(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】液化ガスを輸送するための船舶およびその船舶を運転する方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20220603BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20220603BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
B63B25/16 D
F17C13/08 302B
F17C13/00 302A
(21)【出願番号】P 2019531951
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017083597
(87)【国際公開番号】W WO2018114981
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ホジソン,マーク・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,スティーブン・アンドリュー
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516263(JP,A)
【文献】特開2008-309195(JP,A)
【文献】特開2007-155060(JP,A)
【文献】特開平11-063396(JP,A)
【文献】特開2003-106498(JP,A)
【文献】特開平08-170799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0276627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
F17C 13/08
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを輸送するための船舶であって、
-船体と、
-液化ガスを貯蔵するために前記船体中に配置された少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)と、
-前記船舶を推進するための少なくとも1つのエンジン(52)と、
-第1の圧力(P
1)でボイルオフガス(88)を受けるための前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンクの蒸気空間(84)に接続されたコンプレッサー入口、および、前記第1の圧力を超える第2の圧力(P
2)で前記少なくとも1つのエンジンに加圧ボイルオフガ
スを供給するためのコンプレッサー出口、を有する少なくとも1つのコンプレッサー(90)と、
-ボイルオフガスを回収するためのボイルオフガス(BOG)回収システム(30)であって、
-前記加圧ボイルオフガスの少なくとも一部を再凝縮させるために前記コンプレッサー出口に接続された冷却セクション入口、および、再凝縮加圧ボイルオフガスを提供するための冷却セクション出口、を有する、冷却セクション、ならびに
-前記再凝縮加圧ボイルオフガスを貯蔵するための前記冷却セクション出口に接続された回収タンク入口を有する少なくとも1つの回収タンク(32)、を備える、BOG回収システムと、を備え
、
前記回収タンク(32)が、前記少なくとも1つのエンジン(52)に接続された第1の出口を有する、液化ガスを輸送するための船舶。
【請求項2】
前記BOG回収システムが、前記冷却セクション出口と前記回収タンク入口との間に配置された第1のポンプ(40)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記冷却セクションが、前記再凝縮加圧ボイルオフガスを提供するために、再凝縮器入口と、再凝縮器出口と、を有する再凝縮器(34)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記冷却セクションが、前記コンプレッサー出口に接続された予冷器入口と、前記再凝縮器入口に予冷加圧ボイルオフガスを提供するための予冷器出口と、を有する予冷器セクション(38)を備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記再凝縮器(34)が、前記第2の圧力(P
2)
と同じか、またはそれより低い第3の圧力(P
3)で作動するように適合されている、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項6】
前記BOG回収システムが、前記冷却セクション出口と前記回収タンク入口との間に配置された第1のポンプ(40)を備え、
前記第1のポンプ(40)が、前記再凝縮器出口に接続され、前記第1のポンプが、前記加圧ボイルオフガ
スに対する前記再凝縮加圧ボイルオフガス(106)の熱交換のために、第3の圧力(P
3)を超える第4の圧力(P
4)で前記再凝縮加圧ボイルオフガスを、
予冷器入口に提供するための第1のポンプ出口を有する、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項7】
予冷器出口が、前記回収タンク入口に接続されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷却セクションが、前記加圧ボイルオフガスを、前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)に貯蔵された前記液化ガス(100)の一部と熱交換させるための再凝縮器熱交換器(102)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記冷却セクションが、前記再凝縮加圧ボイルオフガスを提供するために、再凝縮器入口と、再凝縮器出口と、を有する再凝縮器(34)を備え、前記再凝縮器熱交換器(102)が、前記再凝縮器(34)の内側に配置されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記再凝縮器(34)に、液化ガスを前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)から前記再凝縮器(34)内に噴霧するための噴霧ヘッダ(104)が設けられている、請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
前記回収タンク(32)に、前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)に接続された第1の噴霧ヘッダ(122)が設けられており、前記第1の噴霧ヘッダが、液化ガス(120)を前記回収タンク(32)内に噴霧するよう適合されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記冷却セクションに、前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)に接続された第2の噴霧ヘッダ(104)が設けられており、前記第2の噴霧ヘッダ(104)が、液化ガス(100)を前記冷却セクション内に噴霧するように適合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記回収タンク(32)が、前記再凝縮加圧ボイルオフガスを前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)にポンピングするために、第2のポンプ(36)に接続された第2の出口を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記液化ガスが、液化天然ガス(LNG)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記回収タンク(32)が、Cタイプ極低温貯蔵タンクである、請求項1~
14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記再凝縮加圧ボイルオフガスを貯蔵するための総体積を有する前記回収タンク(32)が、前記少なくとも1つの貨物タンク(50)の前記総体積の約0.5%~5%程度である、請求項1~
15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
液化ガスを輸送するための方法であって、
-船舶で液化ガスを輸送することであって、前記船舶が、
-船体、
-液化ガスを貯蔵するために前記船体中に配置された少なくとも1つの貨物貯蔵タンク(50)、
-前記船舶を推進するための少なくとも1つのエンジン(52)、を備える、船舶で液化ガスを輸送することと、
-前記少なくとも1つの貨物貯蔵タンクの蒸気空間(84)に接続された、少なくとも1つのコンプレッサー(90)のコンプレッサー入口において、ボイルオフガス(88)を第1の圧力(P
1)で受けることと、
-前記第1の圧力を超える第2の圧力(P
2)で前記少なくとも1つのエンジンに加圧ボイルオフガ
スを供給するために前記コンプレッサーを使用することと、
-ボイルオフガスの回収のために、前記加圧ボイルオフガ
スの少なくとも一部を、ボイルオフガス(BOG)回収システム(30)に分流することと、
-前記BOG回収システムの冷却セクションにおいて前記加圧ボイルオフガスの前記少なくとも一部を再凝縮させて、再凝縮加圧ボイルオフガスを提供することと、
-前記再凝縮加圧ボイルオフガスを少なくとも1つの回収タンク(32)に貯蔵することと、
前記少なくとも1つの回収タンク(32)から前記少なくとも1つのエンジン(52)に気化ボイルオフガス(44)を提供すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、液化ガスを輸送するための船舶に関する。その船舶には、ボイルオフガスを処理するためのシステムが設けられる。本開示はまた、その船舶を運転する方法にも関する。
【0002】
液化ガスは、典型的には、液化天然ガス(LNG)であり得るか、またはそれを含み得る。液化ガスは、極低温度まで冷却することができるので、液体として、減圧下で貯蔵することができる。LNGは、例えば、ガスが約マイナス163℃に冷却されたとき、ほぼ大気圧、典型的には約1barで貯蔵することができる。
【0003】
一般に、天然ガス(NG)は、液化プラントにおいて液体(液化天然ガスまたはLNGとも称される)に変換され、LNG用の貯蔵タンクが設けられたLNG運搬船(船舶)によって長距離輸送され、浮体式貯蔵再ガス化設備(FSRU)または消費者に供給される地上の搬出ターミナルによって再ガス化される。
【0004】
液化天然ガスは周囲圧力で約-163℃の極低温で輸送するために貯蔵されるので、貯蔵タンク内のLNGの温度が周囲圧力において-163℃よりわずかに高いときでも、LNGは蒸発する可能性がある。LNG運搬船のLNG貯蔵タンクは断熱されているが、LNG貯蔵タンクでは熱が外部からLNGに絶えず伝達されるため、LNG運搬船によるLNGの輸送中に、LNGは絶えず蒸発し、LNG貯蔵タンクでボイルオフガス(BOG)が発生する。
【0005】
上述のようにLNG貯蔵タンクでボイルオフガスが発生すると、LNG貯蔵タンクの圧力が上昇し、安全閾値レベルを超える可能性がある。
【0006】
従来、LNG貯蔵タンクの圧力が設定圧力を超えて上昇する場合、ボイルオフガスはLNG貯蔵タンクの外部に吐出され、LNG運搬船の推進用の燃料として使用され、LNG貯蔵タンクの圧力は安全レベルに維持される。しかしながら、LNG貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを燃焼させることによりボイラーで発生した蒸気によって駆動される蒸気タービン推進システムは、推進効率が低いという問題がある。これは、実際には、蒸気プラントが、利用可能なボイルオフガスよりも多くの天然ガスを使用する可能性があることを意味している。
【0007】
LNG貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを圧縮した後にディーゼルエンジン用の燃料として使用する二重燃料ディーゼル電気推進システムは、蒸気タービン推進システムよりも高い推進効率を有する。
【0008】
しかしながら、二重燃料ディーゼル電気推進システム等の効率的な現代の推進システムは、LNG貯蔵タンクで発生するボイルオフガス(BOG)の量が推進システムの容量または現在の需要を超える場合、問題となる。典型的には、BOGの量は、船舶がある特定の閾値を下回る速度で航行するとき、すなわち船舶が比較的低速で移動するとき、ディーゼル推進システムの容量を超える。
【0009】
余剰のボイルオフガスを消費するためには、典型的には、ガス燃焼ユニット(GCU)等の追加の設備が必要である。LNG運搬船が輸送用燃料を節約するために低速で航行したいとき、この特有の問題は、LNG貨物のスポット価格が低い際には悪化する。
【0010】
一方、LNG貯蔵タンクの圧力を安全なレベルに維持する別の方法がある。LNG貯蔵タンクの圧力が設定圧力を超えて上昇する場合、ボイルオフガスはLNG貯蔵タンクの外部に吐出され、再液化プラントにおいて再液化され、次いでLNG貯蔵タンクに戻される。
【0011】
US8959930は、LNGを極低温液体状態で輸送するために、LNG運搬船のLNG貯蔵タンクで発生したボイルオフガスを処理するための方法および装置を開示している。LNG運搬船はボイルオフガス再液化プラントを有し、そこでは、LNG運搬船の航海中に発生するボイルオフガスの総量のうち、再液化プラントの処理能力に相当する量のボイルオフガスが、LNG貯蔵タンクから吐出され、再液化プラントによって再液化される。
【0012】
US8959930の再液化方法は、排出および燃焼する代わりに、ボイルオフガスの一部を液化してLNG貯蔵タンクに貯蔵することによって、LNG貯蔵タンクから吐出されるボイルオフガスの量を一定に維持し、無駄なボイルオフガスを防ぎ、エネルギーを節約することができる。
【0013】
DeawooによるUS2010139316も同様に、加圧後に、ボイルオフガスの一部が、冷媒に対して冷却され、液体分離器内に約3barで貯蔵されるシステムを開示している。これは別の冷凍サイクルを使用する再液化プロセスである。
【0014】
しかしながら、再液化プラントは、かなりの量の設備を必要とし、かなりの電力需要があり、運転が比較的複雑であり、したがって設備投資および営業費の両方を増加させる。再液化システムは、実際には極めて熱的に非効率的であり、典型的には18~20%程度である。さらに、再液化設備は、比較的場所をとりかつ重量があって、貨物または他の設備に利用可能な空間を制限し、船舶の全体的な燃料効率に悪影響を及ぼすため、船舶へ適用するには重大な欠点である。例えば、上述の問題により、既存のLNG運搬船への後付けは非経済的と考えられる。
【0015】
EP2706282A1は、液化ガスタンク内で発生するボイルオフガスを再液化するためのボイルオフガス処理装置を開示している。圧縮後、ボイルオフガスの一部は戻りラインを介して主極低温貯蔵タンクに直接戻される。戻りラインには、ボイルオフガスの再液化に必要な圧力を維持するように構成された圧力保持デバイスが取り付けられている。戻りラインでは、ボイルオフガスは、主貯蔵タンクで液化ガスと直接熱交換され、その後、直接タンクに戻される。EP2896810A1は、液化天然ガスを貯蔵するいくつかの貯蔵タンクと、燃料としてタンク中に貯蔵された液化天然ガスを使用するエンジンとを含む、船舶用の液化ガス処理システムを提供している。貯蔵タンクからのボイルオフガスは約150~400baraで圧縮され、第2の流れと第3の流れとに分岐される。第2の流れは燃料としてエンジンに供給される。第3の流れは、別個の冷媒を使用する再液化装置を用いることなく、貯蔵タンクを出るボイルオフガスと熱交換することによって、熱交換器で冷却される。このようにして冷却された第3の流れは減圧され、その減圧された第3の流れは気液混合状態となり、その気体成分および液体成分は貯蔵タンクに戻される。
【0016】
上述のように、LNG貨物のボイルオフガスをある程度減少させるために、運用手法を最適化することができる。しかし、機械類の潜在的な効率が実現されていないのは、LNG業界全体の共通問題である。
【0017】
したがって、失われ、しばしばガス燃焼ユニットに送られるガスの量をさらに減少させることを可能にするであろうオプションについてのニーズが明確に認められる。
【発明の概要】
【0018】
本開示は、液化ガスを輸送するための船舶を提供するものであり、その船舶は、
-船体と、
-液化ガスを貯蔵するために船体中に配置された少なくとも1つの貨物貯蔵タンクと、
-船舶を推進するための少なくとも1つのエンジンと、
-貨物タンク圧力でボイルオフガスを受けるための少なくとも1つの貨物貯蔵タンクの蒸気空間に接続されたコンプレッサー入口、および、第1の圧力を超える第2の圧力で少なくとも1つのエンジンに加圧ボイルオフガスを供給するためのコンプレッサー出口、を有する少なくとも1つのコンプレッサーと、
-ボイルオフガスを回収するためのボイルオフガス(BOG)回収システムであって、
-加圧されたボイルオフガスの少なくとも一部を再凝縮させるためにコンプレッサー出口に接続された冷却セクション入口、を有する、冷却セクション、ならびに
-再凝縮加圧ボイルオフガスを貯蔵するための冷却セクション出口に接続された回収タンク入口を有する少なくとも1つの回収タンク、を備える、BOG回収システムと、を備える。
【0019】
一実施形態では、BOG回収システムは、冷却セクション出口と回収タンク入口との間に配置された第1のポンプを備える。
【0020】
別の実施形態では、冷却セクションは、再凝縮加圧ボイルオフガスを提供するために、再凝縮器入口と、再凝縮器出口と、を有する再凝縮器を備える。
【0021】
一実施形態では、冷却システムは、コンプレッサー出口に接続された予冷器入口と、再凝縮器入口に予冷加圧ボイルオフガスを提供するための予冷器出口と、を有する予冷器セクションを備える。
【0022】
一実施形態では、第1のポンプは再凝縮器出口に接続され、第1のポンプは再凝縮加圧ボイルオフガスを提供するための第1のポンプ出口を有する。第1のポンプは流体ポンプであり得る。第1のポンプの出口での圧力は、約5Bar~25Barの範囲であり得る。
【0023】
一実施形態では、第1のポンプは再凝縮器出口に接続され、その第1のポンプは、加圧ボイルオフガスに対する再凝縮加圧ボイルオフガスの熱交換のために、第3の圧力を超える第4の圧力で再凝縮加圧ボイルオフガスを予冷器入口に提供するための第1ポンプ出口を有する。
【0024】
一実施形態では、その第1のポンプ出口は、再加圧ボイルオフガスに対する再凝縮加圧ボイルオフガスの熱交換のための予冷器入口に接続され、再凝縮ガスの過冷却を最小限に抑える。
【0025】
一実施形態では、予冷器出口が回収タンク入口に接続されている。
【0026】
冷却セクションは、加圧ボイルオフガスを、少なくとも1つの貨物貯蔵タンクに貯蔵された液化ガスの一部と熱交換させるための再凝縮器熱交換器を備えることができる。再凝縮器熱交換器は、再凝縮器の内側に配置することができる。再凝縮器には、液化ガスを少なくとも1つの貨物貯蔵タンクから再凝縮器内に噴霧するための噴霧ヘッダを設けることができる。
【0027】
回収タンクには、少なくとも1つの貨物貯蔵タンクに接続された第1の噴霧ヘッダを設けることができ、第1の噴霧ヘッダは、液化ガスを回収タンク内に噴霧するように適合されている。
【0028】
冷却セクションには、少なくとも1つの貨物貯蔵タンクに接続された第2の噴霧ヘッダを設けることができ、第2の噴霧ヘッダは、液化ガスを冷却セクション内に噴霧するように適合されている。
【0029】
一実施形態では、回収タンクは、回収タンクからエンジンへ、蒸発したボイルオフガスを提供するために、少なくとも1つのエンジンに接続された第1の出口を有する。
【0030】
別の実施形態では、回収タンクは、再凝縮加圧ボイルオフガスを少なくとも1つの貨物貯蔵タンクにポンピングするために、第2のポンプに接続された第2の出口を有する。
【0031】
さらに別の実施形態では、噴霧ヘッダを介して、移送ポンプは強制気化器を供給することができる。これは、回収液体を燃料ガス需要に見合う適切な速度で蒸発させることになる。
【0032】
他の態様によれば、本開示は、液化ガスを輸送するための方法を提供し、その方法は、
-船舶で液化ガスを輸送することであって、その船舶は、
-船体、
-液化ガスを貯蔵するために船体中に配置された少なくとも1つの貨物貯蔵タンク、
-船舶を推進するための少なくとも1つのエンジン、を備える、船舶で液化ガスを輸送することと、
-少なくとも1つの貨物貯蔵タンクの蒸気空間に接続された少なくとも1つのコンプレッサーのコンプレッサー入口でボイルオフガスを第1の圧力で受けることと、
-第1の圧力を超える第2の圧力で少なくとも1つのエンジンに加圧ボイルオフガスを供給するためにコンプレッサーを使用することと、
-ボイルオフガスの回収のために、加圧ボイルオフガスの少なくとも一部をボイルオフガス(BOG)回収システムに分流することと、
-BOG回収システムの冷却セクションで加圧ボイルオフガスの少なくとも一部を再凝縮させて、再凝縮加圧ボイルオフガスを提供することと、
-その再凝縮加圧ボイルオフガスを少なくとも1つの回収タンク中に貯蔵することと、を含む。
【0033】
その方法は、少なくとも1つの回収タンクから直接に少なくとも1つのエンジンに気化ボイルオフガスを提供するステップを含むことができる。
【0034】
液化ガスは、液化天然ガス(LNG)を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、添付の図面を参照した以下の詳細な説明から明らかとなろう。図面全体を通して、類似の文字は類似の部分を表している。図面において、
【0036】
【
図1】蒸気タービン推進システムを装備している従来のLNG運搬船に関する、ボイルオフガスの需給(y軸)対速度(x軸)の例示的な図である。
【
図2】二重燃料ディーゼル電気(DFDE)推進システムを装備している別の従来のLNG運搬船に関する、ボイルオフガスの需給(y軸)対速度(x軸)の例示的な図である。
【
図3】本開示のエネルギー回収システムの一実施形態の図である。
【
図4】本開示のエネルギー回収システムを設けたLNG運搬船の一実施形態の側面図である。
【
図5】本開示のエネルギー回収システムを設けたLNG運搬船の一実施形態の上面図である。
【
図7】
図5のLNG運搬船のラインA-Aに沿った断面図である。
【
図8】本開示のエネルギー回収システムのそれぞれの実施形態の適用と比較した、従来のLNG運搬船によるいくつかの航海に関する、航海の長さ(y軸;1航海当たりの移動距離を表している)対平均速度(x軸)の例示的な図である。
【
図9】本開示のシステムのBOGを回復する能力の影響(縦軸の%)対貨物タンクの総体積に対する回収タンクの総体積の割合(横軸の%)を示している例示的な図である。
【
図10】本開示のエネルギー回収システムを設けた運搬船と比較した、従来のLNG運搬船のヒール体積(残液量)(y軸)対バラスト航海期間(x軸)を示している例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下は、本開示のシステムおよびプロセスの実際の適用の例示的な概要を提供する。
【0038】
効率的なLNG船運転における決定要因は、推進プラントからの燃料ガスに関する需要と、貨物封じ込めシステムによって生成されるBOGの量とのバランスをとることです。BOGの供給が需要を上回ったときはいかなるときでも、IGCコードの第7章で要求されているように、蒸気ダンピングまたはGCU運転等の不経済な手法を用いて、大気への排出よりもむしろ余剰ガスを燃焼させることによって状態のバランスをとらなければならない。
【0039】
古い世代のLNG運搬船は蒸気推進プラントを利用しており、それにはいくつかの利点があるが、熱効率が悪く、効率は約25%である。現代の船舶は、ディーゼルプラントを用いており、それは熱効率が高く、典型的には40%~50%である。
【0040】
図1は、蒸気タービン推進システムを装備した従来のLNG運搬船に関する、ボイルオフガス需給(y軸、1海里当たりの燃料油相当のメートルトンで表した[メートルトン FOE/NM])対速度(x軸、ノットで表した)の図を示している。液化ガスのための貯蔵タンクの総体積は138,000m3程度である。需要曲線10は、船舶をある特定の速度で推進するための推進システムの燃料需要を示している。供給曲線12および14は、積載船舶、すなわち充填された貯蔵タンクを有する船舶に関する利用可能なボイルオフガスを示しており、例えばそれぞれ1日当たり0.13%および1日当たり0.24%の例示的なボイルオフ率(BOR)を示している。本明細書において1日当たり0.24%とは、貨物(すなわち液化ガス)の総体積の0.24%が1日当たり蒸発することを意味している。
【0041】
供給曲線14によって示されるように、歴史的なLNG運搬船は、時間依存貨物(time dependent cargo)を運搬する高速で運航する高出力船舶である。これらの初期の船舶に関する効率曲線は、船舶が高速で、典型的には約18.5ノット以上の速度でプログラムされた船舶において得られた。バランスが達成されたのは、すなわち、エンジン用燃料の需要がBOGの利用可能な供給を超えたのは、これらの速度においてのみであった。
【0042】
供給曲線12に示されるように、改善された断熱性とは、現代の蒸気動力船の船体および封じ込めシステムの特徴が十分に適合していることを意味している。船舶は、追加の非効率性および無駄を招くことなく、最低12ノットの速度で運転することができる。それにもかかわらず、船舶は、ディーゼルエンジンと比較して、本質的に熱的に非効率的なままである。
【0043】
図2は、二重燃料ディーゼル電気(DFDE)推進システムを装備したより現代的なLNG運搬船に関する、ボイルオフガス需給(y軸、1海里あたりの燃料油相当のメートルトンで表した[メートルトン FOE/NM])対速度(x軸、ノットで表した)の例示的な図を示している。液化ガス用の貯蔵タンクは、例えば174,000m3程度の総体積を有する。需要曲線20は、船舶をある特定の速度で推進するための推進システムの燃料需要を示している。供給曲線22、24、26、および28は、積載船舶、すなわち貯蔵タンクが充填された状態の船舶に関する利用可能なボイルオフガスを示してしており、例えば、それぞれ1日当たり0.13%、1日当たり0.11%、1日当たり0.08%、および1日当たり0.05%の例示的なボイルオフ率(BOR)を示している。損益分岐点速度は、それぞれ18、15、13、および9ノット程度である。
【0044】
図2に示すように、現代の船舶にDFDEおよびME-GI推進プラントを設置すると、これらのエンジンは蒸気タービンよりも燃料効率が高いため、またミスマッチとなった。これは、言い換えれば、ガス燃焼ユニット(GCU)が、船舶がより低い速度で運転されるとき、貨物タンクからのボイルオフガスの流れを維持するために日常的に使用されることを意味している。
【0045】
GCU中で燃焼されたガスは、有用な仕事を行わず、有害な排出物(CO2等)を吐出し、またそうでなければ顧客にとってはLNGの損失となり得ることを表している。典型的なチャーター契約の商業的構造は、船舶オペレータがこの挙動を変えるインセンティブを持たず、すべての損失が、販売機会が失われるという形で船舶チャーター業者が負担するというものである。
【0046】
船舶速度のプログラミングは多くの変数に依存し、船舶オペレータは、売り手と買い手の要件に応じて異なる貨物に関して異なる速度で船舶を使用する必要がある。これらの船舶の多くがしばしばそうであるように、これは特にスポットチャーター市場の船舶に当てはまる。ロングマーケットでフリートをスケジュールする際のチャレンジにより、トレーダーにとってはより柔軟な船舶速度という利益が大幅に増える。
【0047】
1つの貨物タンクにヒールのみを保持するなどのように、BOG量を減らすためにバラスト航海で行うことができるヒール管理による方策があるが、これらのオプションは積載航行中は利用できない。
【0048】
断熱の増加または再液化設備によるミスマッチ問題に対する可能な解決手段が存在する。断熱材を増加させることは、排出量と損失の両方を最小限に抑えるLNG運搬船の新規建造に関する受動的なアプローチである。
【0049】
しかしながら、LNG運搬船は、典型的には、数十年の寿命で設計されており、つまり、現在用いられている船舶は、今後何年にもわたって使用され続けることになる。これらの契約の存続期間中にGCUで消費される可能性のあるLNGの量は、現在の傾向が継続するならば非常に重要である。これらの船舶の多くは、DFDE、TFDE、またはXDF構成等の低燃費エンジンを装備している。
【0050】
これは、事実上、より効率的な発電プラントによってもたらされる節約が十分に実現されていないことを意味している。
【0051】
既存のLNG運搬船フリートに関する分析により、例えば、ディーゼル・電気推進プラントをそれぞれ装備した8隻の船舶を選択すると、1年間で、貨物タンク圧力を制御するために、搭載されたガス燃焼ユニット(GCU)において約100,000m3のLNGを燃焼させた、ことが定量化された。言い換えれば、これは大量の貨物が失われたということであり、それと同時に約122,000メートルトンのCO2も排出している。
【0052】
図1および2に関して上述したように、この挙動は、これらの船舶に関する柔軟な取引プロファイルにおいて推進のために必要とされる利用可能なボイルオフ燃料ガスにおけるミスマッチによって必然的に起こる。
【0053】
LNG運搬船の新規建造に関するオプションは、既存の船舶の残存寿命およびチャーター契約の観点から経済的ではない場合がある。一方、再液化および断熱の増加の両方により、既存の船舶に後付けするという意味で重大な課題が提起される。
【0054】
本開示は、BOGを捕捉し、後で船内で消費するために、何らかの方法で、その捕捉したBOGを船上で保持することを目的としている。これは、例えば、捕捉されていて、次いで、次のバラスト航行の間に使用される、積載航行時における過剰なBOGに適用することになる。本明細書において、積載航行とは、満杯の貯蔵タンクを有する航行を意味し、一方、バラスト航行とは、ほとんど空の貯蔵タンクを有する戻り航行である。
【0055】
このプロセスはBORを効果的に減少させ、それにより、DFDE船舶および同様に積載状態で比較的燃料効率の良い船舶のプログラミングにおける柔軟性が、増すことになる。
【0056】
本開示のシステムは、封じ込めシステムからのBOGがエンジンからの需要を超えるときに、積載航行中に過剰なBOGを捕捉する。捕捉された過剰のBOGは、主貨物タンクで許容され得るよりも高い圧力で液体として貯蔵される。
【0057】
図3は、本開示による過剰なボイルオフガスを捕捉するためのシステム30に関する一実施形態を示している。システム30は、過剰エネルギー回収システム(EERS)とも称される場合がある。
【0058】
基本的な実施形態では、システム30は回収タンク32を備える。このシステムはまた、再凝縮器34およびポンプ36も備えることができる。そのシステムは、構成要素を相互接続するための様々なパイプラインを備え、例えば、システムを貨物タンク50に一端で接続しているパイプライン42、およびシステムを機械室燃料供給に接続し、反対端で、エンジン52および/またはGCU54等の船舶の消費装置(consumer)につなげているパイプライン44を備えている。
【0059】
改良された実施形態では、以下の設備の部品の1つ以上をシステム30に含めることができる。
-予冷器38、
-流体移送ポンプ36、40、
-1つ以上のガスバルブユニット58、60、62、64、66、
-1つ以上の極低温流体バルブユニット70、72、74、
-EERS制御システム80。
【0060】
実用的な実施形態では、1つ以上の回収タンク32はいわゆるタイプCのタンクであり得る。これらのタンクは、液化ガスを大気圧に対して高い圧力で貯蔵するため、「極低温圧力容器」としても知られている。それらは船舶の船体から独立しており、船体強度および船の完全性を維持するためには不可欠ではない。これは、典型的にはメンブレンタンクまたはタイプAまたはBと言及される類似の貯蔵タンクであり、液化ガスを大気圧(約1bar)で貯蔵するために設計されている主貯蔵タンク50とは異なる。
【0061】
前もって製造された真空隔離極低温タイプCタンクは、広範なサイズ(例えば最大500m3)で入手可能である。最大許容使用圧力は最大20bar程度である。利用可能なタンクのサイズは、今後数年間で大幅に増加すると予想されている(1,000~10,000m3)。
【0062】
システム30は、液化ガス用の典型的な運搬船の既存の設備に接続することができる。かかる船舶は、典型的には、1つ以上の貨物貯蔵タンク50を備えることになる。貯蔵タンク50は、典型的には、液化ガス82をほぼ大気圧で貯蔵する。上述したように、液化ガスは、ゆっくりと蒸発する場合があり、したがって蒸気空間84の圧力が上昇する。蒸気空間からボイルオフガス88を除去して蒸気空間84の圧力を制御するために、蒸気ヘッダ86を蒸気空間に設けることができる。
【0063】
容器には、典型的には、ボイルオフガスを圧縮し、ガスの圧力を所定の増加圧力まで増大させるためのガスコンプレッサー90を設けてもよい。増加圧力では、加圧されたBOGは、燃料としてエンジン52による使用に好適であり得る。したがって、BOGは第1の圧力P1で提供される。第1の圧力P1は典型的には大気圧をわずかに超える。実用的な実施形態では、所定の増加圧力P2は2Bar~10Barであり得る。
【0064】
パイプライン92は、コンプレッサー90を、エンジン52およびGCU54等の主な消費装置に接続する。バルブ64、66は、それぞれエンジン52かGCU54へのいずれかへの加圧BOGの送達を制御する。
【0065】
本開示のシステムは、パイプライン42を介して燃料ガスコンプレッサー90の吐出端からBOGを取り出すことによってBOGの好適な増加圧力を達成する。バルブ58は、BOG回収システム30に分流される加圧BOGの量を制御する。
【0066】
第1のステップでは、分流された加圧ボイルオフガスは、回収タンク32にポンピングする前に、主貯蔵タンク50からのLNG100に対する熱交換によって少なくとも部分的に再凝縮される。
【0067】
再凝縮器34は第3の圧力P3で作動するであろう。実際には、再凝縮器34内の第3の圧力は、ほぼ燃料ガスコンプレッサーの圧力、すなわち、コンプレッサー90の出口における所定の出口圧力P2程度である。実用的な実施形態では、第3の圧力P3は、コンプレッサー出口から再凝縮器34へのBOGのある特定の流れを可能にするために、第2の圧力P2より十分に低いであろう。
【0068】
回収タンク32は貯蔵圧力P5で作動するであろう。貯蔵圧力は約2Bar~25Barの範囲で選択することができる。実用的な実施形態では、貯蔵圧力P5は6bar~15barの範囲で選択することができる。
【0069】
BOG貯蔵圧力P5は、液体移送ポンプ40によって達成されるであろう。したがって、分流された加圧BOGは再凝縮され、続いて圧力がポンプ圧力P4まで高められる。ポンプ圧力P4は、所定の貯蔵圧力P5を十分に超えて、選択された貯蔵圧力に到達する。1つ以上の回収タンク32は、該貯蔵圧力P5において少なくとも部分的に液体形態でBOGを貯蔵する。
【0070】
冷却LNG100は貨物タンク50から取り出される。一実施形態では、LNG100は、再凝縮器34内に配置された熱交換器102に設けることができる。熱交換器102へのLNG量を制御するためにバルブ74を設けることができる。冷却LNG100は、パイプライン124を介して主貨物タンクに戻され、その結果、貨物タンク50中のばら積み液体貨物82の温度がわずかに上昇する。
【0071】
改良された実施形態では、システム30はBOG42を予冷するための熱交換器38を含む。再凝縮BOG106に対してBOGを予冷することにより、再凝縮器中の液体貨物に排除される熱の量を、必要な貯蔵条件のために確実に最小にすることができる。
【0072】
冷却LNG100の第1の部分は、バルブ72を介して、再凝縮器34中に配置された噴霧ヘッダ104へと分流されて、冷却LNGの該分流された第1の部分は再凝縮器34内に噴霧され得る。再凝縮されたボイルオフガスを含む液化ガスは、再凝縮器34の下端に集められる。
【0073】
ポンプ40は液化ガス106を再凝縮器から予冷器38へとポンピングする。分流されたBOG42は予冷器38において液化ガス106と熱を交換する。続いて、予冷されたBOG108は再凝縮器34へと誘導されて上述のように再凝縮される。分流されたBOGとの熱交換およびわずかな温度上昇の後に、液化ガス110は回収タンク32に誘導されて高圧で貯蔵される。
【0074】
さらに別の実施形態では、システム30は、冷却LNG100の第2の部分120をBOG回収タンク32中に配置された噴霧ヘッダ122に分流させるためのバルブ70を含むことができる。本明細書のバルブ70は、噴霧ヘッダへのLNG120の流れを制御することができる。LNGを回収タンク32内に直接噴霧することにより、回収タンク32中に貯蔵されている液化ボイルオフガスの温度を低下させることができ、したがって貯蔵液体の圧力も低下させることができる。
【0075】
一実施形態では、回収タンク32は、ガスパイプライン126を介して再凝縮器34に結合させることができる。パイプライン126のバルブ60は、回収タンク32からの気化BOGを吐出し、それを再凝縮器に戻して再凝縮させる。本実施形態によれば、回収タンク32の圧力を制御して減圧することができる。
【0076】
回収タンク32中に大気圧を超える圧力で貯蔵された再凝縮BOGは、例えば以下のようにして使用することができる。
-バラスト航行時にエンジン52に燃料を提供する。ここで、バルブ62および64は、回収タンク32からエンジン52への気化BOG44の流れを制御し、
-ばら積み液体貨物82と混合して顧客に吐出する。ここで、ポンプ36は液化加圧BOG130の吐出を制御する。液化加圧BOG130は、例えば、主貨物82と混合するために、貨物タンク50に誘導することができる。例えば、液化加圧BOG130は、主貨物タンク50の流体入口52に誘導することができ、
-バラスト航行時に冷却貨物タンク50に噴霧する。ここでは、液化加圧BOG130は、貨物タンク50中の噴霧レール52に導入されて、蒸気空間84内に噴霧され得る。
【0077】
図4~
図7は、船体142、デッキ144、前端部146および後端部148を有する例示的な従来のLNG運搬船140を示している。一実施形態では、本開示のシステム30は、従来のLNG運搬船142のデッキ144上に取り付けることができる。1つ以上のタイプC貯蔵タンク32を、直列に(例えば
図5のタンク32A、32B)、および/または隣接させて(
図5のタンク32C、32D)間に配置することができる。BOG貯蔵タンクは、左舷側および/または右舷側(船舶の前端に向かって見て、それぞれ左および右についての航海用語)上に配置することができる。
【0078】
図4および
図5に示すように、システム30の貯蔵容量は、貨物タンク50の総容量の貯蔵能力と比較して、比較的制限され得る。以下で明らかにするように、(再凝縮され圧縮された)ボイルオフガスのための貯蔵体積を相対的に制限することによっても、ボイルオフガスの浪費を、既に著しく低減または排除することさえできる。
【0079】
本開示の概念は、その後の使用のために有限量の過剰BOGを捕捉することである。分析の目的は、様々な体積のシステムがGCUの全体的な消費量に与える影響を確認することである。
【0080】
図8は、本開示のシステムの影響の例示的な図を示しており、航海の長さ(海里単位の積載航海距離を表しているY軸)対速度(ノットで表しているx軸)のプロットを表示している。有限量のBOGを回収する能力は、航行の長さと速度に応じて様々に航行に影響を及ぼす。運転線180によって示されるように、約17.5ノットを超える速度の航行は、GCUを必要としないであろう。線181は、船体最適値、すなわちDFDE駆動船舶等の船舶の推進のための燃料需要の推定値を表している。多数の点182は、ある期間中におけるLNG運搬船のそれぞれの実際の航海を示している。航海の長さ対速度のプロットにおいて、線184、186、および188はそれぞれ、500、1000、および2000m3の総BOG貯蔵体積について示しており、本開示のシステムに関する運転範囲を定めている。本明細書では、それぞれの線184、186、および188の右側にプロットされた全ての点182に関して、500、1000、および2000m3の組み合わせたBOG貯蔵を含む本開示のシステムにより、後の再使用のために全ての余剰BOGを捕捉することが可能になる。したがって、本開示のシステムは、特定の線184~188の右側にプロットされた全ての航海についてBOGを効果的に排除することになる。それぞれの線の左側にプロットされた航海に関しては、システムは、依然として1航海当たりの過剰なBOGの大部分を捕捉することが可能であろう。
【0081】
図9は、本開示のシステムがBOGを回収する能力についての例示的な分析を示しており、その分析は、完全に捕捉されるであろう航行の割合(線190)と、この機会の大きさ(opportunity size)が表しているLNG回収の体積(線192)との両方に基づいてなされる。縦軸は回収された総BOG体積の百分率を示している。横軸は、回収タンク32の総体積対貨物タンク50の総体積との割合を百分率で表したものである。
【0082】
次いで、この情報は、各商談の規模に対する費用対効果の数値の計算に使用できる。
図9は、回収タンクの比較的限定された貯蔵容量が、BOGを回収し、損失を未然に防ぐ上で、既に著しい利益を提供し得ることを示している。本開示のシステムは、総回収タンク体積が総貨物体積の約0.5~5%の範囲であるという大きな利益を提供することができる。
【0083】
安定性と重量を考慮した初期の計算では、設計限界内で、BOG用に少なくとも最大1,500~2,000m3の追加の貯蔵を既存の船舶に取り付け得ることが示されている。これは、典型的には、本開示のシステムが有益である範囲内に、例えば、総貯蔵体積と比較して0.5%~3%の範囲内に、十分に収まり得る。好ましい実施形態では、総回収タンク体積は、投資対メリットを最適化するために、総貨物体積の約1%~2%の範囲であり得る。BOG貯蔵タンク32の最小貯蔵体積は少なくとも50m3であり得る。
【0084】
本開示のシステムは、バラスト航行時におけるヒールの保持に関して追加の利益を提供することができる。これは、ヒールの意味および機能を説明するための例示的な貨物サイクルの以下の説明の後に、
図10を参照すれば明らかであろう。
【0085】
典型的な貨物サイクルは、タンク50が「ガスフリー」状態をとることから開始し、これはタンクが空気で一杯になっていることを意味し、それによりタンクおよびポンプの検査および保守が可能である。
【0086】
LNGがタンク50に再導入され得る前に、爆発性雰囲気によってもたらされる危険性を排除するために、典型的には「不活性化」される。不活性ガスプラントは、ディーゼル油を空気中で燃焼させて、ガスの混合物(典型的には5%未満のO2および約13%のCO2+N2)を生成する。これを、酸素レベルが4%未満に下がるまでタンクに吹き込む。不活性ガス組成の一例を表1に示す。
【表1】
【0087】
次に、船舶は「ガスアップ」と「クールダウン」のために入港する。
【0088】
タンクの不活性化を不活性ガスを使用して完了した場合、貨物タンクは、典型的には、充填が開始され得る前に、パージ乾燥し、冷却する。不活性ガスは、14%のCO2を含有していて、これは、-60℃で凍結し、バルブ、フィルター、ノズルを詰まらせたり、貨物ポンプに損傷を与えたりする可能性がある。
【0089】
LNGは、噴霧ラインを介して、液体をガスにボイルオフする主気化器に供給して、船舶に供給する。次いで、これをガス加熱器において約20℃(68°F)に温め、次いでタンク50に吹き込んで「不活性ガス」を置き換える。凍結しやすい全てのガスがタンクから除去されるまで、これを続ける。
【0090】
これで船舶はガスアップされ温められる。タンクは、まだ周囲温度であり、メタンで満たされている。
【0091】
次の段階はクールダウンである。LNGは、噴霧ヘッダーおよび噴霧ノズルを介してタンク中に噴霧され、それらは気化してタンクを冷却し始める。余剰ガスを再び陸上に吹き付けて、再液化またはフレアスタックで燃焼させる。貨物タンクのクールダウンは、典型的には、各タンクの温度センサーの平均温度が-130℃(-200°F)以下の温度を示したときに、完了したと見なす。これで、タンクにバルクを充填する準備完了である。
【0092】
バルク充填が始まり、液体LNGが陸上の貯蔵タンクから船舶のタンクにポンピングされる。置き換えられたガスはコンプレッサーによって陸上に吹き付けられる。充填は、タンク50が典型的には約98.5%満たされるまで続ける(貨物の熱膨張/収縮を可能にするため)。
【0093】
船舶は、吐出口に進むことができ、積載航行と称される。航行中に、上で説明したように、様々なボイルオフ管理戦略を用いることができる。
【0094】
いったん、吐出口では、貨物は、船舶の貨物ポンプを使用して陸上にポンピングされる。タンク50が空になると、蒸気空間84は、陸上からのガスによって、または貨物気化器においていくらかの貨物を気化させることによって、満たされる。船舶は、可能な限りポンプで汲み出すことができ、またはいくつかの貨物は「ヒール」として船上に保持することができる。
【0095】
例えば、吐出後の総貨物体積の小部分、例えば約5%~10%を船上に維持することは従来の実施である。これはヒールと称され、ヒールは、充填前にヒールを有していない残りのタンクを冷却するために使用される。ヒールは、全てのタンクに展開することができるか、または1つ以上の貨物タンクに統合することができる。保持されるヒール体積は、バラスト航海の長さおよび/または船速、および船舶の特定の燃料消費量に基づくであろう。航海の長さによっては、全ての貨物タンク全体に、ヒールを、すなわちLNGを、散布するのが一般的である。第一に噴霧の必要性を避けるためではあるが、総ヒール体積が単一タンクの下限充填限界を超える可能性があるためでもある。スロッシングによる損傷を回避するために、下限充填値を指定している。
【0096】
ヒールを使用して貨物タンクを冷却することは徐々に行うことができる。例えば、約-130℃以下の貨物タンク温度を達成することを目的とすることができる。上述のように、クールダウンと同じ基準を適用する場合がある。
【0097】
クールダウンは、モス型貨物タンクが設けられた船舶ではおおよそ約20時間、メンブレン型貨物タンクが設けられた船舶では10~12時間かかり得る。そのため、ヒールを輸送することは、船舶が港に到着する前にクールダウンを完了することができ、大幅な時間の節約になる。その船舶は、バルク充填条件が準備されている状態で到着する。
【0098】
すべての貨物が陸上にポンピングされると、バラスト航行時に、タンクはウォームアップし、船舶はガスアップされ温かい状態に戻る。次いで、陸上で供給されるLNGを使用して、充填のために船舶を再度冷却することができる。
【0099】
本開示のシステム30はまた、バラスト航行時にヒールに貯蔵を設けることができ、それにより、吐出の完了時に、著しく減少した量のヒールを潜在的に保持することができる。次いで、主要貨物タンクはバラスト航行の過程で温めることができ、タンクへの噴霧は予定充填日の2または3日前に開始される。
【0100】
これにより、バラスト内のボイルオフ体積を大幅に減少させることが可能となる。なぜなら、熱進入は、主貨物タンク50のうちの1つの大きな体積ではなく、はるかに小さい回収タンク32に対するのみであるからである。さらに、回収タンク32のより高い圧力定格を利用して、内容物の圧力をゆっくり上昇させ、それにより、いかなるボイルオフガスも不要にすることができる。
【0101】
バラスト状態でLNG運搬船を運転するための重要なパラメータは、船舶が充填口で冷たさを提示すること、すなわち予冷された貨物タンクを有することである。貨物タンクは一般に、上述のようにヒールと称されるLNGの量を減らすことによって低温に保たれる。
【0102】
現在のヒール管理戦略は、ヒール量を減らすことで非常に成功しているが、ヒールを有するという要件を完全に排除するものではない。必要とされるヒールの量は、典型的には、船舶のLNG容量に特異的なものである。必要とされるヒールの量は、例えば、バラスト航行の各1日の持続時間に関して約50~100m3の範囲であり得る。これらの測定基準は異なる場合があり、典型的にはLNG貨物体積に特異的である。
【0103】
実用的な実施形態では、178,000m3程度の総貯蔵容量を有する最新のDFDE/TFDE駆動LNG運搬船にとっては、総量約900m3のLNGの保持は、周囲温度から貨物タンク50の冷却を実行するのに十分であろう。このヒールを、主貨物タンク50とほぼ同じ基準まで断熱された本開示のシステムの回収タンク32中に貯蔵すると、1日のボイルオフ率を1日当たり約2m3以下に減らすことができる。システム30が全圧力範囲の回収タンク32を使用することができるとき、BOG損失はバラスト航行でも実質的に完全に取り除くことができる。
【0104】
図10は、典型的なLNG運搬船に関する、現在のヒール体積要件200(縦軸、LNGをm3で表示)対バラスト航行の期間(横軸、日数で表示)を示している例示的な図である。本開示のシステムを使用すると、利用可能なヒール体積210は、バラスト航行全体を通して実質的に不変であり得る。これは、交差点220と、バラスト航行の対応する閾値期間230が存在することを意味している。閾値230を超える継続時間を有する航行については、本開示のシステムを使用して所定のヒール体積を保持することは有益であろう。
【0105】
例えば、約150,000~190,000m3程度の総貨物体積を有するメンブレンタンク運搬船等の大型LNG運搬船では、例えば期間において10日の閾値を超えるバラスト航海は、ヒールが回収タンク32において保持される場合、主貨物タンク50(のうちの1つ)においてヒールを保持するよりも、必要とされるヒールはより少ないであろう。これは、船舶が寒冷地に到達することが要求されるとき、10日等の該閾値期間にわたる航行のための追加のオプションをもたらす。バラスト航行のための燃料量の管理により、寒冷地に到達する必要性から切り離すことができ、航海の長さと、燃料油およびLNGの相対価格とに応じて、バラスト航行のための燃料費とCO2を節約することができる。
【0106】
2016年におけるフリートデータを調査したところ、バラスト航行の半分超が閾値期間を超えていたことが明らかになったため、このアプローチの候補となる可能性がある。
【0107】
吐出口に保持されているヒールは、より重質の炭化水素、主にエタン、プロパン、およびブタンを含有している場合がある。ヒールは、6%ものより重質の炭化水素を含み得る。ヒールのより軽質画分、主にメタンは、最初に蒸発し、それにより残余ヒールは、より重質の成分に富む。より長いバラスト航行時には、残っているヒールのバルクはより重質の画分からなる位置に達する場合がある。
【0108】
これは、特にTFDEおよびDFDE船に影響を与える現象である。その理由は、これらのより重質の成分は、TFDE/DFDEエンジンでは消費できず、これらは燃料ガスコンプレッサーの吸い込みでBOG流から取り除かれて貨物タンクに戻されるためである。蒸気船ボイラーはこれらのより重質の画分を消費することができるが、TFDE/DFDE船でより長いバラスト航行の終わり頃に残っているヒール体積は、非常に高い含有率の重質留分の含有量を有し、事実上「デッドヒール」となる。2016年におけるフリートデータに関する調査によれば、重質画分の量は単一のバラスト航行時に450m3を超える可能性があることが明らかになった。
【0109】
これらのより重質の画分は、冷却効果または燃料源をなんら提供しないため、GCUによってのみ処理することができる。非常に少量のヒールを保持することは、より重質成分の体積が減少するため、かなりの体積のより重質成分の蓄積は起こらない。
【0110】
EERS回収タンク32のより高い圧力定格は、回収タンク32の圧力を上昇させることができるという点でさらなる利点を有し、それによりタンクからの流れがなく、この運転モードでは濃縮が起こらないことを意味している。
【0111】
本開示のシステムおよび方法は、上述のようにLNG貨物の損失を少なくとも部分的に未然に防ぐことができる。本開示のシステムは既存の船舶に後付けすることができる。また、このシステムは、構成要素の数が限られているため、比較的安価で堅牢である。
【0112】
申込者によってチャーターされた全フリートに対して追加しかつ推定し、各船舶の残りのチャーター期間を考慮して重み付けすることによって、関連するチャーター期間の全フリートにわたる潜在的な報奨は、LNGのかなりの量の推定される回収である。これにより、関連するCO2排出量が大幅に削減され、LNGがボイルオフガスとして失われるであろう「何もしない」シナリオに対してLNGの販売損失を防ぐ。
【0113】
BOG回収タンク32およびシステム30の使用から得られる利益は、HFOとガスの相対価格、航海の長さと航海速度に依存するであろう。特に効果があると思われる航海は、停泊中または漂流中の期間を含む、長期間ではあるが近距離の航海であろう。
【0114】
回収タンク32の使用により、有害気象を許容するのに必要な予備量の燃料を除去することができ、デッドヒールを許容する必要性が除去され、低負荷(速度)または漂流でのGCU運転の必要性が除去され、そしてヒール保持量を判定するオペレータの経験ファクターが除去される。
【0115】
2016年の8月末におけるフリートに関する調査では、プロジェクト指針に基づいて、期間内の25回のバラスト航行のうちの24回で、開示のシステムによって節約ができた可能性があることが示されている。この運転モードは、例えば少なくとも8,000m3のLNGだけ1船舶当たり年間生産量を増加させることができ、また、例えば少なくとも1,700m3のLNGだけ1船舶当たりGCUに送られる年間体積を減らすことができる。
【0116】
本開示は、TFDE(三元燃料ディーゼル電気)、DFDE(二元燃料ディーゼル電気)、およびXDF(X型二元燃料)推進システムを使用している最新のLNG運搬船に適用可能な過剰エネルギー回収システム(EERS)の適用を含む方法およびシステムを提供する。その設計は、必要でないときには余剰ガスを集めて貯蔵し、それが必要なときにはそれを推進プラントへと解放し、それにより無駄なエネルギーを取り除き、また燃料油の追加使用を回避する。
【0117】
本開示のEERSシステムは、すべてのBOGがエンジンによって消費される速度を下回る速度で、積載航行時の不要な消費を減らす。
【0118】
さらに、本開示のシステム30は、より長いバラスト航行時にヒール量を著しく減少させることができ、それにより、貨物貯蔵タンクを、すなわち封じ込めシステムを、冷たく保つための要件とは無関係に航海速度を設定することができる。この機能は、積載港と日付が吐出の完了時に固定されていない場合に特に有益である。
【0119】
本開示のシステムおよび方法は、例えば以下の利点および特徴を提供する。
改良された燃料効率および運転速度の柔軟性を有するよりクリーンな動力付き海運、
運転コストを最小限に抑えるためにLNG生産高を最大化する。
有害な排出物を最小限に抑え、現今の厳格な法律および予想される将来の法律を遵守する。NOx、SOx、CO2、および粒子状物質の削減、
システムを既存の船舶に後付けすることができるため、実施および販売が容易である。このシステムは費用対効果の高いソリューションを提供し、
石油蒸留物燃料の消費を最小限に抑える。
船舶の性能を飛躍的に向上させ、船舶の運航者に競争上の優位性をもたらす。
【0120】
EERSはなんら新しい技術を導入していない。
【0121】
EERSパイプラインのレイアウトは、既存の貨物配管の配置を最小限に変更して設計される。EERSに関連するパイプラインは、可能であれば既存のパイプライン経路に従う。
【0122】
EERSは、必要でないときには余剰ガスを集めて貯蔵し、それが必要なときにはそれをプラントへと解放し、それにより無駄なエネルギーを取り除き、有害な排出物を吐出し、また液体燃料油の追加使用も回避する。
【0123】
EERS設備は、貨物タンク中の既存の燃料ガスコンプレッサーとLNG噴霧ポンプを利用するものとする。EERSは、関連する既存の設備の設計パラメータ内で作動するように設計されているものとする。
【0124】
EERSパイプラインの長さは、サービスの維持、重量、およびパイプラインボイルオフにおいて、CAPEXを最小限に抑えるために実用的な限り短くする必要がある。
【0125】
EERSシステムは、LNG運搬船の既存の船舶用ユーティリティおよび制御システムから利益を得るように設計されているものとする。
【0126】
EERSは、エンジンルームの機械類のための既存のLNGガス処理設備を使用するように設計されているものとする。
【0127】
EERSは、
図4~7に示すように、貨物区域に設置され、したがって危険区域に設置されるであろう。設備は、ゾーン1のために設計され、保護技術および認証は貨物区域の既存の設備と一致するであろう。
【0128】
EERSの材料、機械類、設備、および艤装は、IGC 2016コードおよびIACS要件に準拠した通常の造船および海洋工学品質を使用するものとする。
【0129】
パイプライン設計材料304Lおよび316Lは既存のEERSシステム材料と互換性があり、Maritime DEC規格に準拠している。コスト面からは、316L材料が考えられている。
【0130】
EERSシステムは、積載航行中に、封じ込めシステムからのボイルオフガス流量の50%を処理することができるように設計することができる。最も高いケースとして、契約上0.128%のBORが採用され得る。実際には、EERSシステム30は、500m3~2,000m3の回収LNG貯蔵容量、例えば約1,000m3の再凝縮BOGを管理するように設計することができる。
【0131】
システム30のための回収タンク32として使用される2つの主要なタイプC LNGタンク断熱システム、真空パーライト、およびPUフォームについてスウォット分析を行った。この知見に基づいて、真空断熱タンクが好まれていると結論付けられ、この結論は優れたボイルオフ性能によるものである。ランク付けの演習により、2つの封じ込めシステムの相対的なメリットには全体的な違いがほとんどなく、いくつかの領域での利益は、もう一方の低い相対パフォーマンスだけ勝っている、ことが認められる。
【0132】
船の動きとタイプCタンク内の液体の自由表面との相互作用は、タイプCタンク内に大きな波の蓄積をもたらす可能性があり、それはタイプCタンクの端部にかなりの力で衝突する場合がある。発生の可能性および影響の大きさは、タイプCタンクのタンク寸法と支援船のサイズによって異なる。この現象は、回収タンク32内に制水壁を設置して自由表面のスパンを短くすることによって軽減することができる。
【0133】
DNV分類ノート31.13は、船舶の大きさと比較したタイプCタンクの大きさに基づくスロッシング分析要件に関するガイダンスを提供している。このガイダンスには、タイプCタンクが船の長さの約16%未満である場合、スロッシング分析も制水壁も必要ではない、と記載されている。
【0134】
提案された配置(
図4~7を参照をされたい)は、274mのLBPの船舶上に例えば24mの長さの回収タンク32を使用し、回収タンクを、船の長さの8~9%程度にし、スロッシング分析作業が必要であると考えられる範囲から十分に圏外とする。
【0135】
実用的な実施形態では、本開示のシステム30は、凝縮BOGを貨物タンク50またはLNG気化器に移送するために、各回収タンク32用の移送ポンプ36を有する。これらのポンプ36は、LNGC貨物タンクストリッピングポンプと同様の電気駆動遠心極低温サービスポンプであることができる。典型的な設計容量は50m3/時程度であることができる。
【0136】
EERSシステム30は、好ましくは、船舶の既存の液体および蒸気配管システム、主に貨物蒸気ヘッダ、噴霧ヘッダ、およびエンジンルーム燃料ガス供給システムと連結する必要があろう。
図3を参照されたい。
【0137】
貯蔵タンクのための安全バルブは、他の貨物システムの安全バルブに設けられているように、ライザーマスト(riser masts)への配管を必要とする場合がある。
【0138】
システム30に備えられるパイプは、ある液体状および気体状の極低温媒体に対して様々なサイズのものであることができる。パイプラインはメインデッキ上に配置することができる。配管口径は、LNGCインターフェイスの配管口径にできるだけ近いように維持することができる。ステンレス鋼等級304Lおよび316Lは、好適であり、316Lはこのサービスのための好ましい材料である。
【0139】
例示的な熱力学的評価
【0140】
非常に低い温度でのLNGの運搬は、比較的温かい環境から冷たい液体への熱進入を引き起こす。この熱の流入は、ボイルオフガス(BOG)の形態での蒸気の除去、それによる蒸発の潜熱に起因する冷却により、熱力学的にバランスがとられる。タンク50中の蒸気は、典型的には、例えば約-130℃に過熱されるが、正確な温度はBOG除去流量に依存し、より低い流量はより温かいガス温度をもたらす。
【0141】
BOGは、蒸気ボイラーまたはディーゼルエンジンによって、燃料ガスとして使用することができる。再液化プラントを装備した船舶では、BOGを再凝縮して熱を冷媒サイクルに排除することができます。
【0142】
利用可能なサイクルの熱効率は、非常に低い温度に起因して典型的には約15%であるため、冷媒サイクルは高出力の原動機を必要とする。冷媒はまた、約6倍の冷却効果で通常は淡水を冷却しながら、高温シンクに熱を排除することも必要である。この熱は、最終的には海水に捨てなければならず、大きな熱交換器および冷却水流が必要となる。
【0143】
本開示のシステム30の核心は、BOGの一部の圧力を別個のレシーバ32中で上昇させ、これが示すエンタルピーの上昇を利用することによって、熱進入の一部を効果的に捕捉することにある。
【0144】
システム30はすべての熱進入を吸収することができない場合があり、残りの熱はヒートシンクに吸収される必要があろう。ヒートシンクは、ばら積み液体貨物82によって形成することができる。
【0145】
好ましい概念は、LNGを使用してBOGを間接的に冷却することである。間接的に冷却するとは、システム30が凝縮BOGを凝縮器34に貯蔵する能力を有する必要があるだけを意味している。
図3を参照されたい。
【0146】
積載状態でのLNG船の運転は、主として貨物タンクの蒸気圧を境界内に維持することに関心が持たれており、これは一般に積載航行の間に貨物の温度をわずかに上昇させる。
【0147】
本開示のシステムを使用してBOGの圧力を増加させると、システムが含有するエネルギーの全てを吸収できず、液体貨物82へいくらかの熱を排除することが必要となり得る。
【0148】
入手可能な記録を調べると、充填された積荷の平均温度は-159.56℃であり、吐出された貨物の平均は-159.5℃であり、0.06℃の穏やかな上昇であった。航海の特定のデータは、積載航行にわたる最大の温度上昇は0.3℃であることを示している。
【0149】
-159℃を超える温度で送達された貨物があり、報告された最高温度は約-158.2℃である。
【0150】
実際に最高到着温度を示しているターミナルは1つだけで、ドバイの-159℃であり、他のターミナルでは、最大タンク圧力1,100~1,200mBarを示しており、それは-159.1℃~-159.4℃の温度範囲に相当する。
【0151】
経験的実証は、ターミナルはより低い温度と圧力を好むが、これらは好みというよりはむしろ規定であることは明確に確立されていないということである。
【0152】
すなわち約1,000m3の総貯蔵量を有する回収タンク32を有する本開示のシステム30を用いる1,000m3のBOGの回収は、表2に示したばら積み貨物温度の温度に影響を及ぼし得る。
【表2】
【0153】
封じ込めシステムの運転圧力範囲は、低圧警報点と高圧警報点の間の約150mbarであり、封じ込めシステムに関するこれらの技術的限界は、許容され得る最大1.5℃範囲の温度(すなわち、主貯蔵タンク(複数可)50に貯蔵されている液化ガスの最大許容温度上昇)に等しい。
【0154】
封じ込めシステム50よりも高い圧力で保持される容器32に熱エネルギーを貯蔵することの核心は熱力学的に実行可能である。
【0155】
6Baraでのシステム運転および貯蔵に必要な1.3℃の温度上昇は、利用可能な1.5℃の範囲内である。
【0156】
再凝縮器34を約6Baraで運転し、回収タンク32において、増加圧力で、例えば約8~11Bara以上の圧力で、貯蔵することにより、貨物カーゴ82の温度上昇を、目標回収体積1,000m3(すなわちBOG貯蔵タンク32の容量)に関して、約1.1℃に限定することを可能にし、それは利用可能な1.5℃に対してより多くのマージンを許容する。これは熱力学的な根拠に基づいて推奨されるオプションとして提供される。
【0157】
冷却プロセスからの熱の放散は、貨物体積全体の温度を中程度の上昇率で上げる。ばら積み液体貨物の温度上昇は、現在の手法からの逸脱であるが、船舶および封じ込めシステムの技術的運転パラメータ内にある。
【0158】
システム30は、どの回収圧力および貯蔵圧力のオプションが選択されるかにかかわらず、既存の機械類の能力を維持しながら、BOG流量の50%に合わせて大きさを変更することができる。したがって、システム30は、既存の船舶に後付けするための比較的単純で安価な解決策を提供する。
【0159】
本開示の1つ以上のBOG貯蔵タンク32には、主極低温貯蔵タンク50とは独立して、LNGを充填することができる。主貨物タンク50がガスを含有していたり、または冷却されていることを必要とせずに、液化ガス、典型的にはLNGを、例えば、タンク車またはLNGバンカー船からBOG貯蔵タンク32に移送することができる。
【0160】
BOG貯蔵タンク32は、バルブ(
図3およびポンプ36上に示してある)を介して貨物システム50から隔離することができる。したがって、主貨物システム50がガスフリーであるとしても、BOG貯蔵タンク32にLNGを充填することができる。これは、非積載航海時に大きな利点を提供する。BOG貯蔵タンク32を含むシステム30は、能動的システムであり、したがって、LNGからのガスの供給源として使用することができる(例えば、気化ガス44をエンジン52へ)。システム30は、貨物システム50からガスまたは液体を受け取ることもできる。
【0161】
計算は、開示のシステムが利用可能な最良のオプションであることを示し、それは積載状態における封じ込めシステムと推進プラントとの不均衡に対処するための実行可能なオプションを提供する、ことを示唆している。
【0162】
本開示のシステム30および代替的な再液化は、バラスト航行時にヒール量を減らすための解決策を提供する唯一のオプションである。しかしながら、本開示のシステム30は、機械類の運転および燃料消費を必要としないという点で、再液化よりも大きな利点を有する。
【0163】
また、本開示のシステム30は、先行設備投資(CAPEX)および運転費(OPEX)の両方に関して、利用可能な他の任意のオプションと有利に比較される。
【0164】
例えば、ターボブレイトンサイクルを使用する再液化システムは、設備投資および運用費の両方において(液化サイクルのエネルギー消費のために)有意により高価である。
【0165】
本開示のシステム30は、限られた投資のみを必要とし得る。営業費も比較的限られ得る。再液化と比較して、本開示のシステムは、構築および運転の両方において、少なくとも2倍、しかし潜在的には少なくとも3~4倍安価であり得る。本開示のシステムは、比較的容易に既存のLNG運搬船に後付けすることができる。
【0166】
説明全体を通して使用される略語は、以下の表3の1つ以上を含む場合がある。
【表3】
【0167】
本開示は上述の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内で多くの改良が考えられる。各実施形態の特徴を、例えば組み合わせることができる。