(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】重量物の吊下構造及び支持構造
(51)【国際特許分類】
F16B 7/20 20060101AFI20220606BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
F16B7/20 A
F16B1/00 A
(21)【出願番号】P 2018139180
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-147646(JP,A)
【文献】特開2009-093029(JP,A)
【文献】特開2013-193674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/20
F16B 1/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材の下側で支持される第一の連結部材と、
重量物を上側から支持する第二の連結部材と、を備え、
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方は他方を挿入可能とされ、
前記第一の連結部材には、前記第一の連結部材を貫通する第一の貫通孔が開口され、
前記第二の連結部材には、前記第二の連結部材を貫通する第二の貫通孔が開口され、
前記一方に前記他方を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合されて、前記重量物が前記支持部材の下方に吊下げられ、
前記固定ピンには、該固定ピンを軸方向に貫通する孔が開口され、
前記孔に紐状部材が挿通される、重量物の吊下構造。
【請求項2】
前記第一の連結部材は、先端部を下方に向けた状態で基端部が前記支持部材の下側に固定され、
前記第二の連結部材は、先端部を上方に向けた状態で基端部が前記重量物の上側に固定され、
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方の先端部には、他方の先端部を、互いに軸心を一致させた状態で挿入可能な挿入孔が形成され、
前記第一の連結部材の先端部に、軸心と直交する方向に前記第一の連結部材の先端部を貫通する前記第一の貫通孔が開口され、
前記第二の連結部材の先端部に、軸心と直交する方向に前記第二の連結部材の先端部を貫通する前記第二の貫通孔が開口され、
前記一方の先端部における前記挿入孔に前記他方の先端部を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に前記固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合される、請求項1に記載の重量物の吊下構造。
【請求項3】
前記紐状部材の両端部には、前記孔よりも大きな抜け止めが形成される、請求項2に記載の重量物の吊下構造。
【請求項4】
前記抜け止めと、前記固定ピンの軸方向端部との間には所定の間隙が設けられる、請求項3に記載の重量物の吊下構造。
【請求項5】
前記挿入孔は、前記第一の連結部材の先端部に形成され、
前記第一の連結部材の先端部における前記挿入孔に前記第二の連結部材の先端部を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に前記固定ピンが挿通される、請求項2から請求項4の何れか1項に記載の重量物の吊下構造。
【請求項6】
前記他方の先端部における、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合された際に前記一方の最先端部分によって被覆される部分の外周面には目印が形成される、請求項2から請求項5の何れか1項に記載の重量物の吊下構造。
【請求項7】
支持部材に支持される第一の連結部材と、
重量物を支持する第二の連結部材と、を備え、
前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方は他方を挿入可能とされ、
前記第一の連結部材には、前記第一の連結部材を貫通する第一の貫通孔が開口され、
前記第二の連結部材には、前記第二の連結部材を貫通する第二の貫通孔が開口され、
前記一方に前記他方を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合されて、前記重量物が前記支持部材に支持され、
前記固定ピンには、該固定ピンを軸方向に貫通する孔が開口され、
前記孔に紐状部材が挿通される、重量物の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量物の吊下構造及び支持構造に関し、詳細には表示装置等の重量物を構造物で支持するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置、照明装置、音響装置等の重量物を天井や梁から垂下させるための吊下構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献に記載の吊下構造によれば、天井に固定された固定部材と、重量物である映像表示装置に固定された連結棒部材とを連結することにより、映像表示装置を天井に支持している。詳細には、筒状の固定部材に連結棒部材を嵌入させ、固定部材と連結棒部材とに貫通された通孔にボルトを挿入することにより、映像表示装置を天井から吊下げる構成としている。
【0005】
上記の特許文献に記載の技術によれば、固定部材と連結棒部材とを連結しているボルトに亀裂や破断等の異常が発生した場合に、連結強度が低下したことを外部から確認することが難しい。特に、人が多く集まる場所に用いられるなどの理由で頻繁に検査することが困難な場合、外部から容易に安全性の確認ができる吊下構造が求められていた。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、連結部品に異常が発生した場合に、連結部品による連結状態を維持するとともに、連結強度が低下したことを外部から容易に確認することができる重量物の吊下構造及び支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する重量物の吊下構造を提供する。
【0008】
(1)
支持部材の下側で支持される第一の連結部材と、重量物を上側から支持する第二の連結部材と、を備え、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方は他方を挿入可能とされ、前記第一の連結部材には、前記第一の連結部材を貫通する第一の貫通孔が開口され、前記第二の連結部材には、前記第二の連結部材を貫通する第二の貫通孔が開口され、前記一方に前記他方を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合されて、前記重量物が前記支持部材の下方に吊下げられ、前記固定ピンには、該固定ピンを軸方向に貫通する孔が開口され、前記孔に紐状部材が挿通される、重量物の吊下構造。
【0009】
(2)
前記第一の連結部材は、先端部を下方に向けた状態で基端部が前記支持部材の下側に固定され、前記第二の連結部材は、先端部を上方に向けた状態で基端部が前記重量物の上側に固定され、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方の先端部には、他方の先端部を、互いに軸心を一致させた状態で挿入可能な挿入孔が形成され、前記第一の連結部材の先端部に、軸心と直交する方向に前記第一の連結部材の先端部を貫通する前記第一の貫通孔が開口され、前記第二の連結部材の先端部に、軸心と直交する方向に前記第二の連結部材の先端部を貫通する前記第二の貫通孔が開口され、前記一方の先端部における前記挿入孔に前記他方の先端部を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に前記固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合される、(1)に記載の重量物の吊下構造。
【0010】
(3)
前記紐状部材の両端部には、前記孔よりも大きな抜け止めが形成される、(2)に記載の重量物の吊下構造。
【0011】
(4)
前記抜け止めと、前記固定ピンの軸方向端部との間には所定の間隙が設けられる、(3)に記載の重量物の吊下構造。
【0012】
(5)
前記挿入孔は、前記第一の連結部材の先端部に形成され、前記第一の連結部材の先端部における前記挿入孔に前記第二の連結部材の先端部を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に前記固定ピンが挿通される、(2)から(4)の何れか一に記載の重量物の吊下構造。
【0013】
(6)
前記他方の先端部における、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合された際に前記一方の最先端部分によって被覆される部分の外周面には目印が形成される、(2)から(5)の何れか一に記載の重量物の吊下構造。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する重量物の支持構造を提供する。
【0015】
(7)
支持部材に支持される第一の連結部材と、重量物を支持する第二の連結部材と、を備え、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とのうち、何れか一方は他方を挿入可能とされ、前記第一の連結部材には、前記第一の連結部材を貫通する第一の貫通孔が開口され、前記第二の連結部材には、前記第二の連結部材を貫通する第二の貫通孔が開口され、前記一方に前記他方を挿入した状態で、前記第一の貫通孔と前記第二の貫通孔との双方に固定ピンが挿通されることにより、前記第一の連結部材と前記第二の連結部材とが結合されて、前記重量物が前記支持部材に支持され、前記固定ピンには、該固定ピンを軸方向に貫通する孔が開口され、前記孔に紐状部材が挿通される、重量物の支持構造。
【発明の効果】
【0016】
以上における本発明に係る重量物の吊下構造は、以下に示す効果を奏する。
【0017】
(1)の構成によれば、固定ピンが破断した場合に、紐状部材により第一の連結部材と第二の連結部材との連結状態を維持することができるとともに、吊下構造において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【0018】
(2)の構成によれば、固定ピンが破断した場合に、紐状部材により第一の連結部材の先端部と第二の連結部材の先端部との連結状態を維持することができるとともに、吊下構造において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【0019】
(3)の構成によれば、紐状部材が固定ピンから抜けて離脱することを防止できる。
【0020】
(4)の構成によれば、紐状部材を固定ピンに対して軸方向に変位させるだけで、吊下構造の安全状態を確認することができる。
【0021】
(5)の構成によれば、第二の連結部材に粉塵等が侵入することを防止できる。
【0022】
(6)の構成によれば、固定ピンが破断した場合に、吊下構造において連結強度が低下したことを外部から容易に視認することができる。
【0023】
また、本発明に係る重量物の支持構造は、以下に示す効果を奏する。
【0024】
(7)の構成によれば、固定ピンが破断した場合に、紐状部材により第一の連結部材と第二の連結部材との連結状態を維持することができるとともに、支持構造において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第一実施形態に係る重量物の吊下構造の使用状態を示す斜視図。
【
図2】第一実施形態に係る重量物の吊下構造の使用状態を示す正面図。
【
図3】第一の連結部材と第二の連結部材との連結部分の拡大斜視図。
【
図4】第一の連結部材と第二の連結部材との連結部分の正面断面図。
【
図6】固定ピンが破断した際の第一の連結部材と第二の連結部材との連結部分の拡大斜視図。
【
図7】固定ピンが破断した際の第一の連結部材と第二の連結部材との連結部分の正面断面図。
【
図8】第二実施形態に係る重量物の吊下構造の使用状態を示す正面図。
【
図9】(a)及び(b)は第二実施形態に係る重量物の吊下構造を示す正面図及び側面図。
【
図10】第三実施形態に係る重量物の支持構造の使用状態を示す正面図。
【
図11】(a)及び(b)は第三実施形態に係る重量物の支持構造を示す側面図。
【
図12】(a)及び(b)は第四実施形態に係る重量物の支持構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では
図1から
図7を用いて、本発明の第一実施形態に係る重量物の吊下構造(以下、単に「吊下構造」と記載する)1について説明する。本実施形態に係る吊下構造1は
図1及び
図2に示す如く、支持部材Cに重量物であるサイネージSを吊下げるものである。
図1及び
図2中に示す矢印は吊下構造1及びサイネージSの方向を示している。
【0027】
支持部材Cは図示しない天井に組付けられた部材であり、吊下構造1及びサイネージSを支持する。本実施形態において、吊下構造1はサイネージSの左側を支持する左側吊下構造1LとサイネージSの右側を支持する右側吊下構造1Rとの二個が用いられている。左側吊下構造1Lと右側吊下構造1Rとは同じ構成であるため、
図3以降においては一方の吊下構造1のみを図示して説明する。なお、重量物を吊下げる際に用いられる吊下構造1の個数は本実施形態における個数である二個に限定されるものではなく、一個又は三個以上で重量物を吊下げる構成とすることも可能である。
【0028】
サイネージSは表示パネルPに映像や文字を表示する表示装置であり、本発明に係る吊下構造1で吊下げる重量物の一形態である。サイネージSは直方体形状の筐体Bと、筐体Bにおける前側と後側のそれぞれに収容される表示パネルPと、筐体Bの上面に配置される四個のファンF等を備えている。表示パネルPは筐体Bの前面及び後面に配置される透明なガラス板を介して、外部から表示面が視認可能とされている。サイネージSの上側には箱状のカバー部材Rが設けられ、サイネージSの上面を被覆している。なお、吊下構造1で吊下げることのできる重量物としては、サイネージS以外の表示装置、照明装置、音響装置、装飾用機器、仮設用機器、棚等、様々な物を対象とすることができる。
【0029】
図3に示す如く、吊下構造1は、それぞれステンレス製の第一の連結部材11と第二の連結部材12とが結合されることにより構成されている。第一の連結部材11は円筒状に形成され、先端部を下方に向けた状態で基端部が支持部材Cの下側に固定されている。第二の連結部材12は第一の連結部材11の外径よりも少し大きな内径の円筒状に形成され、先端部を上方に向けた状態で基端部がサイネージSにおける筐体Bの上側に固定されている。第二の連結部材12の後方には、筐体Bとの接合強度を高めるために補強リブ13が固定されている。
【0030】
本実施形態においては
図1及び
図2に示す如く、カバー部材Rの内部には左側吊下構造1Lと右側吊下構造1Rとにおける第二の連結部材12が収容されている。このため、サイネージSの通常の使用状態において、吊下構造1における第一の連結部材11と第二の連結部材12との結合部分はカバー部材Rによって被覆される。
【0031】
本実施形態においては
図3から
図5に示す如く、第二の連結部材12の先端部には、第一の連結部材11の先端部を、互いに軸心を一致させた状態で挿入可能な挿入孔12hが形成されている。なお、本実施形態においては第一・第二の連結部材11・12を円筒状に形成しているが、それぞれの連結部材11・12の形状を他の形状とすることも可能である。例えば、連結部材11・12を角筒形状としたり、連結部材11・12を中実の円柱形状として第二の連結部材12の先端部分にのみ挿入孔12hを形成したりすることもできる。
【0032】
第一の連結部材11の先端部には、軸心と直交する方向(本実施形態においては左右方向)に第一の連結部材11の先端部を貫通する第一の貫通孔11aが開口されている。また、第二の連結部材12の先端部には、軸心と直交する方向(本実施形態においては左右方向)に第二の連結部材12の先端部を貫通する第二の貫通孔12aが開口されている。
【0033】
そして、
図3から
図5に示す如く、第二の連結部材12の先端部における挿入孔12hに第一の連結部材11の先端部を挿入した状態で、第一の貫通孔11aと第二の貫通孔12aとの双方に固定ピン14が挿通される。具体的には
図4に示す如く、固定ピン14は大径の頭部14aと棒状の挿入部14bで形成された金属製の部材であり、挿入部14bが第一の貫通孔11aと第二の貫通孔12aとに挿通される。より詳細には、挿入部14bは第一の連結部材11の左右に開口された第一の貫通孔11a・11aと、第二の連結部材12の左右に開口された第二の貫通孔12a・12aと、に挿通される。
【0034】
図3及び
図4に示す如く、挿入部14bの先端部分は頭部14aと反対側の第二の貫通孔12aから延出される。挿入部14bの先端部分における外周面には周方向に溝部14cが形成されている。この溝部14cに抜け止めのEリング15を取付けることにより、固定ピン14が第一の連結部材11と第二の連結部材12とに対して組付けられる。なお、第二の連結部材12の外周面と、頭部14a及びEリング15との間には座金16が介挿されている。このように、固定ピン14により第一の連結部材11と第二の連結部材12とが結合されることにより、サイネージSが支持部材Cの下方に吊下げられるのである。
【0035】
図4及び
図5に示す如く、固定ピン14には、固定ピン14を軸方向に貫通する孔14dが開口されている。そして、固定ピン14の孔14dには紐状部材21が挿通される。紐状部材21の素材には炭素繊維強化プラスチック等、靭性の高い強化繊維が用いられる。紐状部材21としては、ガラス繊維強化プラスチックや、樹脂繊維強化プラスチック等の他の強化繊維や、高靭性の他の素材を採用することも可能である。
【0036】
図3及び
図4に示す如く、紐状部材21の両端部は二つに折り返され、折り返された部分がクリップ22で挟み込まれている。紐状部材21を折り返した部分の外径は固定ピン14の孔14dの内径よりも大きいため、折り返し部分及びクリップ22が紐状部材21の抜け止めとして機能する。即ち、紐状部材21の折り返し部分をクリップ22で挟むことにより、紐状部材21が固定ピン14から抜けて離脱することを防止している。なお、抜け止めは上記の如くクリップ22を用いる構成と異なるものであっても良く、単に紐状部材21の端部に結び目を形成したり、別の部品を組付けたりして抜け止めを構成することも可能である。
【0037】
図6及び
図7は固定ピン14がサイネージSの重量によって破断した状態を示している。
図7に示す如く、固定ピン14が第一の連結部材11と第二の連結部材12との間で剪断力を受けて破断した場合でも、紐状部材21が第二の連結部材12を支持することができる。即ち、固定ピン14による第一の連結部材11と第二の連結部材12との連結強度が低下した場合でも、紐状部材21によって第一の連結部材11と第二の連結部材12との連結状態を維持することができるため、サイネージSの落下を防止することができるのである。
【0038】
また、固定ピン14が破断した場合、第二の連結部材12は
図7中の矢印Dに示す如く第一の連結部材11に対して破断前の位置から低下する。このため、サイネージSの使用者は吊下構造1において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【0039】
本実施形態に係る吊下構造1においては
図6及び
図7に示す如く、第一の連結部材11の先端部における、第一の連結部材11と第二の連結部材12とが結合された際に第二の連結部材12の最先端部分によって被覆される部分の外周面に目印11sが形成されている。これにより、通常の使用状態においては第二の連結部材12の最先端部(本実施形態においては第二の連結部材12の最上端部)で被覆される目印11s(
図3から
図5を参照)が、固定ピン14が破断して第二の連結部材12が下方に変位した際には
図6及び
図7に示す如く視認可能となる。このように、本実施形態に係る吊下構造1においては、固定ピン14の破断等により連結強度が低下したことを外部から容易に視認可能に構成されている。
【0040】
また、本実施形態においては
図4に示す如く、抜け止めである紐状部材21の折り返し部分と、固定ピン14の軸方向端部との間には所定の間隙dが設けられる。通常の使用状態において、紐状部材21には負荷は加わらないため、サイネージSの使用者が紐状部材21を固定ピン14に対して軸方向に力を加えると容易に変位させることができる。即ち、使用者が紐状部材21を変位させるだけで、紐状部材21に負荷が加わっていないことを確認することができるため、吊下構造1の安全状態を容易に確認することができるのである。
【0041】
なお、
図6及び
図7においては固定ピン14が完全に破断した状態を図示して説明したが、固定ピン14が破断する前に亀裂等の異常が発生した段階においても、第二の連結部材12からの負荷が加わった場合は紐状部材21を容易に変位させることが困難となる。このため、吊下構造1においては、固定ピン14が破断する前の段階においても、使用者が紐状部材21に対して軸方向に力を加えた場合には、紐状部材21に対して不自然な負荷が加わっていることを認識できる。即ち、吊下構造1においては、固定ピン14が
図7に示す如く完全に破断する前であっても、使用者が紐状部材21に対して軸方向に力を加えることにより異常を認識することができるのである。
【0042】
なお、本実施形態においては、第二の連結部材12の挿入孔12hに第一の連結部材11の先端部を挿入した状態で、第一の貫通孔11aと第二の貫通孔12aとに固定ピン14を挿通して第一の連結部材11と第二の連結部材12とを結合する構成としているが、これを逆にすることも可能である。
【0043】
即ち、第一の連結部材11に第二の連結部材12の外径よりも少し内径が大きい挿入孔を形成する。そして、この挿入孔に第二の連結部材12の先端部を挿入した状態で、第一の貫通孔11aと第二の貫通孔12aとに固定ピン14を挿通して、第一の連結部材11と第二の連結部材12とを結合する構成とすることも可能である。このように構成することにより、上向きに開口する第二の連結部材12の上端部を第一の連結部材11の内部に挿入することができるため、第二の連結部材12の内周側に粉塵等が侵入することを防止できる。
【0044】
次に、
図8及び
図9を用いて、本発明の第二実施形態に係る吊下構造101について説明する。本実施形態に係る吊下構造101は
図8に示す如く、支持部材である上側部材Gtに重量物である扉本体Dpを吊下げるものである。
【0045】
扉本体Dpは金属製の板材であり、扉本体Dpの両側に立設されたガイドレールG・Gに沿って上下方向にスライド可能に設けられる。上側部材Gtは両端部がガイドレールG・Gの上端部にそれぞれ固定される。扉本体Dpには側方に四個のガイドローラDr・Dr・・・が延出して設けられる。扉本体DpがガイドレールG・Gに沿ってスライドした際には、ガイドローラDr・Dr・・・がガイドレールG・Gに沿って回転する。
【0046】
扉本体Dpは吊下構造101及びロープ113を介して上側部材Gtの下方に吊下げられる。
図9(a)に示す如く、吊下構造101は、第一の連結部材である可動プーリ111と第二の連結部材である固定部材112とが結合されることにより構成されている。可動プーリ111にはロープ113が巻回されている。固定部材112は
図9(b)に示す如く断面視でU字状に形成され、扉本体Dpに設けられた補強部材Dsに固定されている。
【0047】
ロープ113は固定プーリP1~P6に巻回され、ロープ113を巻き上げることにより吊下構造101は昇降可能とされる。具体的には
図8に示す如く、ロープ113の一端部はモータMに接続されたプーリP1に連結されており、プーリP1から延出されたロープ113は固定プーリP2・P3を介して可動プーリ111に巻回される。さらに、ロープ113は固定プーリP4・P5を介して配され、ロープ113の他端部が固定プーリP6に連結される。固定プーリP6にはハンドルHが連結されている。
【0048】
上記の構成において、モータMがロープ113を矢印R1の方向に巻き上げると、吊下構造101は上方に引き上げられ、扉本体Dpは矢印Uに示す如く上方にスライドする。逆に、モータMがロープ113を矢印R2の方向に繰出すと、吊下構造101は自重で下方に変位し、扉本体Dpは下方にスライドする。このように、扉本体Dpが昇降することにより、ガイドレールG・Gの間に形成された開口部を開閉可能としている。なお、本構成においてモータMを使用しない場合、使用者がハンドルHを回動させることにより扉本体Dpを昇降させることも可能である。
【0049】
本実施形態においては
図9(a)及び(b)に示す如く、可動プーリ111の中心部には、可動プーリ111を貫通する第一の貫通孔111aが開口されている。また、固定部材112には、固定部材112を貫通する第二の貫通孔112aが開口されている。そして、
図9(b)に示す如く、固定部材112に可動プーリ111を挿入した状態で、第一の貫通孔111aと第二の貫通孔112aとの双方に固定ピン14が挿通される。固定ピン14は前記第一実施形態と同様に、大径の頭部14aと棒状の挿入部14bで形成された金属製の部材である。また、固定ピン14にはEリング15等についても第一実施形態と同様に設けられる。
【0050】
図9(b)に示す如く、固定ピン14には、固定ピン14を軸方向に貫通する孔14dが開口されている。そして、固定ピン14の孔14dには紐状部材21が挿通される。これにより、固定ピン14が可動プーリ111と固定部材112との間で剪断力を受けて破断した場合でも、紐状部材21が固定部材112を支持することができる。即ち、固定ピン14による可動プーリ111と固定部材112との連結強度が低下した場合でも、紐状部材21によって可動プーリ111と固定部材112との連結状態を維持することができるため、扉本体Dpの落下を防止することができるのである。
【0051】
また、固定ピン14が破断した場合、固定部材112は可動プーリ111に対して破断前の位置から低下する。このため、扉本体Dpの使用者は吊下構造101において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【0052】
次に、
図10及び
図11を用いて、本発明に係る第三実施形態である重量物の支持構造(以下、単に「支持構造」と記載する)201について説明する。本実施形態に係る支持構造201は
図10及び
図11に示す如く、支持部材である回動支持部210の上方で重量物である扉本体221を支持するものである。
【0053】
図10及び
図11に示す如く、扉本体221は上下に回動することにより壁体Wに形成された開口部Waを開閉する。扉本体221には下方に延出される二本の支持柱225・225が固定されている。また、支持柱225・225の基端部は壁体Wに固定された支持柱固定板222・222に回動可能に連結されている。具体的には、支持柱固定板222には支持部223・223が立設され、支持柱225の基端部が支持部223・223に対して枢支ピン224で回動可能に連結されている。これにより、扉本体221が壁体Wに対して回動可能とされる。
【0054】
扉本体221の中央部は回動支持部210によって下方より支持される。回動支持部210は、回動基端部214、回動基端部214に固定されるシリンダ215、シリンダ215から延出されるロッド216、及び、ロッド216の先端に設けられた第一の連結部材である回動先端部217で構成される。回動支持部210は、シリンダ215からのロッド216の延出量を調節することにより伸縮可能に構成されている。
【0055】
回動支持部210における回動基端部214は、壁体Wに固定された固定板211に回動可能に連結されている。具体的には、固定板211には支持部212・212が立設され、回動基端部214が支持部212・212に対して枢支ピン213で回動可能に連結されている。これにより、回動支持部210が壁体Wに対して回動可能とされる。
【0056】
回動支持部210における回動先端部217は、扉本体221に固定された第二の連結部材である回動支持板218・218に回動可能に連結される。具体的には、回動支持板218・218には貫通孔が開口されている。また、回動先端部217には、回動先端部217を貫通する貫通孔が開口されている。そして、
図10に示す如く、回動支持板218・218の間に回動先端部217を挿入した状態で、それぞれの貫通孔に固定ピン14が挿通される。固定ピン14は前記第一実施形態と同様に、大径の頭部と棒状の挿入部で形成された金属製の部材である。また、固定ピン14にはEリング等についても第一実施形態と同様に設けられる。
【0057】
上記の如く構成された扉本体221において、回動支持部210がシリンダ215からのロッド216の延出量を調節することにより、扉本体221は
図11(a)及び(b)に示す如く上下に回動する。これにより、扉本体221は壁体Wに形成された開口部Waを開閉可能とされている。具体的には、シリンダ215からのロッド216の延出量を大きくすることにより、
図11中の一点鎖線矢印に示す如く扉本体221が開口部Waを閉塞するのである。
【0058】
前記実施形態と同様に、固定ピン14には、固定ピン14を軸方向に貫通する孔が開口されている。そして、固定ピン14の孔には紐状部材21が挿通される。これにより、固定ピン14が回動支持板218・218と回動先端部217との間で剪断力を受けて破断した場合でも、紐状部材21が回動支持板218・218を支持することができる。即ち、固定ピン14による回動支持板218・218と回動先端部217との連結強度が低下した場合でも、紐状部材21によって回動支持板218・218と回動先端部217との連結状態を維持することができるため、扉本体211による開口部Waの開閉機能を維持できるのである。
【0059】
また、扉本体211の開放状態において固定ピン14が破断した場合、回動支持板218・218は回動先端部217に対して破断前の位置から低下する。このため、扉本体211の使用者は支持構造201において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【0060】
次に、
図12を用いて、本発明に係る第四実施形態である支持構造301について説明する。本実施形態に係る支持構造301は
図12(a)及び(b)に示す如く、支持部材である回動支持部310の下方で重量物である扉本体321を支持するものである。
【0061】
図12に示す如く、扉本体321は上下に回動することにより壁体Wに形成された開口部Waを開閉する。扉本体321にはブラケット325が固定されている。また、ブラケット325は壁体Wに固定された固定部322に回動可能に連結されている。具体的には、固定部322には支持部323が固定され、ブラケット325が支持部323に対して枢支ピン324で回動可能に連結されている。これにより、扉本体321が壁体Wに対して回動可能とされる。
【0062】
扉本体321は回動支持部310によって上方より支持される。回動支持部310は、図示しない支持部に回動可能に支持されるモータ315、及び、モータ316に挿通されるロッド316で構成され、ロッド316の先端部は第一の連結部材として構成される。回動支持部310は、モータ315からのロッド316の延出量を調節可能に構成されている。
【0063】
回動支持部310におけるロッド316の先端部は、扉本体321に固定された第二の連結部材である回動支持板318に回動可能に連結される。具体的には、回動支持板318には貫通孔が開口されている。また、ロッド316の先端部にも貫通孔が開口されている。そして、
図12に示す如く、回動支持板318にロッド316の先端部を挿入した状態で、それぞれの貫通孔に固定ピン14が挿通される。固定ピン14は前記第一実施形態と同様に、大径の頭部と棒状の挿入部で形成された金属製の部材である。また、固定ピン14にはEリング等についても第一実施形態と同様に設けられる。
【0064】
上記の如く構成された扉本体321において、回動支持部310がモータ315からのロッド316の延出量を調節することにより、扉本体321は
図12(a)及び(b)に示す如く上下に回動する。これにより、扉本体321は壁体Wに形成された開口部Waを開閉可能とされている。具体的には、モータ315からのロッド316の延出量を大きくすることにより、
図12中の一点鎖線矢印に示す如く扉本体321が開口部Waを閉塞するのである。
【0065】
前記実施形態と同様に、固定ピン14には、固定ピン14を軸方向に貫通する孔が開口されている。そして、固定ピン14の孔には紐状部材21が挿通される。これにより、固定ピン14が回動支持板318とロッド316の先端部との間で剪断力を受けて破断した場合でも、紐状部材21が回動支持板318を支持することができる。即ち、固定ピン14による回動支持板318とロッド316の先端部との連結強度が低下した場合でも、紐状部材21によって回動支持板318とロッド316の先端部との連結状態を維持することができるため、扉本体311による開口部Waの開閉機能を維持できるのである。
【0066】
また、扉本体311の開放状態において固定ピン14が破断した場合、回動支持板318はロッド316の先端部に対して破断前の位置から低下する。このため、扉本体311の使用者は支持構造301において連結強度が低下したことを外部から確認することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 重量物の吊下構造(吊下構造)
1L 左側吊下構造 1R 右側吊下構造
11 第一の連結部材 11a 第一の貫通孔
11s 目印 12 第二の連結部材
12a 第二の貫通孔 12h 挿入孔
13 補強リブ 14 固定ピン
14a 頭部 14b 挿入部
14c 溝部 14d 孔
15 Eリング 16 座金
21 紐状部材 22 クリップ
101 重量物の吊下構造(吊下構造)
111 可動プーリ(第一の連結部材)
111a 第一の貫通孔
112 固定部材(第二の連結部材)
112a 第二の貫通孔 113 ロープ
201 重量物の支持構造(支持構造)
210 回動支持部(支持部材)
211 固定板 212 支持部
213 枢支ピン 214 回動基端部
215 シリンダ 216 ロッド
217 回動先端部(第一の連結部材)
218 回動支持板(第二の連結部材)
221 扉本体(重量物)
222 支持柱固定板 223 支持部
224 枢支ピン 225 支持柱
301 重量物の支持構造(支持構造)
310 回動支持部(支持部材)
315 モータ
316 ロッド(第一の連結部材)
318 回動支持板(第二の連結部材)
321 扉本体(重量物)
322 固定部 323 支持部
324 枢支ピン 325 ブラケット
B 筺体 C 支持部材
D 矢印 F ファン
P 表示パネル R カバー部材
S サイネージ(重量物)
d 間隙 Dp 扉本体(重量物)
Ds 補強部材 Dr ガイドローラ
G ガイドレール Gt 上側部材(支持部材)
M モータ H ハンドル
P1~6 固定プーリ U 矢印
R1・2 矢印 W 壁体
Wa 開口部