(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】樹脂成形品及び車両用収納ボックスのカバー部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20220603BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20220603BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220603BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C33/42
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2021059388
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2017030412の分割
【原出願日】2017-02-21
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文俊
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-112451(JP,A)
【文献】特開2001-113562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表側に一体的に形成される第2樹脂層と、を有する
板状の樹脂成形品であって、
前記樹脂成形品の裏側を向く面に、凹部が設けられ、
前記凹部は、前記樹脂成形品の外縁に沿って複数形成されるとともに、前記樹脂成形品の表側へ向かうに従って断面積が大きくなるアンダーカット形状になっている。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形品において、
前記樹脂成形品の外縁から前記凹部までの距離をX1(mm)とし、X1は40(mm)以下である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品を備える車両用収納ボックスのカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1樹脂層と第2樹脂層を有する樹脂成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の樹脂成形品の製造方法として、共通型と1次型とによって第1樹脂層を形成し、共通型に第1樹脂層を残したまま、その共通型と2次型とによって第2樹脂層を第1樹脂層の上に形成する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の樹脂成形品の製造方法では、第2樹脂層を形成するときに第1樹脂層の浮き上がりや反りが発生すると、第2樹脂層を構成する樹脂が第1樹脂層の裏側に回り込む。その結果、樹脂成形品の裏面の外観が悪くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、外観の向上が図られる樹脂成形品及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明の第1態様は、第1樹脂層と、前記第1樹脂層の表側に一体的に形成される第2樹脂層と、を有する樹脂成形品であって、前記樹脂成形品の裏側を向く面のうち前記樹脂成形品の外縁寄り部分に、凹部が設けられ、前記凹部は、前記前記樹脂成形品の表側へ向かうに従って断面積が大きくなるアンダーカット形状になっている。
【0007】
発明の第2態様は、第1態様に記載の樹脂成形品において、前記凹部は、前記第1樹脂層を貫通しないように形成されている。
【0008】
発明の第3態様は、第1態様又は第2態様に記載の樹脂成形品において、前記樹脂成形品の外縁から前記凹部までの距離をX1(mm)とし、前記第1樹脂層を構成する第1樹脂の収縮率をY1としたときに、X1・Y1≧0.2(mm)である。
【0009】
発明の第4態様は、第3態様に記載の樹脂成形品において、X1は、40(mm)以下である。
【0010】
発明の第5態様は、共通型と1次型との間に形成される第1キャビティに第1樹脂を注入して第1樹脂層を形成することと、前記共通型に前記第1樹脂層を残したまま前記1次型を2次型に替え、前記共通型と前記2次型の間に形成される第2キャビティに第2樹脂を注入して、前記第1樹脂層の表側に第2樹脂層を形成することと、を有する樹脂成形品の製造方法であって、前記共通型のうち前記第1キャビティの外縁寄り部分を構成する部位に、前記共通型と前記1次型の開閉方向で前記第1キャビティ内へ向かうにつれて断面積が大きくなるアンダーカット形状の突部を設けておき、前記第1樹脂層を形成するにあたり、前記突部によって前記第1樹脂層の裏面に凹部を形成し、前記突部と前記凹部を係合させた状態で、前記第2樹脂層を形成する。
【0011】
発明の第6態様は、第5態様に記載の樹脂成形品の製造方法において、前記第1キャビティの外縁から前記突部までの距離をX2(mm)とし、前記第1樹脂の収縮率をY1としたときに、X2・Y1≧0.2(mm)となるように、前記突部を配置しておく。
【0012】
発明の第7態様は、第6態様に記載の樹脂成形品の製造方法において、X2は、40(mm)以下である。
【発明の効果】
【0013】
[第1態様~第4態様の発明]
本発明に係る樹脂成形品の構成によれば、凹部を形成するために金型に設けた突部を第1樹脂層に係合させた状態で、第2樹脂層を成形することが可能となる。しかも、凹部はアンダーカット形状になっているので、第1樹脂層を金型の突部との係合部分に固定して第1樹脂層の反りを抑制することが可能となる。これにより、第1樹脂層の裏側に第2樹脂層を構成する樹脂が回り込むことが抑制され、樹脂成形品の外観の向上が図られる。
【0014】
また、凹部が第1樹脂層を貫通しないように形成されていると、第2樹脂層の表側面に、凹部に対応した斑が発生することが抑制される(第2態様の発明)。
【0015】
また、樹脂成形品の外縁から凹部までの距離X1(mm)と第1樹脂層を構成する第1樹脂の収縮率Y1との積X1・Y1が0.2(mm)以上となるように凹部が配置されていると、第2樹脂層を成形するときに、第1樹脂層の収縮によって第1樹脂層の外周面と金型との間に0.2mm以上の隙間を形成することができる。ここで、樹脂成形にあたっては、一般に、0.2mm以上の隙間があると、その隙間に樹脂が入り込み易くなる。従って、第1樹脂層の外周面と金型との間の隙間に第2樹脂層を構成する樹脂を入り込ませて、第1樹脂層の外周面の全体を当該樹脂で覆うことが可能となる。これにより、樹脂成形品の外周面において、第1樹脂層の外周面が第2樹脂層を構成する樹脂によって部分的に覆われることが抑えられ、樹脂成形品の外観の向上が図られる(第3態様の発明)。なお、距離X1は、40(mm)以下であることが好ましい(第4態様の発明)。距離X1が40(mm)を超えると、第1樹脂層が反り易くなるという問題が生じ得る。
【0016】
[第5態様~第7態様の発明]
本発明に係る樹脂成形品の製造方法では、共通型に設けた突部を第1樹脂層に係合させた状態で、第2樹脂層を成形する。ここで、突部はアンダーカット形状になっているので、第1樹脂層を共通型の突部との係合部分に固定して第1樹脂層の反りを抑制することが可能となる。これにより、第1樹脂層の裏側に第2樹脂層を構成する樹脂が回り込むことが抑制され、樹脂成形品の外観の向上が図られる。
【0017】
ところで、第2樹脂層の形成の際、第1樹脂層の収縮により、第1樹脂層と第2キャビティの外縁との間に隙間が生じる。ここで、一般的に、樹脂成形にあたっては、0.2mm以上の隙間があると、その隙間に樹脂が入り込み易くなる。本発明では、上述のように、第1樹脂層が共通型の突部との係合部分に固定されるので、第1キャビティの外縁を構成する部位から突部までの距離X2(mm)と第1樹脂の収縮率Y1との積X2・Y2が0.2(mm)以上となるように突部を配置することで、第1樹脂層と第2キャビティの外縁との間に0.2mm以上の隙間を形成することができる。すると、当該隙間に第2樹脂を入り込ませて、第1樹脂層の外周面の全体を第2樹脂で覆うことが可能となる。これにより、樹脂成形品の外周面において、第1樹脂層の外周面が第2樹脂層を構成する樹脂によって部分的に覆われることが抑えられ、樹脂成形品の外観の向上が図られる(第6態様の発明)。なお、距離X2は、40(mm)以下であることが好ましい(第7態様の発明)。距離X2が40(mm)を超えると、第1樹脂層が反り易くなるという問題が生じ得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形品をカバー部材として備える自動二輪車の側面図
【
図3】樹脂成形品の(A)側断面図、(B)外縁部周辺の側断面
【
図4】(A)1次型を用いる場合の成形金型の断面図、(B)2次型を用いる場合の成形金型の断面図
【
図5】(A)1次型が型閉じされたときの成形金型の断面図、(B)第1樹脂層が成形されたときの成形金型の断面図
【
図6】(A)2次型が型閉じされたときの成形金型の断面図、(B)第2樹脂層が成形されたときの断面図
【
図7】(A)
図6(A)における第1樹脂層の外縁部周辺の拡大図、(B)
図6(B)における第1樹脂層の外縁部周辺の拡大図
【
図8】(A)実験例1の樹脂成形品を裏側から見た斜視写真、(B)実験例1の樹脂成形品の外縁部周辺の側断面図
【
図9】(A)実験例2の樹脂成形品を裏側から見た斜視写真、(B)実験例2の樹脂成形品の外縁部周辺の側断面図
【
図10】(A)実験例3の樹脂成形品を裏側から見た斜視写真、(B)実験例3の樹脂成形品の外縁部周辺の側断面図
【
図11】(A)実験例4の樹脂成形品を裏側から見た斜視写真、(B)実験例4の樹脂成形品の外縁部周辺の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を車両用部品に適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、本実施形態の樹脂成形品10は、自動二輪車90においてハンドル91の下部に備えられたグローブボックス92のカバー部材93である。なお、以下では、樹脂成形品10において、カバー部材93の意匠面側を表側と称し、カバー部材93の意匠面と反対側を裏側と称する。
【0020】
図2(A)に示されるように、樹脂成形品10は、カバー本体部11と、脚部12と、を備えている。カバー本体部11は、「く」の字形の板状に形成されている。脚部12は、カバー本体部11の裏面から突出し、グローブボックス92のケース部材94(
図1)に固定される。
【0021】
図3に示されるように、樹脂成形品10のカバー本体部11は、第1樹脂からなる第1樹脂層21に第2樹脂からなる第2樹脂層22が重ねられた積層構造を有している。カバー本体部11の表側を向く面は、第2樹脂層22により構成され、カバー本体部11の裏側を向く面は、第1樹脂層21により構成されている。即ち、第2樹脂層22は、カバー部材93の意匠面を構成する。なお、脚部12は、第1樹脂層21と一体に形成されている。
【0022】
図2(B)に示されるように、カバー本体部11の裏面における外縁寄り部分には、複数の凹部15が形成されている。複数の凹部15は、カバー本体部11の外縁に沿って直線状に延びている。また、
図3(A)に示されるように、複数の凹部15は、第1樹脂層21を貫通せず、第1樹脂層21にのみ形成されている。
【0023】
図3(A)に示されるように、凹部15の深さ方向は、脚部12の延在方向に一致している。また、凹部15は、カバー本体部11の表側へ向かうにつれて断面積が大きくなるアンダーカット形状に形成されている。具体的には、凹部15の内側面は、脚部12の延在方向に対して僅かに傾斜している。なお、
図3(A)には、脚部12の延在方向と平行な軸J1が一点鎖線で示され、凹部15の内側面を延長した面M1が二点鎖線で示されている。
【0024】
本実施形態の樹脂成形品10では、カバー本体部11の外縁から凹部15までの距離X1(mm)は、40(mm)以下となっている(
図2)。また、第1樹脂層21を構成する第1樹脂の収縮率をY1としたときに、凹部15は、X1・Y1≧0.2(mm)の関係を満たすように配置されている。
【0025】
図3(B)に示されるように、第1樹脂層21の外周面は、第2樹脂層22を構成する樹脂によって覆われている。詳細には、第2樹脂層22を構成する樹脂は、第1樹脂層21の外周面の全体を覆い、第1樹脂層21の裏側には回り込んでいない。
【0026】
樹脂成形品10は、
図4(A),4(B)に示される成形金型30を用いて製造される。成形金型30は二色成形用の金型であって、共通型31と、1次型32と、2次型33と、を有している。
図4(A)から
図4(B)への変化に示されるように、1次型32と2次型33は、互いに入れ替え可能となっている。共通型31のうち1次型32又は2次型33と対向する面には、共通凹部31Aが形成されている。また、1次型32のうち共通型31と対向する面には、第1凹部32Aが形成されていて、2次型33のうち共通型31と対向する面には、第2凹部33Aが形成されている。
【0027】
図5(A)に示されるように、共通型31と1次型32が型閉じされると、共通型31の共通凹部31Aと1次型32の第1凹部32Aとによって第1樹脂層21に対応した形状の第1キャビティ32Cが形成される。また、
図6(A)に示されるように、共通型31と2次型33が型閉じされると、共通型31の共通凹部31Aと2次型33の第2凹部33Aとによって樹脂成形品10に対応した形状の第2キャビティ33Cが形成される。
【0028】
図4(A),5(A)に示されるように、共通型31における共通凹部31Aの底面の外縁寄り部分には、成形金型30の開閉方向に突出する複数の突部31T(同図には、突部31Tが1つだけ示されている。)が設けられている。突部31Tは、第1キャビティ32C内へ向かうにつれて断面積が大きくなるアンダーカット形状に形成されている。具体的には、突部31Tの外側面は、成形金型30の開閉方向に対して僅かに傾斜している。
【0029】
突部31Tは、共通型31の共通凹部31Aの外縁から突部31Tまでの距離X2(mm)が40(mm)以下となるように配置されている(
図4(A))。また、第1樹脂の収縮率をY1とすると、突部31Tは、X2・Y1≧0.2(mm)の関係を満たすように配置されている。
【0030】
成形金型30を用いて樹脂成形品10を製造するには、まず、共通型31と1次型32を型閉じし(
図5(A))、第1キャビティ32Cに第1樹脂を注入して、第1樹脂層21を成形する(
図5(B))。このとき、共通型31の突部31Tによって第1樹脂層21に凹部15が形成される。
【0031】
次いで、共通型31に第1樹脂層21を残したまま、1次型32を2次型33に替え、共通型31と2次型33を型閉じする(
図6(A))。このとき、第1樹脂層21の凹部15が共通型31の突部31Tと係合し、第1樹脂層21は、突部31Tとの係合部分に固定される。また、第1樹脂層21は、熱収縮して、第2キャビティ33Cの外縁の内面との間に隙間34を形成する(
図7(A))。なお、上述したX2・Y1≧0.2(mm)の関係から、隙間34の幅は、0.2mm以上となっている。
【0032】
次いで、第2キャビティ33Cに第2樹脂を注入して、第2樹脂層22を成形する(
図6(B))。このとき、第2樹脂は、第1樹脂層21と第2キャビティ33Cの外縁の内面との間の隙間34に入り込み、第1樹脂層21の外周面の全体を覆う(
図7(B))。また、第1樹脂層21は、凹部15と突部31Tの係合によって共通型31に固定されているので、第1樹脂層21の共通型31からの浮き上がりや第1樹脂層21の反りが抑制される。これにより、第1樹脂層21の裏側に第2樹脂が回り込むことが抑制される。
【0033】
次いで、成形金型30から第1樹脂層21及び第2樹脂層22が外されると、樹脂成形品10(
図2~3)が得られる。
【0034】
本実施形態の樹脂成形品10とその製造方法に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0035】
本実施形態では、共通型31に設けた突部31Tが第1樹脂層21と係合した状態で、第2樹脂層22が成形される。ここで、突部31Tはアンダーカット形状になっているので、第1樹脂層21の凹部15と共通型31の突部31Tとの係合によって第1樹脂層21が共通型31に固定され、第1樹脂層21の反りや浮き上がりが抑制することが可能となる。これにより、第2樹脂が第1樹脂層21の裏側に回り込むことが抑制され、樹脂成形品10の外観の向上が図られる。
【0036】
また、本実施形態では、凹部15が第1樹脂層21を貫通しないので、第2樹脂層22の表側面に凹部15に対応した斑が発生することが抑制される。
【0037】
また、本実施形態では、第2樹脂層22が成形される際に、第1樹脂層21の外縁と第2キャビティ33Cの外縁との間に0.2mm以上の隙間34が形成されるので、その隙間34に入り込んだ第2樹脂によって第1樹脂層の外周面の全体を覆うことが可能となる。これにより、第1樹脂層21の外周面を第2樹脂が部分的に覆うことが抑えられ、樹脂成形品10の外観の向上が図られる。また、共通凹部31Aの外縁から突部31Tまでの距離X2(mm)は、40以下となっているので、第2樹脂層22が成形されるときに第1樹脂層21の外縁部の反りや浮き上がりが抑制される。
【0038】
図8~9には、共通型31の突部31T(
図4(A))が樹脂成形品10の外観に及ぼす影響(言い換えれば、凹部15(
図2(B),3(A))が樹脂成形品10の外観に及ぼす影響)を検証するために行われた実験例1~4の結果が示されている。実験例1~4では、第1樹脂として、ポリプロピレン樹脂とエラストマーとタルクを含む混合樹脂が用いられ、第2樹脂として、オレフィン系エラストマーが用いられている。そして、第1樹脂の収縮率Y1=0.7%である。なお、第1樹脂層21の厚みは2.5mmであり、第2樹脂層22の厚みは1.5mmである。
【0039】
各実験例の詳細は以下のようになっている。実験例1では、共通凹部31Aに突部31Tが設けられていない。実験例2~4では、共通凹部31Aの外縁から突部31Tまでの距離X2(mm)が異なる。実験例2では、X2=15(mm)であり、実験例3では、X2=25(mm)であり、実験例4では、X2=30(mm)である。なお、実験例2,3では、X2・Y1<0.2(mm)であり、実験例4では、X2・Y1>0.2(mm)となる。
【0040】
図8(A)~
図11(B)には、各実験例の樹脂成形品10の裏面と側面が示されている。第1樹脂層21を構成する第1樹脂が灰色で示されていて、第2樹脂層22を構成する第2樹脂が黒で示されている。なお、
図8~
図11の(A)に示される写真は、樹脂成形品10をそれぞれ
図8~
図11の(B)に示される方向Zから撮影したものである。
【0041】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、実験例1では、第2樹脂層22を構成する第2樹脂が第1樹脂層21の外周面の全体を覆うと共に、第1樹脂層21の裏側にまで回りこんでいる。また、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、実験例2では、第2樹脂が第1樹脂層21の裏側に回り込まず、第1樹脂層21の外周面もほとんど覆っていない。
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、実験例3では、実験例2と同様に、第2樹脂が第1樹脂層21の裏側に回り込んでいないが、第1樹脂層21の外周面を部分的に覆っている。
図11(A)及び
図11(B)に示されるように、実験例4では、第2樹脂が第1樹脂層21の外周面の全体を覆い、第1樹脂層21の裏側には回り込んでいない。
【0042】
実験例1と実験例2~4の結果から、共通型31に突部31Tが設けられていると、第2樹脂が第1樹脂層21の裏側に回り込むことが抑えられていることが分かる。また、実験例2~4の結果から、X2・Y1の値が大きくなるにつれて、第1樹脂層21の外周面のうち第2樹脂によって覆われる面積が大きくなることが分かる。これは、X2・Y1の値が大きくなるにつれて、第2樹脂が第2キャビティ33C(
図6(A))に注入される際に第1樹脂層21と第2キャビティ33Cの外縁との間に形成される隙間34(
図7(A))の幅が大きくなり、その隙間34に第2樹脂が入り込み易くなるからである。そして、X2・Y1<0.2である場合には、第2樹脂が第1樹脂層21の外周面全体を覆うことができず、X2・Y1≧0.2である場合には、第2樹脂が第1樹脂層21の外周面全体を覆うことが分かる。
【0043】
このように、実験例1~4から、共通凹部31Aの外縁から突部31Tまでの距離X2と、第1樹脂の収縮率Y1との積X2・Y1が0.2以上であると、第1樹脂層21の全体を第2樹脂で覆いつつ、第1樹脂層21の裏側へ第2樹脂が回り込むことが抑えられることが確認された。
【0044】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0045】
(1)上記実施形態では、本発明の樹脂成形品の例として、自動二輪車90に備えるカバー部材91を示したが、それに限られるものでなく、例えば、自動車のグローブボックスやコンソールボックスに用いられる部材であってもよい。
【0046】
(2)上記実施形態において、凹部15は、点状に形成されて、樹脂成形品10の外縁に沿って配置されてもよい。また、上記実施形態では、凹部15が直線状に設けられていたが、第1樹脂層21の外縁に沿った曲線状に設けられてもよい。
【0047】
(3)上記実施形態では、凹部15は、第1樹脂層21を貫通しない構成であったが、
図12に示されるように、第1樹脂層21を貫通する構成であってもよい。なお、
図12の例では、凹部15の深さが第1樹脂層21の厚みと同じになっている。
【符号の説明】
【0048】
10 樹脂成形品
15 凹部
21 第1樹脂層
22 第2樹脂層
30 成形金型
31 共通型
31T 突部
32 1次型
33 2次型