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特許7083344トランジェントエラストグラフィ用プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】トランジェントエラストグラフィ用プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
A61B8/08 ZDM
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019522366
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017077417
(87)【国際公開番号】W WO2018078002
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】16196165.1
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514029304
【氏名又は名称】エコセンス
【氏名又は名称原語表記】ECHOSENS
【住所又は居所原語表記】30 Place d’Italie,F-75013 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーディエール,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラン,ローラン
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144155(JP,A)
【文献】特表2005-534455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0085728(US,A1)
【文献】特開2010-227562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0203398(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0316407(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0119568(US,A1)
【文献】DANIEL C. MELLEMA et al.,Probe Oscillation Shear Elastography (PROSE): A High Frame-Rate Method for Two-Dimensional Ultrasound Shear Wave Elastography,IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,米国,IEEE,2016年09月,vol. 35, no. 9,2098 - 2106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジェントエラストグラフィ用プローブ(1)であって、
- プローブケーシング(PC)と、
- 対称軸(A)を有する少なくとも1つの超音波トランスデューサ(US)と
- 少なくとも1つの振動子(VIB)であって、プローブケーシング(PC)内に置かれる、前記振動子(VIB)と
を備え、
- 振動子(1)は、プローブケーシング(PC)の事前定義された軸に沿った動きを誘起するように配列され、事前定義された軸は超音波トランスデューサ(US)の対称軸(A)であり、
- 超音波トランスデューサは、プローブケーシング(PC)に対する超音波トランスデューサ(US)の運動がない状態でプローブケーシング(PC)に固着され、
- プローブ(1)は、プローブケーシング(PC)に連結された位置センサ(POS)を備え、位置センサ(POS)は、プローブ(1)の変位を測定するように配列され、
- プローブ(1)の変位は、プローブケーシング内の振動子の動き、およびプローブ(1)により印加された低周波パルスの形状を制御するために、フィードバック信号として使用される
ことを特徴とする、プローブ(1)。
【請求項2】
超音波トランスデューサ(US)が、プローブ先端(PT)によってプローブケーシング(PC)に固着され、前記プローブ先端(PT)が、プローブケーシング(PC)に固定された第1の端部(PTE1)と、超音波トランスデューサ(US)に固定された第2の端部(PTE2)とを有することを特徴とする、請求項1に記載のプローブ(1)。
【請求項3】
プローブ(1)が、プローブケーシング(PC)に固定された少なくとも1つの力センサ(FS)を備え、力センサ(FS)は分析されるべき組織との接触によるプローブケーシングPCの変形を測定するように配列されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプローブ(1)。
【請求項4】
力センサ(FS)が、超音波トランスデューサ(US)を受け、留め付けるように適合されたハウジング(HOU)を備えることを特徴とする、請求項3に記載のプローブ(1)。
【請求項5】
力センサ(FS)が、プローブ先端(PT)の第1の端部(PTE1)を受け、留め付けるように適合されたハウジング(HOU)を備えることを特徴とする、請求項2および請求項3に記載のプローブ(1)。
【請求項6】
位置センサ(POS)が、プローブケーシング(PC)に連結されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項7】
力センサ(FS)が、少なくとも歪みゲージ(SG)および/または少なくとも歪み感知抵抗器を備えることを特徴とする、請求項3、または請求項3に従属する請求項から6のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項8】
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(US)が、交換可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの超音波トランスデューサ(US)が、ディスク形状の超音波トランスデューサであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプローブ(1)。
【請求項10】
振動子(VIB)が、プローブケーシング(PC)に固定された部分(FIX)と、可動部分(MOV)とを備える少なくとも1つの電気力学アクチュエータを備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項記載の慣性プローブ(1)。
【請求項11】
振動子の可動部分(MOV)の質量が、慣性プローブ(1)の総質量Mの4分の1以上であることを特徴とする、請求項10に記載の慣性プローブ。
【請求項12】
粘弾性媒体の硬度を測定するためのトランジェントエラストグラフィ法(100)であって、少なくとも以下の
- 超音波トランスデューサ(US)を、分析すべき粘弾性媒体および/または患者の身体と接触させ続けるために、請求項1から11のいずれか一項に記載のプローブ(1)を配置する(PLACE)ステップと、
- 分析すべき粘弾性媒体内に剪断波を生成させるための低周波パルスの印加をトリガする(START)ステップと、
- 媒体内に超音波ショットを放射し(EM-US)、後方散乱超音波信号を記録するステップとを
備える、トランジェントエラストグラフィ方法。
【請求項13】
少なくとも以下の
- 剪断波の伝播を被った粘弾性媒体の変位を決定するために、記録された後方散乱超音波信号を分析する(CALCUL)ステップと、
- 計算された変位に基づいて、分析すべき媒体の少なくとも1つの粘弾性パラメータを決定する(DET)ステップとを
さらに備える、請求項12に記載のトランジェントエラストグラフィ(100)方法。
【請求項14】
低周波パルスの印加をトリガするステップ(START)が、オペレータによって手動で開始されるか、または超音波トランスデューサ(US)の対称軸(A)と粘弾性媒体の表面あるいは患者の身体の他の表面との間の垂直性条件の検証で条件付けられることを特徴とする、請求項12または請求項13に記載のトランジェントエラストグラフィ(100)方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、トランジェントエラストグラフィデバイス用プローブに関する。本発明の目的は、ヒトまたは動物の組織の粘弾性特性、特に肝臓の硬度の測定に使用され得るプローブである。本発明の別の目的は、前記プローブを用いて組織の粘弾性特性を測定する方法である。
【背景技術】
【0002】
肝臓組織の粘弾性特性を監視することによって、いくつかの肝臓の影響が追跡され得る。慢性ウイルス性肝炎、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝疾患、自己免疫性肝炎、薬物誘発性肝障害、原発性胆汁性肝硬変はすべて、肝臓の硬度の進行性変化の原因である。場合によっては、線維症とも呼ばれるこの硬度の増加が肝硬変および肝不全をもたらし、患者に重篤な結果をもたらすことがある。
【0003】
肝硬度を測定するための最も信頼性が高く効率的な技術の1つは、トランジェントエラストグラフィである(例えば、「Ultrasound in Med. And Biol.」、41、5、2015年、において公開された、G.Ferraioliらによる「WFUMB guidelines and recommendations for clinical use of ultrasound elastography part 3: liver」を参照のこと)。
【0004】
出願人はFibroscan(R)と呼ばれるデバイスを開発し、商品化した(例えば、特許EP1169636およびEP1531733を参照のこと)。このデバイスは、出願人によって開発された「振動制御トランジェントエラストグラフィ」(VCTE)と呼ばれるエラストグラフィ技術を使用することによって肝臓の硬度を測定する。
【0005】
VCTE用途では、肝硬度の測定が組織内の過渡的な剪断波伝播速度の測定に依存する。
【0006】
このような測定を実行するために、特定のプローブが開発されている。前記プローブは、少なくとも電気力学的アクチュエータと、プローブの先端に装備された少なくとも1つの超音波トランスデューサとを備える。
【0007】
例えば、Fibroscan(R)プローブでは、振動子は超音波トランスデューサを動かし、それを患者の身体に対して押す。このパルス化された動きは、肝臓内を伝播する過渡的な剪断波を生成する。伝播する剪断波によって生成される変位は、媒体内部に高周波超音波短パルスまたはショットを送ることによってプローブされる。
【0008】
Fibroscan(R)(例えば、図1aを参照)によって使用される有利なジオメトリのおかげで、機械的アクチュエータおよび超音波トランスデューサは図1aの破線によって示されるように、同じ対称軸を共有する。このジオメトリカルな配列は、剪断波伝播速度の測定におけるシステマティックな誤差を回避することを可能にする:剪断波および超音波ショットは同じ方向に沿って伝播する。
【0009】
さらに、Fibroscan(R)プローブは、プローブケーシングに対するプローブ先端の変位を測定することができる運動センサ、例えばホール効果位置センサを搭載している。測定は、先端の軌道が所定のプロフィール、例えば正弦曲線の周期に従う場合にのみ検証される。従来のVCTEプローブでは、プローブケーシングに対するプローブ先端の相対的な動きのみが測定される。換言すれば、従来のVCTEプローブでは、プローブ先端の動きがプローブケーシングの基準フレーム内で測定される。
【0010】
現在利用可能なVCTEプローブにおける関係がある問題は、検査されるべき組織に過渡的な剪断波を印加するときのプローブ先端の実際の動きの制御である。例えば、剪断波が印加されると、プローブの反跳が先端の動きに加わる可能性があり、印加されたパルスが変形する可能性がある。この問題は、オペレータの手の反跳と、オペレータがプローブを患者の身体に対して保持する際に加えなければならない力の制御とに関連している:従来技術によるVCTEプローブの正しい使用のために、熟練した、または資格のあるオペレータが必要とされる。
【0011】
プローブの反跳が制御されない場合、患者の身体に対するプローブの先端の実際の動きは未知である。測定は、剪断波の生成中にオペレータによって加えられる力に依存し得る。
【0012】
リニアアクチュエータおよび力センサを備える超音波プローブは、特許出願US 8,333,704 B2(「Hand-held force-controlled ultrasound probe」、Anthonyら、18/12/2010に出願)および、US 2012/0316407 A1(「Sonographer fatigue monitoring」、Anthonyら、12/6/2012に出願)に説明されている。図1bは、米国特許第8,333,704号明細書に説明されたデバイスを例解する。これらの文献によれば、超音波トランスデューサは分析されるべき組織に対して加えられる力を制御するために、電気力学的アクチュエータによって動かされる。超音波トランスデューサの動きは、力センサによって提供され、フィードバック信号として使用される信号に基づいて制御される。
【0013】
これらの文献は超音波測定中に一定または時間依存の力を加えるという問題を解決するが、開示された技術的解決策にはいくつかの欠点がある。
【0014】
例えば、従来技術に記載されているこれらのデバイスは図1bに矢印で示されているように、超音波トランスデューサがプローブケーシングに対して動かされる外部の機械的可動部分を備える。この外部の動く部分には、例えば、頻繁な較正オペレーションの必要性など、いくつかの欠点が関連している。
【0015】
従来技術に記載されている別の解決策はD.Mellemaらによる文献「Probe Oscillation Shear Elastography(PROSE): A high Frame-Rate Method for Two-dimensional ultrasound shear wave elastography」、(IEEE Transaction on medical imaging、Vol.35、No。9、September 2016)に説明されている。この場合、連続波エラストグラフィ用プローブが記載される。この解決策は、組織への過渡的な剪断パルスの印加には適応されず、連続波剪断波オシレーションにのみ適応される。さらに、説明されたエラストグラフィプローブは2つの別個のコンポーネントによって形成され、これはインビボ(in-vivo)の用途のための重大な欠点である。例えば、説明されたプローブは、いくつかの部分の存在のために操作することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許第1169636号明細書
【文献】欧州特許第1531733号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0316407号明細書
【文献】米国特許第8,333,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】「Ultrasound in Med. And Biol.」、41、5、2015年、において公開された、G.Ferraioliらによる、「WFUMB guidelines and recommendations for clinical use of ultrasound elastography part 3: liver」
【文献】D.Mellemaらによる「Probe Oscillation Shear Elastography(PROSE): A high Frame-Rate Method for Two-dimensional ultrasound shear wave elastography」、IEEE Transaction on medical imaging、Vol.35、No。9、September 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、特定の準備または訓練を行わなくても、オペレータが容易に使用できるVCTEプローブを提案することによって、以前の技術的問題を少なくとも部分的に解決することを目的とする。さらに、本発明によるプローブは、頻繁な機械的較正を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願によって説明されるVCTEプローブは外部の機械的可動部分を必要とすることなく、超音波トランスデューサの実際の動き、すなわち、剪断波の印加中に患者の身体に印加されるパルスの実際の形状を制御する。
【0020】
この効果のために、本発明の一態様はトランジェントエラストグラフィ用プローブであって:プローブケーシング;対称軸を有する少なくとも1つの超音波トランスデューサ;少なくとも1つの振動子であって、プローブケーシング内に置かれる前記振動子;を備え、振動子は、事前定義された軸に沿ってプローブケーシングの動きを誘発するように配列され、事前定義された軸は、前記超音波トランスデューサの対称軸であり;超音波トランスデューサは、プローブケーシングに対して前記超音波トランスデューサが運動しないように固着される。
【0021】
プローブケーシングはVCTEプローブのエンクロージャであり、前記エンクロージャは、振動子または電気力学的アクチュエータを収容する。プローブケーシングはまた、位置センサ、ロジック回路、またはデータを格納するための、あるいはコンピュータもしくは他の電子デバイスとデータを交換するための接続手段として、他の要素を収容することができる。超音波トランスデューサは、超音波を放射および受けるように適合されたデバイスである。それは単一のトランスデューサによって、または例えばリニア検出器を形成するトランスデューサのアレイによって形成される。
【0022】
超音波トランスデューサの対称軸は、トランスデューサのジオメトリカルな対称軸である。超音波トランスデューサの対称軸は、超音波がトランスデューサによって放射される方向でもある。トランスデューサの対称軸は、トランスデューサによって放出される超音波短パルスの伝播方向を識別する。
【0023】
本発明によれば、超音波トランスデューサは、運動がプローブケーシングへ固着されており、これは、プローブケーシングに対する超音波トランスデューサの相対的動きがないことを意味する。
【0024】
超音波トランスデューサの端部は、プローブケーシングの端部に固定され得る。超音波トランスデューサの別の端部は、分析すべき媒体に超音波を伝送するために自由に振動する。
【0025】
あるいは、超音波トランスデューサが、プローブ先端によってプローブケースに取り付けられ得る。存在する場合、プローブ先端は、プローブケーシングの一方の端部に固定された端部と、超音波トランスデューサに固定された他方の端部とを有する。
【0026】
以下の段落で与えられる本発明の解説は、超音波トランスデューサがプローブケーシングに直接固定される場合と、超音波トランスデューサがプローブ先端を通してプローブケーシングに固定される場合の両方に当てはまる。これら2つの構成は、例示的な実施形態としてのみ与えられ、他の構成も可能である。
【0027】
振動子は、プローブケーシング内で質量を動かすように適合されたデバイスである。例えば、振動子は、1と5000Hzとの間に含まれる周波数で質量をオシレーションすることができる。
【0028】
本発明によるプローブは、プローブ自体の動きがプローブケーシング内の質量の動きによって生成されるので、慣性プローブとみなすことができる。本発明によるプローブは、外部の機械的動く部分を備えていない。
【0029】
本発明によるプローブは、トランジェントエラストグラフィプローブである。これは、組織に過渡的な剪断波を印加し、超音波短パルスを高い繰返し率で送ることによって、剪断波の伝播を検出および分析することの両方に適合されることを意味する。
【0030】
剪断波はプローブの動きによって組織内に生成され、プローブは超音波トランスデューサを組織自体に対して押す。剪断波は、媒体の表面に低周波パルスを印加することによって生成される。例えば、パルスは、1Hzと5000Hzとの間に含まれる中心周波数fにおける正弦波の1周期の形状を有することができる。
【0031】
組織に印加される低周波パルスの持続時間は、1/2fと20/fとの間に含まれる。
【0032】
超音波短パルスは、100Hzと100×10Hzとの間に含まれる繰り返し周波数で放出される。
【0033】
剪断波の伝播は、超音波パルスまたはショットを媒体内部へ高い繰り返し率で送り、後方散乱超音波信号を検出することによって検出される。実際、組織は、超音波パルスを部分的に反射することができる不均一性又は粒子を含有する。
【0034】
その後の後方散乱信号を記録し、分析することによって、剪断波の伝播による組織の変位を計算することが可能である。次に、剪断波の特性が推定され得る。例えば、剪断波の伝播速度は、粘弾性媒体の硬度に直接関連する。
【0035】
本発明で説明されるプローブの利点は、超音波トランスデューサの実際の動きを制御することである。実際、超音波トランスデューサは、プローブケーシングに固着され、超音波トランスデューサとプローブケーシングとの間に相互的な動きはない。それで、超音波トランスデューサの実際の動きに対応するプローブケーシングの動きを監視することが可能である。超音波トランスデューサの実際の動きを測定することは、組織内で生成される過渡的な剪断波の形状を制御するために重要である。例えば、プローブの動きは、プローブ自体に装備された加速度計を用いて測定されることができる。
【0036】
言い換えれば、本発明によれば、超音波トランスデューサの動きは、従来のVCTEプローブで行われるものとは対照的に、地球の基準フレームで測定される。実際、従来技術によるVCTEプローブでは、超音波トランスデューサの動きがプローブケーシングの基準フレームで測定され、プローブケーシングに対する超音波トランスデューサの相対的な動きのみが測定される。
【0037】
実際には、プローブケーシング内の振動子によって作動される質量の運動は、プローブケーシングの運動をフィードバック信号として使用する制御ループによって決定され得る。これにより、剪断波の印加中にオペレータの手の運動を直接補償することが可能になる。
【0038】
プローブの反跳を補償するために、オペレータが正確な力を加える必要はない。その結果、粘弾性媒体上で硬度の測定を実行することは、プローブの操作者にとってより容易になる。さらに、硬度の測定値は、より再現性がある。
【0039】
従来技術で行われているように、プローブケーシングに対する超音波トランスデューサの相対的な動きのみを測定することによって、プローブの反跳を考慮することは不可能であろう。その結果として、たとえ先端の相対的な動きが正弦曲線軌道に従ったとしても、患者の身体に印加される有効低周波パルスは、プローブの反跳により異なる形状を有し得る。
【0040】
本発明によれば、患者の身体に接触している超音波トランスデューサは、プローブケーシングと共に動く。プローブケーシングの動きを検出することは、プローブ先端の動きを検出することと等価である。プローブケーシングの動きは、振動子のフィードバックとして使用される。実際、振動子のオシレーションの振幅は、患者の身体と接触しているプローブ先端の所望の動きを得るために調節され得る。さらに、本発明によるプローブに外部の動く部分がないことにより、頻繁な機械的較正の必要性がなくなる。
【0041】
前段落で概説した主な特徴に加えて、本発明による慣性プローブは以下に列挙するものからの1つまたは複数の追加の特徴を、個別にまたは任意の技術的組合せのいずれかで備えることができる:
- 超音波トランスデューサは、プローブ先端によってプローブケーシングに固着され、前記プローブ先端はプローブケーシングに固定された第1の端部および超音波トランスデューサに固定された第2の端部を有する;
- プローブは、プローブケーシングに固定された少なくとも1つの力センサを備え、力センサは分析されるべき組織との接触によるプローブケーシングPCの変形を測定するように配列される;
- 力センサは、超音波トランスデューサを受け、留め付けるように適合されたハウジングを備える;
- 力センサは、プローブ先端の第1の端部を受け、留め付けるように適合されたハウジングを備える;
- 位置センサは、プローブケーシングに結合され、位置センサは慣性プローブの変位を測定するように配列される;
- 力センサは、少なくとも歪みゲージおよび/または歪み感知抵抗器を備える;
- 少なくとも1つの超音波トランスデューサは、交換可能である;
- 少なくとも1つの超音波トランスデューサは、ディスク形状の超音波トランスデューサである;
- 振動子は、プローブケーシングに固定された部分と可動部分とを含む少なくとも1つの電気力学的アクチュエータを備える;
- 振動子の可動部分の質量は、慣性プローブの全質量Mの4分の1以上である;
- 位置センサによって測定されるプローブケーシングの位置は、プローブケーシング内の振動子の動きを制御するためにフィードバック信号として使用される;
- 粘弾性媒体に印加される低周波パルスは1/2fと20/fとの間に含まれる時間的持続時間を有し、fは1Hzと5000Hzとの間に含まれる、パルスの中心周波数である;
- 超音波短パルスは、100Hzと100000Hzとの間に含まれる繰り返し周波数で放出される。
【0042】
本発明の別の態様は、慣性エラストグラフィプローブの使用方法である。
【0043】
前記方法は、以下のステップ:
- 超音波トランスデューサを、分析すべき粘弾性媒体と、および/または患者の身体と接触させ続けるためにプローブを配置するステップ;
- 分析すべき粘弾性媒体内に剪断波を生成するための低周波パルスの印加をトリガするステップ;
- 媒体内に超音波ショットを放出し、後方散乱超音波信号を記録するステップ;
- 剪断波の伝播を被った粘弾性媒体の変位を決定するために、記録された後方散乱超音波信号を分析するステップ;
- 計算された変位に基づいて、分析すべき媒体の少なくとも1つの粘弾性パラメータを決定するステップ;
のうちの少なくとも1つを含む。
【0044】
低周波パルスの印加をトリガするステップは、オペレータによって手動で開始されるか、または超音波トランスデューサの対称軸と粘弾性媒体の表面あるいは患者の身体の表面との間の垂直性条件の検証で条件付けられる。例えば、超音波トランスデューサの対称軸と粘弾性媒体の表面への法線との間の角度は、0°と30°との間に含まれる。
【0045】
低周波パルスの印加をトリガするステップは、プローブによって粘弾性媒体に及ぼされる力が低閾値と高閾値との間に含まれる場合に実現される。例えば、低閾値は0.1Nと5Nとの間に含まれ、高閾値は6と20 Nとの間に含まれる。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は、以下に提供され、限定ではなく例示を純粋に目的とし、添付の図面を参照する、その説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1a】従来技術によるVCTEプローブの概略図を示す。
図1b】従来技術による力制御超音波プローブの概略図を示す。
図2】本発明によるトランジェントエラストグラフィプローブの概略図を示す。
図3図2のプローブと、分析されるべき組織と、オペレータの手との間の機械的結合のスキームを示す。
図4a】力センサの前パネルを示し、図2に従って、力センサはプローブの前端に配置され、プローブ先端の端部のためのハウジングを備える。
図4b】3つの歪みゲージを備える、図4aの力センサの後パネルを示す。
図5】本発明によるプローブの別の実現を示す。
図6図2または図5のプローブを使用してトランジェントエラストグラフィ測定を実施するためのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明によるプローブ1が、図2に示される。
【0049】
プローブ1は;
- 固定部分FIXおよび可動部分MOVを含む少なくとも振動子VIBを収容するプローブケーシングPC;
- 対称軸Aを有する超音波トランスデューサUS;
- 加速度計ACCを備え、プローブケーシングPCの位置または変位を時間に応じて測定するように構成された位置センサPOSであって、位置センサPOSによって提供されるデータを解析し、振動子VIBを制御する制御ループと協働する、前記位置センサ;
- プローブケーシングPCの前端に固定された第1の端部PTE1と、超音波トランスデューサUSに固定された第2の端部PTE2とを有するプローブ先端PTであって、プローブケーシングPCの前端は組織の近くに配置されるプローブケーシングの端部である、先端;
- プローブケーシングの前端に配置された力センサFSであって、超音波トランスデューサUSまたはプローブ先端PTを受け、留め付けるためのハウジングHOUを提供する、前記力センサ;
- 位置センサPOSを制御ループ及び振動子VIBに接続するための接続手段;
を備える。
【0050】
図2に示すプローブ(1)は:
- 振動子VIBの固定部分FIXをプローブケーシングPCに固定するように構成された、第1の垂直バーF1、第2の垂直バーF2、および水平バーF;
- 第1のバーF1から可動部分MOVに延びる第1のばねK1、および第2のバーF2から可動部分MOVに延びる第2のばねK2;
- 力センサFSに装備され、力センサFSの変形を測定することによってプローブケーシングPCの変形を監視するように構成された少なくとも歪みゲージまたは歪み抵抗センサSGであって、前記変形は、超音波センサUSと分析されるべき組織との間の接触によって引き起こされる、ゲージまたはセンサ;
をさらに備える。
【0051】
一実施形態によれば、プローブケーシングPCは円筒形状を有し、軸Aは円筒の軸である。あるいは、プローブケーシングは、軸Aを有する回転体の形状を有することができる。
【0052】
プローブケーシングのサイズは、ハンドヘルドプローブを得るために選択される。実施形態によれば、シリンダの円周は、120mmと160mmとの間に含まれる。
【0053】
軸Aは、超音波トランスデューサUSの対称軸である。例えば、円筒形超音波トランスデューサの場合、軸Aは、トランスデューサを形成する円筒の軸である。軸Aはまた、超音波トランスデューサUSによって放射される超音波短パルスの伝播方向を識別する。
【0054】
別の実施形態によれば、プローブケーシングPCは、測定中にオペレータの手によって保持されるように適合された任意の形状を有することができる。例えば、プローブケーシングPCは、図5に示すように、標準的な超音波検査プローブの形状を有することができる。
【0055】
振動子VIBは、プローブケーシングPCの内部に配置され、可動質量MOVと固定素子FIXの2つの素子で形成されている。振動子VIBは質量MOVを運動させるように構成され、これは軸Aに沿ったプローブ1全体の運動を生成する。
【0056】
軸Aに直角な方向を垂直と定義し、軸Aに平行な方向を水平と定義する。
【0057】
一実施形態によれば、固定部分FIXは、第1の垂直バーF1、水平支持バーF、および第2の垂直バーF2によって形成される保持手段によって適所に保持される。第1、および第2の垂直バーF1、F2はプローブケーシングに固定される。水平支持バーFは、第1垂直バーF1から第2垂直バーF2まで延びている。
【0058】
あるいは、水平バーFおよび振動子VIBを支持するために、1つの垂直バーF1またはF2のみが存在してもよい。
【0059】
保持手段F1、F、F2は固定部分FIXを遮断し、固定部分FIXは、プローブケーシングPCに固着される。振動子VIBの固定部分FIXをプローブケーシングPCに固着するように適合された保持手段の他の任意の構成が使用され得る。
【0060】
可動部分MOVは、それぞれ2つのばねK1およびK2によって、それぞれ第1および第2の垂直バーF1およびF2から分離されている。第1のばねK1は第1の垂直バーF1から動く部分MOVまで延び、第2のばねは、第2の垂直バーF2から動く部分MOVまで延びる。
【0061】
動く部分MOVは振動子VIBによって作動されると、水平バーFに沿ってスライドする。水平バーFは、固定部分FIXと振動子VIBの可動部分MOVの両方を支持する。
【0062】
2つのばねK1およびK2は動く部分MOVを支持し、動く部分MOVが動き始めるときに、リコール力(recalling force)として作用する。
【0063】
なお、動く部分MOVがプローブケースPC内でオシレーションすることに、留意する価値がある。振動子VIBは、慣性プローブ1の外側の部分を動かさない。
【0064】
図2に示す実施形態によれば、可動質量MOVは永久磁石であり、固定部分FIXはコイルである。コイルFIXに電位が印加されると、コイルFIXと磁石MOVとの間に力が及ぼされ、軸Aに沿った質量MOVのオシレーションが生じる。
【0065】
プローブケーシングPCの動きは、コイルと磁石との間の電磁力の作用と、ばねK1及びK2によって及ぼされるリコール力との両方による動く部分MOVの運動によって誘起される。この動きは運動量保存の法則の結果として説明されることができ、動く部分MOVの動きは、プローブケーシングPCの反跳を決定する。
【0066】
その結果、慣性プローブ1全体が運動させられ、超音波トランスデューサUSが患者の身体に対して押される。
【0067】
この構成の利点は、分析すべき組織に対する超音波トランスデューサUSの動きが振動子VIBによって直接決定され、それは正確に制御されることができることである。言い換えれば、プローブケーシングPCに対する超音波トランスデューサUSの相対的な動きがないと仮定すると、超音波トランスデューサUSの変位の振幅は、プローブケーシングPCの動きの振幅と一致する。組織に印加される低周波パルスの形状が、それで、正確に制御される。
【0068】
本発明によれば、超音波トランスデューサUSをプローブケーシングPCに固定するためのいくつかの可能な解決策が存在する。
【0069】
一実施形態によれば、超音波トランスデューサUSは、プローブケーシングPCに直接固定され得る。代替的に、超音波トランスデューサUSは、力センサFSに固定することができ、次に、プローブケーシングPCに取り付けられる。
【0070】
本実施形態の利点は、この構成を簡単に実現できることである。さらに、力センサFSは超音波トランスデューサUSと直接接触しており、これは、プローブケーシングPCの変形の検出をより効率的にする。プローブケーシングPCの変形はマイクロメートルの変形であり、超音波トランスデューサUSと分析されるべき組織との間の接触によるものである。
【0071】
図2に示す実施形態によれば、超音波トランスデューサUSは、第1の端部PTE1を備えるプローブ先端PTに固定される。第1端部PTE1は、プローブケースPCの前端に固定されている。例えば、プローブ先端PTは図1に示されるように、かなり円筒的な形状を有する。
【0072】
例えば、図2に示すように、プローブ先端PTE1の第1の端部を、力センサFSに存在するハウジングHOU内に挿入することにより、プローブ先端PTは、プローブケーシングPCに留め付けられることができ、プローブ先端PTE2の第2の端部は、超音波トランスデューサUSに固定される。
【0073】
この実施形態の利点は、プローブ先端PTが容易に交換可能であることである。言い換えれば、放出される超音波ショットの特性を組織または患者の身体の特性に適合させるために、異なる超音波トランスデューサUSを有する異なるプローブ先端PTを使用することが可能である。
【0074】
一実施形態によれば、慣性プローブ1の運動は、位置センサPOSによって測定される。
【0075】
この実施形態の利点はプローブケーシングPCの動きの振幅の直接測定であり、これは、超音波トランスデューサUSの動きの振幅と同一である。実際、本発明によれば、プローブケーシングPCに対する超音波トランスデューサUSの動きは不可能である。言い換えれば、超音波トランスデューサUSは、プローブケーシングPCの基準フレーム内で静止している。
【0076】
図2に示す実施形態では、位置センサPOSが、加速度計ACCと、二重時間積分を実行する電子回路DIとによって形成される。二重積分器DIは、測定された加速度から始まるプローブの位置rを与える。
【0077】
測定された加速度から位置rを計算することができる任意の電子回路が、本発明で使用され得る。
【0078】
有利には、位置センサPOSが、超音波トランスデューサUSの変位の直接測定を提供する。換言すれば、位置センサPOSは組織内に過渡的な剪断波を生成するために、組織に印加される低周波パルスの形状を直接測定する。
【0079】
次いで、プローブ1は事前定義された低周波パルス形状を得るために、振動子VIBを駆動することができる制御ループと協働するように適合される。制御ループは例えば、Fibroscan(R)デバイスに埋め込まれ得る。
【0080】
次いで、位置センサPOSによって測定された位置rは、振動子VIBを制御するためのフィードバック信号として使用される。一実施形態によれば、位置rは、運動質量MOVのオシレーションの振幅および周波数を制御する制御ループに供給される。
【0081】
この配列のおかげで、超音波トランスデューサUSの動きを直接制御することができ、明確に定義された低周波パルスが患者の身体に印加される。
【0082】
図2に示す実施形態によれば、プローブ1は、位置センサPOS、制御回路、および振動子VIBの間で電気信号を伝送するための接続手段も備える。接続手段はまた、振動子VIB、超音波トランスデューサUS及び他の埋め込み機器を動作させるために必要な電力を送達するための手段を備える。電力送達手段は、図2には示されていない。
【0083】
一実施形態によれば、位置センサPOSと、制御回路と、振動子VIBとを接続する手段は、ワイヤレスであってもよい。
【0084】
本発明の利点は組織に印加される低周波パルスを定義し、注意深く制御する可能性である。超音波トランスデューサUSの実際の動きは、位置センサPOSによって測定される。運動質量MOVのオシレーション特性は目標低周波パルス形状を患者の身体に印加するために、制御ループによって調節される。
【0085】
典型的なトランジェントエラストグラフィ用途では、患者の身体に印加される低周波パルスは、1Hzと5000Hzとの間に含まれる中心周波数、10μmと20mmとの間に含まれるピーク間振幅、および100μsと20sとの間に含まれる持続時間をもつ正弦波形を有する。超音波パルスの繰り返し率は、100Hzと100000Hzとの間に含まれる。
【0086】
一実施形態によれば、ピーク間振幅は、50μmと5mmとの間に含まれる。
【0087】
図3は、プローブ1と、組織と、プローブ1を所定の位置に保持するオペレータの手との間の機械的連結を概略的に示す。
【0088】
プローブケーシングPCの動きは、トランスデューサUSを組織に対して押すことによって組織に伝送される。組織に対するUSトランスデューサの実際の動きの決定は、プローブ1がオペレータの手にも動的に連結されるという事実のために困難である。オペレータの手の動きは、患者の身体に印加される低周波パルスの形状を不可避的に変える。
【0089】
本発明はプローブケーシングPCに対する超音波トランスデューサUSの動きを排除し、位置センサPOSによってプローブケーシングPC自体の位置を測定することによって、この問題を解決する。測定された位置は、振動子VIBのパラメータに対するフィードバックとして使用される。次に、事前定義された低周波パルス形状が得られるまで、振動子VIBのパラメータが調節される。
【0090】
換言すれば、プローブ1は、機械的可動外部部分を有していない。この場合、プローブ1は慣性プローブであり、その動きは、プローブケーシング内に配置された質量MOVの動きによって決定される。プローブケーシングPCに対する超音波トランスデューサUSの相対的な動きがないため、プローブケーシングPCの変位の振幅を測定することは、超音波トランスデューサUSの変位を測定することと等価である。次いで、プローブ1は組織に印加される低周波パルスの形状を直接測定し、オペレータの手の最終的な運動を補償することができる。また、外部の動く部分がないので、プローブの頻繁な機械的較正の必要性もなくなる。
【0091】
図2に示す実施形態によれば、プローブ1は、力センサFSも備える。この実施形態による力センサFSは、図4aおよび図4bに示されている。
【0092】
図4aは、プローブ先端PTまたは超音波トランスデューサが留め付けられることができる力センサFSの第1の側を示す。力センサFSは、プローブケーシングPCの前端に配置されている。力センサFSは、外部のリングERと、内部円ICと、外部のリングERを内部円ICに接続する3つのビームBMとを備える。内部円ICは、プローブ先端PTの端部を受け、留め付けるように構成された円筒形ハウジングHOUを備える。
【0093】
代替的に、超音波トランスデューサUSはプローブ先端PTが使用されない場合に、力センサFSに直接固定されてもよい。このような場合、円筒形または円盤形の超音波トランスデューサが使用され得る。
【0094】
図4aの力センサFSはまた、プローブ先端PTをプローブ1に含まれる電気回路に電気的に接続するための手段を備える。これらの接続手段は、図4aには示されていない。
【0095】
言い換えれば、プローブ先端PTの第1の端部PTE1または超音波トランスデューサUSが力センサに留め付けられると、超音波トランスデューサ自体が接続され、給電され、測定に使用される用意が整う。
【0096】
力センサFSの利点は、プローブ先端PTをそのハウジングHOUから容易に取り外し、異なる超音波トランスデューサUSを保持する別のプローブ先端PTと交換できることである。これは、例えば、肝臓の硬度を測定する際にプローブ1を使用する場合に有利である。この場合、患者の特性に応じて、異なる特性を有する超音波トランスデューサが使用され得る。例えば、肥満患者の場合、超音波の侵入深さがより大きい超音波トランスデューサUSを使用することが有用である。
【0097】
換言すれば、交換可能なプローブ先端PTは、超音波放射パターンを患者の身体に適合させるために、異なるサイズ/形状を有する超音波トランスデューサUSを使用することを可能にする。
【0098】
図4bは、図4aに示された側とは反対の、力センサFSの第2の側を示す。力センサFSのこの側には、少なくとも1つの歪みセンサが適用されている。
【0099】
力センサFSは図2に繰り返し(bis)示されるように、プローブケーシングとプローブ先端PTの両方に固定される。次いで、力センサFSは、USトランスデューサおよびプローブケーシングPCの両方に機械的に連結される。
【0100】
歪みセンサSGはプローブが組織と接触しているときに、超音波トランスデューサUSに、およびプローブ先端PTに加えられる圧力によって引き起こされる力センサFSのマイクロメートルの変形を測定するように適合される。
【0101】
患者の身体に及ぼされる圧力によるプローブケーシングPCのマイクロメートルの変形は避けられないことに注目する価値がある。本発明は、慣性プローブ1と粘弾性媒体表面との間の垂直性に関する情報を収集するために、このマイクロメートルの変形を利用する。
【0102】
垂直性条件は、軸Aが粘弾性媒体の表面に実質的に垂直である場合に検証される。例えば、垂直性条件は、対称軸Aと粘弾性媒体の表面への法線との間の角度が0°と30°との間に含まれる場合に満たされる。
【0103】
一実施形態によれば、力センサFSは、少なくとも1つの歪みゲージSGまたは歪み感知抵抗器を備える。好ましくは、図4bに示されるように、3つの歪みゲージSGまたは歪み感知抵抗器が使用される。3つのビームBMの各々は、歪みゲージSG又は歪みセンサを収容する。2つの隣接するビームBMは、120°の角度を形成する。
【0104】
本実施形態の利点は、プローブケースPCの変形方向を検出することである。この方向は、軸Aと分析されるべき組織の表面とによって形成される角度に関連する。組織硬度の信頼できる測定を実行するために、軸Aおよび組織の表面は、ほぼ垂直でなければならない。
【0105】
3つの歪みゲージSGまたは他の歪みセンサのおかげで、オペレータは軸Aと患者の身体の表面との間の角度に関する情報を有し、ユーザは信頼性のある硬度測定値を得るために、最終的にこの角度を補正することができる。垂直性条件が検証されない場合、剪断波は患者の身体に不適切に印加される可能性がある。この場合、剪断波の伝播方向が変更され得、測定された硬度の誤った値という結果となる。
【0106】
垂直性条件は、軸Aと粘弾性媒体の表面への法線との間の角度が0°と30°との間に含まれる場合に検証される。一実施形態によれば、垂直性条件は、軸Aと粘弾性媒体の表面との間の角度が0°と20°との間に含まれる場合に検証される。
【0107】
図2に示す実施形態によれば、振動子VIBは、プローブケーシングPCに固定された少なくとも、部分FIXと、動く部分MOVとを備える。慣性プローブ1は、動く部分MOVがプローブケーシングPCの内部にあるので、機械的な外部の動く部分を有していない。
【0108】
この配列のおかげで、例えば、そのオシレーションの振幅および周波数を修正することによって、動く部分MOVの動きを制御することが可能である。それで、位置センサPOSのおかげでプローブケーシングPCの動きを測定することによって、プローブ先端PTの実際の動きを正確に制御することが可能である。
【0109】
例えば、先端の運動の振幅が小さすぎる場合、制御ループは動く部分MOVのオシレーション振幅を増大させるために振動子VIBのパラメータを修正するように進み、これは、超音波トランスデューサUSのオシレーションの振幅の増大という結果となる。
【0110】
位置センサPOSおよび制御ループを備えるフィードバック回路のおかげで、明確に定義された形状を有する低周波パルスを印加することが、それで、可能である。
【0111】
フィードバック回路がオペレータの手の反跳または意図しない動きを自動的に補償することに、留意する価値がある。
【0112】
本発明の他の実施形態によれば、動く部分MOVの質量は、慣性プローブ1の全質量Mの4分の1以上である。
【0113】
この実施形態の利点は、動く部分MOVの運動を単に修正することによって、慣性プローブ1の全体的な動きを効果的に制御することを可能にすることである。言い換えれば、運動量保存則のために、動く部分MOVの質量がより小さい場合、慣性プローブ1全体の運動に対するその影響はより小さくなる。したがって、先端の運動の制御は、あまり効率的ではない。
【0114】
図5は、超音波検査プローブを修正することによって得られたプローブ1のバージョンを示す。この実施形態によれば、振動子VIBの固定部分FIXは、プローブケーシングPC、この場合は超音波検査プローブのプローブケーシングPCの壁に直接固定される。図2に示すように、軸Aは、動く部分MOVがオシレーションする軸である。この場合、超音波トランスデューサUSは、軸Aに沿って超音波を放射する単一のトランスデューサのアレイを備える。
【0115】
図5に示された実施形態によれば、プローブケーシングPCは、円筒または回転体とは異なる形状を有することができる。例えば、プローブケーシングPCは任意の標準的な超音波検査プローブの形状を有することができ、又は単に、オペレータの手に保持されるように適合された形状を有することができる。
【0116】
図5に示す実施形態によれば、振動子VIBは、プローブケーシングの壁の1つに固定される。
【0117】
この実施形態の利点は、標準的な超音波検査プローブを修正することによって、本発明によるエラストグラフィ検査プローブを得ることである。
【0118】
一実施形態によれば、USトランスデューサは、ディスク形状の超音波トランスデューサである。
【0119】
この形状の利点は、超音波ショットの高度に対称的な放射を得ることである。高度に対称的な状況は、超音波ショットおよび剪断波の両方の伝播の計算を単純化する。
【0120】
本発明の別の目的は、粘弾性媒体の硬度を測定するためのトランジェントエラストグラフィ法100である。
【0121】
図6はトランジェントエラストグラフィ法100に含まれるステップを概略的に示し、前記方法はプローブ1を使用する。
【0122】
一実施形態によれば、方法100は、超音波トランスデューサUSを粘弾性媒体と接触させて配置することからなる第1のステップPLACEを備える。
【0123】
慣性プローブ1のおかげで、このステップは、オペレータによる注意深く決定された力の印加を要求しない。
【0124】
換言すれば、オペレータは慣性プローブ1を使用するために、人体の特定の訓練又は特定の知識を必要としない。
【0125】
逆に、位置センサPOSにより、および制御回路により提供される帰還メカニズムによって、および外部の動く部分が存在しないおかげで、慣性プローブ1は、超音波トランスデューサUSの所定の動きを正確に提供する。次いで、先端の動きが使用され、トランジェントエラストグラフィ測定のために低周波パルスを媒体に印加する。
【0126】
軸Aと粘弾性媒体の表面に垂直な方向との間に形成される角度が所定の閾値を超える場合、硬度の測定におけるシステマティックな誤差が生じる。換言すれば、プローブと粘弾性媒体の表面との間の垂直性条件が検証されなければならない。
【0127】
プローブケーシングPCの前端の力センサFSに配置された歪みゲージSGのおかげで、慣性プローブ1と粘弾性媒体との間の垂直性条件が容易に検証され得る。
【0128】
換言すれば、粘弾性媒体の表面に対する軸Aの傾きが効果的かつ容易に制御され得る。
【0129】
垂直性条件が検証されない場合、信号がオペレータに送られる。信号は、視覚的、音波的、またはオペレータにより解釈され得る任意の他の形態を有することができる。この信号は、オペレータによって実行される垂直性条件の探索を大幅に簡略化する。
【0130】
垂直性条件が検証されると、ステップSTARTの間、剪断波が媒体に印加される。
【0131】
ステップSTART中の剪断波の印加は、垂直性条件が検証されたときに自動的にトリガされ得る。異なる実施形態によれば、剪断波の印加は例えば、プローブケーシングPC上に配置されたボタンまたは別のトリガメカニズムを使用して、オペレータによって手動でトリガされ得る。あるいは、遠隔トリガは、プローブ1にインストールされた通常のワイヤレス接続手段と組合せても使用され得る。
【0132】
トリガ手段は、図2には示されていない。
【0133】
さらに、トランスデューサUSと組織の表面との間に及ぼされる力に関する条件も使用され得る。この場合、接触の強度が2つの閾値の間に含まれる場合にのみ、低周波パルスがトリガされる。低閾値は0.1Nと5Nとの間に含まれ、高閾値は6と10Nとの間に含まれる。
【0134】
トランジェントエラストグラフィ測定では、低周波パルスは粘弾性媒質の内部に剪断波を生成させる。次に、超音波ショットとも呼ばれる高周波超音波短パルスを媒体の内部に送ることによって、剪断波の伝播がプローブされる。超音波は、プローブ1全体の動きによって組織を押す超音波トランスデューサUSによって印加される。
【0135】
超音波ショットの後方散乱部分は、同じ超音波トランスデューサUSによって記録される。実際、粘弾性媒体の不均一性のために、超音波は散乱される。散乱された超音波信号の一部は超音波トランスデューサUSに戻り、記録される。
【0136】
一実施形態によれば、超音波ショットの放射および後方散乱信号の記録は、剪断波の印加と同時に開始する。
【0137】
別の実施形態によれば、超音波ショットの放射および後方散乱信号の記録はステップEM-USの間に実行され、ステップEM-USは剪断波を組織に印加するためにプローブ先端PTがその動きを完了したときに開始する。
【0138】
粘弾性媒体内の散乱粒子の変位は、ステップCALCULの間に計算される。このステップの計算は、例えば、マイクロプロセッサーのような手段、又は他のコンピューティング手段により実行される。
【0139】
剪断波の伝播を被った散乱媒体の変位は、後方散乱超音波信号に基づいて計算され得る。
【0140】
例えば、後続する時間に記録された2つの後方散乱超音波ショットを相関させることによって、2つの考慮された時間の間の散乱粒子の変位を再構築することが可能である。
【0141】
相関に使用される2つの後続する後方散乱超音波ショットが連続的でなくてもよいことに、留意する価値がある。
【0142】
記録された後方散乱信号間の相関のいくつかの技術は、相互相関(cross-correlation)または相互相関(intercorrelation)、二乗差の和、または他のものとして、従来技術においてよく知られている。一般に、剪断波の伝播を被った粘弾性媒体の変位を決定するために、任意の相関技術が使用され得る。
【0143】
ステップDETは、粘弾性媒体の少なくとも1つの粘弾性パラメータを決定することからなる。これは、ステップCALCULの間にコンピューティングされた変位から開始して行われる。例えば、段階DETは、1つ以上のマイクロプロセッサのようなコンピューティング手段によっても実行される。
【0144】
ステップDETの間に、弾性、硬度、粘性、超音波減衰、剪断波伝播速度、またはそれらの任意の組合せなどの粘弾性パラメータが決定され得る。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6