(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20220603BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220603BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20220603BHJP
C12P 13/04 20060101ALI20220603BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
C12N15/53 ZNA
C12N15/70 Z
C12N9/02
C12P13/04
C12N1/21
(21)【出願番号】P 2020569982
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2018101132
(87)【国際公開番号】W WO2020034209
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】516156282
【氏名又は名称】▲凱▼菜英生命科学技▲術▼(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】盧 江平
(72)【発明者】
【氏名】張 娜
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】李 瑞
(72)【発明者】
【氏名】張 克倹
(72)【発明者】
【氏名】張 瑜
(72)【発明者】
【氏名】楊 益明
【審査官】天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108740(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031574(WO,A1)
【文献】Uniprot, Entry A0A1M5M5H3, entry version 5, [online],2017年10月25日,[retrieved on 2021-12-28], Internet<URL:uniprot.org/uniprot/A0A1M5M5H3.txt?version=5>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C12N 9/00 - 9/99
C12P 1/00 - 41/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体であって、
前記アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が発生したアミノ酸配列であり
、
前記突然変異は、少なくとも
、133番目のシステインのスレオニンへの突然変異、137番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異、183番目のアルギニンのフェニルアラニン、リジン、システイン、バリン又はロイシンへの突然変異、191番目のプロリンのグルタミン酸への突然変異、及び229番目のヒスチジンのバリン、アラニン、グリシン、セリン又はスレオニンへの突然変異のうちの1つを含み、
或いは、前記突然変異は、少なくとも、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのロイシンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異と183番目のアルギニンのシステインへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのロイシンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアスパラギンへの突然変異との組み合わせ、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのトリプトファンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのグルタミン酸への突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、及び173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせのうちの1つを含むことを特徴とする、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体。
【請求項2】
請求項
1に記載のアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体をコードすることを特徴とする、DNA分子。
【請求項3】
請求項
2に記載のDNA分子を含むことを特徴とする、組換えプラスミド。
【請求項4】
前記組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19であることを特徴とする、請求項
3に記載の組換えプラスミド。
【請求項5】
請求項
3又は
4に記載の組換えプラスミドを含むことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項6】
前記宿主細胞は、原核細
胞又は真核細胞を含
むことを特徴とする、請求項
5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞であり、前記真核細胞は、酵母であることを特徴とする、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
アミノ酸デヒドロゲナーゼを用いてケトン系化合物に対して還元的アミノ化触媒反応を行わせる工程を含むD-アミノ酸の製造方法であって、前記アミノ酸デヒドロゲナーゼは、請求項
1に記載のアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体であることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
【請求項9】
前記ケトン系化合物は
【化1】
であり、還元的アミノ化反応の生成物は
【化2】
であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記還元的アミノ化反応におけるアミノ基供与体は、塩化アンモニウムであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸は、少なくとも1つのカルボキシル基と1つのアミノ基を有する両性化合物であり、アミノ酸の存在形態によって天然アミノ酸と非天然アミノ酸の2種類に分類することができる。天然アミノ酸は、自然界に存在するアミノ酸であり、非天然アミノ酸は、人工的に合成されたアミノ酸である。一般的に、天然アミノ酸の性能を最適化するために側鎖にいくつかの基を導入したものである。アミノ酸及びその誘導体は、その特殊な構造特性により、農業、工業、化学工業、食品、医薬品などの面で広く使用されている。光学活性な非天然アミノ酸は、幾つかの生物活性ペプチドのキラル合成ユニットで、多くの医薬品及びファインケミカルの重要な中間体でもある。
【0003】
科学研究の深化及び新薬の開発に伴い、D-アミノ酸は、医薬品の開発製造及び食品の分野でますます重要になっている。
【0004】
D-アミノ酸の酵素合成は、主に、トランスアミナーゼ(Appl.Microbiol.Biot.2008,79,775-784)及びアミノ酸デヒドロゲナーゼ(Journal of the American Chemical Society,2006,128(33):10923-10929)を使用する。アミノ酸デヒドロゲナーゼは、プロキラルなケト酸を基質として出発し、遊離NH4+をアミノ基供与体として使用し、補酵素循環系の存在下で、キラルアミノ酸を合成することができ、これは、環境にやさしくて経済的な方法である。
【0005】
しかしながら、自然界に存在するD-アミノ酸デヒドロゲナーゼの基質プロファイルは非常に限られており、ほとんどの基質、特に立体障害の大きい基質に対しては、反応活性が非常に低く、反応中に基質の濃度が高くなく、酵素担持必要量が大きく、コストが高い。一般的には、野生酵素を定向進化法で改造し、酵素の様々な特性を向上させて、生産に使用可能にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術における、野生型アミノ酸デヒドロゲナーゼが工業化生産への応用に適していないという技術的課題を解決するために、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体及びその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体を提供する。該アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が生じたアミノ酸配列であり、突然変異は、少なくとも、64番目、94番目、133番目、137番目、148番目、168番目、173番目、183番目、191番目、207番目、229番目、248番目、255番目及び282番目の部位での突然変異のうちの1つを含み、かつ、64番目のリジンは、アスパラギン酸に突然変異し、94番目のアスパラギン酸は、アラニン、グリシン、バリン又はセリンに突然変異し、133番目のシステインは、アラニン又はスレオニンに突然変異し、137番目のフェニルアラニンは、アラニンに突然変異し、148番目のフェニルアラニンは、バリン又はアラニンに突然変異し、168番目のアスパラギンは、アスパラギン酸に突然変異し、173番目のスレオニンは、セリン、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン又はロイシンに突然変異し、183番目のアルギニンは、フェニルアラニン、リジン、システイン、バリン、アラニン又はロイシンに突然変異し、191番目のプロリンは、グルタミン酸に突然変異し、207番目のチロシンは、アルギニン、グルタミン酸、フェニルアラニン又はバリンに突然変異し、229番目のヒスチジンは、バリン、アラニン、グリシン、アスパラギン、セリン又はスレオニンに突然変異し、248番目のセリンは、グルタミン酸に突然変異し、255番目のアスパラギンは、アラニン、グルタミン又はアスパラギン酸に突然変異し、282番目のグルタミンは、グルタミン酸に突然変異し、或いは、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列の突然変異部位を有し、かつ突然変異が発生したアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0008】
さらに、突然変異は、少なくとも、64番目のリジンのアスパラギン酸への突然変異、94番目のアスパラギン酸のセリンへの突然変異、133番目のシステインのスレオニンへの突然変異、137番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異、183番目のアルギニンのフェニルアラニン、リジン、システイン、バリン又はロイシンへの突然変異、191番目のプロリンのグルタミン酸への突然変異、及び229番目のヒスチジンのバリン、アラニン、グリシン、セリン又はスレオニンへの突然変異のうちの1つを含み、
【0009】
好ましくは、突然変異は、少なくとも、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのロイシンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異と183番目のアルギニンのシステインへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのロイシンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアスパラギンへの突然変異との組み合わせ、及び173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせのうちの1つを含み、
【0010】
好ましくは、突然変異は、少なくとも、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのトリプトファンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのグルタミン酸への突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、及び173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせのうちの1つを含み、
【0011】
或いは、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列の突然変異部位を有し、かつ突然変異が発生したアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0012】
本発明の別の態様によれば、DNA分子を提供する。該DNA分子は、上記いずれかのアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体をコードする。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記いずれかのDNA分子を含む。
【0014】
さらに、組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19である。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、宿主細胞を提供する。該宿主細胞は、上記いずれかの組換えプラスミドを含む。
【0016】
さらに、宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含み、好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞である。
【0017】
本発明のさらに別の態様によれば、D-アミノ酸の製造方法を提供する。該方法は、アミノ酸デヒドロゲナーゼを用いてケトン系化合物に対して還元的アミノ化触媒反応を行わせる工程を含み、アミノ酸デヒドロゲナーゼは、上記いずれかのアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体である。
【0018】
さらに、ケトン系化合物は
【化1】
であり、還元的アミノ化反応の生成物は
【化2】
である。
【0019】
さらに、還元的アミノ化反応におけるアミノ基供与体は、塩化アンモニウムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸デヒドロゲナーゼに対して、部位特異的突然変異法により突然変異を行うことにより、そのアミノ酸配列を変化させ、タンパク質の構造及び機能の改変を実現し、さらに、標的スクリーニング方法により、上記突然変異部位を有するアミノ酸デヒドロゲナーゼを得たものである。本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に向上したという利点を有し、野生型アミノ酸デヒドロゲナーゼと比較して酵素活性が50倍を超えるほど向上し、酵素特異性も対応して向上して、D-アミノ酸の工業生産におけるコストを大幅に低減する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、本願の実施例及び実施例の特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の発明者らは、指向性進化方法により、アミノ酸デヒドロゲナーゼSEQ ID NO:1(MGEKIRVAIVGYGNIGRYALDAIKAAPDMELAGVVRRSSSLGDKPAELADVPVVGSIKELTGVKVALLCTPTRSVPEYAREILALGINTVDSYDIHGQLADLRLELDKVAKEHNAVAVISAGWDPGTDSMVRCMFEFMAPKGITYTNFGPGMSMGHSVAVKAVKGVKNALSMTIPLGTGVHRRMVYVELEPGADFAQVEKAVKTDPYFVKDETHVIQVEDVDALIDMGHGVLMERKGVSGGTHNQLLSFSMRINNPALTAQIMVASARASVKQKPGAYTMIQIPIIDYMYGDPDEIIRQLV)、対応するヌクレオチド配列SEQ ID NO:2(ATGGGTGAAAAAATTCGCGTTGCAATCGTTGGTTACGGCAACATTGGCCGTTATGCCCTGGATGCAATCAAAGCCGCACCGGATATGGAACTGGCCGGCGTGGTGCGCCGTAGTAGCAGTCTGGGCGACAAGCCGGCCGAACTGGCAGATGTGCCTGTTGTGGGCAGCATCAAAGAGCTGACCGGTGTGAAAGTTGCACTGCTGTGCACCCCGACCCGCAGTGTTCCGGAATATGCCCGTGAGATTCTGGCCCTGGGCATCAACACCGTGGATAGCTATGACATCCACGGTCAGCTGGCCGATCTGCGTCTGGAGCTGGATAAAGTGGCCAAAGAACACAACGCCGTGGCCGTGATTAGCGCAGGTTGGGACCCTGGCACCGATAGCATGGTTCGCTGCATGTTCGAGTTTATGGCCCCGAAGGGCATCACCTATACCAATTTCGGTCCGGGCATGAGCATGGGTCACAGCGTGGCCGTTAAAGCCGTGAAGGGCGTGAAAAATGCCCTGAGCATGACCATTCCGCTGGGCACCGGTGTTCATCGTCGTATGGTGTATGTGGAGCTGGAACCTGGTGCCGATTTCGCCCAGGTGGAAAAGGCCGTGAAAACCGATCCGTACTTCGTGAAGGATGAGACCCACGTGATTCAGGTGGAAGACGTGGACGCCCTGATTGATATGGGCCATGGCGTTCTGATGGAACGTAAGGGCGTTAGCGGTGGCACCCATAACCAGCTGCTGAGCTTCAGTATGCGTATCAATAACCCGGCCCTGACCGCCCAGATTATGGTGGCCAGCGCCCGTGCCAGCGTGAAACAGAAACCGGGCGCATACACCATGATCCAGATTCCGATCATTGATTACATGTACGGCGACCCGGATGAGATCATTCGTCAGCTGGTGTAA)の活性と安定性を向上させ、酵素の使用量を減少させる。まず、全プラスミドPCRの方式により、アミノ酸デヒドロゲナーゼSEQ ID NO:1に突然変異部位を導入して、突然変異体の活性及び安定性を測定し、活性又は安定性が向上した突然変異体を選別する。
【0023】
野生型アミノ酸デヒドロゲナーゼSEQ ID NO:1を鋳型とし、43対の部位特異的突然変異プライマー(K64D、D94A、D94G、D94V、D94S、C133A、C133T、F137A、F148V、F148A、N168D、T173S、T173F、T173H、T173W、T173L、R183F、R183K、R183L、R183C、R183V、R183A、P191E、Y207F、Y207R、Y207E、Y207V、H229V、H229A、H229N、H229G、H229S、H229T、S248E、N255A、N255Q、N255D、Q282E)を設計し、部位特異的突然変異という手段により、pET-22b(+)を発現ベクターとして、目的遺伝子を有する突然変異プラスミドを得る。
【0024】
部位特異的突然変異とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法によって、目的DNA断片(ゲノムであってもよく、プラスミドであってもよい)に対して、塩基の添加、削除、点突然変異などを含む所望の変化を導入する(通常、好適な方向を表す変化である)ことを指す。部位特異的突然変異は、DNAで発現される目的タンパク質の性状及び特徴付けを迅速かつ効率的に向上させることができ、遺伝子研究作業において非常に有用な手段である。
【0025】
全プラスミドPCRによって部位特異的突然変異を導入する方法は、簡単かつ有効であり、現在、多く使用される手段である。その原理は、突然変異部位を含む一対のプライマー(順方向、逆方向)及び鋳型プラスミドをアニーリングし、ポリメラーゼで「循環延長」することであり、いわゆる循環伸長とは、ポリメラーゼで鋳型に応じてプライマーを伸長させ、一周した後にプライマー5'末端に戻って終了し、さらに繰り返して加熱しアニーリングし伸長するサイクルを指す。この反応は、ローリングサークル増幅とは異なり、複数のタンデムコピーを生成しない。順方向プライマーの伸長生成物と逆方向プライマーの伸長生成物は、アニーリングされてペアリングして切り欠きのある開環プラスミドとなる。伸長生成物をDpn Iで酵素切断し、元々の鋳型プラスミドが、一般的な大腸菌に由来し、damメチル化修飾されたものであり、Dpn Iに感受性があって細かく切断されるが、インビトロで合成された、突然変異配列を有するプラスミドは、メチル化されておらず切断されないため、その後の形質転換においてうまく形質転換でき、突然変異プラスミドのクローンを得ることができる。
【0026】
上記突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、大腸菌に過剰発現させる。その後、超音波処理による細胞破壊で粗酵素を取得する。アミノ酸デヒドロゲナーゼの誘導発現に最適な条件は、25℃で、0.1mMのIPTGを用いて一晩誘導することである。
【0027】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体を提供する。該アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が発生したアミノ酸配列であり、突然変異は、少なくとも、64番目、94番目、133番目、137番目、148番目、168番目、173番目、183番目、191番目、207番目、229番目、248番目、255番目及び282番目の部位での突然変異のうちの1つを含み、かつ、上記64番目のリジンは、アスパラギン酸に突然変異し、94番目のアスパラギン酸は、アラニン、グリシン、バリン又はセリンに突然変異し、133番目のシステインは、アラニン又はスレオニンに突然変異し、137番目のフェニルアラニンは、アラニンに突然変異し、148番目のフェニルアラニンは、バリン又はアラニンに突然変異し、168番目のアスパラギンは、アスパラギン酸に突然変異し、173番目のスレオニンは、セリン、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン又はロイシンに突然変異し、183番目のアルギニンは、フェニルアラニン、リジン、システイン、バリン、アラニン又はロイシンに突然変異し、191番目のプロリンは、グルタミン酸に突然変異し、207番目のチロシンは、アルギニン、グルタミン酸、フェニルアラニン又はバリンに突然変異し、229番目のヒスチジンは、バリン、アラニン、グリシン、アスパラギン、セリン又はスレオニンに突然変異し、248番目のセリンは、グルタミン酸に突然変異し、255番目のアスパラギンは、アラニン、グルタミン又はアスパラギン酸に突然変異し、282番目のグルタミンは、グルタミン酸に突然変異し、或いは、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列の突然変異部位を有し、かつ突然変異が発生したアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0028】
好ましくは、突然変異は、少なくとも、64番目のリジンのアスパラギン酸への突然変異、94番目のアスパラギン酸のセリンへの突然変異、133番目のシステインのスレオニンへの突然変異、137番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異、183番目のアルギニンのフェニルアラニン、リジン、システイン、バリン又はロイシンへの突然変異、191番目のプロリンのグルタミン酸への突然変異、及び229番目のヒスチジンのバリン、アラニン、グリシン、セリン又はスレオニンへの突然変異のうちの1つを含み、
【0029】
好ましくは、突然変異は、少なくとも、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのロイシンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異と183番目のアルギニンのシステインへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と229番目のヒスチジンのロイシンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と229番目のヒスチジンのアスパラギンへの突然変異との組み合わせ、及び173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異との組み合わせのうちの1つを含み、
【0030】
好ましくは、突然変異は、少なくとも、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのバリンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのフェニルアラニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのトリプトファンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのグルタミン酸への突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのシステインへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、207番目のチロシンのアルギニンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのアラニンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異との組み合わせ、183番目のアルギニンのバリンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせ、及び173番目のスレオニンのヒスチジンへの突然変異と、229番目のヒスチジンのセリンへの突然変異と、148番目のフェニルアラニンのアラニンへの突然変異との組み合わせのうちの1つを含み、
【0031】
或いは、アミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異が発生したアミノ酸配列の突然変異部位を有し、かつ突然変異が発生したアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。本明細書で使用される用語「同一性」は、本分野で一般的に知られている意味を有し、当業者であれば、異なる配列間の同一性を測定する規則、標準を熟知している。本発明では、異なる程度の同一性を用いて限定される配列は、改善されたアミノ酸デヒドロゲナーゼの活性を同時に有する必要もある。
【0032】
本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸デヒドロゲナーゼに対して、部位特異的突然変異法により突然変異を行うことにより、そのアミノ酸配列を変化させ、タンパク質の構造及び機能の改変を実現し、さらに、標的スクリーニング方法により、上記突然変異部位を有するアミノ酸デヒドロゲナーゼを得たものである。本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に向上したという利点を有し、アミノ酸デヒドロゲナーゼと比較して酵素活性が50倍を超えるほど向上し、酵素特異性も対応して向上して、工業生産におけるコストを大幅に低減する。
【0033】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、野生型アミノ酸デヒドロゲナーゼの64番目のリジンは、アスパラギン酸に突然変異し、94番目のアスパラギン酸は、アラニン、グリシン、バリン又はセリンに突然変異し、133番目のシステインは、アラニン又はスレオニンに突然変異し、137番目のフェニルアラニンは、アラニンに突然変異し、148番目のフェニルアラニンは、バリンに突然変異し、168番目のアスパラギンは、アスパラギン酸に突然変異し、173番目のスレオニンは、セリン、フェニルアラニン又はロイシンに突然変異し、183番目のアルギニンは、フェニルアラニン、リジン又はロイシンに突然変異し、191番目のプロリンは、グルタミン酸に突然変異し、207番目のチロシンは、フェニルアラニン又はバリンに突然変異し、229番目のヒスチジンは、バリン、アラニン、グリシン、セリン又はスレオニンに突然変異し、248番目のセリンは、グルタミン酸に突然変異し、255番目のアスパラギンは、アラニン、グルタミン又はアスパラギン酸に突然変異し、282番目のグルタミンは、グルタミン酸に突然変異する。
【0034】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、DNA分子を提供する。上記DNAがコードしたアミノ酸デヒドロゲナーゼは、酵素活性及び酵素の安定性を向上させ、D-アミノ酸の工業生産において、酵素添加量を低減し、後処理の難易度を低減することができる。
【0035】
本発明に係るDNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは、線形又は環状の核酸分子を指し、特定のヌクレオチド配列を適切な宿主細胞で発現することを指導することができるDNA及びRNA配列を含む。一般的には、目的ヌクレオチドに有効に接続されるプロモータを含み、非強制的には、終止シグナル及び/又は他の制御要素に有効に接続されたプロモータを含む。発現カセットは、ヌクレオチド配列を正確に翻訳するに必要な配列をさらに含むことができる。コード領域は、通常、目的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向において、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳的RNAなどの目的機能的RNAもコードする。目的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラ型であってもよく、これは、少なくとも1つの成分と少なくとも1つの他の成分とが異種であることを意味する。発現カセットは、天然に存在するものであって、但し異種発現ための有効組換えの形で獲得されるものであってもよい。
【0036】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記いずれかのDNA分子を含む。上記組換えプラスミド中のDNA分子は、正確かつ円滑に複製、転写又は発現することができるように、組換えプラスミドの適切な位置に位置付けられる。
【0037】
本発明は、上記DNA分子を限定する際に用いられる限定語が「含む」であるが、DNA配列の両端にその機能には関与しない他の配列を任意に加えることができることを意味するものではない。組換え操作の要件を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素の酵素切断部位を添加したり、開始コドン、終止コドンなどを別途に追加したりする必要があるため、閉鎖式の表現で上記DNA分子を限定すれば、このような状況をカバーできないことが当業者に知られている。
【0038】
本発明で使用される用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状形式の任意のプラスミド、コスミド、バクテリオファージ又はアグロバクテリウム二元核酸分子を含み、好ましくは組換え発現プラスミドであり、原核発現プラスミドであってもよく、真核発現プラスミドであってもよいが、好ましくは原核発現プラスミドである。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19から選択される。より好ましくは、上記組換えプラスミドは、pET-22b(+)である。
【0039】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、上記いずれかの組換えプラスミドを含む宿主細胞を提供する。本発明に適用される宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。好ましくは、原核細胞は、真菌、例えばグラム陰性菌又はグラム陽性菌である。より好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞である。
【0040】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、D-アミノ酸の製造方法を提供する。該方法は、アミノ酸デヒドロゲナーゼを用いてケトン系化合物及びアミノ基供与体に対してアミノ交換触媒反応を行わせる工程を含む。アミノ酸デヒドロゲナーゼは、上記いずれかのアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体である。本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体は、より高い酵素触媒活性を有するため、本発明に係るアミノ酸デヒドロゲナーゼ突然変異体を用いて製造されるD-アミノ酸は、製造コストを低減できるだけでなく、得られたD-アミノ酸のee値が99%よりも大きい。
【0041】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、ケトン系化合物は
【化3】
であり、還元的アミノ化反応の生成物は
【化4】
であり、反応式は
【化5】
である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0043】
本発明の精神から逸脱することなく、本発明に多くの修正を行うことができ、このような修正も本発明の範囲にあることは当業者に公知である。下記実験方法は、特に断りのない限り、いずれも一般的な方法であり、使用される実験材料は、特に断りのない限り、いずれも商業的供給者から容易に入手することができる。
【0044】
【0045】
(実施例1)
20mgの基質1に、1mLの反応系となる様に、22mgの塩化アンモニウム、30mgのグルコース、4mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.4mgのNAD+、4mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0046】
【表1】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0047】
(実施例2)
20mgの基質2に、1mLの反応系となる様に、22mgの塩化アンモニウム、30mgのグルコース、4mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.4mgのNAD+、4mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0048】
【表2】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0049】
(実施例3)
20mgの基質3に、1mLの反応系となる様に、22mgの塩化アンモニウム、30mgのグルコース、4mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.4mgのNAD+、4mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0050】
【表3】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0051】
継続して突然変異を行い、基質の濃度を高め、反応体積を減らした。
【0052】
(実施例4)
33mgの基質1に、1mLの反応系となる様に、33mgの塩化アンモニウム、49.5mgのグルコース、6.6mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.66mgのNAD+、6.6mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0053】
【表4】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0054】
(実施例5)
33mgの基質2に、1mLの反応系となる様に、33mgの塩化アンモニウム、49.5mgのグルコース、6.6mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.66mgのNAD+、6.6mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0055】
【表5】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0056】
(実施例6)
33mgの基質3に、1mLの反応系となる様に、33mgの塩化アンモニウム、49.5mgのグルコース、6.6mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、0.66mgのNAD+、6.6mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0057】
【表6】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0058】
有益な突然変異部位での突然変異をさらに組み合わせて、さらに基質の濃度を向上させ、反応体積を減少した。
【0059】
(実施例7)
50mgの基質1に、1mLの反応系となる様に、55mgの塩化アンモニウム、75mgのグルコース、10mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、1mgのNAD+、10mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0060】
【表7】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0061】
(実施例8)
50mgの基質2に、1mLの反応系となる様に、55mgの塩化アンモニウム、75mgのグルコース、10mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、1mgのNAD+、10mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0062】
【表8】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0063】
(実施例9)
50mgの基質3に、1mLの反応系となる様に、55mgの塩化アンモニウム、75mgのグルコース、10mgのグルコースデヒドロゲナーゼ、1mgのNAD+、10mgのアミノ酸デヒドロゲナーゼ及び0.1M Tris-HCl bufferを加えた。30℃で18h反応させ、100μLの反応系に900μLの(0.1N HCl:MeOH=1:1)を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して検出した。ee値の検出方法は、100μLの反応系に100μLのACN、100μLのH2O、100μLの1M NaHCO3を加え、12000rpmで3min遠心分離し、上清を取り出して、これに200μLの5mg/mL Na-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミドを加え、更に50℃で1h反応させ、500μLのACNを加えて遠心分離した後に、上清を取り出して液相分析を行った。
【0064】
【表9】
原種より活性が向上する倍数 +:1~5倍向上;++:5~10倍向上;+++:10~50倍向上;++++:50倍を超えるほど向上
ee値が80~90%にある場合:*;ee値が90~98%にある場合:**;ee値が98%よりも大きい場合:***
【0065】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明に対して様々な変更と変化を行うことができる。本発明の精神と原則内で行われるいかなる修正、均等置換、改良などは、いずれも本発明の範囲に含まれるべきである。
【配列表】