(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】金属含有ポリマー吸着剤を含むエアフィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20220606BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20220606BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20220606BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20220606BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20220606BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220606BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
B01D39/14 L
B01D46/00 302
B01D46/10 Z
B01D46/52 Z
B03C3/28
A61L9/01 H
B01J20/26 A
B01D39/14 C
B01D39/14 E
(21)【出願番号】P 2019525015
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 US2017061258
(87)【国際公開番号】W WO2018089877
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-10
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドランド, マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】マーナム, デレク エム.
(72)【発明者】
【氏名】コベ, マイケル ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】グロート, オースティン ディー.
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517024(JP,A)
【文献】国際公開第2015/095115(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第01066480(GB,A)
【文献】特開2000-225180(JP,A)
【文献】特開2003-205023(JP,A)
【文献】特開2013-127372(JP,A)
【文献】特開平01-121058(JP,A)
【文献】OGAWA,N. et al.,Journal of Applied Polymer Science,1984年,vol.29,p.2851-2856
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/34
A61L9/00-9/22
B01D39/00-39/20
B01D46/00-46/54
B01D53/02-53/18
B01J39/00-49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤粒子を支持するフィルタ支持体を備えるエアフィルタであって、前記吸着剤粒子の少なくともいくつかは、多孔質であり、ポリマー材料であって、
a)i)15~65重量%の、式(I)、式(II)、又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、
【化1】
ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及び
【化2】
iii)0~40重量
%の、式(IV)で表される第3のモノマー単位
【化3】
(式中、R
1は水素又はアルキルである)
を含むポリマーと、
b)前記ポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmolに相当する量で前記ポリマー材料中に組み込まれた二価金属と、
を含むポリマー材料を含む、エアフィルタ。
【請求項2】
前記フィルタ支持体が、内部を呈する繊維ウェブを含み、前記多孔質ポリマー吸着剤粒子が、前記ウェブの前記内部の少なくとも部分内に配置されている、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記繊維ウェブの少なくともいくつかの繊維がそれぞれ、少なくとも1つの多孔質ポリマー吸着剤粒子に結合されている、請求項2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタ支持体が濾過フェースピース呼吸マスクの層を提供する、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項5】
前記濾過フェースピース呼吸マスクが、平坦折り畳み式呼吸マスク及び成形された呼吸マスクからなる群から選択される、請求項4に記載のエアフィルタ。
【請求項6】
前記フィルタ支持体が、多孔質ポリマー吸着剤粒子が配置された内部を有し、かつ少なくとも1つの空気吸入口及び少なくとも1つの空気排出口を有する容器を含む、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項7】
150g/mol以下の分子量を有する塩基性窒素含有化合物の少なくともいくらかを空気から捕捉する方法であって、
前記多孔質ポリマー吸着剤粒子が前記空気に曝露されるように、請求項1に記載のエアフィルタを配置することと、
前記塩基性窒素含有化合物の少なくともいくらかを前記多孔質ポリマー吸着剤粒子上に吸着することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景技術]
空気から、例えばアンモニアなどの物質を除去することを所望されることは多い。
【0002】
[発明の概要]
大まかに要約すると、本明細書では、二価金属を含む多孔質ポリマー吸着剤粒子を有するフィルタ支持体を備えるエアフィルタを開示する。これら及び他の態様は、下記の発明を実施するための形態から明らかとなろう。しかしながら、いかなる場合であっても、このような主題が、本出願の出願当初の特許請求の範囲において、又は補正後の特許請求の範囲において提示されたものであろうと、あるいはまた、中間処理において提示されたものであろうと、この大まかな要約は、特許請求可能な主題を限定するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】本明細書に開示の吸着剤粒子を有するフィルタ支持体を備える例示的なエアフィルタの一部を示す図である。
【
図2】別の例示的なエアフィルタの一部を示す図である。
【
図3】別の例示的なエアフィルタの一部を示す図である。
【
図4】別の例示的なエアフィルタの一部を示す図である。
【
図5】別の例示的なエアフィルタの一部を示す図である。
【
図6】本明細書に開示の吸着剤粒子を有するフィルタ支持体を備える例示的な呼吸マスクを示す図である。
【
図8】本明細書に開示の吸着剤粒子を有するフィルタ支持体を備える、フレーム付きのプリーツ加工されたエアフィルタを示す図である。
【0004】
[発明を実施するための形態]
用語解説
用語「エアフィルタ」は、フィルタ支持体によって支持されている本明細書に記載のポリマー吸着剤粒子が、浮遊物質を空気から除去できるように、空気、例えば移動空気の流れに暴露される、任意の装置(apparatus又はdevice)を指す。用語「フィルタ支持体」は、吸着剤粒子を保持することができ、吸着剤粒子を、例えば、移動空気の流れに暴露することができるが、移動空気から微細粒子は必ずしも濾過するわけではない任意の構造体を指す。用語「濾材」は、それ自体が微細粒子を濾過することができるフィルタ支持体を指す。「微細」粒子は、平均直径(又は非球状粒子の場合は相当直径)が100ミクロン未満の粒子である。「微」粒子は、平均直径又は相当直径が10ミクロン未満の粒子である。
【0005】
用語「ポリマー吸着剤」及び「多孔質ポリマー吸着剤」は同じ意味で用いられ、多孔質であり、浮遊物質(例えば、ガス状又は蒸気状物質、特に、アンモニアに例示されるような塩基性窒素含有化合物)を吸着できるポリマー材料を指す。多孔質材料は、加水分解されているか否かにかかわらず、少なくとも約50m2/gのBET比表面積(例えば本明細書に開示されている二価金属の含浸前に、二価金属の非存在下で測定される)を示す材料を意味する。このような材料は、多くの場合、例えばこれらの細孔の径に基づいて特徴付ける。用語「ミクロ細孔」は、2ナノメートル未満の直径を有する細孔を指す。用語「メソ細孔」は、2~50ナノメートルの範囲の直径を有する細孔を指す。用語「マクロ細孔」は、50ナノメートル超の直径を有する細孔を指す。
【0006】
用語「上流」は、フィルタが移動空気に暴露される状況に用いることができ、移動空気がフィルタに遭遇する方向を指し、「下流」は、濾過された空気がフィルタから流出する方向を指す。
【0007】
用語「ネット」は、中実材料、例えばフィラメントの比較的少ない層(5つ以下、多くの場合1つ)から構成されるフィルタ支持体を指す。
【0008】
用語「繊維ウェブ」は、繊維の多数の層(例えば、5つ超)から構成されるフィルタ支持体を指す。
【0009】
用語「メルトブローン」は、溶融ポリマー流を、押出オリフィスにごく近接して配置された吹き出しオリフィスを介して導入された、収束する高速空気流中に押出成形することによって形成される繊維(及びその結果得られる繊維ウェブ)を指す。当業者であれば、メルトブローン繊維及びウェブが、このような繊維及びウェブを同定し、また、他の種類のウェブと識別することが可能な特色及び特徴(例えば、複屈折などの光学的性質、融解挙動などによって明らかとなるような、繊維を構成する材料の分子の配向の違いなど)を、特徴的に呈することを理解するであろう。
【0010】
図1の一般的な図に示すように、エアフィルタ1を開示する。エアフィルタ1は、浮遊(例えばガス状又は蒸気状)塩基性含窒素材料を空気から少なくとも部分的に除去できるように、本明細書に開示の多孔質ポリマー吸着剤粒子100を空気、例えば移動空気の流れ(空気流の全体的な方向は、例示的な実施形態において、
図1及び他の図中のブロック矢印によって示す)に暴露させる任意の装置(apparatus又はdevice)であり得る。したがって、エアフィルタ1は、液体を処理する装置、例えばイオン交換膜及び装置とは区別される。
【0011】
エアフィルタ1は、少なくとも1つのフィルタ支持体10を備える。フィルタ支持体10は、空気が移動している場合、移動空気によって吸着剤粒子100が脱落しないように吸着剤粒子100を保持しながら、吸着剤粒子100を空気に暴露させるように支持する、任意の構造体とすることができる。空気が移動している場合、空気は、層流中又は乱流中に個々の吸着剤粒子に遭遇する場合がある、又は、例えば、吸着剤粒子の集合を通過する流動様式の間を遷移する場合がある。1つの一般的な種類の実施形態において、フィルタ支持体10は、
図1の一般的な図に示すように、吸着剤粒子100が上に提供され(例えば、その主表面に付着され)、例えば空気の移動流が横断し得る、基材の形態をとる場合がある。この種のいくつかの実施形態において、フィルタ支持体10は、吸着剤粒子100を、例えばフィルタ支持体に付着された(例えば、接着剤結合された)吸着剤粒子として、保持する場合がある。別の一般的な種類の実施形態において、フィルタ支持体10は、例えば
図2の一般的な図に示すように、吸着剤粒子をフィルタ支持体内に機械的に保持することによって、吸着剤粒子100を保持する場合がある。(換言すれば、このような実施形態において、吸着剤粒子は必ずしもフィルタ支持体に付着されていない場合があるが、フィルタ支持体は、吸着剤粒子がフィルタ支持体から脱落及び除去されるのを物理的に阻止することができる。)いくつかの実施形態において、吸着剤粒子のフィルタ支持体への機械的保持と、付着(例えば結合)との組み合わせを用いる場合がある。
【0012】
いくつかの実施形態において、エアフィルタ1は、吸着剤粒子100を有するフィルタ支持体10であり得る(例えば、本質的にフィルタ支持体10からなり得る。)(例えば、このようなフィルタ支持体の自立部品を、例えば室内空気清浄器内に取り付けることができる。)。他の実施形態において、エアフィルタ1は、任意の目的のため、所望により、(少なくとも1つのフィルタ支持体10に加え)他の層を備える場合があり、かつ/又は、例えば、周囲フレーム、1つ以上の補強部材若しくは安定化部材、1つ以上のハウジング部品などの任意の他の補助的な構成要素を更に備える場合がある。様々な特定の例示的な実施形態及び状態を、本明細書において後に詳述する。
【0013】
図1について説明したように、いくつかの実施形態において、フィルタ支持体は、主表面上に吸着剤粒子100が配置されている、例えば付着されている基材(非通気性又は通気性であり得る基材)の形態をとる場合がある。この種のエアフィルタは、例えば、その主表面に付着された吸着剤粒子を保持する平面基材、吸着剤粒子がその内表面に付着された中空管、又は、吸着剤粒子が流動チャネルの内表面に付着された積層若しくは入れ子の微細構造化された基材によって提供される流動チャネルのアレイ(例えば、Insleyへの米国特許第7955570号に記載の一般的な種類のもの)などを備える場合がある。いくつかの実施形態において、吸着剤粒子100は、例えば任意の工業規模の堆積プロセスにおいて統計学的に生じ得るような副次的な積層を除き、少なくとも実質的に単層として(例えば
図1に示すように)、基材の表面上に提供することができる。
【0014】
図2に関しては、フィルタ支持体という用語は、吸着剤粒子100を内部に保持するように設計され、容器の内部13に空気を入れるための少なくとも1つの空気吸入口11と、処理された空気を容器から排出させるための少なくとも1つの空気排出口12とを含む、任意の容器を広範に包含する。この一般的な種類のこのような支持体は、吸着剤粒子100が、例えば1つ以上の射出成形されたハウジング部品から作製されたカートリッジハウジング内に保持されている、公知のフィルタカートリッジを含む場合がある。このようなフィルタカートリッジには、単一の空気吸入口及び/若しくは空気排出口が設けられる場合がある、又は、フィルタカートリッジハウジング内に多数の貫通孔が設けられ、空気吸入口若しくは空気排出口が集合的に設けられる場合がある。このような貫通孔は、吸着剤粒子が貫通孔を通過するのを防止する適切なサイズであってもよく、かつ/又は、いくつかの実施形態において、吸着剤粒子をカートリッジハウジング内に確実に保持するため、通気性保護層(例えば、スクリーン又はメッシュ)を設ける場合がある。いくつかの実施形態において、フィルタ支持体は、
図1の設計のように、吸着剤粒子に近接した(例えば、支持及び保持する)支持体の位置において、非通気性である場合がある(例えば、貫通孔を含まない場合がある。)。他の実施形態において、フィルタ支持体は、
図2の設計のように、吸着剤粒子に近接した支持体の位置において、通気性であり得る(例えば、1つ以上の貫通孔を含み得る。)。いくつかの実施形態において、容器の形態のフィルタ支持体(例えば、フィルタカートリッジ)は、例えば、共に組み立てられ、空気吸入口(複数可)及び空気排出口(複数可)を除き、非通気性であり得る、1つ以上の射出成形されたハウジング部品から構成される場合がある。このようなハウジング部品は、例えば、ポリアミド、ポリスチレン、ABSポリマー、ポリオレフィンなどから選択される熱可塑性若しくは熱硬化性ポリマー又はコポリマーから、好都合に作製することができる。このような容器はまた、例えば、1つ以上の弾性ガスケット、ラッチ、スプラッシュガード、コネクタ(例えば、カートリッジを、例えば個人用呼吸保護装置に連結するために必要な場合)などの補助的な構成要素を含む場合がある。
【0015】
(例えば
図2のように)容器の形態であるフィルタ支持体10は、例えば射出成形部品から作製された剛性カートリッジの形態をとる必要は、必ずしもないことを強調しておく。むしろ、いくつかの実施形態において、このような容器は、例えば、2つの通気性の「壁」の形態をとることがあり、「壁」のうち少なくとも1つは比較的可撓性の材料(例えば、繊維ウェブ、穿孔又は微細孔可撓性ポリマーフィルムなどの多孔質基材)から作製され、吸着剤粒子がこれら2つの壁の間に挟持されている。このような容器(概してフィルタ「カートリッジ」とも呼ばれる。)は、例えばパウチ又はサシェの形態をとる場合がある。
【0016】
更に、フィルタ支持体という用語はまた、その上又は内部に吸着剤粒子100が配置されている、任意の多孔質の通気性材料を広範に包含する。(多孔質の通気性材料は、空気流が材料を通過できるように相互連結された内部多孔性を有する材料を意味し、例えば独立気泡発泡体とは区別される。)このような材料は、例えば任意の好適な種類の連続気泡発泡体材料であってもよい、又は、このような材料は、多孔質膜、例えば、転相膜、トラックエッチ膜(例えば、Whatmanより商標名NUCLEPOREで入手可能な様々な製品によって例示される種類のもの)、若しくは、伸長膨張した膜(例えば、W.L Gore and Associatesより商標名GORE-TEXで入手可能な様々な製品及びCelgard corporationより商標名CELGARDで入手可能な様々な製品によって例示される種類のもの)であってもよい。この一般的な種類のフィルタ支持体10は、例えば、上記のように、これらの間に空間を画定するように対で用いられることに限定されるものではないことが理解されよう。使用の特定の態様に関わらず、このようなフィルタ支持体10は、いくつかの実施形態において、主平面を呈し、約8、5、3、又は1mm未満の厚さを呈し、少なくともシート状材料の主平面に少なくともほぼ垂直な方向に空気流がフィルタ支持体を通過できるように構成されているシート状材料の形態をとる場合がある。
【0017】
上記の説明から、本明細書に開示のフィルタ支持体は、吸着剤粒子を空気、例えば移動空気の流れに暴露することができる、任意の形態又は幾何学的形状の(かつ、例えば、無孔質基材、通気性ネット、若しくは多孔質発泡体などの単一体からなる、又は、フィルタカートリッジを集合的に形成する部品の、組み立てられた組み合わせから作製された)、任意の材料又は状態を、広範に包含することが理解されよう。いくつかの実施形態において、フィルタ支持体は、移動空気が、例えば、吸着剤粒子を保持する支持体の主表面と少なくともほぼ平行に流動し得るように(例えば、
図1の状態のように)構成することができる。いくつかの実施形態において、移動空気は、支持体の主表面に少なくともほぼ垂直に流動し得る(例えば、
図2の状態のように)。いくつかの実施形態において、移動空気は、これら2つの両極端の中間の方向に流動し得る。いくつかの実施形態において、両方向及び/又はこれら2つの両極端の中間の方向の空気流が、例えばエアフィルタの異なる部分に生じ得る。
【0018】
図3に例示的に示した一般的な種類の実施形態において、エアフィルタ1は、「ハニカム」15の形態のフィルタ支持体10を備える場合がある。当業者であれば、ハニカムを、空気流を通過させることができる多数の肉眼で見える貫通孔(through-apertures)を含み、開口(apertures)が、ハニカム構造の隔壁(壁)によって互いに分離されている、流動支持構造体として認識するであろう。(ここでは便宜上、ハニカムという用語を用いているが、当業者であれば、この構造体が任意の形状の(例えば、正方形、三角形、円形などの開口を有する)ものであってもよく、
図3の例示的な設計に示した正六角形状に厳密に限定されるものではなく、若干不規則な外観を呈し得ることを理解するであろう。)このようなハニカムは、かなり大きい直径又は相当直径(例えば10~15mm)の貫通孔を含む場合が多く、例えばわずか数mm以下の直径又は相当直径の流動チャネルを含む場合が多い上記の積層微細構造化された基材とは対照的である。ハニカムの壁は、例えば、成形又は押出成形されたプラスチック、板紙若しくは厚紙、金属などの任意の好適な材料から作製することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、吸着剤粒子がハニカムの開口を画定する内壁に付着される場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態において、
図3のように、ハニカムの開口に吸着剤粒子を部分的又は少なくとも実質的に充填する(例えば、吸着剤粒子の平均粒度、粒度分布、及び形状に応じ、充填挙動により許容される程度に)のが好都合な場合がある。このような場合、ハニカムには、ハニカムの貫通孔に空気流を流入及び排出させ、かつハニカムの貫通孔内に吸着剤粒子を保持する、上流及び下流の通気性基材(例えば、好適なメッシュ又はスクリーン)を設けることができる。(
図3の例示的なハニカムにおける空気流の方向は、円/点矢印で示すように、平面外を向いている。)いくつかの実施形態において、吸着剤粒子は、例えば粒子がわずかに動ける又は移動できるように、開口内にゆるく充填してもよい。他の実施形態において、例えば、開口内での粒子の移動又は沈降を最小限に抑えるように、吸着剤粒子を相互に結合してもよい(例えば、浮遊物質を捕捉する粒子の能力に影響を及ぼすような、粒子を許容できないほど閉塞させる量ではなく、粒子が接触点で互いに結合するのに十分な量で、接着剤、熱活性化結合剤などを用いることによって)。換言すれば、いくつかの実施形態において(必ずしもハニカムでの使用に限定されるものではなく)、吸着剤粒子100は、個々の粒子として提供されるのではなく、共に結合された粒子の集合体によって集合的に提供される、一体構造の通気性ブロック(任意の所望のサイズ及び形状のもの)の形態で提供される場合がある。このような一体構造を製造する例示的な方法(この場合もやはり、任意の所望のエアフィルタに組み込む、例えば、カートリッジ若しくはキャニスタなどの容器に嵌合するために、又は、例えば呼吸マスクの層を形成するために、任意の好適なサイズ及び形状を有し得る。)は、例えばBraunへの米国特許第5033465号に説明されている。吸着剤粒子同士を結合し、特に、少なくとも半可撓性である(したがって、例えば、可撓性呼吸マスクでの使用に特に好適であり得る。)構造体を製造する方法は、例えばSenkusへの米国特許第6391429号に説明されている。
【0020】
当業者であれば、いくつかの上記の実施形態の間(例えば、吸着剤粒子が中空管内に提供されたものと、積層微細構造化された基材によって画定されたチャネル内に提供されたものと、ハニカムの開口内に提供されたものとの間)に、確固とした境界線は必ずしも存在し得ないことを理解するであろう。このような設計及び状態、並びにこれらの組み合わせの全てが、本明細書に開示の、1つ以上のフィルタ支持体を備えるエアフィルタの一般的な概念の範囲内に包含される。なお、いくつかの実施形態において、本明細書に開示のエアフィルタ1は、例えば充填層を形成するように、任意の好適な容器(例えば剛性又は少なくとも半可撓性である、任意の幾何学的形態でかつ任意の材料から作製されたもの)の内部に部分的に充填された、又は、少なくとも実質的に充填された吸着剤粒子を有し得ることに、特に留意されたい。いくつかの実施形態において、このような容器は、中空管、例えば、Draeger管と呼ばれることが多いガス検知管に類似した管の形態をとる場合がある。
【0021】
いくつかの実施形態において、フィルタ支持体10は、
図4の例示的な一般的な図に示すように、空気流を通過させる多数の貫通孔22を有する薄いシート状材料を含む場合がある。様々な実施形態において、フィルタ支持体10は、任意の好適なネット、メッシュ、スクリーン、スクリム、織布又は編物材料、溶融紡糸材料、微細孔フィルムなどの形態をとる場合がある。ネットという用語は、フィラメント(又は、概して、貫通開口の間の中実材料の層)の比較的少ない層(5つ以下、多くの場合、
図4のように単層)から構成される、任意のこのような材料を記述する際、便宜上本明細書において用いられる。多くの場合、このようなフィラメント(又はシート状フィルタ支持体材料、例えば微細孔フィルムの中実部分)は、直径又は相当直径が比較的大きい(例えば、0.1、0.2、又は0.5mm以上)。このようなネットは、任意の好適な材料、例えば有機ポリマー、無機材料(例えば、ガラス又はセラミック)、又は金属若しくは合金から構成され得る。
【0022】
このような実施形態において、空気流は、主として、ネットの中実部分21(例えばフィラメント)の間の貫通孔22を通して発生し得る。その結果、空気流は、支持体に少なくともほぼ垂直に方向付けられるが、所望により、空気流はネットに少なくともほぼ平行に発生する場合がある。ネットを通過するほぼ垂直な空気流の場合、吸着剤粒子を、(
図4のように)ネットの上流側23に配置するのが好都合な場合がある。しかしながら、所望により、吸着剤粒子を、ネットの下流側24に配置してもよい。特定の実施形態において、吸着剤粒子をネットの両側に配置してもよい。いくつかの実施形態において、
図1及び4の例示的な実施形態におけるように、吸着剤粒子を有するネット(又は、概して、任意の十分に通気性の基材)が、「開放面」として用いられる場合がある。他の実施形態において、十分に通気性である二次保持層(例えば、ネットの第2の層、又は繊維ウェブの層、微多孔性膜など)を吸着剤粒子の上に配置し、吸着剤粒子を適所に保持するのを補助してもよい。(換言すれば、吸着剤粒子は、ネットと二次保持層との間に挟持されている場合がある。)
【0023】
多くの実施形態において、吸着剤粒子100は、例えば、ネットの一方の少なくとも1つの主表面上に提供された接着剤、例えば感圧接着剤、ホットメルト接着剤、エポキシ接着剤など28を介し、ネットの中実材料(例えば、フィラメント)に結合、例えば接着剤結合され得る。吸着剤粒子はそれぞれ、例えば単一のフィラメントに結合され得る、又は、複数のフィラメントに結合され得る。フィラメントの平均直径、及びフィラメントの間の貫通孔の平均サイズは、所望により、吸着剤粒子の平均粒度を考慮して選択することができる。様々な実施形態において、このようなネットは、例えば0.2mm~約2.0mmの範囲の平均フィラメント直径を呈し得る。様々な実施形態において、ネットの開口は、例えば、最短寸法約0.5mm~最長寸法約5mmの範囲であり得、吸着剤の粒度を考慮して選択され得る。具体例としては、約1~2mmの範囲の開口を有するネットは、8×20メッシュの範囲の粒度を呈する吸着剤との使用に非常に好適であり得る。本明細書に開示の使用に好適であり得る例示的なネットとしては、Delstar Technologiesより(例えば商標名DELNETで)入手可能な様々な製品、例えば、商標名KX215P、R0412-10PR、RB0404-10P、N02014-90PP、RB0404-28P、N03011-90PP、及びTK16-SBSHで入手可能な製品が挙げられる。
【0024】
特定の実施形態において、好適な感圧接着剤28がネットの主表面上に提供される場合がある(換言すれば、感圧接着剤は、ネットのその主表面を集合的に提供するフィラメントの表面上に提供される場合がある)。これは、例えば、感圧接着剤前駆体をネット上にコーティングした後、前駆体を感圧接着剤に変換することによって実施され得る。前駆体は、例えば、有機溶媒(複数可)溶液、エマルジョン、ホットメルト組成物などであり得る。このような前駆体は、例えば、乾燥によって溶媒及び/又は水を除去することにより、冷却してホットメルト組成物を固化させることによるなどして、変換することができる。堆積及び変換は、(フィルタの通常使用において空気流がネットを通過しないことになっている場合を除き)ネットの貫通孔の許容できない充填又は目詰まりを回避するように実施しなくてはならない。
【0025】
いくつかの実施形態において、ネット上に配置されている粒子は、(例えば機械的な絡み合いによってではなく)主として、例えば接着剤結合によってネットに付着され得ることが理解されよう。いくつかの実施形態において、吸着剤粒子は、少なくとも実質的に単層の形態で、フィルタ支持体上に存在し得る。他の実施形態において、吸着剤粒子は、多層(例えば、吸着剤粒子の第1層をネットの主表面に接着剤結合し、追加の接着剤を吸着剤粒子の第1層の上に適用し、より多くの吸着剤粒子を堆積させ、このプロセスを繰り返し、任意の所望の深さの吸着剤粒子の集合を構築することによって作製される。)に存在し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、フィルタ支持体10は、
図5の例示的な実施形態に示すように、多くの場合互いに絡み合い、多くの場合多数の「層」(例えば、5層超)に存在する多数の繊維から構成されるシート状材料を含む場合がある。繊維ウェブという用語は、任意のこのような材料を記述する際、便宜上本明細書において用いられる。当然のことながら、多くのこのような繊維ウェブのランダム性のため、繊維は、必ずしも、また、多くの場合、別個の層(例えば、互いから剥離することができる層)には存在し得ないことが理解されよう。しかしながら、これは、このようなウェブの厚さ(深さ)を、(
図5のように)ウェブの第1の主表面43からウェブの第2の主表面44に通過する際、例えば5つ以上の別個の繊維又は繊維の区画に遭遇すれば、容易に明らかとなろう。このような繊維状態を呈する任意の材料は、本明細書で用いられる繊維ウェブの定義の中に入る。
【0027】
このような繊維は、直径又は相当直径が比較的小さい(例えば、100、80、60、40、20、10、5、又は2μm未満)場合が多い。当然のことながら、様々な直径の繊維の混合物を用いてもよい。このような繊維ウェブは、任意の好適な種類のウェブ、例えば、繊維が比較的ランダムに配列されている不織布ウェブであり得る(例えば、カードウェブ及び特定の種類の繊維堆積方法において発生し得るような、部分量の繊維配列は除く。)。あるいは、このような繊維ウェブは、繊維が十分な数の層で提供されている、編物又は織布ウェブから構成される場合がある。典型的には、空気は、ウェブの多数の繊維の間の間隙空間を通過することによってウェブ中を流動し、多くの場合、このような空気流は、
図5のように、繊維ウェブの主平面に少なくともほぼ垂直に方向付けられる。しかしながら、所望により、繊維ウェブの主平面に少なくともほぼ平行に空気流が発生する場合がある。このような繊維ウェブの繊維は、(ウェブが、加工及び取り扱いに十分な機械的完全性を有するように)任意の好適な方法で、互いに結合することができる。このような結合方法は、例えば、水流交絡、ニードルパンチ、カレンダー加工などから選択され得る。いくつかの実施形態において、繊維は、自発的に互いに結合され得る。すなわち、繊維は、オーブン内で得られるような高温において、又は点結合若しくはカレンダー加工におけるような固体の接触圧を加えずに、いわゆるスルーエアボンダーによって結合される。特定の実施形態において、繊維は、Foxへの米国特許第7947142号に記載の一般的な種類の自発結合法を用いて結合させることができる(加熱空気の流れを繊維の集合の中に通過させた後、強制的にクエンチさせる。)。又は、1つ以上のバインダー(繊維、固体粒子、水性エマルジョンなどの形態)を加えた後に活性化し(例えば加熱により)、繊維同士を結合し、最終的なウェブを形成してもよい。このような結合操作(繊維の絡みによって主として機械的に達成される、又は、繊維の融着及び/又は加えられたバインダーを用いて達成される。)は、以下に説明するように、吸着剤粒子をウェブ上に結合する役割を更に果たす場合がある。
【0028】
いくつかの実施形態において、
図4のネット上の粒子の状態とある程度同様に、吸着剤粒子100を、繊維ウェブの主表面(例えば、上流の主表面)上に主として又は限定して、堆積させる場合がある。いくつかの実施形態において、吸着剤粒子の少なくともいくつかが、少なくとも部分的に繊維ウェブの内部に貫入している場合がある。(これは、例えば
図4のようなフィラメントの単層によってもたらされるネットの状態、すなわち、支持体が吸着剤粒子が貫入できる「内部」をほとんど又は全く呈していない場合とは対照的である。)いくつかのこのような実施形態において、吸着剤粒子は、主として、吸着剤粒子がその上又は内部に堆積された、主表面に近接した繊維ウェブの領域に見出すことができる。しかしながら、多くの実施形態において、粒子が表面上に残存する、又は、繊維ウェブの内部に短い距離だけ貫入するように、粒子が一方の表面上に例えば堆積されるのではなく、吸着剤粒子100が、(
図5の例示的な実施形態に示すように)繊維ウェブの厚さ全体に広く分散されるのが望ましい場合がある。吸着剤粒子がウェブの内部全体に広く(例えば、ランダムに)分散された繊維ウェブを形成する好適な方法は、本明細書において後述する。
【0029】
特定の実施形態において、繊維ウェブフィルタ支持体は、不織布ウェブであり得る。定義によると、不織布繊維ウェブは、例えば織布若しくは編物、又は微細孔フィルムを包含しない。このようなウェブは、任意の好適な方法で製造することができ、任意の好適な種類のものとすることができる。例えば、このような不織布ウェブは、カードウェブ;湿式ウェブ(例えば製紙プロセスによって製造される。);例えば、公知のRando-Webberプロセスなどの従来のエアレイプロセスによって製造された、若しくは、Lalouchへの米国特許第8834759号に記載の重力レイプロセスなどの専用プロセスによって製造された、乾式ウェブ;又は溶融紡糸ウェブ(例えばスパンボンドウェブ、スパンレースウェブなど)であり得る。(特定の例えばスパンボンドウェブ又はスパンレースウェブは、例えば形成される繊維の深さによって、繊維ウェブではなく、ネットとして適している場合があることが理解されよう。)特定の実施形態において、不織布ウェブはメルトブローンウェブであり得、そのプロセス及び得られるウェブは、当業者には公知である。これらの様々な材料の層の任意の組み合わせ(不織布ウェブではない層との組み合わせを含む)を用いることができる。繊維は、任意の好適な材料、例えば、熱可塑性有機繊維(例えば、ポリオレフィン繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維など)、無機繊維(繊維ガラス又はセラミック繊維など)、金属繊維などから作製され得る。
【0030】
吸着剤粒子100は、多孔質材料、例えば不織布ウェブなどの繊維ウェブ上及び/又は内部に提供され、任意の好適な方法により、本明細書に開示のエアフィルタのフィルタ支持体を形成することができる。いくつかの実施形態において、吸着剤粒子は、あらかじめ存在する繊維ウェブ上又はその中に堆積されている場合がある。例えば、いくつかの実施形態において、不織布ウェブは、接着性繊維及び/又は非繊維状バインダー(非繊維状バインダーは、例えば粒子、エマルジョン又はラテックスなどの形態をとり得る。)などの、1つ以上の結合構成成分を含む場合がある。ウェブは、このような結合構成成分(複数可)を軟化及び活性化する温度まで加熱することができ、次いで、吸着剤粒子を不織布ウェブの主表面上に堆積させ、主表面に結合させることができる。多数のこのようなプロセスにより、吸着剤粒子は、優先的に、吸着剤粒子が堆積された不織布ウェブの主表面上又は主表面に近接して存在することとなり得ることが理解されよう。所望により、このようなプロセスを複数回繰り返し、連続層同士を結合し、内部に吸着剤粒子を含む多層製品を形成することができる。
【0031】
他の実施形態において、吸着剤粒子を、ウェブの製造プロセス中に、不織布ウェブ中に導入してもよい。例えば、不織布ウェブがメルトブローにより製造される場合、吸着剤粒子を、初期繊維の流動する流れに導入するのが好都合な場合がある(初期繊維という用語は、繊維となる固化を開始した可能性のある、若しくは、繊維となる固化を開始した可能性のない、又は、繊維となる固化を完了した可能性のある溶融流を指す。)。このような操作を実施する一般的な方法はFoxへの米国特許出願公開第2012/0272829号に開示されており、本明細書に参照により組み込まれる。初期繊維は、初期繊維が少なくともわずかに粘着性(接着性)である状態で、(例えば、一時的な捕捉表面上に、又は、フィルタ支持体の一部として残存する二次ウェブ上に)堆積させてもよい。このような状態により、メルトブローン不織布ウェブの繊維の少なくともいくつかを、吸着剤粒子に結合させる(例えば、融着させる)ことができる。このようにして、内部に吸着剤粒子を含むメルトブローンウェブを単一の操作で製造することができる。
【0032】
当然のことながら、他の方法を用い、繊維がウェブとして捕捉される前に、吸着剤粒子を繊維の混合物中に導入することもまた可能である。例えば、吸着剤粒子を、ウェブ形成プロセス(例えば、上記の重力レイウェブ形成プロセス)に投入される繊維と混合し、吸着剤粒子を内部に含む繊維の集合体を形成することができる。このような手法は、繊維の集合体を加熱し、繊維同士を結合し、ウェブを形成し、かつ/又は吸着剤粒子をウェブ中に結合できるように、投入された材料にバインダー(繊維の形態で、又は、粒子、エマルジョンなどの非繊維状バインダーとして)を加えることを含む場合がある。1つ又は複数のいずれの手法を用いる場合であっても、吸着剤粒子が繊維ウェブ中又は繊維ウェブ上に結合される主要機構は、繊維同士を結合してウェブを形成するのに用いられる結合機構と同一である、又は、異なる場合がある。
【0033】
特に、メルトブローン繊維ウェブについては、様々な繊維形成ポリマー材料が、このような繊維の形成に用いられ得る。少なくともいくつかの繊維は、不織布ウェブの製造に用いられる条件下(例えば、メルトブロー条件)で十分な結合(接着)性を呈する材料から作製され得る。例としては、ポリウレタンエラストマー材料、ポリブチレンエラストマー材料、ポリエステルエラストマー材料、ポリエーテルブロックコポリアミドエラストマー材料、ポリオレフィン系エラストマー材料(例えば、商標名VERSIFYでDowより入手可能なもの)、及びエラストマースチレンブロックコポリマー(例えば、商標名KRATONでKraton Polymers(Houston,TX)より入手可能なもの)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。少なくとも1つの暴露された繊維の表面(例えば、コアシース繊維のシース部分)が十分な接着性を示す、多成分繊維(例えば、コアシース繊維、分割可能又は並行複合繊維、及びいわゆる「海中の島」繊維)もまた、用いることができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、吸着剤粒子100に結合可能な繊維は、メルトブローンウェブに存在する唯一の繊維であり得る。他の実施形態において、他の繊維(例えば、吸着剤粒子の結合には、いかなる程度であっても有意には関与しない。)は、例えば十分な接着性繊維が存在する限り、存在してもよい。様々な実施形態において、接着性繊維は、少なくとも約2重量%、少なくとも約4重量%、及び少なくとも約6重量%のメルトブローン不織布ウェブを含み得る。更なる実施形態において、接着性繊維は、約20重量%以下、約17重量%以下、約15重量%以下のメルトブローン不織布ウェブを含み得る。ウェブ中に存在する任意の非接着性繊維は、任意の好適な種類及び組成のものでもよく、例えば、公知のポリエステル繊維のいずれかを用いることができるのと同様に、公知のポリオレフィン繊維(例えばポリプロピレン、ポリエチレンなど)のいずれかを、用いることができる。少なくともいくつかの実施形態において、不織布ウェブは、いずれの種類の、いずれの加えられたバインダーも、本質的に含まない。すなわち、このような場合、吸着剤粒子の本質的に全ての結合(吸着剤粒子をメルトブローン不織布ウェブ中で保持する。)は、接着性繊維によって行われる。したがって、このような実施形態において、粒子又は粉末など、ラテックス、エマルジョン、懸濁液、又は溶液などの液体などの形態のバインダーの存在は排除される。
【0035】
上記の説明は、吸着剤粒子への繊維の結合が、粒子を不織布ウェブ内に保持するために少なくとも部分的に用いられる方法に関連していることが理解されよう。繊維内の吸着剤粒子の物理的な絡み合いはまた、吸着剤粒子を不織布ウェブ内に保持するのを補助することもできる。いくつかの実施形態において、二次通気層(例えばスクリム又はフェーシング)を、不織布ウェブの1つ以上の主表面に適用し(例えば、結合し)、吸着剤粒子のいずれかが主表面から脱落する可能性を最小限に抑えることができる。実際に、いくつかの実施形態において、メルトブローンウェブを作製する作用でメルトブローンウェブが二次ウェブに結合されるように、メルトブローン不織布ウェブを形成する初期繊維を(初期繊維の流れに組み込まれる吸着剤粒子と共に)、二次ウェブ(例えば、スクリム又はフェーシング)の主表面上に堆積させるのが好都合な場合がある。
【0036】
いくつかの実施形態において、エアフィルタ1は、少なくとも1つの濾材40を備え得る。濾材は、吸着剤粒子100を保持し、吸着剤粒子100を空気に暴露させることができるフィルタ支持体10であり、これに加え、濾材は、移動空気から有意な量の微細粒子(すなわち、平均直径が100ミクロン以下の粒子)を濾過することができる特定の種類のフィルタ支持体である。濾材40は、通気性ネットワーク構造(ここで、通気性ネットワーク構造中又は通気性ネットワーク構造上には、通気性ネットワーク構造中を移動する空気流に吸着剤粒子を暴露するように、吸着剤粒子を組み込むことができる。)をもたらすことができ、更にそれ自体が微細粒子を濾過することができる、任意の材料を含み得る。このような濾材は、例えば、メルトブローンウェブ及び/又は帯電ウェブである不織布ウェブであり得る。
【0037】
説明したように、濾材は、かなりの量の微細粒子(直径100μm以下)を捕捉することができる。特定の実施形態において、濾材は、かなりの量の、例えば10μm以下の範囲、又は2.5μm以下の範囲の微粒子を捕捉することができる。特定の実施形態において、濾材はHEPA濾過の実施が可能であり得る。下記の通り、エレクトレット(帯電)材料の使用により、例えば微粒子濾過又はHEPA濾過を実施する能力を実質的に高められ得ることが理解されよう。様々な実施形態において、濾材40は、約80、70、60、50、40、30、20、10、又は5未満の透過百分率(本明細書では、フタル酸ジオクチルをチャレンジ材料(challenge material)として用い、Foxへの米国特許第7947142号に記載の方法を用いて試験するものと規定する)を呈し得る。概してフィルタ支持体に関して本明細書で記載されている全てのプロセス(例えば、繊維結合、帯電、プリーツ加工など)、パラメータ及び特徴付けを、特に濾材に適用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、フィルタ支持体として(又は、特に、濾材として)用いるための不織布ウェブ(例えば、メルトブローン不織布ウェブ)は、静電的に帯電している繊維を含み得る。このような繊維の帯電は、任意の好適な方法により、例えば、Angadjivandへの米国特許第5496507号に教示されているように、又はSebastianへの米国特許出願公開第2009/0293279号に教示されているように、水を用い、電荷を不織布ウェブに付与することにより、行うことができる。不織布エレクトレットウェブはまた、Klaaseへの米国特許第4588537号に記載のようにコロナ帯電によって、又は、Brownへの同第4798850号に記載のように機械的手法を用いて電荷を付与することによって、製造することができる。このような手法の任意の組み合わせを用いてもよい。繊維は、不織布ウェブに形成される前に、又は、不織布ウェブが形成された後に帯電してもよい。(いずれの場合も、プリーツ加工する場合には、任意のこのような帯電は、エアフィルタ材をプリーツ加工する前に、好都合に実施することができる。)エアフィルタが(下記のように)フィルタ支持体10とは異なる層である粒子濾過層を備える場合、このような粒子濾過層は、所望により、例えば上記の手法のいずれかによって、帯電させてもよい。
【0039】
フィルタ支持体(自立型、又は多層アセンブリの一部)をプリーツ加工する場合、プリーツの形成及びプリーツ間隔は、Siverssonへの米国特許第4798575号、Siverssonへの同第4976677号、及びWenzへの同第5389175号に開示のものを含む、任意の好適な手法を用いて実施することができる。有用であり得るプリーツ加工手順は、例えばDuffyへの米国特許第7235115号にも記載されている。(しかしながら、少なくともいくつかの実施形態において、スコアリングプロセスによって吸着剤粒子の少なくともいくつかが粉砕されることがあるので、スコアプリーツ加工の使用は回避してもよいことが理解されよう。)様々な実施形態において、プリーツ加工されたエアフィルタ支持体は、2.5センチメートル当たり約0.5~約5個のプリーツを含み得る。より具体的には、プリーツ間隔は、例えば約6、8、10、又は12mm~約50、40、30、20、又は15mmであり得る。様々な実施形態において、プリーツの高さは、例えば約15、20、25、又は30mm~約100、80、60又は40mmであり得る。
【0040】
エアフィルタ1は、単層からなるフィルタ支持体10(定義によると、少なくともいくつかのポリマー吸着剤粒子100を支持する。)を備えてもよい、又は、フィルタ支持体10の多層(例えば、各層は、少なくともいくつかのポリマー吸着剤粒子100を有する。)がエアフィルタ1に存在してもよい。特に、フィルタ支持体(複数可)10自体が、本明細書で定義されるようなエアフィルタ材でない場合、エアフィルタ1は、ポリマー吸着剤粒子100を含まない1つ以上の粒子濾過層(例えば、微細粒子、微粒子の濾過、及び/又はHEPA濾過が可能である。)を、(少なくとも1つのフィルタ支持体層10に加え)含むことができる。このような粒子濾過層は、所望により静電的に帯電していてもよく、様々な実施形態において、約80、70、60、50、40、30、20、10、又は5未満の透過百分率を呈し得る。(粒子という用語は、例えばエアロゾル、粉塵、霧、煙霧、煙、カビ、細菌、胞子、花粉などを広範に包含する。)特定の実施形態において、このような粒子濾過層は、例えば、Foxへの米国特許第8240484号に記載の種類の高ロフトスパンボンド不織布ウェブであってもよく、8%未満~約4%のソリディティを有し、捲縮繊維、空隙形成繊維及び複合繊維を実質的に含まない溶融紡糸繊維から構成される。
【0041】
任意の粒子濾過層が存在するか否かにかかわらず、エアフィルタ1は、例えば、カバー層、粗プレフィルタ、担体層、皮膚接触層として機能し、機械的支持又は剛性などをもたらす、1つ以上の二次層(例えば、スクリム、ネット、カバーなど)を、(少なくとも1つのフィルタ支持体層10及び場合により備えられる任意の粒子濾過層に加え)備える場合がある。すなわち、概して、フィルタ支持体層10の特定の種類、構成又は構造に関係なく、このようなフィルタ支持体層を、エアフィルタ1を集合的に提供することができる多層通気性アセンブリ(積層体)の1つの層として提供することができる。任意のこのような多層積層体には、当然のことながら、本明細書に記載のように、プリーツ加工、フレーム加工などを施すことができる。
【0042】
本明細書に開示の吸着剤粒子(例えば、不織布繊維ウェブ内に分散されたもの、基材の表面上に配置されたもの、受け部に充填されて例えば充填層を形成するものなど)は、任意の二次吸着剤粒子と組み合わせて用いることができ、空気中に存在する任意の所望の成分(例えば有害ガス/蒸気)を捕捉するように構成される。いくつかの実施形態において、このような二次吸着剤粒子は、例えば、ポリマー吸着剤粒子100の上流又は下流にある別の層に存在してもよい。他の実施形態において、吸着剤粒子100及び任意の所望の二次吸着剤粒子(複数可)を共に混合してもよい。二次吸着剤粒子(別の層で用いられる、又は、ポリマー吸着剤粒子100と混合した混合物として用いられる。)は、例えば、活性炭、アルミナ及び他の金属酸化物、粘土、ホプカライト、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブ及びゼオライト、シリカ、炭酸水素ナトリウム、金属ー有機構造体(MOF)、並びにこれらの材料のいずれかの組み合わせなどから選択することができる。いくつかの実施形態において、二次吸着剤粒子(例えば活性炭)は、例えば任意の所望の金属塩又は化合物を好適に含浸させた含浸吸着剤粒子であってもよい。二次吸着剤粒子としての使用に好適であり得る様々な粒子は、米国特許出願公開第2015/0306536号(Billingsley)、及び2015年12月18日に出願された、「アルデヒド用ポリマー吸着剤」という名称の米国特許仮出願第62/269613号に詳細に記載されており、その両方とも、参照によりそれらの全容が本明細書に組み込まれる。このような粒子のいずれかの任意の組み合わせを用いてもよい。多孔質ポリマー吸着剤粒子100及び1組以上の二次吸着剤粒子を、任意の重量比で使用することができる。特に、用語「二次」は、説明の便宜上使用され、あらゆる二次吸着剤粒子が、例えば多孔質ポリマー吸着剤粒子100よりも少ない量で、存在しなければならないわけではない。更に、開示されている吸着剤粒子100は、例えば、多孔質でなく、かつ/又は全く吸着機能を果たさない、粒子、顆粒など(このような粒子は、例えば、スペーシング機能又は分離機能を果たしてもよい)と混合されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の吸着剤粒子100を有するエアフィルタ1を、エアフィルタ1とは別に設けられた二次エアフィルタと組み合わせて用いてもよい。いくつかの実施形態において、エアフィルタ1及び二次エアフィルタを、空気処理装置の異なる領域に取り付けてもよい。(例えば、エアフィルタ1及び二次エアフィルタはそれぞれフレーム付きエアフィルタであってもよく、それぞれが、例えば室内空気清浄器に別々に挿入されていてもよい。)あるいは、エアフィルタ1及び二次エアフィルタを、例えば空気処理装置に取り付ける前に、共に組み立ててもよい(また、例えば、互いに連結させてもよい。)。エアフィルタ1は、例えば、二次エアフィルタの上流又は下流に配置することができる(エアフィルタ1が上流にある場合、エアフィルタ1は、例えば二次フィルタのプレフィルタとして機能し得る)。いくつかの例示的な実施形態において、二次エアフィルタは、例えば微粒子を捕捉するように構成されてもよく、例えば約80、70、60、50、40、30、20、10、又は5未満の透過百分率を呈し得る。
【0044】
本明細書に開示の吸着剤粒子100を有するフィルタ支持体10は、任意の好適な最終用途用に構成された、任意の種類のエアフィルタ1に用いることができる。具体例としては、フィルタ支持体10は、例えば、個人用呼吸保護装置、又はその一部であるエアフィルタに用途を見出すことができる。フィルタ支持体10は、マスク本体に流体連結可能なフィルタカートリッジの形態をとることができ、個人用呼吸保護装置(例えば、使い捨てのフィルタカートリッジと、使用者の顔に適合するように形状化されて保持される部分であるマスク本体と、適切な時期にマスク本体に取り付けられる交換フィルタカートリッジ)を提供することについては、既に説明した。他の実施形態において、フィルタ支持体10を、「濾過フェースピース」呼吸マスク60に組み込むことができる。この一般的な種類の製品では、マスク本体自体が、濾過機能を提供する。すなわち、マスク本体を、装着可能なフィルタカートリッジなどと共に用いる呼吸マスクとは異なり、濾過フェースピース呼吸マスクは、フィルタカートリッジの取り付け又は交換の必要がないように、マスク本体全体の大部分又は本質的に全てにわたって存在する濾過層(複数可)を有するように設計されている。(すなわち、濾過フェースピース呼吸マスクでは、マスク本体自体が、それに取り付けられた1つ以上のカートリッジに依存せずに、濾過機能を行う。濾過フェースピース呼吸マスク60は、多くの場合、2つの構成、すなわち、
図6の例示的な図に示すような成形品(例えば、使用者の顔に適合するようにほぼカップ状に形状化されたもの)、及び、平坦又はほぼ平坦な状態で供給することができ、後に開いて広げ、
図7の例示的な図に示すように、使用者の顔に適合させることができる、平坦折り畳み式のもののうちの1つで提供される。
【0045】
このような呼吸マスク(例えば、平坦折り畳み式又は成形された呼吸マスク)60は、任意の所望の補助層(例えば、1つ以上のカバー層、補剛層、プレフィルタ層など)及び構成要素(例えば、1つ以上の排気弁、取り付けバンド又はストリング、ノーズピースなど)を備え得る。平坦折り畳み式呼吸マスクで用いられる場合、フィルタ支持体10は、比較的可撓性の層の形態(例えば、材料をより容易に折り畳めるように設けられた1つ以上の選択的な折り目63を有する。)をとる場合が多い。フィルタ支持体10が成形された呼吸マスク(折り畳み可能には設計されていない。)で用いられる場合、フィルタ支持体10は、例えば半剛性の材料であってもよい(ただし、多くの成形されたカップ状の呼吸マスクでは、剛性のほとんどが、濾過層(複数可)とは別の補剛層によってもたらされるため、このような製品で用いるためには、フィルタ支持体10は、厳密に剛性又は半剛性でなくてもよいことに留意されたい。)。
【0046】
上記の用途は、主として、いわゆる「負圧」レスピレーターのカテゴリーに入る、すなわち、空気を移動させるための原動力が、別途設けられた電動ファンではなく、使用者の呼吸である製品であることが理解されよう。このような負圧レスピレーターは、例えば、フルフェースレスピレーター、ハーフフェースレスピレーター、及びフード(例えば、避難フード、スモークフードなど)として構成されることが多い。このような製品は全て、本明細書で用いられる負圧レスピレーターという用語によって包含され、フィルタ支持体10は、任意のこのような製品と共に用いることができる。
【0047】
他の実施形態において、フィルタ支持体10は、空気を移動させるための原動力が電動ファン又は送風機であるレスピレーターで用いることができる。このような製品は、例えばPAPR(動力式空気清浄レスピレーター)を含み得る。このような製品において、フィルタ支持体10(概して、エアフィルタ1)は、使用者の顔又は頭部に近接して配置してもよい、又は、遠隔配置(例えば、ベルト付きのハウジングの受け部に配置する。)としてもよい。
【0048】
図8の例示的な実施形態に示すようないくつかの実施形態において、フィルタ支持体10(例えば、プリーツ加工されているもの又はされていないもの、及び粒子濾過層などの他の層を含むもの又は含まないものなど)を、周囲フレーム70(例えば補剛フレーム又は支持フレーム)を含むエアフィルタ1に組み込むことができる。周囲フレーム70は、例えば、フィルタ支持体の周縁領域の周囲に配置することができる。フレームに好適な材料としては、チップボード、又は板紙、合成プラスチック材料及び金属が挙げられる。好適なフレーム構造体は、例えば、Pitzenへの米国特許第6126707号の
図1~4に示された「ピンチ」フレーム構造体、上記の’707号特許の
図5及び6に示された「ボックス」フレーム構造体、上記の’707号特許の
図7~11に示されたハイブリッドフレーム構造体、Sundetへの米国特許第7503953号に開示のフレーム構造体のいずれか、及びDuffyへの同第7235115号に開示のフレーム構造体のいずれかから選択することができる。任意のこのようなフレームは、任意の好適な方法、例えば熱融着、室温接着剤などにより、フィルタ支持体に取り付けることができる。
【0049】
フィルタ支持体1を含むエアフィルタ10(フレーム付き又はフレームなし)は、任意の好適な動力式空気処理システム、例えばHVACシステムにおいて(例えば、住宅、オフィスビル、小売施設などで用いられることが多い、強制空気加熱、冷却、及び/又は加熱/冷却システムにおいて)、移動空気を濾過するために有利に用いることができる。このようなフィルタはまた、室内空気清浄器、自動車(例えば自動車の車内空気濾過など)、クリーンルーム、手術室などに用途を見出すことができる。いくつかの実施形態において、エアフィルタ1(例えば、フィルタカートリッジの一部として)を、上記のように、動力式空気清浄レスピレーターの空気通路に挿入してもよい。このような使用のいずれか又は全てにおいて、エアフィルタ1はフレーム付きエアフィルタでなくてもよいが、多くのこのような使用において、エアフィルタ1がフレーム付きエアフィルタであることが有利であり得る。
【0050】
上記の説明は全て、好適なフィルタ支持体10上に多孔質ポリマー吸着剤粒子100を提供して、エアフィルタ1を提供する方法、及び支持された吸着剤粒子が空気に暴露されるようにエアフィルタを配置する方法に関する(空気という用語は広範に用いられ、任意のガス又はガス状混合物、例えば窒素、除湿窒素若しくは空気、酸素富化空気、麻酔ガス若しくはガス混合物を含む空気などを包含する。)。多くの実施形態において、吸着剤粒子が暴露される空気は、移動空気流の形態である。ある場合(「能動」濾過と呼ばれることがある。)、このような移動空気は、電動式送風機、ファンなどによって移動させることができる。他の場合(「受動」濾過と呼ばれることがある。)、このような移動空気は、任意の電動式機構によってではなく、例えば人の呼吸によって移動させることができる。用語「受動」濾過はまた、エアフィルタ1が、例えば周囲雰囲気中で、流れ、渦などに暴露される状態を包含する。このような流れ及び渦は、例えば、風(例えば窓スクリーンの形態で設けられたフィルタ支持体10の外表面に対して当たるような場合がある。)の形態をとる場合がある。又は、屋内環境において、このような流れ及び渦は、例えば建物の室内で(例えば開閉するドア、動作する人などにより)定期的に発生する対流、ランダムな空気流の形態をとる場合がある。したがって、本明細書に開示のエアフィルタ1は、例えばカートリッジ、袋、パウチ、キャニスタ、又は、概して、吸着剤粒子100を内部に保持し、空気を容器に入れ、吸着剤粒子を接触させた後、容器から排出させるように少なくとも1つの通気性の壁を有する任意の種類の容器などの装置を、このような装置が任意の種類の機械的送風機と共に用いられるか否か、又は任意の種類のレスピレーターにおいて用いられるか否かに関わらず、包含することが理解されよう。
【0051】
大まかに要約すると、本明細書に記載のエアフィルタ1は、少なくともいくらかの塩基性含窒素浮遊物質を空気から除去することが所望される任意の好適な用途において、使用することができる。このような用途は、単一の使用者が用いるように設計された個人用装置(例えば、個人用呼吸保護装置)、又は、例えば、人が居住する、働く、又は集まる建物、車両、及び他の場所のために設計された集合装置(例えば、室内空気清浄器、HVACシステムなど)を伴う場合がある。説明したように、このような用途は、「能動」又は「受動」濾過を伴う場合があり、多種多様な幾何学的形式のいずれかで構成され、多種多様な材料のいずれかから構成されるエアフィルタ1を用いることができる。また、説明したように、本明細書に記載のポリマー吸着剤粒子100に加え、1つ以上の二次吸着剤を、粒子100と混合し、かつ/又は別々の層に提供して用いることができる。更に説明したように、エアフィルタ1は、微粒子濾過を提供し、かつ/又はアンモニアなどの塩基性含窒素材料以外のいくつかのガス/蒸気を捕捉する少なくとも1つの層を(ポリマー吸着剤粒子100を支持する少なくとも1つの支持層10に加え)含む場合がある。この代わりに、又はこの補助として、エアフィルタ1に加え、例えば、微粒子の濾過及び/又はいくつかの他のガス/蒸気の捕捉を行うための二次エアフィルタを設けることができる。更に、フィルタ支持体の上記の実施形態のいずれかの組み合わせを用いてもよい。例えば、ポリマー吸着剤粒子100は、繊維ウェブ内又はネットの表面上に配置される場合があり、ウェブ又はネットは、例えば、ハウジング内に配置され、フィルタカートリッジを提供する場合がある。
【0052】
吸着剤粒子100は、1つ以上の二価金属を含む多孔質ポリマー材料である。ポリマー材料は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー、部分加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー、又は完全加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマーである。(用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、同じ意味で使用され、1つ以上のモノマーを反応させることによって形成された材料を指す。この用語は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーなどを含む。同様に、用語「重合する」及び「重合すること」は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーなどであり得るポリマー材料を製造するプロセスを指す。)このようなポリマー材料は、全てのモノマー単位のなかでもジビニルベンゼンの濃度が比較的高いため、架橋された材料(例えば線状ポリマーではなく)となることが理解されるであろう。二価金属は、IUPAC周期表の2族又は6族~12族から選択される。金属含有ポリマー材料を使用して、150g/mol以下の分子量を有する塩基性含窒素浮遊材料を捕捉することができる。この捕捉により、金属錯体含有ポリマー材料が形成される。金属含有ポリマー材料は多くの場合、塩基性窒素含有化合物に曝露した際に色が変わる。
【0053】
「二価金属」という用語は、+2の酸化状態を有する金属を指す。二価金属は通常、IUPAC元素周期表の2族又は6~12族から選択される。混乱を避けるために、2族は最も軽い元素としてベリリウムを含み、6族は最も軽い元素としてクロムを含み、7族は最も軽い元素としてマンガンを含み、8族は最も軽い元素として鉄を含み、9族は最も軽い元素としてコバルトを含み、10族は最も軽い元素としてニッケルを含み、11族は最も軽い元素として銅を含み、12族は最も軽い元素として亜鉛を含む。二価金属は、金属塩、金属錯体、又は金属酸化物などの形態で使用することができる。
【0054】
ポリマー材料は、モノマー混合物を含む重合性組成物の反応生成物である。「モノマー混合物」という用語は、重合性組成物の、モノマーを含む部分を指す。より詳細には、モノマー混合物は、少なくともジビニルベンゼン及び無水マレイン酸を含む。「重合性組成物」という用語は、ポリマー材料を形成するために使用される、反応混合物に含まれる全ての材料を含む。重合性組成物には、例えば、モノマー混合物、有機溶媒、開始剤、及び他の任意の成分が含まれる。有機溶媒などの重合性組成物中の成分の一部は、化学反応を起こさない場合もあるが、化学反応及び形成される得られるポリマー材料に影響を与え得る。
【0055】
「ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」という用語は、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸、及び場合により存在するスチレン型モノマーから得られるポリマー材料のことを指す。「スチレン型モノマー」という用語は、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)、又はそれらの混合物を指す。(このようなモノマーは、ジビニルベンゼン中に不純物としてしばしば存在する。)典型的には、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、15~65重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、及び35~85重量%のジビニルベンゼン又はジビニルベンゼンとスチレン型モノマーとの混合物から得られるモノマー単位を含有する。無水マレイン酸から得られるモノマー単位は、式(I)若しくは式(II)で表されるか、又はそれらの混合物であるモノマー単位であり得る。すなわち、これらのモノマー単位は、ポリマー材料が加水分解された程度に応じて、式(I)にあるような酸無水物基又は式(II)にあるような2つのカルボキシル基を有し得る。
【化1】
ジビニルベンゼンから得られるモノマー単位は式(III)で表され、スチレン型モノマーから得られるモノマー単位は式(IV)で表される:
【化2】
(式中、R
1は、水素又はアルキルである)を含有する。式(I)~(IV)中の各アスタリスク(
*)は、ポリマー材料中の別のモノマー単位への、又は末端基への結合部位を示す。
【0056】
ポリマー材料は、無水マレイン酸から得られるモノマー単位の形態に応じて、加水分解されていないか、部分的に加水分解されているか、又は完全に加水分解されていると考えられ得る。マレイン酸から得られるモノマー単位の90~100重量%が式(I)で表され、無水マレイン酸から得られるモノマー単位の0~10重量%未満が式(II)で表される場合、ポリマー材料は、「加水分解されていない」ということができる。無水マレイン酸から得られるモノマー単位の10~90重量%が式(I)で表され、無水マレイン酸から得られるモノマー単位の10~90重量%が式(II)で表される場合、ポリマー材料は、「部分的に加水分解されたジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」であるということができる。無水マレイン酸から得られるモノマー単位の0~10重量%未満が式(I)で表され、無水マレイン酸から得られるモノマー単位の90%より高く100%までが式(II)で表される場合、ポリマー材料は、「完全に加水分解されたジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」であるということができる。しかしながら、二価金属を組み込む前には加水分解されていない又は部分的に加水分解されているポリマー材料が、二価金属を組み込む間にいくらか加水分解されることはよくある。すなわち、通常は水性溶液中で行われる二価金属の組み込みにより、式(I)で表されるモノマー単位を有するポリマー材料は、いくらか加水分解され得る。二価金属の組み込みにより、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は部分加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料に変わる可能性があり、又は部分加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が更に加水分解される可能性がある。
【0057】
ポリマー材料は、少なくともジビニルベンゼン、無水マレイン酸、及び場合により含まれるスチレン型モノマーを含むモノマー混合物を含む重合性組成物から調製される。(「スチレン型モノマー」という用語は、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)、又はこれらの混合物を指し、このモノマーはジビニルベンゼン中に不純物としてしばしば存在する。)得られる未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、その後、二価金属で処理され得る。あるいは、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中の酸無水物基の全部又は任意の部分を加水分解剤で処理して、その後二価金属で処理される部分加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料又は完全加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を調製することができる。
【0058】
後で二価金属が組み込まれるポリマー材料は、典型的には多孔質である。より詳細には、ジビニルベンゼン架橋剤の量、無水マレイン酸の量、場合により存在するスチレン型モノマーの量、及び未加水分解ポリマー材料を調製するために使用する有機溶媒を慎重に選択して、多孔質であるポリマー材料を調製する。多孔質材料は、それらの細孔の径に基づいて特徴付けることができる。「マイクロ細孔」という用語は、2ナノメートル未満の直径を有する細孔を指す。用語「メソ細孔」は、2~50ナノメートルの範囲の直径を有する細孔を指す。用語「マクロ細孔」は、50ナノメートル超の直径を有する細孔を指す。特に、ポリマー材料は、少なくとも二価金属を組み込む前は、通常、マイクロ細孔及び/又はメソ細孔の径範囲の細孔を有する。
【0059】
ポリマー材料の多孔度は、極低温条件下での多孔質材料による窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの吸着等温線から特徴付けることができる。吸着等温線は、約10-6~約0.98の範囲の複数の相対圧力における多孔質材料による不活性ガスの吸着率を測定することによって一般的に得られる。次に、比表面積(BET比表面積など)及び総細孔容積を計算するための様々な方法を使用して、等温線を分析する。未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を合成するために使用される条件は、二価金属を内部に含浸させた後であっても、少なくとも15m2/g、少なくとも20m2/g、少なくとも25m2/g、又は少なくとも50m2/gのBET比表面積を示すことができる、多孔質ポリマー材料を生成するように選択される。
【0060】
用語「表面積」は、到達可能な細孔の内表面を含む、材料の表面の総面積を指す。表面積は、通常、ある範囲の相対圧力にわたって極低温条件下(すなわち77°K)で材料の表面に吸着する、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの量を測定することによって得られる吸着等温線から計算される。「BET比表面積」という用語は、BET法(Brunauer-Emmett-Teller法)を使用して0.05~0.3の相対圧力範囲にわたる不活性ガスの吸着等温線データから通常は計算される、材料1g当たりの表面積である。
【0061】
未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、少なくとも無水マレイン酸及びジビニルベンゼンを含み、スチレン型モノマーを含んでもよいモノマー混合物から合成される。典型的には、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、15~65重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、及び35~85重量%のジビニルベンゼン又はジビニルベンゼンとスチレン型モノマーとの混合物から得られるモノマー単位を含有する。より詳細には、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸を形成するために使用されるモノマー混合物は、典型的には、1)15~65重量%の無水マレイン酸、2)30~85重量%のジビニルベンゼン、及び3)0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーを含み、スチレン型モノマーは、スチレン、アルキル置換スチレン、又はそれらの組み合わせである。各モノマーの量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に対するものである。
【0062】
未加水分解ポリマー材料を調製するためにモノマー混合物中で使用される無水マレイン酸の量は、ポリマー材料中に組み込むことができる二価金属の量に影響を与える。無水マレイン酸の量が少なすぎる(例えば、モノマー混合物中のモノマーの15重量%未満)場合、金属含有ポリマー材料中の二価金属の量は少なすぎて、式Qの塩基性窒素含有化合物を有効にかつ効率的に捕捉できない可能性がある。一方、無水マレイン酸の量がモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて65重量%又は60重量%を超える場合、ポリマー材料は、十分に高いBET比表面積を有さない可能性がある。BET比表面積が小さすぎれば、ポリマー材料は、適量の二価金属を組み込むために十分な多孔度を有さない可能性がある。
【0063】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物中の無水マレイン酸の量は、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%である。無水マレイン酸の量は、最大65重量%、最大62重量%、最大61重量%、最大60重量%、最大55重量%、最大50重量%、最大45重量%、又は最大40重量%とすることができる。例えば、この量は、15~65重量%、15~60重量%、20~60重量%、25~60重量%、30~60重量%、35~60重量%、40~60重量%、15~55重量%、15~50重量%、15~45重量%、20~50重量%、20~45重量%、25~50重量%、又は25~45重量%の範囲であってもよい。これらの量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に対するものである。
【0064】
言い換えると、ポリマー材料は、15~65重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位を含有する。無水マレイン酸から得られるモノマー単位は、式(I)若しくは式(II)で表されるか、又は両方である。式(I)及び式(II)の相対量は、起こった加水分解の程度に応じて変わり得る。無水マレイン酸から得られるモノマー単位の量は、例えば、ポリマー材料の総重量に基づいて15~60重量%、20~60重量%、25~60重量%、30~60重量%、35~60重量%、40~60重量%、15~55重量%、15~50重量%、15~45重量%、20~50重量%、20~45重量%、25~50重量%、又は25~45重量%の範囲であってもよい。
【0065】
ジビニルベンゼン架橋剤の量は、それが加水分解されていないか、部分的に加水分解されているか、又は完全に加水分解されているかにかかわらず、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料のBET比表面積に強い影響を与え得る。ジビニルベンゼンは、高い架橋密度並びにマイクロ細孔及び/又はメソ細孔を有する架橋された剛性ポリマー材料の形成に寄与する。BET比表面積は、モノマー混合物中のジビニルベンゼンの量の増加とともに増大する傾向がある。モノマー混合物中のジビニルベンゼンの量が30重量%未満であれば、ポリマー材料が完全に加水分解されている場合は特に、ポリマー材料は十分に大きいBET比表面積を有さない可能性がある。一方、ジビニルベンゼンの量が85重量%を超えれば、酸無水物及び/又はカルボン酸含量が、望ましい量の二価金属を組み込むには不十分である可能性がある。
【0066】
いくつかの実施形態では、ジビニルベンゼンの量は、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%である。ジビニルベンゼンの量は、最大85重量%、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、又は最大65重量%とすることができる。例えば、ジビニルベンゼンは、30~85重量%、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、40~80重量%、50~80重量%、40~75重量%、50~75重量%、又は55~75重量%の範囲であってもよい。これらの量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に対するものである。
【0067】
言い換えると、ポリマー材料は、30~85重量%のジビニルベンゼンから得られるモノマー単位を含有する。ジビニルベンゼンから得られるモノマー単位の量は、例えば、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、40~80重量%、50~80重量%、40~75重量%、50~75重量%、又は55~75重量%の範囲であってもよい。これらの量は、ポリマー材料の総重量に対するものである。
【0068】
ジビニルベンゼンは、純粋な形態で得ることが困難な場合がある。例えば、ジビニルベンゼンは、55重量%程度の低い純度で市販されていることが多い。約80重量%を超える純度でジビニルベンゼンを得るには高額な費用がかかる可能性がある。ジビニルベンゼンに伴う不純物は、典型的には、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、エチルスチレン)、又はこれらの混合物などのスチレン型モノマーである。このため、モノマー混合物中にはしばしば、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸とともにスチレン型モノマーが存在する。モノマー混合物は通常、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーを含有する。スチレン型モノマーの含量が40重量%を超える場合、望ましいBET比表面積を有するポリマー材料を提供するには、架橋密度が低すぎる可能性があり、かつ/又は架橋間距離が大きすぎる可能性がある。これは、ポリマー材料が完全に加水分解されている場合に特に当てはまる。架橋密度が低下するに従って、得られるポリマー材料の剛性は低くなり、多孔度は低くなる傾向がある。
【0069】
いくつかの実施形態では、スチレン型モノマーの量は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%である。スチレン型モノマーの量は、最大40重量%、最大35重量%、最大30重量%、又は最大25重量%とすることができる。例えば、モノマー混合物中のスチレン型モノマーの量は、0~40重量%、1~40重量%、5~40重量%、1~30重量%、5~30重量%、1~20重量%、5~20重量%、5~15重量%、10~40重量%、又は10~30重量%の範囲であってもよい。これらの量は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に対するものである。
【0070】
言い換えると、ポリマー材料は、0~40重量%のスチレン型モノマーから得られるモノマー単位を含有し得る。例えば、この量は、1~40重量%、5~40重量%、1~30重量%、5~30重量%、1~20重量%、5~20重量%、5~15重量%、10~40重量%、又は10~30重量%の範囲であってもよい。これらの量は、ポリマー材料の総重量に対するものである。
【0071】
全体として、モノマー混合物は、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて15~65重量%の無水マレイン酸、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼン、及びモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーを含む。別の実施形態では、モノマー混合物は、25~60重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~30重量%のスチレン型モノマーを含有する。別の実施形態では、モノマー混合物は、30~60重量%の無水マレイン酸、30~60重量%のジビニルベンゼン、及び5~20重量%のスチレン型モノマーを含有する。更に別の実施形態では、モノマー混合物は、40~60重量%の無水マレイン酸、30~50重量%のジビニルベンゼン、及び5~15重量%のスチレン型モノマーを含有する。
【0072】
モノマー混合物は、典型的には、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択されるモノマーを少なくとも95重量%含む。例えば、モノマー混合物中のモノマーの少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、又は少なくとも99.9重量%は、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択される。多くの実施形態において、モノマー混合物に意図的に添加されるモノマーは、無水マレイン酸及びジビニルベンゼンだけであり、任意の他のモノマー(スチレン型モノマーを含む)は、無水マレイン酸及びジビニルベンゼン中の不純物として存在する。
【0073】
すなわち、ポリマー材料は典型的には、15~65重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、30~85重量%のジビニルベンゼンから得られるモノマー単位、及び0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーから得られるモノマー単位を含有する。別の実施形態では、ポリマー材料は、25~60重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、30~75重量%のジビニルベンゼンから得られるモノマー単位、及び1~30重量%(又は10~30重量%)のスチレン型モノマーから得られるモノマー単位を含有する。別の実施形態では、ポリマー材料は、30~60重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、30~65重量%のジビニルベンゼンから得られるモノマー単位、及び5~20重量%(又は10~20重量%)のスチレン型モノマーから得られるモノマー単位を含有する。更に別の実施形態では、ポリマー材料は、40~60重量%の無水マレイン酸から得られるモノマー単位、30~55重量%のジビニルベンゼンから得られるモノマー単位、及び5~20重量%(又は10~20重量%)のスチレン型モノマーから得られるモノマー単位を含有する。
【0074】
モノマー混合物に加えて、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物は、有機溶媒を含む。重合性組成物は、重合前には単一相である。換言すれば、重合前には、重合性組成物は懸濁液ではない。有機溶媒は、モノマー混合物中に含まれるモノマーを溶解し、ポリマー材料が形成し始めるときにこれを可溶化するように選択される。
【0075】
有機溶媒は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料が形成される際にポロゲンとして機能することができる。有機溶媒の選択は、BET比表面積、及び未加水分解ポリマー材料中に形成される細孔の径に大きく影響し得る。モノマー及び形成するポリマーの両方と混和性の有機溶媒を使用することにより、マイクロ細孔及びメソ細孔を有するポリマー材料が形成されやすくなる。モノマー及び形成するポリマーに好適な溶媒を用いることにより、最終的なポリマー材料の多孔度のより多くの部分がマイクロ細孔及びメソ細孔の形態になりやすい。
【0076】
モノマー及び形成するポリマー材料の両方を溶解することができる有機溶媒としては、ケトン、エステル、アセトニトリル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。得られるポリマー材料(加水分解前)が少なくとも100m2/gのBET比表面積を示すと規定するために、これらの有機溶媒の1種以上とともに他の有機溶媒を添加することができる。好適なケトンの例としては、これらに限定されるものではないが、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのアルキルケトンが挙げられる。好適なエステルの例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、及び酢酸tert-ブチルなどの酢酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
有機溶媒は、任意の所望の量で用いることができる。重合性組成物は、多くの場合、1~70重量%の範囲の固形分率(%)を有する。固形分率が低過ぎると、重合時間が望ましくなく長くなる場合がある。固形分率は、多くの場合、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%である。しかしながら固形分率が高すぎると、モノマーは有機溶媒とともに単一の相を形成しない。更に、固形分率を増加させると、より大きい径の細孔が形成されやすくなり、結果としてポリマー材料はより小さいBET比表面積を有しやすくなる。固形分率は、最大70重量%、最大65重量%、最大60重量%、最大50重量%、最大40重量%、最大30重量%、又は最大25重量%とすることができる。例えば、固形分率は、5~70重量%、5~60重量%、10~60重量%、20~60重量%、又は25~50重量%の範囲であってもよい。
【0078】
モノマー混合物及び有機溶媒に加えて、重合性組成物は通常、フリーラジカル重合反応のための開始剤を含む。任意の好適なフリーラジカル開始剤を用いることができる。好適なフリーラジカル開始剤は、典型的には、重合性組成物に含まれるモノマーと混和性であるように選択される。いくつかの実施形態において、フリーラジカル開始剤は、室温(本明細書では20~25℃と規定)よりも高い温度で活性化され得る熱開始剤である。他の実施形態において、フリーラジカル開始剤はレドックス開始剤である。重合反応はフリーラジカル反応であるため、重合性組成物中の酸素の量を最小限に抑えることが望ましい。
【0079】
開始剤の種類及び量はいずれも重合速度に影響し得る。概して、開始剤の量を増やすとBET比表面積が低下する傾向があるが、開始剤の量が少な過ぎるとモノマーからポリマー材料への高い変換率を得ることが困難となる場合がある。フリーラジカル開始剤は、典型的には、0.05~10重量%、0.05~8重量%、0.05~5重量%、0.1~10重量%、0.1~8重量%、0.1~5重量%、0.5~10重量%、0.5~8重量%、0.5~5重量%、1~10重量%、1~8重量%、又は1~5重量%の範囲の量で存在する。重量%は、重合性組成物中のモノマーの総重量に対するものである。好適な熱開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、及びレドックス開始剤が挙げられる。潜在的に有用な熱開始剤は、国際(PCT)出願第PCT/US2016/030974号及び米国特許仮出願第62/298089号に列挙され、詳細に記載されており、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
重合性組成物は、典型的には、界面活性剤を含まない、又は、実質的に含まない。本明細書で用いる場合、界面活性剤に関して「実質的に含まない」という用語は、界面活性剤が重合性組成物に意図的に加えられておらず、存在し得る任意の界面活性剤は、重合性組成物の構成成分の1つに存在する不純物(例えば、有機溶媒中又はモノマーの1つに存在する不純物)によるものであるという意味である。重合性組成物は、典型的には、重合性組成物の総重量に基づいて0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の界面活性剤を含有する。界面活性剤は多孔質材料中のマイクロ細孔及びメソ細孔への進入を制限しやすく、場合によってはこれらの細孔を塞ぎやすいため、これらの材料を含まないことが有利である。界面活性剤が存在することにより、金属含有ポリマー材料の低分子量の塩基性分子を吸着する能力が低減し得る。
【0081】
重合性組成物がフリーラジカル開始剤の存在下で加熱されると、モノマー混合物中のモノマーの重合が起こる。モノマー混合物中の各モノマーの量のバランスをとることによって、かつ、モノマーの全て及び成長中のポリマー材料をその初期の形成段階において可溶化することができる有機溶媒を選択することによって、少なくとも100m2/gに相当するBET比表面積を示す未加水分解ポリマー材料を調製することができる。様々な実施形態において、未加水分解ポリマーのBET比表面積は、少なくとも150m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも250m2/g、又は少なくとも300m2/gであり得る。BET比表面積は、例えば、最大1000m2/g若しくはそれ以上、最大900m2/g、最大800m2/g、最大750m2/g、又は最大700m2/gとすることができる。
【0082】
大きいBET比表面積は、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料中にマイクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに少なくとも部分的に起因し得る。未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料のアルゴン吸着等温線は、0.1より低い相対圧力でかなりの吸着があることを示しており、これはマイクロ細孔が存在することを示唆している。最大約0.95のより高い相対圧力で、吸着は増加する。この増大は、メソ細孔が広く分布していることを示すものである。いくつかの実施形態では、BET比表面積の少なくとも20%は、マイクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因し得る。ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在に起因するBET比表面積の比率は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%であり得る。いくつかの実施形態において、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在に起因するBET比表面積の比率は、最大90%若しくはそれ以上、最大80%若しくはそれ以上、又は最大75%若しくはそれ以上であり得る。
【0083】
未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、形成されたままの粒子状(例えば顆粒状)であってもよく、所望であれば、二価金属を組み込んで金属含有ポリマー材料を形成するために使用されるポリマー材料として直接使用することができる。あるいは、未加水分解ポリマー材料を加水分解剤で処理して、部分的に又は完全に加水分解されたジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を提供することができる。加水分解剤は無水マレイン酸単位と反応して、2個のカルボン酸基(-COOH基)が形成する。無水マレイン酸単位の酸無水物基(-(CO)-O-(CO)-)と反応することができる任意の好適な加水分解剤を使用することができる。多くの実施形態において、加水分解剤は、水に溶解した塩基性物質などの塩基である。1つの例示的な塩基性物質は、水酸化ナトリウム(例えば、水酸化ナトリウムの水溶液)などのアルカリ金属水酸化物である。あるいは、加水分解剤は、高温(例えば、室温より高温~沸点)においては水のみ、又はやや高温(例えば、室温より高温~約80℃)においては希酸であり得る。多くの実施形態において、好ましい加水分解剤は、アルカリ金属水酸化物などの塩基である。未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を、水又はメタノールなどのアルコール中に溶解したアルカリ金属水酸化物の溶液と混合する。混合物を、数時間(例えば、4~12時間)にわたって80℃付近の温度で加熱する。次いで、加水分解されたポリマー材料を塩酸で処理して、全てのカルボン酸塩をカルボン酸基に変換することができる。
【0084】
未加水分解、部分加水分解、又は完全加水分解酸無水物ポリマー材料中に存在するモノマー単位に関して言えば、ポリマー材料は、i)15~65重量%の、式(I)
【化3】
式(II)、
【化4】
又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及び
【化5】
iii)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)で表される第3のモノマー単位
【化6】
(式中、R
1は、水素又はアルキルである)を含有する。式(I)は、無水マレイン酸から得られる未加水分解モノマー単位に相当する。この未加水分解モノマー単位は、酸無水物基(-(CO)-O-(CO)-)を含む。式(II)は、無水マレイン酸から得られる加水分解モノマー単位に相当する。加水分解モノマー単位は、酸無水物基ではなく2つのカルボン酸基(-(CO)OH)を有する。式(III)は、ジビニルベンゼンから得られるモノマー単位に相当する。芳香環と結合した2つのアルキレン基は、互いにメタ位又はパラ位であり得る。式(IV)は、スチレン型モノマー単位に関するものである。R
1基は、水素又はアルキル(例えば、1~4個の炭素原子又は2個の炭素原子を有するアルキル)である。多くの実施形態において、R
1はエチルであり、式(IV)で表されるモノマー単位は、ジビニルベンゼン中にしばしば存在する不純物であるエチルスチレンから得られる。R
1基は、芳香環に結合したアルキレン基に対してメタ位又はパラ位であることが多い。式(I)~(IV)中の各アスタリスク(
*)は、ポリマー材料中の別のモノマー単位への、又は末端基への結合部位を示す。第1、第2、及び第3のモノマー単位のそれぞれの量は、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を形成するために使用される各モノマーの量に関して前述したものと同じである。
【0085】
部分加水分解又は完全加水分解のいずれかであれば、ポリマー材料はカルボン酸基を含む。pHが十分に高い場合、ポリマー材料は負に帯電し得る。通常、ポリマー材料自体は正に帯電した基は有さない。
【0086】
加水分解(例えば、完全加水分解)ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料より小さいBET比表面積を有する。酸無水物基の開環により、主鎖の立体配座の自由度は十分に大きくなり、多孔度は低下し得る。加えて、加水分解材料中のカルボン酸間の水素結合は、細孔への進入を制限するか又は妨げる可能性がある。加水分解ポリマー材料のBET比表面積は、多くの場合、未加水分解ポリマー材料のBET比表面積の約30~80%、30~60%、40~80%、又は40~60%である。この減少のため、多くの場合、可能な限り高いBET比表面積を有しながら、更に十分な無水マレイン酸単位を有して、二価金属の適切な組み込みを可能にする、未加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料を調製することが望ましい。
【0087】
加水分解(例えば、完全加水分解)ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料は典型的には、少なくとも50m2/g又は少なくとも100m2/gに相当するBET比表面積を示す。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、少なくとも150m2/g、少なくとも175m2/g、少なくとも200m2/g、少なくとも225m2/g、少なくとも250m2/g、又は少なくとも300m2/gである。BET比表面積は、最大600m2/g若しくはそれ以上、最大500m2/g、又は最大400m2/gとすることができる。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、50~600m2/gの範囲、75~600m2/gの範囲、100~600m2/gの範囲、又は200~600m2/gの範囲である。
【0088】
加水分解(例えば、完全加水分解)ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料のアルゴン吸着等温線は、0.1より低い相対圧力でいくらかの吸着があることを示しており、これはマイクロ細孔が存在することを示唆している。最大約0.95のより高い相対圧力で、吸着は増加する。この増大は、メソ細孔が広く分布していることを示すものである。いくつかの実施形態では、BET比表面積の少なくとも20%は、マイクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因し得る。ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在に起因するBET比表面積の比率は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%であり得る。いくつかの実施形態では、マイクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因し得るBET比表面積の比率は、最大90%若しくはそれ以上、最大80%若しくはそれ以上、又は最大75%若しくはそれ以上であり得る。多くの実施形態において、BET比表面積は、主にメソ細孔の存在に起因し得る。
【0089】
ポリマー材料(すなわち、未加水分解、部分加水分解又は完全加水分解ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料)が形成された後、二価金属がポリマー材料中に組み込まれる。二価金属は通常、水中に溶解した金属塩の溶液でポリマー材料を処理することによって組み込まれる。金属塩は、二価金属(すなわち、酸化状態+2の金属)である陽イオン及び陰イオンを含有する、好適な金属イオン(二価金属)は、典型的には、周期表の2族又は6~12族から選択される。二価金属の例としては、クロム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、マンガン、カドミウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、バリウム、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。多くの実施形態において、二価金属は、例えば、クロム、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、又はそれらの混合物などの6~12族金属である。いくつかの特定の実施形態では、二価金属は、銅、コバルト、亜鉛、又はニッケルである。いくつかの更により特定の実施形態では、二価金属は、亜鉛又は銅である。二価金属は、少なくとも1種の二価金属を意味し、したがって上記二価金属のいずれかの混合物を使用できることが理解されるであろう。
【0090】
金属塩は通常、水溶性のものから選択される。金属塩の陰イオンは、多くの場合、ハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン)、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン(例えば、酢酸イオン、ギ酸イオン、及びプロパン酸イオン)、又はハロゲン置換カルボン酸イオン(例えば、クロロ酢酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、及びクロロ置換プロパン酸イオン)である。多くの実施形態において、陰イオンは、塩化物イオン、酢酸イオン、又は硝酸イオンである。
【0091】
具体的な金属塩の例としては、酢酸亜鉛、酢酸銅、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、酢酸鉄、酢酸マンガン、酢酸クロム、酢酸カドミウム、ギ酸亜鉛、ギ酸銅、ギ酸ニッケル、ギ酸コバルト、ギ酸鉄、ギ酸マンガン、ギ酸カドミウム、プロパン酸亜鉛、プロパン酸銅、プロパン酸ニッケル、プロパン酸コバルト、プロパン酸鉄、プロパン酸マンガン、プロパン酸カドミウム、クロロ酢酸亜鉛、クロロ酢酸銅、クロロ酢酸ニッケル、クロロ酢酸コバルト、クロロ酢酸鉄、クロロ酢酸マンガン、クロロ酢酸カドミウム、ジクロロ酢酸亜鉛、ジクロロ酢酸銅、ジクロロ酢酸ニッケル、ジクロロ酢酸コバルト、ジクロロ酢酸鉄、ジクロロ酢酸マンガン、ジクロロ酢酸カドミウム、塩化亜鉛、塩化銅、塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化鉄、塩化マンガン、塩化カドミウム、塩化クロム、塩化マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸カドミウム、硝酸亜鉛、硝酸銅、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、及び硝酸鉄などが挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、これらのいずれかの混合物を使用してもよい。
【0092】
二価金属は通常、水中に溶解したこれらの金属塩の溶液でポリマー材料を処理することによって組み込まれる。金属塩溶液の濃度は、多くの場合、0.1~10mol/Lの範囲である。いくつかの実施形態では、この濃度は、0.5~10mol/Lの範囲、1~10mol/Lの範囲、1~8mol/Lの範囲、2~8mol/Lの範囲、又は3~6mol/Lの範囲である。得られる溶液を、ポリマー材料と混合する。金属塩の量は通常、二価金属のモル数が、ポリマー材料中の酸無水物基、カルボキシル基(-COOH基)、又はこれら両方のモル数に対して過剰となるように添加される。
【0093】
ポリマー材料と金属塩溶液との混合時間は、多くの場合、最大1時間、最大2時間、最大4時間、最大8時間、最大16時間、最大24時間、又は最大48時間である。混合温度は、室温又はそれより高温であり得る。次いで、金属含有ポリマー材料を水から分離し、乾燥する。任意の好適な乾燥方法を使用することができる。いくつかの実施形態において、金属含有ポリマー材料は、80℃~120℃に設定されたオーブン内で真空乾燥される。未加水分解ポリマー材料又は部分加水分解ポリマー材料中への二価金属の組み込みプロセスにより、酸無水物基の少なくとも一部がいくらか加水分解する又は更に加水分解する可能性がある。
【0094】
いくつかの実施形態では、得られる金属含有ポリマー材料は、ポリマー材料の総重量に基づいて少なくとも10重量%の二価金属を含有する。二価金属の量は、ポリマー材料の総重量に基づいて少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%とすることができる。金属含有ポリマー材料は、最大100重量%又はそれ以上の二価金属を含むことができる(すなわち、二価金属の重量は、ポリマー材料の重量と等しいか、又はそれを超えてもよい)。例えば、この量は、ポリマー材料の総重量に基づいて最大90重量%、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大60重量%、又は最大50重量%であってもよい。例えば、この量は、多くの場合、10~100重量%、10~80重量%、10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~30重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、15~30重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%又は20~30重量%の範囲である。
【0095】
別の実施形態では、又は言い換えると、得られる金属含有ポリマー材料は、ポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmol(ミリモル)の二価金属を含有する。二価金属の量は、ポリマー材料1g当たり少なくとも2.0mmol、少なくとも2.25mmol、少なくとも3.0mmol、少なくとも3.75mmol、少なくとも4.0mmol、少なくとも4.5mmol、少なくとも5mmol、少なくとも6.0mmol、少なくとも7mmol、又は少なくとも7.5mmolであり得る。金属含有ポリマー材料は、1g当たり最大15mmol又はそれ以上の二価金属を含むことができる。例えば、この量は、ポリマー材料1g当たり最大14mmol、最大13.5mmol、最大13mmol、最大12mmol、最大11.25mmol、最大11mmol、最大10.5mmol、最大10mmol、最大9mmol、最大8mmol、又は最大7.5mmolであってもよい。例えば、この量は、多くの場合、ポリマー材料1g当たり1.5~15mmol、1.5~12mmol、1.5~9mmol、1.5~7.5mmol、1.5~6mmol、1.5~4.5mmol、2.25~9mmol、2.25~7.5mmol、2.25~6mmol、2.25~5mmol、2.25~4.5mmol、3.0~9mmol、3.0~7.5mmol、3.0~6mmol、又は3.0~4.5mmolの範囲である。
【0096】
要約すると、金属含有ポリマー材料は、a)ポリマー材料と、b)ポリマー材料の重量に対して少なくとも10重量%(又はポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmol)に相当する量の、ポリマー材料中に組み込まれた(すなわち、吸着された)二価金属と、を含む。ポリマー材料は、i)15~65重量%の、式(I)、
【化7】
式(II)、
【化8】
又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及び
【化9】
iii)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)で表される第3のモノマー単位
【化10】
(式中、R
1は、水素又はアルキルである)を含有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、金属含有ポリマー材料は、酸塩基指示薬を更に含む。酸塩基呈色指示薬(colorimetric indicator)(すなわち、酸性型から塩基性型に変化するときに色が変わる染料(通常は有機染料))は、二価金属と同時に添加されることが多い。酸塩基呈色指示薬は通常、吸着されている窒素含有化合物の塩基性度が、酸塩基呈色指示薬を酸性型から塩基性型に変化させるのに十分なものであるように選択される。
【0098】
適切な酸塩基呈色指示薬の選択において更に考慮するべきこととして、二価金属の窒素含有化合物吸着能力の全て又はほとんど全てがなくなるまで酸塩基指示薬の色が変わらないように、二価金属よりも窒素含有化合物に対する親和性が十分に低い酸塩基指示薬を選択することが含まれる。すなわち、酸塩基呈色指示薬は、利用可能な二価金属原子の全部又は大部分の、窒素含有化合物の吸着能力がなくなったときに、第1の色から第2の色に変わるように選択される。その場合、色の変化は、ポリマー吸着剤が窒素含有化合物を吸着する能力の限度に達したか、又は限度に近いことを知らせる。本明細書において使用する場合、「限度に近い」という用語は、能力の限度の少なくとも60%以上に達する(すなわち、利用可能な吸着部位の少なくとも60%以上が窒素含有化合物の吸着に使用されている)ことを意味する。例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の吸着部位が、窒素含有化合物の吸着に使用されている。
【0099】
酸塩基呈色指示薬の選択において最後に考慮するべきこととして、金属含有ポリマー材料の本来の色を考慮することが含まれる。一部の二価金属は、多孔質ポリマー材料中に組み込まれた場合、得られる金属含有ポリマー材料に色を付ける(すなわち、ZnCl2金属含有ポリマー材料はピンク色であり、CuCl2金属含有ポリマー材料は暗灰色/緑色であり、NiCl2金属含有ポリマー材料は黄褐色である)。金属含有ポリマー材料自体の本来のものであり得る色の変化を考えて、酸性型から塩基性型への色の変化が明らかな酸塩基呈色指示薬を選択することが重要であり得る。呈色による指示に広範囲な色を利用可能にするために、また場合によっては、一部の金属含有ポリマー材料の色変化の感湿性を軽減するために、窒素含有化合物を吸着する際にもともと色が変化する金属含有ポリマー材料であっても、酸塩基指示薬を添加することが有利であり得る。
【0100】
酸塩基呈色指示薬の例としては、これらに限定されるものではないが、メチルレッド、ブロモキシレノールブルー、パラロザニリン、クリソイジン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェニルブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、及びチモールフタレインが挙げられる。酸塩基呈色指示薬は、任意の好適な方法を用いてポリマー吸着剤に加えることができる。いくつかの実施形態において、ポリマー吸着剤を、酸塩基呈色指示薬の溶液に少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、又は少なくとも8時間浸漬する。酸塩基呈色指示薬の溶液は、多くの場合、1~10mg/mLの濃度範囲である。多くの場合、ポリマー吸着剤約0.5gを、溶液約10mLに浸漬する。
【0101】
ポリマー材料は加水分解されていなくても、部分的に加水分解されていても、又は完全に加水分解されていてもよいが、いくつかの用途では、完全加水分解ポリマー材料を使用することが好ましい場合がある。未加水分解又は部分加水分解ポリマー材料は時間とともに変化する(すなわち、性能特性を変え得る加水分解又は更なる加水分解を受けやすい)ため、加水分解ポリマー材料は、このような材料のいずれよりも安定して機能し得る。
【0102】
亜鉛含有、コバルト含有、ニッケル含有、及びマグネシウム含有ポリマー材料などを用いるいくつかの実施形態では、二価金属はイオン種として存在し得る。イオン型の二価金属では、金属種を含む結晶相は通常、X線回折を使用して金属含有ポリマー材料を分析した場合に検出することができない。銅含有ポリマー材料などを用いる別の実施形態では、二価金属は酸化物として存在し得る。金属酸化物の場合、結晶相は、X線回折を使用して金属含有ポリマー材料を分析した場合に検出することができる。
【0103】
赤外分光法を使用して分析した場合、二価金属が組み込まれた後のポリマー材料ではカルボニルピークのシフトが観察され得る。理論に束縛されるものではないが、二価金属は、ポリマー材料中のカルボキシル基又は酸無水物基と会合しているであろう(すなわち、金属はそれらと相互作用又は配位しているであろう)と考えられる。
【0104】
金属含有ポリマー材料の一部は有色であることがある。いくつかの有色である例としては、亜鉛(II)、銅(II)、及びニッケル(II)を含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。亜鉛含有ポリマー材料は多くの場合、ピンク色であり、銅含有ポリマー材料は多くの場合、暗い灰みの緑色であり、ニッケル含有ポリマー材料は多くの場合、黄褐色である。
【0105】
金属含有ポリマー材料は典型的には、相当するポリマー材料より小さいBET比表面積を有する。二価金属はポリマー材料の細孔中に存在し、BET比表面積を減少させる。多くの実施形態において、二価金属含浸後の多孔質ポリマー材料のBET表面積は、少なくとも15m2/g、少なくとも20m2/g、少なくとも25m2/g、少なくとも30m2/g、少なくとも40m2/g、又は少なくとも50m2/gであり得る。
【0106】
任意の好適な方法によって形成及び乾燥し、任意の所望のフィルタ支持体上に堆積させた後、フィルタ支持体によって支持された吸着剤粒子の形態で提供される金属含有多孔質ポリマー材料を使用して、浮遊塩基性窒素含有化合物(airborne basic, nitrogen-containing compound)を捕捉することができる。よって、空気から塩基性窒素含有化合物を捕捉する方法が提供される。方法は、本明細書に記載の金属含有ポリマー材料を準備することと、次いで金属含有ポリマー材料を、例えばガス状又は蒸気状形態の、式Qの塩基性窒素含有化合物を潜在的に含む空気に曝露させることと、を含む。金属錯体が形成される。金属錯体は、前述の二価金属と少なくとも1種の式Qの化合物との反応生成物を含む。
【0107】
二価金属と反応して金属錯体を形成する式Qの塩基性窒素含有化合物は、ルイス塩基、ブレンステッド-ローリー塩基、又は両方に分類され得る。好適な塩基性窒素含有化合物は、多くの場合、低分子量(例えば、150g/mol以下)を有する。すなわち、塩基性窒素含有化合物は、室温において又は室温付近で揮発性であり得、又は使用条件下で揮発性であり得る。塩基性窒素含有化合物の例としては、アンモニア、ヒドラジン化合物、アミン化合物(例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルカノールアミン、アルキレンジアミン、アリールアミン)、及び窒素含有複素環式(飽和及び不飽和)化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体的な塩基性窒素含有化合物としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エタノールアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、ピリジン、ベンジルアミン、フェニルヒドラジン、エチレンジアミン、及び1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0108】
塩基性窒素含有化合物のガス又は蒸気に曝露させた後、金属含有ポリマー材料は金属錯体含有ポリマー材料に変換される。金属錯体含有ポリマー材料は、a)ポリマー材料と、b)ポリマー材料中に組み込まれた(すなわち、吸着された)金属錯体と、を含む。ポリマー材料は、i)15~65重量%の、式(I)
【化11】
式(II)、
【化12】
又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及び
【化13】
iii)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)で表される第3のモノマー単位
【化14】
(式中、R
1は、水素又はアルキルである)を含有する。金属錯体は、二価金属と少なくとも1種の塩基性窒素含有化合物との反応生成物を含む。
【0109】
金属錯体含有ポリマー材料の多くの実施形態において、ポリマー材料中に組み込まれた二価金属は金属錯体に変換されないままである。すなわち、金属錯体含有ポリマー材料は、塩基性窒素含有化合物と錯体を形成していない二価金属と少なくとも1種の塩基性窒素含有化合物と錯体を形成している二価金属との混合物を含む。
【0110】
二価金属の総量(塩基性窒素含有化合物と錯体を形成しているかいないかにかかわらず)は、ポリマー材料の総重量に基づいて少なくとも10重量%である。二価金属の総量は、ポリマー材料の総重量に基づいて少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%であり得る。この量は、最大100重量%又はそれ以上であってもよい。例えば、この量は、ポリマー材料の総重量に基づいて最大90重量%、最大80重量%、最大75重量%、最大70重量%、最大60重量%、又は最大50重量%であってもよい。例えば、この量は、多くの場合、10~100重量%、10~80重量%、10~60重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~30重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、15~30重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%又は20~30重量%の範囲である。
【0111】
言い換えると、二価金属の総量(塩基性窒素含有化合物と錯体を形成しているかいないかにかかわらず)は、ポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmol(ミリモル)である。二価金属の総量は、ポリマー材料1g当たり少なくとも2.0mmol、少なくとも2.25mmol、少なくとも3.0mmol、少なくとも3.75mmol、少なくとも4.0mmol、少なくとも4.5mmol、少なくとも5mmol、少なくとも6.0mmol、少なくとも7mmol、又は少なくとも7.5mmolであり得る。金属含有ポリマー材料は、1g当たり最大15mmol又はそれ以上の二価金属を含むことができる。例えば、この量は、ポリマー材料1g当たり最大14mmol、最大13.5mmol、最大13mmol、最大12mmol、最大11.25mmol、最大11mmol、最大10.5mmol、最大10mmol、最大9mmol、最大8mmol、又は最大7.5mmolであってもよい。例えば、この量は、多くの場合、ポリマー材料1g当たり1.5~15mmol、1.5~12mmol、1.5~9mmol、1.5~7.5mmol、1.5~6mmol、1.5~4.5mmol、2.25~9mmol、2.25~7.5mmol、2.25~6mmol、2.25~5mmol、2.25~4.5mmol、3.0~9mmol、3.0~7.5mmol、3.0~6mmol、又は3.0~4.5mmolの範囲である。
【0112】
金属含有ポリマー材料によって吸着される(例えば、錯体を形成する)塩基性窒素含有化合物の最大量は、ポリマー材料中に組み込まれた二価金属の量と関連する。される塩基性窒素含有化合物の最大量は、多くの場合、金属含有ポリマー材料1g当たり少なくとも0.5ミリ当量(すなわち、金属含有ポリマー材料1g当たり収着される塩基性窒素含有化合物は0.5ミリ当量)であり、最大10ミリ当量/g吸着又は更に多くてもよい。多くの実施形態において、吸着される最大量は、少なくとも1ミリ当量/g、少なくとも2ミリ当量/g、又は少なくとも3ミリ当量/gである。される量は、例えば、最大9ミリ当量/g、最大8ミリ当量/g、最大7ミリ当量/g、最大6ミリ当量/g、又は最大5ミリ当量/g吸着であってもよい。
【0113】
金属含有ポリマー材料中の二価金属の量は、塩基性窒素含有化合物を吸着する能力を最大にするために重要な因子であるが、それを超えると能力が増え続けなくなる二価金属の上限量に達する。すなわち、ある点を超えると、より多くの二価金属を金属含有ポリマー材料中に組み込んでも、塩基性窒素含有化合物の能力は増加しない。組み込まれた二価金属の量が多すぎれば、ポリマー材料の表面は二価金属で飽和する可能性があり、二価金属のクラスター形成及び/又は層形成をもたらす場合がある。クラスター形成及び/又は層形成は、塩基性窒素含有化合物との配位(すなわち、錯体形成)に利用可能な二価金属の量を減少させ得る。よって、ポリマー材料中に組み込まれる二価金属の量を最適化して、塩基性窒素含有化合物の最大吸着能力を得ることができる。
【0114】
ポリマー材料の多孔度もまた、金属含有材料が塩基性窒素含有化合物を吸着する能力に影響を及ぼす。典型的には、多孔度がより高いポリマー材料では、官能基部位に非常に到達しやすい。より高い多孔度のポリマー材料では、おそらくポリマー材料中にメソ細孔及び/又はマイクロ細孔が存在するために、通常はより多量の二価金属が組み込まれる。より多量の二価金属を組み込むこと(少なくともクラスター形成及び/又は層形成が起こる点を超えて)により、塩基性窒素含有化合物を吸着するために利用可能な配位部位はより多くなる。ポリマー材料の多孔度及びBET比表面積は、ポリマー材料を調製するために使用する架橋の量(すなわち、ジビニルベンゼンの量)、並びにポリマー材料の形成中に存在する有機溶媒の種類(identity)及び量によって変えることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、金属含有ポリマー材料中の二価金属の一部のみが、式Qの塩基性窒素含有化合物と錯体を形成している。すなわち、最大量のQは吸着されない。この場合、ポリマー材料は、金属錯体と、塩基性窒素含有化合物と錯体を形成していない二価金属との両方を含有する。
【0116】
金属含有ポリマー材料上に式Qの塩基性窒素含有化合物を捕捉する(すなわち、吸着する)任意の方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、金属含有ポリマー材料中の二価金属が亜鉛、ニッケル、又は銅から選択される場合は特に、塩基性窒素含有化合物に曝露した際に色の変化が起こる。例えば、塩基性窒素含有化合物に曝露した際に、亜鉛含有ポリマー材料はピンク色から黄褐色に変わり、銅含有ポリマー材料は暗い灰みの緑色から青緑色に変わり、ニッケル含有ポリマー材料は黄褐色からオリーブグリーン色に変わる。この色の変化を使用して、塩基性窒素含有化合物に曝露したことを示すことができる。塩基性窒素含有化合物に曝露した後の色の強度は、曝露量に関連し得る。そのような色の変化が、塩基性化合物に曝露された際に活性炭支持体上に提供された二価金属により発生し得るとしても、内部に組み込まれた二価金属のそのような微細な色の変化は活性炭の暗い色により通常わかりにくくなるため、そのような色の変化は以前には認識されなかった可能性があることが理解されるであろう。
【0117】
金属含有多孔質材料、そのような材料の製造方法、及び塩基性窒素含有化合物を捕捉するためのそのような材料の使用方法は、両方ともMetal-Containing Polymeric Materialsと題する、国際出願第PCT/US2016/030974号及び米国特許仮出願第62/298089号に詳述されており、その両方とも、それらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のようにフィルタ支持体上に支持された吸着剤粒子は、バインダーを含んでもよい。このような手法及び状態は、「Composite Granules Including Metal-Containing Polymeric Materials」と題する、本明細書と同日付で出願の米国特許仮出願第xx/xxxxxx号、代理人明細書第78842US002号に詳述されており、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
例示的な実施形態の一覧
実施形態1は、吸着剤粒子を支持するフィルタ支持体を備えるエアフィルタであって、吸着剤粒子の少なくともいくつかは、多孔質であり、ポリマー材料であって、a)i)15~65重量%の、式(I)、式(II)、又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及びiii)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)で表される第3のモノマー単位(式中、R1は水素又はアルキルである)を含むポリマーと、b)ポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmolに相当する量でポリマー材料中に組み込まれた二価金属と、を含むポリマー材料を含む、エアフィルタである。
【0119】
実施形態2は、フィルタ支持体が、多孔質ポリマー吸着剤粒子の少なくともいくつかが、その上に配置された、少なくとも1つの主表面を有する基材を含む、実施形態1に記載のエアフィルタである。
【0120】
実施形態3は、多孔質ポリマー吸着剤粒子が、実質的に単層として基材の主表面上に存在する、実施形態2に記載のエアフィルタである。
【0121】
実施形態4は、フィルタ支持体が、多孔質ポリマー吸着剤粒子を有する多孔質の通気性材料を含み、多孔質ポリマー吸着剤粒子は、材料の主表面上に配置され、及び/又は、材料の少なくとも主表面に近接した位置の材料の内部に配置された、実施形態1に記載のエアフィルタである。
【0122】
実施形態5は、多孔質ポリマー吸着剤粒子が、多孔質の通気性材料の内部全体に配置されている、実施形態4に記載のエアフィルタである。
【0123】
実施形態6は、エアフィルタが、フィルタ支持体から本質的になる、実施形態1~5のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0124】
実施形態7は、フィルタ支持体が、シート状材料を含み、シート状材料は、主平面を呈し、約3mm未満の厚さを呈し、少なくともシート状材料の主平面に少なくともほぼ垂直な方向に、空気流がフィルタ支持体を通過できるように構成されている、実施形態1~6のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0125】
実施形態8は、フィルタ支持体が、少なくともいくつかの多孔質ポリマー吸着剤粒子が接着剤で付着された主表面を有するネットを含む、実施形態1~3及び6~7のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0126】
実施形態9は、フィルタ支持体が、内部を呈する繊維ウェブを含み、多孔質ポリマー吸着剤粒子が、ウェブの内部の少なくとも部分内に配置されている、実施形態1~7のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0127】
実施形態10は、多孔質ポリマー吸着剤粒子が、繊維ウェブの内部全体に配置されている、実施形態9に記載のエアフィルタである。
【0128】
実施形態11は、ウェブが不織布繊維ウェブである、実施形態9~10のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0129】
実施形態12は、不織布繊維ウェブがメルトブローンウェブである、実施形態11に記載のエアフィルタである。
【0130】
実施形態13は、繊維ウェブの少なくともいくつかの繊維がそれぞれ、少なくとも1つの多孔質ポリマー吸着剤粒子に結合されている、実施形態9~12のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0131】
実施形態14は、フィルタ支持体が多層通気性アセンブリの1つの層である、実施形態1~5及び7~13のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0132】
実施形態15は、多層通気性アセンブリが、フィルタ支持体と同じ層ではなく、かつ50未満の透過百分率を呈する粒子濾過層である少なくとも1つの層を含む、実施形態14に記載のエアフィルタである。
【0133】
実施形態16は、粒子濾過層がエレクトレット部分を含む、実施形態15に記載のエアフィルタである。
【0134】
実施形態17は、フィルタ支持体が、50未満の透過百分率を呈する濾材である、実施形態1~14のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0135】
実施形態18は、フィルタ支持体がプリーツ加工されている、実施形態1~17のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0136】
実施形態19は、エアフィルタが、強制空気加熱ユニット、強制空気冷却ユニット、強制空気加熱/冷却ユニット、室内空気清浄器、及び自動車用車内空気濾過ユニットからなる群から選択される空気処理装置のエアフィルタ受け部に挿入されるように構成されたフレーム付きエアフィルタである、実施形態1~18のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0137】
実施形態20は、フィルタ支持体が、吸着剤粒子が内部に配置されている貫通孔を有するハニカムを含む、実施形態1、6、及び14~16のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0138】
実施形態21は、フィルタ支持体が濾過フェースピース呼吸マスクの層を提供する、実施形態1~5及び7~17のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0139】
実施形態22は、濾過フェースピース呼吸マスクが、平坦折り畳み式呼吸マスク及び成形された呼吸マスクからなる群から選択される、実施形態21に記載のエアフィルタである。
【0140】
実施形態23は、フィルタ支持体が、多孔質ポリマー吸着剤粒子が配置された内部を有し、かつ少なくとも1つの空気吸入口及び少なくとも1つの空気排出口を有する容器を含む、実施形態1に記載のエアフィルタである。
【0141】
実施形態24は、フィルタ支持体がフィルタカートリッジを含む、実施形態23に記載のエアフィルタである。
【0142】
実施形態25は、フィルタカートリッジが、ハーフフェース負圧レスピレーター、フルフェース負圧レスピレーター、避難フード、及び動力式空気清浄レスピレーターからなる群から選択される個人用保護装置と共に用いられるように構成されている、実施形態24に記載のエアフィルタである。
【0143】
実施形態26は、多孔質吸着剤粒子が、未加水分解ポリマー材料で構成され、かつ二価金属の非存在下で測定される場合に100m2/gより大きいBET比表面積を示す、実施形態1~25のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0144】
実施形態27は、多孔質吸着剤粒子が、加水分解ポリマー材料で構成され、かつ二価金属の非存在下で測定される場合に50m2/gより大きいBET比表面積を示す、実施形態1~26のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0145】
実施形態28は、多孔質吸着剤粒子の少なくともいくつかが、隣接する多孔質吸着剤粒子にバインダーによって結合している、実施形態1~27のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0146】
実施形態29は、150g/mol以下の分子量を有する塩基性窒素含有化合物の少なくともいくらかを空気から捕捉する方法であって、多孔質ポリマー吸着剤粒子が空気に曝露されるように、実施形態1~28のいずれかに記載のエアフィルタを配置することと、塩基性窒素含有化合物の少なくともいくらかを多孔質ポリマー吸着剤粒子上に吸着することと、を含む、方法である。
【0147】
実施形態30は、フィルタ支持体が主表面を呈し、空気が、フィルタ支持体の主表面の平面と少なくともほぼ一致する方向に移動する空気流の形態で存在する、実施形態29に記載の方法である。
【0148】
実施形態31は、フィルタ支持体が、そこを通る空気流を可能にし、空気が、フィルタ支持体の主表面に少なくともほぼ垂直な方向にフィルタ支持体の少なくとも一部分を通過する空気流の形態で存在する、実施形態29に記載の方法である。
【0149】
実施形態32は、多孔質ポリマー吸着剤粒子を含むフィルタ支持体を含むエアフィルタの製造方法であって、a)i)15~65重量%の、式(I)、式(II)、又はこれらの混合物で表される第1のモノマー単位、ii)30~85重量%の、式(III)で表される第2のモノマー単位、及びiii)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)で表される第3のモノマー単位(式中、R1は水素又はアルキルである)を含むポリマーと、b)ポリマー材料1g当たり少なくとも1.5mmolに相当する量でポリマー材料中に組み込まれた二価金属と、を含むポリマー材料を含む多孔質ポリマー吸着剤粒子を準備することと、多孔質ポリマー吸着剤粒子をフィルタ支持体上に支持することと、を含む、製造方法である。
【0150】
実施形態33は、エアフィルタが、少なくとも1つの二次吸着剤を更に含む、実施形態1~28のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0151】
実施形態34は、少なくとも1つの二次吸着剤が活性炭を含む、実施形態33に記載のエアフィルタである。
【0152】
実施形態35は、ポリマー吸着剤が酸塩基染料を更に含む、実施形態1~28及び33~34のいずれかに記載のエアフィルタである。
【0153】
上記で列挙した例示的な実施形態において、式(I)、(II)、(III)及び(IV)は、「発明を実施するための形態」の「吸着剤」部分に示される構造を有する材料であると規定する。
【実施例】
【0154】
【0155】
手順
分析及び特徴付け手順
多孔度及びガス吸着実験、並びにBET比表面積及び細孔容積などのパラメータの計算は、両方とも「METAL-CONTAING POLYMERIC MATERIALS」と題し、その両方がそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願番号PCT/US2016/030974号の及び米国特許仮出願第62/298089号の「Gas Sorption Analysis」の節に記載されているのと同様の方法で行った。(これらの出願は、下記でそれぞれ、PCT‘974出願及びUS‘089出願と称する。)実施例で報告される全ての細孔容積は、特に明記しない限り、約0.98の相対圧力(p/p°)で測定される。
【0156】
アンモニア持続時間(lifetime)カートリッジ試験
単純なフロースルー型の特注の送達システムを使用して、既知の濃度のアンモニアを測定用試料に送達した。ステンレス鋼及びポリ(塩化ビニル)(PVC)管を、送達システム全体に用いた。アンモニアは、無水アンモニア加圧ガスボンベ(Oxygen Service Company(St.Paul,MN,USA))から、システムに送達した。アンモニア流を圧縮空気で希釈し、1000ppmのアンモニア流を、流量25.2又は32L/分(LPM)で試験チャンバに送達した。空気流量は、0~300LPMのTSI流量計(TSI(Shoreview,MN))を用いて設定した。アンモニア濃度は、一連の滴定によって測定した。1LPMのチャレンジガス流を15mLのインピンジャーに吸引し、4重量%のホウ酸水溶液を通してバブリングした。約15分後、内容物をビーカーに注ぎ、数滴のブロモクレゾールグリーンを添加した。混合物が青色から黄色に変わるまで、0.10Mの塩酸を混合物中に計量しながら入れた。アンモニア試験の相対湿度(RH)は、システムの%RHを検知し、所望の%RHから0.2%を超えて外れた場合に、水浴を加熱して湿度を上昇させる比例積分微分(PID)制御器を用い、一定の設定点に維持した。PIDセンサは、Vaisala HMM1014A1AE湿度プローブ(Vaisala(Vanta,Finland))で較正した。
【0157】
試験チャンバ内でカートリッジをシステムと1列に配置し、1000ppmのアンモニアガス流がカートリッジを通って流れるようにした。試験チャンバの下流側に、光音響ガス検出器Innova 1412(California Analytical,Orange,CA)に通じる管を接続した。アンモニアガス流がカートリッジを通過し始めた時点で、試験が開始されたものとみなし、タイマーを開始した。Innova光音響ガス検出器は約50秒毎にサンプリングを行い、システムは試料間でフラッシュした。
【0158】
試験の前に、窒素加圧ガスボンベ(Oxygen Services Company(St.Paul,MN,USA))中の検査済みの57ppmアンモニアを使用して、光音響ガス検出器を較正した。この流出物によって生成された信号を使用して、ソフトウェアを50ppmアンモニアに設定した。試験材料の層を通過したアンモニア流出物が、50ppmに相当する信号を超える信号を光音響ガス検出器において生成したときに相当する時点を、アンモニア蒸気試験の終点と定義した。各カートリッジの性能を、上記の試験を実施中に50ppmの破過が観察されるまでの分単位の時間として報告した。
【0159】
アンモニア持続時間使い捨て呼吸マスク試験
単純なフロースルー型の特注の送達システムを使用して、既知の濃度のアンモニアを測定用使い捨て呼吸マスクに送達した。送達システム全体にわたってステンレス鋼及びPVC管を使用した。アンモニアは、無水アンモニア加圧ガスボンベ(Oxygen Service Company(St.Paul,MN,USA))から、システムに送達した。アンモニア流を圧縮空気で希釈し、56ppmのアンモニア流を、流量30LPMで試験チャンバに送達した。空気流量は、0~300LPMのTSI流量計(TSI(Shoreview,MN))を用いて設定した。試験のRHは、PID制御器を使用して一定の50%RHに維持した。PIDセンサは、Vaisala HMM1014A1AE湿度プローブ(Vaisala(Vanta,Finland))で較正した。アンモニア濃度は、光音響ガス検出器Innova 1412(California Analytical,Orange,CA)を使用して測定した。
【0160】
試験チャンバ内で呼吸マスクをシステムと1列に配置し、56ppmのアンモニアガス流が試験材料を通って流れるようにした。試験チャンバの下流側に、光音響ガス検出器に通じる管を接続した。アンモニアガス流が使い捨て呼吸マスクを通過し始めた時点で、試験が開始されたものとみなし、タイマーを開始した。Innova光音響ガス検出器は約50秒毎にサンプリングを行い、システムは試料間でフラッシュした。
【0161】
試験の前に、窒素加圧ガスボンベ(Oxygen Services Company(St.Paul,MN,USA))中の検査済みの57ppmアンモニアを使用して、光音響ガス検出器を較正した。この流出物によって生成された信号を使用して、ソフトウェアを50ppmアンモニアに設定した。試験材料の層を通過したアンモニア流出物が、5ppmに相当する信号を超える信号を光音響ガス検出器において生成したときに相当する時点を、アンモニア蒸気試験の終点と定義した。各使い捨て呼吸マスクの性能を、上記の試験を実施中に5ppmの破過が観察されるまでの分単位の時間として報告した。
【0162】
代表例
前駆体ポリマー材料のバッチを、上記で参照したPCT’974及びUS’089出願の実施例PE-15-1に記載されているものと概ね同様の方法で作製した。前駆体ポリマー材料は、SABETが約240m2/gの範囲、総細孔容積が約0.275cm3/gの範囲であった(0.96相当のp/p°で測定した)。前駆体ポリマー材料を12×40メッシュの粒子に篩過した。前駆体ポリマー材料を、PCT’974出願及びUS’089出願の実施例15に記載されているものと概ね同様の方法で、4.0Mの塩化亜鉛(II)(ZnCl2)水溶液と反応させた。ZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤は、SABETが約35m2/gの範囲、総細孔容積が約0.050cm3/gの範囲であった。
【0163】
フィルタカートリッジは、3M Company(St.Paul,MN)より、3M HALF FACEPIECE REUSABLE RESPIRATOR 6000 SERIESと共に使用可能な種類を入手した。カートリッジは、入手時には空であり、約105mLの空の内部容積を構成していた。上記のZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤粒子を、カートリッジの105mLの内部容積を占める充填層として、粒子を手作業で担持することによって可能な充填密度まで、手作業でカートリッジハウジングの内部に堆積させた。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。質量で、このカートリッジは、59.3gのZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤粒子を含有していた。このカートリッジを使用して、15%RH及び32LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。代表例のカートリッジのアンモニア持続時間は、約133分間と測定された。
【0164】
比較例(1)
活性炭を入手し、活性炭がメッシュサイズ12×40であることを除いて、PCT’974及びUS’089出願の比較例3に記載されているものと概ね同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。空のフィルタカートリッジハウジングを代表例に記載されているとおり入手し、カートリッジハウジングの105mLの内部容積にZnCl2含浸活性炭を充填して充填層を形成した。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。質量で、このカートリッジは、61.9gのZnCl2含有活性炭を含有していた。このカートリッジを使用して、15%RH及び32LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。比較例(1)のカートリッジのアンモニア持続時間は、約78分間と測定された。
【0165】
変形例
変形例(1)
代表例と同様の方法でZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤粒子のバッチを作製し、フィルタカートリッジハウジングの内部容積に担持した。変形例(1)のカートリッジのアンモニア持続時間を、RHが15%ではなく約0%であることを除いて、代表例と同様の方法で試験した。これらの条件下で、変形例(1)のカートリッジのアンモニア持続時間は約178分間と測定された。
【0166】
変形例(2)
Hernの米国特許第6767860号に記載されている「URC」炭素としての種類の活性炭を入手し、ZnCl2を含浸させなかった。活性炭は、12×30メッシュであった。約75mLのこの活性炭を、上記の種類のフィルタカートリッジハウジングの(105mLの)内部容積に担持した。前駆体ポリマー材料を40×80メッシュに篩過し、6.0MのZnCl2水溶液を用いて含浸を行ったことを除いて、代表例と同様の方法で、ZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤粒子のバッチを作製した。前駆体材料は加水分解せず、約240m2/gの範囲のSABET、及び約0.275cm3/gの範囲の総細孔容積を示した(0.96相当のp/p°で測定した)。約30mLのZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤粒子を、75mLの活性炭層の上の層として、フィルタカートリッジハウジング内に担持した。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。質量で、このカートリッジは、47.3gの活性炭(約75mLを占める層として)及び18.2gのZnCl2含有ポリマー吸着剤(約25mLを占める層として)を含有していた。このカートリッジを使用して、15%RH及び32LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。変形例(2)のカートリッジのアンモニア持続時間は、約39分間と測定された。
【0167】
変形例(3)
変形例(2)で上述した一般的な種類の活性炭を入手し、ZnCl2を含浸させなかった。活性炭は、12×30メッシュであった。約75mLの活性炭を、上記の種類のフィルタカートリッジハウジングの(105mLの)内部容積に担持した。多孔質ポリマー吸着剤粒子のバッチを、変形例(2)と同様の方法で作製した。この前駆体材料は、約240m2/gの範囲のSABET、及び約0.275cm3/gの範囲の総細孔容積を示した(0.96相当のp/p°で測定した)。この前駆体材料を、PCT’974及びUS’089出願の実施例PE-10-2に記載されているものと概ね同様の方法で加水分解した。加水分解された多孔質ポリマー材料は、約110m2/gの範囲のSABET、及び約0.135cm3/gの範囲の総細孔容積を示した。次いで、加水分解された多孔質ポリマー材料に、変形例(2)と概ね同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。ZnCl2を含有する加水分解された多孔質ポリマー吸着剤は、SABETが約35m2/gの範囲、総細孔容積が約0.050cm3/gの範囲であった。
【0168】
約30mLの、ZnCl2を含有する加水分解された多孔質ポリマー吸着剤粒子を、変形例(2)のように75mLの活性炭層の上の層として、フィルタカートリッジハウジング内に担持した。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。質量で、このカートリッジは、47.3gの活性炭及び17.6gのZnCl2を含有する加水分解されたポリマー吸着剤を含有していた。このカートリッジを使用して、15%RH及び32LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。変形例(3)のカートリッジのアンモニア持続時間は、34分間と測定された。
【0169】
変形例(4)
前駆体ポリマー材料のバッチを、上記で参照したPCT’974及びUS’089出願の実施例PE-7-1に記載されているものと概ね同様の方法で作製した。前駆体ポリマー材料は、約290m2/gの範囲のSABET、及び約0.240cm3/gの範囲の総細孔容積を示した。前駆体ポリマー材料を40×80メッシュの粒子に篩過した。
【0170】
この前駆体材料を、PCT’974及びUS’089出願の実施例PE-7-2に記載されているものと概ね同様の方法で加水分解した。加水分解された多孔質ポリマー材料は、約110m2/gの範囲のSABET、及び約0.135cm3/gの範囲の総細孔容積を示した。次いで、加水分解された多孔質ポリマー材料に、PCT’974及びUS’089出願の実施例7と概ね同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。ZnCl2を含有する加水分解された多孔質ポリマー吸着剤は、SABETが約35m2/gの範囲、総細孔容積が約0.050cm3/gの範囲であった。
【0171】
ネットは、Delstar Technologies(Middleton,DE)からDELNETという商品名で入手した。ネットは、互いに略垂直に配向された2組のフィラメントを含み、それぞれが約0.2×1.1mmの寸法を有する概ね矩形の貫通孔(開口部)のアレイを形成していた。感圧接着剤(PSA)前駆体(コーティング溶液)は、主にアクリル系ラテックス(Novacryl PSP-180;Omnova Solutions(Beachwood,OH)で構成されており、粘着付与剤(Aquatac 6085;Arizona Chemicals(Jacksonville,FL))をネットの両側に適用し、液体を蒸発によって除去して、ネットの各側にPSAを残した。上述のZnCl2含有ポリマー吸着剤の粒子が、ネットの主表面上のPSAに接着剤付着するように、吸着剤粒子をネットの両側に手作業で散布した。
【0172】
この吸着剤担持ネットを、内部容積が105mLではなく75mLであることを除いて上述のフィルタカートリッジハウジングと同様のフィルタカートリッジハウジングの内側寸法と同じサイズに切断した。2枚の吸着剤付着ネットをカートリッジの内部に担持した。カートリッジの内部容積の残りの部分に、変形例2に記載されている一般的な種類の(及びZnCl2を含浸させなかった)12×30メッシュ活性炭を充填した。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。カートリッジ内のZnCl2含有ポリマー吸着剤の質量を計算(ネット上の担持量及び使用したネットの面積に基づいて)したところ、約2.71gであった。このカートリッジを使用して、5%RH及び25.2LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。カートリッジのアンモニア持続時間は、31分間と測定された。
【0173】
比較例(4)
活性炭を入手し、活性炭がメッシュサイズ20×40であることを除いて、比較例(1)に記載されているものと概ね同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。変形例(4)に記載されているのと同様の方法で、ZnCl2担持活性炭をネット上に手作業で堆積させ、PSAで接着した。変形例(4)と同様の方法で、2層のネットをフィルタカートリッジハウジング内に担持し、フィルタカートリッジハウジングの残りの容積に活性炭(ZnCl2を担持させなかったもの)を充填した。次いで、超音波溶接により、カートリッジの蓋を所定どおり装着した。カートリッジ内のZnCl2含有活性炭の質量を計算(ネット上の担持量及び使用したネットの面積に基づいて)したところ、約3.35gであった。このカートリッジを使用して、5%RH及び25.2LPMで上記の通りアンモニア持続時間カートリッジ試験を実施した。カートリッジのアンモニア持続時間は、22分間と測定された。
【0174】
変形例(5)
前駆体ポリマー材料のバッチを、代表例に記載されているのと概ね同様の方法で作製した。前駆体ポリマー材料は、SABETが約240m2/gの範囲、総細孔容積が約0.275cm3/gの範囲であった(0.96相当のp/p°で測定した)。前駆体ポリマー材料を20×40メッシュの粒子に篩過した。前駆体ポリマー材料に、PCT’974及びUS’089出願の実施例15と同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。ZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤は、SABETが約35m2/gの範囲、総細孔容積が約0.050cm3/gの範囲であった。
【0175】
基本重量約70g/m2のメルトブローンポリプロピレン不織布ウェブを入手した。アクリル系感圧接着剤(Acronal A 220;BASF(Ludwigshafen,Germany))を、メルトブローンポリプロピレン不織布ウェブの一方の主表面上にスクリーン印刷した。ZnCl2含有ポリマー吸着剤の粒子を、吸着剤粒子がPSAを介してウェブの主表面に接着剤付着されるように、不織ウェブの接着剤を有する主表面上に手作業で散布した。次いで、この吸着剤を担持した不織布ウェブを(超音波溶接を介して)、プロトタイプの平坦折り畳み式使い捨て呼吸マスクに組み込んだ。質量で、使い捨て呼吸マスクは、約4.69gのZnCl2含有多孔質ポリマー吸着剤を含有していた。呼吸マスクを(開いた構成で)使用して、上記の通り、アンモニア持続時間使い捨て呼吸マスク試験を実施した。使い捨て呼吸マスクのアンモニア持続時間は、約211分間と測定された。
【0176】
比較例(5)
活性炭を入手し、比較例(1)に記載されているものと概ね同様の方法で、ZnCl2を含浸させた。ZnCl2担持活性炭粒子を、変形例(5)において多孔質ポリマー吸着剤粒子について記載されているのと同様の方法で、メルトブローン不織布ウェブの主表面上に手作業で堆積させ、PSAで接着した。不織布ウェブを、変形例(5)と同様の方法で、プロトタイプの平坦折り畳み式使い捨て呼吸マスクに組み込んだ。次いで、呼吸マスクを用い、5%RH及び25.2LPMで上記の通り、アンモニア持続時間使い捨て呼吸マスク試験を実施した。使い捨て呼吸マスクのアンモニア持続時間は、約112分間と測定された。
【0177】
本出願は、国際出願第PCT/US2016/030974号及び米国特許仮出願第62/298089号を参照により組み込む。これらの出願は、様々な対イオン(例えば、塩化物イオン、酢酸イオン、及び硝酸イオン)を使用して、多孔質ポリマー吸着剤を作製し、様々な二価金属(例えば、亜鉛、銅、ニッケル、及びマグネシウム)を含浸させた実施例を含む。これらの実施例は、簡潔にするために本出願において再現されていないが、PCT‘974及びUS’089出願に記載されているような実施例の性能は、本出願に開示されている方法で好適なフィルタ支持体上にそれらの実施例吸着剤が配置されれば、これらの吸着剤によって示される特性(特に、アンモニアなどの塩基性窒素含有化合物を吸着する能力の向上)が同様に示されることを当業者に予期させるであろう。
【0178】
実施例の多くは、様々な配合及び構成で達成される「アンモニア持続時間」に関して提示される結果を含んでいた。「アンモニア持続時間」などのパラメータは、塩基性窒素含有化合物を吸着する能力の向上を特徴付けるために単に便宜上使用されていることが理解され、このようなパラメータの比較的低い値は、特定の配合又は構成が(例えば、任意の適用可能な政府規格に合格するという点で)十分な濾過性能を示すことができないことを必ずしも意味するわけではない。比較的長いアンモニア持続時間の達成は、特定の配合又は構成により、全ての適用可能な性能基準を満たしながら、より少ない量の吸着剤及び/又はより少ない量の含浸される金属を使用可能であり得ることを示唆し得ることも理解されよう。
【0179】
前述の実施例は、理解を明確にするためにのみ提示したものであり、これらの実施例による不要な限定はないものと理解される。実施例に記載の試験及び試験結果は、予測的なものではなく、例示的なものであることが意図され、試験手順の変更により、異なる結果がもたらされることが予想され得る。実施例中の全ての定量値は、用いられた手順に含まれる周知の許容誤差を考慮した近似的なものと理解される。
【0180】
本明細書に開示の特定の例示的な要素、構造、特徴、詳細、構成などは、多数の実施形態において改変及び/又は組み合わされ得ることが、当業者には明らかであろう。全てのこのような変更及び組み合わせは、例示的な説明のために選択された代表的な設計としてだけではなく、考案された発明の範囲内にあることが、本発明者によって想定される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるのではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書に代替物として明確に記載されている要素のいずれも、所望により、任意の組み合わせにおいて、特許請求の範囲に明示的に含まれる場合がある、又は、特許請求の範囲から除外される場合がある。オープンエンドの用語(例えば、を含む及びその派生語)で本明細書に記載されている要素又は要素の組み合わせのいずれも、クローズエンドの用語(例えば、からなる及びその派生語)及び部分的にクローズエンドの用語(例えば、から本質的になる、及びその派生語)で更に記載されているものと見なされる。様々な理論及び可能な機構が本明細書で説明可能であるが、いかなる場合であっても、このような説明は、特許請求可能な主題を限定するものではない。本明細書の記載と、参照によって本明細書に組み込んだいずれかの文書の開示との間に何らかの矛盾又は不一致が存在する場合、本明細書の記載が優先するものとする。