(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】医療用バッグ
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20220606BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20220606BHJP
B65D 33/10 20060101ALI20220606BHJP
B65D 33/14 20060101ALI20220606BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
A61J1/10 333A
A61J1/10 333B
B65D33/25 A
B65D33/10
B65D33/14 Z
B65D33/00 A
(21)【出願番号】P 2018065837
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄太
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/066865(WO,A1)
【文献】特開2016-077431(JP,A)
【文献】特開2011-078737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/10
B65D 33/25
B65D 33/10
B65D 33/14
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状体の収容領域を内部に備えた袋状の医療用バッグにおいて、
互いに重ね合わされた表面側シートと裏面側シートが下辺部分と両側辺部分で固定されて、上方に開口する前記収容領域が該表面側シートと該裏面側シートの重ね合わせ面間に形成されている一方、
該収容領域の開口部分には、該表面側シートと該裏面側シートよりも変形剛性が大きくされた剛性部材が設けられていると共に、
該表面側シートと該裏面側シートの何れか一方の側にのみ、横方から手指を挿し入れる挿入部が、該剛性部材の外側に位置して設けられて
おり、且つ、
該剛性部材が、該挿入部が設けられているシートと同じ側のシートに設けられていることを特徴とする医療用バッグ。
【請求項2】
前記剛性部材がプラスチックファスナーにより構成されており、該プラスチックファスナーの開閉操作により前記収容領域の開口部が開閉されるようになっている請求項
1に記載の医療用バッグ。
【請求項3】
前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシートに対して目盛りが表示されている請求項1
又は2に記載の医療用バッグ。
【請求項4】
前記挿入部が、外面側シートと内面側シートとが互いに固定されることで形成されている請求項1~
3の何れか1項に記載の医療用バッグ。
【請求項5】
前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシート側には、手指で引っ張ることのできる引張タブが設けられている請求項1~
4の何れか1項に記載の医療用バッグ。
【請求項6】
前記引張タブにおいて、バッグ吊下用の係止孔が設けられている請求項
5に記載の医療用バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野で用いられて栄養液や薬液、輸液等の液状体を収容する医療用バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、薬液や輸液などの液状体が用いられるが、そのような液状体の取り扱いに医療用バッグが利用されている。例えば、患者の鼻腔から挿し入れられたチューブを通じて栄養液や薬液を胃等へ投与する経腸栄養法では、所定量の栄養液や薬液を収容しておく栄養剤補給用バッグが利用されている。
【0003】
このような医療用バッグでは、一般に軟質合成樹脂製のシートが袋状に加工されて、液状体の収容領域が内部に形成されており、上方に向かって開口する開口部が設けられている。
【0004】
ところで、医療用バッグを使用する際には、栄養液や薬液などの液状体を開口部から注ぎ入れる作業が行われる。この注入作業は、一般に一人で行われ、一方の手で医療用バッグの開口部を開いた状態に保ちつつ、他方の手で持ったカップを傾けて、カップ内に収容された液状体を医療用バッグへ開口部から注ぎ入れることによって行われる。
【0005】
ところが、医療用バッグの袋本体が軟質の樹脂シートで形成されていることから、開口部から液状体を注ぎ入れる際に開口部を一定に開いた状態に保ち難いという問題があった。
【0006】
なお、このような問題に鑑み、特開2011-78737号公報(特許文献1)には、開口部を構成する2枚の樹脂シートの各外面にシート状の開閉操作部を固定して両樹脂シートの外側にそれぞれ指挿入用の孔を設けることにより、各開閉操作部に挿入した両方の指を互いに遠ざけるように開くことで開口部を開口状態に保持できるようにした構造が提案されている。
【0007】
しかし、かかる特許文献1に記載の構造では、互いに重ね合わされて内部に収容領域を形成する2枚の樹脂シートに対して、それぞれ、開閉操作部の上縁部と下縁部を固着しなければならないために製造が難しいという問題があった。しかも、使用に際しては、表裏をなす2枚の樹脂シートのそれぞれの外面に固定された開閉操作部へ各指を挿し入れなければならないために、操作が面倒で時間もかかる場合があった。また、指を開き続けた状態で液状体が医療用バッグ内に充填されることから、液状体の重量が開いた状態の各指に加わり、充填量が大きくなると、その状態を維持し続けることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題とするところは、開口部を構成する2枚の樹脂シートの各外側にそれぞれ指を挿入するような面倒な操作を不要としつつ、開口部を片手で開口状態に保持することが容易とされる、新規な構造の医療用バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
本発明の第1の態様は、液状体の収容領域を内部に備えた袋状の医療用バッグにおいて、互いに重ね合わされた表面側シートと裏面側シートが下辺部分と両側辺部分で固定されて、上方に開口する前記収容領域が該表面側シートと該裏面側シートの重ね合わせ面間に形成されている一方、該収容領域の開口部分には、該表面側シートと該裏面側シートよりも変形剛性が大きくされた剛性部材が設けられていると共に、該表面側シートと該裏面側シートの何れか一方の側にのみ、横方から手指を挿し入れる挿入部が、該剛性部材の外側に位置して設けられており、且つ、該剛性部材が、該挿入部が設けられているシートと同じ側のシートに設けられていることを、特徴とするものである。
【0012】
本態様の医療用バッグにおいては、剛性部材の外側に位置して挿入部が設けられていることから、表面側及び裏面側シートの一方の側のみに設けられた挿入部へ手指を挿し入れて、剛性部材の外側に手指をあてがうようにして収容領域の開口部分を保持することができる。そして、かかる開口部分では、液状体の収容領域を構成する表面側及び裏面側シートが剛性部材を巧く利用して補強され得ることから、一方の側のシートを手の内面に沿わせるようにして他方の側のシートを開くことで、開口部分を目的とする開口形状に安定して保持することが可能になる。
【0013】
特に本態様では、剛性部材の外側に挿入部が位置していることから、一方の側のシートにおける剛性部材による補強部位の外側に手を重ね合わせることができ、かかる補強部位に対して直接に形状を与えて保持することが可能になる。それ故、開口部分を目的とする開口形状に一層精度良く形付けることができると共に、開口部分をより大きな把持力をもって一層安定して保持することも可能になる。
【0017】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る医療用バッグにおいて、前記剛性部材がプラスチックファスナーにより構成されており、該プラスチックファスナーの開閉操作により前記収容領域の開口部が開閉されるようになっているものである。
【0018】
本態様の医療用バッグによれば、収容領域を開閉可能とするプラスチックファスナーを巧く利用して剛性部材が構成されることから、プラスチックファスナーに加えて剛性部材を別途設ける手間やコストなどが低減され得る。
【0019】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る医療用バッグであって、前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシートに対して目盛りが表示されているものである。
【0020】
本態様の医療用バッグによれば、挿入部と目盛りが重なって設けられることで目盛りが視認しづらくなることが回避される。また、目盛りが、挿入部に挿入される手指の陰に隠れて視認できなくなるおそれも低減され得る。
【0021】
本発明の第4の態様は、前記第1~第3の何れかの態様に係る医療用バッグにおいて、前記挿入部が、外面側シートと内面側シートとが互いに固定されることで形成されているものである。
【0022】
本態様の医療用バッグによれば、樹脂シートのみで挿入部が形成され得る。
【0023】
本発明の第5の態様は、前記第1~第4の何れかの態様に係る医療用バッグであって、前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシート側には、手指で引っ張ることのできる引張タブが設けられているものである。
【0024】
本態様の医療用バッグによれば、表面側シートと裏面側シートの何れか一方に設けられた挿入部に手指を挿し入れて開口部を把持しつつ、表面側シートと裏面側シートの何れか他方に設けられた引張タブを手指で引っ張ることで、2枚の樹脂シートのそれぞれに手指を挿入することなく、収容領域の開口部が容易に開口状態とされ得る。
【0025】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る医療用バッグであって、前記引張タブにおいて、バッグ吊下用の係止孔が設けられているものである。
【0026】
本態様の医療用バッグによれば、係止孔を設ける領域を別途確保する必要がなく、引張タブを巧く利用して係止孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従う構造とされた医療用バッグによれば、手指を挿し入れる挿入部が、表面側シートと裏面側シートの何れか一方の側にのみ設けられることから、両側の樹脂シートのそれぞれに手指を挿し入れるという面倒な操作が回避され得る。また、剛性部材を巧く利用することで、本発明のように表面側シートと裏面側シートの何れか一方のみに手指が挿し入れられる場合にも、開口部がより確実に開口状態で保持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
【
図3】
図1に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【
図4】
図1に示された医療用バッグにおいて挿入部に手指を挿し入れて開口部を開口状態で保持した状態を説明するための説明図。
【
図5】本発明の第2の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
【
図7】
図5に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【
図8】
図5に示された医療用バッグにおいて挿入部に手指を挿し入れて開口部を開口状態で保持した状態を説明するための説明図。
【
図9】本発明の第3の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
【
図11】
図9に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【
図12】本発明の第4の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
【
図14】
図12に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【
図15】本発明の第5の実施形態としての医療用バッグを示す正面図。
【
図17A】
図15に示された医療用バッグにおいて挿入部に手指を挿し入れて開口部を開口状態で保持した状態を説明するための説明図。
【
図17B】
図15に示された医療用バッグにおいて別の持ち方をした状態を説明するための説明図。
【
図18】本発明の別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
【
図20】
図18に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【
図21】本発明の更に別の態様としての医療用バッグを示す正面図。
【
図23】
図21に示された医療用バッグを背面側から示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0030】
先ず、
図1,2には、本発明の第1の実施形態としての医療用バッグ10が示されている。この医療用バッグ10は袋状とされており、内部には、液状体が収容される収容領域12が形成されている。そして、かかる収容領域12に、栄養液や薬液、輸液などが収容されることで、医療用バッグ10が、栄養剤補給用バッグや輸液バッグとして利用されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、使用時に略鉛直方向とされる
図1,2中の上下方向をいう。
【0031】
より詳細には、医療用バッグ10は、
図3にも示されているように、正面側に位置する表面側シートとしての第1のシート14と背面側に位置する裏面側シートとしての第2のシート16が相互に重ね合わされることで構成されており、これら両シート14,16の重ね合わせ面間に収容領域12が形成されている。
【0032】
第1のシート14および第2のシート16は、軟質の合成樹脂により形成された薄肉の部材とされており、有色または無色の透明とされている。本実施形態では、両シート14,16が相互に同形状とされて、且つ同じ材質で形成されており、それ故、同じ部材を使用することが可能となっている。これら第1および第2のシート14,16は、それぞれ上下方向が長手方向とされる縦長の略矩形状とされている。特に、本実施形態では、第1および第2のシート14,16の上側部分18,18が、下側部分20,20に比べて幅方向寸法(
図1,2中の左右方向寸法)が小さくされている。また、これら上側部分18および下側部分20は、何れも、幅方向両側縁部が上下方向にストレートに延びており、それぞれ一定の幅寸法のストレート形状とされている。なお、第1および第2のシート14,16の上下方向中間部分に位置する、上側部分18と下側部分20との接続部分では、幅方向両側縁部が下方に向かって次第に広がる傾斜部分22,22とされている。
【0033】
そして、第1のシート14と第2のシート16とが相互に重ね合わされて、下辺部分と幅方向両側辺部分とにおいて互いに固定されている。これにより、第1のシート14と第2のシート16との重ね合わせ面間に縦長形状の収容領域12が形成されており、当該収容領域12が上方に開口している。すなわち、第1および第2のシート14,16において互いに溶着されていない上端縁(上辺部分)が、収容領域12の開口部24とされている。なお、以下の説明では、第1および第2のシート14,16の上側部分18,18によって構成された小幅ストレートな部分を、収容領域12の開口部分25とする。
【0034】
ここで、本実施形態では、収容領域12の開口部分25における上下方向の中央よりも上端縁の開口部24に近い位置において、第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間を幅方向の略全長に亘って延びるプラスチックファスナー26が設けられている。そして、このプラスチックファスナー26の開閉操作に伴い、収容領域12の開口部24が開閉可能とされている。
【0035】
すなわち、第1のシート14における上側部分18の内面には、プラスチックファスナー26を構成する凸条26aが設けられている一方、第2のシート16における上側部分18の内面には、プラスチックファスナー26を構成する凹溝26bが設けられており、これら凸条26aおよび凹溝26bが相互に噛合することでプラスチックファスナー26および開口部24が閉状態とされるようになっている。本実施形態では、これら凸条26aおよび凹溝26bが、第1のシート14および第2のシート16の上端から所定距離だけ下方に離隔した位置に設けられている。なお、これら凸条26aや凹溝26bは、第1および第2のシート14,16において、相互に反対に設けられてもよい。
【0036】
特に、本実施形態では、凸条および凹溝26a,26bが、第1および第2のシート14,16に対して別部材とされて後固着されている。なお、これら凸条および凹溝26a,26bは、幅方向両側(上下方向両側)に延び出すシート状部27,27を一体的に備えている。また、これら凸条および凹溝26a,26bの変形剛性は、第1および第2のシート14,16よりも大きいことが好ましいが、何等限定されるものではなく、かかる凸条26aや凹溝26bが第1のシート14および第2のシート16に設けられることで、第1および第2のシート14,16における凸条および凹溝26a,26bの配設位置の変形剛性が向上される。それ故、本実施形態では、第1のシート14および第2のシート16よりも変形剛性が大きい剛性部材が、凸条26aおよび凹溝26bからなるプラスチックファスナー26により構成されている。
【0037】
また、本実施形態では、第1のシート14と第2のシート16との固定が、熱溶着(ヒートシール)により行われている。すなわち、第1のシート14と第2のシート16において、外周縁部における下辺部分と幅方向両側辺部分には、所定の幅寸法をもって連続して延びる溶着部28が設けられている。尤も、第1のシート14と第2のシート16との固定手段は、熱溶着に限定されるものではなく、熱以外の超音波などを利用した溶着であってもよいし、例えば接着など、従来公知の固着手段などにより固定され得る。
【0038】
すなわち、これら第1のシート14や第2のシート16などは、熱溶着が可能とされたシーラント層が設けられた構造とされており、溶着される面の略全面に亘ってシーラント層が設けられている。本実施形態では、第1のシート14の内面、第2のシート16の内外両面、後述する第3のシート34の内面、および凸条および凹溝26a,26bに設けられるシート状部27,27の外面にシーラント層が設けられている。第1のシート14や第2のシート16などを構成する材質は、強度や印刷等、要求される特性などに応じて選択されて積層され得るものであり、何等限定されるものではない。
【0039】
さらに、これら第1のシート14と第2のシート16の重ね合わせ面間において、下辺部分には、硬質の合成樹脂からなる略筒状のポート部材30が配されて固着されている。なお、当該ポート部材30の固着方法は何等限定されるものではないが、例えば上記の如き第1のシート14と第2のシート16との熱溶着が、ポート部材30の配設箇所を除いた位置で行われた後に、ポート部材30を所定位置に配設して、溶着や接着により固着されてもよい。あるいは、第1のシート14と第2のシート16との間にポート部材30を挟んだ状態で熱溶着が行われることで、第1のシート14と第2のシート16の固着と同時にポート部材30が固着されてもよい。かかるポート部材30は、収容領域12の内外を連通しており、当該ポート部材30に接続される図示しないカテーテルなどを通じて、収容領域12に収容された液状体が患者の体内に注入されるようになっている。
【0040】
なお、ポート部材30は、カテーテル等の外部流路を収容領域12に連通接続し得るものであれば良く、限定されない。また、外部流路を構成するカテーテルの一方の端部を第1のシート14と第2のシート16との間に挟んで固着して、収容領域12へ直接に連通させてもよい。
【0041】
更にまた、本実施形態では、第1のシート14に目盛り32が付されており、特に本実施形態では、第1のシート14の外面に対して目盛り32が印刷されている。これにより、収容領域12に収容された液状体の収容量が、外部から目視で把握できるようになっている。
【0042】
ここにおいて、第2のシート16の上側部分18における外面には、第1および第2のシート14,16とは別体とされた第3のシート34が重ね合わされて固着されている。すなわち、本実施形態では、第3のシート34により外面側シートが構成されているとともに、第2のシート16により内面側シートが構成されている。この第3のシート34は、本実施形態では、第1および第2のシート14,16と同様に軟質の合成樹脂により形成された薄肉の部材とされており、有色または無色透明とされているが、透光性を有していなくてもよい。なお、かかる第3のシート34の材質は何等限定されるものではない。本実施形態では、第3のシート34が、上下方向に延びる略矩形状とされており、当該第3のシート34の上下方向寸法および幅方向寸法がそれぞれ、第2のシート16の上側部分18の上下方向寸法および幅方向寸法よりも小さくされている。
【0043】
かかる第3のシート34は、第2のシート16の上側部分18に対して、上辺部分と下辺部分における固定部35,35において、それぞれ所定の幅方向寸法をもって固着されている一方、幅方向両側辺部分が固着されないで開放されている。このように第2のシート16と第3のシート34とが互いに固定されることでこれら両シート16,34の間には、幅方向に貫通する挿入部36が形成されている。すなわち、本実施形態では、かかる挿入部36が、第2のシート16側に設けられている。そして、当該挿入部36における幅方向両側の開口部が、第2のシート16と第3のシート34との間に形成される挿入孔38,38とされている。本実施形態では、当該第3のシート34が、第2のシート16の上側部分18における幅方向中央部分で且つプラスチックファスナー26の固着部分を上下に跨いで設けられており、プラスチックファスナー26の外側(
図2中の紙面手前側)に挿入部36が位置している。
【0044】
一方、第1のシート14の上側部分18の外面には、引張タブ40が固着されている。この引張タブ40の材質は何等限定されるものではない。本実施形態では、かかる引張タブ40が、略矩形状のシート片とされており、手指42(
図4参照)で摘める大きさで形成されている。特に、本実施形態では、当該引張タブ40の上辺部分のみが、第1のシート14の上側部分18の上端に固着されており、引張タブ40の下辺部分は自由端とされている。これにより、引張タブ40の下辺部分を第1のシート14から立ち上げて手指42で摘んで外方(
図1中の紙面手前方向)に引っ張ることで、第1のシート14の主に上側部分18も同方向に引っ張られ、第1のシート14と第2のシート16とが相互に離隔して、収容領域12の開口部24を大きく開くことができるようになっている。
【0045】
ところで、このような医療用バッグ10の製造方法は、何等限定されるものではないが、医療用バッグ10の製造方法の具体的な1例を以下に説明する。
【0046】
先ず、第1のシート14や第2のシート16等を、予め目的とする形状をもって準備するようにしても良いが、好適には、所定幅で長尺物の樹脂シートをロール状に巻いた状態で、第1のシート14と第2のシート16をそれぞれ準備する。また、プラスチックファスナー26を構成する凸条26aと凹溝26bも、同様に、長尺物をリール状に巻いた状態で準備する。なお、第1のシート14に付される目盛り32は、ロール状に巻いた状態で予め印刷されていてもよいし、第1のシート14と第2のシート16を溶着した後に印刷することもできる。
【0047】
そして、樹脂シートを熱溶着するためのプレス溶着装置のプレス溶着エリアに対して、第1のシート14の樹脂シートと、第2のシート16の樹脂シートとを、それぞれロールから引き出して、それら両シート14,16を互いに重ね合わせて導き入れる。
【0048】
また、第1および第2のシート14,16には、両シート14,16のプレス溶着エリアに至るまでの準備エリアとしてのファスナー溶着エリアにおいて、プラスチックファスナー26を構成する凸条26aと凹溝26bの各一方がリールから引き出されて、重ね合わされる。そして、これら凸条26aと凹溝26bは、第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートとに対して、長さ方向で連続して溶着される。なお、かかる溶着は、公知のとおり、凸条26aや凹溝26bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部27,27において、第1のシート14の樹脂シートや第2のシート16の樹脂シートに対して長さ方向で直線状に連続的に溶着することで、凸条26aや凹溝26bの開閉機能部分への熱影響を避けることができる。なお、凸条26aや凹溝26bから幅方向両側に張り出して一体的に備えるシート状部27,27は、変形剛性が比較的大きいシート材質により形成されることが好ましい。
【0049】
このように、予め重ね合わせ面に対してプラスチックファスナー26を構成する凸条26aと凹溝26bの各一方が固着されて、プレス溶着エリアに導き入れられた第1のシート14の樹脂シートと第2のシート16の樹脂シートは、互いに重ね合わされた状態で、目的とする医療用バッグ10における左右両側縁部と下側縁部に設定された溶着部28に対して溶着型が押し付けられてプレス溶着される。なお、このプレス溶着に際して、溶着部28に位置する凸条26aや凹溝26bは、熱変形して押しつぶされて実質的に消失する。
【0050】
その後、プレス溶着エリアから送り出された重ね合わせシート状の溶着体は、カッティングエリアに導き入れられ、プレスカッタによって、目的とする医療用バッグ10の平面形状で打ち抜き切断される。これにより、左右両側縁部と下側縁部が一体的に固着された第1および第2のシート14,16の重ね合わせ面間に、プラスチックファスナー26で開閉可能とされた上方への開口部24を備えた収容領域12が形成される。
【0051】
さらに、カッティング工程の前、或いは後の工程において、第1のシート14に対して引張タブ40が溶着されると共に、第2のシート16に対して第3のシート34が溶着される。これらの溶着は、第1および第2のシート14,16の相互の溶着を回避するために、例えば溶着阻止シートを第1および第2のシート14,16間に挟み入れた状態でプレス溶着することで実現され得る。
【0052】
なお、カッティング工程を経て目的とする医療用バッグ10の平面形状とされた後に、人手による個別の溶着操作により、これら引張タブ40や第3のシート34の溶着を行ってもよい。
【0053】
また、ポート部材30は、第1および第2のシート14,16のプレス溶着工程において、第1および第2のシート14,16間にポート部材30を挟み入れた状態で、ポート部材30に応じた凹みのある溶着型を用いてプレス溶着することで、第1および第2のシート14,16のプレス溶着と同時にポート部材30も溶着することができる。或いは、ポート部材30の固着部分だけ溶着せずに残した状態で、第1および第2のシート14,16の溶着部28を溶着した後、ポート部材30を挿し入れて別工程で溶着したり、接着固定するようにしても良い。
【0054】
以上、本実施形態の医療用バッグ10の製造工程を例示したが、前述したように上述の製造工程によって限定的に解釈されるものでない。例えば、プラスチックファスナー26は、凸条26aと凹溝26bとが噛合した状態(プラスチックファスナー26が閉じた状態)で、第1のシート14と第2のシート16のプレス溶着エリアに送り込まれて、溶着部28に対するプレス溶着と同時に、それら両シート14,16の各一方に対して溶着することも可能である。
【0055】
上述の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ10は、
図4に示されるように、第2のシート16側に設けられた挿入部36における一方の挿入孔38に対して横方から手指42を挿し入れて、幅方向寸法が小さくされた上側部分18,18を握るようにして把持することができる。なお、
図4では、右利きの使用者を想定して、左手で医療用バッグ10を把持する状態が図示されており、挿入部36における、
図2中の右側の挿入孔38から手指42が挿し入れられて左側の挿入孔38から手指42の先端が突出しているが、左利きの使用者の場合には、
図2中の左側の挿入孔38から手指42が挿し入れられてもよい。また、
図4では、挿入部36(挿入孔38)に対して、親指を除く4本の手指42が挿し入れられる状態が図示されているが、挿入部36(挿入孔38)に挿し入れられる手指の種類や本数等は限定されない。
【0056】
かかる状態から、挿入部36(挿入孔38)に挿し入れられる手指42と反対側(即ち、本実施形態では右手側)の手指で引張タブ40を摘んで引っ張ることで、第1のシート14の上側部分18が引っ張られることから、第1のシート14と第2のシート16とが相互に離隔して、上方への開口部が開状態に保持されるようになっている。これにより、開口部24を通じて、収容領域12内に液状体を注入することができて、ポート部材30および当該ポート部材30に接続されるカテーテルなどを通じて体内に液状体が投与され得る。なお、引張タブ40を摘んで引っ張る際には、予めプラスチックファスナー26の凸条26aと凹溝26bとの噛合が解除されていることが望ましいが、限定されるものでない。
【0057】
このような本実施形態の医療用バッグ10では、手指42が挿し入れられる挿入部36が第2のシート16側にのみ設けられており、医療用バッグ10の表裏のうち、一方のみに手指42が挿し入れられることで医療用バッグ10を保持することができるようになっている。これにより、例えば医療バッグの両側に手指が挿し入れるような面倒な操作が回避されて、より素早く医療用バッグ10に液状体を注入することも可能となる。
【0058】
特に、収容領域12の開口部分25において、挿入部36の内側にはプラスチックファスナー26が設けられて、第1および第2のシート14,16の剛性が部分的に大きくされていることから、挿入部36に手指42を挿し入れて上側部分18を握るように把持することで、プラスチックファスナー26による剛性部分に対して、手指42の内面に沿わせた形状付けを容易に且つ正確に為し得る。しかも、プラスチックファスナー26で剛性の向上が図られていることから、上側部分18を握るようにして手指42から把持力を加えても、局所的に折れ曲がる座屈状のいびつな変形や不安定又は不規則な変形が抑制されることとなり、第1および第2のシート14,16が、例えば潰れるように過剰に変形することが回避され得る。
【0059】
また、プラスチックファスナー26を構成する凸条26aと凹溝26bの何れか一方が手指42の形に沿って曲げられることにより、同じ高さ位置にある凸条26aと凹溝26bの何れか他方も自然と曲げられる。ここで、凸条26aと凹溝26bの何れか他方(本実施形態では、凸条26a)が何れか一方(凹溝26b)側に曲がった場合は、引張タブ40を手前に引いて、他方(凸条26a)を一方(凹溝26b)とは逆側に曲げる。逆側に曲げられた他方(凸条26a)は、一方(凹溝26b)が手指42で曲げられた状態で維持されていることから、曲がった状態で維持される。これにより、収容領域12の開口部24の開口形状が安定して且つ大きく開いた状態に維持されて、液状体の注入操作の作業が容易となる。
【0060】
更にまた、本実施形態では、プラスチックファスナー26と挿入部36とが設けられる第1および第2のシート14,16の上側部分18,18が、それぞれ一定の幅寸法をもってストレートに延びていることから、例えば幅寸法内側に抉れたような形状とされる場合に比べて、収容領域12の開口部分25における周方向寸法が十分に確保される。これにより、挿入部36に手指42を挿し入れた場合において開口部分25の強度がある程度大きくされ、例えば親指と人差し指との間の指間部や手の平などが医療用バッグ10の側端部に当たり手指42をうまくプラスチックファスナー26に沿わせることができなかったり医療用バッグ10に対して意図せぬ変形を生じさせてしまったりといったことが回避されて、開口部24の開口形状が一層安定して維持され得る。そして、このように収容領域12の開口部分25にプラスチックファスナー26を設けることで開口形状が安定して維持されることから、本実施形態のように、医療用バッグ10の表裏一方に手指42を挿入するだけでも医療用バッグ10の保持が十分に達成され得る。
【0061】
さらに、本実施形態では、目盛り32が、挿入部36が設けられる第2のシート16とは反対側の第1のシート14に設けられていることから、挿入部36に挿入される手指42の陰に隠れて視認できなくなるおそれが低減され得る。特に、本実施形態では、挿入部36が第2のシート16の上側部分18に設けられている一方、目盛り32が第1のシート14の主に下側部分20に設けられていることから、挿入部36と目盛り32との上下方向での重なりも回避または低減されて、目盛り32が視認できなくなるおそれが一層軽減され得る。
【0062】
更にまた、本実施形態では、第1のシート14に引張タブ40が設けられて、挿入部36に挿し入れられる手指42と反対側の手指で当該引張タブ40が引っ張られることで、収容領域12の開口部24が大きく開口した状態とされることから、一方の手指42を挿入部36に挿し入れて医療用バッグ10を保持しつつ他方の手指で液状体を注入する操作が、より容易に、且つより確実に実現され得る。
【0063】
次に、
図5,6には、本発明の第2の実施形態としての医療用バッグ50が示されている。本実施形態の医療用バッグ50においても、表面側シートとしての第1のシート52と裏面側シートとしての第2のシート54とが相互に重ね合わされて固着されているとともに、第2のシート54の外面には、第3のシート56が重ね合わされて固着されている。したがって、本実施形態においても、第3のシート56が外面側シートとされているとともに、第2のシート54が内面側シートとされている。なお、以下の説明において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0064】
すなわち、本実施形態においても、第1のシート52と第2のシート54とが相互に略同形状とされており、それぞれ縦長の略矩形状とされている。そして、これら第1のシート52と第2のシート54との下辺部分および両側辺部分が相互に固着されることにより、上端に開口部24を有する収容領域12が形成されている。なお、本実施形態の第1および第2のシート52,54では、前記第1の実施形態の如き幅方向寸法の小さな部分と大きな部分は形成されておらず、上下方向の略全長に亘って略一定の幅方向寸法をもってストレートに延びている。また、本実施形態においても、第1のシート52の上側部分58に引張タブ40が固着されているとともに、下側部分60に目盛り32が付されている。なお、第1のシート52と第2のシート54とは略同形状とされていることから、実質的に同一の部位には、図中に、同一の符号を付すものとする。
【0065】
さらに、本実施形態では、第1および第2のシート52,54の上端において、幅方向中央部分から上方に突出する吊下部62が設けられており、吊下部62の中央には、円形の係止孔64が形成されている。かかる係止孔64に対して、スタンドなどから延びるフックなどが挿通されることで、医療用バッグ50をスタンドなどに吊り下げることができるようになっており、係止孔64をバッグ吊下用として利用することができる。
【0066】
ここにおいて、本実施形態の第3のシート56は、上下方向に延びる略矩形状とされており、第2のシート54と略同じ幅方向寸法を有するとともに、第2のシート54と略同じか僅かに小さい上下方向寸法を有している。なお、第3のシート56を、第1および第2のシート52,54と同形状として、第1および第2のシート52,54と同じ部材を使用することも可能である。
【0067】
そして、当該第3のシート56における上側部分66には、手指42を挿し入れる挿入孔74(後述)となるスリット68が形成されている。このスリット68は、所定の寸法をもって上下方向に延びており、本実施形態では、一対のスリット68,68が所定の幅方向の離隔距離をもって対向している。これにより、医療用バッグ50に対して横方向の両側から、即ち
図6中の右側のスリット68に対しても左側のスリット68に対しても手指42を挿し入れることができるようになっている。かかるスリット68は、第3のシート56の上端から所定距離だけ下方に位置した部分から下方に延び出しており、第1および第2のシート52,54間に設けられたプラスチックファスナー26を跨いで形成されている。すなわち、プラスチックファスナー26の外側(
図6中の紙面手前側)にスリット68が形成されている。
【0068】
また、第3のシート56における上下方向中間部分には、幅方向に延びるスリット状の開口スリット70が形成されている。この開口スリット70は第3のシート56を貫通して形成されており、所定の幅方向寸法をもって、スリット68よりも下方に設けられている。
【0069】
本実施形態の医療用バッグ50を製造するには、
図7にも示されているように、第1のシート52と第2のシート54とを重ね合わせるとともに、更に第2のシート54の外面に第3のシート56を重ね合わせた状態で、これらシート52,54,56を熱溶着により固着する。すなわち、本実施形態では、各シート52,54,56の下辺部分および幅方向両側辺部分が相互に固着されている。なお、ポート部材30は、第1のシート52と第2のシート54の熱溶着と同時に固着されてもよいし、第1のシート52と第2のシート54との熱溶着後に固着されてもよい。
【0070】
そして、かかる第1のシート52の外面に引張タブ40が熱溶着されることで、本実施形態の医療用バッグ50が製造される。なお、かかる引張タブ40の第1のシート52への固着は、第1のシート52と第2のシート54との固着と同時に行われてもよいし、第1のシート52が第2のシート54に固着される前や後に行われてもよい。
【0071】
かかる構造とされた本実施形態の医療用バッグ50においても、
図8に示されているように、表裏のうち、一方のみに手指42が挿し入れられることで医療用バッグ50が保持される。すなわち、
図8では右利きの使用者を想定して、左手の手指42が、第2のシート54と第3のシート56との間に挿入されており、これら第2のシート54と第3のシート56との間に手指42が挿入される挿入部72が構成されているとともに、挿入部72における幅方向両側の開口部が、実質的に手指42が挿し入れられる挿入孔74,74とされている。したがって、本実施形態においても、挿入部72および挿入孔74が、剛性部材であるプラスチックファスナー26の外側に形成されている。また、本実施形態においても、挿入部72に対して親指を除く4本の手指42が挿入されているが、挿入部72に挿入される手指は何等限定されるものではない。
【0072】
そして、本実施形態においても、上述のように医療用バッグ50の裏面側に手指42が挿入されて医療用バッグ50が保持される一方、反対側の手指(即ち、右手の手指)で引張タブ40を摘んで引っ張ることで、引張タブ40と共に第1のシート52が引っ張られる。これにより、第2のシート54と第1のシート52とが相互に離隔せしめられて、プラスチックファスナー26が確実に開状態とされるようになっている。すなわち、凸条26aと凹溝26bの何れか一方が手指42で曲げられた状態に維持されていることから、凸条26aと凹溝26bの何れか他方も自然と曲がった状態に維持されて、この結果、開口状態が維持されて、開口部24を通じて、液状体が収容領域12内に収容され得る。
【0073】
なお、本実施形態では、第1のシート52および第2のシート54の上端において、中央に係止孔64が形成された吊下部62が形成されている。ここで、プラスチックファスナー26を開状態とするに際して、引張タブ40を引っ張ることに代えて、第1のシート52側に設けられた係止孔64に手指を引っ掛けて引っ張ったり、第1のシート52側の吊下部62を摘んで引っ張るなどしてもよい。すなわち、第1のシート52を引っ張ることのできる引張タブが、第1のシート52の吊下部62により構成されてもよい。これにより、収容領域12の開口部24を開状態とすることのできる引張タブ(吊下部62)に対してバッグ吊下用の係止孔64を巧く形成することができる。なお、本実施形態では、一対の吊下部62,62が設けられて、それぞれに係止孔64が形成されているが、係止孔は、一方の吊下部に設けられるだけでもよいし、吊下部以外の場所に設けられてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、第3のシート56の下側部分76、即ち開口スリット70より下側において、周囲の三方(下辺部分および両側辺部分)が第2のシート54に固着されている。これにより、第2のシート54の下側部分60と第3のシート56の下側部分76との間には、上方に開口スリット70からなる開口部を有するポケット78が形成されている。当該ポケット78に収容されるものは何等限定されるものではないが、例えば薬液や輸液が投与される際に使用されるシリンジなどを収容してもよい。なお、開口スリット70は、第3のシート56を上側部分66と下側部分76に仕切るものではなく、第3のシート56において上下方向中央部分よりも上方や下方に偏倚して設けられてもよいし、設けられなくてもよい。すなわち、かかるポケット78は必須なものではない。
【0075】
したがって、本実施形態においても、医療用バッグ50の表裏のうちの一方である裏面側に手指42が挿入される挿入部72が設けられるとともに、当該挿入部72が、剛性部材であるプラスチックファスナー26の外側に位置していることから、前記第1の実施形態と同様に、操作性の向上と開口形状の安定性の向上が図られる。また、本実施形態では、プラスチックファスナー26の配設位置と挿入部72の形成位置とを含む、第1のシート52および第2のシート54の略全体が、略一定の幅寸法をもって上下方向にストレートに延びていることから、収容領域12の開口部分25も略一定の幅寸法を有している。それ故、本実施形態においても、前記第1の実施形態と同様に、更に安定して開口形状が維持され得る。
【0076】
次に、
図9,10には、本発明の第3の実施形態としての医療用バッグ90が示されている。本実施形態の医療用バッグ90は、収容領域12を構成する表面側シートとしての第1のシート92と裏面側シートとしての第2のシート94とを備えている。そして、第2のシート94の内面に第3のシート96が固着されている一方、第1のシート92の内面に第4のシート98が固着されている。本実施形態の第1および第2のシート92,94は、吊下部(62)が設けられていない点を除いて、前記第2の実施形態の第1および第2のシート(52,54)と略同様の構造とされている。
【0077】
また、本実施形態の第3および第4のシート96,98は、相互に略同形状とされており、それぞれ略矩形状とされている。これら第3および第4のシート96,98は、第1および第2のシート92,94の略半分程度の上下方向寸法を有しているとともに、第1および第2のシート92,94と略等しい幅方向寸法を有している。そして、かかる第3のシート96の内面に凹溝26bが設けられている一方、第4のシート98の内面に凸条26aが設けられている。なお、これら凸条および凹溝26a,26bは、第4および第3のシート98,96に対して一体的に形成されてもよいし、別体として形成されて後固着されてもよい。本実施形態の図では、前記第1の実施形態のプラスチックファスナー(26)と同様に、凸条および凹溝26a,26bが、第4および第3のシート98,96に対してシート状部27,27において後固着されているが、例えばシート状部27,27を設けることなく凸条および凹溝26a,26bを第4および第3のシート98,96に直接固定することで製造上のシートの数を少なくすることができる。
【0078】
ここで、第2のシート94における第3のシート96との重ね合わせ部分(上側部分58)には、前記第2の実施形態における第3のシート(56)と同様に、一対のスリット68,68が形成されている。これにより、第2のシート94と第3のシート96との固着時には、スリット68,68の対向間と第3のシート96との間において、手指(42)を挿入する挿入部72が形成されるとともに、挿入部72の幅方向両側の開口部が、スリット68を含んで構成される挿入孔74とされる。したがって、本実施形態では、第2のシート94が外面側シートとされているとともに、第3のシート96が内面側シートとされて、これら両シート94,96が相互に固定されることで挿入部72が形成されている。
【0079】
すなわち、例えば第2のシート94の内面に対して、第3のシート96における周囲の四辺(全周縁)が熱溶着されることで、第2のシート94と第3のシート96との間に閉状空間が形成されるとともに、当該閉状空間に対して挿入部72(挿入孔74)を通じて手指(42)を挿入することが可能とされている。そして、かかる挿入部72が、プラスチックファスナー26を上下に跨ぐ状態で、プラスチックファスナー26の外側に形成されている。
【0080】
本実施形態の医療用バッグ90は、
図11に示されるように、第1、第2、第3、第4のシート92,94,96,98をそれぞれ重ね合わせて熱溶着により固着することで形成される。すなわち、本実施形態では、第3のシート96が第2のシート94に固着されることで当該第3のシート96により第2のシート94の内面が部分的に構成されているとともに、第4のシート98が第1のシート92に固着されることで当該第4のシート98により第1のシート92の内面が部分的に構成されている。そして、かかる第1のシート92と第2のシート94とが、第3及び第4のシート96,98を部分的に挟んで、下辺部分および幅方向両側辺部分において固着されることで、これら第1のシート92と第2のシート94との間に収容領域12が形成されている。すなわち、収容領域12の下側部分が、第1のシート92と第2のシート94との間に形成されているとともに、収容領域12の上側部分が、第3のシート96と第4のシート98との間に形成されている。
【0081】
また、本実施形態では、第1のシート92の内面に対して、第4のシート98の下辺部分および幅方向両側辺部分が固着されており、これにより、第1のシート92と第4のシート98との間には、上方に開口108を有するポケット110が形成されている。なお、本実施形態の医療用バッグ90では、第4のシート98に引張タブ40が設けられている。尤も、かかる引張タブを設けることなく、挿入部72に手指(42)を挿入して医療用バッグ90を把持した状態で、ポケット110の開口108に反対側の手指を挿し入れて引っ張ることで、開口部24を大きく開くことも可能である。
【0082】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ90においても、手指(42)が挿し入れられる挿入部72が医療用バッグ90の裏面側のみに設けられるとともに、挿入部72が剛性部材(プラスチックファスナー26)の外側に形成されることから、前記第1や第2の実施形態と同様に、操作性の向上と開口形状の安定性の向上が図られる。なお、本実施形態においては、前記第1や第2の実施形態と同様に4本の手指(42)を挿し入れることを想定してスリット68が比較的大きく形成されているが、挿し入れられる手指(42)の本数を少なくするなど、スリット68を小さく形成して第3のシート96の上下端縁部を剛性部材(プラスチックファスナー26)に近づけることで、開口形状の安定性の更なる向上が図られる。
【0083】
本実施形態では、第1および第2のシート92,94においては、溶着用のシーラント層を片面(内面)のみに設ければよいことから、必要とされるシーラント材やシーラント処理を少なくすることができる。また、医療用バッグ90の外面の略全体が、第1のシート92と第2のシート94により構成されて、第3および第4のシート96,98など他の樹脂シートと重なることがないようになっている。これにより、第1のシート92や第2のシート94の外面に施される印刷などが見えにくくなることが回避されて、使用者に綺麗な外観の印象を与えることができることに加えて、印刷デザインに統一感を与えることも可能となる。
【0084】
次に、
図12,13には、本発明の第4の実施形態としての医療用バッグ120が示されている。本実施形態における医療用バッグ120の構造は、前記第3の実施形態における医療用バッグ(90)の構造と同様とされており、収容領域12を構成する表面側シートとしての第1のシート122と裏面側シートとしての第2のシート124と、第2のシート124の内面に固着される第3のシート126と、第1のシート122の内面に固着される第4のシート128とを備えている。
【0085】
なお、本実施形態における第1および第2のシート122,124も、前記第2の実施形態における第1および第2のシート(52,54)と略同様の構造とされている。また、本実施形態では、第1のシート122の内面に凸条26aが設けられているとともに、第2のシート124の内面に凹溝26bが設けられて、プラスチックファスナー26が実現されている。
【0086】
本実施形態では、第3および第4のシート126,128の上下方向寸法が、前記第3の実施形態における第3および第4のシート(96,98)の上下方向寸法よりも小さくされている。すなわち、本実施形態では、第1および第2のシート122,124の上側部分58,58において、凸条26aおよび凹溝26bよりも上方に第3および第4のシート126,128が位置している。
【0087】
また、本実施形態においても、第2のシート124に一対のスリット68,68が設けられており、これら一対のスリット68,68の対向間と第3のシート126との間に挿入部72が形成されているとともに、当該挿入部72の幅方向両側開口部が挿入孔74,74とされている。したがって、第2のシート124が外面側シートとされているとともに、第3のシート126が内面側シートとされており、これら両シート124,126が相互に固定されることで挿入部72が形成されている。また、本実施形態では、挿入部72を下方に外れた位置にプラスチックファスナー(剛性部材)26が位置しており、挿入部72の外側には剛性部材(プラスチックファスナー26)が位置していない。
【0088】
そして、かかる第1、第2、第3、第4のシート122,124,126,128が、
図14のようにそれぞれ重ね合わされて熱溶着により固着されることにより、本実施形態の医療用バッグ120が構成されている。すなわち、本実施形態においても、第1および第2のシート122,124における下辺部分および幅方向両側辺部分が相互に固着されることにより、上端に開口部24を有する収容領域12が形成されている。また、本実施形態では、第1のシート122に対して第4のシート128の上辺部分、下辺部分および幅方向一方の側辺部分が固着されることで、第1のシート122と第4のシート128との間には幅方向他方の側辺部分に開口108を有する、側方開口のポケット110が形成されている。
【0089】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ120では、プラスチックファスナー26と挿入部72の形成位置を含む第1および第2のシート122,124の上下方向略全長に亘って、幅方向寸法が略一定とされていることから、開口部24が開状態に、より安定して維持され得る。これにより、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。すなわち、本発明では、本実施形態のように、挿入部が、剛性部材(プラスチックファスナー)の外側に位置していなくてもよい。
【0090】
次に、
図15,16には、本発明の第5の実施形態としての医療用バッグ140が示されている。本実施形態の医療用バッグ140は、前記第1の実施形態における第1および第2のシート(14,16)と略同様の構造とされた第1のシート142と第2のシート144と、第2のシート144の外面に固着される第3のシート146を備えている。
【0091】
本実施形態における第3のシート146は、それぞれ前記第1の実施形態における第3のシート(34)と略同様の形状とされているが、上辺より下辺が短くされて指の挿入が容易となっている。具体的には、略矩形状の1つの角(本実施形態では、下方、且つ手指42の挿入方向基端側である
図16中の右側の角)が落とされることで下辺が短くされている。この第3のシート146は、前記第1の実施形態と同様に、第2のシート144に対して上辺部分と下辺部分が固定部35をもって固着されている。
【0092】
特に、本実施形態では、かかる固定部35の長さ方向一方の端部(手指42の挿入方向先端側(
図16中の左側)の端部)が、第2のシート144の幅方向略中央部分に位置している。そして、第3のシート146が第2のシート144に固着されることにより、第2のシート144と第3のシート146との間に、幅方向に貫通する挿入部150が形成されているとともに、当該挿入部150の幅方向両側の開口部により、挿入孔152が形成されている。すなわち、本実施形態では、第3のシート146が外面側シートとされているとともに、第2のシート144が内面側シートとされている。
【0093】
また、第3のシート146は、プラスチックファスナー26を構成する凹溝26bを上下に跨いで配されている。特に本実施形態では、第3のシート146における上方の固定部35が、下方の固定部35よりも凹溝26bに近い位置を平行に延びるように設定されている。
【0094】
図17Aには、本実施形態の医療用バッグ140を把持して開口状態に維持した状態が示されている。すなわち、第2のシート144と第3のシート146との間に形成される挿入部150に手指42を挿入することで収容領域12の開口部24が開口状態とされるとともに、更に、第1のシート142を、必要に応じて引張タブを設けて、引っ張ることで、収容領域12の開口部24が大きく開口した状態とされる。なお、
図17Aでは、医療用バッグ140の裏面側に設けられる挿入部150(挿入孔152)に、使用者の左手の人差し指のみが挿入されるとともに、医療用バッグ140の表面側に左手の親指が位置している態様が示されているが、挿入される手指の種類や本数、および挿入されない手指の位置などは限定されない。すなわち、例えば、
図17Bに示されるように、挿入部150(挿入孔152)に左手の親指が挿入されて、残る4本の手指が医療用バッグ140の裏面側に位置していてもよい。このように、挿入部150(挿入孔152)に挿入される側の5本の手指が、医療用バッグ140の表裏のうちの一方の側に位置していてもよい。かかる場合において、
図17Bでは挿入部150(挿入孔152)に親指が挿入されているが、挿入部150(挿入孔152)に挿入される手指の種類や本数は何等限定されるものではない。尤も、挿入部150(挿入孔152)には、親指か人差し指が挿入されることが好ましい。
【0095】
以上の如き構造とされた本実施形態の医療用バッグ140においても、表裏の一方に挿入部150が設けられて、当該挿入部150が、剛性部材としてのプラスチックファスナー26の外側に設けられていることから、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。また、本実施形態においても、プラスチックファスナー26や挿入部150の形成位置を含む収容領域12の開口部分25の幅方向寸法が、上下方向で略一定とされることから、前記第1の実施形態などと同様の効果が発揮され得る。
【0096】
特に、本実施形態では、第3のシート146における上下の固定部35,35によって、第2のシート144の剛性を大きくして、開口部24の開口形状の安定化などを図ることができる。例えば、第3のシート146における固定部35の長さ方向の端部が、第2のシート144の幅方向略中央部分に位置していることから、挿入部150へ指を入れて開口部24を開くことで、第2のシート144を、幅方向中央部分が頂点となるように屈曲乃至は湾曲させて曲げ易い。また、第3のシート146における下方の固定部35に沿って第2のシート144の剛性も大きくされることから、下方の固定部35における高さ位置においても、第2のシート144を、幅方向中央部分が頂点となるように屈曲乃至は湾曲させて曲げ易くなっている。これにより、上方の固定部35と下方の固定部35の長さ方向一方の端部(幅方向中央寄りの端部)により上下方向に延びる折れ軸乃至は湾曲軸が形成されることで、開口部24の開口形状がより安定して発現および維持され得る。また、当該折れ軸を跨いで、第3のシート146が固着されていない側にまで手指42(挿入部150に挿入されない手指を含む)を延ばすことで、折れ軸に沿って関節を屈曲させた手指の先端を第2のシート144の表面へ押し付けて引っ掛けるように開口方向の力を及ぼすことも可能になる。この結果、収容領域12の開口部24が、開口状態により安定して維持され得る。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0098】
たとえば、以下のような態様も好適に採用可能である。すなわち、
図18,19に示される医療用バッグ160は、
図20に示されるように、収容領域12を構成する表面側および裏面側シートとしての第1および第2のシート162,164と、第2のシート164の外面に固着される第3のシート166と、第1のシート162の外面に固着される第4のシート168とを備えている。第3のシート166には、上下方向に延びるスリット68が設けられており、第2のシート164と第3のシート166とが固着されることで、挿入部72(挿入孔74)が形成される。また、第3および第4のシート166,168には、幅方向に延びる開口スリット170が形成されて、第2および第1のシート164,162と固着された際に、これらの間に、開口スリット170を上方の開口とするポケット172が形成される。さらに、第4のシート168の上端部分には、幅方向に延びる挿入スリット174が形成されており、挿入スリット174に上方から手指を挿入して引っ張ることで、収容領域12の開口部24を大きく開くことが可能となっている。
【0099】
更にまた、
図21,22に示される医療用バッグ180も、
図23に示されるように、収容領域12を構成する表面側および裏面側シートとしての第1および第2のシート182,184と、第2のシート184の外面に固着される第3のシート186と、第1のシート182の外面に固着される第4のシート188とを備えている。本態様では、第3および第4のシート186,188が、第2および第1のシート184,182の上側部分58に固着されている。そして、医療用バッグ180の裏面側において、第2のシート184に対して第3のシート186の上辺部分および幅方向両側辺部分が固定されることで、第2のシート184と第3のシート186との間に挿入部72(挿入孔74)が形成されている。一方、第1のシート182に対して第4のシート188の幅方向両側辺部分と下辺部分が固着されることにより、第1のシート182と第4のシート188との間には、第4のシート188の上辺部分を開口190とするポケット192が形成されるようになっている。なお、ポケット192には、例えば前記
図18~20に示される態様の如き挿入スリットが設けられてもよい。以上の如き構造とされた
図18~23に示される医療用バッグ160,180も、前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0100】
また、前記実施形態では、第1のシート14,52,92,122,142および第2のシート16,54,94,124,144が、予め凸条26aおよび凹溝26bが固着された状態で製造されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、表面側シートと裏面側シートとの熱溶着に際して、表面側シートと裏面側シートとの間に凸条および凹溝(または凹溝を構成する凸部)を相互に噛合した状態で挟み込んで熱溶着を行うことにより、表面側シートと裏面側シートの固着と同時に、表面側シートと凸条との固着および裏面側シートと凹溝との固着を行うことも可能である。
【0101】
なお、前記実施形態では、第1のシート14,52,92,122,142および第2のシート16,54,94,124,144に対して、別体とされた凸条26aおよび凹溝26bが固着されていたが、これらは一体的に形成されてもよい。すなわち、表面側シートおよび裏面側シートが部分的に厚肉とされたり薄肉とされることで、プラスチックファスナーを構成する凸条や凹溝が形成されてもよい。
【0102】
また、前記実施形態では、収容領域12の開口部分25において、第1および第2のシート14,16よりも変形剛性の大きくされた剛性部材として幅方向に直線状に延びるプラスチックファスナー26が設けられていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、剛性部材として、プラスチックファスナーに代えて、または加えて、面状に広がる面ファスナーや点状の凹凸などが採用されて、これらを閉状態とすることで収容領域の開口部が閉鎖されるようになっていてもよい。尤も、剛性部材は、収容領域を開閉する機能を有している必要はなく、剛性部材とは別に収容領域を開閉する部材を設けてもよいし、収容領域を開閉する部材は設けられなくてもよい。すなわち、剛性部材は、前記実施形態の如き凸条や凹溝に限定されるものではなく、例えば単なる板状の部材などであってもよい。
【0103】
さらに、前記実施形態では、第1のシート14,52,92,122,142および第2のシート16,54,94,124,144が、略同じ形状、且つ同じ材質で形成されていたが、表面側シートと裏面側シートとは相互に異なる形状とされてもよいし、相互に異なる材質で形成されてもよい。すなわち、これら表面側シートと裏面側シートとで構成される医療用バッグおよび収容領域の形状は何等限定されるものではない。更にまた、表面側シートおよび/または裏面側シートは、部分的に異なる材質で形成されてもよく、例えば部分的に変形剛性が大きくされたり小さくされてもよい。同様に、第3、第4のシートなども部分的に異なる材質で形成されてもよい。すなわち、医療用バッグを構成する各シートは、単一の層で形成されるものに限定されず、例えば基材層の表面側および/または裏面側に印刷層や溶着層(シーラント層)が積層されるなどしてもよく、備えさせたい機能に従って積層した構造とされてもよい。
【0104】
また、前記実施形態では、シートなどの固着が熱溶着により行われていたが、熱溶着以外の溶着や接着など、従来公知の固着手段が何れも採用され得る。
【0105】
さらに、前記実施形態では、目盛り32が、第1のシート14,52,92,122,142の下側部分20,60の外面に付されていたが、表面側シートは透明であることから、目盛りは、表面側シートの外面に代えて内面に対して付されてもよいし、表面側シートの外面と内面の両方に付されてもよい。また、表面側シートに代えて裏面側シートに目盛りを設けてもよいし、表面側シートと裏面側シートの両方に目盛りを設けてもよい。なお、裏面側シートに目盛りが設けられる場合でも、裏面側シートの外面と内面の何れに設けられてもよい。さらに、裏面側シートに目盛りを設ける場合には、医療用バッグを背面から見て液状体の収容量を把握することができるように目盛りを設けることが好適であるが、表面側および裏面側シートが透明であることから、目盛りが正面から見えるように付されてもよい。
【0106】
なお、前記第2の実施形態では、吊下部62(係止孔64)やポート部材30が、第1および第2のシート52,54の幅方向中央部分に設けられており、医療用バッグ50がスタンドに吊り下げられた際に下方に真っ直ぐ延びるようになっていた。また、これにより、第1のシート52に付される目盛り32を構成する直線なども、医療用バッグ50が真っ直ぐ吊り下げられた際に見やすいように幅方向に延びていたが、かかる態様に限定されない。すなわち、係止孔は、表面側および/または裏面側シートの上端部分において幅方向一方に設けられるとともに、ポート部材が、表面側および裏面側シートの下端部分において幅方向他方に設けられてもよい。これにより、医療用バッグは、スタンドに、上下方向に対して傾斜して吊り下げられ得る。かかる場合には、目盛りを構成する直線などは、見やすいように、医療用バッグの吊下方向に対応して、幅方向に対して傾斜して延びていてもよい。
【0107】
更にまた、前記第1~第5の実施形態では、手指42を挿入する挿入孔38,74,152が幅方向で対向して一対設けられて、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていたが、挿入孔は、少なくとも1つ設けられればよい。例えば挿入孔が1つしか設けられない場合、手指は、横方のうちの一方向からしか挿し入れられないようになっていてもよいし、例えば前記第2~第4の実施形態において、スリット(挿入孔)が裏面側シートの幅方向中央部分に形成されることで、横方の両方向から手指が挿し入れられるようになっていてもよい。
【0108】
また、前記第1~第5の実施形態では、利き手の違いも考慮して、挿入部への指先の差し入れ口とされる挿入孔38,74,152が左右一対設けられていたが、左右の何れか一方の側だけに挿入部が開口されて、挿入部に差し入れられた手指の先端が挿入部内に留まる態様でもよい。尤も、挿入孔(スリット)が左右一対設けられる場合であっても、手指の先端は、他方の挿入孔(スリット)から突出することなく、第3のシートにより外側から覆われて挿入部内に留まってもよい。
【0109】
また、前記第1、第2の実施形態では、引張タブ40が、第1のシート14,52に対して上辺部分で固着されて、下辺部分を摘んで引っ張ることが可能とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、例えば引張タブの上辺部分と下辺部分が固着されて、表面側シートと引張タブとの間に幅方向に貫通する貫通孔が形成されてもよく、当該貫通孔に手指を側方から挿入することで、引張タブおよび表面側シートを引っ張ることができるようになっていてもよい。
【0110】
なお、前記実施形態では、第2のシート16,54,94,124,144に第3のシート34,56,96,126,146が固着されて、手指42が挿入される挿入部36,72,150が医療用バッグ10,50,90,120,140の表裏のうち裏側に設けられていたが、第3のシートが表面側シートに固着されて、手指が挿入される挿入部が医療用バッグの表側に設けられてもよい。尤も、挿入部は、第3のシートと第1または第2のシートとの間に形成されるものに限定されず、第4のシートと第1または第2のシートとの間に形成されてもよい。すなわち、手指が挿入される挿入部(挿入孔)の構成は、何等限定されるものではない。
【0111】
また、前記第1、第5の実施形態では、挿入部36,150とプラスチックファスナー26の形成位置を含めて、第1のシート14,142および第2のシート16,144の上側部分18,18の幅方向寸法が上下方向の略全長に亘って略一定とされていたが、収容領域の開口部分において挿入部と剛性部材を外れた位置では、幅方向寸法が一定でなくてもよく、例えば上下方向の一方に向かって次第に増加していたり減少していてもよい。同様に、前記第2~第4の実施形態では、挿入部72とプラスチックファスナー26の形成位置を含めて、第1のシート52,92,122および第2のシート54,94,124の幅方向寸法が上下方向の略全長に亘って略一定とされていたが、収容領域の開口部分において挿入部と剛性部材を外れた位置では、幅方向寸法が一定でなくてもよい。
【0112】
さらに、前記実施形態では、挿入部36,72,150がプラスチックファスナー26の外側に位置していたが、収容領域の開口部分において挿入部と剛性部材の形成位置における幅方向寸法が一定であれば、挿入部は剛性部材の外側になくてもよく、即ち挿入部と剛性部材とは、上下方向で重なった位置に形成されなくてもよい。なお、プラスチックファスナー26は、挿入部に手指を入れた状態において、手の中に収まる位置にあることが好ましい。プラスチックファスナー26が、挿入部に手指を入れた状態において手指より上方に位置していると、プラスチックファスナー26の自閉しようとする力に対して開口する方向にうまく力を加えることが難しい。プラスチックファスナー26が、挿入部より上方に位置していると、挿入部に入れる手指によってはプラスチックファスナー26の自閉しようとする力に対して開口する方向にうまく力を加えることが難しい。よって、挿入部は、プラスチックファスナー26の外側か上方に位置していることが好ましい。挿入部に入れられる手指によるが、例えば親指が入れられる場合、挿入部の上端縁より下方に10cm以内にプラスチックファスナー26が位置していることが好ましい。更にまた、前記実施形態では、収容領域12の開口部分25において、少なくとも挿入部36,72,150とプラスチックファスナー26の形成位置における幅方向寸法が一定とされていたが、剛性部材の外側に挿入部が位置していれば、収容領域の開口部分において挿入部と剛性部材の形成位置であっても幅方向寸法は一定とされなくてもよい。
【0113】
更にまた、表面側シートまたは裏面側シートの外面に第3のシートが固着されて挿入部が形成される場合、表面側シートまたは裏面側シートと第3のシートとは略全面に亘って重なり合った状態で固着されてもよいが、例えば上下方向または幅方向で湾曲して弛んだ状態で固着されてもよい。
【0114】
また、表面側シートまたは裏面側シートと第3のシートとの固着箇所は、上下両辺部や周囲の4方に限定されず、例えば前記
図21~23に示される態様のように、上辺部分と両側辺部分が固着されるようであってもよい。さらに、挿入部や、表面側シートまたは裏面側シートと第3のシートとの固着箇所の数は何等限定されるものではない。例えば、固着箇所を挿入予定の手指の数だけ上下方向に増やし、各指用の挿入部を形成してもよい。
【0115】
本発明は、充填量を確認するための目盛りを有する経腸栄養法に用いられるバッグとして特に好適である。
また、本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 液状体の収容領域を内部に備えた袋状の医療用バッグにおいて、互いに重ね合わされた表面側シートと裏面側シートが下辺部分と両側辺部分で固定されて、上方に開口する前記収容領域が該表面側シートと該裏面側シートの重ね合わせ面間に形成されている一方、該収容領域の開口部分には、該表面側シートと該裏面側シートよりも変形剛性が大きくされた剛性部材が設けられていると共に、該表面側シートと該裏面側シートの何れか一方の側にのみ、横方から手指を挿し入れる挿入部が、該剛性部材の外側に位置して設けられていることを特徴とする医療用バッグ、
(ii) 液状体の収容領域を内部に備えた袋状の医療用バッグにおいて、互いに重ね合わされた表面側シートと裏面側シートが下辺部分と両側辺部分で固定されて、上方に開口する前記収容領域が該表面側シートと該裏面側シートの重ね合わせ面間に形成されている一方、該収容領域の開口部分において、該表面側シートと該裏面側シートよりも変形剛性が大きくされた剛性部材が設けられていると共に、該表面側シートと該裏面側シートの何れか一方の側のみには、横方から手指を挿し入れる挿入部が設けられており、該剛性部材と該挿入部とが設けられている部分が一定幅のストレート形状で延びていることを特徴とする医療用バッグ、
(iii) 前記剛性部材がプラスチックファスナーにより構成されており、該プラスチックファスナーの開閉操作により前記収容領域の開口部が開閉されるようになっている(i)又は(ii)に記載の医療用バッグ、
(iv) 前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシートに対して目盛りが表示されている(i)~(iii)の何れか1項に記載の医療用バッグ、
(v) 前記挿入部が、外面側シートと内面側シートとが互いに固定されることで形成されている(i)~(iv)の何れか1項に記載の医療用バッグ、
(vi) 前記表面側シートと前記裏面側シートにおいて、前記挿入部が設けられたシートとは反対のシート側には、手指で引っ張ることのできる引張タブが設けられている(i)~(v)の何れか1項に記載の医療用バッグ、
(vii) 前記引張タブにおいて、バッグ吊下用の係止孔が設けられている(vi)に記載の医療用バッグ、
に関する発明を含む。
上記(i)の態様の医療用バッグにおいては、剛性部材の外側に位置して挿入部が設けられていることから、表面側及び裏面側シートの一方の側のみに設けられた挿入部へ手指を挿し入れて、剛性部材の外側に手指をあてがうようにして収容領域の開口部分を保持することができる。そして、かかる開口部分では、液状体の収容領域を構成する表面側及び裏面側シートが剛性部材を巧く利用して補強され得ることから、一方の側のシートを手の内面に沿わせるようにして他方の側のシートを開くことで、開口部分を目的とする開口形状に安定して保持することが可能になる。特に本態様では、剛性部材の外側に挿入部が位置していることから、一方の側のシートにおける剛性部材による補強部位の外側に手を重ね合わせることができ、かかる補強部位に対して直接に形状を与えて保持することが可能になる。それ故、開口部分を目的とする開口形状に一層精度良く形付けることができると共に、開口部分をより大きな把持力をもって一層安定して保持することも可能になる。
上記(ii)の態様の医療用バッグでは、手指の挿入部を備えた開口部分が一定幅のストレート形状とされており、当該開口部分に剛性部材が設けられている。それ故、かかる開口部分では、液状体の収容領域を構成する表面側及び裏面側シートが剛性部材を巧く利用して補強され得ることから、一方の側のシートを手の内面に沿わせるようにして他方の側のシートを開くことで、開口部分を目的とする開口形状に安定して保持することが可能になる。特に本態様では、手が外側に添えられる開口部分が、剛性部材の配設部位を含めて一定幅のストレート形状とされていることから、手の内面に沿って外側に凸となる湾曲形状を開口部分に与えやすく、且つ、剛性部材の配設部位にまで当該湾曲形状を及ぼしやすい。
上記(iii)の態様の医療用バッグによれば、収容領域を開閉可能とするプラスチックファスナーを巧く利用して剛性部材が構成されることから、プラスチックファスナーに加えて剛性部材を別途設ける手間やコストなどが低減され得る。
上記(iv)の態様の医療用バッグによれば、挿入部と目盛りが重なって設けられることで目盛りが視認しづらくなることが回避される。また、目盛りが、挿入部に挿入される手指の陰に隠れて視認できなくなるおそれも低減され得る。
上記(v)の態様の医療用バッグによれば、樹脂シートのみで挿入部が形成され得る。
上記(vi)の態様の医療用バッグによれば、表面側シートと裏面側シートの何れか一方に設けられた挿入部に手指を挿し入れて開口部を把持しつつ、表面側シートと裏面側シートの何れか他方に設けられた引張タブを手指で引っ張ることで、2枚の樹脂シートのそれぞれに手指を挿入することなく、収容領域の開口部が容易に開口状態とされ得る。
上記(vii)の態様の医療用バッグによれば、係止孔を設ける領域を別途確保する必要がなく、引張タブを巧く利用して係止孔を形成することができる。
【符号の説明】
【0116】
10,50,90,120,140,160,180:医療用バッグ、12:収容領域、14,52,92,122,142,162,182:第1のシート(表面側シート)、16,54,144,164,184:第2のシート(裏面側シート、内面側シート)、24:開口部、25:開口部分、26:プラスチックファスナー(剛性部材)、32:目盛り、34,56,146,166,186:第3のシート(外面側シート)、36,72,150:挿入部、40:引張タブ、42:手指、64:係止孔、94,124:第2のシート(裏面側シート、外面側シート)、96,126:第3のシート(内面側シート)