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特許7083426中央ショックアブソーバ組立体を備えた二つの前輪を有する車両用の前輪部及び前記前輪部を備えた車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-02
(45)【発行日】2022-06-10
(54)【発明の名称】中央ショックアブソーバ組立体を備えた二つの前輪を有する車両用の前輪部及び前記前輪部を備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20220603BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20220603BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20220603BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/08
B62K5/027
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021517413
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 IB2019058180
(87)【国際公開番号】W WO2020065577
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102018000009015
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237362(JP,A)
【文献】実開昭59-104884(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194068(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0007109(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1155950(EP,A2)
【文献】国際公開第2017/115297(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/10
B62K 5/08
B62K 5/027
B62K 5/05
B62D 7/14
B62D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪部フレーム(111)と、
第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')を用いて、第一車輪(13')及び第二車輪(13'')を各々支持する、前記前輪部フレーム(111)に接続された傾動式四節リンク(17)と、
前輪部フレーム(111)に接続された操舵縦管(3)と、
操舵縦管(3)に回転可能に収容され、第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')を相互に接続する第一連結棒(41)に接続された操舵柱(5)と、
操舵柱(5)と第一連結棒(41)との間に介在されるショックアブソーバ組立体(51)と
を備え、
前記ショックアブソーバ組立体(51)が、第一前輪(13')及び第二前輪(13'')の上下方向の動きを緩衝するよう適合されている
ことを特徴とする車両(100)の前輪部(1)。
【請求項2】
第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')が、ステアリング動作を可能にするために傾動式四節リンク('17)に回転可能に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の前輪部。
【請求項3】
第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')が、サスペンション動作を可能にするために各々、傾動式四節リンク(17)の第一垂直部(23')及び第二垂直部(23'')にヒンジ接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載の前輪部。
【請求項4】
操舵柱(5)と第一連結棒(41)との間に介在されたショックアブソーバ組立体(51)が、第一前輪(13')及び第二前輪(13'')の上下方向の動きを緩衝するための唯一のショックアブソーバ組立体である
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項5】
ショックアブソーバ組立体(51)が、二つの自由度を有する機構(57を用いて操舵柱(5)に接続されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項6】
ショックアブソーバ組立体(51)が、正面から起立した状態で車両を見た時に実質的に水平な第一軸線(61)及び操舵柱に実質的に平行な第二軸線(59)を中心に回転可能になるように操舵柱(5)に接続されている
ことを特徴とする請求項5に記載の前輪部。
【請求項7】
ショックアブソーバ組立体(51)が、二つの自由度を有する機構(53)を用いて第一連結棒(41)に接続されている
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項8】
第一連結棒(41)及びショックアブソーバ組立体(51)が、第一連結棒(41)の長手方向に従って配向された軸線及び第一連結棒(41)の長手方向及びショックアブソーバ組立体(51)の長手方向軸線に直交する軸線(55)の少なくとも一方を中心に相互に回転可能になるように、相互に接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載の前輪部。
【請求項9】
第一連結棒(41)が、第一連結棒(41)の長手方向軸線を中心に相互に回転可能になるように、相互に連結された少なくとも二つの棒部分(41A,41B;46',46'',45)を備えている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項10】
第一連結棒(41)が、第一前輪(13')及び第二前輪(13'')の不均衡な上下運動の存在下で、第一連結棒(41)の長さを変更することを可能にするように、相互に連結された少なくとも二つの連結棒部分(41A,41B;46',46'',45)を備えている
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項11】
第一連結棒(41)が、対向する端部(42',42'')の位置で、二つの回転軸線(47',49';47'',49'')を中心とする二つの自由度を許容する機構(43',43'')を用いて、第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')に各々接続されている
ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項12】
傾動式四節リンク(17)が、実質的に前輪部フレーム(111)の中心線平面(M)にある平行な軸線(19A,21A)を中心に旋回可能になるように、各中間位置ヒンジ部材を用いて前輪部フレーム(111)に各々ヒンジ接合された一対のクロス部材(19,21)と、それを中心として黒部在(19,21)が前輪部フレーム(111)に対して回転する軸線に平行な回転軸線を画定するヒンジ(25',25'',27',27'')を用いて二つのクロス部材(19,21)の対応する端部に各々ヒンジ接合された一対の垂直部(23',23'')を備えている
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項13】
前記第一支持部材(31')及び第二支持部材(31'')の各々が、操舵柱(5)によって与えられる回転コマンドによって対応する操舵軸線(35',35'')を中心に回転可能になるように、傾動式四節リンク(17)の各垂直部(23',23'')に接続されている
ことを特徴とする請求項12に記載の前輪部。
【請求項14】
各支持部材(31'、31'')の操舵軸線(35',35'')が、実質的に、各垂直部(23',23'')の長手方向軸線に一致している
ことを特徴とする請求項13に記載の前輪部。
【請求項15】
各支持部材(31',31'')が、各操舵軸線(35',35'')を中心に回転するように垂直部(23',23'')に支持されたスリーブ(37',37'')を用いて各垂直部(23',23'')に接続されている
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の前輪部。
【請求項16】
各支持部材(31',31'')が、対応する操舵軸線(35',35'')に対して実質的に直交する、少なくとも一つのばね軸線(39',39'';40A,40B)を中心に回転又は回転並進可能になるように、対応する垂直部(37',37'')に接続されている
ことを特徴とする請求項12~15の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項17】
傾動式四節リンク(17)の傾斜運動をブロックする装置(81)を備えている
ことを特徴とする請求項1~16の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項18】
傾斜運動をブロックする装置(81)が、ショックアブソーバ組立体及び第一連結棒間の相対的な回転運動を選択的に阻止する第一連結棒(41)及びショックアブソーバ組立体(51)をブロックする部材を備えている
ことを特徴とする請求項17に記載の前輪部。
【請求項19】
固定長さを有する第二連結棒(71)を備え、前記第二連結棒(71)が、傾動四節リンク(17)における、第一前輪及び第二前輪の上下運動に関与しない位置に連結されている
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の前輪部。
【請求項20】
第二連結棒(71)が、その両端部で、支持部材(31',31'')を傾動式四節リンク(17)の垂直部(23',23'')に接続するスリーブ(37',37'')にヒンジ接合されている
ことを特徴とする少なくとも請求項15を引用する請求項19に記載の前輪部。
【請求項21】
操舵柱(5)にショックアブソーバ組立体(51)を接続する前記機構(57)が、二つの回転軸線を中心とした回転を可能にする
ことを特徴とする請求項5に記載の前輪部。
【請求項22】
前記二つの回転軸線が、相互に直交する
ことを特徴とする請求項21に記載の前輪部。
【請求項23】
第一連結棒(41)にショックアブソーバ組立体(51)を接続する前記機構(53)が、二つの回転軸線を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の前輪部。
【請求項24】
前記二つの回転軸線が、相互に直交する
ことを特徴とする請求項23に記載の前輪部。
【請求項25】
前記二つの回転軸線(47',49';47'',49'')が相互に直交する
ことを特徴とする請求項11に記載の前輪部。
【請求項26】
前記二つの回転軸線(47',49';47'',49'')が、第一連結棒(41)の長手方向に直交する
ことを特徴とする請求項25に記載の前輪部。
【請求項27】
少なくとも一つの後側駆動輪(103)を備えた後輪部(2)と、請求項1~26の何れか一項に記載の前輪部(1)とを備えていることを特徴とする車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜式車両、即ち、車両に沿って長手方向に延びる中心面の周りで傾斜運動をする車両に関する。傾斜式車両は、典型的には、二つの前側操舵輪及び一つの後側駆動輪を備えた三輪車である。傾斜運動により、車両を、その動作中、例えば、カーブを走行する時に、傾斜させることができる。
【背景技術】
【0002】
車両の分野では、オートバイの操縦性と四輪車両の安定性を兼ね備えた車両の提案が増大している。
【0003】
これらのモデルとしては、例えば、二つの前側操舵輪及び一つの後側駆動車輪を備えた三輪車両及び通常はクワッドバイク(バギー)と呼ばれる四輪車両がある。
【0004】
より詳細には、上述した三輪車両には、二つの前側操舵輪、即ち、ハンドルバーを用いてドライバーによってコントロールされる、車両を操舵するように適合された車輪が設けられ、傾斜動作、即ち、傾いた動き、言い換えれば、実質的に進行方向に向けられた軸線を中心としたピボット動作で、横方向に傾けることができる。また、三輪車両は、後側駆動輪を備え、この駆動輪は、エンジンに駆動的に連結され、かつ、トルクを提供し、従って、駆動することを可能にするものであるのに対して、連結された前輪は、車両の方向性を決める役割を担っている。
【0005】
連結された前輪は、操舵することに加えて、傾けることもできる。この解決手段によって、二つの車輪しか持たない車両に対して、前輪部に連結された二つの車輪を備えた車両は、自動車によってもたらされる安定性と同じように、地面に接地する二つの前輪によってより高い安定性を保証している。
【0006】
これらの前輪は、例えば、前輪を前輪部フレームに連結する四節リンクを介在させることにより、これらの車輪が実質的に同期して傾斜したり操舵されたりすることを保証する運動機構を介して、相互に運動的に連結される。さらに、これらの車両には、各前側操舵輪に一つずつ、二つの独立したショックアブソーバ組立体を備えている。各ショックアブソーバ組立体には、弾性要素(スプリング)及び粘性要素(ディシペータ又はブレーキ)が設けられている。
【0007】
従って、三輪傾斜式車両は、二輪オートバイの扱い易さと、四輪車両の安定性及び安全性とを同時に保証することを目的としている。
【0008】
このタイプの三輪傾斜車両は、例えば、国際公開WO2017/115294号、国際公開WO2017/115295号、国際公開WO2017/115296号及び国際公開WO2017/115297号に開示されている。
【0009】
二つの前輪を持つ傾斜式車両は、通常、ダブルサスペンション、即ち、左前輪と右前輪とにそれぞれ関連付けられた第一左側ショックアブソーバ組立体及び第二右側ショックアブソーバ組立体を有するサスペンションシステムを有している。
【0010】
欧州特許EP3222508号は、後側駆動輪と、前輪部に接続された二つの前側操舵輪を有する車両を開示している。前輪部は、前輪部フレームと、前輪部フレームに接続され、第一支持部材及び第二支持部材によって、第一前輪及び第二前輪をそれぞれ支持する傾動式四節リンクと、前輪部フレームに接続された操舵縦管と、操舵縦管内に回転可能に収容され、第一支持部材及び第二支持部材を互いに連結する第一連結棒に接続された操舵柱とを備えている。また、この現在の技術の車両は、車両の所謂、ばね上質量を、所謂、ばね下質量に接続するサスペンションを備えている。
【0011】
欧州特許EP3222508号では、車両のばね上質量とばね下質量とを連結するサスペンションは、左前輪用の第一サスペンション手段と、右前輪用の第二サスペンション手段とによって前側に形成されている。第一サスペンション手段及び第二サスペンション手段は、各々第一及び第二ショックアブソーバ組立体を備えている。各ショックアブソーバ組立体は、ダンパー及びスプリングを含み、ばね下質量の一部を形成する前側操舵輪の上下方向の動きを減衰させる。
【0012】
欧州特許EP3222508号に開示された車両は、左右二つのショックアブソーバ組立体に加えて、操舵棒と操舵柱の間に介在するサイレントブロックを備えている。このサイレントブロックは、互いに同心で、かつ操舵柱の回転軸線と同軸線に配置された二つの剛性同軸線体を備えている。内側の円筒体は操舵柱に接続され、外側の円筒体は操舵棒に接続されている。二つの円筒体の間にはゴムリングが介在されている。サイレントブロックは、二つの前側操舵輪と地面との摩擦力の差によって生じる振動が、操舵柱に伝達されるのを防ぐことを目的としている。サイレントブロックは、前側操舵輪の上下動を減衰させる機能を有しておらず、即ち、車両のサスペンションの一部を構成するものではない。
【0013】
二つの前側ショックアブソーバ組立体の存在は、車両の総コストに影響を与え、他の欠点がないわけではない。実際、製造公差のために、ショックアブソーバ組立体の弾性要素(スプリング)と粘性要素(ブレーキ)の両方は、同じモデルのショックアブソーバ組立体毎でさえも大きく異なる特性を有する。名目上は同じショックアブソーバッ組立体であっても、このような違いがあると、走行中の二つのショックアブソーバッ組立体の挙動に望ましくない差が生じる。その結果、ドライバーが調和のとれた運転をすることができなくなる。
【0014】
従って、二つの前側操舵輪を有する車両、特に傾斜式車両の前輪部のショックアブソーバ組立体を提供する必要性が存在し、従来の技術水準の前輪部及び関連する車両の前輪部の問題の一つ又は複数を制限又は排除するショックアブソーバ組立体を提供する必要性が生じる。
【発明の概要】
【0015】
従来の技術水準の車両の前輪部の欠点の一つ又は複数を克服又は緩和するために、前輪の操舵を制御するように構成された運動学的操舵機構が接続されている前輪部フレームを有する前輪部が提案される。運動学的操舵機構は、傾動式四節リンク(以下、簡潔にするために単に四節リンクと称する)を備え、この四節リンクに、第一支持部材及び第二支持部材によって、第一前輪及び第二前輪がそれぞれ接続される。さらに、前輪部は、操舵縦管を備えており、操舵縦管内に操舵柱が回転可能に収容され、かつ、運動学的操舵機構が接続されている。さらに、運動学的操舵機構は、二つの車輪の第一支持部材及び第二支持部材の第一連結棒を備えている。第一連結棒は、第一車輪及び第二車輪の上下運動(「上下振動運動」とも呼ばれる)、即ち、ショックアブソーバ組立体の圧縮及び伸長に関連する車輪の運動に関与する。これらショックアブソーバ組立体は、操舵柱と第一連結棒との間で相互に接続された単一のショックアブソーバ組立体を有する。前記ショックアブソーバ組立体は、第一前輪及び第二前輪の上下方向の動きを減衰させるように適合される。上下方向の動きは、実質的には、車両が走行する地面から受ける反力による車輪の動きである。
【0016】
実質的に、サスペンションシステムは、両方の前側操舵輪の上下動を減衰させる単一のショックアブソーバ組立体を備えている。これにより、二つの前輪のサスペンションシステムの挙動の違いによる影響を受けなくなるので、コストの削減と車両の挙動の改善が可能となる。
【0017】
実用的な実施形態では、第一支持部材と第二支持部材は、四節リンクにヒンジ接続され、即ち回転可能に連結されている。
【0018】
操舵柱と第一連結棒との間で相互に連結されたショックアブソーバ組立体は、有利には、第一操舵前輪の上下方向の動きと第二操舵前輪の上下方向の動きとを減衰させるための唯一のショックアブソーバ組立体であり得る。
【0019】
実用的な実施形態では、各支持部材は、少なくとも一つのヒンジを介して、又は、例えば四節リンクを形成しているヒンジシステムを介して、傾動式四節リンクに接続され、傾動式四節リンクのそれぞれの構成要素に対して回転運動又は回転並進運動を実行するようにされている。
【0020】
本明細書に記載された実施形態では、四節リンクは、
前輪部の中心線平面に対して横方向、即ち、右から左の方向に延びる第一クロス部材(上側クロス部材)と、
前輪部の中心線平面に対して横方向、即ち、右から左の方向に延びる第二クロス部材(下側クロス部材)と、
上側クロス部材及び下側クロス部材の第一端部を互いに結合し、前輪部の中心線平面の一方の側、例えば、左側に位置する第一垂直部と、
上側クロス部材及び下側クロス部材の第二端部を互いに結合する第二垂直部と
を備えている。
前記二つのクロス部材は、前輪部が属する車両が傾動運動を行う時に、前輪部フレームに対して旋回するように、それぞれの中間位置で、好適にヒンジ結合されている。フレームに対する上側及び下側クロス部材のピボット軸線は、四節リンクの四つの構成要素(二つのクロス部材及び二つの垂直部)を互いに結合するヒンジの軸線に実質的に平行であり得る。
【0021】
実用的な実施形態では、前輪部は、四節リンクが実質的に車輪の高さに配置されるように、即ち、それを形成するクロス部材及び垂直部が、二つの前側操舵輪の間にあるように構成され得る。
【0022】
本明細書に開示された実施形態では、車輪の各支持部材は、四節リンクの二つの垂直部のうちの一つに接続され、各操舵軸線を中心に回転可能にされ、各車輪の上下運動に対応する垂直部に対する回転運動又は並進移動運動を行うことができるようにされている。例えば、各支持部材は、剛性本体と、該本体を傾動式四節リンクの垂直部に連結する二つのロッカーアームとを有し得る。この場合、各前側操舵輪は、支持部材の本体、ロッカーアーム、及び傾動式四節リンクの各垂直部によって形成された各四節リンクによって支持される。
【0023】
有利な実施形態では、ショックアブソーバ組立体は、二つの自由度を有する機構を用いて操舵柱に接続され得る。特に、自由度は、好ましくは、互いに直交する二つの回転軸線を中心とした回転を可能にし得る。さらに、減衰要素(ディシペータ)と弾性要素とを備えたショックアブソーバ組立体により、操舵柱と連結棒との間の第三相互並進運動が可能になる。
【0024】
実用的な実施形態では、二つの自由度は、ショックアブソーバ組立体を操舵柱に接続し、車両を正面から見たときに、直立した状態で、即ち、傾いていない状態で、第一の実質的に水平な軸線周り、及び、操舵柱と実質的に平行な第二軸線周りで回転可能にする。本明細書では、「水平」は、前輪部が中立位置にある状態、即ち、傾斜角がゼロの状態を意味する。実際には、第二回転軸線は、操舵柱の軸線に直交し、かつ、車両の右から左の方向に延びている。
【0025】
有利には、ショックアブソーバ組立体は、二つの自由度、特に、好ましくは互いに直交する二つの回転軸線周りの自由度を有する機構によって、第一連結棒に接続され得る。実際には、第一連結棒及びショックアブソーバ組立体は、第一連結棒の長手方向に従って配向された軸線、及び、第一連結棒の長手方向及びショックアブソーバ組立体の長手方向に直交する軸線のうちの少なくとも一方を中心として、相互に回転可能になるように、互いに接続され得る。
【0026】
以下の説明から明らかなように、第一連結棒は、二つ以上の部材で構成され得、これらの部材は、第一連結棒の長手方向に平行な軸線周りで、隣接する二つの部材の相互回転を可能にする連結部によって互いに連結され得る。この場合、第一連結棒の長手方向に従って配向された軸線は、第一連結棒を構成する二つ以上の部材を相互に結合するシステムによって画定される。例えば、第一連結棒は、中央部部材、即ち、中間部材を有し得、該中間部材は、第一連結棒の方向及びショックアブソーバ組立体の軸線に直交する軸線周りで回転可能になるように、操舵柱にヒンジ接続されている。前記軸線は、実質的に、車輪が真っ直ぐに立っている状態にある時の車両の中心線平面にある。二つの端部部材は、第一連結棒の中央部材に接合され得、それぞれが、第一連結棒の長手方向に従って配向された軸線周りで、中央部材と端部部材との間の相互回転を可能にするベアリングによって中央部材に接続されている。
【0027】
改良された実施形態では、第一連結棒は、第一前側操舵輪及び第二前側操舵輪の不均等な上下運動の存在下で、第一連結棒の長さの変化を可能にするように、互いに接続された少なくとも二つの連結棒部材を備えている。有利には、二つの前輪の一方から他方への操舵動作を伝達するように構成された第二連結棒が設けられ得る。第二連結棒は、固定された長さを有し、第一前側操舵輪及び第二前側操舵輪の上下方向の動きに対して中立となる位置で、四節リンクに適切に接続され得る。これは、二つの操舵輪の上下方向の動きが異なる場合でも、二つの中立点の間の距離が一定に維持されることを意味する。このようにして、第一連結棒は、ハンドルバー、操舵柱、及び操舵柱と第一連結棒との間に配置された中央ショックアブソーバ組立体を用いて、運転者が行う操舵動作を二つの前輪のうちの一方に伝達する。第二連結棒は、操舵動作を二つの前輪のうちの他方に伝達する。車輪の上下運動に追従する(ショックアブソーバ組立体に接続されている)第一連結棒は、長さが可変であり得、二つの車輪が異なる方法で動く場合、第一連結棒が長さを変え得るように構成されている。第二連結棒は、車輪の上下運動に追従しないので、長さを変化させる必要がない。
【0028】
有利な実施形態では、四節リンクの傾斜運動をブロックする装置が設けられ得る。実際には、傾斜運動をブロックするための装置は、第一連結棒及びショックアブソーバ組立体をブロックする部材を有し得、ショックアブソーバ組立体及び第一連結棒間の相対回転運動を選択的に阻止する。このようにして、操舵動作を妨げない傾倒動作のブロックが達成される。
【0029】
また、本発明によれば、少なくとも一つ駆動輪を有する後輪部と、上記で定義された前輪部とを有する車両が提供される。
【0030】
前輪部及びそれを備える車両のさらに有利な特徴及び実施形態は、以下に説明され、本明細書の不可欠な一部を形成する添付の特許請求の範囲で定義される。本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を示す説明及び添付の図面によって、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一の実施形態による前輪部の簡単化した運動学的な図である。
図2】二つの前側操舵輪の上下の動きが不均等な状態にある図lの運動学的な図であり、運動学的な動的特徴を示している。
図3】本発明の第二の実施形態による前輪部の簡単化した運動学的な図である。
図4】本発明の第三の実施形態による前輪部の簡単化した運動学的な図である。
図5】本発明の第四の実施形態による前輪部の簡単化した運動学的な図である。
図6】一実施形態による三輪スクータの側面図である。
図7図6のVII-VII視平面図である。
図8図7のVIII-VIII視正面図である。
図9図6図8のスクータの底面から見た斜視図である。
図10図6図9のスクータの前輪部及び運動学的操舵機構の、部品を取り除いた背面視拡大斜視図である。
図11図6図9のスクータの前輪部及び運動学的操舵機構の、部品を取り除いた前面視拡大斜視図である。
図12】操舵柱及びそれに接続された運動学的操舵機構を、前輪部フレームから分離し、車輪を除いた状態で示す正面図である。
図13図12のXIII-XIII線断面図である。
図14図12のXIV-XIV線視図である。
図15図13のXV-XV線断面図である。
図16図12図15の操舵柱及び運動学的操舵機構の斜視図である。
図17図12図15の操舵柱及び運動学的操舵機構の斜視図である。
図18図6図17のスクータの車輪の一方と、それぞれの支持部材との斜視図である。
図19図6図17のスクータの車輪の一方と、それぞれの支持部材とを、図18とは異なる方向から見た斜視図である。
図20】別の実施形態による三輪スクータの側面図である。
図21図20のXXI-XXI線視平面図である。
図22図20のXXII-XXII線視正面図である。
図23図20図22のスクータの底面斜視図である。
図24図20図23のスクータの前輪部及び運動学的操舵機構の、部品を取り除いた背面視拡大斜視図である。
図25図20図23のスクータの前輪部及び運動学的操舵機構の、部品を取り除いた前面視拡大斜視図である。
図26】操舵柱及びそれに接続された運動学的操舵機構を、前輪部フレームから分離して車輪を除いた状態で示す正面図である。
図27図26のXXVII-XXVII線断面図である。
図28図26のXXVIII-XXVIII線視図である。
図29図27のXXIX-XXIX線断面図である。
図30図27のXXX-XXX線断面図である。
図31図26図30の操舵柱及び運動学的操舵機構の斜視図である。
図32図26図30の操舵柱及び運動学的操舵機構の斜視図である。
図33】各車輪の支持部材を接続するための各スリーブが設けられている、図6及びそれ以降図面の運動学的操舵機構の四節リンクの垂直部の側面図である。
図34図33のXXXIV-XXXIV線視背面図である。
図35図34のXXXV-XXXV線断面図である。
図36図33図35の垂直部の展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
要約すると、例えば、スクータのような二つの前側操舵輪を有する車両において、二つのクロス部材(又は接続ロッド)と二つのロッカーアームを有する、四節リンクが接続されたフレームを備えた前輪部が提供される。クロス部材は、車両が中立状態、即ち傾いておらず(傾斜角ゼロ)、直線的な軌道(操舵角ゼロ)に沿って移動している時に水平である。クロス部材は二つの垂直部によって互いに連結されており、クロス部材とともに四節リンクを形成している。垂直部には、左右の前輪に対応した二つの支持部材が取り付けられている。支持部材は、操舵軸線を中心に回転し、ばね軸線に対して回転可能又は回転並進可能であり、沈み込み運動を可能にしている。車両を操縦するために、ハンドルバーが設けられており、このハンドルバーは、操舵縦管に回転可能に収容された操舵柱によって、四節リンクに接続されている。操舵縦管は前輪部フレームに固定されている。さらに、運動学的操舵機構は、二つの車輪の二つの支持部材を互いに接続する連結棒を備えている。車両が中立位置にあるとき、連結棒は実質的に水平である。ハンドルバーによって制御される操舵動作は、操舵柱によって連結棒に伝達される。車輪は、上下方向の動き、即ち、車輪の軸線に実質的に直交する平面内での回転又は回転並進運動を実行しなければならず、これは、ばね軸線に対して回転又は回転並進運動が可能な支持部材によって可能にされる。この動きは、弾性成分と粘性成分(ブレーキ又はディシペータ)を備えたショックアブソーバ組立体によって減衰される。ショックアブソーバ組立体は、二つの車輪に対して単一であり、操舵柱と第一連結棒との間に配置されている。
【0033】
運動学的操舵機構の運動学的な図
本発明による前輪部の様々な実施形態及びそれらを使用する車両の新規な特徴をより良く理解するために、前輪部及びそれを使用する車両の具体的な実施形態を説明する前に、前輪部の基本的構成及びそれらの動作方法を示す概念的な運動学的な図について説明をする。最初に参照される簡略化された運動学的な図は、図1図5に示されている。以降の図は、これらの運動学的な図の具体的な実施形態を示している。
【0034】
図面をより明確にするために、必要に応じて、車両の通常の使用位置を参照して、空間内の向きを示すために、添付図面には矢印が追加されている。矢印Uは上向き垂直方向を示し、矢印Dは下向き垂直方向を示している。矢印L及びRは水平方向を示しており、各々、前進方向に対して車両の「左」及び「右」を示す。矢印Fは、進行方向に従った水平方向を示す。
【0035】
図1は、二つの前側操舵輪及び例えば、一つ又は二つの固定軸、即ち、非操舵駆動車輪を備えた後輪部を有する車両、特に、傾斜式車両、例えば、オートバイの前輪部の運動学的な図を示している。後輪部は図1に示されていない。
【0036】
前輪部は、その全体が符号1で示されている。前輪部1は、操舵縦管3が一体的に設けられた不図示の前側部フレームを有する。ハンドルバー7と一体の操舵柱5が、操舵縦管3に回転可能に収容されている。操舵柱5は、ハンドルバー7を用いて運転者によって操作されている時に、軸線A-Aを中心に回転可能である。
【0037】
第一前側操舵輪13'及び第二前側操舵輪13''は、前輪部1に関連付けされている。以下の説明では、前輪部1の中心面Mに対して対称な構成要素、組立体又は要素は同じ符号で示し、中心面Mの一側、例えば、運転者の左側の要素には「'」を付し、中心面Mの多側、例えば、運転者の右側の要素には「''」を付す。
【0038】
図1の実施形態では、前輪部1は、全体が符号15で示された運動学的操舵機構を有し、それにより、前側操舵輪13'及び13''が、操舵及び傾斜動作に同期して追従することを可能にしている。傾斜動作は、前輪部1が設けられた車両が、例えば、カーブを走行する時に、傾くことを可能にする動作である。
【0039】
詳細には、運動学的機構15は、四節リンク17、より正確には、連結された平行四辺形リンクを備え、該四節リンク17は、実質的に相互に平行な第一上側クロス部材19及び第二下側クロス部材21を有する。これら二つのクロス部材19及び21は、前輪部1のフレーム(図示せず)に、それぞれのヒンジ部19A及び21Aでヒンジ結合される。これにより、二つのクロス部材19及び21は、前輪部フレームの中心面Mにあるそれぞれの並行な回転軸線を中心に回転可能になる。軸線は、各々符号19B及び21Bで示されている。さらに、四節リンク17は、前輪部1の両側に二つの垂直部23'及び23''を備えている。符号25',27'及び25'',27''は、前輪部1の両側のヒンジ部を示しており、これらヒンジ部によって、垂直部23'及び23''は、クロス部材19,21にヒンジ結合される。これらのヒンジ25',25''及び27',27''は、クロス部材19及び21並びに垂直部23'及び23''の相互回転軸線を画定し、これらの軸線は、前輪部フレームに対してクロス部材19,21の回転軸線19B及び21Bと平行である。
【0040】
運動学的機構15は、四節リンク17の他に、符号31'及び31''で示された一対の所謂、支持部材を備え、これらは、各車輪13'及び13''を回転可能に支持する。
【0041】
図1の簡略化した図において、支持部材31'及び31''は、純粋に説明のために直線によって模式的に表されている。各支持部材31'及び31''は、各車輪13',13''のジャーナル33',33''及び図1の簡略化した運動学的な図には示されていない、例えばブレーキ等の他の構成要素を支持する。
【0042】
各支持部材31'及び31''は、四節リンク17の各垂直部23'及び23''に接続されている。垂直部23',23''と支持部材31',31''との間の接続は、各車輪13',13''の操舵軸35'、35''を中心に支持部材が回転可能になるようにされている。図1では、各操舵軸35',35''は、各垂直部23'、23''の長手方向軸線と一致しており、即ち、垂直部23',23''の長手方向と平行に延びる軸線に一致している。垂直部23',23''及び支持部材31',31''間の相互回転は、例えば、垂直軸23',23''の周りに設けられたスリーブ37',37''を用いて得ることができ、これらスリーブ37',37''に各支持部材31',31''が接続されている。支持部材及びスリーブ間の相対的な動きの可能性を以下に説明する。
【0043】
各支持部材31',31''は垂直部(より正確にはスリーブ37',37'')に接続され、車両が中立位置(即ち、傾けることによる傾斜のない垂直な位置)にある時に垂直位置にある平面において、垂直部に対して回転又は回転並進を行うことができるようにされている。図1の簡略化した運動学的な図では、各支持部材31',31''の動作は、操舵軸線35',35''に直交する弾性軸線としても参照され得る軸線39'、39''を中心とする回転運動又はピボット運動として表されている。従って、実際には、図1では、各支持部材31',31''は、車両及びその前輪部1が、ゼロ傾斜角の中立位置にある時に水平な軸線を有するヒンジを用いて、各スリーブ37',37''に接続されている。軸線39',39''を中心とした二つの支持部材の同時動作によって、前輪部1が設けられた車両のピッチ運動がもたらされる。
【0044】
軸線35'、35''を中心とした回転により、車輪13',13''を操舵することが可能になり、同時に、軸線39',39''を中心とした回転により、車輪13',13''が上下動することが可能にし、この上下動は、二つの車輪に対して独立して行うことができ、かつ、以下に説明するショックアブソーバ組立体によって減衰される。
【0045】
運動学的操舵機構15は、支持部材31',31''及び四節リンク17の他に、第一連結棒41を備え、前記第一連結棒41は、第一支持部材31'及び第二支持部材31''に各々接続される二つの端部42'及び42''を有する。図1の実施形態では、第一連結棒41は、操舵棒として作用し、以下に説明する方法で、ハンドルバー7を用いて運転者によって制御される操舵軸線35',35''を中心として操舵運動を車輪13',13''に伝達する。第一連結棒41の各端部42',42''は、符号43',43''で示した二つの自由度を有する機構を用いて、各支持部材31',31''に接続されている。実際には、各機構43',43''は、一対のヒンジを有し得る。これらのヒンジは、相互に直交し、ひいては第一連結棒41の長手方向に対して直交し得る二つの軸線を中心に支持部材31',31''と第一連結棒41との間の相互回転を可能にする。第一軸線は、図1の図面では、支持部材31',31''を表すビームの軸線と一致し得、第二軸線は、前輪部1が中立位置にある時、即ち、傾斜角がゼロの時に、支持部材及び第一連結棒41によって画定される平面と直交し得る。
【0046】
図1では、第一連結棒41と支持部材31',31''との間の相互回転の軸線は、前輪部1の両側において、それぞれ符号47',49'及び47'',49''で示されている。軸線47',47''及び49',49''を中心とする動きによって、車輪13',13''が操舵回転及び傾斜運動を行う際に、第一連結棒41及び支持部材31',31''が、相互に移動することを可能にする。
【0047】
第一連結棒41は、その長手方向の中間位置において、全体として符号51で示されたショックアブソーバ組立体を介在させることによって、操舵柱5に接続されている。
【0048】
図1では、ショックアブソーバ組立体51は、符号53で概略的に示された二つの自由度を有する機構によって、第一連結棒41に接続されている。前記機構53は、第一連結棒41及びショックアブソーバ組立体51が、第一連結棒41の長手方向と平行な第一回転軸線と、第一連結棒41の長手方向に直交し、前輪部1の中心面M上にある第二回転軸線55とを中心として相互に回転することを可能にする。軸線55周りの自由度により、第一連結棒41が、二つの車輪13',13''の相互に異なる上下方向の動きに追従することを可能にする。第一連結棒41に平行な軸線周りの自由度により、ショックアブソーバ組立体51の収縮に伴う沈み込み運動において、即ち、垂直部23',23''に対する車輪13',13''の上下運動において、ショックアブソーバ組立体51が、第一連結棒41に対して回転することを可能にする。
【0049】
幾つかの実施形態では、第一連結棒41は、中心機構53の右側と左側に配置され、従って前輪部フレームの中心線面Mの両側に配置された、少なくとも二つの部分を有し得、これらは、第一連結棒41の長手方向に平行な回転軸の周りで互いに回転するように適合されている。
【0050】
ショックアブソーバ組立体51は、第一連結棒41の反対側の端部において、全体が符号57で示される機構によって操舵柱5に接続されている。前記機構57により、ショックアブソーバ組立体51及び操舵柱5が、ショックアブソーバ組立体51の長手方向に平行な第一回転軸線59と、前輪部が中立位置にある時、即ち、車輪13',13''の回転軸線が水平であり、傾斜角がゼロである時に、第一回転軸線59に直交し、実質的に水平になる第二回転軸61との周りで、相互に回転運動を行うことが可能になる。
【0051】
さらに、前記機構57は、操舵柱5の一端5Aとの剛体接続部63を構成している。図1では、剛性接続部は、ブラケットによって模式的に表されている。
【0052】
上述した前輪部1の機能は以下の通りである。各操舵軸線35',35''周りの車輪13',13''の操舵運動は、操舵柱5の軸線A-A周りでハンドルバー7を回すことによって得られる。この動きは、機構57によってショックアブソーバ組立体51に伝達され、そこから機構53によって第1連結棒41に伝達される。後者は、ハンドルバー7によって与えられた運動を二つの支持部材31',31''に伝達し、その結果、これらの支持部材31',31''は、各々、軸線35',35''周りで同期して回転する。したがって、本実施形態では、第一連結棒41は、操舵バーとして機能する。
【0053】
運動学的操舵機構15の四節リンク17は、例えば、前輪部1が属する車両がカーブを走行する際に、車両が傾くことを可能にする。車両が傾くと、四節リンク17のヒンジ25',25'',27'及び27''が当該四節リンクの変形を許容し、クロス部材19,21は、ヒンジ19A,21Aによって規定される軸線19B,21B周りで回転する。車輪13',13''は、車両の傾動運動に追従して、垂直面から逸脱して傾斜する。
【0054】
単一中央ショックアブソーバ組立体51は、軸線39',39''周りの支持部材31',31''の回転運動を伴う、車輪13',13''の上下運動を吸収して減衰させることができる。上下方向の動きは、二つの支持部材31',31''及び各車輪13',13''に対して同期した等しい大きさであるか、又は、二つの支持部材31',31''及び各車輪13',13''に対して異なる大きさであることができる。二つの車輪のための不均等な動きは、例えば、車両が障害物に遭遇した後の段階のような過渡的な段階で発生し得る。この種の状態は、例えば、一方の車輪が地面の凹みや段差に遭遇した場合に発生し得る。
【0055】
図2は、二つの車輪13',13''が互いに異なる上下運動を行う状態における図lの運動学的な図を示している。より具体的には、車輪13'は、例えば路面の凹みによって浮き上がっており、一方、車輪13''は、平滑な路面の部分を走行している。図2に示された状態は、図l及び図2の前輪部1の運動学的な図の特定の特徴を強調している。第一連結棒41の長さが固定されているため、二つの車輪のうち一方の車輪(図2の例では車輪13')が上下運動をする時、即ち軸線39'又は39''を中心とした各支持部材31'又は31''が回転する時、他方の車輪(図2の例では車輪13'')が操舵運動を行うことになる。
【0056】
図3は、さらなる改良が施された前輪部1の改良された実施形態の運動学的な図である。図3において、同じ符号は、図1のものと同じ又は同等の部品、コンポーネント、又は要素を示しており、これらについては改めて説明しない。
【0057】
図3では、第一連結棒41は、二つの部分41A,41Bを備え、これらの部分は、第一連結棒41の長手方向軸線に対する二つ部分41A,41Bの相互の動き、即ち、第一連結棒41の伸縮動作を可能にするように適合された接合要素44によって互いに接合されている。このようにして、第一連結棒41は伸縮可能であり、得られる運動機構は、第一連結棒41に対する支持部材31',31''の接続点間の不変性という制約の影響を受けなくなる。図2に模式的に示されているように、二つの車輪13',13''の上下方向の動きが異なる場合には、支持部材31',31''の軸線39',39''周りの回転が、二つの支持部材31',31''のうちの他方の支持部材に支持されている車輪に差別化された操舵動作を付与しないように、第一連結棒41を長くしたり短くしたりすることができる。
【0058】
しかし、結合要素44によって導入される自由度のために、ハンドルバー7によって制御される操舵動作は、第一連結棒41によって両方の車輪13',13''に伝達されない。特に、図3の構成では、操舵動作は、中央のショックアブソーバ組立体51及び第一連結棒41の部分41Bによって車輪13''に伝達されるが、第一連結棒41の部分41A,41Bの間に介在する接合要素44のために、車輪13'には伝達されない。第一連結棒41を伸縮可能にするこの接合要素は、ショックアブソーバ組立体51による車輪13'への操舵動作の直接的な伝達を可能にしない不安定要素を導入している。
【0059】
この不安定な要因を克服するために、図3の前輪部1は、第一連結棒41と実質的に平行な第二連結棒71を備えている。図3では、第一及び第二連結棒41,71は、四節リンク17がある平面の反対側に配置されているが、これは必須ではなく、主に、全体としての運動学的機構の概念的な表現を明確にするために設けられている。他の実施形態では、第一連結棒41及び第二連結棒71は、四節リンク17がある平面の同じ側に、例えば両方とも運転者の側に、又は両方とも反対側に配置することができる。
【0060】
また、二本の連結棒41,71があり、一方が、長さが可変であり(第一連結棒41)、他方が、長さが固定されており、かつ、車輪の上下動や揺れの影響を受けない(第二連結棒71)ことにより、WO2017/115274に記載された構成で実現可能な利点を得ることができる。
【0061】
第一連結棒41と第二連結棒71とが、四節リンク17がある平面の反対側にある場合、第一連結棒を運転者側に配置し、第二連結棒を反対側に配置してもよいし、その逆であってもよい。
【0062】
第二連結棒71は、ヒンジ73'及び73''とブラケット75',75''によって、スリーブ37'、37''に接合されている。ヒンジ73',73''は、第二連結棒71とブラケット75',75''との間の、操舵軸線35'、35''に平行な軸線を中心とした相互回転を可能にする。ブラケット75',75''は、スリーブ37',37''に堅固に連結されており、それと一体的に動く。
【0063】
上述した構造では、ハンドルバー7から第二操舵棒71によって、以下のようにして操舵動作が車輪13'に伝達される。操舵柱5は、回転することにより、操舵柱5の回転軸線A-Aを中心とする円周の円弧に沿ってショックアブソーバ組立体51の動きを引き起こす。この動きは、ショックアブソーバ組立体51及び第1連結棒41の部分41bによって、車輪13''及びその支持部材31''に伝達され、それにより、スリーブ37''が操舵軸線35''周りで回転する。支持部材31''の回転は、ブラケット75''、第2連結棒71及びブラケット75'によって、スリーブ37'に伝達される。その結果、後者が、その操舵軸線35'周りで回転し、支持部材31'及び車輪13'の前記操舵軸線35'周りの回転を引き起こす。
【0064】
実質的に、操舵運動は、両方とも操舵棒として機能する第一連結棒41と第二連結棒71との互いに組み合わされた作用によって、二つの車輪13',13''に伝達される。
【0065】
不図示の他の実施形態では、二つの接合要素44を用いて三つの部分に分割され得る。前記二つの接合要素44の一方は、車輪13'とショックアブソーバ組立体51の第一連結棒41への接続点との間に配置され、他方は、ショックアブソーバ組立体51の第一連結棒41への接続点と車輪13''との間に配置される。操舵柱5の運動の別の伝達要素は、操舵柱5を第二連結棒71に接続する。この場合、第二連結棒71は、車輪13',13''の上下方向の動きの影響を受けない単独の操舵棒として機能する。第一連結棒41は、車輪13',13''の支持部材31',31''を中央ショックアブソーバ組立体51に接続し、ショックアブソーバ組立体51によって、二つの車輪13',13''の上下方向の動きを減衰させることができる。
【0066】
従って、この場合、第二連結棒71は、操舵棒として機能し、第一連結棒41は、車輪13',13''の上下運動をショックアブソーバ組立体51へ伝達する伝達要素として機能する。
【0067】
有利には、第2連結棒71には、公知のタイプの、一対の前輪のトーインを調整するための手段が設けられ得る。加えて、第一連結棒は、傾斜を可能にするヒンジ間の距離が正しいことを保証するために、即ち、四節リンクの水平要素(ロッカーアーム)上で測定された対応する傾斜ヒンジ間の距離に等しいことを保証するために、制御される車輪の側部にのみ調整手段を備えることができる。
【0068】
上述した前輪部1には、傾動運動をブロックするための公知のタイプの装置が設けられ得る。この装置は、前輪部1が搭載されている車両が、例えば、信号待ちなどで停止しているときや、低速で走行しているときに、傾動運動(実質的には四節リンクの運動)をブロックするのに特に有用である。このように傾斜動作をブロックすることで、停車中であっても、運転者が足を地面につけて車両を支える必要がなく、車両は安定して垂直姿勢を保つことができる。実際には、車両が停止しているか、あるいは任意に非常にゆっくりと走行している場合、傾斜動作をブロックするための装置が挿入されていると、傾斜動作を行うことはできないが、ショックアブソーバ組立体の圧縮及び伸長を伴う沈み込み動作、即ち、ピッチ動作は、代わりにまだ可能である。高速で動いている場合、傾斜運動をブロックするための装置を停止すると、車両は二輪車のように動作する。
【0069】
特に有利な実施形態では、本明細書に記載の前輪部は、四節リンク17の動きをブロックするが、ショックアブソーバ組立体51の動作をブロックしない、傾動運動をブロックするための装置を有することができる。図4は、符号81で示される、傾動運動をブロックするための装置が設けられた、図1と同様の前輪部1の実施形態を示している。図1のものと同じ又は同等の要素、部品又はコンポーネントには、同じ参照番号を付し、再度説明はしない。
【0070】
傾動運動81をブロックための装置は、WO2017/115296に開示されているように構成することができ、その内容は本明細書に完全に組み込まれる。実際には、傾斜運動をブロックするための装置81は、第一連結棒41及びショックアブソーバ組立体51の相互ブロック部材を備え、この部材は、(作動時に)ショックアブソーバ組立体51と第一連結棒41との間の軸線55周りの相対回転運動を阻止する。これにより、四節リンク17を形成する要素の相互回転が不可能になり、従って、傾斜運動が防止される。
【0071】
しかしながら、図4から明らかなように、傾動運動をブロックするための装置81が作動しても、ショックアブソーバ組立体51は、以前として、ピッチ運動、即ち、沈み込み運動を行うことができる。これにより、傾斜動作がブロックされた状態では、低速であっても車両の運転が容易になる。特に、ショックアブソーバ組立体51は、車両が停止しているか、ほぼ停止している状態であっても、沈み込み動作(ショックアブソーバ組立体51の圧縮)を可能にする。
【0072】
また、傾動動作をブロックする装置81は、図3に例示したタイプの構成でも適用され得る。この実施形態は、図5に示されており、先の実施形態と同じ要素、部品、構成要素には、同じ符号を付す。
【0073】
図6図19の実施形態
図6図19は、スクータの形態をした三輪オートバイの実用的な実施形態を示しており、この三輪オートバイは、図4に示された運動学的機構に従って設計された操舵装置を備えている。図4に既に図示されている部品又は要素に対応する構成要素には同じ番号を付す。
【0074】
図6図9は、100で示されたモーターサイクルの全体を示している。本明細書に関連する運動機構を示すために、ボディパーツは省略されている。符号102は、オートバイ100のサドルを模式的に示している。符号1は、前輪部を示し、符号2は、オートバイ100の後部を示す。後部は、模式的に示されており、任意の適切な形態をとることができる。前記後部は、不図示のエンジンによって動作される後部駆動輪103を支持する。駆動輪103は、一般的かつ模式的に符号105で示されるショックアブソーバ組立体と関連付けることができ、全体として符号109で示されるオートバイ100のフレームにヒンジ接続された、模式的に符号107で示されるフォークによって支持され得る。フレーム109は、前輪部フレーム111を備え、この前輪部フレーム111には、図4の運動学的な図を具現化する運動学的操舵機構15が後述する方法で接続されている。より具体的には、前輪部フレーム111は、ハンドルバー、即ち、操舵バー7と一体の操舵柱5が回転する操舵縦管3を備えている。操舵柱5は、ハンドルバー7を用いた運転者の操作により、A-A軸線の周りに回転可能である。
【0075】
第一前側操舵輪13'及び第二前側操舵輪13''は、前輪部1に関連付けられている。図1図5の運動力学的な図の先の説明と同様に、前輪部1の中心線平面Mに対して対称な構成要素、組立体、又は要素には、同じ符号の後に、中心線平面Mの一方の側の要素、例えば、運転者の左側の要素には一つのアポストロフィ「'」を付け、中心線平面Mの他方の側の要素、例えば、運転者の右側の要素には二つのアポストロフィ「''」を付けて示す。
【0076】
符号15は、前側操舵輪13',13''が同期して操舵動作と傾動動作を行うことができるようにする運動学的操舵機構を全体として示している。
【0077】
運動学的操舵機構15は、互いに実質的に平行な第一上側クロス部材19及び第二下側クロス部材21を有する四節リンク17を備えている。二つのクロス部材19,21は、それぞれの中間位置ヒンジによって、符号19A,21Aで示す位置で、前輪部フレーム111にヒンジ結合されている。さらに、四節リンク17は、前輪部1の両側にある二つの垂直部23',23''を備えている。前記垂直部は、特に図12図17で見ることができる。符号25',27'及び25'',27''は、前輪部1の両側に設けられたヒンジを示しており、これらのヒンジによって垂直部23',23''がクロス部材19,21にヒンジ結合される。ヒンジ25',25''及び27',27''は、クロス部材19,21及び垂直部23',23''の相互の回転軸線を規定しており、前記回転軸線は、前輪部フレーム111に対するクロス部材19,21の回転軸線19B,21Bに平行である。
【0078】
図示された実施形態では、四節リンク17は、ほぼ二つの車輪13',13''の高さに配置されており、即ち、車両の二つの前側操舵輪の間に配置されている。
【0079】
運動学的操舵機構15は、四節リンク17の他に、車輪13',13''をそれぞれ回転可能に支持する一対の支持部材31',31''を備えている。各支持部材31',31''は、それぞれの車輪13',13''のジャーナル33',33''及びその他の機械部品、例えば、ブレーキ32',32''を支持する。図6図20の実施形態では、支持部材31',31''は、部分的な環状体の形態で作られており、即ち、360°未満の範囲で延びており、車輪のジャーナル33',33''をそれぞれの部分的な環状体に結合する二つのスポーク34を有している。
【0080】
車輪13',13''の各支持部材31',31''は、各操舵軸線35',35''を中心に回転できるように、四節リンク17の各垂直部23',23''に接続されている。各操舵軸線35',35''は、各垂直部23',23''の長手方向の軸線(図35も参照)、即ち、垂直部23',23''の長手方向と平行に延びる軸線と一致する。垂直部23',23''と支持部材31',31''との間の相互回転は、例えば、垂直部23',23''周りに取り付けられ、各支持部材31',31''が接続されるスリーブ37',37''によって得ることができ、支持部材31',31''とスリーブ37',37''との間の相対的な移動を可能にすることによって、車輪の上下の動きを可能にすることができる。
【0081】
垂直部23',23''及びスリーブ37',37''の実施形態が、図33図36に詳細に示されている。これらの図では、垂直部及びスリーブを符号23,37で示す。各垂直部23は、ねじ26によって互いに結合可能な二つの部分23A,23Bを備えている。各部分23A,23Bは、それぞれのヒンジ25,27の一部を構成するフォークボディを備えている。二つの部分23A,23Bは、二つの部分23A,23Bの間の相対的な角度位置を画定する歯付きプロファイル23Cで結合されている。
【0082】
図33図35に示すように、各スリーブ37',37''は、特に図11図13図16図18及び図19で見える二つのロッカーアーム52の関節のためのヒンジ40A,40Bを形成する拡張部38A,38Bを有し、それらは、支持部材31',31''の一部を形成し、即ち、各スリーブ37',37''への接続を提供する。ロッカーアーム52は、符号40A,40Bで示す位置で、拡張部38A,38Bにヒンジ結合され、符号40C,40Dで示す位置で、各支持部材31',31''の本体にヒンジ結合されている。実際には、関連するロッカーアーム52を含む各支持部材31',31''は、各スリーブ37',37''とともに、サスペンション四節リンクを形成しており、その機能は、図4の運動学的な図において軸線39',39''を具現化するヒンジの機能と同じである。実際には、車輪13',13''の各支持部材31',31''のロッカーアーム52によって、当該車輪の上下方向の移動が可能になる。図1図5の簡略化された運動学的な図では、支持部材31',31''の上下方向の動きは、軸線39',39''周りの回転運動として表されているが、図6図19の実施形態では、支持部材31',31''の動きは、スリーブ37に接続するための各ヒンジ40A,40B周りのロッカーアーム52の回転によって得られる回転並進運動である。後者は、各々、実際には、各支持部材31',31''のバネ軸線を形成する平行な軸線を画定する。
【0083】
ロッカーアーム52がヒンジ40A,40Bを中心に揺動すると、車両100が中立位置(即ち、傾斜による傾きのない垂直な状態)にあるときに、支持部材31',31''が垂直位置にあるような平面で移動する。ヒンジ40A,40Bを中心とした二つの支持部材31',31''の同時の回転並進運動により、車両100のピッチ移動が行われる。支持部材31',31''の回転並進運動は、車輪の上下運動に対応しており、左輪と右輪とで異なっていてもよい。
【0084】
運動学的操舵機構15は、車輪13',13''の支持部材31',31''及び四節リンク17の他に、両端が第一支持部材31'及び第二支持部材31''にそれぞれ連結された第一連結棒41を備えている。図6図19の実施形態では、図4と同様に、第一連結棒41は、操舵棒として機能し、操舵軸線35',35''周りの操舵動作を車輪13',13''に伝達する。第一連結棒41の各端部(図1図5では符号42'、42''が付されているが、以降の図では付されていない)は、符号43'、43''で示される二つの自由度を有する各機構によって、各支持部材31',31''に接続されている。これらの二つの自由度により、支持部材31',31''と第一連結棒41との間で、互いに直交し、かつ第一連結棒41の長手方向に直交する二つの軸線を中心とした相互の回転が可能となる。第一軸線は、特に図10図11及び図15において符号47',47''で示され、第二軸線は符号49',49''で示されている(図10及び図11)。
【0085】
軸線47',47''及び49',49''を中心とした動きにより、車輪13',13''が操舵回転及び傾動運動を行う際に、第一連結棒41及び車輪13',13''の支持部材31',31''が互いに動くことが可能になる。
【0086】
特に図15の断面に見られるように、この実施形態では、第一連結棒41は、三つの部分、より正確には、中間部材、即ち、中央部材又は部分45と、二つの端部部材又は部分46',46''とで構成されている。端部部材46',46''は、ラジアル軸受48',48''によって中央部材45に接合されている。このようにして、第一連結棒41の各端部機構43',43''は、中央部材45に対してさらなる自由度を有し、即ち、第一連結棒41の長手方向と一致する軸線周りで回転することができる。これにより、運動学的操舵機構15を形成する部材の構造におけるあらゆる寸法公差を補償することができる。しかしながら、第一連結棒41の長さは、それが形成されている部材45,46'及び46''のいずれもが互いにスライドできないため、固定されている。
【0087】
第一連結棒41は、その長手方向の中間位置において、全体を符号51で示したショックアブソーバ組立体を介在させることによって、操舵柱5に接続されている。図6図19の実施形態では、操舵柱と第一連結棒との間の接続は、中央部材、即ち、中間部材45によって行われる。
【0088】
ショックアブソーバ組立体51は、二つの自由度を有する機構によって第一連結棒41に接続されており、この機構によって、第一連結棒41、より正確には、その端部、及びショックアブソーバ組立体51が、第一連結棒41の長手方向に平行な第一回転軸線周り、及び、第一連結棒41の長手方向に直交し、前輪部1の中心線平面M上にある第二回転軸線55周りで、相互に回転することができるようになる。軸線55は、特に図12図15に示されている。二つの自由度のうちの第一の自由度は、実際には、軸受48'、48''によって提供される。軸線55を中心とした自由度により、第一連結棒41が、互いに異なる二つの車輪13',13''の上下方向の動きに追従することができるようになる。第一連結棒41に平行な軸線周りの自由度により、ショックアブソーバ組立体51の収縮に起因する沈み込み動作、即ち、垂直部23',23''に対する車輪13',13''の上下運動において、ショックアブソーバ組立体51が第一連結棒41に対して、より正確にはその部材46',46''に対して回転することが可能になる。
【0089】
ショックアブソーバ組立体51は、第一連結棒41に対して反対側の端部では、全体を57で示す機構によって操舵柱5に連結されている。この機構57は、ショックアブソーバ組立体51と操舵柱5が、ショックアブソーバ組立体51の長手方向に平行な第一回転軸線59(図11図17参照)周り、及び前輪部フレーム111が中立位置にあるとき、即ち車輪13',13''の回転軸線が水平で傾斜角がゼロのときに、第一回転軸線59に直交し、実質的に水平な第二回転軸線61周りで、相互に回転運動を行うことを可能にする。
【0090】
さらに、機構57は、操舵柱5の一端5Aとの剛体接続部63を備えている。
【0091】
符号81は、公知であり記載されていない、傾動運動をブロックするための装置を示す。図4の実施形態を参照して示されているように、実際には、装置81は、第一連結棒41及びショックアブソーバ組立体51の相互ブロック部材を備え、このブロック部材は、作動したときに、ショックアブソーバ組立体51と第一連結棒41との間の軸線55周りの相対的な回転を阻止する。これにより、四節リンク17を形成する要素の相互回転が不可能になり、従って、車両100の傾斜運動が阻止される。しかしながら、傾動運動をブロックするための装置81が作動しても、ショックアブソーバ組立体51は、依然としてピッチ運動、即ち、沈み込み運動を実行することができる。
【0092】
図20図32の実施形態
図20図32は、スクータ型三輪オートバイの実用的な実施形態を示しており、この三輪オートバイは、図5に示された運動学的機構に従った操舵装置を備えている。図20図32の実施形態の構成要素の大部分は、図6図19の実施形態の構成要素に対応しており、再度の説明は省略する。同一又は同等の構成要素には、上述した図6図19で使用した符号と同じ符号を付す。
【0093】
図5の簡略化された図を参照して説明したものと同様に、図20図32の実施形態は、長さが可変の第一連結棒41と、第二連結棒71とを備え、第二連結棒71は、車輪13',13''の二つの支持部材31',31''の一方から他方へ操舵動作を伝達する。図20図32(特に図30参照)に示された実施形態では、第二連結棒71は二つの部材又は部分で構成されており、これらの部材又は部分は、第二連結棒71の長手方向に平行な軸線周りで互いに回転することができるが、長さは可変ではない。
【0094】
図20図32の実施形態では、特に図29の断面に見られるように、第一連結棒41は、互いに連結された三つの部分からなる。より正確には、第一連結棒41は、中央、即ち、中間部材45と、二つの端部部座46',46''とから構成されている。端部部材46'は、軸受48'によって中間部材45に接続されており、軸受48'は、中間部材、即ち、中央部材45と端部部材46'との間の相互回転を許容するが、相互スライドを許容しない。その逆に、図6図19の実施形態の場合とは逆に、中央、即ち、中間部材45と端部部材46''との間の接続は、第一連結棒41の矢印f44(図29)に従って長さの変化を可能にする接合要素44を介して得られる。第一連結棒41の長さの可変機能は、図2及び図3に関連して上述したとおりである。実質的に、数ミリ又は数センチに制限することができるこの可変伸長及び収縮により、得られる運動機構は、支持部材31'、31''の第一連結棒41への接続点間の距離が一定であるという制約によってもはや影響を受けない。また、二つの車輪13',13''の上下動が異なる場合には、図2に概略的に示すように、ロッカーアーム52によって保証されたそのスリーブ37に対する支持部材31',31''の回転並進運動が、二つの支持部材31',31''のうちの他方の支持部材31',31''によって支持された車輪13',13''に望まない操舵運動を伝達しないように、第一連結棒41が矢印f44に従って伸縮することができる。
【0095】
しかしながら、図3及び図5を参照して説明したように、接合要素44によって導入される自由度によって、ハンドルバー7で制御される操舵運動が、第一連結棒41によって両方の車輪13',13''に伝達されないことが保証される。特に、図20図32の構成では、操舵運動は、中央ショックアブソーバ組立体51及び第一連結棒41の部材46'を用いて車輪13'に伝達されるが、第一連結棒41の中央部材45と端部部材46''との間に介在する接合要素44により、車輪13''には伝達されない。
【0096】
従って、図20図32の前輪部1は、第一連結棒41に実質的に平行な第二連結棒71を備えている。説明した実施形態では、第一及び第二連結棒41,71は、図3及び図5に模式的に示されている構成とは逆に、四節リンク17がある平面に対して同じ側に配置されている。
【0097】
第二連結棒71は、ヒンジ73',73''及びブラケット75',75''によって、スリーブ37',37''に接合されている。なお、スリーブ37は、図6図19においてもブラケット75が設けられているように示されているが、この場合には機能を有していない。
【0098】
ヒンジ73',73''は、操舵軸線35',35''に平行な軸線周りで、第二連結棒71及びブラケット75',75''間の相互回転を可能にする。ブラケット75',75''は、スリーブ37',37''に固く連結されており、それと一体的に動くようにされている。
【0099】
図3及び図5に関連して既に説明したように、図20図32に示した構成では、ハンドルバー7から車輪13'への操舵動作は、第二操舵棒71によって以下のように伝達される。操舵柱5が回転することにより、ショックアブソーバ組立体51が、操舵柱5の軸線A-Aを中心とする円周の円弧に沿って移動する。この移動は、ショックアブソーバ組立体51及び第一連結棒41の部分46'によって、車輪13'及びその支持部材31''に伝達される。これにより、スリーブ37'は、操舵軸線35'周りで回転する。支持部材31'の回転は、ブラケット75'、第二連結棒71及びブラケット75''によって、スリーブ37''に伝達される。その結果、スリーブ37''がその操舵軸線35''を中心に回転し、支持部材31''及び車輪13''の前記操舵軸線35''を中心とした回転を引き起こす。
【0100】
本発明を様々な具体的な実施形態の観点から説明してきたが、特許請求の範囲の概念及び範囲から逸脱することなく、様々な修正、変更及び省略が可能であることは、当業者には明らかである。
図1
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