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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/36 20060101AFI20220606BHJP
【FI】
F16K1/36 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018102065
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206995
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健治
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-208229(JP,A)
【文献】実開昭55-113865(JP,U)
【文献】実開昭60-012763(JP,U)
【文献】特開2006-079171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0186697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
31/00-31/05
39/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとをつなぐ通路に設けられる弁座とを有するボディと、
前記弁座に着脱して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を軸線方向に駆動して前記弁部を開閉させるアクチュエータと、を備え、
前記弁体は、
外周に沿って凹状の嵌合部が周設された本体と、
前記嵌合部に嵌着され、前記弁座に着脱するシールリングと、を含み、
前記嵌合部は、
前記弁体の軸線方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、
前記シールリングは、
前記第1の側面に対向する第1の端面と、前記第2の側面に対向する第2の端面とを有し、
前記第1の端面と前記第2の端面のうち少なくとも低圧側となる端面に、対向する側面に対して線接触態様で当接する環状のビードを有し、
前記本体には成形の痕跡であるパーティングラインが残存し、
前記ビードの高さが、前記パーティングラインの高さよりも大きく、
前記ビードは、前記側面に現れた前記パーティングラインと交わるように前記側面に当接することを特徴とする制御弁。
【請求項2】
上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとをつなぐ通路に設けられる弁座とを有するボディと、
前記弁座に着脱して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を軸線方向に駆動して前記弁部を開閉させるアクチュエータと、を備え、
前記弁体は、
外周に沿って凹状の嵌合部が周設された本体と、
前記嵌合部に嵌着され、前記弁座に着脱するシールリングと、を含み、
前記嵌合部は、
前記弁体の軸線方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、
前記シールリングは、
前記第1の側面に対向する第1の端面と、前記第2の側面に対向する第2の端面を有し、
前記第1の端面および前記第2の端面のうち少なくとも一方の端面に、対向する側面に向けて横断面が狭小化された環状の低剛性部を有し、
前記低剛性部が位置する部分の高さが、前記嵌合部への嵌着前において前記第1の側面と前記第2の側面との間隔よりも大きくなるように設定され、
前記本体には成形の痕跡であるパーティングラインが残存し、
前記低剛性部の高さが、前記パーティングラインの高さよりも大きく、
前記低剛性部は、前記側面に現れた前記パーティングラインと交わるように前記側面に当接することを特徴とする制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体にシールリングを有する制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガス給湯器の流量を制御する流量制御弁(以下、単に「制御弁」とよぶことがある)が知られている。(例えば特許文献1参照)。このような制御弁には、弁体に備えられ、閉弁状態において弁座に当接して弁部をシールするシール部材が備えられている。このシール部材は、例えばゴム製のシールリングであり、弁体の本体に設けられた環状溝に収まるように寸法設定され、緊縛力により固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-282649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、このような本体は樹脂材の射出成形で得られる。成形時には、いわゆる割型を構成する複数の金型が用いられる。そのため、成形後の本体には複数の金型の境界線に沿ってパーティングラインが形成される。
【0005】
従来の構造では、シールリングと本体が接する面にこのパーティングラインが存在するため、パーティングライン近傍で本体とシールリングとの間に多少の隙間が生じ、流体の微小の漏れが発生していた。そのため、わずかな漏れも許されない制御弁の場合、本体に対し切削加工を行いパーティングラインによる段差を除去する必要があり、コスト高の原因となっていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、弁体の本体にパーティングラインが存在しても流体の漏れを抑えられる制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の制御弁は、上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとをつなぐ通路に設けられる弁座とを有するボディと、弁座に着脱して弁部を開閉する弁体と、弁体を軸線方向に駆動して弁部を開閉させるアクチュエータと、を備え、弁体は、外周に沿って凹状の嵌合部が周設された本体と、嵌合部に嵌着され、弁座に着脱するシールリングと、を含み、嵌合部は、弁体の軸線方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、シールリングは、第1の側面に対向する第1の端面と、第2の側面に対向する第2の端面とを有し、第1の端面と第2の端面のうち少なくとも低圧側となる端面に、対向する側面に対して線接触態様で当接する環状当接部を有する。
【0008】
本発明の別の態様の制御弁は、上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとをつなぐ通路に設けられる弁座とを有するボディと、弁座に着脱して弁部を開閉する弁体と、弁体を軸線方向に駆動して弁部を開閉させるアクチュエータと、を備え、弁体は、外周に沿って凹状の嵌合部が周設された本体と、嵌合部に嵌着され、弁座に着脱するシールリングと、を含み、シールリングは、嵌合部に対向する面に、嵌合部と線接触態様で当接する環状当接部を有する。
【0009】
本発明の別の態様の制御弁は、上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとをつなぐ通路に設けられる弁座とを有するボディと、弁座に着脱して弁部を開閉する弁体と、弁体を軸線方向に駆動して弁部を開閉させるアクチュエータと、を備え、弁体は、外周に沿って凹状の嵌合部が周設された本体と、嵌合部に嵌着され、弁座に着脱するシールリングと、を含み、嵌合部は、弁体の軸線方向に対向する第1の側面と第2の側面とを有し、シールリングは、第1の側面に対向する第1の端面と、第2の側面に対向する第2の端面を有し、第1の端面および第2の端面のうち少なくとも一方の端面に向けて横断面が狭小化された環状の低剛性部を含み、低剛性部が位置する部分の高さが、嵌合部への嵌着前において第1の側面と第2の側面との間隔よりも大きくなるように設定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体にパーティングラインが存在しても流体の漏れを抑えられる制御弁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る制御弁の全体構成を表す断面図である。
図2】弁体の斜視図である。
図3】本実施形態におけるシールリングである。
図4】嵌合部近傍の断面図である。
図5図5(a)は図4(b)におけるA-A断面図である。図5(b)は図4(b)におけるB-B断面である。
図6図6(a)は図5(b)におけるC-C断面図である。図6(b)は図6(a)のうちシールリングの断面外周を示す図である。
図7図7(a)は比較例のシールリングを嵌着した場合のC-C断面図である。図7(b)は図7(a)のうちシールリングの断面外周を示す図である。
図8】第1実施形態のシールリングの変形例断面図である。
図9図9(a)は、第2実施形態で使用されるシールリングの中央断面図である。図9(b)は第2実施形態におけるシールリングを使用した場合の嵌合部近傍の断面図である。
図10図10(a)は、上端部と下端部に環状のビード設けたシールリングの中央縦断面図である。図10(b)は、図10(a)のシールリングを嵌着させた場合の嵌合部近傍の断面図である。
図11図11(a)はシールリングの内周面にビードを設けた場合の中央縦断面図である。図11(b)は図11(a)のシールリングを嵌着させた場合の嵌合部近傍の断面図である。
図12図12(a)は、シールリングの下端面の外周縁近傍にテーパに代えてR部を設けた場合の中央縦断面図である。図12(b)は図12(a)のシールリングを嵌着させた場合の嵌合部近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁100の全体構成を表す断面図である。制御弁100は、給湯装置に使用される流量制御弁である。制御弁100は、ボディ200、駆動ユニット300、弁体400を含む。
【0014】
ボディ200は、第1ボディ220と第2ボディ240を有する。第1ボディ220は、円筒状の本体221と、本体221の側部に連設された導入管部222と、本体221の下方に連設された導出管部226とを有する。導入管部222は本体221の側面に対して直角に設けられ、導出管部226は本体221に同軸状に設けられている。導入管部222は上流側から湯水(流体)を導入する導入ポート224を有し、導出管部226は下流側へ流体を導出する導出ポート228を有する。本体221の導出管部226との境界部には、その内周部により弁孔230が形成されている。弁孔230の端部に弁座232が形成されている。弁体400と弁座232により、導入ポート224と導出ポート228とをつなぐ通路を開放又は遮断する「弁部」が形成される。流体は導入ポート224から導入され、弁部を通り、導出ポート228から導出される。弁体400が弁座232に着脱することにより弁部を開閉する。第2ボディ240は段付円筒状をなし、その下半部がOリング241を介して第1ボディ220に組みつけられている。第2ボディ240の内周面には、弁体400を摺動可能に支持するガイド孔242が形成されている。
【0015】
弁体400は、段付円筒状の本体420を有する。本体420の下端部および上端部の外周には、それぞれ凹状の嵌合部422、423が設けられている。嵌合部422には、弁部をシールするためのシールリング440が嵌着されている。シールリング440は、リング状の弾性体(例えばゴム)からなる。嵌合部423には、摺動部をシールするためのシールリング460が嵌着されている。本実施形態ではシールリング460としてOリングが採用されている。シールリング440が弁座232に着脱して弁部を開閉し、閉弁時にはその弁部のシール性能を確保する。
第2ボディ240と弁体400を軸線方向に貫通するように長尺状の作動ロッド120が設けられており、下端部にて弁体400を下方から支持している。弁体400と第2ボディ240との間には、弁体400を閉弁方向に付勢するスプリング140(「付勢部材」として機能する)が介装されている。本体420は、その上端部がガイド孔242に摺動可能に支持されている。本体420の下端部には、弁孔230に摺動しつつ支持される複数の脚部421が延設されている。弁体400は、その下端部が弁孔230に沿って摺動し、上端部がガイド孔242に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。
【0016】
駆動ユニット300は、アクチュエータとしてのモータ320およびウォームギア340を備える。ウォームギア340は、モータ320の出力軸に設けられたウォーム342と、そのウォーム342と噛合するウォームホイール344から構成される。作動ロッド120は、ウォームホイール344の回転軸をなしている。第2ボディ240と作動ロッド120との間には、「シールリング」としてのOリング245が介装されている。また、第2ボディ240の上半部を覆うようにハウジング160が取り付けられている。モータ320およびウォームギア340は、ハウジング160と第2ボディ240とに囲まれる空間に収容されている。
【0017】
ウォームホイール344は、その上端面に上部ストッパ346が突設され、下端面には、下部ストッパ(図には現れていない)が設けられている。上部ストッパ346は、ハウジング160の内側に突設されたストッパと協働して、ウォームホイール344が回動できる可動範囲の一方、つまり弁体400のリフト上限を規制する。下部ストッパは、第2ボディ240のストッパと協働して、ウォームホイール344が回動できる可動範囲の他方、つまり弁体400のリフト下限を規制する。
【0018】
ウォームホイール344の下半部には小径の雄ねじ部348が形成されており、第2ボディ240に突設された雌ねじ部244と螺合している。ウォームホイール344の回転運動は、これら雄ねじ部348と雌ねじ部244によるねじ機構により並進運動に変換される。すなわち、モータ320の駆動によりウォームホイール344が回動すると、そのウォームホイール344とともに作動ロッド120が軸線方向に並進する。
【0019】
弁体400は、作動ロッド120の下端部に設けられたストッパ122にて下方から支持される一方、スプリング140によって下方に付勢されている。一方、作動ロッド120の上部には段部121が設けられている。ウォームホイール344は作動ロッド120に挿通され、段部121に係止される。作動ロッド120の上端部にストッパ124が設けられ、ウォームホイール344は、段部121とストッパ124との間に挟まれるように作動ロッド120に組み付けられている。ウォームホイール344の上面とストッパ124との間に滑り軸受123が介装されている。このような構造により、ウォームホイール344の並進運動(上下動)は作動ロッド120に伝達されるが、回転運動は伝達されない。つまり、ウォームホイール344の回転が作動ロッド120を介して弁体400に伝わることはない。弁体400が弁座232から離間した開弁状態においては、弁体400と作動ロッド120とが突っ張った状態で一体変位するが、弁体400が弁座232に着座した閉弁状態になると、弁体400と作動ロッド120とは相対変位可能となる。
【0020】
図2は、弁体400の斜視図である。図2(a)は、弁体400の一部を切り欠いた状態を表す斜視図である。図2(b)は、弁体400の分解斜視図である。
シールリング440は、閉弁状態において弁体400による弁部のシール性能を確保するための部材である。流体は導入ポート224から導入され、弁部を通り、導出ポート228から導出されるため、シールリング440のシール機能は特に重要である。
本体420は、樹脂材の射出成形により得られる。本体420の成形時には割型を構成する複数の金型が用いられる。本体420には、その成形時にパーティングライン424が形成される。パーティングライン424は、図2(a)に示すように本体420の縦断面を一周するように形成される。以下、本体420およびシールリング440について詳細に説明する。
【0021】
図3は、シールリング440を表す図である。図3(a)はシールリング440を下方から見た斜視図、図3(b)はシールリング440の中央縦断面図である。図3(c)は図3(b)のY部拡大図である。
シールリング440は、長方形状の断面を有し、その上端面441および下端面443がそれぞれ「第1の端面」、「第2の端面」に対応する。下端面443の外周縁近傍は、弁座232と相補形状のテーパ面456とされている。弁体400は、そのテーパ面456にて弁座232に着脱する。
シールリング440の下端面443には、環状のビード442が設けられている。このビード442は、シールリング440の他の部分よりも低剛性である。このため、ビード442を特に「低剛性部」とよぶことがある。ビード442は、「環状当接部」として機能する。
【0022】
図4は、図1のX部に対応する部分拡大図である。図4(a)は、パーティングライン424がない断面を示す。図4(b)は、パーティングライン424上の断面を示す。
シールリング440は本体420の嵌合部422に嵌合される。嵌合部422は、上側面426と下側面428、底面430を有する。上側面426と下側面428は、弁体400の軸線方向に対向し、それぞれ「第1の側面」、「第2の側面」に対応する。閉弁状態では、シールリング440は弁座232に着座する。このとき、弁部の上流側が高圧、下流側が低圧となる。このため、その上流側圧力と下流側圧力との差圧が、シールリング440に作用する。図4(a)に示されるようにパーティングライン424がない箇所では、シールリング440は下側面428および底面430に接する。
【0023】
一方、図4(b)に示すように、嵌合部422においてパーティングライン424が存在する箇所では、シールリング440はパーティングライン424の箇所で浮いてしまう。すなわち、パーティングライン424の頂点近傍で、シールリング440と下側面428との間に隙間が発生する。以下、シールリング440におけるビード442を含まない断面と、ビード442を含む断面について、特にパーティングライン424近傍を詳細に説明する。
【0024】
図5(a)は図4(b)におけるA-A断面、つまりビード442を含まない断面を表す図である。図5(b)は図4(b)におけるB-B断面、つまりビード442を含む断面を表す図である。図5の点線は、パーティングライン424の幅を示すパーティングライン幅425である。また、図5(b)の破線は、パーティングライン424の基端(シールリング440の下端平坦面につながる部分)を示す。ビード高さBHは、平坦面とビード442の頂点との距離を示す。
【0025】
上流側圧力と下流側圧力との差圧により、シールリング440の下端面443は、嵌合部422の下側面428に押し付けられる。しかし、図5(a)に示すように、シールリング440の下端平坦面は、パーティングライン424の箇所で局所的に押し上げられて浮いてしまう。このため、シールリング440と下側面428との間に隙間Gができる。これは、シールリング440が平坦面において局所的に変形し難く、パーティングライン424の斜面にシールリング440が沿うことができないからである。
【0026】
一方、図5(b)に示すように、シールリング440の下端面443には、ビード442が設けられている。ビード442は小断面を有するため低剛性であり、変形しやすい。ビード高さBHは、パーティングライン424の高さよりも大きい。環状のビード442は、線接触態様で下側面428と当接するため、パーティングライン424に対しても高い面圧で隙間なく密着できる。一方、上流側圧力と下流側圧力との差圧により、シールリング440が軸線方向に圧縮される。このため、本実施形態では、シールリング440の上端面441と嵌合部422の上側面426との間に隙間ができる。
【0027】
図6(a)は、図5(b)のC-C断面図、すなわち、パーティングライン424の頂部近傍位置における断面図である。図6(b)は、シールリング440に作用する圧力分布を模式的に表す図である。太線領域R1が高圧領域、中線領域R2が低圧領域を示す。
図7図6の比較例としてビードがない場合を示す図である。比較例のシールリング500は、使用される素材がシールリング440と同様であり、寸法や形状についてはシールリング440のビード442を除いたものと同様である。図7(a)はシールリング500周辺を表す部分拡大断面図である。図7(b)は、シールリング500に作用する圧力分布を模式的に表す図である。
【0028】
図6および図7において、流体は右方向から導入され下方向へと導出される。閉弁状態において、シールリング440とシールリング500は、それぞれ弁座232に着座する。このときのシールリング440およびシールリング500にかかる流体からの圧力について説明する。
【0029】
まず、本実施形態におけるシールリング440にかかる圧力について説明する。図6(a)に示すように、パーティングライン424の近傍が平坦面である箇所においては、嵌合部422とシールリング440との間に隙間ができる。このため、上流側の高圧流体がパーティングライン424に沿ってシールリング440の周囲に回り込む。しかし、ビード442の箇所でその隙間が閉じられるため、流体を堰き止めることができる。その結果、図6(b)に示すような圧力分布となる。シールリング440の上端面441に対して下端面443が低圧となるため、シールリング440には下方向の差圧が作用する。その結果、ビード442がパーティングライン424の位置でも下側面428にしっかりと密着し、流体の漏れを抑制する。
【0030】
次に、比較例のシールリング500にかかる圧力について説明する。図7(a)に示すように、シールリング500にはビードが設けられていない。このため、上流側の高圧流体がパーティングライン424に沿ってシールリング440の周囲に回り込み、そのまま弁部を通過する。このとき、図7(b)に示すような圧力分布となる。シールリング440には下方向の差圧は小さく、押し付けられるべき低剛性部もないため、パーティングライン424に沿った隙間を閉じることができない。その結果、上流側から下流側への流体の漏れを生じさせてしまう。
【0031】
以上のように、本実施形態のシールリング440は、上端面441および下端面443のうち、低圧側となる端面(本実施形態では下端面443)に低剛性のビード442を備える。このため、弁体400がパーティングライン424を有していても、閉弁時にはビード442が下側面428に密着し、流体の漏れを防ぐことができる。なお、ビード高さBHについては、パーティングライン424の高さやシールリング440に使用する樹脂材の剛性等に応じて、閉弁時に流体の漏れがないように適宜設計すればよい。樹脂材そのものの剛性が比較的低い場合、ビード高さBHをパーティングライン424の高さと同等又は小さくしてもよい。
【0032】
図8は、変形例に係るシールリングを表す中央縦断面図である。図8(a)は第1変形例を示し、図8(b)は第2変形例を示す。第1変形例のシールリング444は、下端面に向けて横断面が狭小化されたテーパ部445を有する。テーパ部445の先端部は、環状の低剛性部となっている。このようなシールリング444を用いた場合であっても、低剛性部が変形してパーティングライン424に密着することで、閉弁状態において流体の漏れを抑制できる。
一方、第2変形例のシールリング446は、ビード442の径方向内側にもう一つのビード447を備える。このような二重シール構造とすることで、シール性能をより高めることができる。
【0033】
[第2実施形態]
第2実施形態は、制御弁における流体の流れ方向が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態との相異点を中心に説明する。
図9(a)は、第2実施形態で使用されるシールリング448の中央断面図である。図9(b)はシールリング448周辺を表す部分拡大断面図である。図9(a)に示すように、シールリング448にはその上端面441に環状のビード449が設けられている。
【0034】
本実施形態では、図9(b)の下方から上方へ向けて流体が流れる。閉弁状態において、シールリング448は流体から圧力を上方向に受ける。この圧力により、ビード449がその周方向に隙間なく上側面426に密着する。高圧流体が嵌合部422とシールリング448との間に回り込んだとしても、ビード449がその流れをせき止める。よって、閉弁時における流体の漏れを抑制できる。
本実施形態においても、シールリング448の上端面441および下端面443のうち、低圧側となる端面(本実施形態では上端面441)にビード449を設けている。この点で第1実施形態と共通する。このような構成により、嵌合部にパーティングラインが存在していても、上流側圧力と下流側圧力との差圧を利用してビードをしっかりと押し付けることができ、そのシール性能を確保することができる。
【0035】
なお、第1実施形態の場合と同様に、シールリング448に環状のビードを設けるのではなく、シールリング448の上端面をテーパ状にしてもよい。また、シールリング448の上端面に径の異なる環状のビードを2つ設けてもよい。シールリングの上端面と下端面の両方に環状ビードを設けてもよい。いずれの場合においても、シールリングの低剛性部がパーティングラインの位置にかかわらず嵌合部422に密接し、閉弁状態での流体の漏れを抑制できる。
【0036】
[第3実施形態]
第3実施形態は、シールリングの構造が第1実施形態と異なる。
図10(a)は、第3実施形態に係るシールリング450の中央縦断面図である。図中のH1は、シールリング450の本体の高さ(上端平坦面と下端平坦面との距離:以下「本体高さ」ともいう)を示す。H2は、シールリング450の嵌合部への嵌着前における低剛性部が位置する部分の高さ(以下「全体高さ」ともいう)を示す。図10(b)は、シールリング450周辺を表す部分拡大断面図である。図中のWは、嵌合部422の上側面426と下側面428との間隔(以下「嵌合部幅」ともいう)を示す。
上記第1、第2実施形態では、上流側圧力と下流側圧力との差圧によってシールリングが軸線方向に圧縮されることも考慮し、低圧側となる端面にビードを設ける構成とした。その差圧を利用して低剛性のビードを嵌合部の対向面に押し付けるようにしたものである。ただし、そのような構成により、シールリングの高圧側となる端面と嵌合部の対向面との間の隙間が大きくなり、高圧流体の進入を促してしまうことにもなる。
一方で、シールリングはそもそもつぶし代を利用してシール性能を発揮するものであるから、本来、嵌合部幅に対してつぶし代を有する程度に高さを設定するのが好ましいとも言える。しかし、このような高さの設定は、嵌合部へのシールリングの組み付け作業を困難にする。
そこで、本実施形態では、シールリングの全体高さについてつぶし代を確保しつつ、剛性の高い本体の高さを嵌合部幅より小さくすることで、シール性能の向上を実現する。すなわち、シールリング450は、上端面441と下端面443にそれぞれ環状のビード451、452を備える。本実施形態では、ビード451、452が位置する部分の高さが全体高さH2となる。本体高さH1は嵌合部幅Wより小さく、全体高さH2は嵌合部幅Wより大きい。
【0037】
このような構成により、シールリング450において低剛性のビード451、452が嵌合部422に対するつぶし代として機能する。ビード451、452が、嵌合部422の上側面426および下側面428の双方に密着するため、閉弁時における流体の漏れを抑制できる。
【0038】
なお、変形例においては、シールリングの上端面および下端面の一方にビード等の低剛性部を設けつつ、つぶし代を確保する態様としてもよい。すなわち、低剛性部を環状に有して嵌合部422と線接触態様で密接でき、本体高さH1<嵌合部幅W<全体高さH2の順に大きくなるシールリングであればよい。また、第1実施形態の場合のように、シールリングに下端面に向けて横断面が狭小化されたテーパ部を設け、テーパ部の先端部を環状の低剛性部とする態様としてもよい。このような態様のシールリングであれば、パーティングライン424の有無にかかわらず、嵌合部422とシールリングとを弁体400の軸線方向に密接させることができ、閉弁状態の流体の漏れを防止できる。
【0039】
[第4実施形態]
第4実施形態は、シールリングの構造が第1実施形態と異なる。
図11(a)は、第4実施形態に係るシールリング454の中央縦断面図である。図11(b)は、シールリング454周辺を表す部分拡大断面図である。
【0040】
本実施形態では、シールリング454の内周面457に環状のビード455が設けられている。シールリング454は、その緊縛力により嵌合部422に固定される。この緊縛力は、シールリング454の向心方向に作用し、ビード455をパーティングライン424に対して押し付ける。その結果、ビード455がパーティングライン424の位置でも嵌合部422の底面430にしっかりと密着し、流体の漏れを抑制する。
【0041】
[第5実施形態]
第5実施形態は、シールリングの構造が第1実施形態と異なる。
図12(a)は、第5実施形態に係るシールリング458の中央縦断面図である。図12(b)は、シールリング458周辺を表す部分拡大断面図である。シールリング458の下端面には、環状のビード459が設けられている。シールリング458は、断面概略長方形状をなし、外周縁下部に角部462を有する。角部462は、曲率半径が比較的小さいR形状を有する。本実施形態では、その角部462の曲率半径が、内周縁側の角部463の曲率半径よりも小さくされている。なお、変形例においては、角部はエッジとしてもよいし、C面取りその他の面取りとしてもよい。
【0042】
本実施形態では、シールリング458に対する流体の上流側圧力と下流側圧力との差圧により、ビード459が嵌合部422に密着する。本実施形態のシールリング458は、テーパに代えて角部462を設けることで、弁座232との接触点を外周縁の下端面近傍にした。これにより、本実施形態のシールリング458はビード459と嵌合部422との密着を十分なものにする程度の差圧による密着力を確保することができる。なお、本実施形態では、弁座232に対する角部462の着座点の一例を示したが、その着座点を弁座232の径方向外側に位置させるほど、差圧による密着力を大きくできる。
【0043】
なお、本実施形態では、シールリング458の角部462が弁座232と線接触態様で環状に当接する。よってシールリングと弁座とが面接触態様で当接する場合にくらべ、シールリング458は弁座とより高いシール性能で密着できる。
また、本実施形態では、弁座をテーパ面とする例を示したが、弁孔の軸線に対して垂直な面としてもよい。その場合、シールリングの外周縁又はその近傍に、弁座に向けて突出するビード(突条)を設け、弁座と線接触態様で環状に当接するようにしてもよい。そのビードの着座点を弁座の径方向外側に位置させるほど、差圧による密着力を大きくできる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0045】
実施形態においては、パーティングライン424を有する弁体についてシールリングを有効に機能させる構成を例示した。変形例においては、パーティングラインに限らず、弁体の成形時に残存した痕跡(加工痕)に対して上記シールリングを適用してもよい。加工痕は、たとえば、キズやバリによって生じる突状部分であってもよい。シールリングの低剛性部が嵌合部422の加工痕と密接し、閉弁時における流体の漏れを抑制できる。
【0046】
実施形態において、シールリングとして断面略四角形状のものを例示した。シールリングの形状についてはこれに限らず、例えばOリングなど断面円形状としてもよい。円形断面を有するシールリングの側面に沿ってビード(突条)等の低剛性部を設けてもよい。嵌合部422のいずれかの面と周方向に密接する低剛性部を有するシールリングであればよい。
【0047】
実施形態においては、ビードと嵌合部422とが線接触する態様を例示したが、ビードに限らず、低剛性部がその周方向に嵌合部422と密接できる態様であればよい。シールリングの上端面および下端面のうち少なくとも一方の端面に向けて横断面が狭小化された環状の低剛性部を含むようにしてもよい。上端面および下端面のうち高圧側となる端面から低圧側となる端面に向けて横断面が狭小化する形状としてもよい。例えばシールリングの上端面から下端面に向けてテーパを設け、縦断面形状が台形状あるいは段形状となるようにしてもよい。
【0048】
実施形態においては制御弁の弁座に接離するシールリングについて説明したが、上記シールリングを、シール機能を要する他の箇所に適用してもよい。例えば、シールリング460等の摺動部に使用される箇所に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
100 制御弁、120 作動ロッド、121 段部、122 ストッパ、123 滑り軸受、124 ストッパ、140 スプリング、160 ハウジング、200 ボディ、220 第1ボディ、221 本体、222 導入管部、224 導入ポート、226 導出管部、228 導出ポート、230 弁孔、232 弁座、240 第2ボディ、241 Oリング、242 ガイド孔、244 雌ねじ部、245 Oリング、300 駆動ユニット、320 モータ、340 ウォームギア、342 ウォーム、344 ウォームホイール、346 上部ストッパ、348 雄ねじ部、400 弁体、420 本体、421 脚部、422 嵌合部、423 嵌合部、424 パーティングライン、425 パーティングライン幅、426 上側面、428 下側面、430 底面、440 シールリング、441 上端面、442 ビード、443 下端面、444 シールリング、445 テーパ部、446 シールリング、447 ビード、448 シールリング、449 ビード、450 シールリング、451 ビード、454 シールリング、455 ビード、456 テーパ面、457 内周面、458 シールリング、459 ビード、460 シールリング、462 角部、463 角部。
図1
図2
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図6
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図9
図10
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図12