(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20220603BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220603BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20220603BHJP
B01D 35/027 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
F01N3/08 B
B01D53/94 400
B01D19/00 D
B01D19/00 C
B01D35/02 F
(21)【出願番号】P 2019510642
(86)(22)【出願日】2017-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2017000958
(87)【国際公開番号】W WO2018036647
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】102016010100.8
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592007771
【氏名又は名称】ドイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ステンゲイ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ブロール,ペータ
(72)【発明者】
【氏名】ダンメル,ダニエル
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02206897(EP,A1)
【文献】特開2014-145276(JP,A)
【文献】特開2011-094498(JP,A)
【文献】特開2000-129311(JP,A)
【文献】特開2005-299441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
B01D 19/00、35/02、53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスライン中に尿素水溶液を噴射する内燃機関であって、少なくとも一つの尿素水タンク(7)と、少なくとも1つのポンプと、このポンプの少なくとも一つの吸引ラインと、圧力ラインを介して上記ポンプに接続された少なくとも一つの尿素水溶液の定量弁(8)と、上記ポンプから尿素水溶液タンク(7)に戻る少なくとも1つの戻りラインと、この戻りラインの上記ポンプとは反対側
の端部に配置された、上記ポンプによって生じる気泡を保持して尿素水溶液タンク内への気泡の侵入を回避または減らすためのフィルターエレメント
(1)と、尿素水タンク(7)中に配置された水溶液中の尿素の含有割合を測定するための少なくとも1つの尿素水溶液センサー
(3)とを有する内燃機関。
【請求項2】
上記フィルターがプレコートフィルター、キャンドルフィルター、空間フィルター、レイヤーベッドフィルターまたは磁気フィルターである請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
上記フィルターが可撓性フィルター媒体または剛性フィルター媒体またはまたはバルクなフィルターである請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
フィルター材料がメッシュまたは濾紙または不織フェルトまたはセラミックまたは焼結金属またはニードルである請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
フィルターの細孔寸法が70ミクロン以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項6】
フィルターが2次元フィルター、3次元フィルタ、多層膜、表面フィルターまたはデプスフィルター(Tiefenfilter)である請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
尿素水溶液タンク(7)が真空下にあり、および/または、換気添加剤が供給される請求項1~6のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項8】
尿素水溶液タンク(7)が超音波発生器(3)および/またはヒーターを有する請求項1~7のいずれか一項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスライン中に尿素水溶液を噴射する内燃機関と、脱気および濾過方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脱気(Entgasung)とは液体や固体から気体、その他の揮発性物質を制御下に除去することである。脱気によって溶解または気泡として閉じ込められている物質を排除することができ、種々の悪影響、例えば鋼の水素脆化、酸化による物質の腐食、湿気による加水分解、蒸気ボイラーの腐食、液体中の酸素や二酸化炭素によるパイプラインの脆化、油圧システムの故障等を防止することができる。
【0003】
最も一般的な脱気方法は脱気する物質を真空に曝すことであり、また、超音波ホーン等を用いて超音波を液体に加えて液体中に高周波交番圧力場を形成し、瞬間的な負圧キャビティを周期的に作る方法である。後者の効果はキャビテーションとして知られている。キャビティは例えばキャビテーション核(Kavitationskeime)として作用するガス包有物によって形成される。溶存ガスはキャビテーション気泡内に拡散し、その後の圧力上昇によって気泡が再び完全に液体中に入るのは防止される。各気泡は振動過程で成長する。超音波の反射によって定在波が形成されると、気泡はそのノード(節)に集められ、そこで結合(合体)し、最終的には浮力によって液体表面へ移動する。ヘンリー定数は温度に依存するので温度を上げるだけでも脱気を行なうことはできる。最も簡単な方法は減圧下でエネルギーを供給することで、真空調理(Kochen im Vakuum)とよばれる。この効果は通常の調理中に観察でき、気泡が水中に形成されるのが分かる。
【0004】
この種の装置としては例えば、いわゆるガストラップで気泡を集めるものが[特許文献1](国際公開第2013/029950号パンフレット)に開示され、液体弁の高周波開閉によって気泡を発生し、フィルターで保持するものが[特許文献2](ドイツ特許公開第DE 102007012918 A1号公報)に記載されている。しかし、[特許文献1](国際公開第2013/029950号パンフレット)の場合には気泡が異なる場所にランダムに留まる可能性が高いという点で不利であり、[特許文献2](ドイツ特許公開第DE 102007012918 A1号公報)では生成する泡が除去されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/029950号パンフレット
【文献】ドイツ特許公開第DE102007012918A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記の欠点を回避して、尿素水溶液を確実に脱気または濾過する装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は少なくとも一つの尿素水タンクと、少なくとも1つのポンプと、このポンプの少なくとも一つの吸引ラインと、圧力ラインを介して上記ポンプに接続された少なくとも一つの尿素水溶液の定量弁と、上記ポンプから尿素水溶液タンクに戻る少なくとも1つの戻りラインと、この戻りラインの上記ポンプとは反対側に配置されたフィルターエレメントと、尿素水タンク中に配置された少なくとも1つの尿素水溶液センサーとを有する内燃機関、特に排気ガスラインに尿素水溶液を噴射する内燃機関によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
尿素水溶液センサーは水溶液中の尿素の含有割合を測定する。これは超音波または赤外線を用いた密度測定で行なうことができる。尿素水溶液センサーの測定部に気泡があると測定結果に悪影響が生じる。本発明の利点は、尿素水溶液タンク内の気泡(例えばポンプまたはライン内に形成された気泡)の侵入を回避または減らして、尿素水溶液センサーの正しい測定条件を達成できる点にある。
【0009】
本発明が提供する有利な形態では、上記フィルターがキャンドルフィルターまたはプレコートフィルタまたは空間フィルタまたは層状床フィルタまたはマグネットフィルタである。
【0010】
本発明が提供する別の有利な形態では、上記フィルターは可撓性フィルタ媒体または剛性フィルター媒体またはバルクなフィルターからなる。
【0011】
本発明が提供する別の有利な形態では、フィルター材料が篩または濾紙または不織フェルトまたはセラミックまたは焼結金属またはニードルである。
【0012】
本発明が提供する別の有利な形態では、フィルターの細孔寸法は70ミクロン以下である。
【0013】
本発明が提供する別の有利な形態では、フィルターは2次元フィルタまたは3次元フィルタまたは多層フィルターまたは表面フィルターまたはデプスフィルター(Tiefenfilter)である。
【0014】
本発明が提供する別の有利な形態では、尿素水溶液タンクが真空下にあるか、および/または、換気添加剤(Entluftungsadditiven)を備えている。
【0015】
本発明が提供する別の有利な形態では、尿素水タンクが超音波発生器および/またはヒーターを含む。超音波発生器は品質センサー内に配置される。
以下、図面に記載した本発明の例示的な実施形態で本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】尿素水溶液タンクと計量弁とを有する内燃機関の概略図。
【0017】
[
図1]は尿素水溶液を収容した尿素水タンク7の概略図で、尿素水溶液タンク7中には品質センサー3が配置されている。尿素水タンク7には吸引ラインが配置され、この吸引ラインの一端にはフィルターが取り付けられ、その他端部は尿素水ポンプ6に接続される。ポンプ6には戻りラインが配置され、ポンプの反対側には気泡を保持するフィルター1が配置される。圧力ラインはポンプ6から尿素水溶液の噴射弁8まで延びている。
【0018】
[
図2]は尿素水溶液タンク7と、制御ユニット(ECU)と、尿素水溶液ポンプ6と、排気ライン上の計量弁8とを有する内燃機関の概略図である。尿素水溶液タンク7は戻りライン上の気泡分離フィルター1と、吸引ライン上のフィルター2と、品質センサー3と、レベルセンサー4と、温度センサ5とを備えており、これらは内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)に接続されている。尿素水溶液タンク7には吸引ラインが配置され、上記フィルタ2はその一端部に配置され、その他端部は尿素水溶液ポンプ6に接続されている。尿素水溶液ポンプ6には戻りラインがさらに配置されており、上記フィルタ1はそのポンプ6とは反対側に配置され、気泡を拘束する。尿素水溶液ポンプ6は内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)によって制御され、排ガス中への尿素水溶液の計量弁8に至る圧力ラインを制御する。内燃機関(ICE)と内燃機関(ICE)の排気ライン上の触媒との間には圧力センサー、温度センサーおよびNOxセンサーが配置されている。これら全てのセンサーは内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)に接続されている。内燃機関(ICE)の排気ラインの触媒の後には温度センサーとNOxセンサーとが配置されている。どちらのセンサーも内燃機関(ICE)の制御装置(ECU)に接続されている。
【0019】
[
図3]は尿素水溶液タンク7と、制御ユニット(ECU)と、尿素水溶液ポンプ6と、排気ライン上の計量弁8とを有する内燃機関の概略図である。尿素水溶液タンク7は戻りライン上の気泡分離用の上記フィルター1と、吸引ライン上の上記フィルター2と、品質センサー3と、レベルセンサー4と、温度センサー5とを有している。これらは全て内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)に接続されている。尿素水溶液タンク7には吸引管が配置されており、この吸引管の一端部は上記フィルター2が配置され、その他端部は尿素水溶液ポンプ6に接続されている。尿素水溶液の計量弁8には戻りラインも配置されており、ポンプ6の反対側には気泡を保持するフィルター1が配置されている。制御ユニット(ECU)によって制御されるポンプ6によって尿素水溶液計量弁8に至る圧力ラインが制御される。内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)を用いて排ガス中に計量された尿素水溶液が供給される。内燃機関(ICE)と内燃機関(ICE)の排気ライン上の触媒との間には圧力センサー、温度センサーおよびNOxセンサーが配置されている。これらのセンサーの全ては内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)に接続されている。触媒後の内燃機関(ICE)の排気ラインには温度センサーとNOxセンサーとが配置され、その両方が内燃機関(ICE)の制御ユニット(ECU)に接続されている。
【符号の説明】
【0020】
1 戻りライン上の泡分離フィルター
2 吸引ライン上のフィルター
3 品質センサー
4 レベルセンサー
5 温度センサー
6 尿素水溶液ポンプ
7 尿素水溶液タンク
8 尿素水溶液噴射弁
ECU エンジン制御装置/制御装置
ICE 内燃エンジン/エンジン