(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20220606BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20220606BHJP
E06B 1/52 20060101ALI20220606BHJP
E06B 1/56 20060101ALI20220606BHJP
E06B 1/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
E06B5/00 E
E04B2/74 561A
E06B1/52
E06B1/56 Z
E06B1/02
(21)【出願番号】P 2017237949
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】松山 仙治
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝義
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138426(JP,A)
【文献】特開平08-100474(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079487(JP,U)
【文献】特開2016-037750(JP,A)
【文献】特開平09-053373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04B 2/74
E06B 1/02
E06B 1/52
E06B 1/56-1/60
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐震性の吊天井構造体とフロア構造体との間に、複数の支柱を所定間隔で立設し、該支柱間にパネル板を装着してパネル構造体を構築するとともに、所定の支柱間にドアパネルを支持するドア枠を配置してドア構造体を構築してなる高耐震性間仕切装置において、地震時に支柱がロッキングした際に、該支柱に対してドア枠を構成する縦ドア枠を、上方変位可能に係止するとともに、前記縦ドア枠の下端部をフロア構造体に直接または間接固定され案内部を設けた保持金具に、上下スライド可能に嵌合し、前記支柱がロッキングし該縦ドア枠の下端が前記保持金具より上に持ち上がっても、両縦ドア枠の下端が前記案内部に案内されることで、ドア構造体を初期位置に復帰させるようにし
、前記ドア枠の縦ドア枠が前記保持金具に外嵌され、かつ該保持金具の嵌合高さが前記縦ドア枠を支柱に係止するフックの係止部における係止深さより低い、高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置。
【請求項2】
前記保持金具が、前記案内部として、前記支柱側の上端部に傾斜部を設け、前記縦ドア枠の下端を該傾斜部で摺動案内する
請求項1記載の高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置に関わり、更に詳しくは地震時に大きな層間変位が生じてもドア枠のせり上がりを防止するドア枠取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、オフィスビル等は、複数のスラブで各階が形成され、上スラブの下面側には吊り天井構造体が構築され、下スラブの上面側にはフロア構造体が構築され、構造壁で囲まれた空間を間仕切装置で適宜に区画されている。通常、吊り天井構造体は、上スラブから垂下した吊支部材(吊りボルト)によって、縦横に張り巡らした天井支持レールを吊下げ状に保持し、該天井支持レールに天井パネルの周囲を係止する構造である。このような吊り天井構造体を有する室内に天井パネルからフロア構造体にわたって、間仕切パネルやドアパネルを組み合わせた間仕切装置を設置する。従来、吊り天井構造体に対する耐震基準はなかったが、東日本大震災によって多くの吊り天井構造体が落下し、破損したことを受けて天井の耐震性を高める機運が高まってきた。このような間仕切装置においても、層間変形角が1/60~1/40、震度7、天井面加速度が22Gに耐えることが必要と考えられる。
【0003】
一般に、間仕切装置は、吊天井構造体の下面に取り付けた天レールとフロア構造体の上面に取り付けた地レールとの間に、複数の支柱を所定間隔毎に立設するとともに、支柱間にそれぞれパネル板を装着して複数の支柱とパネル板が一連化したパネル構造体を形成するとともに、適所の支柱間にドアを設ける。その中でも特に、地震時の層間変位への対策として、特許文献1のように、ドア枠を支柱に対して上方変位可能に係止し、地震時に支柱がロッキングした際に、ドア枠およびドアパネルからなるドア構造体が一方の支柱の係止部を支点として反対側に持ち上げ力が作用し、支柱に対してドア枠を構成する一方の縦ドア枠が上動するが、支柱が垂直に戻ると、上動した縦ドア枠も元の係止状態に戻るようにした高耐震性間仕切装置におけるドア装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載のものは、前記縦ドア枠の下端部は、フロア構造体に設置した保持金具に上下スライド可能に嵌合して保持し、地震時にロッキングが生じた際に、支柱の傾斜につれて、一方の前記保持金具に対して前記縦ドア枠が上動し、支柱が垂直状態に戻る際に、前記保持金具に対して縦ドア枠が下動して元の嵌合状態に復帰するようにしている。しかし、前記特許文献1のように、地震時の層間変位を考慮したドア装置であっても、想定以上の地震が発生したときに、前記支柱に対する縦ドア枠の上動が大きくなり過ぎ、支柱に縦ドア枠は係止された状態ではあるが、該縦ドア枠の下端が保持金具よりも高い位置まで上動する場合があり、その状態から支柱が垂直状態に戻っても前記縦ドア枠の下端が保持金具の上端に乗り上げた状態になる。この前記縦ドア枠の下端が保持金具の上端に乗り上げて元の係止状態に復帰してない状態から前記支柱が逆向きに傾斜した場合、この乗り上げ部を支点として、ドア構造体の反対側が更に上動し、反対側の縦ドア枠の支柱に対する係止が外れてしまう事態が発生することが予測される。
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高耐震性間仕切装置におけるドア枠およびその取付装置において、大きな地震時の層間変位でドア枠がせりあがっても保持金具の上に乗り上げないようにした、高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題の解決のために、以下に示す高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置を構成する。
【0008】
(1)
耐震性の吊天井構造体とフロア構造体との間に、複数の支柱を所定間隔で立設し、該支柱間にパネル板を装着してパネル構造体を構築するとともに、所定の支柱間にドアパネルを支持するドア枠を配置してドア構造体を構築してなる高耐震性間仕切装置において、地震時に支柱がロッキングした際に、該支柱に対してドア枠を構成する縦ドア枠を、上方変位可能に係止するとともに、前記縦ドア枠の下端部をフロア構造体に直接または間接固定され案内部を設けた保持金具に、上下スライド可能に嵌合し、前記支柱がロッキングし該縦ドア枠の下端が前記保持金具より上に持ち上がっても、両縦ドア枠の下端が前記案内部に案内されることで、ドア構造体を初期位置に復帰させるようにし、前記ドア枠の縦ドア枠が前記保持金具に外嵌され、かつ該保持金具の嵌合高さが前記縦ドア枠を支柱に係止するフックの係止部における係止深さより低い、高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置。
【0009】
(2)
前記保持金具が、前記案内部として、前記支柱側の上端部に傾斜部を設け、前記縦ドア枠の下端を該傾斜部で摺動案内する(1)記載の高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置。
【発明の効果】
【0010】
以上にしてなる本発明の高耐震性間仕切装置におけるドア枠取付装置は、以下に示す効果を奏する。
【0011】
(1)の構成によれば、耐震性の吊天井構造体とフロア構造体との間に、複数の支柱を所定間隔で立設し、該支柱間にパネル板を装着してパネル構造体を構築するとともに、所定の支柱間にドアパネルを支持するドア枠を配置してドア構造体を構築してなる高耐震性間仕切装置において、地震時に支柱がロッキングした際に、該支柱に対してドア枠を構成する縦ドア枠を、上方変位可能に係止するとともに、前記縦ドア枠の下端部をフロア構造体に直接または間接固定され案内部を設けた保持金具に、上下スライド可能に嵌合し、前記支柱がロッキングし該縦ドア枠の下端が前記保持金具より上に持ち上がっても、両縦ドア枠の下端が前記案内部に案内されることで、ドア構造体を初期位置に復帰させるようにしたことにより、大きな地震時の層間変位で支柱が大きく傾斜し、ドア枠の縦ドア枠の下端が保持金具より上に持ち上がっても、反対側への傾斜時に、ドア枠が保持金具の案内部で案内されて初期位置に復帰することで、ドア構造体も初期位置に復帰させることができ、もってドア枠の累積的なせり上がりを防止でき、支柱からの脱落を防止できる。また、前記ドア枠の縦ドア枠が前記保持金具に外嵌され、かつ該保持金具の嵌合高さが前記縦ドア枠を支柱に係止するフックの係止部における係止深さより低いことで、ドア枠の縦ドア枠をフックに係止させるのと同時に、縦ドア枠を保持金具にスムーズに外嵌させることができ、施工性に優れる。
【0012】
(2)の構成によれば、前記保持金具が、前記案内部として、前記支柱側の上端部に傾斜部を設けることで、支柱がロッキングして、前記縦ドア枠の下端が前記保持金具より上位に持ちあがった後、元の嵌合状態に復帰すべく前記縦ドア枠の下端を該傾斜部で摺動案内することで、ドア枠の縦ドア枠の下端が保持金具よりも上に持ち上がった状態から下動する際に、乗り上げることなく縦ドア枠の下端部が保持金具に嵌合するようになり、地震が治まった際にドア構造体が初期位置に復帰させることができ、もってドアパネルをスムーズに開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のドア枠取付装置を適用した耐震性間仕切装置を示す部分正面図である。
【
図2】本発明のドア枠取付装置を適用したドア装置の概略斜視図である。
【
図3】同じく支柱とドア枠の関係を示す分解正面図である。
【
図4】同じく支柱とドア枠の関係を示す分解斜視図である。
【
図5】同じく支柱と左側の縦ドア枠の関係を示す分解斜視図である。
【
図6】保持金具の(a)は横断平面図、(b)は斜視図である。
【
図7】支柱に左側の縦ドア枠を係止する状態を示す分解斜視図である。
【
図8】同じく支柱に左側の縦ドア枠を係止する状態を示し、(a)は縦断正面図、(b)は横断平面図である。
【
図9】同じく支柱に左側の縦ドア枠が係止された状態を示し、(a)は縦断正面図、(b)は横断平面図である。
【
図10】ドア枠の上位に欄間パネルを取付ける構造を示す縦断側面図である。
【
図11】連接されたパネル構造体及びドア構造体の横断平面図である。
【
図12】ドア枠の両縦ドア枠と保持金具の初期位置を示す拡大正面図である。
【
図13】支柱ロッキング時のドア枠の状態を示し、(a)はロッキング直後、(b)ロッキング後初期位置への復帰途中、(c)復帰後を示す拡大正面図である。
【
図14】
図1の状態から面内方向左側への層間変位が乗じた場合の耐震性間仕切装置の変化を示す部分正面図である。
【
図15】
図1の状態から面内方向右側への層間変位が乗じた場合の耐震性間仕切装置の変化を示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
図1は本発明のドア枠取付装置50を適用した耐震性間仕切装置を示し、
図2~
図12は本発明の詳細を示す。図中符号1はパネル構造体、2はドア構造体、3は天レール、4は地レール、5は支柱、6はパネル板、7はドア枠、8はドアパネル、9は欄間パネルをそれぞれ示している。
【0015】
本発明に係る耐震性間仕切装置に係るドア枠取付装置50は、連接されたパネル構造体1とドア構造体2よりなる耐震性間仕切装置における、ドア枠7を取り付けるための装置であって、
図1に示すように、図示しない耐震性の吊天井構造体の下面に取り付けた天レール3と、図示しないフロア構造体に敷設した地レール4との間に、複数の支柱5,…を所定の間隔で立設し、該支柱5,5間にパネル板6を装着して、パネル構造体1を構築するとともに、所定の支柱5,5間に主ドアパネル8A及び副ドアパネル8Bを支持するドア枠7を配置してドア構造体2を構築し、該ドア枠7を地レール4に配置した保持金具13およびその取付用のネジ63からなるドア枠取付装置50を構築してなるものである。本発明のドア枠取付装置50は、地震時に前記支柱5がロッキングしても前記ドア枠7が前記保持金具13に乗り上げないようにしたことを特徴としている。
【0016】
ここで、前記パネル構造体1には、ロッキング仕様とスライド仕様とがある。ロッキング仕様のパネル構造体1は、前記支柱5,5間を少なくとも横桟で一定間隔となるように連結するとともに、該支柱5の上端部は前記天レール3、該支柱5の下端部は前記地レール4の変位に追従可能とし、前記支柱5,5間にパネル板6を上方変位可能に係止具で係止し、上下スラブの層間変位に対して面内でロッキング変位可能としたものである。ここで、「ロッキング」とは、複数の支柱5,…が平行に保って左右に傾斜し、それに応じてパネル板6,…も左右に傾斜する動作を示している。本発明はこのロッキング仕様を前提としている。
【0017】
因みに、スライド仕様のパネル構造体1は、前記支柱5の下端部に地レール4に沿った方向への移動を許容するスライド手段を設けるとともに、前記支柱5,5間を複数の補強部材(図示せず)で連結して剛性構造のフレームを構成し、前記支柱5,5間にパネル板6を装着し、上下スラブの層間変位又は平行変位に対して面内で天レール3と地レール4に対してスライド変位可能としたものである。ここで、「スライド」とは、天レールと地レールで案内されてその長手方向に移動することを意味する。
【0018】
ここで、地震により建物の上スラブと下スラブに層間変位が生じると、壁面やコーナー支柱や適宜間隔で設けた補強用の支柱は左右に傾斜する。層間変形角を最大の1/40とすれば、階高さ(スラブ間隔)が4200mmの場合、層間変位は105mmとなり、スラブに追従して運動する耐震性の吊り天井構造体の変位も105mmとなる。つまり、標準的な天井高さ2800mmの天井が床面に対して片側105mm変位することを意味している。
【0019】
更に詳しくは、前記高耐震性間仕切装置は、前記天レール3に対向して前記ドア構造体2を設ける位置を除き前記地レール4が敷設され、前記天レール3と地レール4間に所定間隔で支柱が立設され、この支柱5,…を利用してパネル板6,…を表裏両面に係止具10,…で係止してパネル構造体1を構築する。前記パネル板6は、図示しないがガラス板を枠体で保持されたガラスパネルであっても良い。
【0020】
そして、前記ドア枠7は、
図1から
図4に示すように、両側の縦ドア枠11,11の上端間に上ドア枠12を連結した正面視倒コ字形の形状である。前記縦ドア枠11は、前記支柱5に外嵌するチャンネル形状であり、前記支柱5の略半分を凹溝内に受け入れた状態で、前記両縦ドア枠11,11の下端を、フロア構造体に直接固定した保持金具13に、あるいはフロア構造体に間接固定、たとえばフロア構造体に敷設した地レール4の端部に連結した保持金具13に、上下スライド可能に嵌挿する。更に、前記支柱5の上下複数個所に上向きフック16を備えた係止部材14を固定するとともに、前記縦ドア枠11,11に該係止部材14の上向きフック16を下方から受け入れる係合孔18を備えた受け部材17を固定してなり、前記係止部材14の上向きフック16に前記受け部材17の係合孔18が係合した状態で該縦ドア枠11の上方への変位のみを許容し、水平変位を規制してなる係合構造である。
【0021】
前記支柱5は、
図5及び
図7に示すように、断面略C字形の汎用品であり、前後の面板19,19及び側面板21よりなり、該側面板21の反対側は解放されて凹溝22が形成されている。該側面板21には複数の係止部材固定ネジ穴5Aが二列に上下方向に一定間隔で形成してあり、前記係止部材14が係止部材固定ネジ20で固定される。本実施形態では、ドア構造体2の両支柱ともに該側面板21の外側が向い合せに配置している。なお、該支柱5は断面略ロ字状、つまり四角筒状のものにすることも可能である。
【0022】
前記受け部材17は、
図5及び
図7~
図9に示すように、断面コ字形の支持台24の上下に前記縦ドア枠11の内部にスポット溶接するための固定板25,25を折曲形成し、前記支持台24の平行な上面26と下面27にそれぞれ前記上向きフックを受け入れる前記係合孔18,18を平行に形成している。
【0023】
前記縦ドア枠11は、前記支柱5の断面寸法よりも大きく、該支柱5の略半分を嵌合状態で受け入れることが可能な一側に開放した内部空間28を有するとともに、解放側の両端縁を対向する内側に折曲形成した縁板29,29を有し、外側面の前後一側端に沿って戸当たり用の突台30を全長に形成したものである。左右の縦ドア枠11,11は対称形となっている。また、上ドア枠12の両端は、前記縦ドア枠11,11の上端にネジで連結できるようになっている。
【0024】
そして、両側の支柱5,5にそれぞれ上下所定位置に複数の係止部材14をネジ止めした状態で、該支柱5の下端に装着したアジャスター31を前記地レール4の上向き開放の凹溝内に立設するとともに、上端部を下向き開放の前記天レール3に嵌合する。
【0025】
そして
図3及び
図8に示すように、支柱5に取付けた前記係止部材14の上向きフック16,16に、前記縦ドア枠11に固定した受け部材17の下面27の係合孔18,18から落とし込み係合させ、上面26の係合孔18,18も同時に係合させると同時に、下端を前記保持金具13に上下スライド可能に外嵌する。この状態で、前記支柱5の略半分が縦ドア枠11の内部空間28に収納され、前記保持金具13は完全に内部空間28内に隠れる。なお、本実施形態では、前記縦ドア枠11の下端部に上向きフック16,16の係合には使用しない受け部材17を固定しておき、前記支柱5へ装着した際に、該受け部材17の下面27を前記保持金具13に当止めするようにしている。
【0026】
ここで、前記係止部材14の上向きフック16の係合深さは、支柱5が大きく傾斜しても受け部材17の下面27に形成した係合孔18から抜けないように設定し、本実施形態では上向きフック16の上下寸法を60mmとしている。
【0027】
前記保持金具13は、前記ドア枠11と同じく正面視倒コ字形の形状であり、金具外側面板60,60、及び金具内側面板61,61よりなり、該金具内側面板61,61により保持溝62が形成されている。該保持溝62に前記地レール4を迎え入れ、ネジ63,63で固定する。該金具外側面板60,60の支柱側上端部には、ドア枠11を案内する案内部として傾斜部64,64が形成されている。該傾斜部64は、例えば金具外側面板60,60を切り欠くことで、あるいは、金具外側面板60,60をテーパー加工や曲げ加工することで設けられる。
【0028】
地震時、特に長周期の地震振動により生じる層間変位時には、
図12及び
図13に示すように、パネル構造体1及びドア構造体2が大きく左右に変位する。その結果、支柱5がロッキングし、例えば、支柱5及びドア枠7が左方向にフレ角θで傾斜した際、右縦ドア枠11と支柱5が左方向に傾斜し、
図13(a)に示す通り、右ドア枠の下端部が前記保持金具13から外れ、保持金具13より上に持ち上がる可能性がある。しかし、縦ドア枠11が変位し保持金具13より上に持ち上がっても、
図13(b)及び(c)の通り、右縦ドア枠11は保持金具13に設けた傾斜部64により摺動案内されて初期位置へと復帰する。なお、縦ドア枠11を支柱5の係止部材14に係合する関係上、保持金具13の嵌合高さは、係止部材14の上向きフック16による係止深さより、低いことが望ましい。また、たとえば曲げ加工された傾斜部64により、ドア枠11の下端が滑り落ちるようにすることも可能である。
【0029】
それから、
図3~
図5に示すように、両縦ドア枠11の下端部に取付けたヒンジピン33,33と、
図3、
図4及び
図10に示すように、前記上ドア枠12の両端部に取付けたヒンジ受け34,34とに、幅の広い前記主ドアパネル8A及び幅の狭い前記副ドアパネル8Bの戸尻側の上下端に設けたヒンジ受け(図示せず)とヒンジピン35,35を回転可能に係合すると同時に、当該上ドア枠12の両端を前記両縦ドア枠11,11の上端にネジ止め連結する。なお、実施形態では、左側のドアパネルが主ドアパネル8A、右側のドアパネルが副ドアパネル8Bとなっているが、左右が主・副入れ替わっていてもよく、また同じ幅のドアパネルを左右に配置して両開きとすることも可能である。
【0030】
本実施形態のドア構造体2は、ドア枠7の上位に欄間パネル9を取付けているが、その取付構造を
図10に示す。先ず、前記上ドア枠12は、断面形状が前記縦ドア枠11と同一であり、内部空間28が上方に開放して取付けられている。そして、前記上ドア枠12の両縁板29,29の間に所定幅の隙間S1を設けて横桟36を配置し、その両端を両支柱5,5にL金具等を用いて連結している。前記欄間パネル9は、通常のパネル板6と同様な構造を有し、スチール製の表面板37の裏面に石膏ボード等の芯材38を接着し、下端縁には前記上ドア枠12の縁板29と横桟36との隙間S1に挿入する係止片39を折曲形成するとともに、上端縁に上縁板40とその裏側に設けた受け板41とで、前記天レール3の垂下板42の下部を受け入れる上方開放したスリットS2を形成している。更に、前記欄間パネル9の両側には、表面板37を裏側へ折曲し、該表面板37と平行な裏板(図示せず)を形成し、該裏板に係止具10を係止する係合孔(図示せず)を少なくとも上部に形成している。そして、前記支柱5の上部表裏両側の係止孔(図示せず)に係止具10を係止した状態で、前記欄間パネル9を斜め下方から持ち上げて、前記スリットS2に前記天レール3の垂下板42の下部を挿入しながら、前記係止具10の上向きフック片43を図示しない両側上部の係合孔内に受け入れて垂直姿勢とし、それから下方へ下げて前記係止片39を前記スリットS2に落とし込むと同時に、前記係止具10に係止する。
【0031】
このように構成した高耐震性間仕切装置の地震時の挙動を
図14及び
図15に用いて説明する。ここで、ドアを閉じた状態では、主ドアパネル8Aと副ドアパネル8Bとは一体となり、一枚のドアパネル8として振舞い、更にドアパネル8とドア枠7とは一体となって剛体として振舞うとする。以下は、主に支柱5とドア枠7の関係を説明する。先ず、
図14に示すように、支柱5が左側に傾斜した場合、ドア枠7は左側の係止部材14に対する係止部を支点として右側が右側の支柱5に対して持ち上がり、右側の支柱5はその位置で左側に傾斜する。一方、各パネル板6,…は、左側の支柱5に対する係止部を支点として右側が持ち上がり、当該パネル板6の右側は、対応する右側の支柱5に対して持ち上がるが、その程度の持ち上がりは想定内であり、パネル板6を支柱5に保持する係止具10による係止が外れることはない。逆に、
図15に示すように、支柱5が右側へ傾斜した場合、ドア枠7は右側の係止部材14に対する係止部を支点として左側が左側の支柱5に対して持ち上がり、左側の支柱5はその位置で右側に傾斜する。一方、各パネル板6,…は、右側の支柱5に対する係止部を支として左側持ち上がり、当該パネル板6の左側は、対応する左側の支柱5に対して持ち上がるが、その程度の持ち上がりは想定内であり、係止具10による係止が外れることはない。ところが、前記縦ドア枠11に対する保持金具13の嵌合高さが前記縦ドア枠11を支柱5に係止するフック16の係止部における係止深さより低いので、大きな地震による層間変位で、前記支柱5が大きく傾斜して該支柱5に対して一方の縦ドア枠11が持ちあがって、該縦ドア枠11の下端が保持金具13より上になる場合も想定されるが、その状態から逆方向に支柱5が傾く際に、前記保持金具13に設けた傾斜部64によって縦ドア枠11の下端が摺動案内されて、保持金具13に縦ドア枠11の下端の下端部が外嵌した初期状態にスムーズに復帰するのである。
【符号の説明】
【0032】
S1: 隙間
S2: スリット
1 パネル構造体
2 ドア構造体
3 天レール
4 地レール
5 支柱
5A 係止部材固定ネジ穴
6 パネル板
7 ドア枠
8 ドアパネル
8A 主ドアパネル
8B 副ドアパネル
9 欄間パネル
10 係止具
11 縦ドア枠
12 上ドア枠
13 保持金具
14 係止部材
16 フック
17 受け部材
18 係合孔
19 面板
20 係止部材固定ネジ
21 側面板
22 凹溝
24 支持台
25 固定板
26 上面
27 下面
28 内部空間
29 縁板
30 突台
31 アジャスター
33 ヒンジピン
34 ヒンジ受け
35 ヒンジピン
36 横桟
37 表面板
38 芯材
39 係止片
40 上縁板
41 受け板
42 垂下板
43 フック片
50 ドア枠取付装置
60 金具外側面板
61 金具内側面板
62 保持溝
63 ネジ
64 傾斜部
θ フレ角θ