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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】液中放電マイクロジェット薬物送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/30 20060101AFI20220603BHJP
【FI】
A61M5/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021503685
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2019003974
(87)【国際公開番号】W WO2019198971
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040865
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520389188
【氏名又は名称】メディジェット シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】イ ソクスン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジンキュ
(72)【発明者】
【氏名】カン ハンビン
(72)【発明者】
【氏名】タク ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】ペク インソク
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0027293(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0140739(KR,A)
【文献】特開2016-198328(JP,A)
【文献】特開平05-184674(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0100105(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0021383(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0066263(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーが貯蔵された電源供給部を備えた放電ボディと、
圧力発生液が貯蔵される圧力発生部、薬液が貯蔵される薬液収容部、前記圧力発生部と前記薬液収容部との間に設けられ、前記圧力発生液と前記薬液を分離する弾性分離膜、前記圧力発生部の内部に前記圧力発生液に浸かるように設置され、前記電源供給部と連結される一対の電極と、前記圧力発生部の内部に前記圧力発生液に浸かるように前記一対の電極との間に設置され、前記電極に比べて薄く、前記電源供給部に貯蔵された電気エネルギーによるスパークが発生するように構成された放電体、及び前記薬液収容部に連通したノズルを備え、前記放電ボディに対して着脱可能な薬液送達ボディと、を含み、
前記放電体からスパークが発生すると、前記圧力発生液の一部が気化しながら膨張して、前記弾性分離膜が前記薬液収容部側に変形しながら前記薬液が前記ノズルを介して噴射される、液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【請求項2】
前記放電ボディに設置され、前記電源供給部に接続された第1端子と、前記薬液送達ボディに設置され、前記放電体に接続された第2端子とを含み、前記放電ボディと前記薬液送達ボディとが結合すると、前記第1端子と第2端子とが接触しながら、前記電源供給部に貯蔵された電気エネルギーが前記放電体に送達される、請求項1に記載の液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【請求項3】
前記放電体から発生したスパークによって前記圧力発生部で局部的に高温、高圧のプラズマが発生する、請求項1に記載の液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【請求項4】
前記放電ボディは、電気エネルギーが貯蔵された電源供給部と、前記薬液送達ボディが着脱可能に収容される結合部と、前記結合部の内側に設けられる第1端子と、前記電源供給部と前記第1端子とを接続する電線とを含む、請求項1に記載の液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【請求項5】
前記ノズルと前記薬液収容部との間に設置された逆止弁をさらに含む、請求項1に記載の液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【請求項6】
前記薬液収容部は前記圧力発生部に対して着脱可能である、請求項1に記載の液中放電マイクロジェット薬物送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロジェット薬物送達装置に係り、より詳細には、弾性分離膜によって薬物と分離されている液体に高密度エネルギーを放電させて液体を急激に気化させることにより、分離膜を変形させて薬物を噴射させる液中放電マイクロジェット薬物送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体内に薬物を注入する薬物送達システム(Drug Delivery System)には、伝統的に針付き注射器を使用してきた。しかし、この種の伝統的な注射器は、注射時の疼痛により患者に恐怖の対象となってきており、傷に起因する感染症のおそれなどの避けられない問題点を抱えている。
【0003】
かかる問題点を解決するために、針のない注射器(Needle-free injector)などの薬物送達システムの開発が進められており、このような研究の一環として、薬物をマイクロジェット方式で高速噴射して皮膚の表皮を介して直接体内に浸透させる方式の薬物送達システムが提示されている。
【0004】
このようなマイクロジェット方式の高速噴射を実現するためには、薬物を精密かつ強力に外部(すなわち、皮膚)へ噴射する必要がある。このような噴射方式は、1930年代以来、さまざまに開発されてきたが、最近になって、圧電セラミック素子を用いた噴射方式、アルミ箔にレーザービームを加えることにより誘発される衝撃波を用いた噴射方式、ローレンツ力(Lorentz force)を用いた噴射方式などの様々な噴射方式が開発された。また、最近では、従来のマイクロジェット方式の噴射とは異なり、噴射される薬物の量、薬物の噴射速度を微調整することができながらも連続的な注射が可能であり、再利用可能なレーザー-バブル(Laser-Bubble)方式のマイクロジェット噴射方式が開発された。しかし、レーザー装備のサイズ及びコストの問題により小型化及び普及化において制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許出願第10-2005-7004979号
【文献】韓国特許出願第10-2010-0056637号
【文献】韓国特許出願第10-2012-0087843号
【文献】韓国特許出願第10-2014-0021473号
【文献】韓国特許出願第10-2017-0111150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点を改善するためになされたもので、その目的は、弾性分離膜によって薬物と分離されている液体に高密度エネルギーを放電させて液体を急激に気化させることにより、分離膜を変形させて薬物を噴射させる液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、構造が簡単で低コストで製造することができ、マイクロジェットの圧力や速度などを所望の通りに容易に制御することができる液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、カートリッジタイプの薬物容器のみを簡単に交換することができるため、衛生問題を解決し、環境保護及び資源節約効果もある液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、
電気エネルギーが貯蔵された電源供給部を備えた放電ボディと、
圧力発生液が貯蔵される圧力発生部、薬液が貯蔵される薬液収容部、前記圧力発生部と前記薬液収容部との間に設けられ、前記圧力発生液と前記薬液を分離する弾性分離膜、前記圧力発生部の内部に前記圧力発生液に浸かるように設置され、前記電源供給部に貯蔵された電気エネルギーによるスパークが発生するように構成された放電体、及び前記薬液収容部に連通したノズルを備え、前記放電ボディに対して着脱可能な薬液送達ボディと、を含み、
前記放電体からスパークが発生すると、前記圧力発生液の一部が気化しながら膨張して、前記弾性分離膜が前記薬液収容部側に変形しながら前記薬液がノズルを介して噴射される、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【0010】
また、前記放電ボディに設置され、前記電源供給部に接続された第1端子と、前記薬液送達ボディに設置され、前記放電体に接続された第2端子とを含み、前記放電ボディと前記薬液送達ボディとが結合すると、前記第1端子と第2端子とが接触しながら、前記電源供給部に貯蔵された電気エネルギーが前記放電体に送達される、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【0011】
また、前記放電体から発生したスパークによって前記圧力発生部で局部的に高温、高圧のプラズマが発生する、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【0012】
また、前記放電ボディが、電気エネルギーが貯蔵された電源供給部と、前記薬液送達ボディが着脱可能に収容される結合部と、前記結合部の内側に設けられる第1端子と、前記電源供給部と前記第1端子とを接続する電線とを含む、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【0013】
また、前記ノズルと前記薬液収容部との間に設置された逆止弁をさらに含む、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【0014】
また、前記薬液収容部が前記圧力発生部に対して着脱可能である、液中放電マイクロジェット薬物送達装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るマイクロジェット薬物送達装置は、弾性分離膜によって薬物と分離されている液体に高密度エネルギーを放電させて液体を急激に気化させることにより、分離膜を変形させて薬物を噴射させることができる。このような方法によって薬物を皮膚を介して迅速に組織内に浸透させることができる。
【0016】
また、本発明に係るマイクロジェット薬物送達装置は、構造が簡単で低コストで製造することができ、マイクロジェットの圧力や速度も容易に制御することができる。
【0017】
また、本発明に係るマイクロジェット薬物送達装置は、カートリッジタイプの薬物容器のみを簡単に交換することができるため、衛生問題を解決することができ、環境保護及び資源節約効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る液中放電マイクロジェット薬物送達装置を示す分解図である。
図2】本発明の液中放電マイクロジェット薬物送達装置の動作を示す作動図である。
図3】本発明の液中放電マイクロジェット薬物送達装置の動作を示す作動図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る液中放電マイクロジェット薬物送達装置を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10:放電ボディ
11:電源供給部
12:第1端子
13:電線
14:結合部
20:薬液送達ボディ
21:圧力発生部
21a:圧力発生液
22:薬液収容部
22a:薬液
23:弾性分離膜
24:放電体
25:逆止弁
26:ノズル
27:第2端子
28:電極
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面を参照してさらに詳細に説明する。本発明の実施形態は様々な形態に変形できる。本発明の範囲が下記の実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。本実施形態は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明をさらに詳細に説明するために提供されるものである。したがって、図面に示された各要素の形状は、より明確な説明を強調するために誇張されることもある。
【0021】
「第1」、「第2」などの用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、これらの構成要素はこのような用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。
【0022】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたもので、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするもので、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る液中放電マイクロジェット薬物送達装置は、放電ボディ10と、薬液送達ボディ20とを含む。
【0024】
前記放電ボディ10は、一定量の電気エネルギーが貯蔵されている電源供給部11と、前記電源供給部11と分離された空間を有する結合部14と、前記結合部14の内側に設けられる第1端子12と、前記第1端子12と電源供給部11とを電気的に接続する電線13とを含む。電源供給部11は、例えば、一つ以上のキャパシタを含むことができる。
【0025】
ここで、前記電源供給部11は外部電源を介して充電できる。
【0026】
前記薬液送達ボディ20は、圧力発生液21aが収容される圧力発生部21と、薬液22aが収容される薬液収容部22と、前記圧力発生部21と薬液収容部22を分離する弾性分離膜23と、前記第1端子12と接触するように薬液送達ボディの外側に設けられた第2端子27と、前記圧力発生部21の内部に配置されて第2端子27に接続される電極28と、前記電極28の間を接続する放電体24と、薬液収容部22に連通し、薬液収容部22に貯蔵された薬液を外部へ噴射するノズル26とを含む。
【0027】
前記薬液収容部22とノズル26との間には、圧力発生の前まで薬液収容部22から薬液が流れるのを防止するための逆止弁25が設置できる。
【0028】
以下、図2及び図3を参照して本発明の作用について説明する。
【0029】
まず、図2に示されているように、放電ボディ10の結合部14内に薬液送達ボディ20を挿入する。
【0030】
挿入と同時に、薬液送達ボディ20の第2端子27が放電ボディ10の第1端子12と接触しながら、電源供給部11に貯蔵された電気エネルギーが電極28側に供給される。
【0031】
供給された電気エネルギーによって電極28の間を接続する放電体24に電気エネルギーによるスパークが発生するようにし、これにより、圧力発生部21に貯蔵された圧力発生液21aの一部が瞬間的に気化しながら急激に体積が膨張する。そして、気体は高温、高圧のプラズマ状態になれる。
【0032】
この時、発生した圧力によって、図3に示されているように、圧力発生部21と薬液収容部22を分離させるために配置された弾性分離膜23が薬液収容部22側に急速に膨張して薬液収容部22内に圧力を増加させることにより、薬液収容部22内の薬液22aがノズル26を介して急速に噴射される。
【0033】
この時、薬液送達ボディ20のノズル26側は皮膚と接触した状態であるため、噴射される薬液は皮膚を介して体内に浸透する。使用された薬液送達ボディ20は、放電ボディ10から分離して別途処理し、放電ボディ10は、電源供給部11に電気エネルギーを充電して再び使用することができる。
【0034】
一方、前記薬液収容部22とノズル26との間に逆止弁25を別途設置して使用することも可能である。薬液の粘性によって逆止弁25の使用なしにもノズルを介して薬液が流れないが、ノズルを介して外部の異物が薬液収容部22側に浸透することを防止することにより、より衛生的な薬液保管が可能である。
【0035】
また、逆止弁25を使用しない場合には、薬液送達ボディの下側のノズル側に別途のフィルム、シートなどを用いてノズルを遮断させることも可能である。
【0036】
図4は本発明の他の実施形態に係る液中放電マイクロジェット薬物送達装置を示す図である。図4に示されている実施形態において、前記薬液送達ボディ20は、圧力発生液21の収容される圧力発生部21と薬液の収容される薬液収容部22が着脱可能に分離されているので、薬液のみを別途保管管理することができるため、より衛生的な管理が可能であるという利点がある。
【0037】
前記圧力発生部21と薬液収容部22は、例えば、上下分離された部分が仮想の垂直軸を基準に互いに反対方向に回転して結合するように、密着する部分に突起と溝が形成される構造を利用することができる。
【0038】
このように携帯可能な放電ボディに貯蔵された電気エネルギーによって発生するスパークを用いて液体を気化させて薬液を皮膚に浸透させることができるので、一般な注射器のように便利に使用することができながらもサイズ、使用の持続性、薬液の保管便宜性、環境親和性などのさまざまな面でメリットがある。
【0039】
以上、本発明を好適な実施形態によって説明したが、これは、本発明の技術的内容についての理解を助けようとするものに過ぎず、発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0040】
つまり、本発明の技術的要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、様々な変形や改造が可能であるのはもとより、それらの変形や改造も、請求の範囲の解釈上、本発明の技術的範囲内にあることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4