(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】果汁含有原酒
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20220603BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220603BHJP
【FI】
C12G3/04
A23L5/00 H
(21)【出願番号】P 2021012963
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2022-03-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】上原 瑠理
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優生
(72)【発明者】
【氏名】米澤 知絵
(72)【発明者】
【氏名】生木 大志
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159790(JP,A)
【文献】特開2019-198282(JP,A)
【文献】国際公開第2009/017115(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/147465(WO,A1)
【文献】最新 果汁・果実飲料事典,初版第1刷,株式会社朝倉書店,1997年10月01日,pp.58-63
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾汁機を用いて柑橘類から得た果汁を、搾汁後30時間以内にアルコールと混合して、アルコール度数が15~55v/v%の混和液を得る工程と、
混和液を0℃以下の環境で保管する工程と、
を有する、果汁含有原酒を製造する方法。
【請求項2】
前記果汁をアルコール度数が59v/v%以上のアルコールと混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混和液を0℃以下の環境で24時間以上保管する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
柑橘類が、レモン、グレープフルーツ、オレンジおよびライムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
加熱する工程を設けることなく果汁含有原酒を製造する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
果汁含有原酒の果汁含有量がストレート果汁換算で35%以上である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を配合することを含む、飲食品の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を配合した飲食品。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を飲食品に配合することを含む、飲食品の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類果汁のフレッシュな香味が維持された果汁含有原酒に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、容器詰めされたアルコール飲料は、製造後すぐに消費されるということは稀であり、流通経路や市場に一定期間保管されることが多い。例えば、アルコール度数の低いアルコール飲料(RTD製品:Ready to Drink)は、製造されてから消費者が購入するまでの間、長期にわたって市場で滞留することがある。また、アルコール度数の高いリキュール類は、カクテル素材として少量ずつ消費される場合が多いため、購入・開栓から使い切るまでの間、常温で長期間保管されることになり、購入前の市場滞留期間も加えると、製造後からの保管期間は非常に長いものとなる。
【0003】
市販されている容器詰めアルコール飲料は、果実の風味を特徴とするものが多く、果汁を配合することによって、果実の風味の充実を図っている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2009/017115
【文献】国際公開WO2009/104660
【文献】国際公開WO2012/147465
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器詰めアルコール飲料は、製造から消費までの保管期間が長くなった場合、果汁成分による品質低下の問題が起こる場合がある。すなわち、沈殿を生じて商品の外観を損なったり、果汁成分の加熱劣化によってオフフレーバーを発生したり味わいが薄くなったりして、商品価値が低下することがある。
【0006】
果汁を配合したアルコール飲料においては、果汁のフレッシュな香味をしっかりと維持して品質安定性を向上させることが重要である。特に柑橘類果汁は、そのフレッシュで華やかな香味が時間の経過とともに失われやすく、容器詰めアルコール飲料に関して、絞りたての柑橘類果汁が有するフレッシュな香味を有する果汁含有原酒を製造する技術を確立することが望まれていた。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、絞りたての柑橘類果汁が有するフレッシュで華やかな香味を有する果汁含有原酒および果汁含有アルコール飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、柑橘類果汁とアルコール(エタノール)とを混和した上で冷凍することによって、柑橘類果汁によるフレッシュで豊かな香味を有する原酒が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に限定されるものではないが、下記の態様を包含する。
[1] 搾汁機を用いて柑橘類から得た果汁を、搾汁後30時間以内にアルコールと混合して、アルコール度数が15~55v/v%の混和液を得る工程と、
混和液を0℃以下の環境で保管する工程と、
を有する、果汁含有原酒を製造する方法。
[2] 前記果汁をアルコール度数が59v/v%以上のアルコールと混合する、[1]に記載の方法。
[3] 混和液を0℃以下の環境で24時間以上保管する、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 柑橘類が、レモン、グレープフルーツ、オレンジおよびライムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 加熱する工程を設けることなく果汁含有原酒を製造する、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 果汁含有原酒の果汁含有量がストレート果汁換算で35%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] [1]~[6]のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒。
[8] [1]~[6]のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を配合することを含む、飲食品の製造方法。
[9] [1]~[6]のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を配合した飲食品。
[10] [1]~[6]のいずれかの方法によって得られた果汁含有原酒を飲食品に配合することを含む、飲食品の香味向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、絞りたての柑橘類果汁のフレッシュで華やかな香味を有するアルコール飲料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
果汁含有原酒
一つの態様において本発明は、柑橘類果汁を含有する原酒に関する。本発明に係る果汁含有原酒は、柑橘類果汁とアルコールを混和して冷凍することによって得られる。具体的には、柑橘類果汁とアルコールを、アルコール度数が15~55v/v%となるよう混和した上で、0℃以下の環境で保管(貯蔵)することによって、本発明に係る果汁含有原酒が製造される。
【0012】
本発明に係る果汁含有原酒は柑橘類果汁を含有する。柑橘類果汁は、飲料の製造に使用できるものであれば、何ら限定されず用いることができる。果汁の原料となる柑橘類は特に限定されず、アルコール飲料の設計品質に応じて自由に選択することができる。柑橘類としては、例えば、オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシーなどを好適に使用することができ、レモン、グレープフルーツ、オレンジおよびライムからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0013】
本発明において果汁の搾汁方法は特に制限されず、公知の方法によることができる。本発明においては、例えば、インライン搾汁機、ベルトプレス搾汁機、スクリュープレス搾汁機、遠心分離搾汁機などを好適に使用することができる。本発明においては、果皮と果肉を一緒に圧搾することによって柑橘類果汁を得ることが好ましく、例えば、ポリシトラス搾汁機やポリフルーツ搾汁機が好ましい。
【0014】
柑橘類果汁の形態は特に限定されず、例えば、濃縮されないストレート果汁、濃縮果汁、ピューレ果汁、透明果汁、混濁果汁、セミ混濁果汁などのいずれを用いてもよい。本発明においては、未処理の果汁のみならず、不溶性固形分の分離、濃縮、精製、希釈、加熱等の処理がされた果汁を使用することができ、濃縮方法についても、減圧濃縮、凍結濃縮又は逆浸透膜濃縮などいずれの方法によってもよいし、酵素処理などがされたものでも好適に用いることができる。長期保存時の不溶成分の沈殿を抑制する観点からは、透明果汁など、濾過などにより不溶性固形分を分離処理した果汁を用いると好ましい。本発明においては、複数の果汁を混和したものを用いてもよい。本発明に用いる果汁は、糖用屈折計による示度(Brix値)で6~70を有することが好ましい。
【0015】
本発明の果汁含有原酒に使用するアルコール(エタノール)は特に制限されず、飲料(一般にいう酒類)に通常使用されるアルコールを何ら限定されず用いることができる。酒類の原料、製造方法あるいはその他処理方法についても、何ら限定されない。
【0016】
アルコールのアルコール度数については、柑橘類の香味成分の維持に有利であるため、59v/v%以上が好ましく、70v/v%以上がより好ましく、80v/v%以上がさらに好ましい。アルコール度数の上限は特にないが、蒸留によって得られるアルコールのアルコール度数は一般に96v/v%以下であること、純粋なエチルアルコールを使用すると香味が不十分となる可能性があることから、96v/v%以下とすることができる。後述するように本発明においては、混和した後のアルコール度数が15~55v/v%果汁となるように柑橘類果汁とアルコールを混和するため、アルコール度数の高い酒類を少なくとも1種類含んでいることが好ましい。
【0017】
アルコールの種類は、例えば、醸造アルコールを用いることができ、単一のアルコールを用いても複数のアルコールを用いてもよい。例えば、日本酒、ワイン、ビールなどの醸造酒、ウイスキー、ウオッカ、ラム、焼酎、スピリッツ類などの蒸留酒などを本発明において好適に使用することができるが、長期安定性の観点からは、蒸留酒を用いることがより好ましい。蒸留酒の中でも、アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留して得られる連続式蒸留アルコールを好適に使用することができる。このような連続式蒸留アルコールとしては、例えば、原料アルコールや連続式蒸留焼酎(いわゆる甲類焼酎)などを挙げることができる。
【0018】
本発明におけるアルコール度数は、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)に記載の方法によって測定することができる。具体的には、対象のアルコール液から、必要に応じて濾過又は超音波によって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を振動式密度計で測定し、前期国税庁所定分析法の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求めることができる。
【0019】
果汁含有原酒には、本発明の効果を妨げない範囲で香料、糖質又は酸味料等を加えてもよい。
本発明においては、柑橘類果汁とアルコールを、搾汁から30時間以内にアルコール度数15~55v/v%となるよう混和する。本発明において柑橘類果汁は、搾汁から28時間以内にアルコールと混和することが好ましく、24時間以内や12時間以内にアルコールと混和することがより好ましい。果汁とアルコールとを混和する際、果汁とアルコールのどちらを先に投入してもよく、作業性を考慮して実施すればよい。原料の混和に際しては、出来る限り均一に混ざるよう撹拌を実施することが好ましい。撹拌は周知の攪拌手段を用いればよく、機械撹拌でもエア撹拌でも特に限定なく実施することができる。
【0020】
本発明においては、柑橘類果汁とアルコールの混和物のアルコール度数は15~55v/v%であるが、15~40v/v%が好ましく、15~35v/v%がより好ましい。混和物のアルコール度数が上記の範囲であると、柑橘類果汁のフレッシュな香味が十分に維持され、長期間保存した場合の安定性に優れた原酒が得られる。本発明において柑橘類果汁とアルコールとの配合比は特に限定されないが、混和後のアルコール度数が特定範囲となるよう、必要に応じて加水して調整することができる。柑橘類果汁とアルコールの混和物について、アルコール度数を20v/v%以上や25v/v%以上としてもよい。
【0021】
本発明においては、混和物のアルコール度数を上記範囲に調整すれば、果汁濃度は特に制限されないが、混和物の果汁濃度を特定範囲とすると、最終製品である容器詰めアルコール飲料における風味が豊かになる。混和物の果汁濃度は、ストレート果汁を100%とした場合のストレート果汁換算の濃度で表すことができ、例えば、使用する果汁の濃縮倍率をストレート時のBrix値から換算して求め、その値とアルコールとの混和率によって算出することができる。果汁濃度は、4%以上であると好ましく、10%以上であるとより好ましく、35%以上であると更に好ましい。
【0022】
混和物のBrixの測定方法としては公知の手段を用いることができ、糖用屈折計(Brix計ともいう)によって測定する。Brix値が大きすぎるなど糖用屈折計の測定レンジを超える場合は、混和物を純水にて適宜希釈して測定し、測定値に希釈率で割って計算する。この場合の希釈率は、混和物と純水との容量比(v/v%)で表す。
【0023】
本発明においては、こうして得られた果汁とアルコールとの混和物を0℃以下の環境に置く。0℃以下の環境に置いておく期間は特に制限されないが、1日以上(24時間以上)や2日以上(48時間以上)が好ましい。0℃以下の環境に置いておく期間は、例えば、5日以上や10日以上とすることもでき、より長期間、例えば、15日~3年とすることができ、1ヶ月~2年や3ヶ月~1年としてもよい。冷凍した混和物の貯蔵期間が短すぎると、絞りたてのフレッシュな香味を維持しにくくなる場合が生じる。冷凍の方法は特に制限されないが、-4℃以下で冷凍することが好ましい。
【0024】
本発明においては、例えば、タンク等の容器にて貯蔵してもよいし、ナラなどの木材の樽にて貯蔵してもよい。果実の風味を強調したい場合はステンレスやホーローのタンクで貯蔵することが好ましく、木香などの香味を付与したい場合には樽に貯蔵することが好ましい。また、貯蔵の際は、光による劣化を抑制するため、遮光した状態で保存することが好ましい。
【0025】
本発明においては、混和物を冷凍する前や、冷凍した混和物を解凍した後に、混和物から不溶性固形分を除去してもよい。例えば、不溶性固形分の生成度合に応じて、不溶性固形分の生成が軽微であればオリ引きなどの手段で不溶性固形分を除去し、不溶性固形分が多いようであれば、固液分離手段を用いて不溶性固形分を除去することもできる。固液分離手段としては、遠心分離、膜濾過、珪藻土濾過、濾紙濾過など通常の分離手段を、単独又は複数の手段を組み合わせて実施すればよい。作業効率を向上させるための予備濾過として、その他の固液分離手段を合わせて実施してもよい。
【0026】
本発明においては、加熱工程を設けても設けなくてもよいが、加熱工程を設けずに果汁含有原酒を製造することが好ましい。加熱工程を設ける場合、加熱処理の条件は、特に制限されないが、例えば、40℃以上や80℃以上で処理することができる。
【0027】
アルコール飲料
一つの態様において本発明は、アルコール飲料およびその製造方法に関する。本発明におけるアルコール飲料とは、アルコール(エタノール)を含有する飲料をいい、アルコール濃度は特に制限されない。本発明のアルコール飲料は、例えば、上述の果汁含有原酒が配合されていれば、アルコール度数が1~9v/v%程度のいわゆる低アルコール飲料(RTD製品)としてもよく、アルコール度数15v/v%以上のいわゆるリキュール類としてもよい。本発明のアルコール飲料のアルコール度数は、好ましくは0.1~50v/v%であり、より好ましくは1~30v/v%であり、さらに好ましくは3~15v/v%である。
【0028】
本発明のアルコール飲料は、上述の果汁含有原酒を含むことを特徴とする。果汁含有原酒は、果汁を含んでいるため果汁由来の豊かな香味を有し、アルコール飲料に配合するとアルコール飲料に果汁由来の豊かな香味を付与することができ、果汁の一部又は全部の代替として使用することができる。また、果汁含有原酒をアルコール飲料に配合することによって、単に果汁を配合したアルコール飲料と比較して、該アルコール飲料における長期間保管中の品質安定性を改善することができる。具体的には、単純に果汁をアルコール飲料に配合した場合と比較して、本発明に係る果汁含有原酒を配合して同程度の果汁含有量のアルコール飲料を製造すると、柑橘類の豊かな香味品質を長期間維持することが出来る。また、本発明でいう果汁含有原酒は、いったん0℃以下の環境に置くことによって香味成分が安定化されているため、最終アルコール飲料に配合した場合、製造後、長期間にわたって安定な香味を保持することができる。
【0029】
したがって、本発明に係る果汁含有原酒から、長期間保管されることの多い容器詰めアルコール飲料を製造すると、本発明の効果を十分に活かすことができる。容器の形態や素材は何ら制限されず、樹脂製、紙製、ガラス製、木製などの容器を好適に使用することができ、例えば、プラスチックを主成分とする成形容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、ガラス瓶などを例示することができる。好ましい態様において、本発明のアルコール飲料は、樹脂製容器、ラミネート紙容器やガラス製容器に充填することができる。
【0030】
本発明では、目的とする設計品質に応じて果実含有原酒を適宜配合してアルコール飲料を調製し、アルコール飲料を容器に充填することによって、容器詰めアルコール飲料を製造する。
【0031】
本発明のアルコール飲料においては、上記の果実含有原酒以外の原料は特に限定されず、通常のアルコール飲料と同様、果汁、アルコール、糖分、酸味料、各種添加剤等を配合することができる。各種添加剤としては、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0032】
また、本発明のアルコール飲料に炭酸ガスを添加して炭酸ガス飲料とすることもできる。
さらに、他の観点からは、本発明は、アルコール飲料の保存性を向上させる方法と理解することができる。すなわち、本発明によれば、果汁含有アルコール飲料を長期保存した際の香味の劣化を抑制することができるため、本発明は、果汁含有アルコール飲料の沈殿抑制方法、果汁含有アルコール飲料の香味の劣化を抑制する方法と把握することができる。
【実施例】
【0033】
以下、具体例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲は端点を含むものとして記載される。
【0034】
実験1
インライン搾汁機(Fresh'n Squeeze、FMC Food Tech社)を用いて、生のレモン果実からレモン果汁を得た。得られた生レモン果汁を、搾汁から約60分後に、アルコール度数95v/v%のニュートラルスピリッツ(連続式蒸留アルコール)および純水と混和し、均一になるよう攪拌した(混和液のアルコール度数:5~60v/v%)。次いで、遠心分離によって混和液から不溶性固形分を除去し、-18℃の環境にて48時間保管して果汁含有原酒を製造した。
【0035】
上記のようにして製造した果汁含有原酒を常温にて解凍し、アルコール度数95v/v%のニュートラルスピリッツ(連続式蒸留アルコール)および純水でアルコール度数を20v/v%に調整して容器詰アルコール飲料を調製した。
【0036】
次いで、調製したアルコール飲料を常温で飲用し、香味について官能評価を行った。官能評価は、訓練された専門パネル4名により実施し、下記に示す基準に基づいて5段階で評価した。香り、味について、各パネルの評価点の平均値を下表に示す。
■香り(柑橘類果汁のフレッシュな香り)
・5点:柑橘類果汁のフレッシュな香りを強く感じる
・4点:柑橘類果汁のフレッシュな香りをやや強く感じる
・3点:柑橘類果汁のフレッシュな香りを感じる
・2点:柑橘類果汁のフレッシュな香りをわずかに感じる
・1点:柑橘類果汁のフレッシュな香りを感じない
■味(柑橘類果汁の自然な味わい)
・5点:柑橘類果汁の自然な味わいを強く感じる
・4点:柑橘類果汁の自然な味わいをやや強く感じる
・3点:柑橘類果汁の自然な味わいを感じる
・2点:柑橘類果汁の自然な味わいをわずかに感じる
・1点:柑橘類果汁の自然な味わいを感じない
官能評価の結果を下表に示すが、本発明によって、柑橘類果汁のフレッシュな香味が十分に感じられる果汁含有原酒が得られた。
【0037】
【0038】
実験2
柑橘類果汁を含有する原酒について、保管(貯蔵)する際の温度の影響を確認する実験を行った。実験1と同様にして製造した果汁含有原酒(アルコール度数:15v/v%)について、-18℃(冷凍)、5℃(冷蔵)または23℃(常温)にて7日間保管した。
【0039】
上記のようにして製造した果汁含有原酒を常温でそのまま飲用し、香味について官能評価を行った。官能評価は、訓練された専門パネラー4名により、実験1と同様の基準に基づいて5段階で評価した。
【0040】
下表に示す実験結果から明らかなように、-18℃で保管した果汁含有原酒は、冷蔵や常温で保管した果汁含有原酒よりも香味の劣化が少なかった。
【0041】
【0042】
実験3
柑橘類の搾汁からアルコールとの混和までの時間の影響を確認する実験を行った。搾汁からアルコールとの混和までの時間を24時間、48時間および72時間とした以外は、実験1と同様の方法で果汁含有原酒を製造した(アルコール度数:18v/v%)。
【0043】
上記のようにして製造した果汁含有原酒を常温にて解凍し、純水で4倍に希釈して容器詰アルコール飲料を調製した(アルコール度数:4.5v/v%)。
次いで、調製したアルコール飲料を常温で飲用し、香味について官能評価を行った。官能評価は、訓練された専門パネラー4名により、実験1と同様の基準に基づいて5段階で評価した。
【0044】
下表に示す結果から明らかなように、搾汁から短時間でアルコールと混合することによって、味、香り共に高い水準の果汁含有原酒が実現できた。
【0045】
【要約】
【課題】本発明の課題は、絞りたての柑橘類果汁が有するフレッシュで華やかな香味を有する果汁含有原酒および果汁含有アルコール飲料を提供することである。
【解決手段】本発明によって提供される果汁含有原酒の製造方法は、(a)搾汁機を用いて柑橘類から得た果汁を、搾汁から30時間以内にアルコールと混合して、アルコール度数が15~55v/v%の混和液を得る工程と、(b)混和液を0℃以下の環境で保管する工程と、を有する。
【選択図】なし