながる急速な圧力上昇は、別個に調整することができる第4の弁デバイスの牽引段のために第2の貫通流開口を開放する。この第2の貫通流開口の開放特性は、本発明による振動ダンパーに対する内部介入に着手しなければならないこと、すなわち、知られている振動ダンパーの場合にそうであるように、例えば、牽引段のためにばねディスクパケットの交換に着手しなければならないことが必要でない状態で、第4の弁デバイスの調整ニードルを介して変更することができる。
【0029】
こうして、本発明による振動ダンパーのユーザーは、調整ニードルによる調整可能な第4の弁デバイスを介して作動ピストンの高い変位速度に対して、振動ダンパーの応答品質を所望に応じて適応させまたは変更し、したがって、運転の快適さの改善を達成するだけでなく、推進力を伝達する地上との接触を乗り物ホイールが全く持たない時間フェーズが短縮され、したがって、例えば、観測時間間隔において地上起伏または地上でこぼこ上を運転するとき、推進力の伝達なしのフェーズが短縮されることも達成し、そうするときに、利点を達成することができる。その理由は、乗り物を加速するために推進力の伝達なしの状態で、こうした時間フェーズを同様に使用することができず、地上接触なしの時間フェーズの場合、これが、乗り物ホイールと運転表面との接触によって利用される、乗り物によるコントロールを維持することを同様にもたらさないからである。
【0030】
本発明の開発によれば、調整ニードルが軸方向変位のために形成され、軸方向変位が、調整ニードルの軸方向変位量に応じて、第2の作業空間から第1の作業空間へのダンピング流体のために第2の貫通流開口を変更可能に解放することが実現される。そのため、或る構成が創出され、その構成に従って、第2の貫通流開口は、完全に閉鎖することができる、完全に開放することができる、または、同様に部分的に開放することができる。本発明による振動ダンパーの応答品質は、第2の貫通流開口の開口量及び第2の貫通流開口の開口量の変化によって伸張の場合に適応することができる、すなわち、応答品質は、リバウンド移動中にユーザーの選択に相応して適応される。
【0031】
本発明の開発によれば、調整ニードルが、第2の作業空間内のダンピング流体の圧力によって提供される差表面を、第2の貫通流開口の開放方向に圧力が調整ニードルを提供するように有することが同様に実現される。
【0032】
そのため、力成分が、差表面の圧力提供によって調整ニードル上に生成され、それにより、この力成分が調整ニードルの変位移動につながることが達成され、この変位移動は、第2の貫通流開口を更に解放し、したがって、作動流体が流れるときに第2の貫通流開口によって実施されるダンピング作業は減少し、主ばねによって加えられる戻し力は、乗り物ホイールの急速な伸張移動につながり、したがって、乗り物ホイールは、運転表面との接触を急速に回復する。
【0033】
本発明の開発によれば、調整ニードルが、中空円柱であるように形成されたスリーブ本体であり、前記スリーブ本体が、設定ロッドまたは調整ニードルを受取るための内側凹所を有し、第2の貫通流開口の閉鎖位置でスリーブ本体を提供するばねデバイスと接触状態にあることが同様に実現される。
【0034】
そのため、本発明による振動ダンパーのコンパクトな設計が、設定ロッドをスリーブ本体内に一体化する可能性によって達成され、スリーブ本体の予張力付与位置が、スリーブ本体の開放移動に抗して作用する、第2の貫通流開口の閉鎖位置にばねデバイスを有するスリーブ本体の提供によって達成され、第2の貫通流開口の開放または更なる開放が、第2の作業空間内の所定の作動圧力を超えた後にだけ誘導されることが達成される。
【0035】
そのため、本発明による振動ダンパーの応答品質は、予張力を有するスリーブ本体の提供によって変更することができ、予張力は、例えば、修正されたばねディスクパケットを設置するために、本発明による振動ダンパーを開放しなければならないことが必要でない状態で、ばねデバイスによって調整することができる。より低い予張力は、例えば、第2の作業空間内の圧力レベルがより低い場合、したがって、既に作動ピストンの変位速度がゆっくりしている場合、第2の貫通流開口の開放につながり、一方、より高い予張力は、作動ピストンの変位速度がより高い場合にのみ第2の貫通流開口の開放または更なる開放を引起す。そのため、第2の貫通流開口の開放の程度及び/または第2の貫通流開口の開放の開始を自由に調整することができる。
【0036】
本発明の開発によれば、調整ニードルが、ピストンロッドの軸方向通路の領域上に配置され、前記領域が自由流ブッシングを備え、それぞれの場合に、シールデバイスが、調整ニードルの外周及び内周上に配置されることが実現される。
【0037】
自由流ブッシングの内周表面に沿って調整ニードルが変位できるように調整ニードルを自由流ブッシング内に受入れることによって、高い動き始めトルク(breakaway torque)が調整ニードルの移動のために克服される必要なしで、第2の貫通流開口の開放方向における変位移動によるばねデバイスの予張力付与によって予め調整された圧力レベルによって第2の作業空間内の圧力増加に調整ニードルが反応することが達成される可能性がある。
【0038】
調整ニードルの内周及び外周上へのそれぞれのシールデバイスの配置は、第2の作業空間内のダンピング流体の支配的な作動圧力が振動ダンパーのピストンロッドに沿って無制御方式で漏出できないことを確実にもたらす。
【0039】
本発明の開発によれば、調整ニードルが、調整ニードルの外周から内周の方向に走行する、ダンピング流体のための通路を備えることが同様に実現される。こうして、第2の作業空間内のダンピング流体が通路を介して調整ニードルの内側空間に達することができ、そこから、流体連通通路を介して第1の作業空間の方向に流れることができ、したがって、ダンピング作業の実施がこの流体流によって可能になることが達成される。
【0040】
本発明の開発によれば、振動ダンパーが、ピストンロッドの軸方向通路内に配置され、中空円柱であるように形成された設定ロッドを有し、前記ピストンロッドが、牽引段のための第2の貫通流開口を変更するために設定ロッドとアクティブな係合状態になるようにもたらすことができる設定要素によって軸方向に変位可能に形成されることが実現される。
【0041】
換言すれば、これは、設定ロッドが、振動ダンパー上に外側からアクセス可能な設定要素によって軸方向に変位することができ、前記設定ロッドが、例えば、上で述べたばねデバイスによって調整ニードルに予張力を付与する及び/または調整ニードルを変位させることができ、それにより、第2の貫通流開口の開放の程度が、振動ダンパー上に外方に配置された設定要素によって変更できることを意味する。次に、これは、本発明による振動ダンパーの応答品質が、リバウンド移動中に作動ピストンの異なる変位速度に設定または変更することができることを確実にもたらす。
【0042】
本発明の開発によれば、第2の調整デバイスが、ピストンロッドに対して軸方向に変位することができる円柱調整ニードルを有し、前記調整ニードルの軸方向変位は、調整ニードルの軸方向変位量に応じて、第2の作業空間から第1の作業空間へのダンピング流体のために第1の貫通流開口を変更可能に解放することが同様に実現される。
【0043】
そのため、第1の貫通流開口の開放の程度は、第2の作業空間から第1の作業空間への作動流体の入力についての軸方向変位によって変化することができ、したがって、作動流体が第1の貫通流開口を通過しているときに実施されるダンピング作業は影響を受ける可能性がある。ダンピング作業の変化によって、本発明による振動ダンパーの応答品質は、伸張移動中に作動ピストンの低い変位速度になるように影響を受ける可能性がある。
【0044】
本発明の開発によれば、第1の貫通流開口を変更するために設けられた調整ニードルは、前に述べた設定ロッドと当接状態にもたらすことができるように形成され、第1の貫通流開口は、設定ロッドの軸方向シフトによって変更可能に解放可能であることが同様に実現される。
【0045】
そのため、調整ニードルが設定ロッドの軸方向変位によって軸方向に変位することができ、したがって、第1の貫通流開口の開放の程度を変更することができることが達成される。
【0046】
本発明の開発によれば、第1の貫通流開口を変更するために設けられた調整ニードルは、前側端部上にV状凹所を有し、前側端部は、管状スリーブ本体の凹所内に延在し、前記凹所は、端部の構成に相補的であるように形成され、端部は凹所の内壁に当接することが同様に実現される。
【0047】
調整ニードルの端部のV状構成は、スリーブ本体によって解放されるV状凹所または溝の領域を、スリーブ本体の凹所内に配置されることが見出される、端部の軸方向変位による調整ニードルの軸方向変位によって変更することができ、したがって、V状凹所によるダンピング流体の通過のために解放される通過表面を変更することができることを確実にもたらす。調整ニードルの端部は、調整ニードルの軸方向誘導が端部によって達成されるように、調整ニードルの変位経路に沿って管状スリーブ本体の凹所内に留まり、それは、調整ニードルを通過するダンピング流体の高い流速及び乱流挙動がある場合でも、調整ニードルの振動増加をもたらさず、したがって、調整ニードルの任意の振動増加の結果として普通なら起こる調整ニードルの移動が、調整ニードルを受取るスリーブ本体であって、第2の調整デバイスの第2の貫通流開口を変更するために設けられる、スリーブ本体の軸方向通路の内部で半径方向において省かれ、したがって、こうした移動の結果として普通なら行われるシールが同様に省かれる。
【0048】
本発明の開発によれば、振動ダンパーが、牽引段のための第1の貫通流開口を変更するために設定ロッドとアクティブな係合状態になるようにもたらすことができる設定要素を有することが同様に実現される。
【0049】
そのため、第1の貫通流開口の開放の程度を、外側からアクセス可能な設定要素によって、本発明による振動ダンパーの伸張移動のために変更することができることが可能にされる。
【0050】
本発明の開発によれば、調整ニードルの軸方向変位が、第2の作業空間から第1の作業空間にダンピング流体が通過するためにV状凹所の少なくとも1つの部分的領域を解放するように、調整ニードルが第2の貫通流開口のスリーブ本体に対して配置されることが同様に実現される。
【0051】
同様に、本発明の開発によれば、第1の調整デバイスの2つの弁デバイスが、ダンピング流体の第1のより低い質量流量及び第1の作業空間からのダンピング流体の第2のより高い質量流量を、ダンピング流体を受取るための補償チャンバーの方向に変更するように形成されることが実現される。
【0052】
この構成は、第1のより低い質量流量の形態のダンピング流体が、低い変位速度を有する撓み移動による作動ピストンの変位移動がある場合に第1の作業空間内の圧力に応じて補償空間の方向に流れることができ、この質量流量を弁デバイスによって調整することができ、第2のより高い質量流量が、作動ピストンのより高い変位速度である場合に、補償空間に流入することができ、この質量流量を弁デバイスによって調整することができることを確実にもたらす。そのため、低い質量流量のための弁デバイス及び高い質量流量のための弁デバイスを、作動ピストンの撓み移動がある場合に同様に創出することができる。
【0053】
本発明の開発によれば、弁デバイスが、第1の質量流量を変更するために、より低い質量流量の形態のダンピング流体の通過のために設けられたボアに対して変位することができる弁ニードルを有し、弁デバイスが、第2の質量流量を変更するために、ばねデバイスによって変更可能予張力を提供することができるばねディスク配置構成を有することが同様に実現される可能性がある。
【0054】
この構成は、より低い質量流量の通過のために変位可能弁ニードルによって開口が増大するまたはより小さくなることができ、ばねディスク配置構成が、ばねデバイスによって第2の質量流量を変更するために弁デバイスによって変更可能に提供され、前記ばねディスク配置構成が、補償空間への作動流体の通過のために第1の作業空間内の圧力によって開放される必要があることを確実にもたらす。
【0055】
本発明の開発によれば、作動ピストンが、第1の作業空間と第2の作業空間との間のダンピング流体の通過のために少なくとも1つの通路を形成され、特に、ダンピング流体の通路を選択的に解放するためにばねディスクの形態で、弁デバイスを備えることが同様に実現される。
【0056】
この構成は、ダンピング流体が、2つの作業空間であって、共に、作動ピストンによるダンピング作業の実施のために撓み移動及び伸張移動を有する、2つの作業空間の間で流れることができることを確実にもたらす。
【0057】
最後に、本発明の開発によれば、振動ダンパーが、ダンピング流体の圧力提供のためのガスばねを有し、それにより、所定のシステム圧力を、例えば補償空間内に設けられるガスばねによって振動ダンパー内で維持することができ、キャビテーションの形成を防止することができることが同様に実現される。
【0058】
本発明は、図面によって以下でより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明による振動ダンパーの一実施形態の部分的長手方向断面図である。
図2】図面の図1によるカットアウト「A」の拡大図である。
図3】図面の図1によるカットアウト「B」の拡大図である。
図4】低い変位速度の作動ピストンによる第2の作業空間から第1の作業空間へのダンピング流体の流れを示す、図3による拡大図と同様の図である。
図5】移行状況であって、その間に、第1の貫通流開口を通る流れ及びばねディスクパケットによって解放されるフロートラックが可能である、移行状況におけるフローコースを示す、図4の図と同様の図である。
図6】第2の貫通流開口を通る流体流が同様に可能である図5による図と同様の図である。
図7】差表面を示すための、図1によるカットアウト「B」による断面図と同様のカットアウトの断面図である。
図8】下方ダンパー受取り部上に配置されるピストンロッドの図である。
図9】第1の貫通流開口を変更するための調整ニードルを示すための斜視図である。
図10】図面の図1によるカットアウト「B」の斜視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明による振動ダンパー1の部分的長手方向断面図を示す。
【0061】
振動ダンパー1は、ダンピング流体を受取るために形成されたシリンダー2及びシリンダー2内で軸方向に可動に配置された作動ピストン3を有する。
【0062】
ここで、作動ピストン3は、ピストンロッド4上に固定され、ピストンロッド4は、より詳細に示さないシールデバイスでシールされる通路5を介して、シリンダー2の内側空間から出て延在する
【0063】
ここで、ピストンロッド4は、受取り部6の方向に延在し、ピストンロッド4は、その受取り部6上に、また実際には、ダンピングコンポーネント7を介して軸方向にしっかり締結される。
【0064】
受取り部6は、主ばね9がその上で支持されるカラー8を有し、主ばね9は、カラー8の対向端領域でカラー10を備える受取り部11上で支持される。主ばね9は、より詳細には示されないが、受取り部12上で支持されるオートバイのリアホイールのばね移動を可能にし、このオートバイはクロスカントリーオートバイである可能性がある。
【0065】
受取り部13は、受取り部6に対向する振動ダンパー1の端領域上に配置され、前記受取り部13は、シリンダー2にわたって係合し、更なる受取り部14を有し、更なる受取り部14は、より詳細には示されないオートバイのフレームコンポーネント上に支持されることができる。
【0066】
作動ピストン3は、第1の作業空間15を第2の作業空間16から分離し、第2の作業空間16は、ダンピング媒体15と全く同じように、作業媒体としてダンピング流体を充填される。第1の作業空間15は、圧力段として役立ち、圧力段は、矢印17の方向における振動ダンパー1の撓み移動がある場合に作業空間15の内部の圧力上昇のために役立ち、一方、第2の作業空間16は、矢印18の方向における振動ダンパー1の伸張移動がある場合に圧力上昇のための牽引段として役立つ。
【0067】
ピストンロッド4は、軸方向通路19を有し、したがって、その長手方向伸張部に沿って内部的に中空であるように形成され、ダンピング流体がそこを通って第2の作業空間16から第1の作業空間15の方向に出ることができる流体連通通路20を有する。
【0068】
さらに、振動ダンパー1は内側空間22を有する補償コンテナ21を有し、補償コンテナ21内で、補償チャンバー23は、補償コンテナ21の下方端領域上に配置されたガスばね24の内部に配置され設けられることが見出される。
【0069】
図2によってより詳細に明らかであるように、振動ダンパー1は、2つの弁デバイス26及び27を有する圧力段ダンピングを調整するための第1の調整デバイス25を有し、2つの弁デバイス26及び27は、振動ダンパー1のユーザーのために外側からアクセス可能である。
【0070】
このため、弁デバイス27は変位可能弁ニードル28を有し、ボア29に対する弁ニードル28の間隔は、作動流体が通って流れることができる断面表面を変更するために外部設定要素30によって変更することができ、それにより、振動ダンパーの応答品質は、小さい圧力上昇、したがって、作動ピストン3の付随する低い変位速度がある場合に、圧力段において調整することができる。
【0071】
これと同様な方法で、第1の弁デバイス25は、既に前に述べた第2の弁デバイス26を有し、第2の弁デバイス26によって、振動ダンパーの応答品質は、作動ピストン3の高い変位速度による撓み移動がある場合に調整することができる。
【0072】
そうするために、弁デバイス26は、外側からアクセス可能な設定要素31を有し、設定要素31によって、ばねデバイス33は、調整可能に変更可能であるように提供されることができ、弁デバイス26は、次に、第1の作業空間15内のダンピング流体の作動圧力によって供給されるばねディスクパケット34を提供する。
【0073】
低い変位速度が作動ピストン3に関して調整される場合、これは、第1の作業空間15内のゆっくりした圧力増加、及び、弁デバイス27を通るダンピング流体の低い質量流量につながり、一方、高い変位速度による作動ピストン3の変位がある場合、これは、圧力段15内の、すなわち、第1の作業空間15内の作動圧力の突然の増加をもたらし、ばねディスクパケット34に供給されるダンピング流体の高い質量流量が調整され、したがって、ダンピング流体のためのフロートラックが補償チャンバー23の方向に解放される。
【0074】
こうして、作動流体のための2つの貫通流開口は、互いに独立に2つの弁デバイス26及び27によって調整することができ、したがって、本発明による振動ダンパー1のダンピング特性は、作動ピストン3の低い変位速度の場合及び作動ピストン3の高い変位速度の場合、ユーザーの要求に対応する撓み移動または圧縮移動中に同様に互いに独立に調整することができる。
【0075】
振動ダンパー1は第2の調整デバイス35を有し、第2の調整デバイス35は、伸張移動中に振動ダンパー1の応答品質を調整するために設けられる。
【0076】
第2の調整デバイス35は、図面の図3によってより詳細に見ることができる設定要素37及び設定ロッド38を有する第3の弁デバイス36を有する。設定ロッド38は、外側からユーザーにとってアクセス可能な設定要素37によって、実際には、設定要素37上で移動する回転移動部またはねじ込み部によってピストンロッド4の軸方向通路19内で軸方向にシフトすることができる。
【0077】
設定要素37のこの作動は、設定ロッド38の軸方向変位につながり、設定ロッド38は、V状調整ニードル39として設定要素37の上方端領域上に形成される、すなわち、調整ニードル39と一体にこうして形成される。一体形成と対照的に、設定ロッド38は、V状調整ニードル39と別個に同様に形成することができ、それにより、設定ロッド38を、その軸方向変位に対して、こうした実施形態の円柱V状調整ニードル39と当接状態にもたらすことができる。
【0078】
図面の図3で明らかであるように、V状端部40と管状スリーブ本体42の端部41との間の小さい間隔を、調整ニードル39の軸方向変位によって調整することができ、またこうして、第2の調整デバイス35の第1の貫通流開口43を調整することができる。
【0079】
第2の調整デバイス35は、第3の弁デバイス36と別個に調整することができる第4の弁デバイス44を有し、前記第4の弁デバイス44は、作動ピストン3の高い変位速度による伸張移動中に本発明による振動ダンパー1の応答品質を調整するのに役立つ。
【0080】
第4の弁デバイス44は、外側からユーザーにとってアクセス可能である設定要素45を有し、設定要素45は、図面の図1及び図7によってより詳細に見ることができ、ピストンロッド4の軸方向通路19の内部にある中空円柱設定ロッド46を軸方向に変位させることがきる。図面の図7によってより詳細に見ることができるように、スリーブ状設定ロッド46の上方端領域上に配置されたスクリュー圧力ばね47の形態のばねデバイスが存在し、前記スクリュー圧力ばねは、設定ロッド46の軸方向変位によって提供されることができる。
【0081】
ばねデバイス47は、設定ロッド46に対向するばねデバイス47の端領域上で、図1及び図7によってより詳細に見ることができる調整ニードル48に当接する。
【0082】
調整ニードル48がピストンロッド4の軸方向通路19の自由流ブッシング71上に設けられた状態で、図面の図10によってより詳細に見ることができる第2の貫通流開口49を、牽引段のために設定する、すなわち、増大するまたはより小さくすることができる。
【0083】
調整ニードル48は、V状調整ニードル39を受取る管状スリーブ本体50であり、V状調整ニードル39はスリーブ本体50の凹所51内にある。
【0084】
図面の図10によって容易に見ることができるように、スリーブ本体42は、下方端部上に4つの横ボア52を有し、4つの横ボア52は第2の貫通流開口49を形成する。
【0085】
横ボア52を、スリーブ本体50の軸方向変位によって、閉鎖する、部分的に解放する、または完全に解放することができる。
【0086】
通って流れることができる第2の貫通流開口49の表面の変化によって、作動ピストン3の高い変位速度がある場合、本発明による振動ダンパーの応答品質を、伸張移動に対して自由に調整することができる。
【0087】
このため、設定ロッド46は、設定要素45の作動によって特に軸方向にシフトすることができ、前記設定ロッドは、その一部について、調整ニードル48が当接するばねデバイス47を提供する。
【0088】
図面の図10は、調整ニードル48が、外周上と内周上の両方でOリング53、54の形態のシールデバイスを有することを示し、シールデバイスは、第2の作業空間16内のダンピング流体がピストンロッド4の軸方向通路19を通って漏出しないことを確実にもたらし、また同様に、第2の作業空間16内の圧力上昇がある場合、調整ニードル48上に形成された差表面55が、第2の貫通流開口49の開放移動の方向に調整ニードル48を提供することを保証することを確実にもたらす。
【0089】
図面の図7によって見ることができるように、差表面55は、ピストンロッド4の軸方向通路19の内径と設定ロッド38の外径との差から出現する表面56によって形成される。
【0090】
第2の作業空間16内で形成される作動圧力は、図面の図10によって見ることができる横ボア57を介してスリーブ本体50の方向に継続して向かい、そこで、結果として得られる下方環状表面58、及び、結果として得られる上方環状表面59であって、しかしながら、スリーブ本体50のテーパ付き形成のために、結果として得られる下方環状表面58に比べて、スリーブ本体52に割当てられる端部の領域が小さい、上方環状表面59を提供し、それが、スリーブ本体50が第2の貫通流開口49の開放移動の方向に提供されることにつながる。
【0091】
そのため、第4の弁デバイス44の開放特性は、設定要素45の回転作動及びばねデバイス47の対応する予張力及びばねデバイス47の剛性の対応する選択及びしたがって振動ダンパー1の伸張移動の場合の本発明による振動ダンパー1の応答品質によって影響を受ける可能性がある。
【0092】
図2は、振動ダンパー1の撓み移動中の作動流体の流路61を示すが、図面の図3は、第2の作業空間16の方向への第1の作業空間15の撓み移動中の流路62を示す。振動ダンパー1の撓み移動による第1の作業空間15内での高圧レベル調整は、ばねディスクパケット63の開放移動、したがって、流路62の形成につながる。
【0093】
図面の図4は、作動ピストン3の低い変位速度による振動ダンパー1の伸張移動の場合に調整される流路64を示す。第2の作業空間16内の伸張移動によって調整されたより高い圧力は、依然としてばねディスクパケット65を解放できるほどには十分に大きくないが、圧力増加によって、第1貫通流開口43を介したダンピング流体の流体移動が存在する。その理由は、図面の図9によって詳細に見ることができる調整ニードル39のV状凹所66が、スリーブ本体42の下方端部67から突出し、したがって、通過方向にボール弁68を作動するのに圧力が十分であるため、ダンピング流体の流れが可能になるからである。
【0094】
作動ピストン3の変位速度の増加によって、第2の作業空間16内の圧力が更に増加する場合、これは、図面の図5に示す移行状況につながり、その移行状況において、図面の図4によって説明された流路64が調整され、さらに、圧力が、ばねディスクパケット65を開放移動に作動するのに十分になり、それにより、作動流体の更なる流れが、第2の作業空間16から第1の作業空間15の方向への流路69に従って調整される。
【0095】
第2の作業空間16内の作動圧力が、作動ピストン3の変位速度の更なる増加によって更に増加すると、これは、図面の図6によって見ることができるように、作動流体の更なる流路70の形成につながる。
【0096】
この場合、作動圧力は、作動ピストン3の高い変位速度によって、図面の図10によってより詳細に見ることができる調整ニードルが第2の貫通流開口49の開放移動の方向に提供され、第2の貫通流開口49が解放され、ダンピング流体または作動流体の更なる質量流量が、第2の作業空間16から、流れ矢印70でシンボル化される第1の作業空間15の方向に調整される程度まで、特に第2の作業空間16内で増加する。
【0097】
図面の図8は、設定要素37及び45が下方受取り部6上に配置された状態のピストンロッド4を略図で示し、また、ユーザーが、作動ピストンの高い変位速度及び作動ピストンの低い変位速度の2つの場合について別個に伸張移動による2つの設定要素の回転作動によって、本発明による振動ダンパー1の応答品質を調整でき、こうして、伸張移動によって、ユーザーのデマンドまたは要求に対応して振動ダンパーの応答品質の変更を達成できることを明らかにする。
【0098】
本発明による振動ダンパーの形成によって、作動ピストンの低い変位速度と作動ピストンの高い変位速度の両方について、互いに独立に、伸張移動によって振動ダンパーの応答品質を調整することがこうして可能になり、それにより、例えば、膨張チャンバーすなわち作業空間と圧力チャンバーすなわち第1の作業空間との間の流体流のためのばねディスクパケットの交換等の、振動チャンバーに対する再構築対策をとることが必要でない状態で、ユーザーが、圧力段において、すなわち、撓み移動によって、振動ダンパーの応答品質を繊細に調整するだけでなく、伸張移動によって振動ダンパーの応答品質を繊細に調整することもまた可能である。
【0099】
上記でより詳細に個々に説明されなかった本発明の特徴の観点から、特許請求項及び図面に対して参照が明示的に行われる。
【符号の説明】
【0100】
1 振動ダンパー
2 シリンダー
3 作動ピストン
4 ピストンロッド
5 通路
6 受取り部
7 ダンピングコンポーネント
8 カラー
9 主ばね
10 カラー
11 受取り部
12 受取り部
13 受取り部
14 受取り部
15 第1の作業空間
16 第2の作業空間
17 矢印
18 矢印
19 軸方向通路
20 流体連通通路
21 補償コンテナ
22 内側空間
23 補償チャンバー
24 ガスばね
25 第1の調整デバイス
26 弁デバイス
27 弁デバイス
28 弁デバイス
29 ボア
30 設定要素
31 設定要素
32 設定要素
33 設定要素
34 ばねディスクパケット
35 第2の調整デバイス
36 第3の弁デバイス
37 設定要素
38 設定ロッド
39 V状調整ニードル
40 V状端部
41 端部
42 スリーブ本体
43 第4の貫通流開口
44 第4の弁デバイス
45 設定要素
46 設定ロッド
47 ばねデバイス
48 調整ニードル
49 第2の貫通流開口
50 管状スリーブ本体
51 内側凹所
52 横ボア
53 Oリング
54 Oリング
55 差表面
56 表面
57 横ボア
58 下方環状表面
59 上方環状表面
60 端部
61 流路
62 流路
63 ばねディスクパケット
64 流路
65 ばねディスクパケット
66 V状凹所
67 下方端部
68 ボール弁
69 流路
70 流路
71 自由流ブッシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10